特許第5911714号(P5911714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911714
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】分割方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   H01L21/78 P
   H01L21/78 Q
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-268284(P2011-268284)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-120856(P2013-120856A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
(72)【発明者】
【氏名】谷本 亮治
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212608(JP,A)
【文献】 特開2003−059865(JP,A)
【文献】 国際公開第00/030794(WO,A1)
【文献】 特開2001−077055(JP,A)
【文献】 特開2006−041261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面のうち、少なくとも分割予定ラインに対応する部分が樹脂層または金属層で形成される被加工物を前記分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、
高速回転する切削ブレードによって前記分割予定ラインに沿って分割する切削ステップと、
前記表面を露出させた状態で前記被加工物を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに保持された前記被加工物を旋削する切れ刃を有するバイト工具と、鉛直方向を回転軸として前記バイト工具を回転可能に支持するスピンドルとを備えたバイト加工手段と、前記チャックテーブルと前記バイト加工手段とを相対的に水平方向に移動させる水平方向移動手段と、を備えたバイト切削装置を用い、前記切削ステップの後に、前記切れ刃の先端が前記表面と非接触で、且つ前記切削ステップで発生した前記表面から上方側に伸びるバリの前記表面から鉛直方向における長さの半分以下に接触できる位置となる状態で、回転する前記バイト工具を前記被加工物の一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させて前記バリを除去するバリ除去ステップと、
を含むことを特徴とする分割方法。
【請求項2】
前記バリ除去ステップにおいては、前記バリの伸びる方向と対向する方向から回転する前記バイト工具を前記被加工物の一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させて前記バリを除去する請求項1に記載の分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に樹脂層または金属層を有する被加工物の分割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、被加工物の分割は、高速回転する切削ブレードを用いた切削加工によって分割予定ラインに沿って行われている。切削ブレードを用いた切削加工では、被加工物の切削領域は切削除去されるが、表面のうち、少なくとも分割予定ラインに対応する部分が金属や樹脂等の延性材料で形成されていると、切削ブレードによって形成された切削溝と被加工物の表面との境界にバリが発生する。切削加工によりバリが発生すると、短絡などの製品特性不良や外観不良が発生したり、その後の生産工程におけるピックアップ不良やボンディング不良等の悪影響を及ぼしたりするので、大きな問題となる。
【0003】
そこで、従来では、なるべく低速で切削加工を行い、発生するバリの大きさを小さくすることや、被加工物の分割後にバリを除去する分割方法などが提案されている。例えば、特許文献1では、切削ブレードにより被加工物を切削して切削溝を形成した後、逆回転させた切削ブレードを切削溝中を通過させてバリを除去することが提案されている。また、特許文献2では、被加工物を切削ブレードにより第1の方向に切削した際に、切削溝のエッジに発生したバリが第2の方向に切削する際に切削ブレードの進行方向に倣って伸びることによって交差点にバリが発生する点に着目し、第2の方向に切削した後、再度第1の方向に切削することで、交差点に発生したバリを除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−77055号公報
