特許第5912274号(P5912274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912274チップ分割離間装置、及びチップ分割離間方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912274
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】チップ分割離間装置、及びチップ分割離間方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H01L21/78 X
   H01L21/78 M
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-69984(P2011-69984)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-204747(P2012-204747A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴介
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−294470(JP,A)
【文献】 特開昭59−084438(JP,A)
【文献】 特開2012−089707(JP,A)
【文献】 特開2006−049591(JP,A)
【文献】 特開2007−103644(JP,A)
【文献】 特開2007−103649(JP,A)
【文献】 特開2009−253071(JP,A)
【文献】 特開2009−272611(JP,A)
【文献】 特開2006−032642(JP,A)
【文献】 特開2011−077219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性を有するフィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、
前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、
前記フレーム支持手段の内側にあって、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、前記フィルムに加える張力を前記フィルムのX方向とY方向の張力差を解消するように独立して制御するフィルム面支持機構とを備え、
前記フレーム支持手段が、前記フィルム面支持機構に対して相対的に下方へ降下されることによって前記フィルムを伸長させ、前記チップを分割離間させ
前記フィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、該複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御して前記フィルムの張力を調整することにより、該フィルムのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御することを特徴とするチップ分割離間装置。
【請求項2】
フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、
前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、
前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、
前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在され、分割される前記チップのX方向とY方向に対応し、円周方向において独立して該フィルムの張力を選択的に調整するフィルム押圧手段と
を備えることを特徴とするチップ分割離間装置。
【請求項3】
フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、
前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、
前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、
分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を調整するフィルム張力調整手段と、
分割離間された前記チップのX方向の間隔とY方向の間隔を観察する観察手段とを備え、
前記フィルム張力調整手段は、前記観察手段による前記チップの離間の観察結果に基づいて、X方向、Y方向の少なくとも一方の方向において前記フィルムの張力を調整することを特徴とするチップ分割離間装置。
【請求項4】
フィルム上に貼り付けられた接着テープの表面に貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、
前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、
前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、
前記フィルム面支持機構の内側にあって、前記接着テープ及び前記基板を冷却する冷却テーブルと、
前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在され、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整するフィルム押圧手段と
を備えることを特徴とするチップ分割離間装置。
【請求項5】
異方性を有するフィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、
フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、
前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、前記フィルムに加える張力を前記フィルムのX方向とY方向の張力差を解消するように独立して制御する第2の工程と、
前記フレーム支持手段が、前記フィルム面支持機構に対して相対的に下方へ降下して前記フィルムを伸長させることにより、前記チップを分割離間させる第3の工程と
