特許第5910866号(P5910866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5910866活性エステル樹脂、熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910866
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】活性エステル樹脂、熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/32 20060101AFI20160414BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20160414BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160414BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C08G8/32
   C08G59/62
   C08J5/24CFC
   H01L23/30 R
   H05K1/03 610K
【請求項の数】12
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2012-49170(P2012-49170)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-185002(P2013-185002A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悦子
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4548547(JP,B2)
【文献】 特開平07−082348(JP,A)
【文献】 特開2011−157434(JP,A)
【文献】 特開2011−157433(JP,A)
【文献】 特開2013−040270(JP,A)
【文献】 特開2012−251133(JP,A)
【文献】 特開2009−242560(JP,A)
【文献】 特開2010−235643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G4/00−16/06
C08G59/00−59/72
H01L23/28−23/30
H05K1/03
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)
【化1】
[前記構造式(I)中、Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Fcは水素原子又は水酸基を表し、かつ、Zは下記構造式z1〜z4
【化2】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)で表される部分構造からなる群から選択される構造部位である。]
で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドを、前記フェノール樹脂中に存在する全フェノール性水酸基のうち、エステル結合を形成したものの割合が30〜98モル%の範囲で形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項2】
ノボラック型フェノール樹脂構造を有し、かつ、その芳香核上の置換基として、下記構造式z1〜z4
【化3】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表される部分構造からなる群から選択される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドを、前記フェノール樹脂中に存在する全フェノール性水酸基のうち、エステル結合を形成したものの割合が30〜98モル%の範囲で形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項3】
下記構造式(II)
【化4】
[前記構造式(II)中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、かつ、Zは、水素原子及び下記構造式z1〜z4
【化5】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)からなる群から選択され、かつ、Zの少なくとも一つは前記構造式z1〜z4で表される部分構造から選択される構造部位である。]で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドを、前記フェノール樹脂中に存在する全フェノール性水酸基のうち、エステル結合を形成したものの割合が30〜98モル%の範囲で形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項4】
前記フェノール樹脂中に存在する全フェノール性水酸基のうち、エステル結合を形成したものの割合が55〜95モル%の範囲である、請求項1〜3の何れか1項記載の活性エステル樹脂。
【請求項5】
軟化点が85〜200℃の範囲である請求項1〜3の何れか1項記載の活性エステル樹脂。
【請求項6】
活性エステル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、前記活性エステル樹脂(A)が、請求項1〜のいずれか一つに記載の活性エステル樹脂であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エステル樹脂(A)と、前記エポキシ樹脂(B)との配合比率が、活性エステル樹脂(A)中のフェノール性水酸基と、芳香核上に存在するエステル結合部位との合計1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8〜1.2当量となる割合である請求項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項9】
請求項記載の熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料。
【請求項10】
請求項記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグ。
【請求項11】
請求項記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板。
【請求項12】
請求項記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることを特徴とするビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性、低誘電正接を発現し、かつ、溶剤溶解性に優れた性能を有する熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びこれに用いる活性エステル樹脂、並びに、該熱硬化性樹脂組成物半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも多層プリント基板絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。しかしながら、信号の高速化、高周波数化に伴って、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を得ることが困難となりつつある。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対しても、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。これらの低誘電率・低誘電正接を実現可能な材料として、フェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
然し乍ら、電子部品における高周波化や小型化の傾向から多層プリント基板絶縁材料にも極めて高度な耐熱性が求められているところ、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、アリールエステル構造の導入により硬化物の架橋密度が低下してしまい、硬化物の耐熱性が十分でないものであった。このように耐熱性と低誘電率・低誘電正接とは両立が困難なものであった。
【0005】