【特許文献2】特開2006−41261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、切削ブレードによる切削時において切削加工送り速度(切削ブレードと被加工物との水平方向における相対移動速度)が低速となるか、切削ブレードによる切削後のバリの除去に時間を要するため、1枚の被加工物の分割に要する時間が長くなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被加工物に発生したバリを除去しつつ、1枚の被加工物の分割におけるスループット向上を図ることができる分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、表面のうち、少なくとも分割予定ラインに対応する部分が樹脂層または金属層で形成される被加工物を前記分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、高速回転する切削ブレードによって前記分割予定ラインに沿って分割する切削ステップと、前記表面を露出させた状態で前記被加工物を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに保持された前記被加工物を旋削する切れ刃を有するバイト工具と、鉛直方向を回転軸として前記バイト工具を回転可能に支持するスピンドルとを備えたバイト加工手段と、前記チャックテーブルと前記バイト加工手段とを相対的に水平方向に移動させる水平方向移動手段と、を備えたバイト切削装置を用い、前記切削ステップの後に、前記切れ刃の先端が前記表面と非接触で、且つ前記切削ステップで発生した前記表面から上方側に伸びるバリの根本に接触できる位置となる状態で、回転する前記バイト工具を前記被加工物の一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させて前記バリを除去するバリ除去ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記分割方法において、前記バリ除去ステップにおいては、前記バリの伸びる方向と対向する方向から回転する前記バイト工具を前記被加工物の一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させて前記バリを除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分割方法は、切削ステップにおいて被加工物に発生したバリを、バリ除去ステップにおいてバイト切削装置により除去するので、分割ステップでバリの発生を抑制することなく、分割ステップにおける加工速度が向上することができ、バリ除去加工に要する時間も短縮することができ、被加工物に発生したバリを除去しつつ、1枚の被加工物の分割におけるスループット向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、被加工物の構成例を示す図である。
図2図2は、被加工物の要部断面図である。
図3図3は、ブレード切削装置の構成例を示す図である。
図4図4は、バイト切削装置の構成例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る分割方法のフロー図である。
図6図6は、切削加工状態を示す図である。
図7図7は、切削加工前の被加工物を示す図である。
図8図8は、第1分割工程後の被加工物を示す図である。
図9図9は、第2分割工程後の被加工物を示す図である。
図10図10は、バリ除去工程後の被加工物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、被加工物の構成例を示す図である。図2は、被加工物の要部断面図である。図3は、ブレード切削装置の構成例を示す図である。図4は、バイト切削装置の構成例を示す図である。なお、図2は、図1に示す被加工物Wを軸方向(鉛直方向)を含み、かつ分割予定ラインに沿った平面における一部断面図である。
【0013】
本実施形態に係る分割方法は、切削ブレードを有するブレード切削装置により被加工物を分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、バイトを有するバイト切削装置により分割工程により被加工物の表面に発生したバリを除去するバリ除去工程とを含んでいる。
【0014】
図1および図2に示すように、被加工物Wは、ブレード切削装置により分割される対象であるとともに、バイト切削装置によるバリ除去の対象である。被加工物Wは、本実施形態では、複数のチップCが形成されたベース層w1と、延性材料である樹脂から構成される樹脂層w2とを積層することで構成されている。つまり、被加工物Wの表面は、樹脂で形成されている。ベース層w1は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材として、複数のチップCが格子状に形成された半導体ウエーハである。ここで、隣り合うチップCの方向は、第1方向D1と第1方向D1と直交する第2方向D2がある。分割予定ラインは、隣り合うチップCの間に複数存在するものであり、本実施形態では、図1に示す矢印および図2に示す2点鎖線のように、第1方向D1と平行な複数の第1分割予定ラインd1と、第2方向D2と平行な複数の第2分割予定ラインd2とが存在する。樹脂層w2は、保護・補強用フィルムをベース層w1の表面に貼着したものであり、被加工物Wの表面のうち、各分割予定ラインd1,d2に対応する部分が樹脂層w2で形成されることとなる。被加工物Wは、表面と反対側の裏面がダイシングテープTに貼着され、被加工物Wに貼着されたダイシングテープTがフレームFに貼着されることで、フレームFに固定される。