を含み、
前記フィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、該複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御して前記フィルムの張力を調整することにより、該フィルムのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御することを特徴とするチップ分割離間方法。
【請求項6】
フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、
フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、
前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、
前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応し、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整する第3の工程と
を含むことを特徴とするチップ分割離間方法。
【請求項7】
フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、
フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、
前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、
フィルム張力調整手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を調整する第3の工程と、
観察手段が、分割離間された前記チップのX方向の間隔とY方向の間隔を観察する第4の工程と、
前記フィルム張力調整手段が、前記観察手段による前記チップの離間の観察結果に基づいて、X方向、Y方向の少なくとも一方の方向において前記フィルムの張力を調整する第5の工程とを含むことを特徴とするチップ分割離間方法。
【請求項8】
フィルム上に貼り付けられた接着テープの表面に貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、
フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、
前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、
前記フィルム面支持機構の内側に介在された冷却テーブルが、前記接着テープ及び前記基板を冷却する第3の工程と、
前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応し、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整する第4の工程と、
を含むことを特徴とするチップ分割離間方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ(以下、単にウェハと言う)をチップに分割するチップ分割離間装置、及びチップ分割離間方法に関し、特に、ウェハにレーザー光を照射してワークの分割予定ライン(ストリート)に改質層を形成することにより、該ウェハをダイシングしてチップに分割するチップ分割離間装置、及びチップ分割離間方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザー光を照射してウェハ内に改質層を形成し、その改質層を起点として該ウェハを破断してチップを生成する技術が広く知られている。例えば、特許文献1などにおいて、ウェハの表面にレーザー光を照射して該ウェハ内に改質層を形成し、形成された改質層に沿ってウェハをへき開きして切断することによってチップを生成する技術が開示されている。この場合、ウェハの裏面側には、後工程において該ウェハをエキスパンド(伸長)するためのエキスパンドテープが貼付されているので、エキスパンド装置によって該エキスパンドテープを伸長することにより、極めて容易にウェハをチップに分割することができる。
【0003】
このようにしてウェハ内に改質層を形成して該ウェハをチップに分割するためのエキスパンド装置については、例えば、特許文献2などに開示されている。この技術によれば、ウェハとダイシングテープ(エキスパンドテープ)との間には、ダイシングされたチップと基板とを接合するためのダイアタッチフィルム(DAF)が接着されているので、エキスパンド装置によってダイシングテープを放射状に伸長させることにより、ダイシングされたウェハにダメージを与えることなく容易にチップに分割することができる。
【0004】
しかしながら、このようにダイシングテープをエキスパンドしてウェハをチップに分割離間する場合は、チップが完全に分割していない領域が存在するという状況が度々発生する。その原因の一つは、エキスパンドするダイシングテープが、ウェハ上にマウントされた材料の配向性の違いなどによって、伸び易い方向と伸び難い方向が生じることに依存している。また、通常は、ウェハに対して円状にダイシングテープが張られているので、その円の中心部から放射状にダイシングテープが拡張するため、ダイシングテープに固有の展延性や収縮時の方向の微妙な違いから、ダイシングテープの伸び易い方向と伸び難い方向とが存在することに依存している。すなわち、ダイシングテープの伸び方に異方性があるために、チップに分割し易い方向と分割し難い方向とが必然的に存在する。
【0005】
このとき、単純な素子構成のチップであってダイシングテープの展延性の微妙な違いを問題としないのであれば、該チップの分割状態に問題は生じないが、近年はチップが微細化されてきているので、ダイシングテープの伸び方の微妙な違いがチップの分割状態に大きな問題になってきている。すなわち、ダイシングテープの伸び方が方向によって微妙に違うと、一方の方向は微細なチップが破断してチップ間隔を十分に取ることができるが、他の方向は微細なチップが完全に破断しないためにチップ間隔を十分に取ることができないという不具合が生じる。
【0006】
