特許第5912522号(P5912522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912522
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】ウエストサポーター
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   A61F5/02 K
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-287102(P2011-287102)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-135703(P2013-135703A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】512002024
【氏名又は名称】有限会社ファッションリフォームエース
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】専徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 幸夫
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−000824(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3042250(JP,U)
【文献】 米国特許第05484395(US,A)
【文献】 登録実用新案第3155331(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3148987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着衣の上から装着し、腰椎をサポートするウエストサポーターであって、
腰椎を支持する支持部と前記支持部の両側に位置し横腹から腹部に巻き付くベルト部とが一体的に形成されたベルト本体を有し、前記両ベルト部には、互いを固定可能な固定手段が設けられ、
前記ベルト本体は、2枚の伸縮性を有する生地と、前記2枚の生地の間であって前記生地の外周に沿うように配置された帯状の芯材とが重ね合され縫製され、前記2枚の生地は共に、縦方向と横方向との伸縮性が異なり、生地の伸縮性の大きい方向とベルト本体の長手方向とが一致することを特徴とするウエストサポーター。
【請求項2】
前記芯材は、前記生地と比較して伸縮性が小さい素材からなることを特徴とする請求項1に記載のウエストサポーター。
【請求項3】
前記生地が、ストレッチ性デニム地であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエストサポーター。
【請求項4】
さらに前記ベルト部の一方に、他方のベルト部を通し留めるためのベルトループが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のウエストサポーター。
【請求項5】
さらに前記支持部に、補強用の板状体が設けられ、
前記板状体は、プラスチックネットと、2枚の、芯地を張り合わせた補強生地とで構成され、前記補強生地が前記ベルト本体で使用される生地と同じ生地、前記芯地が前記ベルト本体で使用される芯材と同じ生地からなり、柔軟性を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のウエストサポーター。
【請求項6】
さらに前記支持部に、補強用の棒状体が設けられ、
前記棒状体は、ストレッチ性デニム生地が円柱形状に形成されてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載のウエストサポーター。
【請求項7】
さらに前記支持部に、ポケットが設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載のウエストサポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰椎を外部からサポートすることで安定を得て腰痛を予防することができるウエストサポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