【0015】
ブレード切削装置100は、図3に示すように、被加工物Wを保持したチャックテーブル110と、切削ブレード121を有するブレード加工手段120とを相対移動させることで、被加工物Wを各分割予定ラインd1,d2に沿って切削し、各チップCに分割する切削加工を行うものである。ブレード切削装置100は、チャックテーブル110と、ブレード加工手段120と、図示しないX軸移動手段と、Y軸移動手段130と、Z軸移動手段140と、制御装置150とを含んで構成されている。
【0016】
チャックテーブル110は、被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル110は、表面に載置された被加工物Wを吸引することで、被加工物Wの表面を露出させた状態で保持するものである。なお、チャックテーブル110は、テーブル移動基台101に着脱可能に固定されている。また、チャックテーブル110の周囲には、クランプ部111が設けられており、クランプ部111がエアーアクチュエータにより駆動することで、被加工物Wの周囲のフレームFを挟持する。
【0017】
ブレード加工手段120は、チャックテーブル110に保持された被加工物Wに対して切削加工を行うものである。ブレード加工手段120は、切削ブレード121と、スピンドル122、ハウジング123とを含んで構成されている。切削ブレード121は、略リング形状を有する極薄の切削砥石であり、高速回転することで被加工物Wに切削加工を施すものである。切削ブレード121は、スピンドル122に着脱自在に装着される。スピンドル122は、円筒形状のハウジング123に回転自在に支持され、ハウジング123に連結されている図示しないブレード駆動源に連結されている。切削ブレード121は、ブレード駆動源により発生した回転力により高速回転(数千〜数万rpm)する。
【0018】
X軸移動手段は、切削ブレード121に対してチャックテーブル110に保持された被加工物Wをブレード切削装置100におけるX軸方向に相対移動させるものである。X軸移動手段は、図示しないX軸パルスモータにより発生した回転力により、テーブル移動基台101を図示しないX軸ガイドレールによりガイドしつつ、装置本体102に対してX軸方向に移動させる。ここで、テーブル移動基台101は、テーブル移動基台101の中心軸線を中心とするブレード切削装置100におけるθ方向に回転自在に支持されている。テーブル移動基台101は、図示しない基台駆動源に連結されており、基台駆動源が発生した回転力により、θ方向に任意の角度、例えば90度回転や連続回転することができ、チャックテーブル110に保持された被加工物Wを切削ブレード121に対してテーブル移動基台101の中心軸線を中心に任意の角度回転や連続回転などの回転駆動させることができる。
【0019】
Y軸移動手段130は、チャックテーブル110に保持された被加工物Wに対して切削ブレード121をブレード切削装置100におけるY軸方向に相対移動させるものである。Y軸移動手段130は、図示しないY軸パルスモータにより発生した回転力により、ブレード加工手段120を図示しないY軸ガイドレールによりガイドしつつ、装置本体102に対してY軸方向に移動させる。
【0020】
Z軸移動手段140は、チャックテーブル110に保持された被加工物Wに対して切削ブレード121をブレード切削装置100におけるZ軸方向に相対移動させるものである。Z軸移動手段140は、図示しないZ軸パルスモータにより発生した回転力により、ブレード加工手段120を図示しないZ軸ガイドレールによりガイドしつつ、装置本体102に対してZ軸方向に移動させる。
【0021】
制御装置150は、ブレード切削装置100を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置150は、切削ブレード121を高速回転させ、チャックテーブル110と切削ブレード121とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θ方向において相対移動させることで、被加工物Wに対する切削加工をブレード加工手段120に行わせるものである。なお、制御装置150は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、ブレード切削装置100の加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0022】
バイト切削装置200は、図4に示すように、被加工物Wを保持したチャックテーブル210と、切り刃223を有するバイト工具221とを相対移動させることで、ブレード切削装置100による切削加工後の被加工物Wの表面に発生したバリを除去するバリ除去加工を行うものである。バイト切削装置200は、チャックテーブル210と、バイト加工手段220と、図示しないY軸移動手段と、Z軸移動手段230と、制御装置240とを含んで構成されている。
