(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912170
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】反射防止コーティング組成物及びそれの方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
G03F7/11 503
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-501735(P2014-501735)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公表番号】特表2014-515121(P2014-515121A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】IB2012000632
(87)【国際公開番号】WO2012131479
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】13/075,749
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/351,681
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン・エム・ダリル
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー・ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】シャン・ジエンホゥイ
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン・サレム・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】アニャディグヴ・クレメント
【審査官】
倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−025247(JP,A)
【文献】
特開2009−014816(JP,A)
【文献】
特開2006−293207(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/077241(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/055373(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/150058(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/142546(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/120855(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/105776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11,
C08G 61/02,
C08G 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤及び架橋可能なポリマーを含む反射防止コーティング組成物であって、架橋可能なポリマーが、次の構造(1)で表される単位を含む前記組成物。
【化1】
式中、
Aは次の構造(4)を有し、Bは次の構造(2)を有し、そしてCは次の構造(3)のヒドロキシビフェニル
ジイルであり、
【化2】
【化3】
式中、R
1はC
1〜C
4アルキルであり、そしてR
2はC
1〜C
4アルキルであり
、及びArは、2〜8個の芳香族環を含む縮合芳香族部分である。
【請求項2】
Arが、置換されていないか、あるいはアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、ハロアルキル、ヒドロキシル、アミノ及びアミノアルキルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の有機構成分によって置換されていてよい、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の上記架橋可能なポリマーが、脂肪族多環式部分を含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記架橋可能なポリマーが更に次の単位(5)を含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【化4】
式中、Ar’は、2〜8個の芳香族環を含む縮合芳香族環である。
【請求項5】
縮合芳香族部分が2〜5つの芳香族環を有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
酸発生剤を更に含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤及び/または第二のポリマーを更に含む、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
固形物含有率を基準に80重量%を超える炭素含有率を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
400℃に加熱した後に固形物含有率を基準に80重量%を超える炭素含有率を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
a)請求項1〜9のいずれか一つからの反射防止コーティング組成物の第一の反射防止コーティング層を基材に供し;
b)任意に、前記第一の反射防止コーティング層の上に、少なくとも、第二の反射防止コーティング層を供し;
c)ステップa)からの第一の反射防止コーティング層またはステップa)及びb)からの第一及び少なくとも第二の反射防止コーティング層の積層物の上にフォトレジスト層をコーティングし、
d)フォトレジスト層を像様露光し、
e)フォトレジスト層を水性アルカリ性現像液で現像する、
ことを含む、微細電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
第一の反射防止コーティング層が、193nmにおいて0.05〜1.0の範囲のk値を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)が存在し、及び第二の反射防止コーティング層がケイ素を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)が存在し、及び第二の反射防止コーティング層が、193nmで0.05〜0.5の範囲のk値を有する、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
フォトレジストが、240nm〜12nmの放射線で画像形成可能である、請求項10〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
現像液が、水酸化物塩基を含む水溶液である、請求項10〜14のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年3月30日に出願されたシリアル番号13/075,749の一部継続出願である。その出願明細書の内容は全て本明細書中に掲載されたものとする。
【0002】
本発明は、ポリマーを含む吸光性ハードマスク反射防止コーティング組成物であって、前記ポリマーが、ポリマーの主鎖中に、少なくとも一つのフェニル単位、少なくとも一つのヒドロキシビフェニル単位、及び少なくとも一つの置換されたもしくは置換されていない縮合芳香族環を含む前記組成物、並びに該反射防止コーティング組成物を用いて画像を形成する方法に関する。この方法は、深紫外線及び極端紫外線(uv)領域の放射線を用いてフォトレジストに画像を形成するのに特に有用である。
【0003】
フォトレジスト組成物は、微細化された電子部品のためのマイクロリソグラフィプロセスに、例えばコンピュータチップ及び集積回路の製造において使用されている。これらのプロセスでは、一般的に、先ず、フォトレジスト組成物のフィルムの薄いコーティングが、集積回路の製造に使用されるケイ素をベースとするウェハなどの基材に施される。次いで、このコーティングされた基材はベークされ、フォトレジスト組成物中の溶剤を蒸発せしめ、そしてコーティングを基材上に定着させる。次に、コーティング及びベークされた基材表面は放射線による像様露光に付される。
【0004】
この放射線露光は、コーティングされた表面の露光された領域において化学的な変化を引き起こす。可視光線、紫外線(uv)、電子ビーム及びX線放射エネルギーが、マイクロリソグラフィプロセスに現在常用されている放射線種である。この像様露光の後、コーティングされた基材は現像剤溶液で処理されて、フォトレジストの放射線露光された領域または未露光の領域のいずれかが溶解、除去される。
