【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成23年7月15日、(社)日本機械学会にて発行されたM&M2011材料力学カンファレンス講演論文集のOS2022にて発表 平成23年7月17日、(社)日本機械学会主催のM&M2011材料力学カンファレンスにて発表
【文献】
田中玲子 外1名,システム制御理論における群論的対称性,システム/制御/情報,システム制御情報学会,2001年 4月15日,第45巻 第4号,第21−29頁
【文献】
有尾一郎 外1名,ブロック対角化法の数値解析効率評価,計測自動制御学会論文集,社団法人計測自動制御学会,1998年 6月30日,第34巻 第6号,第593−600頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンピュータを、測定対象物から配列情報を取得して行列化すると共に、前記測定対象物に乱れが生じていない場合の基本構造を表す行列を抽出する手段A、前記基本構造を表す行列を対角化する行列である変換フィルタを求める手段B、行列化された前記測定対象物の前記配列情報に変換フィルタを適用し、ブロック行列に分解する手段C、及び、前記ブロック行列の個数と大きさから前記測定対象物の対称性喪失レベルを判別する手段Dとして機能させるためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法のフロー図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を実施するための装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、節点列Dn の対称性を示す図である。
【
図4】
図4は、群Dn ×Dn'の既約表現の次数を示す図である。
【
図5】
図5は、群積により拡張された既約表現の空間を示す図である。
【
図6】
図6は、位相格子構造(p×q=6×6)を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6に示す構造の剛性行列を示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す剛性行列に変換フィルタを適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の一例を示す図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示す構造の剛性行列を示す図であり、
図8(c)は、
図8(b)に示す剛性行列に変換フィルタを適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図12】
図12(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図12(b)は、
図12(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図13】
図13(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図13(b)は、
図13(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図14】
図14(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図15】
図15(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図15(b)は、
図15(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図16】
図16(a)は、
図6に示す構造に乱れが生じた構造の他例を示す図であり、
図16(b)は、
図16(a)に示す構造に対して実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を適用することによって得られた行列を示す図である。
【
図19】
図19(a)は、平面fcc格子構造の面心格子構造を示す図であり、
図19(b)は、
図19(a)に示す構造に対応する点群構成を示す図である。
【
図21】
図21(a)〜(d)は、
図19(a)、(b)に示す構造構造に対応する座標変換行列の成分(基底成分)を調和関数により抽出した結果を示す図である。
【
図22】
図22は、
図19(a)、(b)に示す構造構造に対応する座標変換行列を示す図である。
【
図24】
図24は、
図23に示す行列に所定の行・列操作をすることによって得られた行列を示す図である。
【
図25】
図25は、
図24に示す行列を整理することによって得られたブロック対角化行列を示す図である。
【
図26】
図26は、4質点結合(トラス)の構造を示す図である。
【
図32】
図32は、3質点結合(トラス)の構造を示す図である。
【
図37】