一方、同分野に用いられる材料は、ダイオキシン問題に代表とする環境問題への対応が不可欠となっており、近年、添加系のハロゲン系難燃剤を用いることなく、樹脂自体に難燃効果を持たせた所謂ハロゲンフリーの難燃システムの要求が高まっている。ところが、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、誘電特性は良好になるものの、その分子構造内に燃焼しやすいペンダント状の芳香族炭化水素基が多く含まれることになる為、硬化物の難燃性に劣り、前記したハロゲンフリーの難燃システムを構築することが出来ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−82348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において、低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させることのできる熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂用硬化剤として、下記構造式(I)
【0009】
【化1】
[前記構造式(I)中、Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Fcは水素原子又は水酸基を表し、かつ、Zは下記構造式z1〜z4
【0010】
【化2】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)で表される部分構造からなる群から選択される構造部位である。]
で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物とを、前記フェノール樹脂中に存在する水酸基のうち少なくとも一つが、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂を用いることにより、その硬化物において、低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させることのできる熱硬化性樹脂組成物となることを見出した。
【0011】
本発明は、上記特徴を有する活性エステル樹脂に関する。
【0012】
本発明は、更に、上記特徴を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
【0014】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料に関する。
【0015】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグに関する。
【0016】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得られるビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、その硬化物において、低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させることのできる熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、製造例1で得られたフェノール樹脂(A1−1)のGPCチャート図である。
図2図2は、製造例1で得られたフェノール樹脂(A1−1)の13C−NMRチャート図である。
図3図3は、製造例1で得られたフェノール樹脂(A1−1)のFD−MSのスペクトルである。
図4図4は、製造例2で得られたフェノール樹脂(A1−2)のGPCチャート図である。
図5図5は、製造例3で得られたフェノール樹脂(A1−3)のGPCチャート図である。
図6図6は、製造例4で得られたフェノール樹脂(A1−4)のGPCチャート図である。
図7図7は、比較製造例2で得られたフェノール樹脂(A1’−1)のGPCチャート図である。
図8図8は、比較製造例3で得られたフェノール樹脂(A1’−2)のGPCチャート図である。
図9図9は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(A−1)のGPCチャート図である。
図10図10は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルである。
図11図11は、製造例1で得られた活性エステル樹脂(A−1)の13C−NMRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の活性エステル樹脂は、前記した通り、下記構造式(I)
【0021】
【化3】
[前記構造式(I)中、Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Fcは水素原子又は水酸基を表し、かつ、Zは下記構造式z1〜z4
【0022】
【化4】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)で表される部分構造からなる群から選択される構造部位である。]
で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物とを、前記フェノール樹脂中に存在する水酸基のうち少なくとも一つが、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の活性エステル樹脂は、分子主骨格に特定のリン原子含有構造を有することから、優れた耐熱性及び難燃性を硬化物に付与できると共に、該樹脂構造中にアリールカルボニルオキシ構造部位又はアルキルカルボニルオキシ構造部位を有することから、硬化物に低誘電率、低誘電正接といった優れた誘電特性を兼備させることができる。本来、多官能フェノール性水酸基含有樹脂のフェノール性水酸基をアリールカルボニルオキシ化又はアルキルカルボニルオキシ化した樹脂構造中に有する活性エステル樹脂では、該アリールカルボニルオキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基に起因して耐熱性や難燃性が低下するところ、本発明ではこのような耐熱性や難燃性の低下が殆ど認められないのは、特筆すべき点である。
【0024】
中でも、より耐熱性及び難燃性が高く、かつ、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性にも優れる活性エステル樹脂が得られることから、前記構造式(I)中に存在する水酸基のうち少なくとも一つが、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドと、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有しているものが好ましい。
【0025】
本発明の活性エステル樹脂は、より具体的には、前記構造式(I)で表される構造部位を有するフェノール樹脂(A1)のフェノール性水酸基と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物(A2)とを、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有するものである。
【0026】
ここで、本発明の活性エステル樹脂の前駆体である前記フェノール樹脂(A1)は、具体的には、下記構造式x1〜x4
【0027】
【化5】
(上記構造式x1〜x4中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)
のいずれか一つで表されるリン原子含有化合物(i)と、フェノール類(a3)とを反応させることにより得られる。
【0028】
前記リン原子含有化合物(i)は、具体的には下記構造式(a1)
【0029】
【化6】
(式中、Rは水素原子又は炭素原子1〜3のアルキル基であり、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表される芳香族アルデヒド(a1)と、下記構造式(a2−1)又は構造式(a2−2)
【0030】
【化7】
で表されるリン原子含有化合物(a2)とを反応させて得られる。
[上記構造式(a2−1)又は構造式(a2−2)中、Xaは水素原子又は水酸基であり、R、R、R、Rはそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。]