腰椎を固定し、腰痛を緩和する装具としては医療用コルセットがよく知られている。医療用コルセットは、大きな伸縮性を有する幅広のベルト様であり、これをしっかりと腰部に固定し使用する。さらに腰痛を予防する装具として、ベルト様の装具を腰部に巻き付け、腰部をサポートし腰痛を予防する腰部固定帯、腰部の疲労感を削減する腰部サポーターも知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
医療用コルセットは、下着の上に装着するが、腰部をサポートするベルト様の装具には、着衣の上から装着するものもある(例えば非特許文献1、2参照)。腰部をサポートし腰痛を予防するベルト様の装具は、腰部固定帯、腰部サポーター、ウエストサポーター、腰サポートベルト、腰ベルトなどの名称が付されているが、これらの基本的な機能、構成はほぼ同一であるので、以下、これらをまとめてウエストサポーターと記す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240738号公報
【特許文献2】特開2008−194150号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.komine.ac/products.php?function=detail&product_id=421
【非特許文献2】http://www.yasashisa.jp/goods/14095/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療用コルセットは、腰をきちっと固定するため、使用の際は大きな締付力で腰部にしっかりと固定される。また非特許文献1及び2に記載のウエストサポーターを含め、従来のウエストサポーターの多くも、ゴム弾性を有する素材を用いて作製されており、さらにウエストサポーター本体に補助ベルトを設け、腰をしっかりと締付けるタイプのものが多い。従来のウエストサポーターは、しっかりと締め付け装着するため装着初期は装着感がよいが、長時間にわたると圧迫感につながり長時間の装着には適さない。締付力を小さくすれば、圧迫感はなくなるが腰を十分にサポートすることができない。
【0007】
ビジネスマンなど一般の人がウエストサポーターを装着し、日々の生活、活動を行うことができれば、腰痛防止にも役立ち好ましい。特にシャツ、セーターなど着衣の上から装着することができれば、気軽に使用することができる。従来のウエストサポーターの中には、シャツの上から装着することができる製品もあるが、特定の者を対象とした製品が多く、ファッション性に優れているとは言い難い。
【0008】
本発明の目的は、無理なく長時間装着することが可能であり、シャツ、セーターなど着衣の上から装着し腰椎を外部からサポートすることで安定を得て腰痛を予防することができるウエストサポーターを提供することである。さらにファッション性にも優れるウエストサポーターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着衣の上から装着し、腰椎をサポートするウエストサポーターであって、腰椎を支持する支持部と前記支持部の両側に位置し横腹から腹部に巻き付くベルト部とが一体的に形成されたベルト本体を有し、前記両ベルト部には、互いを固定可能な固定手段が設けられ、前記ベルト本体は、2枚の伸縮性を有する生地と、前記2枚の生地の間であって前記生地の外周に沿うように配置された帯状の芯材とが重ね合され縫製され、前記2枚の生地は共に、縦方向と横方向との伸縮性が異なり、生地の伸縮性の大きい方向とベルト本体の長手方向とが一致することを特徴とするウエストサポーターである。
【0010】
本発明のウエストサポーターは、ベルト本体が、縦方向と横方向との伸び率が異なる伸縮性の生地を用い、生地の伸び率の大きい方向とベルト本体の長手方向とを一致させ、さらに外周に沿って帯状の芯材が縫い付けられ形成されているので、ベルト本体が長手方向に伸びつつもその伸びは一定の範囲に抑えられる。このため装着したとき不必要に大きな力で締付けられることがなく適度に伸縮し、装着していても違和感がなく、無理なく長時間装着することができる。一方で、ベルト本体の短手方向には伸縮し難いので、装着したとき自然と姿勢が正される。腰椎がしっかりとサポートされるので腰痛を予防することができる。
【0011】
また本発明のウエストサポーターは、縦方向と横方向との伸縮性が異なるので、装着したとき、長手(横)方向に引っ張っても上縁部及び下縁部に皺ができない。本発明のウエストサポーターは、基本的にシャツ、セーターなど着衣の上から装着するので、装着したときの見た目も重要であり、装着したとき皺ができないことは重要である。また外周に芯材を縫い付けることで、耐久性も向上する。