図37(a)は、正方形要素(8×8)のXY平面の対称性を説明するための基本構造の剛性行列を模式的に示す図であり、
図37(b)は、該XY平面に存在する対称性のバリエーションを示す図であり、
図37(c)は、正方形要素(8×8)に乱れが生じて連成項が出現した剛性行列を模式的に示す図である。
【
図38】
図38(a)は、正方形要素(6×6)に所定の荷重が作用している様子を示す図であり、
図38(b)は、
図38(a)に示す正方形要素(6×6)に生じた変形を示す図であり、
図38(c)〜(h)はそれぞれ、正方形要素(6×6)に存在する対称性のバリエーションを示す図である。
【
図39】
図39は、
図38(a)に示す荷重を求めるためのベクトル場の剛性方程式を示す図である。
【
図40】
図40は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法の適用対象となる測定対象物の一例を示す斜視図である。
【
図41】
図41は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法の適用対象となる多孔シートを示す斜視図である。
【
図42】
図42は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法の適用対象となる多孔シートを示す斜視図である。
【
図43】
図43は、実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法の適用対象となる多孔シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法及び定量的把握装置について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法のフロー図である。
【0023】
まず、ステップS1において、測定対象物から配列情報(例えば格子点の幾何学的位置情報及び格子点同士の結合情報)を取得して行列化すると共に、該測定対象物に乱れが生じていない場合の基本構造を表す行列を抽出する。すなわち、ステップS1においては、物質内部における対称性の分岐階層構造を構造工学的見地から分析するために、言い換えると、対称性の階層的喪失を追跡するために、均質場からの摂動パターンを想定する。ここで、測定対象物からの配列情報の取得には、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)写真等の撮影及び例えば格子点を目標ターゲットとしたデジタル画像解析が可能な画像認識装置を用いてもよい。
【0024】
次に、ステップS2において、ステップS1で抽出した基本構造を表す行列を対角化する行列である変換フィルタを求める。すなわち、ステップS2においては、隠れた対称性の階層構造を確認するために、例えば、群の直積(群のテンソル積)を記述表現した上で、フーリエ級数列からなる選点直交性を利用して、測定対象物の基本構造(元の周期構造)を対角化する変換フィルター(完全な直交関数列から構成される座標変換フィルター)を作成する。
【0025】
次に、ステップS3において、ステップS1で行列化された測定対象物の配列情報に、ステップS2で求めた変換フィルタを適用し、ブロック行列に分解する。すなわち、ステップS3においては、場(測定対象物の配列情報)の支配方程式をその対称性を張る空間に変換し、既往のブロック対角化(BDM)の状況(ブロック数、行列サイズ、非対角成分(連成項)の状態など)に基づいて、隠れた対称性を見つけ出し、対称性の階層レベルを定量的に把握する。
【0026】
図2は、
図1に示す本実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を実施するための装置(コンピュターシステム)の概略構成を示す図である。
【0027】
図2に示すように、例えば、演算手段としてのCPU(中央演算装置)1、メモリ等の記憶装置2、及びSEM写真等を撮影可能な画像認識装置3等がネットワーク4を介して接続されることにより、コンピュターシステムが構成されている。ここで、前述のステップS1〜S3の処理は、
図2に示すコンピュターシステムをステップS1〜S3の各処理を実施する手段として機能させるプログラムによって行われる。
【0028】
以上に説明した本実施形態によると、ステップS3で得られたブロック行列の個数から、測定対象物に残った対称性の数が分かると共に、ステップS3で得られたブロック行列の大きさから、測定対象物に残った対称性の大きさが分かるので、これらの情報から、例えば、測定対象物へ印加されている力の大きさや方向を知ることができる。
【0029】
尚、本実施形態において、測定対象物の種類は特に限定されるものではないが、例えば分子構造設計、材料設計、建築物などを測定対象物とすることも可能である。
【0030】
また、本実施形態によると、例えば規則正しく配列された格子構造中の欠陥を正しく認識することが困難であったという課題を、幾何学的な情報に基づいて欠陥を定量的に把握することによって解決できると共に、この欠陥の度合いから対称性のレベルを指標化できるので、複雑な対称性の分類を機械的に実施することを可能にする。