【0023】
チャックテーブル210は、切削加工後の被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル210は、表面に載置された被加工物Wを吸引することで、被加工物Wの表面を露出させた状態で保持するものである。なお、チャックテーブル210は、テーブル移動基台201に着脱可能に固定されている。また、チャックテーブル210の周囲には、図示しないクランプ部が設けられており、クランプ部がエアーアクチュエータにより駆動することで、被加工物Wの周囲のフレームFを挟持する。
【0024】
バイト加工手段220は、チャックテーブル210に保持された被加工物Wを旋削することで、被加工物Wの表面のバリを除去するものである。バイト加工手段220は、バイト工具221と、スピンドル222とを含んで構成されている。バイト工具221は、円盤形状であり、被加工物Wと対向する側に切り刃(バイト)223が回転方向に垂直に取り付けられている。バイト工具221は、回転することで、被加工物Wを旋削、本実施形態では切り刃223を被加工物Wの表面に発生したバリと接触させ、バリを切り刃223によりカットし、除去するものである。バイト工具221は、スピンドル222に着脱自在に装着される。スピンドル222は、鉛直方向を回転軸として円筒形状のハウジング224に回転自在に支持されることで、鉛直方向を回転軸としてバイト工具221を回転可能に支持するものであり、ハウジング224に配設されているサーボモータ225に連結されている。バイト工具221は、サーボモータ225により発生した回転力により回転駆動する。なお、バイト工具221の外径(切り刃223によりバリ除去加工ができる領域の外径)は、チャックテーブル210に保持される被加工物Wの外径以上に設定されている。
【0025】
Y軸移動手段は、チャックテーブル210とバイト加工手段220とを相対的に水平方向に移動させる水平方向移動手段であり、バイト工具221に対してチャックテーブル210に保持された被加工物Wをバイト切削装置200におけるY軸方向に相対移動させるものである。Y軸移動手段は、図示しないY軸パルスモータにより発生した回転力により、テーブル移動基台201を図示しないY軸ガイドレールによりガイドしつつ、装置本体202に対してY軸方向に移動させる。ここで、テーブル移動基台201は、テーブル移動基台201の中心軸線を中心とするバイト切削装置200におけるθ方向に回転自在に支持されている。テーブル移動基台201は、図示しない基台駆動源に連結されており、基台駆動源が発生した回転力により、θ方向に任意の角度、例えば90度回転や連続回転することができ、チャックテーブル210に保持された被加工物Wをバイト加工手段220に対してテーブル移動基台201の中心軸線を中心に任意の角度回転や連続回転などの回転駆動させることができる。
【0026】
Z軸移動手段230は、チャックテーブル210に保持された被加工物Wに対してバイト工具221をバイト切削装置200におけるZ軸方向に相対移動させるものである。Z軸移動手段230は、図示しないZ軸パルスモータにより発生した回転力により、バイト加工手段220を図示しないZ軸ガイドレールによりガイドしつつ、装置本体202に対してZ軸方向に移動させる。
【0027】
制御装置240は、バイト切削装置200を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置240は、バイト工具221を回転させ、チャックテーブル210とバイト工具221とをY軸方向、Z軸方向、θ方向において相対移動させるもので、被加工物Wに対するバリ除去加工をバイト加工手段220に行わせるものである。なお、制御装置240は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、バイト切削装置200の加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る分割方法について説明する。図5は、本実施形態に係る分割方法のフロー図である。図6は、切削加工状態を示す図である。図7は、切削加工前の被加工物を示す図である。図8は、第1分割工程後の被加工物を示す図である。図9は、第2分割工程後の被加工物を示す図である。図10は、バリ除去工程後の被加工物を示す図である。
【0029】
