特許第5912178号(P5912178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912178
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】容器詰め千切りキャベツ
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/153 20060101AFI20160414BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20160414BHJP
【FI】
   A23B7/156
   A23L1/212 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-518115(P2014-518115)
(86)(22)【出願日】2012年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2012063683
(87)【国際公開番号】WO2013179378
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山川 真美
(72)【発明者】
【氏名】藤村 亮太郎
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−046812(JP,A)
【文献】 特開2006−061069(JP,A)
【文献】 特開2001−029055(JP,A)
【文献】 特開2009−291179(JP,A)
【文献】 特開平06−245694(JP,A)
【文献】 特開2004−041021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00
A23B 7/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
千切りキャベツが包装容器に詰められた容器詰め千切りキャベツであって、
製造後1日間温度0〜15℃で保存して包装容器から取り出した千切りキャベツの表面に付着している有機物の量が、該千切りキャベツ50gを水500mLで浸漬洗浄することにより得られる洗浄水のCODとして40ppm以下であり、
かつ該千切りキャベツの一般生菌数が1×10〜1×10CFU/gである
容器詰め千切りキャベツ
【請求項2】
製造後5日間温度0〜15℃で保存して包装容器から取り出した千切りキャベツの表面に付着している有機物の量がCODとして40ppm以下であり、
千切りキャベツの一般生菌数が1×10〜1×10CFU/gである
請求項1記載の容器詰め千切りキャベツ
【請求項3】
製造後1日間温度0〜15℃で保存した容器詰め千切りキャベツを温度35℃でさらに24時間保存し、
包装容器から取り出した千切りキャベツ表面の液体を吸水性材料に移行させ、
その移行量を測定することにより得られる千切りキャベツの離水量が、千切りキャベツ100gあたり0.1g〜3.0gである
請求項1又は2記載の容器詰め千切りキャベツ
【請求項4】
製造後15日間温度0〜15℃で保存して包装容器から取り出した千切りキャベツの一般生菌数が1×10CFU/g以下である請求項1〜3のいずれかに記載の容器詰め千切りキャベツ
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の容器詰め千切りキャベツの製造方法であって、
収穫されたキャベツ千切りし、千切りしたキャベツを包装容器へ詰めるまでの工程において、次のA〜Dの工程の少なくとも一つを行う製造方法。
A.キャベツの収穫時の切断面を殺菌する収穫時殺菌処理工程、
B.収穫したキャベツ千切りする前に殺菌液で処理するカット前殺菌処理工程、
C.収穫したキャベツ千切りするにあたり、その切断部に水を注ぎながら千切りする工程、
D.千切りしたキャベツを水晒しする水晒し処理工程
【請求項6】
少なくともA工程又はC工程を行う請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
B工程、C工程又はD工程を行った後、千切りキャベツを温度35℃で24時間保存し、
その千切りキャベツ表面の液体を吸水性材料に移行させ、
その移行量を測定することにより得られる離水量が千切りキャベツ100gあたり0.1〜3.0gとなるようにそれらの工程を行う請求項5又は6記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カットされた野菜が包装容器に詰められた容器詰めカット野菜に関する。
【背景技術】
【0002】
千切りキャベツ、千切り大根、ちぎりレタスなどのカット野菜が、袋型、カップ型、ボール型などの種々の食品包装容器に詰められて販売されている。このような容器詰めカット野菜では、雑菌の繁殖により腐敗が進行しやすいことから、店頭販売されるカット野菜については、従来、殺菌処理を徹底させることにより一般生菌数を極力低く抑制することが望ましいとされている。
【0003】
