【実施例】
【0036】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。尚、実施例1〜10で使用したポリアミド4は3分岐型のものである。
【0037】
実施例1
ポリアミド4(4.26 g; 50 mmol)をギ酸(38.4 g; 835 mmol)に室温で溶解させ、60℃に加熱した。パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)/メタノール(5.4 ml)溶液を調製し、60℃のポリアミド溶液に少しずつ加えた。10分後、さらにメタノール(5.4 ml)をすばやく加え、2時間程度反応させた。真空ポンプにより、溶媒を減圧留去して濃縮した後、アセトンを加えて沈澱させ、反応物を精製した。
【0038】
実施例2
パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)に代えてパラホルムアルデヒド(0.53 g; 17.6 mmol)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリアミド4をメチロール化した。
【0039】
実施例3
パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)に代えてパラホルムアルデヒド(0.67 g; 22.3 mmol)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリアミド4をメチロール化した。
【0040】
実施例4
パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)に代えてパラホルムアルデヒド(0.80 g; 26.6 mmol)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリアミド4をメチロール化した。
【0041】
実施例5
パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)に代えてパラホルムアルデヒド(1.07 g; 35.6 mmol)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリアミド4をメチロール化した。
【0042】
実施例6(反応時間を30分とした場合)
ポリアミド4(4.26 g; 50 mmol)をギ酸(38.4 g; 835 mmol)に室温で溶解させ、60℃に加熱した。パラホルムアルデヒド(1.07 g; 35.6 mmol)/メタノール(5.4 ml)溶液を調製し、60℃のポリアミド溶液に少しずつ加えた。10分後、さらにメタノール(5.4 ml)をすばやく加え、30分程度反応させた。加熱終了後、アセトンを加えて沈澱させ、反応物を精製した。
【0043】
実施例7
パラホルムアルデヒド(0.27 g; 9.0 mmol)に代えてパラホルムアルデヒド(2.13 g; 7.09 mmol)を使用した以外は実施例6と同様にしてポリアミド4をメチロール化した。
【0044】
実施例8(反応溶媒にメタノールを使用していない場合)
ポリアミド4(4.26 g; 50 mmol)をギ酸(38.4 g; 835 mmol)に室温で溶解させ、60℃に加熱した。パラホルムアルデヒド(0.53 g; 17.6 mmol)/ギ酸(6.59 g; 143 mmol)溶液を調製し、60℃のポリアミド溶液に少しずつ加え、1時間程度反応させた。真空ポンプにより、溶媒を減圧留去して濃縮した後、アセトンを加えて沈澱させ、反応物を精製した。
【0045】
実施例9(ポリアミド4を反応溶媒に溶解させずに不均一系で反応させた場合)
パラホルムアルデヒド(1.07 g; 35.6 mmol)/メタノール(5.4 ml)溶液にギ酸(1.60 g; 34.7 mmol)を加えた溶液を調製した。この溶液にポリアミド4(1.07 g; 12.6 mmol)の顆粒を加えて、60℃で6日間、不均一系反応を行った。反応終了後、ろ別し、アセトンで洗浄した。
【0046】
実施例10(コポリ(2−ピロリドン/ε−カプロラクタム)を反応させた場合)
コポリアミドの一種であるコポリ(2−ピロリドン/ε−カプロラクタム)(組成比(モル比)2−ピロリドン/ε−カプロラクタム=87/13)(4.26 g;48 mmol)をギ酸(38.4 g; 835 mmol)に室温で溶解させ、60℃に加熱した。パラホルムアルデヒド(0.53 g; 17.6 mmol)/ギ酸(6.59 g; 143 mmol)溶液を調製し、60℃のコポリアミド溶液に少しずつ加え、1時間程度反応させた。真空ポンプにより、溶媒を減圧留去して濃縮した後、アセトンを加えて沈澱させ、反応物を精製した。
【0047】
上記実施例1−10の反応条件と収量を表1に示した。得られたメチロール化ポリアミド4と原料として用いたポリアミド4(比較例1)について、以下の評価を行い、得られた結果を表2に示した。
【0048】
数平均分子量、重量平均分子量
数平均分子量及び重量平均分子量は、高速GPCシステム(東ソー社製、HLC-8220GPCシステム、カラムTSKgel Super HM-NとH-RC)により、ポリメチルメタクリレートを標準物質として用いて測定した結果から算出した。
【0049】
融点、融解熱、熱分解温度
融点、融解熱、熱分解温度は、熱分析システム(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、DSC3100S+TG-DTA2000SAシステム)により、昇温速度10℃/minで測定した。