【0031】
さらに、本実施形態によると、対称性に対する高度で体系的な群論の表現論を応用することによって、物質配列構造の隠れた対称性に基づく質的変化の予測を行うので、例えば、その時点でのエネルギー準位及び特異点、変形パターンの数及び種類、並びに対称性のレベル及び系統などの情報を得ることができる。すなわち、本実施形態には、物質配列構造の質的変化についての科学的予見を可能とし、且つ隠れた対称性の存在を体系的に把握できるという利点がある。これによって、対称性が見え隠れする事象を的確に捉えることができると共に、例えば物理変形パターンの種類などを正確に識別することができるので、例えばナノテクノロジーや材料設計などの分子・原子配列に関係する分野において、微細構造の崩壊や構造色による可視光の変化等が説明可能となる。
【0032】
以下、本実施形態で利用している各種物理数学的手法及びそれを用いた各種計算例について、詳細に説明する。
【0033】
(直交関数列と群対称性)
まず、ノルム完備な空間を満足する直交関数列を定義した上で、位相空間における該関数列の対称性を利用して、該関数列を間接的に変位関数に適合させる方法について、説明する。
【0034】
変位関数(直交関数列)上の節点列に対する有限な対称性として、例えば
図3に示すような、周期軌道上の変位関数(三角関数列)が離散化された節点列の対称性、具体的には、三角関数が振舞う節点変位の対称群(節点列)Dn について考える。節点列Dn の全長をn等分割すると、正規長さx/L(0≦x≦2L)は、節点並びによって2j/n(j=1、・・・、n)と置換される。ここで、節点列Dn に対応する直交関数列は、
・・・(式1)
と表される。また、1次既約表現(1,3)
Dn に対応する関数列は、
・・・(式2)
と表される。このような節点列に対応する有限群の対称性は、変位関数の直交空間を求める際の組成となる。
【0035】
(位相格子空間の対称性)
群の構造については、群の直積分解を利用することにより、いくつかの群の組成を知ることができる。以下、群の直積分解を用いて、位相平面上にある支配方程式の「隠れた対称性」を把握する方法について説明する。
【0036】
以下、簡単のため、群積について、二面体群の直積G=Dn ×Dn'に限定して説明する。群Gの既約表現全体は、
・・・(式3)
と与えられる。ここで、μは群Dn の既約表現を、μ’は別の群Dn'の既約表現をそれぞれ表す。群Dn ×Dn'の既約表現(μ,μ’)の次数を
図4に示す。このDn ×Dn'不変系の空間Xは、
・・・(式4)
のように拡張される。ここで、X
(μ)、X
(μ’)は群Dn 、Dn'の既約表現の空間を表す。2つの群Dn 、Dn'からなる群元{g∈Dn |g
1,・・・,g
n}、{g’∈Dn'|g
1’,・・・,g
n’}の積は、
・・・(式5)
と表される。また、この群元の積からなる表現行列は既約表現μ,μ’の表現行列の直積
・・・(式6)
と表される。この表現行列を用いて同値変換
・・・(式7)
が可能となり、この座標変換行列Hの成分は基底関数φ
(μ)、ψ
(μ’)から構成される。
【0037】
以下、この有限群の直積Dn ×Dn'の組成を前述の「直交関数列と群対称性」で述べた直交関数列を用いて表す。ここで、この拡張された既約表現の空間を
図5に示す。2つの群Dn 、Dn'の基底関数となるφ
(μ)、ψ
(μ’)がそれぞれ、{φ
(μ)|φ
(1,i)Dn,・・・,φ
(2,i)Dn,・・・}、{ψ
(μ’)|ψ
(1,j)Dn',・・・,ψ
(2,j)Dn',・・・}と表されるとき、φ
(μ)、ψ
(μ’)の直積は、
・・・(式8)
と表される。この基底関数の直積を各節点に対応させた成分からなる既約表現(μ,μ’)の座標変換行列は、
・・・(式9)
となる。
【0038】
ここで、このHはユニタリーな行列であり、H
TH=Iと単位行列となる。2変数関数w(x,y)を未知関数とする偏微分方程式F(w)と、(式5)の群元の積からなる表現行列Tとの間で、
・・・(式10)
の群同変条件が成り立つとき、BDMが可能となる。このBDMの座標変換によって既約表現毎にブロック分解すると、
・・・(式11)
と変換される。この同値変換によって関数w(x,y)の隠れた対称性を調べることができる。
【0039】
以下、3次元空間にも適用可能ではあるが、簡単のため、格子の例として、2次元の節点列の対称性を利用して、有限群の直積によって格子上の関数の対称性を表現する。ここで、完全な格子の対称性を記述するために、周期的な境界を持たせた位相空間(左右及び上下の端節点を巡回させた位相構造)を考えた上で、これをすべて固有の対称性を張る空間へ変換後に境界条件を導入するものとする。すなわち、境界条件は2次的要因による制約された対称条件として取り扱う。
【0040】
周期2πに正規化された位相領域
・・・(式12)
に平面格子を導入する。ここで、L
x、L