【0005】
半導体デバイスは微細化される傾向にあり、このような微細化に伴う問題を解消するために、より一層短い波長の放射線に感度を示す新しいフォトレジストや、精巧なマルチレベルシステムが使用されている。
【0006】
フォトリソグラフィにおける吸光性反射防止コーティング及び下層が、高反射性基材からの光の後方反射(back reflection)の結果生ずる問題を軽減するために使用される。後方反射性の二つの主な欠点は、薄膜干渉効果と反射ノッチングである。薄膜干渉、または定在波は、フォトレジストの厚さが変化する時のフォトレジストフィルム中の全光強度の変動によって微少線幅寸法の変化を招くか、または反射及び入射露光放射線の干渉が、厚さ方向の放射線の均一性を歪める定在波効果を引き起こす恐れがある。反射ノッチングは、フォトレジストフィルム中に光を散乱させるトポグラフィ図形を含む反射性基材上でフォトレジストをパターン化した時に深刻になり、線幅変動を招き、極端なケースでは、フォトレジストが完全に失われた領域を形成する。反射性基材の上であるがフォトレジストの下にコーティングされる反射防止コーティングは、フォトレジストのリソグラフィ性能の有意な向上をもたらす。典型的には、底面反射防止コーティングを基材上に塗布し、次いでフォトレジストの層をこの反射防止コーティングの表面に塗布する。この反射防止コーティングは硬化して、反射防止コーティングとフォトレジストとの間での相互混合を防止する。このフォトレジストを像様露光及び現像する。次いで、露光された領域の反射防止コーティングを、典型的には、様々なエッチングガスを用いてドライエッチし、そうしてフォトレジストパターンが基材に転写される。新しいリソグラフィ技術では多重の反射防止層及び下層が使用されつつある。フォトレジストが十分なドライエッチング耐性を供しない場合には、ハードマスクとして働きかつ基材エッチングの間に高い耐エッチング性を示すフォトレジスト用下層または反射防止コーティングが好ましく、一つの方策は、従来から、有機系フォトレジスト層の下の層中にケイ素を取り入れることである。加えて、他の高炭素含有反射防止またはマスク層が前記ケイ素反射防止層の下に追加され、これは、画像形成プロセスのリソグラフィ性能を向上するために使用される。前記ケイ素層は、スピンコート可能か、または化学蒸着法によって堆積することができる。ケイ素は、O
2エッチングが用いられるプロセスにおいて耐エッチング性が高く、そしてケイ素反射防止層の下に高い炭素含有率を有する有機系マスク層を供することによって、非常に大きいアスペクト比を得ることができる。それで、有機高炭素マスク層は、それの上にあるフォトレジストまたはケイ素層よりもかなり厚くすることができる。有機マスク層は厚手のフィルムとして使用することができ、そして元のフォトレジストをマスクするより良好な基材エッチングを供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,691,556号
【特許文献2】米国特許第3,474,054号
【特許文献3】米国特許第4,200,729号
【特許文献4】米国特許第4,251,665号
【特許文献5】米国特許第5,187,019号
【特許文献6】米国特許第4,491,628号
【特許文献7】米国特許第5,350,660号
【特許文献8】米国特許第5,843,624号
【特許文献9】米国特許第6,866,984号
【特許文献10】米国特許第5,843,624号
【特許文献11】米国特許第6,447,980号
【特許文献12】米国特許第6,723,488号
【特許文献13】米国特許第6,790,587号
【特許文献14】米国特許第6,849,377号
【特許文献15】米国特許第6,818,258号
【特許文献16】米国特許第6,916,590号
【発明の開示】
【0008】
本発明は、高い炭素含有率を有し、かつフォトレジスト層と基材との間に複数の層のうちの一つの単一層として使用することができる、新規のスピンコート可能な有機系反射防止コーティング組成物または有機系マスク下層に関する。典型的には、該新規組成物は、本質的に耐エッチング性の反射防止コーティング層の下の層、例えばケイ素反射防止コーティングの下の層を形成するために使用することができる。炭素ハードマスク下層としても知られる該新規反射防止コーティング中の高い炭素含有率は、高いアスペクト比での高解像度画像転写を可能にする。該新規組成物は、フォトレジストの画像形成に有用であり、及び基材のエッチングにも有用である。該新規組成物は、フォトレジストから基材への良好な画像転写を可能とし、また反射を低減しかつパターン転写を増強する。更には、反射防止コーティングとそれの上にコーティングされるフィルムとの間との相互混合は実質的に起こらない。該反射防止コーティングは良好な溶液安定性も有し、そして良好なコーティング品質を持ってフィルムを形成し、後者は、リソグラフィにとって特に有利である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、架橋剤及び架橋可能なポリマーを含む反射防止コーティング組成物であって、前記架橋可能なポリマーが、構造(1)によって表される単位を含む前記組成物に関する。
【0010】
【化1】
式中、Aは縮合芳香族環であり、Bは構造(2)を有し、そしてCは、構造(3)のヒドロキシビフェニルである。
【0011】
【化2】
式中、R
1はC
1〜C
4アルキルであり、そしてR
2はC
1〜C
4アルキルである。
【0012】
本発明は更に、前記組成物を用いて画像を形成する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、像形成プロセスを例示するものである。
【0014】
[発明の詳細な説明]
本発明は、架橋剤、及び前記架橋剤と架橋できる架橋可能なポリマーを含む、吸光性反射防止コーティング組成物に関し、前記ポリマーは、フェニル基を有する少なくとも一つの単位をポリマーの主鎖中に、少なくとも一つの縮合芳香族単位をポリマーの主鎖中に、及び少なくとも一つのヒドロキシビフェニル単位を含む。また本発明は、該新規反射防止コーティング層の上にコーティングされたフォトレジスト層を画像形成する方法にも関する。
【0015】
本発明の新規反射防止組成物は、架橋可能な高炭素含有新規ポリマーを含み、そうして架橋後に該組成物から形成されたコーティングは、それの上にコーティングされた材料の溶剤中に不溶性になる。該新規コーティング組成物は自己架橋可能であるか、または該ポリマーと架橋することができる架橋性化合物を追加的に含んでよい。該組成物は、追加的に、他の添加剤、例えば有機酸、エステル、熱酸発生剤、光酸発生剤、界面活性剤、他の高炭素含有ポリマーなどを含んでいてもよい。該組成物は、追加的なポリマー、特に高炭素含有率を有するポリマーを含んでいてもよい。該新規組成物の固形成分は、一種または二種以上の有機溶剤を含む有機系コーティング溶剤組成物中に溶解される。該新規ポリマーは、有機系コーティング溶剤(複数種可)中に可溶性である。
【0016】
該新規組成物のポリマーは、縮合芳香族部分の少なくとも一つの単位、ポリマーの主鎖中のフェニル部分を有する少なくとも一つの単位、及び少なくとも一つのヒドロキシビフェニル単位を含む。該ポリマーは、次の構造1によって表すことができる。
【0017】
【化3】
式中、Aは、縮合芳香族環部分であり、Bは、次の構造(2)を有し、そしてCのヒドロキシフェニル単位は次の構造(3)によって表される。
【0018】
【化4】
式中、R
1はC
1〜C
4アルキルであり、そしてR
2はC
1〜C
4アルキルである。前記縮合芳香族単位であるAは、次の構造(4)によって表すことができる。
【0019】
【化5】
縮合芳香族部分は、互いに縮合した二つまたはそれ超の芳香族単位を含む。縮合芳香族部分は、2〜8個の芳香族単位を含んでよいか、または2〜6個の芳香族環を含んでよいか、または3〜5個の芳香族環を含んでよいか、または3〜4個の芳香族環を含んでよい。縮合芳香族環は3個の芳香族環を含んでよい。縮合芳香族環は、ナフチレン、アントラセン、ピレンなどであることができる。縮合芳香族環はアントラシルであってよい。該ポリマーは、更に、追加の単位Dを含んでよく、これは、それの芳香族部分のみを介して結合してポリマーの主鎖を形成する次の構造(5)の縮合芳香族単位である。
【0020】
【化6】
Ar’は、2〜8個の縮合した芳香族環を含んでよい。
【0021】
該新規ポリマーは、メチレン基を有する縮合芳香族基を含むモノマー(I)、二つの結合したビニル基を有するフェニル部分を含むモノマー(II)、及びヒドロキシビフェニル部分を有するモノマー(III)を、酸触媒の存在下に縮合反応することよって得ることができる。この反応は更に縮合芳香族化合物(IV)を含んでもよい。一例として、モノマー(II)はジビニルベンゼンであってよく;化合物(I)はアントラセンメタノール、例えば9−アントラセンメタノールであってよく;化合物(III)は2−フェニルフェノールであってよく;及び化合物(IV)はナフタレン、アントラセンまたはピレンであってよい。化合物(I)は、ArCH