このようなダイシングテープの伸び方に異方性があるという問題は、該ダイシングテープ自体の伸び方の特性を等方性に改善しようとしても、なかなか改善できるものではない。すなわち、ダイシングテープとして使用されるフィルムを引き出して製造する工程上から、ダイシングテープはある程度の異方性を有していることは受け入れなくてはならず、その異方性をどのようにして緩和してダイシングテープを使用するかが重要な鍵となる。
【0007】
そこで、このようなダイシングテープの異方性を考慮して、環状のエキスパンド装置を用いて円状に一様にダイシングテープ(エキスパンドテープ)を張り上げることにより、チップ間隔を一様に離間させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によれば、複数のストリート(分割予定ライン)によって複数の領域に区画されたウェハの裏面に接着フィルム(粘着性フィルム)が粘着され、さらに該接着フィルムの裏面にダイシングテープが貼付されている。そして、環状のエキスパンド装置によってダイシングテープを拡張させることにより、各チップの外周縁に沿って接着フィルムを破断させることができるので、チップを効率よく且つ確実に分割離間させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2007−134510号公報
【特許文献3】特開2006−49591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、チップを離間する方向はチップ配列におけるX方向とY方向のみであればよいが、前記特許文献3に記載された環状のエキスパンド装置によってダイシングテープを引き伸ばす場合は、該ダイシングテープは斜めの方向も含めて放射状に伸ばされる状態となる。このように放射状にダイシングテープが伸びる場合は、該ダイシングテープに伸び易い方向と伸び難い方向が存在していた場合には、該ダイシングテープを円状に均等に引っ張る方法では、原理的に、伸び方の異方性を補正することはできない。
【0010】
また、ダイシングテープの一方向(例えば、X方向)に伸びやすい方向が存在する場合は、原理的に、それに直行する方向(例えば、Y方向)は、ポアソン比の影響によって縮む傾向に作用する。従って、ダイシングテープを一様に伸ばそうとしても、ダイシングテープとして使用されるフィルムの特性上から、X方向に伸び易ければ、それに直交するY方向はポアソン比の影響で伸び難くなり、また、ダイシングテープがY方向に伸び易ければ、それに直交するするX方向はポアソン比の影響から伸び難くなる。
【0011】
すなわち、ダイシングテープを一様に伸ばそうとして、チップのX方向とY方向という相互の間隔を同じ寸法に取ろうとした場合、何れかの方向が伸び易いと、他の何れかの方向は伸び難くなるというトレイドオフの関係によって、原理的に伸び方に不均一性を生じる状態となる。従って、このようなダイシングテープのX方向とY方向の伸び方がそれぞれ異なる問題に対して、それぞれの方向に対して個別に独立した制御を行わなくてはならないという事情がある。言い換えると、環状のエキスパンド装置において個別の方向でダイシングテープの展延性を個々に調整する必要が生じてくるので、エキスパンド装置の制御機構が複雑になってしまう。
【0012】
また、ダイシングテープが同時に放射状に伸ばされる場合には、ダイシングテープの伸び易い方向と伸び難い方向とが直交するときは、該ダイシングテープは楕円状に歪んで伸びることになる。しかし、このように歪んでダイシングテープが伸びる場合は、ダイシングテープ上に載せられたチップは、離間したときには必ずしも元の方向と同じ方向を維持するとは限らず、通常は、平行状態から僅かな角度を持った方向にずれた状態で各チップ間が離間する状態となる。このように、各チップ間で方向がずれて離間した場合は、その後の工程においてチップを誤検知してしまい、チップをハンドリングする装置で搬送ミスを起こすことがある。そのため、離間されたチップは所定の方向と位置を維持した状態で離間されていなければならない。
【0013】
そこで、ダイシングテープの伸び方に異方性が存在する場合に、該ダイシングテープをエキスパンドして各チップを離間させる際には異方性を加味してダイシングテープを一様にエキスパンドさせるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、異方性を有するフィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、前記フレーム支持手段の内側にあって、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、前記フィルムに加える張力を前記フィルムのX方向とY方向の張力差を解消するように独立して制御するフィルム面支持機構とを備え、前記フレーム支持手段が、前記フィルム面支持機構に対して相対的に下方へ降下されることによって前記フィルムを伸長させ、前記チップを分割離間させ、前記フィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、該複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御して前記フィルムの張力を調整することにより、該フィルムのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御することを特徴とするチップ分割離間装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、異方性を有するフィルムをダイシングテープとして使用した場合でも、該フィルムの伸び難い方向に対してフィルム面支持機構を部分的に作用させることにより、該フィルムの各方向に働く張力(伸び)差を解消させることができるので、該フィルムは各方向において一様に伸びるようになる。また、フィルムのポアソン比の影響によって該フィルムに少しの異方性が存在していても、フィルム面支持機構の部分的な作用によってフィルム面に働く張力(伸び)差を自動的に解消することができる。このようにして、簡便な方法でフィルムの各方向の伸びを一様にすることができるので、各チップを面内一様に分割して該チップの間隔を均一に保することが可能となる。また、あらかじめ異方性を有するフィルムに対して、フィルム面支持機構を伸びにくい部分に部分的に作用させることにより、フィルム面に働く張力(伸び)差を解消して、各方向とも一様にフィルムを伸ばすことができる。さらに、分割されるチップのX方向及びY方向に対応して、フィルム面支持機構の相対的な高さを個別に調整することにより、簡便な方法でX方向とY方向のフィルム張力(伸び)を独立して制御・調整することが可能となる。