【0012】
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、前記芯材は、前記生地と比較して伸縮性が小さい素材からなることを特徴とする。
【0013】
本発明のウエストサポーターは、芯材に、ベルト本体に使用された生地に比較して伸縮性が小さい素材からなる芯材を使用することで、ベルト本体の伸縮性をベルト本体に使用された生地自体の伸縮性よりも小さくすることができる。このとき芯材に、ベルト本体に使用された生地の伸縮性と近い伸縮性の芯材を用いれば、ベルト本体の伸縮性を生地自の伸縮性に近づけることができる。このように芯材を変更するだけで任意の伸縮性を有するベルト本体を得ることができるので、ユーザーの要望に簡単かつ的確に対応することができる。
【0014】
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、前記生地が、ストレッチ性デニム地であることを特徴とする。
【0015】
ストレッチ性デニム地は、縦方向と横方向との伸び率が異なる伸縮性の生地であるので、本発明のウエストサポーターの生地として好ましい。さらにストレッチ性デニム地は、ファッション性に優れ、色、風合いのバリエーションも多いので、シャツ、セーターなど着衣の上から装着するウエストサポーターの生地として好適に使用することができる。
【0016】
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、さらに前記ベルト部の一方に、他方のベルト部を通し留めるためのベルトループが設けられていることを特徴とする。
【0017】
一方のベルト部にベルトループを設ければ、装着したとき、他方のベルト部がぶらつかず見た目もよい。本発明のウエストサポーターは、基本的にシャツ、セーターなど着衣の上から装着するのでファッション性は重要であり、ベルトループを設けることは好ましい。
【0018】
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、さらに前記支持部に、補強用の板状体が設けられ、前記板状体は、プラスチックネットと、2枚の、芯地を張り合わせた補強生地とで構成され、前記補強生地が前記ベルト本体で使用される生地と同じ生地、前記芯地が前記ベルト本体で使用される芯材と同じ生地からなり、柔軟性を有することを特徴とする。
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、さらに前記支持部に、補強用の棒状体が設けられ、前記棒状体は、ストレッチ性デニム生地が円柱形状に形成されてなることを特徴とする。
【0019】
本発明のウエストサポーターは、必要に応じて支持部に、補強用の板状体及び/又は棒状体を取り付けてもよい。支持部に補強用の板状体を取付けることで、腰椎をしっかりとサポートすることが可能となり、棒状体を支持部の両サイドに設ければ、脊柱起立筋を刺激することが可能である。
補強用の板状体は、プラスチックネットの他、ベルト本体で使用される生地及び芯材と同じ生地を使用して形成されるため、適度な強度を備え全体的に柔軟性を有し、横方向へも縦方向へも撓むことができるので、装着したとき違和感がない。
【0020】
また本発明のウエストサポーターは、前記構成に加え、さらに前記支持部に、ポケットが設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明のウエストサポーターは、基本的にシャツ、セーターなど着衣の上から装着するので、ポケットを設けることで使い勝手が増す。ウエストサポーターにポケットを設ければ、ウエストポーチの代用品として使用することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のウエストサポーターは、無理なく長時間装着することが可能であり、シャツ、セーターなど着衣の上から装着し腰椎を外部からサポートすることで安定を得て腰痛を予防することができる。さらにファッション性にも優れるので、シャツ、セーターなど着衣の上に装着しても違和感がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態としてのウエストサポーター1の斜視図である。
図2図1のウエストサポーター1の平面図である。
図3図1のウエストサポーター1の縫製要領を説明するための図であり、図2の切断線A−Aの断面図である。