2Xから誘導されるものであってもよく、ここでArは縮合芳香族部分であり、そしてXは脱離基、例えばOH、Cl、I、Br、カルボキシレート、スルホネートなどであり;化合物(I)の例は、アントラセンメタノール、フェナントレンメタノール、ピレンメタノール、フルオランテンメタノール、コロネンメタノール、トリフェニレンメタノール、アントラセン−9−メタノール、アントラセンメチルメトキシなどである。縮合芳香族環は、求電子置換のための部位である反応性部位を提供する。OHで置換されたビフェニル単位は、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2−(3−ヒドロキシフェニル)フェノール、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェノール及び類似物などの化合物(III)から選択してよく、そうして少なくとも二つの部位が、求電子的攻撃に利用可能である。
【0022】
ポリマー中の縮合芳香族部分Ar’は、置換されているかもしくは置換されていない縮合芳香族環であるが、単位Aとは異なる縮合芳香族環を含む。該ポリマーの縮合芳香族環は、2〜8員の芳香族環を含むことができる。縮合芳香族部分の例は、次の構造6〜17である。
【0023】
【化7】
上記単位は構造6〜17に示すようなものであってよいが、縮合環は、芳香族構造中の任意の部位でポリマーの主鎖を形成でき、そして結合部位はポリマー内でいろいろであることができる。縮合環構造は、二点を超える結合点を有して、分枝状オリゴマーまたは分枝状ポリマーを形成することができる。該ポリマーの一つの態様では、縮合芳香族単位は、他の芳香族炭素部分または他の縮合芳香族単位に接続している。縮合芳香族単位のブロックも形成し得、そしてこれらのブロックは、飽和脂肪族炭素単位、例えばメチレンによって隔離されてよい。
【0024】
該ポリマーの縮合芳香族環は、置換されていないか、あるいは一つまたは二つ以上の有機構成分、例えばアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、及びハロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、アミノアルキル、アルコキシ、例えばメチル、アミノメチル、ブロモメチル、及びクロロメチル基によって置換されていてもよい。4つまでの置換基が存在してよい。芳香族環上の置換基は、コーティング溶剤中へのポリマーの溶解性の助力となり得る。縮合芳香族構造上の置換基の一部は硬化の間に熱分解をしてもよく、そうしてこれらは、硬化されたコーティング中には残らないで、エッチングプロセスの際に有用な高炭素含有フィルムを形成するようなものであってもよい。
【0025】
該ポリマーは、本明細書に記載の縮合芳香族構造の二種以上を含んでもよい。一つの態様では、縮合芳香族部分は置換されていない。一つの態様では、縮合芳香族部分はヒドロキシまたはアルコキシ基を含まない。他の態様では、Aの縮合芳香族部分及びBのフェニル基は置換されていない、すなわち水素のみで置換されている。他の態様の一つでは、Aはアントラセンメチレンであり、Bはメチレンベンゼンメチレンであり、そしてCはヒドロキシビフェニルである;Dは、存在する場合には、ナフチレンまたはアントラセンである。
【0026】
該新規ポリマーは、次の単位を含んでよい。
【0027】
【化8】
式中、R
1は、C
1〜C
4アルキルであり、そしてR
2はC
1〜C
4アルキルである。一つの態様では、R
1及びR
2は水素またはメチルである。縮合環単位の他に、該新規反射防止コーティングのポリマーは、更に、フェニル基を含む構造(2)で示される少なくとも一つの単位Bを含む。この単位Bは、二つの不飽和基を含むモノマー、例えばアルキル置換されたもしくは置換されていないジビニルベンゼンから誘導してよい。該ポリマーは、−(A)−、−(B)−及び−(C)−の単位を含み、ここでAは上述の任意の縮合芳香族単位であり、該単位は線状または分枝状で、置換されていてもまたは置換されていなくともよく、Bは、構造2に示されるような、飽和炭素を介してAに接続したフェニル基であり、そしてCはヒドロキシビフェニル単位である。
【0028】
一つの態様では、3つまたはそれ未満の縮合芳香族モノマーを有するものと比べて炭素に対する水素の量が少ない、4つまたはそれ超の縮合芳香族環を有する縮合芳香族モノマー、例えばピレンまたはより高級のものが、本発明のポリマーに使用した特に有利である。というのも、これらは、該ポリマーの炭素含有率を高めることができ、またそれらの水素含有率を低めることもでき、その結果、向上した耐プラズマエッチング性を備えたポリマーが得られるからである。追加的に、これらの新規ポリマーへのピレンの導入は、図らずしも、これらのポリマーが比較的低いベーク温度で酸化されることを可能とし、それ故、水素含有率を更に減らし、その結果、この材料中にエッチングされたパターンが、フッ素化化合物(例えばCF
4、HF及び類似物)を含むプラズマ中で膨潤(パターン歪み)する傾向を低める。理論により束縛されるものではないが、歪みは、恐らくは、水素の比較的小さい原子が、フッ素の比較的大きい原子に置き換えられることに起因するのであろう。
【0029】
以下の式は、高炭素で低水素のモノマーであるピレンを使用した時の本発明のポリマーの生成を示す。
【0030】
【化9】
アリールまたは芳香族基は6〜24個の炭素原子を含み、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アントラシル、ビフェニル類、ビス−フェニル類、トリス−フェニル類及び類似物などが挙げられる。これらのアリール基は、更に、適当な置換基の任意のもの、例えば上述したアルキル、アルコキシ、アシルまたはアリール基で置換されていてもよい。同様に、望ましい場合には、適当な多価のアリール基も本発明に使用し得る。二価のアリール基の典型例には、フェニレン類、キシリレン類、ナフチレン類、ビフェニレン類、及び類似物などが挙げられる。アルコキシは、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを意味し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノナニルオキシ、デカニルオキシ、4−メチルヘキシルオキシ、2−プロピルヘプチルオキシ、及び2−エチルオクチルオキシなどが挙げられる。アラルキルは、置換基が結合したアリール基を意味する。これらの置換基は、アルキル、アルコキシ、アシルなど任意のものであることができる。炭素原子数7〜24の一価アラルキルの例には、フェニルメチル、フェニルエチル、ジフェニルメチル、1,1−もしくは1,2−ジフェニルエチル、1,1−、1,2−、2,2−もしくは1,3−ジフェニルプロピル、及び類似物などが挙げられる。望ましい価数を有する本明細書に記載のような置換されたアラルキル基の適当な組み合わせも、多価アラルキル基として使用し得る。
【0031】
一つの態様では、該新規ポリマーは、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニルなどといった脂肪環式もしくは多環式基のいずれも含まない。他の態様の一つでは、該新規ポリマーは、単位Cに存在するもの以外では、脂肪環式もしくは多環式基、ヒドロキシまたはアルコキシ基のいずれも含まない。一つの態様では、組成物中に存在するポリマーのいずれも、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニルなどといった脂肪族多環式基を含まない。
【0032】
本発明の新規組成物のポリマーは、a)求電子置換をすることができ、そうしてポリマーの主鎖を形成することができる二つまたはそれ超の縮合芳香族環を含む少なくとも一つの芳香族化合物を、b)カルボカチオンを形成することができる二つの活性部位を有する少なくとも一つの芳香族単位、及びc)少なくとも一つのヒドロキシビフェニル化合物を、酸触媒の存在下に反応させることによって合成し得る。前記芳香族化合物は、所望の芳香族単位を供するモノマー、より具体的には上記の構造または等価物より選択することができる。追加的な縮合芳香族モノマーを反応混合物に加えてもよく、そしてこれは、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオランテン、コロネン、トリフェニレンなどの化合物から選択してよい。前記縮合芳香族環は、求電子置換のための部位である少なくとも二つの反応性部位を提供する。
【0033】