で表される化合物が挙げられる。ここで、R、R、R、Rを構成する炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられる。
【0031】
前記芳香族アルデヒド(a1)について、本発明では、特に1分子中におけるリンの含有率が高い点からnの値が1であるのものが好ましい。
【0032】
また、前記リン原子含有化合物(a2)について、本発明では、得られる前記リン原子含有化合物(i)が、フェノール類(a3)との反応性が極めて良好なものとなる点から前記構造式(a2−1)又は構造式(a2−2)におけるXaが水素原子のものが好ましく、特に、本発明の活性エステル樹脂の硬化物が難燃性に優れるものとなる点から前記構造式(a2−1)で表される化合物が好ましい。とりわけ、構造式(a2−1)においてR、R、R、Rの全てが水素原子であって、かつ、Xaが水素原子である、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであることが、前記リン原子含有化合物(i)のフェノール類(a3)との反応性と、最終的に得られる活性エステル樹脂の難燃性及び耐熱性が極めて良好なものとなる点から好ましい。
【0033】
ここで、前記芳香族アルデヒド(a1)と、リン原子含有化合物(a2)との反応条件は、例えば、80〜180℃の温度条件下に行うことができる。該反応は無触媒で行うことができ、または、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒の存在下で行うことができる。
【0034】
このような方法で得られるリン原子含有化合物(i)は、具体的には、下記構造式x1〜x4
【0035】
【化8】
(上記構造式x1〜x4中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)
のいずれか一つで表されるものであるが、これらの中でも、特にフェノール類(a3)との反応性に優れる点から前記構造式x1及びx2で表される化合物が好ましく、特に最終的に得られる活性エステル樹脂の難燃性に優れる点から前記構造式x1で表される化合物が好ましい。
【0036】
次に、本発明で用いるフェノール類(a3)はフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、ナフトール等の1価フェノール類;カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等の2価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、α−ナフトールノボラック樹脂、β−ナフトールノボラック樹脂、ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂、その他下記構造式(A3−a)
【0037】
【化9】
(式中、Raは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基を表し、laは繰り返し単位で0〜10の整数である。)
で表されるノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
【0038】
ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、及びリモネンからなる群から選択される脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール類が結節された分子構造をもつフェノール樹脂;下記構造式(A3−b)
【0039】
【化10】
(前記式中、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lbは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−c)、
【0040】
【化11】
(前記式中、Rcは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lcは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−d)
【0041】
【化12】
(前記式中、Rdは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、ldは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−e)
【0042】
【化13】
(前記式中、Reは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、leは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−f)
【0043】
【化14】
(前記式中、Reは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lfは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−g)
【0044】
【化15】
(前記式中、Rgは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lgは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表される化合物等のアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−h)
【0045】
【化16】
(式中、Rhはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
で表されるビフェノール;及び
【0046】
下記構造式A3−i
【0047】
【化17】
(式中、Riはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
で表される多価ナフトール類;
【0048】
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(Ph)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(An)、並びに、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(M)(以下、これを単に「メチレン基等(M)」と略記する)の各構造単位をそれぞれ、「Ph」、「An」、「M」で表した場合、下記部分構造式(A3−j)
【0049】
【化18】
であらわされる構造部位を分子構造内に含む多官能フェノール類等が挙げられる。
【0050】
ここで、前記部分構造式A3−jで表される構造部位を分子構造内に含む多官能フェノール類は、更に具体的には、下記構造式(A3−j2)及び(A3−j3)
【0051】
【化19】
で表される構造、
【0052】
下記構造式(A3−j4)又は(A3−j5)
【0053】
【化20】
で表される構造を繰り返し単位とするノボラック構造の分子末端に、下記構造式(A3−j6)
【0054】
【化21】
で表される構造を有する構造、その他下記構造式(A3−j7)〜(A3−j10)
【0055】
【化22】
で表される構造を繰り返し単位とする交互共重合体構造が挙げられる。
【0056】
ここで、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(Ph)は、様々な構造をとり得るものであり、具体的には、以下のPh1〜Ph16の構造式で表されるフェノール、ナフトール、及びこれらの芳香核上の置換基としてアルキル基を有する化合物から形成される芳香族炭化水素基であることが誘電性能に優れる点から好ましい。
【0057】
【化23】
【0058】
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
【0059】
次に、フェノール樹脂構造中に含まれる前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(An)は、縮合多環式芳香核上の置換基としてアルコキシ基を有する1価又は多価の芳香族炭化水素基であり、具体的には下記構造式An1〜An12で表されるアルコシキナフタレン型の構造が挙げられる。
【0060】
【化24】
【0061】
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
【0062】
