【実施例】
【0034】
次に実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
エポキシ当量:JIS K7236に準じた。
二核体含有率、三核体含有率、数平均分子量、重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分子量分布を測定し、二核体含有率、三核体含有率はピークの面積%から、数平均分子量および重量平均分子量は標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製 A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40)より求めた検量線より換算した。具体的には、本体(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。
リン含有量:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予めリン酸二水素カリウムを用いて作成した検量線により、求めたリン原子含有量を重量%で表した。積層板のリン含有量は、積層板の樹脂成分に対する含有量として表した。
銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
燃焼性:UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じた。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間を秒で表した。
ガラス転移温度DSC:示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR6000 DSC6200)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC外挿値の温度で表した。
ガラス転移温度TMA:熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR6000 TMA/SS120U)にて5℃/分の昇温条件で測定を行った時のTMA外挿値の温度で表した。
使用したエポキシ樹脂として:――
YDF−170C(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率81.9面積%、三核体含有率5.3面積%、数平均分子量254、重量平均分子量285、分散度1.12、エポキシ当量169g/eq)
YDPN−638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率22.1面積%、三核体含有率10.7面積%、数平均分子量463、重量平均分子量1003、分散度2.17、エポキシ当量176g/eq)
YDCN−700−2(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率10.5面積%、三核体含有率10.9面積%、数平均分子量633、重量平均分子量1187、分散度1.88、エポキシ当量200g/eq)
【0035】
合成例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、フェノール 2500部、シュウ酸二水和物 7.5部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。37.4%ホルマリン 474.1部を80℃で滴下を開始し、30分で滴下を終了した。更に反応温度を92℃に保ち3時間反応を行った。昇温を行い反応生成水を系外に除去しながら110℃まで昇温した。残存フェノールを160℃にて減圧下回収を行い、フェノールノボラック樹脂を得た。更に温度を上げて二核体の一部を回収した。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で10面積%であった。
【0036】
合成例2
合成例1で得られたフェノールノボラック樹脂をMIBKに溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液で水洗分液を行なった。残存する水酸化ナトリウムを水洗で除去した後、MIBKを減圧回収した。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で6面積%であった。
【0037】
合成例3
合成例1の37.4%ホルマリンを711.1部とした以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で10面積%であった。
【0038】
合成例4
合成例1と同様な装置に、合成例1のフェノールノボラック樹脂 665.8部、エピクロロヒドリン 2110.8部、水 17部を仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。49%水酸化ナトリウム水溶液 14.2部を仕込み3時間反応を行った。64℃まで昇温し、水の還流が起きる程度に減圧を引き、49%水酸化ナトリウム水溶液 457.7部を3時間かけて滴下し反応をおこなった。温度を70℃まで上げ脱水を行い、温度を135℃として残存するエピクロロヒドリンを回収した。常圧に戻し、MIBK 1232部を加えて溶解した。イオン交換水1200部を加え、攪拌静置して副生した食塩を水に溶解して除去した。次に49%水酸化ナトリウム水溶液 37.4部を仕込み80℃で90分間攪拌反応して精製反応を行った。MIBKを追加、水洗を数回行いイオン性不純物を除去した。溶剤を回収し、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9面積%、三核体含有率37.0面積%、数平均分子量440、重量平均分子量605、分散度1.38、エポキシ当量176g/eqであった。
【0039】
合成例5
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりに合成例2のフェノールノボラック樹脂を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率5.5面積%、三核体含有率34.6面積%、数平均分子量485、重量平均分子量684、分散度1.41、エポキシ当量176g/eqであった。
【0040】
合成例6
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりに合成例3のフェノールノボラック樹脂を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9.1面積%、三核体含有率24.2面積%、数平均分子量593、重量平均分子量954、分散度1.61、エポキシ当量177g/eqであった。
【0041】
合成例7
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにLV−70S(群栄化学工業株式会社製 フェノールノボラック樹脂、二核体成分2%、三核体成分75%)を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率1.4面積%、三核体含有率56.1面積%、数平均分子量486、重量平均分子量617、分散度1.27、エポキシ当量176g/eqであった。
【0042】
合成例8
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにTRI−002(昭和電工株式会社製 トリフェニルメタン型ノボラック樹脂、二核体成分4.6%、三核体成分29.7%)を2326.5部、4,4−メチレンビスクレゾール173.6部用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9.2面積%、三核体含有率21.8面積%、数平均分子量640、重量平均分子量1109、分散度1.80、エポキシ当量177g/eqであった。
【0043】
合成例9
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにBRG−558(群栄化学株式会社製 フェノールノボラック樹脂、二核体成分12.0%、三核体成分10.0%)を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率10.4面積%、三核体含有率5.8面積%、数平均分子量818、重量平均分子量2436、分散度2.98、エポキシ当量177g/eqであった。
【0044】
実施例1
合成例1と同様な装置に合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA(三光株式会社製 9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド リン含有率14.2重量%)176部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。130℃にてトリフェニルホスフィンを触媒として0.18部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は266g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0045】
実施例2
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 838部、HCA 162部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.3%であった。結果を表1にまとめる。
【0046】
実施例3