該新規ポリマー中で単位Bを形成するのに使用されるモノマーは、酸の存在下にカルボカチオンを形成することができる二つの反応性部位を有するフェニルを含み、そしてこれは、ジビニルベンゼンなどの化合物から選択してよい。前記反応は、強酸、例えばスルホン酸類の存在下に触媒される。任意のスルホン酸類を使用でき、これの例は、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビスパーフルオロアルキルイミド、トリスパーフルオロアルキルカーバイド、または他の強非求核性酸である。反応は溶剤を用いてまたは溶剤を用いずに行うことができる。溶剤が使用される時は、固形成分を溶解できる任意の溶剤を使用してよく、就中、強酸に対して非反応性の溶剤が使用でき;クロロホルム、ビス(2−メトキシエチルエーテル)、ニトロベンゼン、メチレンクロライド、及びトリグライム、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などの溶剤を使用し得る。反応は、ポリマーが生成するまで、適当な長さの時間、適当な温度で混合してよい。反応時間は約3時間〜約24時間の範囲であることができ、そして反応温度は約80℃〜約180℃の範囲であり得る。ポリマーは、析出及び洗浄を介して適当な溶剤、例えばメタノール、ヘキサン、ヘプタン中に単離、精製される。該新規ポリマーは分別して所望の分子量を有する画分を得てもよい。ポリマーは、溶剤、例えばテトラヒドロフラン(THF)中に溶解され;アルカンなどの非溶剤が溶液に加えられ;そして析出物が生成し、これを濾過する。分別化プロセスは、室温で行うことができる。ポリマーは更に精製してもよい。典型的には、低分子量部分は除去される。ポリマーを反応、単離及び精製する従前既知の技術を使用し得る。ポリマーの重量平均分子量は約1200〜約5,000、または約1300〜約3,000、または約1,500〜約2,600の範囲であることができる。
【0034】
該新規ポリマーにおいて、縮合芳香族環から誘導される繰り返し単位Aは25〜40モル%であることができ、繰り返し単位Bは37.5〜30モル%であることができ、そして繰り返し単位Cは37.5〜30モル%であることができる。他の態様の一つでは、繰り返し単位の全量のうち、縮合芳香族環を含む繰り返し単位Aは30〜35モル%であることができ、繰り返し単Bは32.5〜35モル%であることができ、そして繰り返し単位Cは32.5〜35モル%であることができる。
【0035】
該新規組成物のポリマーは、構造(18)に示すような構造単位を有してもよく、ここでR
1及びR
2は上述した通りである。このようなポリマーにおいて、縮合芳香族環から誘導される繰り返し単位A及びDの総量は、この総量の25〜40モル%であることができ、モノマーDは総量の15%までを占めることができる。残りの単位のうち、繰り返し単位Aは、繰り返し単位総量の37.5〜30モル%であるのがよく、そして繰り返し単位は、37.6〜30モル%であるのがよい。より好ましくは、縮合芳香族環を含む繰り返し単位B及びDは、この総量の30〜35モル%であることができ、モノマーDは、総量の15%までを占めることができる。繰り返し単位Aは、繰り返し単位の総量の32.5〜35%であるのがよく、そして繰り返し単位Cは32.5〜35%であるのがよい。
【0036】
【化10】
該ポリマーの複素屈折率であるn(屈折率)及びk(吸収)は、使用した露光波長、例えば193nmにおいて、屈折率が約1.3〜約2.0の範囲であることができ、そして吸収が約0.04〜約1.0であることができ、ここで、これらのパラメーターはエリプソメータから得ることができる。該ポリマーまたは組成物の炭素含有率は、固形組成物の元素分析によって決定される。該組成物またはポリマーの炭素含有率は、基材上にコーティングを形成しそしてフィルムを乾燥した後に測定することができる。本発明の新規ポリマーは、400℃ベークの後でも高い炭素含有率を保持し、すなわち、架橋後の該ポリマーまたは組成物の炭素含有率は、元素分析で測定して80重量%超、または85重量%超、または90重量%超である。固形コーティングまたは乾燥ポリマーについて元素分析を行うことにより、炭素含有率が重量%として与えられる。架橋後の該ポリマーまたは組成物の炭素含有率は、元素分析で測定して80重量%超、または85重量%超、または90重量%超である。一つの態様では、架橋後の該ポリマーの炭素含有率は、80〜95重量%の範囲である。
【0037】
本発明の新規組成物は上記ポリマーを含み、そして更に架橋剤を含んでもよい。典型的には、架橋剤は、求電子剤として機能することができそして単独でまたは酸の存在下にカルボカチオンを形成することができる化合物である。それで、アルコール、エーテル、エステル、オレフィン、メトキシメチルアミノ、メトキシメチルフェニル、及び複数の官能性基を含む他の分子などの基を含む化合物が、該ポリマーと架橋することが可能である。ポリマー性架橋剤、例えば米国特許第7,691,556号(特許文献1)に記載のようなグリコールウリル、メラミンなどのポリマーを使用し得る。架橋剤となり得る化合物の例は、1,3アダマンタンジオール、1,3,5アダマンタントリオール、多官能性反応性ベンジル系化合物、構造(18)のテトラメトキシメチル−ビスフェノール(TMOM−BP)、アミノプラスト系架橋剤、グリコールウリル類、サイメル類(Cymels)、パウダーリンク類(Powderlinks)などである。
【0038】
【化11】

前記ポリマーを含む該新規組成物は、酸発生剤、場合により及び架橋剤も含んでいてもよい。酸発生剤は、加熱時に強酸を発生することができる熱酸発生剤であることができる。本発明に使用される熱酸発生剤(TAG)は、該ポリマーと反応することができそして本発明に存在するポリマーの架橋を伝播できる酸を加熱時に発生する任意の一種または二種以上であってよく、特に好ましいものは、スルホン酸類などの強酸である。好ましくは、熱酸発生剤は90℃を超える温度で、より好ましくは120℃を超える温度で、更により好ましくは150℃を超える温度で活性化される。熱酸発生剤の例は、金属不含スルホニウム塩及びヨードニウム塩、例えば、強非求核性酸のトリアリールスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、及びジアリールアルキルスルホニウム塩、強非求核性酸のアルキルアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウム塩;及び強非求核性酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、共有結合型(covalent)熱酸発生剤も有用な添加剤として想定され、例えばアルキルもしくはアリールスルホン酸の2−ニトロベンジルエステル、及び熱分解して遊離のスルホン酸類を与えるスルホン酸の他のエステルなどがある。例は、ジアリールヨードニウムパーフルオロアルキルスルホネート、ジアリールヨードニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジアリールヨードニウム第四アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例は、2−ニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、4−ニトロベンジルトシレート;ベンゼンスルホネート類、例えば2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−クロロベンゼンスルホネート、2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−ニトロベンゼンスルホネート;フェノール系スルホネートエステル、例えばフェニル,4−メトキシベンゼンスルホネート;第四アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、及び第四アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10−カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。様々な芳香族(アントラセン、ナフタレン、またはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして使用でき、例えば米国特許第3,474,054号(特許文献2)、米国特許第4,200,729号(特許文献3)、米国特許第4,251,665号(特許文献4)及び米国特許第5,187,019号(特許文献5)に記載のものなどがある。好ましくは、TAGは、170〜220℃の温度において非常に低い揮発性を有する。TAGの例は、Nacure及びCDXの名称でKing Industriesから販売されているものである。このようなTAGはNacure 5225、及びCDX−2168Eであり、後者は、King Industries,Norwalk,Conn.06852,USAから、プロピレングリコールメチルエーテル中有効成分濃度25〜30%で供給されているドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩である。
【0039】