【0018】
請求項記載の発明は、フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在され、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整するフィルム押圧手段とを備えることを特徴とするチップ分割離間装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、あらかじめ異方性を有するフィルムに対して、フィルム面支持機構の面でフィルム面はその高さに一様に維持される。その上で、フレーム支持手段とフィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割されるチップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力(伸び)を選択的に調整している。従って、フィルムが伸び難い方向に対しては、フィルム押圧手段が部分的にフィルムを押圧・拡張させることので、フィルム面に働く張力(伸び)差を解消して、一様かつ均等にフィルムが伸びるようになる。その結果、チップは一様に分割されるので、該チップの間隔は一様に相互に離間するようになる。
【0020】
請求項記載の発明は、フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を調整するフィルム張力調整手段と、分割離間された前記チップのX方向の間隔とY方向の間隔を観察するチップ観察手段とを備え、前記フィルム張力調整手段は、前記チップ観察手段による前記チップの離間の観察結果に基づいて、X方向、Y方向の少なくとも一方の方向において前記フィルムの張力を調整することを特徴とするチップ分割離間装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、チップを分割離間した後に、チップ観察手段が該チップのX方向とY方向における分割離間状態をモニタし、その分割離間状態に基づいて、フィルム張力調整手段が、X方向又はY方向の何れかの方向のフィルム張力を調整している。そのため、必然的に一定のチップ離間状態を形成することができる。また、フィルムの張力(伸び)の異方性においては、全てのフィルムが一定の異方性を有しているとは限らない。そのため、フィルムの伸びの異方性にばらつきが存在する場合であっても、現状のチップ離間状態の観察結果から、その離間状態に合わせてフィルムの伸びを修正することができるため、安定してフィルム張力(伸び)を調整することにより、安定したチップ間隔を確保することが可能となる。
【0022】
請求項記載の発明は、フィルム上に貼り付けられた接着テープの表面に貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、前記フレーム支持手段の内側にあって、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持するフィルム面支持機構と、前記フィルム面支持機構の内側にあって、前記接着テープ及び前記基板を冷却する冷却テーブルと、前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在され、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整するフィルム押圧手段とを備えることを特徴とするチップ分割離間装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、あらかじめ異方性を有するフィルムに対して、フィルム面支持機構の面でフィルム面は所定の高さに一様に維持される。その上で、フレーム支持手段とフィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割されるチップのX方向とY方向に対応して、円周方向に独立してフィルムの張力(伸び)を調整している。これによって、フィルムが伸びにくい方向に対しては、フィルム押圧手段が部分的にフィルムの押圧・拡張を行うことにより、フィルム面に働く張力(伸び)差を解消して一様かつ均等にフィルムを伸ばすことができる。また、ダイシング用のフィルムとは別に、次工程でチップをマウントして貼り付けるための接着テープ(粘着性フィルム)がチップ裏面に貼られているので、該接着テープを冷却テーブルで冷却することによりチップの破断性を向上させることができる。尚、ウェハの裏面を冷却テーブルで冷却する場合は、ダイシング用のフィルム越しにウェハの面温度を冷却テーブルに吸着させ、ウェハ及び接着テープが持つ熱を熱伝達によって冷却させる。このとき、ダイシング用のフィルムも同時に冷却されるため、該ダイシング用のフィルムが冷却されることで該フィルムが脆化して、伸びが阻害される場合がある。そのため、フィルム押圧手段でダイシング用のフィルムを押圧しても効果的に該フィルムの伸びを調整できないことがある。しかし、フィルム押圧手段の内側に、ダイシング用のフィルムに接触するフィルム支持手段が存在することで、フィルムの冷たい温度は、フィルム支持手段とダイシング用のフィルムが接触する部分でフィルム支持手段に伝導し、フィルム支持手段の外側のダイシング用のフィルムは過剰に冷却されることはない。従って、フィルム支持手段の外側でダイシング用のフィルムを押圧することにより、効率的にダイシング用のフィルムを引っ張ることが可能となる。
【0024】
請求項記載の発明は、異方性を有するフィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、前記フィルムに加える張力を前記フィルムのX方向とY方向の張力差を解消するように独立して制御する第2の工程と、前記フレーム支持手段が、前記フィルム面支持機構に対して相対的に下方へ降下して前記フィルムを伸長させることにより、前記チップを分割離間させる第3の工程とを含み、前記フィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、該複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御して前記フィルムの張力を調整することにより、該フィルムのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御することを特徴とするチップ分割離間方法を提供する。