しかしながら、殺菌処理の方法によっては細胞が破壊されることにより、かえって腐敗が進行し易くなる。そのため、容器詰めカット野菜について、製造時の一般生菌数を、細胞の破壊をできる限り抑えつつ、十分に低減させる方法が検討されている。例えば、カットキャベツを次亜塩素酸ソーダ溶液で洗浄することによりアルカリ領域で1次殺菌を行い、次いで、水による洗浄と酢酸溶液による洗浄を順次行うことにより酸性領域にして次亜塩素酸を発生させ、次亜塩素酸により2次殺菌を行う方法(特許文献1)、カット野菜を亜塩素酸塩溶液で処理した後、水洗せずに水切りし、保存することにより、野菜に付着した細菌の増殖を亜塩素酸塩で抑える方法(特許文献2)、野菜を喫食用サイズにカットする前に次亜塩素酸塩水溶液で強く殺菌し、次いで野菜をカットし、亜塩素酸塩水溶液で比較的弱く殺菌する方法(特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−46812号公報
【特許文献2】特開平11−196763号公報
【特許文献3】特開2006−61069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の容器詰めカット野菜の製造時の一般生菌数は1×103/gCFU以下であり、一般的に望ましいとされる一般生菌数の上限値を十分に下回っている。しかしながら、製造後15日以降になると急激に腐敗が進行し、一般生菌数が1×10/gCFU以上になるという問題点がある。また、細菌の増加により、変色、しおれ、味の劣化、におい等の劣化が著しくなるという問題も生じる。
【0006】
そこで、本発明は、容器詰めカット野菜を0〜15℃という通常の流通保管温度において製造後15日経過した場合でも、その一般生菌数が1×106CFU/g以下であり、変色、しおれ、味の劣化、においの劣化等として認識される鮮度劣化ができる限りおこらないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、(i)カット野菜の表面に付着している有機物の量は、所定量のカット野菜を水で浸漬洗浄することにより得られる洗浄水のCODとして測定できること、(ii)このCODは、カット野菜自体の損傷の程度の指標となること、(iii)このCODを低く抑制すると、これを養分とする細菌の増殖を抑制できるので、CODはカット野菜の保存時の細菌の増減の指標ともなること、(iv)このCODと一般生菌数のより具体的な関係としては、容器詰めカット野菜の製造後1日でのCODを40ppm以下とすれば、この時点での一般生菌数が1×106CFU/g以下であると、製造後15日間は一般生菌数が殆ど増加しないこと、(iv)さらに、この製造後1日での一般生菌数1×106CFU/gという数値は、従来より製造時の一般生菌数として望ましいとされている数値を上回るが、CODの抑制により細菌の増殖が抑制されているので、製造後15日が経過しても衛生上の問題が無く、外観上も食味上も鮮度が維持され、したがって、製造後の賞味期間を大幅に延長できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、千切りキャベツが包装容器に詰められた容器詰め千切りキャベツであって、製造後1日間温度0〜15℃で保存して包装容器から取り出した千切りキャベツの表面に付着している有機物の量が、該千切りキャベツ50gを水500mLで浸漬洗浄することにより得られる洗浄水のCODとして40ppm以下であり、かつ該千切りキャベツの一般生菌数が1×10〜1×10CFU/gである容器詰め千切りキャベツを提供する。なお、本発明において、「製造後1日間」保存した千切りキャベツとは、「製造直後から12〜36時間」保存した千切りキャベツを意味する。
【0009】
特に、容器詰め千切りキャベツを製造後1日間温度0〜15℃で保存し、さらに温度35℃で24時間保存した後開封し、包装容器から取り出した千切りキャベツ表面の液体を吸水性材料に移行させ、その移行量を測定することによりえられる千切りキャベツの離水量が、千切りキャベツ100gあたり0.1g〜3.0gである容器詰め千切りキャベツを提供する。
【0010】
また、上述の千切りキャベツの製造方法として、収穫されたキャベツ千切りし、千切りしたキャベツを包装容器へ詰めるまでの一連の工程において、次のA〜Dの工程の少なくとも一つを行う製造方法を提供する。
A.キャベツの収穫時の切断面を殺菌する収穫時殺菌処理工程、
B.収穫したキャベツ千切りする前に殺菌液で処理するカット前殺菌処理工程、
C.収穫したキャベツ千切りするにあたり、その切断部に水を注ぎながら千切りする工程、
D.千切りしたキャベツを水晒しする水晒し処理工程
【発明の効果】
【0011】
本発明の容器詰め千切りキャベツは、製造後、0〜15℃という通常の流通保管温度で15日経過した場合でも、一般生菌数が1×10CFU/g以下である。さらに、CODが低く抑制されていることにより、製造後15日経過しても色、しおれ具合等の外観、食味、におい等が製造直後と殆ど変わらず、鮮度が保持されている。したがって、容器詰め千切りキャベツの保存可能期間を従前の3〜4日から15日以上に延長できる。
よって、容器詰め千切りキャベツの普及を促進し、消費者が、野菜の摂取量が多い健康的な食生活をおくることを支援することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の容器詰めカット野菜は、カットされた野菜が包装容器に詰められているものであり、製造直後(即ち、カットされた野菜が包装容器に詰められた直後)から所定期間でのカット野菜表面に付着している有機物量と、カット野菜の一般生菌数が、後述するように特定の範囲に制御されているものである。