該新規組成物は、更に、既知の光酸発生剤のうちの少なくとも一種を含んでよく、これの例は、限定はされないが、オニウム塩、スルホネート化合物、ニトロベンジルエステル、トリアジン類などである。好ましい光酸発生剤は、オニウム塩及びヒドロキシイミド類のスルホネートエステルであり、具体的にはジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジアルキルヨードニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、及びこれらの混合物である。これらの光酸発生剤は必ずしも光分解されないが、熱分解して酸を形成する。
【0040】
本発明の反射防止コーティング組成物は、組成物中の全固形物を基準に、該新規縮合芳香族ポリマーを70重量%〜約99重量%、好ましくは80重量%〜約95重量%含むことができる。該組成物中に架橋剤が使用される場合には、これは、全固形物を基準に約1重量%〜約30重量%で存在し得る。熱酸発生剤は、該反射防止コーティング組成物の全固形物を基準に約0.1〜約10重量%の範囲、好ましくは固形物の0.3〜5重量%、より好ましくは固形物の0.5〜2.5重量%の範囲で配合し得る。
【0041】
該新規組成物は更に第二のポリマーを含んでよい。この第二のポリマーは、それもまた75重量%超または80重量%超の炭素含有率を有するものであることができる。第二のポリマーは、本明細書に記載のような縮合芳香族環を含む単位A、フェニル部分B、及び二つ超の芳香族環を有する置換された縮合芳香族環から選択される第三の単位を含むことができる。前記第三の単位は、ヒドロキシ基で置換された縮合芳香族類から選択してよい。第三の単位は、ヒドロキシアントラシル部分、ヒドロキシフェニル部分、ヒドロキシナフチル部分、ヒドロキシピレニル部分、C
1〜C
4アルコキシアントラシル部分、C
1〜C
4アルキルフェニル部分、C
1〜C
4アルキルナフチル部分、C
1〜C
4アルキルピレニル部分などから選択してよい。第三の単位は、ヒドロキシフェニル、ヒドロキシナフチル、ヒドロキシフェナントリル、ヒドロキシアントラシルなどから選択してよい。第三の単位はヒドロキシナフチル基であってよい。前記第二のポリマーは、組成物の全ポリマー濃度を基準に1重量%〜20重量%、または全ポリマー濃度の1%〜10重量%の範囲で組成物に加えてよい。一つの態様では、第二のポリマーは、脂肪族環状多環基を含まない。他の態様では、第二のポリマーは、脂肪族環状多環式基を含まず、及び第三の単位はヒドロキシナフチル基である。
【0042】
一つの態様では、該新規組成物は、該新規ポリマー、ここに記載の第二のポリマー、架橋剤、熱酸発生剤、任意に界面活性剤及び溶剤(複数種可)を含む。該新規組成物の他の態様の一つは、該新規ポリマー、架橋剤、熱酸発生剤、任意に界面活性剤及び溶剤(複数種可)を含む。
【0043】
該反射防止コーティング組成物の固形成分は、該反射防止コーティングの固形成分を溶解する溶剤または溶剤混合物と混合される。該反射防止コーティング組成物に適当な溶剤には、例えば、グリコールエーテル誘導体、例えばエチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、またはジエチレングリコールジメチルエーテル;グリコールエーテルエステル誘導体、例えばエチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;カルボキシレート、例えばエチルアセテート、n−ブチルアセテート及びアミルアセテート;二塩基性酸のカルボキシレート、例えばジエチルオキシレート及びジエチルマロネート;グリコール類のジカルボキシレート、例えばエチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセテート;及びヒドロキシカルボキシレート、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル、及び3−ヒドロキシプロピオン酸エチル;ケトンエステル、例えばピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチル;アルコキシカルボン酸エステル、例えばメチル3−メトキシプロピオネート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオネート、またはメチルエトキシプロピオネート;ケトン誘導体、例えばメチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたは2−ヘプタノン;ケトンエーテル誘導体、例えばジアセトンアルコールメチルエーテル;ケトンアルコール誘導体、例えばアセトールまたはジアセトンアルコール;ラクトン類、例えばブチロールアセトン;アミド誘導体、例えばジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド、アニソール、及びこれらの混合物などが挙げられ得る。
【0044】
該反射防止コーティング組成物は、コーティングの製造を増強するために他の成分を含んでもよく、例えばモノマー性染料、低級アルコール(C
1〜C
6アルコール)、表面レベリング剤、接着促進剤、消泡剤などが挙げられる。
【0045】
該反射防止フィルムは基材の表面にコーティングされそしてドライエッチングにも付されるので、フィルムが、半導体デバイスの性質が悪影響を受けないように十分に金属イオン濃度が低く及び十分に純度が高いことも想定内である。イオン交換カラムにポリマーの溶液を通したり、濾過及び抽出プロセスなどの処理を、金属イオンの濃度を減らし及び異物(particles)を減少するために使用できる。
【0046】
該新規組成物の吸収パラメータ(k)は、エリプソメトリ測定から誘導して、露光波長において約0.05〜約1.0、好ましくは約0.1〜約0.8の範囲である。一つの態様では、該組成物は、露光波長において約0.2〜約0.5の範囲のk値を有する。該反射防止コーティングの屈折率(n)もまた最適化され、そして約1.3〜約2.0、好ましくは1.5〜約1.8の範囲であることができる。ポリマーまたは組成物のn及びk値は、J.A.Woollam WVASE VU−32
TMエリプソメータなどのエリプソメータを用いて計算することができる。k及びnの最適範囲の正確な値は、使用する露光波長及び適用のタイプに依存する。典型的には、193nmでは、好ましいkの範囲は約0.05〜約0.75であり、248nmでは、好ましいkの範囲は、約0.15〜約0.8である。該新規反射防止コーティング組成物の炭素含有率は、組成物から作った乾燥したフィルムの元素分析により測定して、80重量%超または85重量%超である。該組成物から誘導されるフィルムの炭素含有率は、該新規組成物からのフィルムが400℃までの温度に120秒間までの時間、加熱された後でも、80重量%または80重量%超のレベルに維持される。
【0047】
該反射防止コーティング組成物は、当業者には周知の技術、例えばディップコート法、スピンコート法またはスプレーコート法などを用いて基材にコーティングされる。該反射防止コーティングのフィルム厚は約15nm〜約400nmの範囲である。更に、コーティングは、ホットプレートまたは熱対流炉で、残留溶剤を除去しそして架橋を誘発して、そうして反射防止コーティングを不溶化して反射防止コーティングとその上にコーティングされる層との間の相互混合を防ぐのに十分な長さの時間で加熱される。好ましい温度範囲は約90℃〜約280℃である。
【0048】
他のタイプの反射防止コーティングを、本発明のコーティングの上にコーティングしてよい。典型的には、酸素エッチングに高い耐性のある反射防止コーティング、例えばケイ素基、例えばシロキサン、官能化シロキサン類、シルセスキオキサン類、またはエッチング速度を低下させる他の部分などを含む反射防止コーティングを使用して、そのコーティングが、パターン転写のためのハードマスクとして機能し得るようにする。ケイ素コーティングはスピンコート可能であるかまたは化学蒸着することができる。一つの態様では、基材を、本発明の新規組成物の第一のフィルムでコーティングし、そしてケイ素を含む他の反射防止コーティングの第二のコーティングを第一のフィルムの上にコーティングする。第二のコーティングは、約0.05〜0.5の範囲の吸収(k)値を有することができる。次いで、フォトレジストのフィルムを第二のコーティングの上にコーティングする。画像形成プロセスを
図1に例示する。フォトレジストのフィルムは、最上の反射防止コーティングの表面にコーティングし、そしてベークして、フォトレジスト溶剤を実質的に除去する。コーティングステップの後に、基材の縁を清掃するために当業界で周知の方法を用いてエッジビードリムーバを適用してもよい。
【0049】
反射防止コーティングが表面に形成される基材は、半導体工業において典型的に使用されるもののうちの任意のものであることができる。適当な基材としては、限定はされないが、低誘電率材料、ケイ素、金属表面でコーティングされたケイ素基材、銅被覆ケイ素ウェハ、銅、アルミニウム、ポリマー性樹脂、二酸化ケイ素、金属、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、タンタル、ポリシリコン、セラミック、アルミニウム/銅混合物;ヒ化ガリウム及び他のこのような第III/V族化合物などが挙げられる。基材は、上記の材料からできた任意の数の層を含んでよい。