まず、図5に示すように、第1分割工程を実行する(ステップST1)。ここでは、ブレード切削装置100により、第1分割予定ラインd1に沿って被加工物Wを切削加工する。具体的には、オペレータがブレード切削装置100に、加工内容情報を登録し、チャックテーブル110に被加工物Wを保持させ、切削加工動作の開始指示があった場合に、切削加工動作を開始する。切削加工動作において、制御装置150は、図示しない撮像手段が撮像した画像に基づいてアライメント調整を行い、保持された被加工物Wのブレード加工手段120に対する相対位置を調整される。次に、制御装置150は、撮像位置の被加工物Wを保持したチャックテーブル110を加工位置(被加工物Wの外周近傍)までX軸方向に移動し、加工内容情報に基づいて、被加工物Wの切削加工を開始する。制御装置150は、図6に示すように、切削ブレード121をR1方向に高速回転させるとともに、切削ブレード121をZ軸方向において被加工物Wを第1分割予定ラインd1に沿って分割できる位置に移動させ、X軸方向と平行である加工送り方向L1(第1方向D1と平行)に被加工物Wを移動させる。これにより、ブレード切削装置100は、図7に示す切削加工前の被加工物Wにおけるすべての第1分割予定ラインd1に沿って、被加工物Wを高速回転する切削ブレード121により切削、すなわち1チャンネル分切削加工する。被加工物Wは、図8に示すように、第1分割予定ラインd1に沿って被加工物Wを切削したことで、各第1分割予定ラインd1に沿った第1切削溝w3が形成される。ここで、被加工物Wの表面のうち、第1分割予定ラインd1に対応する部分が樹脂で形成されているため、表面と第1切削溝w3との境界にバリw5が発生する。バリw5は、少なくとも上方側に伸び、その伸びる方向は切削ブレード121の回転方向と、加工送り方向、バリを発生させる被加工物Wの表面の材質によって変化する。本実施形態では、バリw5は、図6に示すように、上方側で、加工送り方向L1に伸びる、すなわちバリw5の先端が根本に対して、加工送り方向L1に位置するように発生するものとする。
【0030】
次に、図5に示すように、第2分割工程を実行する(ステップST2)。ここでは、ブレード切削装置100により、第2分割予定ラインd2に沿って被加工物Wを切削加工する。具体的には、上記ステップ1とほぼ同様であり、図6に示すように、制御装置150は、切削ブレード121をR1方向に高速回転させるとともに、切削ブレード121をZ軸方向において被加工物Wを第2分割予定ラインd2に沿って分割できる位置に移動させ、X軸方向と平行である加工送り方向L2(第2方向D2と平行)に被加工物Wを移動させる。これにより、ブレード切削装置100は、図8に示す複数の第1切削溝w3が形成された被加工物Wにおけるすべての第2分割予定ラインd2に沿って、被加工物Wを高速回転する切削ブレード121により切削、すなわち1チャンネル分切削加工する。被加工物Wは、図9に示すように、第2分割予定ラインに沿って被加工物Wを切削したことで、各第2分割予定ラインd2に沿った第1切削溝w3と直交する第2切削溝w4が形成される。ここで、被加工物Wの表面のうち、第2分割予定ラインd2に対応する部分が樹脂で形成されているため、表面と第2切削溝w4との境界にバリw6が発生する。バリw6は、図6に示すように、上方側で、かつ加工送り方向L2に伸びる、すなわちバリw6の先端が根本に対して、加工送り方向L2に位置するように発生するものとする。つまり、バリw5、w6は、図9に示すように、各切削溝w3、w4に沿ってそれぞれ発生する。
【0031】
次に、図5に示すように、バリ除去工程を実行する(ステップST3)。ここでは、バイト切削装置200により、各切削溝w3、w4にそれぞれ対応するバリw5、w6を除去する。具体的には、オペレータがバイト切削装置200に、加工内容情報を登録し、チャックテーブル210にブレード切削装置100による第1、第2分割予定ライン切削加工後の被加工物Wを保持させ、加工動作の開始指示があった場合に、バリ除去加工動作を開始する。バリ除去加工動作において、制御装置240は、被加工物Wを保持したチャックテーブル210を加工位置(被加工物Wの外周近傍)までY軸方向に移動し、加工内容情報に基づいて、被加工物Wのバリ除去加工を開始する。制御装置240は、図9に示すように、バイト工具221をR2方向に回転させるとともに、切り刃223の先端が被加工物Wの表面と非接触で、バリw5の根本に接触できる位置(図6参照)となるようにバイト工具221をZ軸方向に移動させ、被加工物Wの一端から他端に渡って水平方向、本実施形態ではY軸方向と平行である加工送り方向L3に被加工物Wを相対的に移動させる。ここで、本実施形態では、加工送り方向L3は、各切削溝w3、w4に対して45度傾けた方向のうち、バリw5、w6の伸びる方向と対向する方向とする。これにより、バイト切削装置200は、図10に示すように、各切削溝w3、w4に沿って発生しているすべてのバリw5、w6を回転するバイト工具221の切り刃223により根本からカット、すなわち除去する。バイト工具221の外径が被加工物Wの外径以上に設定されているので、被加工物Wを1回加工送りすることで、第1分割工程および第2分割工程で発生したすべてのバリw5、w6を除去することができる。ここで、バリw5、w6の根本とは、被加工物Wの表面からバリw5の長さ(鉛直方向における長さ)の半分以下をいい、切り刃223が被加工物Wの表面と接触しない限界の位置であることが好ましい。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る分割方法は、各分割工程において被加工物Wに発生したバリw5、w6を、バリ除去工程においてバイト切削装置200により除去するので、各分割工程でバリの発生を抑制することがないため、各分割工程における加工速度(加工送り速度)を速くすることができる。また、ブレード切削装置100を用いてバリw5、w6を除去する場合、切削ブレード121を各切削溝w3、w4に沿わせて発生したバリw5、w6を除去することとなり、切削溝w3、w4の数に応じてバリ除去加工の時間が長くなるが、本実施形態に係る分割方法では、切削溝w3、w4の本数にかかわらず、バイト切削装置200により1回でまとめてバリw5、w6を除去するので、ブレード切削装置100を用いてバリw5、w6を除去する場合と比較して、バリ除去加工に要する時間を短縮することができる。従って、本実施形態に係る分割方法によれば、被加工物Wに発生したバリを除去しつつ、1枚の被加工物の分割におけるスループット向上を図ることができる。