図4図1のウエストサポーター1を装着した状態の斜視図であり、斜め前から見た図である。
図5図1のウエストサポーター1を装着した状態の斜視図であり、斜め後ろから見た図である。
図6図1のウエストサポーター1のベルト部15bの伸び率を測定している様子を示す図である。
図7図1のウエストサポーター1の長手方向の伸び率の測定結果である。
図8】本発明の第2実施形態としてのウエストサポーター2の平面図である。
図9図8のウエストサポーター2の縫製要領を説明するための図であり、図8の切断線B−Bの断面図である。
図10】本発明の第3実施形態としてのウエストサポーター3のポケット61の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態としてのウエストサポーター1の斜視図であり、図2は、ウエストサポーター1の平面図であり、図3は、ウエストサポーター1の縫製要領を説明するための図であり、図2の切断線A−Aの断面図である。図4及び図5は、ウエストサポーター1をシャツの上から装着した状態の斜視図であり、図4は、斜め前から見た図、図5は斜め後ろから見た図である。
【0025】
本実施形態において、ウエストサポーター1の表側は、ウエストサポーター1を装着したとき外になる方で外側と同意である。一方、ウエストサポーター1の裏側は、ウエストサポーター1を装着したとき身体側になる方で内側と同意である。以下、理解を容易にするために成人男性用Mサイズのウエストサポーター1の場合の代表的な寸法を記載するが、本発明のウエストサポーター1はこの寸法に限定されるものではない。
【0026】
ウエストサポーター1は、腰部に巻き付けるように装着することで、腰椎を外部からサポートし腰椎の安定を保ち、腰痛を予防することができる装具であり、腰椎を外部から固定する腰椎固定具と言い換えることができる。ウエストサポーター1は、下着の上に装着することも可能であるが、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、さらにはセーター、ベスト、カーディガンなどの着衣の上から装着することを基本とし、一般の人が日々の生活、仕事をしているとき着用できる装具である。
【0027】
ウエストサポーター1は、中央が膨らみ全体的には細長い帯形状を有するベルト本体11を有し、ベルト本体11の中央部に腰椎を支持、固定する支持部13を有し、支持部13に連続して両側に横腹から腹部に巻き付けられるベルト部15(15a、15b)が設けられている。またベルト部15には、互いのベルト部15a、15bを固定可能な面ファスナ21(21a、21b)が設けられている。さらに一方のベルト部15aには、ベルトループ23が取り付けられている。
【0028】
支持部13は、ウエストサポーター1を装着したとき腰部(背部全周)をほぼカバーできる長さを有し、幅(高さ)は腰椎をしっかりと支持、固定可能な幅を有している。支持部の大きさは、使用する人の体格によって異なるが、一例を示せば成人男性用Mサイズの場合、長さが約22cm、幅が約16cmである。
【0029】
ベルト部15(15a、15b)は、ウエストサポーター1を装着する際、脇腹(横腹)から腹部に巻き付く部分である。ベルト部15は、支持部13に比較して幅が狭く、幅がほぼ一定の平行部17(17a、17b)と、平行部17と支持部13とをスムーズに結ぶ傾斜部19(19a、19b)からなる。ベルト部15の大きさは、使用する人の体格によって異なるが、一例を示せば成人男性用Mサイズの場合、一方のベルト部19a(19b)の長さが約41.5cm、平行部17の長さ及び幅がそれぞれ約17.5cm、約9cmである。
【0030】
ベルト本体11の支持部13とベルト部15とは一体的に形成されている。バンド本体11の上縁部35は、ほぼ平であるがバンド部15の平行部17が端部に向かって僅かに上向きとなっており、全体的には僅かに湾曲している。なお、図1図2に示すように支持部13とベルト部15との間、さらにベルト部の平行部17と傾斜部19との間には、明確な区分けはない。
【0031】
従来のウエストサポーターは、全体が略同一の幅からなるものが多いが、本ウエストサポーター1は、支持部13を腰部全体にフィットさせ腰椎をしっかりと支持、固定すると共に、ウエストサポーター1を長時間無理なく装着することができるように前述の形状を採用する。さらにウエストサポーター1の形状を前述のようにすることで、着脱が容易となり、ファッション性にも優れる。
【0032】