【0050】
フォトレジストは半導体工業において使用される種のうちの任意のものでよいが、フォトレジスト及び反射防止コーティング中の光活性化合物が、画像形成プロセスに使用される露光波長において実質的に吸収を示すことが条件である。
【0051】
これまで、微細化に大きな進展をもたらした幾つかの主要な深紫外線(uv)露光技術があり、これらは、248nm、193nm、157nm及び13.5nmの放射線である。248nm用のフォトレジストは、典型的には、置換されたポリヒドロキシスチレン及びそれのコポリマー/オニウム塩をベースとし、例えば米国特許第4,491,628号(特許文献6)及び米国特許第5,350,660号(特許文献7)に記載のものなどがある。他方、193nm及び157nmでの露光用のフォトレジストは、芳香族類がこの波長で不透明であるため非芳香族系ポリマーを必要とする。米国特許第5,843,624号(特許文献8)及び米国特許第6,866,984号(特許文献9)は、193nm露光用に有用なフォトレジストを開示している。一般的に、脂環式炭化水素を含むポリマーは、200nm未満の露光用のフォトレジストに使用される。脂環式炭化水素は多くの理由からポリマーに組み入れられ、主には、これらが、耐エッチング性を向上させる比較的高い炭素:水素比を有し、これらはまた低波長において透明性を供し、及びこれらは比較的高いガラス転移温度を有するからである。米国特許第5,843,624号(特許文献10)は、無水マレイン酸及び不飽和環状モノマーのフリーラジカル重合によって得られるフォトレジスト用ポリマーを開示している。既知のタイプの193nmフォトレジストのいずれも使用でき、例えば米国特許第6,447,980号(特許文献11)及び米国特許第6,723,488号(特許文献12)に記載のものなどがある。なおこれらの特許文献の内容は本明細書中に掲載されたものとする。157nmで感度を示しそしてフルオロアルコール側基を有するフッ素化ポリマーをベースとする二つの基本的な部類のフォトレジストが、この波長で実質的に透明であることが知られている。一方の部類の157nmフルオロアルコールフォトレジストは、フッ素化ノルボルネン類などの基を含むポリマーから誘導され、金属触媒重合またはラジカル重合のいずれかを用いて、単独重合されるかまたは他の透明モノマー、例えばテトラフルオロエチレンと共重合される(米国特許第6,790,587号(特許文献13)及び米国特許第6,849,377号(特許文献14))。一般的に、これらの材料は高い吸光性を与えてしまうが、それらの高い脂環式類含有率の故に耐プラズマエッチング性に優れる。より最近になって、別の部類の157nmフルオロアルコールポリマーが開示され、そのポリマー主鎖は、非対称性ジエン、例えば1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンのシクロ重合から(米国特許第6,818,258号(特許文献15))、またはフルオロジエンとオレフィンとの共重合から(米国特許第6,916,590号(特許文献16))、誘導される。これらの材料は157nmで許容可能な吸光性を与えるものの、上記のフルオロ−ノルボルネンポリマーと比べて脂環式類含有率が低いために、耐プラズマエッチング性に比較的劣る。これらの二つの部類のポリマーは、第一のポリマー種の高い耐エッチング性と第二のポリマー種の157nmでの高い透明性との間のバランスを図るためにしばしばブレンドすることができる。13.5nmの極端紫外線(EUV)を吸収するフォトレジストも有用であり、当技術分野において既知である。該新規コーティングは、ナノインプリンティング及びe−ビームリソグラフィにも使用することができる。
【0052】
コーティングプロセスの後は、フォトレジストをマスクを用いて像様露光する。露光は、典型的な露光装置を用いて行うことができる。露光波長源の例は248nm及び193nmであるが、任意の源を使用してよい。次いで、露光されたフォトレジストを水性現像剤中で現像して、処理されたフォトレジストを除去する。現像剤は、好ましくは、水性アルカリ性溶液であり、これは例えばテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)を含む。現像剤の例は、0.26N水性テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)溶液である。現像剤は更に界面活性剤(複数種可)を含んでもよい。任意に加熱ステップを、現像の前及び露光の後にプロセスに組み入れることができる。
【0053】
フォトレジストのコーティング及び画像形成プロセスは当業者には周知であり、使用するフォトレジストの具体的なタイプに合わせて最適化される。次いで、パターン化された基材は、適当なエッチングチャンバ中で、エッチング用のガスまたはガス混合物でドライエッチングして、反射防止フィルムまたは反射防止コーティングの複数の層の露光された部分を除去することができ、この際、残っているフォトレジストはエッチングマスクとして働く。様々なエッチングガスが、有機反射防止コーティングをエッチングするためのものとして当業界において既知であり、例えばO
2、CF
4、CHF
3、Cl
2、HBr、SO
2、COなどを含むものがある。
【0054】
上記で言及した文献はそれぞれ全ての目的に関してその内容全てが本明細書に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び使用する方法の詳細な例示を与えるものである。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定または減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に使用しなければならない条件、パラメータまたは値を示すものとは解釈するべきではない。
【実施例】
【0055】
以下の例の炭素ハードマスク反射防止コーティングの屈折率値(n)及び吸光値(k)は、J.A.Woollam VASE32エリプソメータで測定した。
【0056】
ポリマーの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。
【0057】
例1:2−フェニルフェノール/ジビニルベンゼン/a−アントラセンメタノールのコポリマーの合成
25gのシクロペペンチルメチルエーテル(CPME)及び90gのジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGME)中に溶解した、12.76g(0.075mol)の2−フェニルフェノール、15.62g(0.075mol)の9−アントラセンメタノール、9.76(0.075mol)のジビニルベンゼンからなる溶液を調製し、そしてこの混合物を、オーバーヘッド機械的攪拌機、冷却器、サーモウォッチ、ディーンスタークトラップ及びN
2パージを備えた250mL四つ首フラスコ中で5分間攪拌した。その後、1.14gのトリフルオロメタンスルホン酸(モノマーの3重量%)を、攪拌された混合物に加え、そしてこれを更に5分間攪拌した。次いで、攪拌された混合物の温度を140℃まで高めそして3時間加熱した。反応混合物を冷却しそしてそれを250mLのCPMEで希釈した後、それを分液漏斗に移し、そして2アリコート部の脱イオン(DI)水(2×200mL)で洗浄した。ポリマーを、ヘキサン中に投入することによって析出した。ポリマーを濾過し、洗浄しそして乾燥した。ポリマーをTHF中に溶解しそしてヘキサンを用いて単離し、更にこの作業を二回行って、全てのモノマー及びオリゴマーを除去した。このプロセスは、原料から40%の完成ポリマーを生成した。ポリマーの重量平均分子量は、1,859であり、多分散性は1.40であった。
【0058】
例2:加工
例1のポリマーをPGMEA中に溶解して7重量%溶液とした。この溶液を0.2μmPTFEフィルターに通して濾過し、そしてその溶液をケイ素ウェハ上に適用しそして1,500rpmでスピンコートして、200ミクロン厚のポリマーフィルムを形成した。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好であり、目に見える欠陥はなかった。ポストアプライドベーク(PAB)の前に、このコーティングはPGMEAによるエッジビード除去(EBR)試験に合格し、PGMEA溶剤が適用された所のウェハの縁においてポリマーが綺麗に除去されていることを示した。PAB(230℃または400℃)の後、このコーティングはPGMEAによる浸漬試験に合格し、膜減りの目に見える兆候はないことが示された。異なる温度下でのPAB加工の後に、ポリマーは次の元素組成を示した。
【0059】
【表1】
250℃のPABの場合は、このポリマーコーティングは、n=1.47及びk=0.68を与えた。
【0060】
六つの追加のバッチをこの材料から作製し、そのうち一つは、10倍にスケールアップしたものであった。全てのポリマーは、例1及び2に上述したものと類似の性質を有した。PGMEA中に非常に良好な溶解性を持つ故、このポリマーは、スピンボウル中で析出する傾向を示さなかった。