【0013】
ここで、野菜としては、キャベツ、レタス、サラダ菜、水菜、ホウレン草等が好ましく、中でも、キャベツ、レタス等の葉野菜が、本発明の効果が大きい。
【0014】
また、野菜としては、露地野菜、ハウス野菜、無菌状態で製造される工場野菜などをあげることができ、特に、露地野菜やハウス野菜の場合に従前のカット野菜に比してカット野菜の保存可能期間が長くなり、本発明の効果が大きい。
【0015】
野菜のカットの態様としては、千切り、短冊切り、銀杏切り、拍子切り、輪切り等の刃物でカットする態様や、手による「ちぎり」などをあげることができる。大きさとしては、幅0.2〜5.0mmの千切り、又は1〜8cmの角切りとしたものが、消費者の需要に応える点、食べやすさの点で好ましい。
【0016】
包装容器としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂で製造された袋型、カップ型、ボール型などの種々の形状の食品包装容器で、カット野菜を密封できるものが好ましい。
【0017】
カット野菜は、上述の包装容器に窒素ガス等の不活性ガスと共に充填密封してもよい。容器詰めカット野菜の保管中の鮮度の劣化をさらに抑制する点からは、不活性ガスと充填密封したものが好ましい。
【0018】
本発明の容器詰めカット野菜は、製造後1日間(即ち、製造直後から12〜36時間)温度0〜15℃で保存し、包装容器から取り出した場合に、そのカット野菜の表面に付着している有機物量が、該カット野菜50gを水500mLで浸漬洗浄することにより得られる洗浄水のCOD(以下、「カット野菜のCOD」という)として、40ppm以下、好ましくは20ppm以下である。これは、カット野菜1g当たりの有機物の付着量が0〜0.0004g、好ましくは0〜0.0002gであることを意味する。
【0019】
カット野菜のCODの値は、より具体的には、カット野菜50gを水道水500mLに入れ、25℃で30秒間スターラーで撹拌することによりカット野菜を洗浄し、その洗浄液のCODを常温過マンガン酸カリウム酸化法で測定することにより得られる数値である。この測定には、市販のCOD測定キット、例えば、共立理化学研究所のパックテスト(登録商標)(型式:WAK-COD)を使用することができる。
【0020】
CODは、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand)の略であって、一般に、海域や河川での有機物質等による水質汚濁の指標として使用されており、水中の有機物質等を、通常、過マンガン酸カリウム等の酸化剤で酸化するときに消費される酸素量(mg/mL)で表したものであるが、本発明において上述のように測定するカット野菜のCODは、カット野菜の表面に付着している有機物の量の指標となる。カット野菜の表面に付着している有機物は、主に、野菜をカットしたときの切断面で破壊された細胞が漏出した細胞液に由来すると考えられるが、この他、農場で野菜を生育するときや採取するときに付着した汚染物に由来する有機物や、その汚染物で野菜が腐敗することにより生じた有機物などにも由来すると考えられる。
【0021】
これに対し、カット野菜の野菜自体(即ち、カット野菜から表面付着物を除いた部分)が過マンガン酸カリウムによって酸化されることによるCOD値への寄与は無いと考えられる。これは、上述のカット野菜のCODの測定方法に関し、測定に供するカット野菜の洗浄液を得るためのカット野菜の洗浄時間を徐々に伸ばしたときに、30秒まではCODが増加するが、30秒以降は一定となるためである。また、こうしてCODを測定するカット野菜は、何らかの洗浄工程を経てきているので、野菜の生育時や収穫時などに野菜表面に付着した有機物の多くは除去されていると考えられる。したがって、カット野菜のCODとして測定される有機物は主に野菜をカットしたときの切断面から漏出した細胞液由来の有機物であると考えられる。
【0022】
本発明の容器詰めカット野菜では、上述のように製造後1日間のカット野菜のCODが40ppm以下であり、そのカット野菜の一般生菌数が1×10〜106CFU/gであるが、同様の保存条件でさらに保存し、製造後の保存日数が5日間(即ち、製造直後から120時間±12時間)となってもカット野菜のCODは40ppm以下であり、一般生菌数は1×10〜106CFU/gの範囲にある。好ましくは製造後の保存日数が15日でも一般生菌数は1×10CFU/g以下であり、食用に適した状態を維持している。これに対し、カット野菜のCODが40ppmを超えると、そのCODに対応する有機物が細菌の増殖の養分となるので、製造後1日間保存したカット野菜の一般生菌数が105CFU/g以下であっても、15日間保存すると、一般生菌数は1×10CFU/gを超えてしまい、鮮度低下が顕著になる。
【0023】
製造後1日間のカット野菜のCODの好ましい数値は、野菜の種類やカットサイズに関わらず、40ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましい。
【0024】