yはx,y方向の長さを表す。平面上の格子点(p,q)(p=1,・・・,n,q=1,・・・,n’)を設定すると、格子間隔はh=2π/n、h’=2π/n’となり、n,n’はそれぞれx,y方向の分割数である。従って、離散化された格子座標は、
・・・(式13)
と設定できる。格子座標(ph,qh’)の任意関数が二重の直交関数列
w
p,q≡w(ph,qh’)=u(2πp/n)×u(2πq/n’)
と表されるとき、(式1)より、
・・・(式14)
と分解できる。ここで、a
(μ,μ’)は既約表現(μ,μ’)に対する未定係数である。例えば、(式14)の左辺が既知の関数であれば、(p,q)に対する支配方程式は、
と表される。ここで、w
0,q=w
n,q、w
p,0=w
p,n’である。このように全ての格子点について方程式を組み立てれば、
のような連立方程式を得る。ここで、
である。従って、未定係数a
(μ,μ’)は例えばガウスの消去法などの数値計算によって求めることが可能である。また、行列Aは方程式F(w)中の関数wの対称性(直交関数列)に依存する。例えば、関数wが一定値や二重フーリエ級数列であれば、Aは対角行列となり、関数wが非対称であれば、Aは密で連成された行列となる。
【0041】
(「隠れた対称性」の数値計算)
前述のように、均質場に「隠れた対称性」が存在する場合があると共に、均質領域が分岐に伴い周期的なパターンを形成しながら乱れていく場合がある。以下、均質な位相格子モデルにおける剛性分布パターンと位相対称性との関係において、剛性方程式のブロック対角化行列K’の直交性によって「隠れた対称性」を数値的に把握できることについて説明する。尚、以下の説明においては、均質場の離散化を伴う要素解析は場の位相構造に依存し、該位相構造から周期パターン変形が形成されるものとして、その階層的な対称性を探るものとする。具体的には、均等に分割された格子上の8隣接の部材剛性をモデル化し、均質な剛性分布を持つ構造の面外変位を自由度(1節点1自由度)として有限要素解析を行う。
【0042】
まず、前述のステップS1の処理により、
図6に示す閉じた位相格子空間(p×q=6×6)の構造から、
図7(a)に示すような帯行列化されたK(剛性行列)を形成する。ここで、
図7(a)において、+は正値を、−は負値を、・はゼロ成分をそれぞれ表す(以下の他の図面において同様)。
【0043】
次に、前述のステップS2の処理により求めた変換フィルタを適用し、前述のステップS3の処理によって、
図7(a)に示す剛性行列Kを座標変換して、
図7(b)に示すK’(パターンP
0)を得る。ここで、K’は完全に対角行列となり、最初の対角成分以外はそれぞれ直交し異なる正値となった。すなわち、
図6に示す構造の剛性行列が線形独立な既約表現と一致し、この離散構造では最も対称位数が高い構造となった。
図7(b)から明らかなように、この対称性は、1次元のD
36不変配下の群と等価な群を持つ。尚、
図7(b)に示すK’の最初の対角成分0は剛体変形モードに対応する。
【0044】
以上に説明したように、BDMによるブロックの数が対称性の高低を表すことを利用し、対称性の階層構造を調べることができる。また、以上のような位相格子構造となる大規模な離散系では対称性の利用価値が高くなる。従って、均質場の分岐階層構造に、パターン化された位相格子構造の群論的な変換則を用いることによって、該構造が持つ隠れた対称性及び階層的な対称性の仕組みを明らかにすることが可能となる。
【0045】
例えば、
図8(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の一例(チェッカーボードパターン)を示している。
図8(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1の処理により、
図8(b)に示すような剛性行列が得られる。また、前述のステップS2の処理により求めた変換フィルタを適用し、前述のステップS3の処理によって、
図8(b)に示す剛性行列を座標変換すると、
図8(c)に示すブロック対角化行列(パターンP)が得られる。
【0046】
また、
図9(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図9(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図9(b)に示すブロック対角化行列(パターンH)が得られる。
【0047】
また、
図10(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図10(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図10(b)に示すブロック対角化行列(パターンA)が得られる。
【0048】
また、
図11(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図11(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図11(b)に示すブロック対角化行列(パターンB1)が得られる。