面ファスナ21は、一方のベルト部15aの外側端部に雄型面ファスナ21aが縫付けられ、他方のベルト部15bの内側端部に雌型面ファスナ21bが縫付けられ、ウエストサポーター1を装着したとき、雄型面ファスナ21a、雌型面ファスナ21bを係止させることでウエストサポーター1を腰部にしっかりと固定させることができる。雄型面ファスナ21a及び雌型面ファスナ21bは、ウエストサポーター1を腰部にしっかりと固定させることができるように、幅、長さとも大きい。一例を示せば成人男性用Mサイズの場合、雄型面ファスナ21a及び雌型面ファスナ21bとも幅は7cm、長さは12cmである。なお、雄型面ファスナ21a及び雌型面ファスナ21bの位置が入れ替わってもよいことは当然である。
【0033】
本実施形態では、長方形で大きな面ファスナ21を使用しているが、ウエストサポーター1を腰部にしっかりと固定させることができれば、形状、大きさは特に限定されない。面ファスナ21は、ウエストサポーター1を装着したとき、これを腰部にしっかりと固定させる固定手段であるから、面ファスナ21に代わる固定手段を使用してもよい。例えば、ホック、ボタンを使用することができる。但し、特定のウエストサイズに限定されず幅広いウエストサイズに対応できること、着脱性を考えれば面ファスナ21は好ましい固定手段と言える。
【0034】
ベルトループ23は、ウエストサポーター1を装着したときベルト部15bを通し、留めるための部材であり、雄型面ファスナ21aに並ぶようにベルト部15aの中間部に取付けられている。ベルトループ23は、幅広のベルトループであり、ベルトループ23を設けることで、ウエストサポーター1を装着したときベルト部15bの端部のぶらつきを防止することができる。本ウエストサポーター1は、シャツ、セーターなど着衣の上から装着することを基本とするので、ベルト部15bの端部がぶらつくと何か物に引っ掛かる機会も多く、場合によってはベルト部15bの係止が外れることもあるので、これを防止する点においてもベルトループ23を設けることは好ましい。ベルトループ23は、ベルト部15b側に設けてもよい。
【0035】
図3は、図2A中切断線A−Aで切断して見た縫製要領を示す縦断面図である。図3は、縫製要領を説明するための図面であるから、縮尺は必ずしも同一ではない。バンド本体11は、縦方向と横方向との伸び率が異なるストレッチ性デニム地を用いて作られている。ストレッチ性デニム地を表側生地25及び裏側生地27とし、表側生地25及び裏側生地27を重ね合わせ、さらに外周部には、表側生地25及び裏側生地27との間に芯材29、31が入れられ、これらが一体的に縫製され形成されている。表側生地25及び裏側生地27それぞれに芯材29、31が地縫いされ、さらに外周に3mmコバステッチが設けられている。
【0036】
縦方向と横方向との伸縮性が異なるストレッチ性デニム地は、バンド本体11の生地に適している。ストレッチ性デニム地を使用するとき、生地の伸縮性の大きい方向とバンド本体11の長手方向を一致させることが重要であり、ここでは表側生地25及び裏側生地27とも伸縮性の大きい方向とバンド本体11の長手方向とを一致させている。生地の伸縮性の大きい方向とバンド本体11の長手方向とを一致させると、バンド本体11は、長手方向に伸び易く、短手方向には伸び難くなる。腰椎は、前後(縦)方向に動くため、ウエストサポーター1の短手方向の伸縮率を抑えることで腰椎をしっかりと支持、固定することができる。一方、バンド本体11の長手方向は、腰部にフィットさせる点から縦方向に比べ伸縮性が大きい方が好ましい。
【0037】
表側生地25及び裏側生地27は、基本的には同一の生地を使用する。異なる生地を使用する場合に比較してコスト的に有利である。一方で、ユーザーの要望により装着性、通気性等を変えたいような場合には、伸縮性の異なるストレッチ性デニム地を使用することで調節が容易となる。
【0038】
代表的なストレッチ性デニム地の伸び率を表1に示す。なお伸び率は、JIS L 1096:2010 8.16.1A法(低速伸長法)により測定したものである。
【0039】
【表1】
【0040】
表側生地25及び裏側生地27は、バンド本体11の伸び率に大きく影響し、バンド本体11の伸び率は、装着感に大きな影響を与える。このため生地は、装着したとき圧迫感を与えることなく適度な締付け感が生じるバンド本体11の伸び率を発生させる生地、又は生地の組み合せが好ましい。生地を種々変更しウエストサポーター1を試作し、モニターテストを行った結果、(1)表側及び裏側とも品名B12Zのストレッチ性デニム地、(2)裏側が品名B11Zのストレッチ性デニム地、表側が品名B12Zのストレッチ性デニム地(3)表側及び裏側とも品名B11Zのストレッチ性デニム地とする組み合せが、装着感、通気性の点から好ましいことが分かった。ユーザーの好みに応じて表側生地25及び裏側生地27を適宜選択してもよいことは言うまでもない。