【0050】
引張強度、破断伸度
実施例1−10で得られたポリアミド4及び原料として用いたポリアミド4(比較例1)を使用し、トリフルオロエタノールを溶媒として、溶媒キャスティング法により作成したフィルムを厚さ47μm(平均)、長さ15 mm、幅5 mmの矩形型の試験片に加工した。 万能試験機(テイ・エス エンジニアリング社製、Auto com/AC-50)を用いて、引張強度、破断伸度を測定し、各試験片について15個の測定値を平均した。実施例1〜5については、ホットデシケーター中、100℃にて油回転式真空ポンプで1日以上減圧乾燥させた後、直ちに測定した。実施例6〜9については、ホットデシケーター中、40℃で1日以上減圧乾燥させ、1日以上大気中で放置した後、測定した。
【0051】
メチロール化度
1HNMRを測定し、メチロール基に由来するピークと主鎖のメチレン基に由来するピークとの積分比からメチロール化度を計算した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1からポリアミド4に対するパラホルムアルデヒドの仕込み量が多くなると、生成物は弾性固体となり、また収量が多くなる傾向があった。
【0055】
図1に原料のポリアミド4と反応後のポリアミド4の
1HNMRスペクトルを示す。原料に使用したポリアミド4に由来するピーク以外にメチロール基に由来するピークが現れ、ポリアミド4のアミド基がメチロール化されていることが確認できた。図中には実施例2と5を示した。メチロール化されていない部分に由来するプロトンのピークbとメチロール化に基づく新たなプロトンのピークdとの積分比からメチロール化度を計算すると、それぞれ6.5%、22.5%と見積もることができた。
【0056】
分子量について、原料のポリアミド4と比較すると、反応時間が2時間の場合、Mnに関してはほぼ変化はないが、Mwは低下した。反応時間が30分の場合はメチロールの導入率は下がるがMwの低下はほとんどなかった。
【0057】
融点と融解熱に関しては、いずれの実施例についても融点は低くなり、融解熱は小さくなった。ポリアミド4に対するパラホルムアルデヒドの仕込み量が多くなるにつれて融解ピークの形状は小さく、非常に幅が広くなった。
【0058】
反応溶媒にメタノールを使用していない場合(実施例8)やポリアミド4を反応溶媒に溶解させずに不均一系で反応した場合(実施例9)においてもメチロール化された。また、コポリ(2−ピロリドン/ε−カプロラクタム)を原料としパラホルムアルデヒドと反応させた場合(実施例10)においてもメチロール化は可能であった。
【0059】
図2のポリアミド4のメチロール化度と融点との関係、
図3のポリアミド4のメチロール化度と融解熱から、ポリアミド4のメチロール化度を制御することにより、熱物性の改質が可能であることがわかった。
【0060】
ホットデシケーターで乾燥させた直後のメチロール化ポリアミド4は、メチロール化前のポリアミド4と比較して、引張強度に顕著な差異は認められず、破断伸度は小さくなる傾向が認められた。一方、ホットデシケーターで乾燥させた後、大気中で放置することにより吸湿した場合、メチロール化ポリアミド4の引張強度は小さくなるが、破断伸度は大幅に増加することがわかった。メチロール化ポリアミド4はメチロール化度を制御することにより、硬くて強い材料から硬くて粘り強い材料とすることが可能であることがわかった。
【0061】
実施例11(ホルマリンを使用した場合)
ポリアミド4の粉末(1.07 g; 12.6 mmol)をホルマリン(37%)(6.0 ml; 73.3 mmol)とギ酸(0.55 ml; 14.6 mmol)との混合液に加え、60℃で1日間、加熱撹拌した。反応溶液をガラスフィルターでろ過し、ろ液を40℃に加熱し、真空ポンプで水を留去した。トリフルオロエタノールに溶解後、ガラスフィルターでろ過し、溶媒キャスティング法により、フィルムを成形した。
収量 2.07 g
PA4由来の融点(265℃付近)消失
融解ピーク123.5℃(83.4℃〜144.4℃)
当該方法は溶媒として大量のギ酸を使用していないので安全で簡便な製造方法である。
【0062】
メチロール化ポリアミド4の生分解性
ポリアミド4の活性汚泥中における生分解性を閉鎖圧力測定型呼吸装置(タイテック株式会社製、BOD TESTER 200F+COOLNIT CL-150Rシステム)を使用して、以下のように調べた。JIS K6950で定義される無機培地200 mlにポリマー試料30 mgを分散させ、(財)化学物質評価研究機構より提供された標準活性汚泥20 ml(乾燥重量33 mg)を加え、閉鎖系培養容器中で27℃にて、培養容器内に設置された水酸化カルシウムパンで発生二酸化炭素を吸収し、消費酸素量を水槽に接続したビューレット目盛りを読み取ることで減少した体積として測定する方法で1ヶ月間分解試験を行った。生分解による消費酸素量はポリマー試料がない活性汚泥のみで行った対照試験での消費酸素量を差し引いて得た。ポリマー試料の生分解性はポリマー中の炭素分は全て二酸化炭素に、窒素分は硝酸イオンに、水素分は水になる場合に必要とされる総酸素量を完全生分解時の必要理論酸素量として、生分解による消費酸素量を必要理論酸素量で除し、100を乗ずることで生分解度(%)を計算した。
【0063】
図4に実施例で得られたメチロール化ポリアミド4の標準活性汚泥による生分解の経時変化、
図5に4週間後のメチロール化ポリアミド4のメチロール化度と生分解率との関係を示した。ポリアミド4のメチロール化度を変化させることにより、生分解率の制御が可能であることが判った。