【0025】
この方法によれば、異方性を有するフィルムをダイシングテープとして使用した場合でも、フィルムの伸び難い方向に対してフィルム面支持機構を部分的に作用させることにより、該フィルムの各方向に働く張力(伸び)差を解消させることができるので、異方性を有するフィルムであっても、該フィルムは各方向において一様に伸びるようになる。また、異方性を有するフィルムであっても、フィルム面支持機構を伸び難い部分に部分的に作用させることにより、フィルム面に働く張力(伸び)差を解消して、各方向とも一様にフィルムを伸ばすことができる。さらに、分割されるチップのX方向及びY方向に対応して、フィルム面支持機構の相対的な高さを個別に調整することにより、X方向とY方向のフィルム張力(伸び)を独立して制御・調整することができる。
【0028】
請求項記載の発明は、フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応し、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整する第3の工程とを含むことを特徴とするチップ分割離間方法を提供する。
【0029】
この方法によれば、フィルム面支持機構の面でフィルム面は所定の高さに一様に維持され、且つ、フレーム支持手段とフィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割されるチップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力(伸び)を選択的に調整している。従って、フィルムが伸び難い方向に対しては、フィルム押圧手段が部分的にフィルムを押圧・拡張させることので、フィルム面に働く張力(伸び)差を解消して、一様かつ均等にフィルムが伸びるようになる。その結果、チップは一様に分割されるので、該チップの間隔は一様に相互に離間するようになる。
【0030】
請求項記載の発明は、フィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、フィルム張力調整手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力を調整する第3の工程と、チップ観察手段が、分割離間された前記チップのX方向の間隔とY方向の間隔を観察する第4の工程と、前記フィルム張力調整手段が、前記チップ観察手段による前記チップの離間の観察結果に基づいて、X方向、Y方向の少なくとも一方の方向において前記フィルムの張力を調整する第5の工程とを含むことを特徴とするチップ分割離間方法を提供する。
【0031】
この方法によれば、チップを分割離間した後に、チップ観察手段が該チップのX方向とY方向における分割離間状態をモニタし、その分割離間状態に基づいて、フィルム張力調整手段が、X方向又はY方向の何れかの方向のフィルム張力を調整している。従って、フィルムの伸びの異方性にばらつきがあっても、必然的に一定のチップ離間状態を形成することができる。
【0032】
請求項記載の発明は、フィルム上に貼り付けられた接着テープの表面に貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間方法であって、フレーム支持手段が前記フィルムの外周をフレームに支持させる第1の工程と、前記フレーム支持手段の内側に介在されたフィルム面支持機構が、前記フレームの内部に張られた前記フィルムの面を一定の張力で維持する第2の工程と、前記フィルム面支持機構の内側に介在された冷却テーブルが、前記接着テープ及び前記基板を冷却する第3の工程と、前記フレーム支持手段と前記フィルム面支持機構との間に介在されたフィルム押圧手段が、分割される前記チップのX方向とY方向に対応し、円周方向において独立してフィルムの張力を選択的に調整する第4の工程とを含むことを特徴とするチップ分割離間方法を提供する。
【0033】
この方法によれば、ダイシング用のフィルムとは別に、次工程でチップをマウントして貼り付けるための粘着性フィルムがチップ裏面に貼られている場合でも、該粘着性フィルムを冷却テーブルで冷却することによりチップの破断性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
請求項1記載の発明によれば、フィルムの各方向に働く張力(伸び)差を解消させることができるので、該フィルムを各方向において一様に伸ばすことが可能となる。その結果、チップを面内一様に分割させてチップ間隔を一様に保つことができる。また、フィルム面支持機構をフィルムの伸び難い部分に限定的に作用させているので、より高精度に、該フィルムの各方向を均一に伸ばすことができる。その結果、各チップ間隔をより高精度に均一化することができる。
【0036】
請求項記載の発明によれば、分割されるチップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力(伸び)を選択的に調整しているので、フィルムを一様かつ均等に伸ばしてチップ間隔を均一に分割離間させることができる。
【0037】
請求項記載の発明によれば、フィルムの伸びの異方性にばらつきが存在しても、チップ離間状態の観察結果から、その離間状態に合わせてフィルムの伸びを修正することができるので、安定したチップ間隔を確保することができる。
【0038】
請求項記載の発明によれば、ダイシング用のフィルムとは別に、次工程でチップをマウントして貼り付けるための接着テープがチップ裏面に貼られているので、該接着テープを冷却テーブルで冷却することによりチップの破断性を一段と向上させることができる。
【0039】
請求項記載の発明によれば、フィルムの各方向に働く張力(伸び)差を解消させることができるので、該フィルムを各方向において一様に伸ばすことが可能となる。その結果、チップを面内一様に分割させてチップ間隔を一様に保つことができる。また、フィルム面支持機構をフィルムの伸び難い部分に限定的に作用させているので、より高精度に、該フィルムの各方向を均一に伸ばすことができる。その結果、各チップ間隔をより高精度に均一化することができる。