【0049】
また、
図12(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図12(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図12(b)に示すブロック対角化行列(パターンB2)が得られる。
【0050】
また、
図13(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図13(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図13(b)に示すブロック対角化行列(パターンB’2)が得られる。
【0051】
また、
図14(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図14(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図14(b)に示すブロック対角化行列(パターンC)が得られる。
【0052】
また、
図15(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図15(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図15(b)に示すブロック対角化行列(パターンD)が得られる。
【0053】
また、
図16(a)は、
図6に示す基本構造に乱れ(図中■)が生じた構造の他例を示している。
図16(a)に示す剛性分布からは、前述のステップS1〜S3の処理により、
図16(b)に示すブロック対角化行列(パターンE)が得られる。
【0054】
図17は、前述の各ブロック対角化行列(パターンP
0、P、H、A、B1、B2、B’2、C、D、E)の既約表現組成を示しており、
図18は、前述の各ブロック対角化行列(パターンP
0、P、H、A、B1、B2、B’2、C、D、E)における階層的対称性喪失の推移を示している。
【0055】
(平面fcc格子構造のブロック対角化)
図19(a)は、平面fcc格子構造の面心格子構造を示し、
図19(b)は、
図19(a)に示す構造に対応する点群構成を示している。
図19(a)、(b)において、数字は格子番号を示している。尚、以下の説明では、1節点1自由度のn,m=4の周期構造を前提とする。
【0056】
図19(a)、(b)に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
図20に示すような剛性行列(帯行列)が得られる。ここで、格子点の構成種類(○、●)から、該構造の幾何学的な関係を示す剛性行列は、
と表される。
【0057】
一方、群の直積から得られる、白節点格子点に対応する座標変換H
eは、中点に位置する黒節点とも点群では同型であるので、
図19(a)、(b)に示す構造構造に対応する座標変換行列は、
と表される。
【0058】
図21(a)〜(d)は、前記座標変換行列の成分(基底成分)を調和関数により抽出した結果を示す。この基底成分を用いて、前述のステップS2の処理により、
図22に示す座標変換行列(変換フィルタ)が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、
図22に示す座標変換行列を、
図20に示す剛性行列に適用することによって、
図23に示す行列が得られる。
図23に示す行列に所定の行・列操作をすると、
図24に示す行列が得られ、該行列をさらに整理すると、
図25に示すブロック対角化行列が得られる。
【0059】
(4質点結合構造のブロック対角化)
図26は、4質点結合(トラス)の構造を示している。
図26において、数字は質点番号を、kは質点同士の結合状態(剛性係数)を、wは変位を示している。尚、以下の説明では、1質点1自由度の周期境界条件を前提とする。
【0060】
図27は、
図26に示す構造の基本構造を示す図である。
図27に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
1が得られる。ここで、kは剛性係数を表す(以下の他の行列において同じ)。また、前述のステップS2の処理により、
に示す座標変換行列(変換フィルタ)Hが得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、変換フィルタHを剛性行列K
1に適用することによって、
となり、完全に対角化される。
【0061】
また、
図28は、
図27に示す基本構造に乱れが生じた構造の一例を示す。
図28に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
2が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
2に適用することによって、
となり、完全に対角化される。
【0062】
また、
図29は、