次に、前記した、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(M)は、例えば、メチレン基の他、アルキリデン基としては、エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、ジメチレン基、プロパン−1,1,3,3−テトライル基、n−ブタン−1,1,4,4−テトライル基、n−ペンタン−1,1,5,5−テトライル基が挙げられる。また、芳香族炭化水素構造含有メチレン基は、下記M1〜M8の構造のものが挙げられる。
【0063】
【化25】
これらの中でも特に誘電効果に優れる点からメチレン基であることが好ましい。
【0064】
本発明では、これらのなかでも特に2価フェノール、ビスフェノール類、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が、得られる活性エステル樹脂をエポキシ樹脂用硬化剤として用いたときの硬化性や有機溶剤への溶解性が良好なものとなる点から好ましく、特に、最終的に得られる活性エステル樹脂をプリント配線基板用エポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂用硬化剤として用いる場合には、溶剤溶解性に優れ、かつ、耐湿性・難燃性に優れる点からノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。この場合、ノボラック型フェノール樹脂は150℃における溶融粘度が0.5〜300dPa・sの範囲であることが耐湿性、耐熱性及び耐熱信頼性の点から好ましく、一方、アラルキル型フェノール樹脂は150℃における溶融粘度が0.1〜300dPa・sの範囲であることが、最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物における耐湿性、耐熱性及び耐熱信頼性に優れる点から好ましい。また、前記2価フェノールとしては、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物における耐熱性に優れる点から好ましい。
【0065】
該芳香族アルデヒド(a1)とリン原子含有化合物(a2)との反応生成物であるリン原子含有化合物(i)と、前記フェノール類(a3)との反応は、140〜200℃の温度条件下で行うことができる。本発明において、前記リン原子含有化合物(i)と前記フェノール類(a3)との反応は極めて反応性が高く、特に触媒を必要としないが、適宜用いても構わない。ここで使用し得る触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総重量に対して、5.0質量%未満であることが好ましい。
【0066】
また、本発明では前記リン原子含有化合物(i)と前記フェノール類(a3)との反応割合は特に限定されることがなく、寧ろ、その良好な反応性ゆえ、目的とする難燃性や耐熱性の性能レベル、或いは、用途に応じて任意に前記フェノール類(a3)に対するリン原子含有化合物(i)の変性量をコントロールすることができる。但し、前記リン原子含有化合物(i)が反応生成物中に残存しないような割合、具体的には、フェノール類(a3)の芳香核上の反応点に対して、当量以下となる割合で反応させることが好ましい。更に、前記フェノール類(a3)として好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂に前記リン原子含有化合物(i)を変性する場合、リン原子の含有率が質量基準で4.0〜7.0質量%となる割合となる範囲であることが耐熱性及び難燃性に優れる点から好ましい。
【0067】
反応後は、必要により、脱水・乾燥して目的物を得ることができる。この様にして得られるフェノール樹脂(A1)には、未反応成分である前記リン原子含有化合物(i)が実質的に殆ど残存することがない。例えば、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂に前記リン原子含有化合物(i)を変性し、リン原子の含有率を質量基準で4.0〜7.0質量%の範囲に調節した場合、前記リン原子含有化合物(i)の残存量は、リン原子含有フェノール樹脂中GPCでの検出限界以下となる。
【0068】
本発明で用いる活性エステル樹脂は、前記した通り、フェノール樹脂(A1)のフェノール性水酸基に、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物(A2)を反応させて得ることができる。
【0069】
ここで用いる芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドは、具体的には、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、フェニルナフトエ酸、メチルナフトエ酸、エチルナフトエ酸、n−プロピルナフトエ酸、i−プロピルナフトエ酸及びt−ブチルナフトエ酸等のアルキルナフトエ酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0070】
炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物は、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物、又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0071】
これら芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸(A2)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、より耐熱性及び難燃性が高く、かつ、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性にも優れる活性エステル樹脂が得られることから芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドがより好ましく、フェノール樹脂(A1)中のフェノール性水酸基との反応性が良好なものとなることから、安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが特に好ましい。
【0072】
前記フェノール樹脂(A1)と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物(A2)との反応は、具体的には、フェノール樹脂(A1)を、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物(A2)と塩基性触媒下に反応させる方法が挙げられる。また、フェノール樹脂(A1)と芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物(A2)との反応割合は、得られる活性エステル樹脂がガラス転移温度の高いものとなることから、(A1)中のフェノール性水酸基と、(A2)中のカルボキシル基(またはハライド)との当量比[(A1)中のOH]/[(A2)中のカルボキシル基(またはハライド)]が1.0/0.30〜1.0/0.98となる割合であることが好ましい。中でも、得られる活性エステル樹脂の硬化塗膜の誘電率や誘電正接がより低いものとなることから、前記[(A1)中のOH]/[(A2)中のカルボキシル基(またはハライド)]が1.0/0.55〜1.0/0.95となる割合であることがより好ましい。また、得られる活性エステル樹脂の硬化塗膜の耐熱性や難燃性がより高いものとなることから、前記[(A1)中のOH]/[(A2)中のカルボキシル基(またはハライド)]が1.0/0.35〜1.0/0.50となる割合であることがより好ましい。
【0073】
上記方法で使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
【0074】
また、上記方法による反応では、各原料成分は、有機溶媒に溶解させて反応に供することが好ましく、ここで用いる有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0075】
このようにして得られる活性エステル樹脂は、前記した通り、下記構造式(I)
【0076】
【化26】
[前記構造式(I)中、Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Fcは水素原子又は水酸基を表し、かつ、Zは下記構造式z1〜z4