【0041】
請求項記載の発明によれば、分割されるチップのX方向とY方向に対応して、円周方向において独立してフィルムの張力(伸び)を選択的に調整しているので、フィルムを一様かつ均等に伸ばしてチップ間隔を均一に分割離間させることができる。
【0042】
請求項記載の発明によれば、フィルムの伸びの異方性にばらつきが存在しても、チップ離間状態の観察結果から、その離間状態に合わせてフィルムの伸びを修正することができるので、安定したチップ間隔を確保することができる。
【0043】
請求項記載の発明によれば、ダイシング用のフィルムとは別に、次工程でチップをマウントして貼り付けるための接着テープがチップ裏面に貼られているので、該接着テープを冷却テーブルで冷却することによりチップの破断性を一段と向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施例1に係るチップ分割離間装置の構成を示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA部詳細図、(c)は(a)のA−A断面図。
図2】本発明の実施例2に係るチップ分割離間装置の構成を示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図。
図3図2(b)のA部詳細図。
図4】チップ分割離間装置によってウェハをチップに分割離間させる状態を示す説明図。
図5】本発明の実施例3に係るチップ分割離間装置に用いられるチップ観察手段を示す説明図。
図6図5のチップ観察手段がチップ分割状態をモニタする状態を示す説明図。
図7】本発明の実施例4に係るウェハ分割離間装置で実施されるDAF付きのウェハをチップに分割する工程図。
図8】DAF付きのウェハをチップに分割する工程の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、ダイシングテープの伸び方に異方性が存在する場合に、該ダイシングテープをエキスパンドして各チップを離間させる際には異方性を加味してダイシングテープを一様にエキスパンドさせるができるようにするという目的を達成するために、異方性を有するフィルムに貼り付け支持された基板をチップに分割するためのチップ分割離間装置であって、前記フィルムの外周をフレームに支持させるフレーム支持手段と、前記フレーム支持手段の内側にあって、分割される前記チップのX方向とY方向に対応して、前記フィルムに加える張力を前記フィルムのX方向とY方向の張力差を解消するように独立して制御するフィルム面支持機構とを備え、前記フレーム支持手段が、前記フィルム面支持機構に対して相対的に下方へ降下されることによって前記フィルムを伸長させ、前記チップを分割離間させ、前記フィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、該複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御して前記フィルムの張力を調整することにより、該フィルムのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御するようにチップ分割離間装置を構成したことによって実現した。以下、本発明に係るチップ分割離間装置の好適な実施例の幾つかを図1乃至図8に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0046】
図1は、本発明の実施例1に係るチップ分割離間装置の構成を示す構成図であり、(a
)は上面図、(b)は(a)のA部詳細図、(c)は(a)のA−A断面図である。図1(a)に示すように、円筒状のチップ分割離間装置1aにおいて、ウェハ2はダイシングフィルム3に貼り付けられ、該ダイシングフィルム3は円周方向において均一にフレーム4に挟まれて支持されている。また、チップ分割離間においては、フレーム4は円周上に亘ってフレーム支持手段5に固定されている。
【0047】
また、図1(c)に示すように、フレーム支持手段5は、支柱5aによって、フィルム面支持機構(フィルム面支持手段)6aに対して相対的に下方へ降下できるように構成されている。その結果、ダイシングフィルム3はフィルム面支持機構6aの頂部で伸ばされると、該フィルム面支持機構6aの内側に存在するウェハ2は、ダイシングフィルム3の伸びに伴って分割離間して個々のチップ2aとなる。尚、図1においては、フィルム面支持機構6aがチップの方向に対応してX,Y方向に配置されている。すなわち、フィルム面支持機構6aは、X方向及びY方向において、支持機構X1、支持機構X2、支持機構Y1、支持機構Y2として配置されている。
【0048】
また、フィルム面支持機構6aは、X1、X2の方向に存在する各支持機構は同一の高さとなり、且つ、Y1、Y2の方向に存在する各支持機構も同一の高さとなっている。すなわち、図1(b)に示すチップ2aのY方向には、フィルム面支持機構6aのY1(+側)及びフィルム面支持機構6aのY2(−側)が存在し、図1(b)に示すチップ2aのX方向には、フィルム面支持機構6aのX1(+側)及びフィルム面支持機構6aのX2(−側)が存在している。
【0049】
また、フィルム面支持機構6aのX1とX2は同時に連動して昇降し、且つ、フィルム面支持機構6aのY1とY2は同時に連動して昇降するように構成されている。尚、X1、X2方向のフィルム面支持機構6aとY1、Y2方向のフィルム面支持機構6aは独立して昇降するように構成されている。例えば、ダイシングフィルム3の伸び方がX方向において伸び難い特性がある場合には、フィルム面支持機構6aのY1、Y2に比べてフィルム面支持機構6aのX1、X2を相対的にやや高い位置に設定する。その結果、ダイシングフィルム3のX方向はY方向に対して相対的に大きな張力が加わるので、X方向に伸び難いフィルムの特性は緩和される。これによって、チップ2aは、X方向、Y方向共に同じチップ間隔を確保することができる。
【0050】