図27に示す基本構造に乱れが生じた構造の他例を示す。
図29に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
3が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
3に適用することによって、
となる。すなわち、非対角成分(連成項)が出現しており、基本構造からの対称性の低下が見られる。
【0063】
また、
図30は、
図27に示す基本構造に乱れが生じた構造の他例を示す。
図30に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
4が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
4に適用することによって、
となる。すなわち、非対角成分(連成項)が出現しており、基本構造からの対称性の低下が見られる。
【0064】
さらに、
図31は、
図27に示す基本構造に乱れが生じた構造の他例を示す。
図31に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
5が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
5に適用することによって、
となる。すなわち、非対角成分(連成項)が出現しており、基本構造からの対称性の低下が見られる。
【0065】
(3質点結合構造のブロック対角化)
図32は、3質点結合(トラス)の構造を示している。
図32において、a、b、cは質点番号を、kは質点同士の結合状態(剛性係数)をしている。尚、以下の説明では、1質点1自由度の周期境界条件を前提とする。
【0066】
図33は、
図32に示す構造の基本構造を示す図である。尚、
図33において、数字は質点番号を、kは質点同士の結合状態(剛性係数)を、wは変位を示している。
図33に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
1が得られる。また、前述のステップS2の処理により、
に示す座標変換行列(変換フィルタ)Hが得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、変換フィルタHを剛性行列K
1に適用することによって、
となり、完全に対角化される。
【0067】
また、
図34は、
図33に示す基本構造に乱れが生じた構造の一例を示す。
図34に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
2が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
2に適用することによって、
となり、完全に対角化される。
【0068】
また、
図35は、
図33に示す基本構造に乱れが生じた構造の一例を示す。
図35に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
3が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
3に適用することによって、
となり、完全に対角化される。
【0069】
また、
図36は、
図33に示す基本構造に乱れが生じた構造の他例を示す。
図36に示す構造からは、前述のステップS1の処理により、
に示す剛性行列K
4が得られる。そして、前述のステップS3の処理により、つまり、前述のステップS2の処理により得られた変換フィルタHを剛性行列K
4に適用することによって、
となる。すなわち、非対角成分(連成項)が出現しており、基本構造からの対称性の低下が見られる。
【0070】
(非対角成分の分析)
以下、本実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法のブロック対角化により非対角成分(連成項)が出現した場合の分析例について説明する。
【0071】
図37(a)は、正方形要素(8×8)のXY平面の対称性を説明するための基本構造の剛性行列を模式的に示している。また、
図37(b)は、該XY平面に存在する対称性のバリエーションを示している。ここで、例えば、(1,1)の対称性は、行列対角成分(1,1)に対応し、(1,2)の対称性は、行列対角成分(3,3)に対応し、(1,3)の対称性は、行列対角成分(2,2)に対応し、(1,4)の対称性は、行列対角成分(4,4)に対応し、(2,1)+(左側)の対称性は、行列対角成分(5,5)に対応し、(2,1)+(右側)の対称性は、行列対角成分(7,7)に対応し、(2,1)−(左側)の対称性は、行列対角成分(6,6)に対応し、(2,1)−(右側)の対称性は、行列対角成分(8,8)に対応する。
【0072】
図37(c)は、正方形要素(8×8)に乱れが生じて連成項が出現した剛性行列を模式的に示している。
図37(c)に示すように、行列成分(2,1)及び(1,2)に連成項が出現している場合、(1,1)及び(1,3)の対称性が重なって、対称性が低下していることが分かる。