【0041】
ストレッチ性デニム地は、伸縮性の他、ファッション性の点においても好ましい生地である。ストレッチ性デニム地は、周知のようにジーンズなどに使用されており、ファッション性に優れ、色、風合いのバリエーションも多いので、シャツ、セーターなど着衣の上から装着するウエストサポーターの生地として好ましい。
【0042】
芯材29、31も、バンド本体11の伸び率に大きく影響を及ぼす。芯材29と芯材31とは、基本的に同一の芯材を使用する。芯材29、31を入れる場合と入れない場合とでは、バンド本体11の伸び率は大きく異なり、さらに伸縮性の異なる芯材29、31を使用することでバンド本体11の伸縮性を調節することができる。
【0043】
次に、本実施形態のウエストサポーター1の各特性値を測定した結果を示す。
【0044】
<ウエストサポーター1の伸び率>
ウエストサポーター1の伸び率の測定要領及び結果を示す。図6は、ウエストサポーター1のベルト部15bの伸び率を測定している様子を示す図である。伸び率は、次の要領で測定した。伸び率を測定する箇所の前後にパイプ101、103に嵌り込む輪111、113を作った。輪111、113は、ウエストサポーター1を折り返し、ミシンがけすることで作製した。一方の輪111に金属製のパイプ101を通し、このパイプ101を吊り下げた。他の輪113にも金属製のパイプ103を通し、このパイプ103に重り105を取付けた。重り105の重量を変化させ、該当箇所の長さを定規で計測し伸び率を求めた。
【0045】
ウエストサポーター1の伸び率の測定は、ウエストサポーター1の長手方向の中心を0として、(A)15cm、(B)30cm、(C)左右に30cm−計60cm、及び(D)ベルト部15aの傾斜部11.5cmについて行った。
【0046】
図7は、ベルト本体11の支持部13の中心を0として、長手方向に左右30cm、計60cmの部分の伸び率の測定結果である。この部分は、ベルト本体11の支持部13とベルト部の傾斜部19a、19bに該当し、ベルト本体11の約60%の長さに相当する。伸び率は、式(1)を用いて算出した。
【0047】
【数1】
【0048】
図7から、いずれのウエストサポーター1も荷重に比例して伸び率が増加した。また、芯材29、31の有無により伸び率が大きく異なった。芯材29、31を取付けない場合には、ゴム製のウエストサポーターと同等以上の伸び率を示した。図7中、B12Z−11Z(芯材あり)は、外側の生地が品名B12Zのストレッチ性デニム地、内側の生地が品名B11Zのストレッチ性デニム地、外周に芯材が取付けられていることを示す。ここでは、芯材に1.5cmの幅の綿芯を、糸にスパン30番手のものを使用している。ネオプレーンゴムAK−048は、市販されている(株式会社コミネ、AK−048ネオプレーンウエストサポーター)ゴム素材のウエストサポーターである。
【0049】
別の実験で、表側生地25、裏側生地27が共に品名B12Zのストレッチ性デニム生地、1.5cmの幅の綿芯からなる芯材29、31を取付けたウエストサポーター1を中肉中背男性が装着したときの締め付け力を測定したところ、特にきつく、また特に緩くでもなく普通に締付けたときの締め付け力が40〜60Nであった。これを参考に、図7において各ウエストサポーターの荷重6kgの伸び率を表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2から芯材29、31を取り付けると生地自体の影響が抑えられ、生地によらず約4〜5.5%の伸び率を示すことが分かる。芯材29、31を取付けると芯材を取付けない場合に比較して、伸び率が1/3〜1/5に、また芯材29、31を取付けると市販されているゴム素材のウエストサポーターの伸び率の1/3〜1/4になる。綿芯は、伸び難い芯材29、31であるから、伸縮性の大きい芯材29、31を使用すれば、ウエストサポーター1の伸び率は、芯材29、31なしの伸び率に近づく。
【0052】
<ウエストサポーター1の装着有無と筋活動>
表3は、ウエストサポーター1の装着有無と筋活動との関係を測定した結果である。表3の数値は、各筋の10秒間の筋電データの積算値である。人が体幹屈曲(前屈)するときは背筋が働き、体幹伸展(後屈)では腹直筋、腹斜筋が働く。ウエストサポーター1を装着し、前屈すると、いずれの筋活動も低下するが、背筋の低下率が約81%で一番大きい。この結果から筋活動がウエストサポーター1に支持されていることが分かる。