なお、本発明において、CODを測定するカット野菜を、容器詰めカット野菜の製造後、温度0〜15℃で1日間保存したものとするのは、このように保存したカット野菜のCODを40ppm以下とし、一般生菌数を106CFU/g以下とすることで、製造後、温度0〜15℃で15日間保管したカット野菜の一般生菌数を1×10CFU/g以下に抑制し、カット野菜の鮮度を良好に維持することができるためである。CODや一般生菌数を、製造直後の容器詰めカット野菜について規定することも考えられるが、品質管理のし易さの点からは、製造後、温度0〜15℃で1日間保存したものとすることが好ましく、また、このように1日間保存した後のCODを限定することによっても、上述のように製造後15日間という長期の鮮度維持を図ることができる。
【0025】
製造後1日間のカット野菜のCODが40ppm以下、好ましくは20ppm以下となるようにカット野菜のCODを低減させる方法としては、野菜の収穫時の切断面を殺菌する収穫時殺菌処理を行うことが好ましい。
【0026】
収穫時殺菌処理により、保存性と変色防止が得られる理由は定かではないが、本発明者らが各種研究を行ったところ、野菜を収穫するために切断すると、その切断面から当該野菜の内部の液が滲み出てきて、その液が野菜の切断面以外の表面等に付着し、菌の増殖や、変色に影響を与えてしまうためと推察される。
【0027】
したがって、収穫時殺菌処理は、収穫後12時間以内に行うことが好ましく、より好ましくは6時間以内に行う。特に、収穫時殺菌処理を野菜の切断面が段ボール箱等の容器や他の野菜の表面等に接触する前に農場で行い、当該野菜の切断面に滲み出てくる液中に殺菌液を含有させることが非常に好ましい。
【0028】
収穫時殺菌処理する切断面の範囲としては、生育時に土壌と接していたか、又は土壌の近傍にあった部位とすることが好ましい。
【0029】
収穫時殺菌処理に使用する殺菌液としては、種々の殺菌液を使用することができ、例えば、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩の水溶液、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸塩の水溶液(有効塩素濃度:好ましくは25〜500ppm、より好ましくは50〜300ppm)、焼成カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液(pH11〜14)、オゾン水、酢酸等を挙げることができる。
【0030】
収穫時殺菌処理のより具体的な処理方法は、使用する殺菌液の種類、pH値、殺菌すべき野菜の種類や大きさ等に応じて適宜決定することができる。たとえば、切断されて収穫された野菜をザルやカゴ等にいれて殺菌液中に浸漬したり、切断されて収穫された野菜を殺菌液で洗い流したり、切断されて収穫された野菜に殺菌液を噴霧や噴射したりすることにより、当該野菜の少なくとも切断面全体を殺菌液に接触させて処理することが好ましい。
【0031】
収穫時殺菌処理を施した野菜には、容器詰めする大きさにカットする工程が必要となるところ、製造後1日間のカット野菜のCODを40ppm以下、好ましくは20ppm以下に低減するためには、野菜を容器詰めにする大きさにカットする工程において、その切断面から漏出する細胞液を直ちに除去することが好ましい。したがって、野菜の切断部に水を注ぎながら野菜をカットする処理を行うことが好ましい。
【0032】
水を注ぎながらカットする処理で使用する水としては、水道水、清水が望ましく、これらの一部又は全部に代えて、殺菌力が弱い殺菌剤の水溶液、例えば、亜塩素酸塩(好ましくはナトリウム塩)、オゾン、酢酸、エタノールなどの水溶液を使用してもよい。
【0033】
水を注ぎながらカットする処理の具体的方法としては、野菜をカットするために市販のフードスライサーを使用する場合、野菜の切断部分に水を注ぎながらカットできるように、ホースで注水したり、シャワーヘッドで注水したりすればよい。
【0034】
注水量は、野菜のカット処理を、例えば1kg/分とする場合に、好ましくは0.1L/分〜10L/分、より好ましくは0.1〜5L/分、特に好ましくは0.2〜3L/分である。注水量が少なすぎると切断された細胞から流出した有機物を野菜の表面から除去しきれず、CODを十分に抑制することが難しくなる。反対に注水量が多すぎると野菜が損傷し易くなるので好ましくない。
水の温度は0〜10℃とすることが好ましい。
【0035】
カット野菜のCODを低減させるための方法としては、これらの方法の他にも野菜に損傷を与えないように行う殺菌処理或いは洗浄処理を挙げることができ、例えば、野菜を容器詰めする大きさにカットする前に殺菌液で処理するカット前殺菌処理や、野菜を容器詰めする大きさにカットした後に水晒しする水晒し処理をあげることができる。
【0036】
即ち、野菜を容器詰めする大きさにカットするに際しては、予め皮や芯を取り除いてホール野菜とする処理、それを二等分や四等分にカットする処理、また、野菜が葉ものである場合には、芯から切り離した葉を重ねる処理などを行われるので、カット前殺菌処理としては、このような処理を施した野菜に対し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:好ましくは25〜500ppm、より好ましくは50〜300ppm)、焼成カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液(pH11〜14)等の殺菌力が強い殺菌液を使用し、浸漬処理、噴霧処理などを行う。
【0037】