【0077】
【化27】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)で表される部分構造からなる群から選択される構造部位である。]
で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物とを、前記フェノール樹脂中に存在する水酸基のうち少なくとも一つが、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とするものである。
【0078】
該活性エステル樹脂のより具体的なものは、例えば、ノボラック型フェノール樹脂構造を有し、かつ、その芳香核上の置換基として、下記構造式z1〜z4
【0079】
【化28】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表される部分構造からなる群から選択される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物とを、前記フェノール樹脂中に存在する水酸基の一部乃至全部が、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂(Ax)や、
【0080】
下記構造式(II)
【0081】
【化29】
[前記構造式(II)中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、かつ、Zは、水素原子及び下記構造式z1〜z4
【0082】
【化30】
(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)からなる群から選択され、かつ、Zの少なくとも一つは前記構造式z1〜z4で表される部分構造から選択される構造部位である。]
で表される構造部位を有するフェノール樹脂と、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物とを、前記フェノール樹脂中に存在する水酸基の一部乃至全部が、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂(Ay)等が挙げられる。
【0083】
前記活性エステル樹脂(Ax)又は(Ay)において、前記構造式z1〜z4で表される部分構造のなかでも、特に硬化物の耐熱性に優れる点から前記構造式z1又はz2で表される部分構造が好ましく、特に前記前記構造式z1で表されるものが好ましい。
【0084】
また、前記活性エステル樹脂(Ax)又は(Ay)において、より耐熱性及び難燃性が高く、かつ、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性にも優れる活性エステル樹脂が得られることから、そのフェノール性水酸基の一部乃至全部が、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライドと、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有するものが好ましく、簡便且つ効率的に製造できることから、安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物と、エステル結合を形成するように反応して得られる樹脂構造を有するものがより好ましい。
【0085】
また、前記活性エステル樹脂(Ax)又は(Ay)において、全フェノール性水酸基のうちエステル結合を形成したものの割合は、得られる活性エステル樹脂がガラス転移温度の高いものとなることから、30〜98モル%の範囲であることが好ましい。中でも、得られる活性エステル樹脂の硬化塗膜の誘電率や誘電正接がより低いものとなることから、55〜95モル%の範囲であることがより好ましい。また、得られる活性エステル樹脂の硬化塗膜の耐熱性や難燃性がより高いものとなることから、35〜50モル%の範囲であることがより好ましい。
【0086】
以上詳述した活性エステル樹脂は、有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、従来にない難燃性能を発現させることができる点から、その軟化点が85〜200℃であることが好ましく、90〜150℃であることがより好ましい。
【0087】
更に、前記活性エステル樹脂は、これを回路基板用途へ適用する際にはエポキシ樹脂中の官能基濃度をより一層低くして硬化後の誘電特性や耐湿性の改善を図ることが好ましく、その一方で、前記活性エステル樹脂中の分子量が小さい場合には、有機溶剤への溶解性に劣り回路基板用ワニスへの適用が困難なものとなる点から、前記活性エステル樹脂は、その樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計の官能基数を基準とした場合における官能基当量が240〜400g/eq.の範囲であることが好ましい。
【0088】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、活性エステル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを必須成分とし、該活性エステル樹脂(A)が、上述した本発明の活性エステル樹脂であるものである。
【0089】
本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いるエポキシ樹脂(B)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点から、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0090】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性及び硬化物の諸物性が良好なものとなる点から、活性エステル樹脂(A)中の水酸基と、芳香核上に存在するエステル結合部位との合計1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8〜1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、芳香核上に存在するエステル結合部位とは、前記構造式(I)中に存在する水酸基が、芳香族モノカルボン酸若しくはそのハライド、又は炭素原子数2〜6の飽和脂肪酸、そのハライド若しくは前記飽和脂肪酸の酸無水物との反応によりエステル化されることにより生成したエステル結合部位を指す。
【0091】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)に加え、エポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。ここで用いることのできるエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0092】
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが難燃効果の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましい。
【0093】
上記したエポキシ樹脂用硬化剤を併用する場合、その使用量は誘電特性の点から10〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0094】
また必要に応じて本発明の熱硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特にビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、ジメチルアミノピリジンやイミダゾールが好ましい。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0095】
以上詳述した本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0096】
また必要に応じて本発明の熱硬化性樹脂組成物に他の熱硬化性樹脂を適宜併用することもできる。ここで使用し得る他の熱硬化性樹脂は、例えばシアネートエステル化合物、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、本発明の熱硬化性樹脂組成物に対して1〜80重量%の範囲であることが好ましい。