【0061】
例3:2−フェニルフェノール/ジビニルベンゼン/a−アントラセンメタノールのコポリマーの合成
例1に記載したものと同じセットアップを用いて、8.50g(0.06mol)の2−フェニルフェノール、30.34g(0.15mol)の9−アントラセンメタノール、13.0g(0.10mol)のジビニルベンゼン、45gのCPME及び160gのDEGMEを使用した。例1と同様にして、この溶液を5分間攪拌した後、1.55g(モノマーの3重量%)のトリフルオロメタンスルホン酸を加え、そして反応を更に5分間攪拌した。例1と同様に、反応温度を140℃に高め、そして5時間加熱した。反応混合物を冷却しそしてこれを250mLのCPMEで希釈した後、これを分液漏斗に移し、そして2アリコート部のDI水(2×200mL)で洗浄した。次いでポリマーをヘキサン中に析出させた。次いで、ポリマーをヘキサンで洗浄し、吸引して空気乾燥し、そして最後に減圧炉中で一晩乾燥した。このプロセスは、原料から45%の完成ポリマーを生成した。ポリマーの重量平均分子量は1,727であり、多分散性は1.53であった。
【0062】
例4:加工
スピンキャスト溶液及びフィルムの調製は、例3のポリマー及びスピンキャスト溶剤としてPGMEA/シクロヘキサノン(CHN)の70/30混合物を使用したことを除き、例2に記載の通り行った。スピン作業の後に200ミクロン厚のフィルムが得られた。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好であり、目に見える欠陥は存在しなかった。ポストアプライドベーク(PAB)の前に、このコーティングはPGMEAによるEBR試験に合格し、PGMEAを適用した所のウェハの縁でポリマーが綺麗に除去されたことを示した。PAB(230℃または400℃)の後、このコーティングはPGMEAによる浸漬試験に合格し、目に見える膜減りの兆候はないことが示された。このポリマーは、PGMEA/CHNの70/30混合物中に完全に可溶性であった。異なる温度下でのPAB加工の後、このポリマーは次の元素組成を示した。
【0063】
【表2】
230℃のPABでは、このポリマーはn=1.47及びk=0.62を示した。
【0064】
例5:合成
例1に記載のものと同じセットアップを用いて、8.50g(0.06mol)の2−フェニルフェノール、17.3g(0.083mol)の9−アントラセンメタノール、8.68g(0.067mol)のジビニルベンゼン、25gのCPME及び90gのDEGMEを混合した。合成を例1の通りに繰り返した。このプロセスは、原料から45%の完成ポリマーを生成した。ポリマーの重量平均分子量は1,745であり、多分散性は1.45であった。
【0065】
例6:加工
スピンキャスト溶液及びフィルムの調製は、例5のポリマー及びスピニング溶剤としてPGMEA/CHNの90/10混合物を用いたことを除き例2と同様に行った。スピン作業の後に200ミクロン厚のフィルムが得られた。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好であり、目に見える欠陥は存在しなかった。ポストアプライドベーク(PAB)の前に、このコーティングは、PGMEAによるEBR試験に合格し、PGMEAが適用された所のウェハの縁でポリマーが綺麗に除去されたことを示した。PAB(230℃または400℃)の後、このコーティングはPGMEAによる浸漬試験に合格し、目に見える膜減りの兆候はないことを示した。ポリマーは、PGMEA/CHNの90/10混合物中に完全に可溶性であった。異なる温度下でのPAB加工の後、このポリマーは、以下の元素組成を示した。
【0066】
【表3】
250℃のPABでは、このポリマーコーティングは、n=1.47及びk=0.66を示した。
【0067】
比較例7:m−クレゾール/ジビニルベンゼン/9−アントラセンメタノールのコポリマーの合成
例1に記載のものと同じセットアップを用いて、10.8g(0.10mol)のm−クレゾール、20.8g(0.10mol)の9−アントラセンメタノール、13.0g(0.1mol)のジビニルベンゼン、32gのCPME及び115gのDEGMEを混合した。例1と同様にして、この溶液を5分間攪拌した後、1.34g(モノマーの3重量%)のトリフルオロメタンスルホン酸を加え、そして反応を更に5分間攪拌した。合成を例1の通りに繰り返した。このプロセスは、原料から40%の完成ポリマーを生成した。ポリマーの重量平均分子量は6,748であり、多分散性は1.98であった。
【0068】
比較例8:加工
スピンキャスト溶液及びフィルムの調製は、例6のポリマー及びスピニング溶剤としてのPGMEAを用いることによって例2に記載の通りに行った。200ミクロン厚のフィルムがスピン作業の後に得られた。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好でなく、目に見える多くの欠陥が存在した。PGMEA中には完全に可溶性であるものの、それの劣った成膜性の故に、このポリマーはEBR試験で評価できなかった。PAB(230℃または400℃)の後、これはPGMEAによる浸漬試験に合格し、膜減りの目に見える兆候は示されなかった。異なる温度でのPAB加工の後、このポリマーコーティングは次の元素組成を示した。
【0069】
【表4】
このポリマーのスピンコートフィルムの劣ったフィルム品質は、n及びkの測定の弊害となった。本発明の2−フェニルフェノール部分を持たず、代わりにクレゾール部分を持つ例6のポリマーは、本発明の2−フェニルフェノール部分を含む例1〜3と同じようにはうまくコーティングされなかった。また、この材料の炭素レベルは、2−フェニルフェノール繰り返し単位を含む他の例のいずれと比べてもかなり低いものであり、これは特に400℃ベーク後に顕著である。
【0070】
比較例9:[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール/ジビニルベンゼン/9−アントラセンメタノールのコポリマーの合成
例1に記載のものと同じセットアップを用いて、8.50g(0.05mol)の[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、30.34g(0.15mol)の9−アントラセンメタノール、13.0g(0.10mol)のジビニルベンゼン、45gのCPME及び160gのDEGMEを混合した。合成を例1に記載の通りに繰り返した。このプロセスは、原料から73%の完成ポリマーを生成した。このポリマーの重量平均分子量は4,731であり、多分散性は2.44であった。
【0071】
比較例10:加工
スピンキャスト溶液及びフィルムの調製は例2の通りに行ったが、例6のポリマー及びスピニング溶剤としてPGMEA/CHN70/30を使用した。スピン作業の後に200ミクロン厚のフィルムが得られた。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好であり、目に見える欠陥は存在しなかった。このコーティングはPGMEA中に完全に可溶性であり、そしてこのポリマーフィルムはPGMEAによるEBR試験に合格し、ウェハの減りに残渣がないことが示された。PAB(230℃または400℃)の後、コーティングはPGMEAによる浸漬試験に合格し、目に見える膜減りの兆候は示されなかった。異なる温度下でのPAB加工の後に、このポリマーは次の元素組成を示した。
【0072】
【表5】
このポリマーコーティングは、本発明のポリマーよりも低い炭素含有率を与え、これは特に400℃で顕著であった。
【0073】
例11:エッチング
反射防止コーティングのブランケットエッチング速度を、表1に概要を示す酸化的(酸素富化)エッチング条件及びフルオロカーボン富化エッチング条件の両方を用いてNE−5000N(ULVAC)で測定した。例2、4及び6からの調合物の約250ミクロンの厚さを有する反射防止コーティングフィルムを別々に各8インチケイ素ウェハ上にコーティングし、そして230℃で1分間ベークした。フィルムのVASE分析及び5点検査によって導出したコーシーの材料依存定数(Cauchy’s material−dependent constants)を用いたNanospec 8000での個別の膜厚測定プログラムを、20秒間のエッチングの前及び後に行った。次いで、膜厚差をエッチング時間で割ってエッチング速度を計算した。エッチング速度マスキングポテンシャルを、表2及び3のエッチング速度データに示す。このエッチング実験の結果は、両方の条件下でのエッチング速度が、加工にとって許容範囲内のものであることを示している。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
例12:ポリ[ピレン/2−フェニルフェノール/ジビニルベンゼンの合成