野菜を容器詰めする大きさにカットした後に行う水晒し処理は、カット後の野菜を水等の液に浸漬し、洗浄ないし弱い殺菌を行う処理である。カット後に強い殺菌処理を施すと野菜に損傷が生じたりして、カット野菜のCODがかえって増加し、前述した範囲にCODを低減させ難くなるためである。カット後の野菜を浸漬する液は、上述したカット前殺菌処理に使用する殺菌液よりも殺菌力が弱い液とする。具体的には、塩素系殺菌剤を含む水道水への浸漬処理や、次亜塩素酸塩の低濃度水溶液(100ppm以下)、亜塩素酸塩水溶液(特に、ナトリウム塩の水溶液)、オゾン液、酢酸水溶液、酸性電解水又はエタノール水溶液への浸漬処理をあげることができる。また、紫外線又は超音波等を用いる浸漬処理を行ってもよい。なお、カット前殺菌処理を行なわない場合でも、野菜を容器詰めする大きさにカットした後には、カット前殺菌処理で使用する殺菌液としてあげた前述の殺菌液に対して相対的に弱い殺菌力の液を使用する。
これらの殺菌方法は、1種又は2種以上の組み合わせで行うことができる。
【0038】
一方、本発明では、製造後1日間のカット野菜の一般生菌数が1×10〜106CFU/g以下であり、同様の保存条件で製造後5日間保存しても、好ましくは15日保存しても、一般生菌数は1×10〜106CFU/gの範囲にある。ここで、一般生菌数は、食品衛生検査指針(2007年)に従い、カット野菜から採取した試料液を35℃で48時間培養したときの菌数である。
【0039】
製造後1日間のカット野菜の一般生菌数について本発明が許容する上限値106CFU/gは、従前の容器詰めカット野菜の製造時において望ましいとされている一般生菌数に比して多く、本発明では製造後1日間での一般生菌数の規制を緩和しているが、本発明の容器詰めカット野菜では、カット野菜のCODが前述のように40ppm以下であるため、容器詰めカット野菜の保存中の細菌の増殖が抑制され、製造後15日経過しても、一般生菌数が1×10CFU/g以下となる。
【0040】
また、上述の一般生菌数の上限値を、従前のように低く抑えようとすると、そのために必要とされる殺菌処理により野菜が損傷し、損傷部分から腐敗が進行したり、損傷部分以外においても、損傷部分からの離水や漏出物などにより細菌が増殖し易くなる。これに対し、一般生菌数の上限値の規制を上述のように緩和することにより、殺菌処理による野菜の損傷を抑制することができる。
【0041】
なお、製造後1日間のカット野菜の一般生菌数が106CFU/gを超えるとカット野菜のCODが40ppm以下であっても製造後15日経過後の一般生菌数を1×10CFU/g以下に抑制することができないので好ましくない。
【0042】
また、上述の一般生菌数の上限値に対応する下限値は、殺菌処理による野菜の損傷を抑制する点から1×10CFU/g以上とし、好ましくは1×10CFU/g以上とする。一般生菌数が1×10CFU/gを下回ると、そのように一般生菌数を低減させるために必要となる殺菌処理によって野菜が損傷することによりカット野菜のCODが増加し、前述のようにカット野菜のCODを低減させる処理を行っても製造後1日間のカット野菜のCODを40ppm以下にすることが困難となる。
【0043】
製造後1日間のカット野菜の一般生菌数を、野菜にできる限り損傷を与えることなく上述の範囲にする方法としては、前述のカット野菜のCODを低減させる方法と同様に、野菜の収穫時の切断面を殺菌する収穫時殺菌処理、野菜を容器詰めする大きさにカットする前に殺菌液で処理するカット前殺菌処理、野菜の切断部に水を注ぎながら野菜をカットする処理、野菜を容器詰めする大きさにカットした後に水晒しする水晒し処理の一つ又は複数を適宜組み合わせて行うことが好ましい。
【0044】
本発明の容器詰めカット野菜においては、製造後1日間のカット野菜の一般生菌数を、上述のように従前の容器詰めカット野菜の製造時の一般生菌数よりも高い1×102〜106CFU/gとするところ、これは容器詰めにするカット野菜の殺菌等による損傷の程度を従前よりも低く抑えることを前提としている。
【0045】
そこで、本発明においては、このカット野菜の損傷の程度のパラメータとして、カット野菜から滲出する液体の量(以下、「離水量」という)を特定の方法で測定し、その離水量が特定の範囲となるように、殺菌処理や野菜のカットを行うことが好ましい。
【0046】
すなわち、本発明において離水量は、容器詰めカット野菜に温度35℃で24時間保管する劣化促進試験を行い、劣化促進試験をした容器詰めカット野菜を開封後、カット野菜の表面の液体を吸水性材料に移行させ、その移行量を測定することにより得られる数値である。より具体的には、劣化促進試験した容器詰めカット野菜を開封し、ティッシュ等の吸水性材料の上に広げ、その上に吸水性材料を重ね、野菜の繊維を壊さない程度の力で、例えば、0.04〜0.06N/cmの力で均一に押さえて、野菜から吸水性材料に水分を移行させ、その移行した水分量を測定することにより測定される数値である。
【0047】
容器詰めカット野菜の製造工程中でも、製造後1日の容器詰めカット野菜でも、製造後さらに保存日数が経過したカット野菜でも、上述の劣化促進試験を行った場合の好ましい離水量は、野菜100gあたり3.0g以下であり、より好ましくは2.0g以下である。特に、葉野菜の離水量をこの範囲とすることが好ましい。離水量が多すぎると野菜の損傷の程度が大きく、保存時に一般生菌数が増加しやすく、鮮度も低下しやすい。反対に離水量が少なすぎると食感が悪くなるので、離水量は0.1g以上が好ましい。
【0048】