【0097】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0098】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0099】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0100】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0101】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0102】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0103】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0104】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0105】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0106】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0107】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0108】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0109】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0110】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0111】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0112】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0113】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0114】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0115】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0116】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0117】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0118】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0119】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0120】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0121】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、熱硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0122】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0123】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の熱硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0124】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性から硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
【0125】
ここで、本発明の回路基板は、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して製造されるものである。具体的には、例えば硬質プリント配線基板を製造するには、前記有機溶剤を含むワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤を配合してワニス化し、これを補強基材に含浸し、半硬化させることによって製造される本発明のプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる熱硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
【0126】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び有機溶剤を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0127】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該熱硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0128】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び無機充填剤等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、熱硬化性樹脂組成物中、無機質充填材を70〜95質量%となる割合で配合することにより、本発明の半導体封止材料となる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法が挙げられる。
【0129】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0130】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0131】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0132】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
【0133】
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0134】
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0135】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0136】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0137】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0138】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0139】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0140】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該熱硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0141】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0142】
本発明の硬化物を得る方法としては、例えば、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【0143】
従って、本発明によれば、ハロゲン系難燃剤を使用しなくても高度な難燃性を発現する環境性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、これらの硬化物における優れた誘電特性は、高周波デバイスの高速演算速度化を実現できる。また、該フェノール性水酸基含有樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
【実施例】