【0053】
【表3】
【0054】
<ウエストサポーター1の装着時の受圧力>
エアパック方式内圧測定装置を用いて紳士用マネキンにウエストサポーターを装着し、各所に加わる圧力を計測したところ、横腹の受圧力において、本実施形態に示すウエストサポーター1は、市販のゴム製ウエストサポーター(ネオプレーンゴムAK−048)の約50%程度であった。
【0055】
上記のように本実施形態に示すウエストサポーター1は、縦方向と横方向との伸び率が異なるストレッチ性デニム地を用い、生地の伸び率の大きい方向とベルト本体の長手方向とを一致させ、外周に沿って芯材29、31を縫い付けることで、ベルト本体11の長手方向の伸縮性を市販のゴム製ウエストサポーターに比較して抑えることができる。ベルト本体11の長手方向の伸縮性を抑えることで装着したとき不必要に大きな力で締付けられることがなく適度に伸縮し、装着していても違和感がなく、無理なく長時間着用することができる。一方で、ベルト本体11の短手方向には伸縮し難いので、着用したとき自然と姿勢が正される。腰椎がしっかりとサポートされるので腰痛を予防することができる。
【0056】
本実施形態に示すウエストサポーター1は、従来のゴム製ウエストサポーターによく見られる補助ベルトがなく、構造、形状も非常にシンプルであるが、上記形状、構成を採用することで腰椎をしっかりと支持、固定しつつ、無理なく長時間装着することを可能にする。一般の人が日々の生活、仕事をしているとき装着する装具の場合、無理なく長時間装着できることが好ましい。ゴム系の生地のように伸縮性が大きい素材を使用すると、装着した際の締め付け力が強くなり易い。締め付け力が強い場合、装着初期は装着感がよいが、長時間にわたると圧迫感につながり長時間の装着には適さない。
【0057】
実際に以下の仕様でウエストサポーターを製作し、モニターに装着してもらい次のような感想を得た。
表側生地:B12Z、裏側生地:B12Z 外周芯:1.5cm幅の綿芯
糸:30番手
<モニター:女性>
装着直後には装着感はあるものの、自然と装着感がなくなり、自然な感じがするのが良い。装着感がないのに自然に姿勢が良くなるところは素晴らしい。
<モニター:農業従事者>
立ったり、座ったりする際の圧迫感のないことが良い。
<モニター:男性事務職(50才代)>
1日の大半がデスクワークであるが、仕事中は装着していることを忘れている。
<モニター:男性事務職(60才代)>
夏場、Yシャツの上に着用し電車通勤したが、特に目立つことはなかった。
【0058】
モニターは、全員、締付け力が緩むことを体験しておらず、装着感がないものの一定の締付け力が継続することが確認できた。
【0059】
またウエストサポーター1は、縦方向と横方向との伸び率が異なるので、装着の際、長手(横)方向に引っ張っても上縁部35及び下縁部36に皺ができない。本実施形態に示すウエストサポーター1は、シャツ、セーターなど着衣の上から装着することを基本とするので、装着したとき皺ができないことは重要である。さらにシャツ、セーターなど着衣の上から装着することを考えればファッション性も重要であり、ストレッチ性デニム地は、ファッション性に優れ、色、風合いのバリエーションも多いので、ウエストサポーター1の素材として好ましい。また外周に芯材29、31を縫い付けることで、耐久性も向上する。
【0060】
また本実施形態に示すウエストサポーター1は、使用するストレッチ性デニム地の伸縮性の他、特に外周に沿うように設ける芯材29、31によりウエストサポーター1の伸縮性を調節することができるので、ユーザーの要望に簡単かつ的確に対応することができる。特に同じ生地を使用しても芯材29、31を変更するだけで任意の伸縮性を有するベルト本体11を得ることができるので効率的である。
【0061】
図8は、本発明の第2実施形態としてのウエストサポーター2の平面図である。図9は、ウエストサポーター2の縫製要領を説明するための図であり、図8の切断線B−Bの断面図である。図9は、縫製要領を説明するための図面であるから、縮尺は必ずしも同一ではない。第1実施形態に示すウエストサポーター1と同一の構成、部位には同一の符号を付して説明を省略する。以下、理解を容易にするために成人男性用Mサイズのウエストサポーター2の場合の代表的な寸法を記載するが、本発明のウエストサポーター2はこの寸法に限定されるものではない。
【0062】