【0033】
なお、上記実施形態において、バリ除去工程においては、バリw5、w6の伸びる方向と対向する方向から回転するバイト工具221を被加工物Wの一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させる事が好ましい。バリ除去工程では、第1分割工程により発生したバリw5が加工送り方向L1に伸びるので、加工送り方向L3を加工送り方向L1と同一方向にすることが好ましく、第2分割工程により発生したバリw6が加工送り方向L2に伸びるので、加工送り方向L4を加工送り方向L2と同一方向にすることが好ましい。バリw5、w6の伸びる方向と同一方向から回転するバイト工具221を被加工物Wと相対移動させる場合と比較し、切り刃223に対してバリw5、w6が逃げにくくなり、バリw5、w6を確実に除去することができる。従って、これを実現するために、例えば、まず、回転するバイト工具221を加工送り方向L1と同一方向の加工送り方向L3で被加工物Wの一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させることで、切削溝w3のバリw5を積極的に除去し、移動後チャックテーブル210を回転するバイト工具221の送り方向Lwが加工送り方向L2と同一方向となるように回転させ、バイト工具221が加工位置に戻る際に、回転するバイト工具221を加工送り方向L2と同一方向の加工送り方向L3で被加工物Wの一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させることで、切削溝w4のバリw6を積極的に除去してもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、第1分割工程および第2分割工程後にバリ除去工程を実行したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各分割工程の後にバリ除去工程を実行しても良い。この場合は、第1分割工程後のバリ除去工程ではバイト工具221の加工送り方向L3を加工送り方向L1と同一方向とし、第2分割工程後のバリ除去工程ではバイト工具221の加工送り方向L3を加工送り方向L2と同一方向とする。これにより、各バリ除去工程において、バリw5、w6の伸びる方向と対向する方向から回転するバイト工具221を被加工物Wの一端から他端に渡って相対的に水平方向に移動させる事ができ、バリw5、w6を確実に除去することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、被加工物Wとして、樹脂層付き半導体ウエーハとしたが本発明はこれに限定されるものではない。被加工物Wは、表面に延性材料で形成される樹脂層や金属層が形成されているものであればよく、ベース層w1と、延性材料である金属(例えば、銅など)から構成される金属層w2とを積層することで構成されている金属層付き半導体ウエーハや、樹脂からなるDAF(Die Attach Film)、ヒートシンク等に用いられる銅タングステン板やコーバル板、QFN(Quad Flat Non-Lead Package)基板を構成する銅等の金属板や、CSP(Chip Scale Package)基板やチップLED基板を構成する樹脂基板等であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、チャックテーブル110,210による被加工物Wの保持をオペレータにより行うが、図示しない搬送手段が被加工物Wを保管するカセットエレベータから被加工物Wを搬出し、チャックテーブル110,210に被加工物Wを自動的に保持するようにしてもよい。また、ブレード切削装置100とバイト切削装置200とでの被加工物Wの受け渡しも、図示しない受け渡し手段により自動的に行ってもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 ブレード切削装置
110 チャックテーブル
120 ブレード加工手段
121 切削ブレード
130 Y軸移動手段
140 Z軸移動手段
150 制御装置
200 バイト切削装置
210 チャックテーブル
220 バイト加工手段
230 Z軸移動手段
240 制御装置
d1 第1分割予定ライン
d2 第2分割予定ライン
W 被加工物
w1 ベース層
w2 樹脂層
w3 第1切削溝
w4 第2切削溝
w5,w6 バリ
図1
図2
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