【0144】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、GPC測定、13C−NMR、FD−MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0145】
1)180℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠した。
2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠した。
3)GPC:
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
4)13C−NMR:日本電子株式会社製「NMR GSX270」により測定した。
5)FD−MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
【0146】
製造例1
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、「HCA」と略記する)を124g(0.59モル)、p−アニスアルデヒド78.7部(0.59モル)、フェノールノボラック樹脂161.2g(1.55モル)を仕込み、90℃下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し4時間攪拌した後、160℃に昇温し4時間、更に180度に加熱し2時間撹拌した。その後、水を加熱減圧下で除去し、下記構造単位A及び構造単位B
【0147】
【化31】
を繰り返し単位とするフェノール樹脂(A1−1)を350g得た。得られたフェノール樹脂類(A−1)の水酸基当量は228グラム/当量、軟化点148℃、180℃での溶融粘度は400dPa・sであった。得られたフェノール樹脂(A1−1)のGPCチャートを図1に、C13NMRチャートを図2に、MSスペクトルを図3に示す。C13NMRチャートから77ppmのヒドロキシメチレンのピークが消失し、55.3ppm付近にメチン骨格が生成していることを示すピークが検出された。
【0148】
製造例2
フェノールノボラック樹脂161.2g(1.55モル)を、2,7ジヒドロキシナフタレン248g(1.55モル)に変えた以外は製造例1と同様に反応し、フェノール樹脂(A1−2)を490g得た。得られたフェノール樹脂(A1−2)の水酸基当量は250グラム/当量、軟化点140℃、180℃での溶融粘度は300dPa・sであった。得られたフェノール樹脂(A1−2)のGPCチャートを図4に示す。
【0149】
製造例3
フェノールノボラック樹脂161.2g(1.55モル)を、フェニルアラルキル樹脂259g(1.55モル)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、フェノール樹脂(A1−3)を340g得た。得られたフェノール樹脂(A1−3)の水酸基当量は232グラム/当量、軟化点102℃、180℃での溶融粘度は1.0dPa・sであった。得られたフェノール樹脂(A1−3)のGPCチャートを図5に示す。
【0150】
製造例4
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノールノボラック樹脂457.6g(4.4モル)、HCA216g(1.0モル)、及びp−ヒドロキシベンズアルデヒド122g(1.0モル)を仕込み、180℃まで昇温し180℃で8時間反応させた。ついで、水を加熱減圧下で除去し、フェノール樹脂(A1−4)750gを得た。得られたフェノール樹脂の軟化点は150℃、180℃での溶融粘度は120dPa・s、水酸基当量は164グラム/当量、リン含有量3.7質量%であった。得られたフェノール樹脂(A1−4)のGPCチャートを図6に示す。
【0151】
比較製造例1
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、HCA216g(1.0モル)、42質量%ホルマリン水溶液71g(1.0モル)を仕込み、100℃まで昇温し、4時間反応させた。次いで析出した固体をろ別し、アセトンで洗浄して2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)メタノール(以下、「ODOPM」と略記する。)245gを得た。得られたODOPMの融点は152〜154℃であった。
【0152】
比較製造例2
ナスフラスコに、フェノールノボラック樹脂144g(1.0モル)を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら100℃に昇温した。昇温後、比較製造例1で得たODOPM230g(1.0モル)を添加し、140℃に加熱して12時間維持した。次いで、その混合物を室温まで冷却し、ろ過後に乾燥して、フェノール樹脂(A1’−1)を得た。得られたフェノール樹脂(A1’−1)のGPCチャートを図7に示す。
【0153】
比較製造例3
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノールノボラック樹脂144g(1.0モル)、HCA216g(1.0モル)、及びトルエン216gを仕込み、110℃まで昇温して加熱溶解させた。次いで、p−ヒドロキシベンズアルデヒド122g(1.0モル)を仕込み、180℃まで昇温し180℃で8時間反応させた後、ろ過、乾燥を経て、フェノール樹脂(A1’−2)を335g得た。得られたフェノール樹脂(A1’−2)の融点は286℃であった。得られたフェノール樹脂(A1’−2)のGPCチャートを図8に示す。
【0154】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、前記製造例1で得たフェノール樹脂(A1−1)228gとメチルイソブチルケトン970gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126g(0.90モル)を仕込み、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを3時間かけて滴下した。その後、この条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液して水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。デカンタ脱水で水分を除去した後、減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、活性エステル樹脂(A−1)を得た。この活性エステル樹脂(A−1)の軟化点は130℃であった。また、フェノール性水酸基に対するエステル化率は90%、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は321グラム/当量であった。ここで、活性エステル樹脂(A)の官能基当量は、活性エステル樹脂(A)中のフェノール性水酸基と、下記一般式(I−1)
【0155】
【化32】
(式中、Arは、フェニル基、ナフチル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニル基、ナフチル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチル基を表す。)
で表される構造部位との合計の官能基数について計算した値である。
得られた活性エステル樹脂(A−1)のGPCチャートを図9に、MSスペクトルを図10に、13C−NMRチャートを図11に示す。製造例1で得たフェノール樹脂(A1−1)と比較して、そのMSスペクトルの推移から、得られた活性エステル樹脂(A−1)は、フェノール樹脂(A1−1)に含まれるそれぞれの樹脂成分に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応したものであることが確認された。また、得られた活性エステル(A−1の13C−NMRには、エステル基由来のカルボニルの炭素の存在を示すピークが165ppm確認に確認された。
【0156】
実施例2
塩化ベンゾイル126g(0.90モル)を、塩化ベンゾイル70g(0.5モル)に変えた以外は実施例1と同様の方法により活性エステル樹脂(A−2)を得た。この活性エステル樹脂(A−2)の軟化点は140℃、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は280グラム/当量であった。
【0157】
実施例3