このようにして、X方向(X1、X2)のフィルム面支持機構6aとY方向(Y1、Y2)のフィルム面支持機構6aとで高さを若干変えることにより(例えば、X1、X2の高さを20mm、Y1、Y2の高さを25mmとすることにより)、X、Y方向のダイシングフィルム3の伸び差を補正することができるので、X方向とY方向のチップ間隔を同一にすることが可能となる。
【0051】
尚、図1では、フィルム面支持機構6aはX1、X2、Y1、Y2の4方向のみを示しているが、これに限定されることなく、フィルム面支持機構6aを8方向や16方向に分割して配置しても構わない。すなわち、チップ2aのX方向とY方向の伸びを独立して調整することが目的であるので、X方向とY方向について対称的にダイシングフィルム3の張力調整を行うことにより、該ダイシングフィルム3の伸び方の方向差を調整できるようにフィルム面支持機構6aが分割構成されていればよい。
【実施例2】
【0052】
図2は、本発明の実施例2に係るチップ分割離間装置の構成を示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。また、図3は、図2(b)のA部詳細図である。図2(a)、(b)に示すように、実施例2のチップ分割離間装置6bにおいては、フィルム面支持機構6bとフレーム支持手段5の間にフィルム押圧機構(フィルム押圧手段)7が存在している。このフィルム押圧機構7は、例えば、図3に示すように、フレーム支持手段5を支える支柱5aに固定されたエアーシリンダ8によってダイシングフィルム3を突き上げて、該ダイシングフィルム3の張力を調整するように構成されている。
【0053】
すなわち、図3に示すように、エアーシリンダ8にエアが供給されると、フィルム押圧機構7が矢印a1の方向に作動して、ダイシングフィルム3を矢印a2のように上側へ押上げる。これによってダイシングフィルム3の張力(テンション)が大きくなり、該ダイシングフィルム3の上に搭載されたウェハ2のチップ間隔を広げることができる。
【0054】
また、フィルム押圧機構7は、回動する機構を用いることにより、単にダイシングフィルム3を突き上げるのみならず、該ダイシングフィルム3を外側に押し出すようにしてもよい。このような機構によってダイシングフィルム3に付加的に大きな引張り応力を与えることができる。特に、ダイシングフィルム3の伸び難い方向に対して、対称的且つ部分的に、フィルム押圧機構7によってダイシングフィルム3を押圧する(突き上げる)ことにより、ダイシングフィルム3の面内張力が変わるので、該ダイシングフィルム3に固有の異方性に起因する伸び方のばらつきを解消することが可能となり、その結果、各チップの離間間隔を均一にすることができる。
【0055】
尚、実施例1のチップ分割離間装置1aの場合は、図1(a)に示すように、フィルム面支持機構6aの各支持機構X1、X2、Y1、Y2は円周状に配列されているが、実施例2のチップ分割離間装置1b場合は、図2(a)に示すように、フィルム面支持機構6bの各支持機構X1、X2、Y1、Y2は、周囲が円周状ではなく同一平面状に構成されているので、ダイシングフィルム3の面内に存在するウェハ2の部分に高低差が生じることはなくなるので、さらに安定して一様なチップ間隔を確保することが可能となる。
【0056】
図4は、チップ分割離間装置によってウェハをチップに分割離間させる状態を示す説明図である。すなわち、図4に示すように、フレーム支持手段5がフィルム支持機構6bに比べて相対的に矢印aのように下がることにより、ウェハ2を貼り付けているダイシングフィルム3に張力が加わって伸びるので、該ウェハ2は、分割予定ラインに沿って個々のチップ2aに分割されて適正な離間間隔を維持することができる。
【実施例3】
【0057】
図5は、本発明の実施例3に係るチップ分割離間装置に用いられるチップ観察手段を示す説明図である。図5に示すように、チップ観察手段9は、ダイシングフィルム3の張力によって各チップ2aに分割離間したウェハ2を常時監視している。このチップ観察手段9は、チップ2aの離間状態を鳥瞰的に撮像できる撮像装置であればどのような装置であってもよい。例えば、デジタルカメラやCCDカメラなどが好適に使用できる。
【0058】
チップ観察手段9は、主として、チップ間隔のX方向とY方向の相対的な間隔状態を観察する。あるいは、所定のチップ間隔をあらかじめ定めておき、分割離間したウェハ2が所定のチップ間隔になっているか否かをX方向及びY方向で判別するようにしてもよい。この場合、あらかじめ、チップ2aが離間した状態を画像として認識させ、そのリファレンス画像に対して、実際にチップ2aが離間した状態が適正であるか否かを評価する。
【0059】
ダイシングフィルムの異方性についてもロット間でばらつきがあるので、ダイシングフィルムごとに微妙に伸び方や異方性の方向に違いが存在する。従って、チップ観察手段9によって実際のチップ分割状態をモニタして離間状況を観察し、その分割状態があらかじめ設定した分割状態と比較して不足している場合には、図3で示したフィルム押圧機構(又は、フィルム張力調整手段)7によってチップ2aの離間距離が不足している方向を調整すればよい。
【0060】
また、実際のチップ分割状態をモニタした結果、ダイシングフィルムが伸び過ぎてチップ2aの離間距離が大き過ぎる場合もある。このような場合は、フィルム押圧機構7を使用して幾分かダイシングフィルム3を押圧しておき、そこから所望の押圧まで除圧していってもよい。
【0061】
図6は、図5のチップ観察手段がチップ分割状態をモニタする状態を示す説明図である。図6に示すように、ウェハ2が複数のチップ2aに分割されている状態において、図5のチップ観察手段9が、チップ2a間のX方向の間隔ΔXとY方向の間隔ΔYの関係がΔX>ΔYであることを検出したとき、ダイシングフィルム3のY方向のテンションに影響するフィルム面支持機構6b又はフィルム押圧機構7を上方へ上げて、ダイシングフィルム3のY方向のテンションを増加させる。これによって、各チップ2aの間隔ΔXと間隔ΔYを同じにすることができる。
【実施例4】
【0062】
実施例4では、ウェハの裏面にDAF(ダイアタッチフィルム)が貼付された場合のチップ分割について説明する。すなわち、ウェハをチップに分割する場合において、DAFと呼ばれる接着フィルム(接着テープ)がダイシングフィルムとウェハとの間に貼り付けられていることが多い。このDAFテープ(すなわち、接着テープ)は分割離間したチップを接着するために使用される接着剤の役割を果たすテープである。従って、チップ離間工程では、DAFテープも同時に分割しなければならない。このようなDAFテープは、低温にすると脆化して破断性が向上する性質を有している。