145.3gのジグリム及び29.33gのCPMEの混合物中に溶解した、10.11g(0.050mol)のピレン、8.51g(0.050mol)の2−フェニルフェノール、6.50g(0.050mol)のジビニルベンゼンからなる溶液を、オーバーヘッド機械的攪拌機、冷却器、サーモウォッチ、ディーンスタークトラップ及びN
2パージを備えた250ml容積四つ首丸底フラスコ中で調製した。この溶液を室温で10分間攪拌し、その後、1.36gのトリフルオロメタンスルホン酸(モノマーの3%)を加えた。
【0078】
反応混合物を室温で更に5分間攪拌し、次いでその温度を30分間の期間で150℃に高めた。攪拌された反応混合物を150℃に2時間半加熱し、合計で反応時間を3時間とした。薄層クロマトグラフィーによる監視は、生成物がこの時間後に生成したことを示した。その結果、ヒーターを止め、そして反応を室温まで放冷した。次いで、40mlのCPMEを加え、そして攪拌を5分間継続し、その後、反応混合物を脱イオン水で二度洗浄した。次いで反応混合物を1000mlのメタノール中に析出し、ポリマーを濾過し、次いで新鮮なメタノールで洗浄し、そして真空下に85℃で一晩乾燥した。乾燥したポリマーを60mlのTHF中に溶解し、そして1000mlのヘキサン中に析出した。最終の析出物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、そして真空下に85℃で一晩乾燥した。
【0079】
例12を、異なるモノマー比を用いて繰り返して、ポリマーを得た。これらの例12〜18を表4に示す。表4は、これらのポリマーの特性データ、及び異なるベーク温度及び時間後のそれらの炭素及び酸素含有率も示す。
【0080】
【表9】
【0081】
例19
304.04gのジグリム及び61.36gのCPMEの混合物中に溶解した、53.88g(0.2665mol)のピレン、8.51g(0.1333mol)の2−フェニルフェノール、22.67g(0.1424mol)のジビニルベンゼンからなる溶液を、オーバーヘッド機械的攪拌機、冷却器、サーモウォッチ、ディーンスタークトラップ及びN
2パージを備えた4つ首丸底フラスコ中で調製した。この溶液を室温で10分間攪拌し、その後、2.85gのトリフルオロメタンスルホン酸(モノマーの3%)を加えた。この反応混合物を室温で更に5分間攪拌し、次いでその温度を30分間の期間で145℃に高めた。攪拌された反応混合物を3時間145℃に加熱し、合計で反応時間を3.5時間とした。薄層クロマトグラフィーによる監視は、生成物がこの時間の後に生成したことを示した。その結果、ヒーターを止め、そして反応を室温まで放冷した。次いで、200mlのCPMEを加え、そして攪拌を5分間継続し、その後、反応混合物を脱イオン水を用いて二回洗浄した。次いで、反応混合物を1000mlのメタノール中に析出し、ポリマーを濾過し、次いで新鮮なメタノールで洗浄し、そして真空下に85℃で一晩乾燥した。乾燥したポリマーを60mlのTHF中に溶解し、そして3000mlのヘキサン中に析出した。最終の析出物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、そして真空下に85℃で一晩乾燥した。
【0082】
例20:加工
例19のポリマーを、架橋剤(TMOM−BP、ポリマーに対し10重量%)及び熱酸発生剤(DBSA/E、ポリマーに対し4重量%)と共にPGMEA/シクロヘキサノン90/10中に溶解して、7重量%溶液とした。この溶液を0.2μmPTFEフィルターに通して濾過し、そしてこの溶液をケイ素ウェハに適用しそして1,500rpmでスピンコートして、200ミクロン厚のポリマーフィルムを形成した。スピンキャスト溶剤からのこのポリマーのコーティング品質は良好であり、目に見える欠陥は存在しなかった。ポストアプライドベーク(PAB)の前に、このコーティングは、PGMEAによるエッジビード除去(EBR)試験に合格し、PGMEA溶剤が適用された所のウェハの縁でポリマーが綺麗に除去されたことが示された。350℃/60秒間でのベークの後のこのコーティング組成物は、193nmで1.4786の屈折率(n)及び193nmで0.64409の吸光(k)を与えた。PAB(230℃または400℃)の後、これらのコーティングはPGMEA溶剤による浸漬試験に合格し、目に見える膜減りの兆候は示されなかった。異なる温度でのPAB加工の後に、このポリマーは次の元素組成を示した。
【0083】
【表10】
例21:パターン転写エッチング
図1は、パターン転写エッチング後の炭素下層調合物間のエッチング性能を比較するための、パターン転写エッチングデータの生成のための一般的な手順を示すものである。各々のエッチング転写ステップのエッチング条件は表4に概要を示している。
図1に示すような多重積層物を作るために、ケイ素基材上に200nm膜厚の炭素下層をスピンコートし及び350℃/180秒間でベークし、次いでこの炭素下層の表面上に31nm膜厚のSi−BARC(S24H、AZ Electronic Materials,Somerville,NJから入手可能)をスピンコートし及び230℃/60秒間でベークした。AZフォトレジスト(AX2110P、AZ Electronic Materials,Somerville,NJから入手可能)をSi−BARC層の表面にコーティングした。スピン速度はフォトレジスト膜厚が125nmとなるように調節し、100℃/60秒間でソフトベークし、減衰位相シフトマスクを用いてNikon 0.85NA&0.82/0.43ダイポール−Y照明で露光し、次いでウェハを110℃/60秒間でポスト露光ベークし、そしてテトラメチルアンモニウム水酸化物の2.38重量%水溶液を用いて30秒間現像した。次いで、積層物を表4の条件を用いてドライエッチングし、そしてパターンを走査型電子顕微鏡SEMで観察した。
【0084】
【表11】
SEMによるパターンの分析は、パターン転写エッチングの間の下層のライン膨張によって起こるパターンの歪み(蛇行)が、この組成物ではかなり低減されたことかつ許容範囲のリソグラフィーであることを示した。パターン転写エッチングデータは、炭素下層ポリマーのエッチン性能が、組成物中にピレンを用いることで、良好な耐エッチング性及び低減されたパターン蛇行の点で向上されたことを実証した。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
架橋剤及び架橋可能なポリマーを含む反射防止コーティング組成物であって、架橋可能なポリマーが、次の構造(1)で表される単位を含む前記組成物。
【化12】
式中、Aは縮合芳香族環であり、Bは次の構造(2)を有し、そしてCは次の構造(3)のヒドロキシビフェニルであり、
【化13】
式中、R1はC1〜C4アルキルであり、そしてR2はC1〜C4アルキルであり、好ましくはR1はメチルであり、そしてR2はメチルである。
2.
Aが次の構造(4)を有する、上記1に記載の組成物。
【化14】
3.
組成物中のポリマーが、脂肪族多環式部分を含まない、上記1または2に記載の組成物。
4.
ポリマーが更に次の単位(5)を含む、上記1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【化15】
5.
縮合芳香族環が2〜5つの芳香族環、好ましくは3または4つの芳香族環を有し、より好ましくはピレンである、上記1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
6.
酸発生剤、好ましくは熱酸発生剤を更に含む、上記1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
7.
界面活性剤及び/または第二のポリマーを更に含み、前記第二のポリマーは、好ましくは、脂肪族多環式類を含まない、上記1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
8.
固形物含有率を基準に80重量%を超える炭素含有率を有する、上記1〜7のいずれか一つに記載のポリマー。
9.
400℃に加熱した後に固形物含有率を基準に80重量%を超える炭素含有率を有する、上記8に記載のポリマー。
10.
a)上記1〜9のいずれか一つからの反射防止コーティング組成物の第一の層を基材に供し;
b)任意に、前記第一の反射防止コーティング組成物層の上に、少なくとも、第二の反射防止コーティング層を供し;
b)反射防止コーティング層の上にフォトレジスト層をコーティングし、
c)フォトレジスト層を像様露光し、
d)フォトレジスト層を水性アルカリ性現像液で現像する、
ことを含む、微細電子デバイスの製造方法。
11.
第一の反射防止コーティング層が、193nmにおいて約0.05〜約1.0の範囲のk値を有する、上記10に記載の方法。
12.
第二の反射防止コーティングがケイ素を含む、上記10または11に記載の方法。
13.
第二の反射防止コーティング層が、193nmで約0.05〜約0.5の範囲のk値を有する、上記10〜12のいずれか一つに記載の方法。
14.
フォトレジストが、約240nm〜約12nmの放射線で画像形成可能である、上記10〜13のいずれか一つに記載の方法。
15.
現像液が、水酸化物塩基を含む水溶液である、上記10〜14のいずれか一つに記載の方法。