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、製造例2で得たフェノール樹脂(A1−2)250gとメチルイソブチルケトン1030gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126g(0.9モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去した後、減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、活性エステル樹脂(A−3)を得た。この活性エステル樹脂(A−3)の軟化点は130℃であった。また、フェノール性水酸基に対するエステル化率は90%、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は343グラム/当量であった。製造例2で得たフェノール樹脂(A1−2)と比較して、そのMSスペクトルの推移から、得られた活性エステル樹脂(A−3)は、フェノール樹脂(A1−2)に含まれるそれぞれの樹脂成分に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応したものであることが確認された。
【0158】
実施例4
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、製造例3で得たフェノール樹脂類(A1−3)232gとメチルイソブチルケトン980gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126g(0.9モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去した後、減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、活性エステル樹脂(A−4)を得た。この活性エステル樹脂(A−4)の軟化点は95℃であった。また、フェノール性水酸基に対するエステル化率は90%、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は325グラム/当量であった。製造例3で得たフェノール樹脂(A1−3)と比較して、そのMSスペクトルの推移から、得られた活性エステル樹脂(A−4)は、フェノール樹脂(A1−3)に含まれるそれぞれの樹脂成分に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応したものであることが確認された。
【0159】
実施例5
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、製造例4で得たフェノール樹脂(A1−4)164gとメチルイソブチルケトン780gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126g(0.9モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去した後、減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、活性エステル樹脂(A−5)を得た。この活性エステル樹脂(A−5)の軟化点は138℃であった。また、フェノール性水酸基に対するエステル化率は90%、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は257グラム/当量であった。製造例4で得たフェノール樹脂(A1−4)と比較して、そのMSスペクトルの推移から、得られた活性エステル樹脂(A−5)は、フェノール樹脂(A1−4)に含まれるそれぞれの樹脂成分に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応したものであることが確認された。
【0160】
比較例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、比較製造例2で得たフェノール樹脂(A1’−1)104gとメチルイソブチルケトン600gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126g(0.9モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているメチルイソブチルケトン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去した後、減圧脱水でメチルイソブチルケトンを除去し、活性エステル樹脂(A’−1)を得た。この活性エステル樹脂(A’−1)の軟化点は100℃であった。また、フェノール性水酸基に対するエステル化率は100%、仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は197グラム/当量であった。比較製造例2で得たフェノール樹脂(A1’−1)と比較して、そのMSスペクトルの推移から、得られた活性エステル樹脂(A’−1)は、フェノール樹脂(A1’−1)に含まれるそれぞれの樹脂成分に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応したものであることが確認された。
【0161】
比較例2
比較製造例3で得たフェノール樹脂(A1’−2)について、実施例と同様の方法により塩化ベンゾイルとの反応を行おうとしたが、フェノール樹脂(A1’−2)がメチルイソブチルケトンに溶解せず、反応物を得る事ができなかった。
【0162】
比較例3
フェノール樹脂(A1−1)228gを、フェノールノボラック樹脂(DIC社製「TD−2090」、水酸基当量:105g/eq)105gに変え、20%水酸化ナトリウム水溶液205gを、20%水酸化ナトリウム水溶液189gに変えた以外は実施例1と同様の方法により、活性エステル樹脂(A’−2)188gを得た。仕込んだ原料組成より計算される官能基当量は199グラム/当量であった。
【0163】
熱硬化性樹脂組成物の調整
下記、表1記載の配合に従い、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)[フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製「N−770」エポキシ当量:183g/eq)]、硬化触媒(ジメチルアミノピリジン)0.05phrを加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して、熱硬化性樹脂組成物を調整した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性、誘電特性及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
【0164】
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0165】
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0166】
<耐熱性(耐熱剥離性)>
T288:試験法はIPC TM650に準拠し評価した。
【0167】
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。

<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、厚さ0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。
【0168】
【表1】
A−1:実施例1で得られた活性エステル樹脂(A−1)
A−2:実施例2で得られた活性エステル樹脂(A−2)
A−3:実施例3で得られた活性エステル樹脂(A−3)
A−4:実施例4で得られた活性エステル樹脂(A−4)
A−5:実施例5で得られた活性エステル樹脂(A−5)
A’−1:比較例1で得られた活性エステル樹脂(A’−1)
A’−2:比較例3で得られた活性エステル樹脂(A’−2)
N−770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「N−770」、エポキシ当量:183g/eq.)
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
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