【0063】
図7は、本発明の実施例4に係るウェハ分割離間装置で実施されるDAF付きのウェハをチップに分割する工程図である。図7(a)に示すように、ウェハ分割離間装置は、ダイシングフィルム3の上にDAFテープ(接着テープ)11が貼付され、さらに、DAFテープ11の上にウェハ2が貼付された状態となっている。また、ダイシングフィルム3の裏面側には冷凍チャックテーブル(冷却テーブル)12が配置されている。
【0064】
この状態で、ダイシングフィルム3とウェハ2との間にDAFテープ11を貼り付けたチップを分割離間する場合は、図7(a)に示すように、最初にウェハ2の裏面を冷凍チャックテーブル(冷却テーブル)12によって局所的に冷却する。このとき、ウェハ2の裏面と該ウェハ2の裏面に存在するDAFテープ11は同時に冷却される。尚、ウェハ2とDAFテープ11が冷却されるときの熱は、図の矢印aのようにフィルム面支持機構6を伝わって放熱される。
【0065】
一方、この冷却工程では、ウェハ2とDAFテープ11が冷却されるだけではなく、ダイシングフィルム3も同時に冷却される。該ダイシングフィルム3が冷却された場合は、その放熱は熱伝導によって外周側に広がり、ダイシングフィルム3自体の伸びが脆化によって阻害される場合がある。
【0066】
しかし、フィルム面支持機構6はダイシングフィルム3に接しており、且つ、該フィルム面支持機構6はアルミニウムやステンレスのような金属板で形成されている。このような金属板で形成されたフィルム面支持機構6は熱容量も大きく、且つ熱伝導性もよいため、ダイシングフィルム3に伝わる放熱はフィルム面支持機構6を伝達して下側に逃げていく。そのため、フィルム押圧機構7にダイシングフィルム3の放熱温度が伝わることはない。よって、フィルム押圧機構7は脆化することはないので、フィルム押圧機構7を押圧作動させることにより、より効果的に冷却され脆化したフィルム面支持機構6の内側部分を引っ張ることができる。
【0067】
このように、フィルム押圧機構7の内側に、ダイシングフィルム3の面を維持するフィルム面支持機構6を有することで、ダイシングフィルム3のテンション調整のみならず、ダイシングフィルム3を温度的に隔離する点においても大きな役割を果たすことになる。
【0068】
図8は、DAF付きのウェハをチップに分割する工程の流れを示すフローチャートである。従って、図7の工程図を参照しながら図8のフローチャートの流れを説明する。先ず、図7(a)に示すように、ダイシングフィルム3の上に、DAFテープ11とウェハ2をこの順序で貼り付ける(ステップS1)。次に、ダイシングフィルム3の下部に載置された冷却テーブル12によってDAFテープ11とウェハ2を冷却する。これによって、DAFテープ11が脆化する(ステップS2)。
【0069】
次に、図7(b)に示すように、フレーム支持手段5をフィルム面支持機構6よりも下に下げる。これによって、ダイシングフィルム3にテンションが加わるので、脆化したDAFテープ11とウェハ2は共に分割離間される。このとき、冷却テーブル12もダイシングフィルム3の下面より下方へ下がる(ステップS3)。
【0070】
このとき、ダイシングフィルム3の伸び方が足りない部分又は方向が存在していた場合は、図3に示すフィルム押圧機構7を用いてさらにダイシングフィルム3を部分的に押上げる。そして、フィルム押圧機構7によってダイシングフィルム3を部分的に押し上げた後、図5に示すチップ観察手段9によってチップの分割離間状態を観察し、その観察結果に基づいて、さらに離間が必要な場合又は離間が大き過ぎる場合は、再度、フィルム押圧機構7によって補正する方向へダイシングフィルム3を押圧又は除圧する。これによって、全てのチップの離間間隔はほぼ均一にすることができる(ステップS4)。
【0071】
その後、全てのチップを離間させた状態でチップ分割離間装置をロックすると、図7(c)に示すように、ダイシングフィルム3上において、チップに分割離間されたウェハ2は、同様に分割離間されたDAFテープ11の上に接着された状態でマウントされる(ステップS5)
【0072】
《まとめ》
以上、各実施例において詳細に説明したように、本発明のチップ分割離間装置によれば、伸び方に異方性を有するフィルム(ダイシングフィルム)であっても、その伸び方の状態に応じてフィルムのテンションを調整することにより、一様な離間距離でチップを分割し、且つ、DAFテープを用いて一様な間隔でチップを保持することが可能となる。さらに、フィルム上に支持されたウェハが方向ずれを起こすことなく、各チップの切断予定ラインに沿って平行にチップを分割離間することが可能となる。
【0073】
また、本発明のチップ分割離間装置によれば、方形に分割されたチップに対してX方向とY方向の間隔を均等にするために、チップのX方向とY方向を独立に制御してフィルムを引っ張ることが可能である。さらに、チップ分割離間装置の環状のフレームに取り付けられたフィルムであっても、各チップをX、Y方向に一定間隔で離間することができる。
【0074】
以上、本発明に係るチップ分割離間装置及びチップ分割離間方法について具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、上記の実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のチップ分割離間装置は、簡単な機構によってウェハを均等な間隔でチップに分
割離間することができるので、各種の半導体製造装置などに有効に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1a、1b チップ分割離間装置
2 ウェハ
2a チップ
3 ダイシングフィルム
4 フレーム
5 フレーム支持手段
5a 支柱
6、6a、6b フィルム面支持機構(フィルム面支持手段)
7 フィルム押圧機構(フィルム押圧手段)、又はフィルム張力調整手段
8 エアシリンダ
9 チップ観察手段
11 DAFテープ(接着テープ)
12 冷却テーブル(冷凍チャックテーブル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8