本発明の容器詰めカット野菜の製造方法としては、収穫された野菜をカットし、カットした野菜を包装容器へ詰めるまでの一連の工程において、次のA〜Dの工程の少なくとも一つを適宜選択して行う方法をあげることができ、好ましくは、収穫時殺菌処理工程を施すA工程、または、野菜の切断部に水を注ぎながら野菜をカットするC工程のいずれか一方の工程を行う製造方法を挙げることができ、特に好ましくは、A工程及びC工程の両方を行う製造方法を挙げることができる。
A.野菜の収穫時の切断面を殺菌する収穫時殺菌処理工程、
B.収穫した野菜を容器詰めする大きさにカット前に殺菌液で処理するカット前殺菌処理工程、
C.収穫した野菜をカットするにあたり、その切断部に水を注ぎながらカットする工程、
D.容器詰めする大きさにカットした野菜を水晒しする水晒し処理工程
【0049】
ここで、A工程の収穫時殺菌処理工程は、前述したように行うことが好ましい。
【0050】
A工程を行った後には、野菜の損傷の程度、殺菌の程度、野菜に付着している有機物量等を確認するため、離水量を測定することが好ましく、離水量が野菜100gあたり好ましくは0.1〜3.0gとなるように、より好ましくは0.1〜2.0gとなるように、A工程の収穫時殺菌処理工程を行うことが好ましい。
また、A工程を行った後の殺菌の程度を知るために一般生菌数を測定してもよい。
【0051】
B工程のカット前殺菌処理工程では、前述の通り殺菌力が強い殺菌液を使用することが好ましい。
【0052】
また、B工程による野菜の損傷の程度を確認するため、B工程を行った後に、前述の容器詰めカット野菜の離水量の測定に準じて離水量を測定することが好ましい。即ち、B工程を行った野菜に、温度35℃で24時間保管する劣化促進試験を行い、その野菜の離水量を測定する。そしてこの離水量が、野菜100gあたり好ましくは0.1〜3.0g、より好ましくは0.1〜2.0gとなるようにB工程のカット前殺菌処理を行う。
【0053】
また、B工程による殺菌の程度を確認するため、B工程を行った後に一般生菌数を測定してもよく、野菜表面の有機物による汚染の程度を知るために前述のようにCODを測定してもよい。
【0054】
C工程で行うカットとしては、カット野菜のCODを低減させるカット方法として説明したように、野菜の切断部に水を注ぎながらカットを行うことが好ましい。この場合に使用する水としては、水道水、清水が望ましく、これらの一部又は全部に代えて、B工程で使用する殺菌液よりも弱い殺菌力の殺菌液を使用しても良い。たとえば亜塩素酸塩(好ましくはナトリウム塩)、オゾン水、酢酸、エタノールなどの水溶液を使用する。
【0055】
C工程でも野菜の損傷の程度を確認するため、CODを測定することが好ましい。この場合、CODが40ppm以下となるように、上述の水を注ぎながらのカットを行うことが好ましい。また、野菜の損傷の程度、殺菌の程度、野菜に付着している有機物量等を確認するため、離水量を測定することが好ましい。この場合、離水量が野菜100gあたり好ましくは0.1〜3.0g、より好ましくは0.1〜2.0gとなるようにC工程のカットを行う。C工程を行った後の殺菌の程度を確認するために一般生菌数を測定してもよい。
【0056】
D工程の水晒し処理工程では、既にカット済みの野菜に対して洗浄ないし殺菌処理を行うため、それ以上の損傷を野菜へ与えないようにする点から、前述のように、B工程で使用する殺菌液よりも殺菌力が弱い液に浸漬する。
【0057】
水晒し処理において、殺菌力が弱い液に浸漬する時間は、短すぎると十分な洗浄や殺菌効果が得られない可能性があることに加え、カット後に細胞から流出した微量な有機物が除去されずCODが高くなる可能性があるため、3分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。また、浸漬する時間は、長すぎると野菜にダメージが加わり離水量が増えてしまい十分な品位が確保できない可能性があるため、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましい。
【0058】
D工程を行った後、野菜の損傷の程度、殺菌の程度、野菜に付着している有機物量等を確認するため、離水量を測定することが好ましい。この場合、離水量が野菜100gあたり好ましくは0.1〜3.0g、より好ましくは0.1〜2.0gとなるようにD工程の殺菌処理を行う。
【0059】
また、D工程を行った後、殺菌の程度を確認するために一般生菌数を測定してもよく、野菜表面の有機物による汚染の程度を知るために前述のようにCODを測定してもよい。
【0060】
その後、カット野菜から微量な有機物を含む水を除去するため、必要に応じて遠心分離機を使用して水切り処理を行い、カット野菜を包装容器に充填密封する。こうして本発明の容器詰めカット野菜を得る。
【0061】
このように各工程で、離水量、COD、一般生菌数を測定し、次の工程に進めることにより、容器詰めする直前のカット野菜として、そのCODが0〜40ppm、一般細菌数が1×10〜1×10CFU/g、離水量が野菜100gあたり0.1g〜3.0gのカット野菜を得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、以下の記載において、特にことわらない限り「%」は「質量%」を表す。
【0063】
実施例1
(A)収穫時殺菌処理工程