ウエストサポーター2の形状、使用する生地など基本的構成は、第1実施形態のウエストサポーター1と同一であるが、ウエストサポーター2は、ベルト本体12の支持部13に板状の補強板41が設けられている点が異なる。補強板41は、腰椎の支持、固定性をさらに高めることを目的とし、支持部13の中央部に設けられている。
【0063】
補強板41は、芯地45を張り合わせた補強生地43と、芯地47を張り合わせた補強生地49と、プラスチックネット51とで構成されている。表側生地25と裏側生地27との間に、表側生地25から裏側生地27に向かって補強生地43、芯地45、芯地47、補強生地49、プラスチックネット51の順に並べられ、表側生地25及び裏側生地27と一体的に縫い合わされている。成人男性用Mサイズの場合、補強生地の幅が16cm、長さが16.5cm、プラスチックネットの幅が14cm、幅が14.5cm程度である。縫製箇所は、中心部と中心部から左右にそれぞれ62.5mmの位置で、縦方向に縫製されている。
【0064】
補強板41を構成する補強生地43、芯地45、芯地47、補強生地49は、特定の生地に限定されないが、補強生地43、49として、表側生地25又は裏側生地27と同一の生地を、芯地45、47として、芯材29、31と同一の生地を好適に使用することができる。このようにすれば生地の準備が容易であり、適度な強度も得ることができる。
【0065】
補強板41が設けられた支持部13の厚さは3〜4mm程度であり、全体的に柔軟性を有し、横方向へも縦方向へも撓むことができる。このためウエストサポーター2を装着したとき、腰部にフィットし、腰部をしっかりと支持することができる。また可撓性を有するので、装着したとき違和感もない。
【0066】
さらにウエストサポーター2の支持部13の強度を高めたい場合には、補強棒としてステーを取り付けてもよい。ステーは、例えば、ストレッチ性デニム生地を直径約2cm、高さ14cmの円柱形状とし、表側生地25と裏側生地27との間でプラスチックネット51の裏側に配置し、表側生地25、裏側生地27及び補強板41と一体的に縫い合わせればよい。取り付け位置は、脊柱起立筋を刺激する位置が好ましい。
【0067】
図10は、本発明の第3実施形態としてのウエストサポーター3のポケット61の斜視図である。第1実施形態及び第2実施形態に示すウエストサポーター1、2と同一の構成、部位には同一の符号を付して説明を省略する。以下、理解を容易にするために成人男性用Mサイズのウエストサポーター3の場合の代表的な寸法を記載するが、本発明のウエストサポーター3はこの寸法に限定されるものではない。
【0068】
ウエストサポーター3の形状、使用する生地など基本的構成は、第1実施形態のウエストサポーター1と同一であるが、ウエストサポーター3は、ベルト本体10の支持部13にポケット61が設けられている点が異なる。
【0069】
ウエストサポーター3は、利便性を高めるために支持部13の中央部にポケット61が設けられている。ポケット61は、表側生地25と裏側生地27との間にスレキ63を用いて作られており、ポケット61の内側上部には、ポケットが開かないようにするための一対の面ファスナ65が設けられている。成人男性用Mサイズの場合、ポケットの大きさは、幅が16cm、長さが16cmである。スレキ63と裏側生地27との間に補強板41を設けることが好ましい。
【0070】
ウエストサポーター3は、シャツ、セーターなど着衣の上から着用することを基本とするので、ポケット61を設けることで利便性が増す。ウエストサポーター3にポケット61を設ければ、ウエストポーチの代用品として使用することも可能であり、旅行などの際に好適に使用することができる。
【0071】
以上、第1〜第3実施形態を用いて本発明のウエストサポーターを説明したけれども、本発明のウエストサポーターは、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 ウエストサポーター
10、11、12 ベルト本体
13 支持部
15、15a、15b ベルト部
17、17a、17b 平行部
19、19a、19b 傾斜部
21 面ファスナ
21a 雄型面ファスナ
21b 雌型面ファスナ
23 ベルトループ
25 表側生地
27 裏側生地
29、31 芯材
35 上縁部
36 下縁部
41 補強板
43、49 補強生地
45、47 芯地
51 プラスチックネット
61 ポケット
63 スレキ
65 面ファスナ
図1
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