【0073】
また、
図38(a)は、正方形要素(6×6)に所定の荷重が作用している様子を示している。また、
図38(c)〜(h)はそれぞれ、該正方形要素(6×6)に存在する対称性のバリエーションを示している。ここで、各バリエーションにおけるスケールは同じではない。
図38(c)〜(h)に示す各対称性が完全に分解できるとすると、該各対称性を重ね合わせることによって、
図38(b)に示すような変形が生じる。これは、非対称荷重を作用させたときの非対称変形に相当する。すなわち、荷重の対称性が低くても(変換後の行列に連成項がある場合は要素の対称性が低下する)、各対称性の空間で完全に独立して
図38(b)に示す変形が得られれば、
図38(a)に示す荷重、つまり、力のベクトルは、
図39に示す変換則(ベクトル場の剛性方程式)を用いて、容易に求めることができる。ここで、
図39に示すように、例えば、剛性行列の成分(4,1)や(1,4)に連成項が出現している場合において、該連成項>0のとき、モードcとモードfとがカップリングして対称性の低下が生じる。
【0074】
尚、以上に説明した実施形態においては、直積を2つ用いた2次元での対称性喪失レベルの定量的把握について説明したが、同様に、直積を3つ用いて3次元での対称性喪失レベルの定量的把握を行えることは言うまでもない。
【0075】
以下、本実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法を用いた具体的な応用解析例について、図面を参照しながら説明する。
【0076】
(応用解析例1)
図40は、本実施形態に係る対称性喪失レベルの定量的把握方法の適用対象となる測定対象物の一例を示す斜視図である。
図40に示すように、測定対象物10は、規則的に配列された複数の粒子11の一部が他の粒子又は空洞12に置換された構造を持つ。このような場合も、前述のステップS1の処理において、測定対象物10の幾何学的状態の画像データ等に対して、例えば有限要素法(FEM)等を適用することにより、測定対象物10の配列情報を解析データとして行列化(離散モデル化)することが可能である。すなわち、測定対象物10において、他の粒子又は空洞12は、粒子11とは異なる剛性(空洞12の場合は0剛性)を持つので、前述の周期格子構造における不均一な剛性分布の場合と同様に取り扱うことができる。具体的には、他の粒子又は空洞12をターゲット(自由度)として追跡(計測)することによって、周期対称性が破れる様相(変形パターン)を認識することができるので、測定対象物10の対称性を指標化することができると共に、測定対象物10におけるひずみ(又は応力)の大きさや主ひずみの方向等を把握することができる。
【0077】
(応用解析例2)
応用解析例1と同様に、規則的に配列された複数の貫通孔を有するシート状構造(以下、多孔シートという)に対しても、例えばFEMを用いて配列情報を行列化(離散モデル化)することが可能である。ここで、配列情報を抽出するためのメッシュを再分割することによって、解像度を向上させてもよい。
【0079】
図41に示す多孔シート20は、格子状に配列された複数の貫通孔21を有しており、応力25を受けて多孔シート20が延びるように変形している。
【0080】
図42に示す多孔シート30は、千鳥状に配列された複数の貫通孔31を有しており、応力35を受けて多孔シート30が延びるように変形している。
【0081】
図43に示す多孔シート40は、千鳥状に配列された複数の貫通孔41を有しており、応力(せん断力)45を受けて多孔シート40がねじれるように変形している。
【0082】
以上に述べたような多孔シートの利点として、貫通穴のサイズや配置などの幾何学的な条件を利用することによって、局所応力集中を誘発させることができると共に、応力やひずみの感度を格段に向上させることができる。
【0083】
このような多孔シートの特性を利用して、例えば応力集中の程度に応じて変色するシートであれば、「ひずみ分布」の模様を誘発させる際に、貫通孔の存在によって変色を確実に促進させることが可能となる。このように、対称性喪失レベルの測定において多孔シートを用いて応力集中現象を効果的に生起させることにより、ひずみ分布や応力分布において例えばせん断帯発生によって対称性を低下させると共にひずみや応力の局所化を促すことができる。すなわち、多孔シートを用いることによって、例えばひずみ計測の対象物におけるひずみレンジの感度を格段に向上させることが可能となる。これは、言うまでもなく、様々な適用が可能である。
【0084】
また、前述のような多孔シートを用いた場合、ひずみ分布や応力分布は、対称性が低下する様相を反映したものとなるので、多孔シートに生じる例えば縞模様や放射的な模様(例えば応力が高い箇所)のように、格子構造における変形パターンと類似する多様な対称パターンが出現する可能性がある。従って、多孔シートのように幾何学的に周期性を有する構造体を用いることにより、対象物の形状に関わりなく、対称性の指標化や構造解析を汎用的に実施することができる。