表1Aに示すように、露地野菜であるキャベツを収穫後、農場で6時間以内に収穫時の切断部(切断面を含むキャベツの根本側4分の1)を表1Aの収穫時殺菌処理工程の殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液:有効塩素濃度200ppm)で噴霧殺菌処理(キャベツ1g当たりの噴霧量1mL)し、それを加工工場へ輸送した。
【0064】
(B)カット前殺菌処理工程
加工工場では、キャベツの芯、汚れた外側の葉を取り除いて約4等分し、250gのキャベツの塊を清水で水洗し、それを、表1Aのカット前殺菌処理の殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液:有効塩素濃度200ppm、温度20℃)4Lに5分間浸漬処理することにより殺菌した。
【0065】
(C)カット工程
カット前殺菌処理をしたキャベツ塊に対し、なぎ刃回転式の電動スライサーで、切断部に清水をホースで注水(1L/分)しながら、3kg/分の速度でカット幅0.8mmに千切りにする流水中のカットを行った。
【0066】
(D)水晒し処理工程
カットしたキャベツを5℃の水道水(有効塩素濃度:0.1ppm)4Lに浸す水晒し処理を5分間行い、その後、遠心分離機を用いて水切り処理を行い(処理条件1100rpm、1分)、200gのカットキャベツを得た。
【0067】
(E)包装工程
水切り処理したカットキャベツ100gを延伸ポリプロピレン製袋(フィルム厚40μm)に窒素ガスと共に入れ、袋の開口部をヒートシールすることにより容器詰めカットキャベツを製造した。この容器詰めキャベツを10℃で保存した。
【0068】
実施例2
表1Aに示すように、実施例1において、露地野菜のキャベツに代えて露地野菜のレタスを使用し、実施例1と同様に(A)収穫時殺菌処理工程を行った。
また、(B)カット前殺菌処理工程において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に代えて水酸化ナトリウム水溶液(pH12)を使用し、浸漬時間を5分間とした点、(C)カット工程において、カット形状を4cm×4cmの角切りとした点を除き、実施例1と同様に容器詰めカット野菜を製造した。
【0069】
実施例3
実施例1において、(B)カット前殺菌処理工程で、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に代えて、pH12の焼成カルシウム水溶液を使用し、(C)カット工程において、カット形状を4cm×4cmの角切りとし、(D)水晒し処理工程で水道水に代えて酢酸0.01%水溶液を使用した以外、実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0070】
実施例4
実施例1において、(B)カット前殺菌処理工程を実施せず、(D)水晒し処理工程で次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度100ppm)を使用し、浸漬時間を5分とした以外実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0071】
実施例5
実施例1において、(A)収穫時殺菌処理工程を省略し、また、(B)カット前殺菌処理工程において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に代えて水酸化ナトリウム水溶液(pH12)を使用し、浸漬時間を5分間とした以外、実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0072】
実施例6
実施例1において、(B)カット前殺菌処理工程と(D)水晒し処理工程の双方において亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度200ppm)を使用し、浸漬時間を5分とした以外、実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0073】
実施例7
実施例1において、(A)収穫時殺菌処理工程を省略し、さらに(D)水晒し処理工程を省略した以外、実施例1と同様に容器詰めカットキャベツを製造した。
【0074】
実施例8
表1Bに示すように、実施例1において、(A)収穫時殺菌処理工程では焼成カルシウム水溶液(pH12)を噴霧した点、(C)カット工程ではカット形状を4cm×4cmの角切りとし、注水することなく、なぎ刃回転式の電動スライサーでカットする通常のカットを行った点以外、実施例1と同様に容器詰めカットキャベツを製造した。
【0075】
実施例9
実施例1において、(A)収穫時殺菌処理工程では、水酸化ナトリウム水溶液(pH12)を噴霧した点、(B)カット前殺菌処理工程において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に代えて焼成カルシウム水溶液(pH12)を使用した点、(D)水晒し処理工程で水晒し時間を10分間とした点以外、実施例1と同様に容器詰めカットキャベツを製造した。
【0076】
実施例10
実施例9において、(A)収穫時殺菌処理工程では、露地野菜であるキャベツを収穫後、農場で6時間以内に収穫時の切断面(切断面を含むキャベツの根本側4分の1)を水酸化ナトリウム水溶液(pH12)に浸漬(10分間)し、それを加工工場へ輸送した点、(C)カット工程では、切断部に注水する量を5L/分に変更した点以外、実施例9と同様に容器詰めカットキャベツを製造した。