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 880部、HCA 120部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は226g/eq、リン含有率は1.7%であった。結果を表1にまとめる。
【0047】
実施例4
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例5のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA 176部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は264g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0048】
実施例5
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例6のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA 176部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0049】
実施例6
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例7のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 711.9部、とYDF−170C 112.1部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。使用したエポキシ樹脂の二核体含有率は11.9面積%、三核体含有率は49.0面積%だった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は257g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0050】
実施例7
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 804部、ビスフェノールF(本州化学製)55部を仕込み、120℃に加熱した。トリフェニルホスフィン0.06部を添加し、150℃で2.5時間反応した。更にHCA 141部追加し、トリフェニルホスフィン0.14部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は301g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表1にまとめる。
【0051】
実施例8
実施例7の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 799部、ビスフェノールFの代わりにビスフェノールAを 60部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は295g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表1にまとめる。
【0052】
実施例9
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例8のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は260g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 810部、HCA 190部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は271g/eq、リン含有率は2.7%であった。結果を表2にまとめる。
【0055】
比較例2
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は251g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0056】
比較例3
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 838部、HCA 162部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は255g/eq、リン含有率は2.3%であった。結果を表2にまとめる。
【0057】
比較例4
実施例7の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の変わりにYDPN−638 804部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は306g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0058】
比較例5
実施例8の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の変わりにYDPN−638 799部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は308g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0059】
比較例6
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例9のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0060】
比較例7
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDCN−700−2 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は303g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0061】
比較例8
実施例1と同様な装置にHCA 141部とトルエン 330部を仕込み、加熱して溶解した。その後、1,4−ナフトキノン 87.5部を反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。このとき1,4−ナフトキノンとHCAのモル比は1,4−ナフトキノン/HCA=0.85であった。85℃で30分保持した後、昇温して還流温度で2時間反応を継続した。更に温度を上げ、トルエンを200部回収し、YDPN−638 771.5部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、120℃まで加熱を行った。トリフェニルホスフィンを0.23重量部添加して165℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は327g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例10〜実施例18
実施例1〜実施例9のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤としてジシアンジアミド(日本カーバイト株式会社製)を使用してエポキシ樹脂組成物を作成した。固形分での配合処方を表3に示す。配合の際にエポキシ樹脂はメチルエチルケトンに溶解して用いた。DICYはメトキシプロパノール、DMFに溶解して使用した。2E4MZはメトキシプロパノールに溶解して使用した。配合後、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールにて不揮発分50%となるように調整して、均一溶液とした。
【0064】
【表3】
【0065】
得られた樹脂ワニスをガラスクロスWEA 7628 XS13(日東紡績株式会社製 0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環炉で8分間乾燥を行い、プリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製 3EC)を重ね、130℃×15分及び170℃×20kg/cm2 ×70分間加熱、加圧を行い積層板を得た。得られた積層板の物性を表3に示す。
【0066】
比較例9〜比較例16
実施例10〜実施例18と同様に比較例1〜比較例8のリン含有エポキシ樹脂を用いて積層板を作成した。配合処方及び積層板の物性を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
特定の分子量分布を持つフェノールノボラックエポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は、リン含有率が1.7%でも難燃性が得られており(実施例12)、リン含有率を2.3%、2.5%と上げた場合(実施例10,11)残炎時間が短くなることから難燃性は良好である。一方従来型のフェノールノボラックエポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は、リン含有率2.6%(比較例1)としないと難燃性が得られず、硬化物物性も悪くなっている。リン含有率2.5%,2.3%とした比較例2、比較例3では硬化物物性は改良されるものの難燃性が得られていない。実施例6、実施例7、実施例8においてその他のエポキシ樹脂やエポキシ樹脂変性剤を用い接着性を改良することが出来るが、従来型のフェノールノボラックエポキシ樹脂を用いた比較例4、比較例5ではエポキシ樹脂変性剤を用いたところ、難燃性が非常に悪い結果であった。
【0069】
また、リン含有エポキシ樹脂の反応時間は3時間から5時間であるが、難燃性及び硬化物物性の良好な比較例8では9時間必要であり、生産性においても良好である。