【0077】
実施例11
実施例9において、(A)収穫時殺菌処理工程では、焼成カルシウム水溶液(pH12)に浸漬(10分間)した点、(C)カット工程では、切断部に注水する量を10L/分に変更した点以外、実施例9と同様に容器詰めカットキャベツを製造した。
【0078】
実施例12
実施例9において、露地野菜のキャベツに代えて露地野菜のレタスを使用した点、(C)カット工程において、カット形状を4cm×4cmの角切りとした点を除き、実施例9と同様に容器詰めカット野菜を製造した。
【0079】
実施例13
実施例10において、露地野菜のキャベツに代えて露地野菜のレタスを使用した点、(C)カット工程において、カット形状を4cm×4cmの角切りとした点を除き、実施例10と同様に容器詰めカット野菜を製造した。
【0080】
比較例1
実施例1において、(C)カット工程で、カット形状をカット幅0.5mmの千切りとし、注水することなく、なぎ刃回転式の電動スライサーでカットする通常のカットを行い、(D)水晒し処理工程において次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度200ppm)を使用し、浸漬時間を5分とした以外、実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0081】
比較例2
実施例1において、(D)水晒し処理工程において次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度1000ppm)を使用し、浸漬時間を5分とした以外、実施例1と同様にして容器詰めカットキャベツを製造した。
【0082】
比較例3
実施例1において、(A)収穫時殺菌処理工程、(B)カット前殺菌処理工程を省略し、(C)カット工程で、注水することなく、なぎ刃回転式の電動スライサーでカットする通常のカットを行い、(D)水晒し処理工程において、殺菌液として次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度1000ppm)を使用し、浸漬時間を5分とした以外実施例1と同様にして、容器詰めカットキャベツを製造した。
【0083】
(評価)
実施例1〜13、比較例1〜3の容器詰めカット野菜を、保存日数1日(24時間)、5日(120時間)または15日(360時間)で保存後、その(i)離水量、(ii)COD、(iii)一般生菌数を以下のように測定し、外観を観察した。結果を表1A及び表1Bに示す。なお、実施例1〜13の容器詰めカット野菜は、15日経過後の味の劣化やにおいの劣化もなく、いずれも良好な食味であり、一般生菌数が1×10〜1×106CFU/gであった。
【0084】
(i)離水量
保存日数1日の容器詰めカット野菜を、さらに温度35℃で24時間保存した。その後、袋を開封し、吸水性材料としてティッシュを使用し、その上にカット野菜100gを広げ、同素材のティッシュをその上に広げ、0.05N/cmの力で野菜の繊維を壊さない程度に均一に押さえ、野菜からティッシュに移行した水分量を測定することで野菜からの離水量を測定した。
得られた値を以下の基準により評価した。
I:0.1g以上2.0g以下
II:2.0g超3.0g以下
III:3.0g超
【0085】
(ii)COD
袋から野菜を取り出した野菜50gを、500mlの25℃の水道水に加え、室内温度25℃でスターラーで一定の速度で30秒間撹拌することにより野菜を洗浄した。その後市販のCOD測定キット(共立理化学研究所のパックテスト(登録商標)(型式:WAK−COD))を用いて野菜の洗浄水のCODを測定した。
得られた値を以下の基準により評価した。
I:0〜20ppm
II:20ppm超〜40ppm以下
III:40ppm超
【0086】
(iii)一般生菌数
袋から野菜を取り出した野菜10gを生理食塩水で10倍に希釈し、粉砕処理した。次いで、段階希釈を行った後標準寒天培地を用いて混釈し、35℃で48時間培養し、得られたコロニーをカウントして一般生菌数を算出した。
I:1.0×102CFU/g以下未満
II:1.0×102以上、1.0×10CFU/g以下
III:1×10超、10CFU/g以下
IV:1.0×10CFU/g超
【0087】
(iv)外観評価
日常業務で野菜を扱う者10名が評価者となり、包装前のカット野菜、及び保存日数1日、4日、15日の容器詰めカットキャベツの外観を目視観察することにより褐変の有無を評価し、次の基準により評価した。
A:褐変有りと回答した評者者の数 0名
B:褐変有りと回答した評価者の数 1〜2名
C:褐変有りと回答した評者者の数 3名以上
【0088】
【表1A】
【0089】
【表1B】
【0090】
表1A及び表1Bから、製造後1日の容器詰めカット野菜のCODが40ppm以下で、一般生菌数が1×106CFU/g以下の実施例1〜13は、保存日数が5日でも一般生菌数が1×106CFU/g以下であり、保存日数15日になっても外観評価に優れ、味の劣化やにおいの劣化もなく、いずれも鮮度が良好に維持されていること、これらは離水量が3g以下に抑えられており、野菜の損傷が少ないことがわかる。これに対し、製造後1日の一般生菌数が1×106CFU/g以下であっても、カット野菜のCODが40ppmを超えている比較例1〜3は、保存日数が5日になると一般生菌数が1×106CFU/gを超え、外観評価も劣っていた。