【実施例】
【0036】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、米粉(非熱処理米粉および熱処理米粉)中の総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度は以下の方法で求めた。
【0037】
(1)米粉中の総蛋白質含有量:
LECO社のTruMac Nを用いて窒素含有量(質量%)から総蛋白質含有量(質量%)を算出した。換算係数は5.95を使用した。また、炉温度を1100℃として測定を行った。
【0038】
(2)米粉(非熱処理米粉及び熱処理米粉)中の0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量:
(i) 米粉(非熱処理米粉または熱処理米粉)2.25gに0.05N酢酸水溶液15mlを添加して渦流混合機で混合し、次いで60分間振盪した後、3500rpmで5分間遠心分離して液体のほぼ全量を回収した(なお、この一連の操作は25℃で行った)。
(ii) 上記(i)の操作で残留した沈殿に、0.05N酢酸水溶液7.5mlを添加し、軽く振って混合した後、3500rpmで5分間遠心分離して、液体分の全量を回収した(この一連の操作は25℃で行った)。
(iii) 上記(i)で回収した液体分と上記(ii)で回収した液体分を一緒にした後、濾紙(No.2)を用いて濾過し、濾液を0.05N酢酸水溶液を用いて25mlに定量し、液1ml中の蛋白質の含有量W(mg)を、上記(1)の総蛋白質含有量の測定法と同様の方法を採用して測定して(但し測定に当たっては1250℃の炉温度を採用)、「0.05N酢酸可溶性蛋白質含有量(mg/g)」[米粉1g当たりの0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量(mg)]を下記の式〈1〉により求めた。
0.05N酢酸可溶性蛋白質含有量(mg/g)=(W×25)÷2.25 〈1〉
【0039】
(3)米粉の澱粉損傷度:
Megazyme社製「STARCH DAMAGE ASSAY KIT」を使用して、当該キットに添付されたプロトコールに従って、株式会社日立製作所製「U―2000A 吸光光度計」にて510nmにおける吸光度を測定することによって、米粉の澱粉損傷度(%)を求めた。
【0040】
(4)米粉のα化度:
β−アミラーゼ・プルラナーゼ法を用いて測定した。
【0041】
《製造例1》[熱処理米粉(A
1)〜(A
7)の調製]
(1) 米粉(A
0)(熱処理前の米粉)(木徳神糧社製「米粉ファイン(国産)」、総蛋白質含有量=55mg/g、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量=36mg/g、澱粉損傷度=2.3%、α化度=4.6%)を650gずつをポリプロピレン/ポリエステル積層フィルムからなるパウチに入れたものを6個作製した。
(2) 上記(1)で作製した第1のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて100℃の恒温槽に入れて15分間熱処理した後、恒温槽から取出し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチから熱処理米粉[以下「熱処理米粉(A
1)」という]を取り出して、熱処理米粉(A
1)の総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で作製した第2のパウチ入り米粉、第3のパウチ入り米粉、第4のパウチ入り米粉、第5のパウチ入り米粉および第6のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて、100℃の恒温槽に入れて、それぞれ30分間、45分間、60分間、90分間および120分間熱処理して、熱処理米粉(A
2)、(A
3)、(A
3)、(A
4)、(A
5)および(A
6)をそれぞれ調製し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチからそれぞれの熱処理米粉を取り出して、上記した方法で総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記の米粉(A
0)を乾熱式の穀物熱処理攪拌装置[ジャケット付きのリボンミキサー(特許文献4に記載されているような構造を有する穀物熱処理攪拌装置)]に供給して120℃の温度で60分間熱処理して熱処理米粉(A
7)を調製し、熱処理米粉(A
7)の温度が常温(25℃)になった段階で、上記した方法で総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0042】
《製造例2》[熱処理米粉(B
1)の調製]
米粉(B
0)(熱処理前の米粉)(木徳神糧社製「米穀粉B」、総蛋白質含有量=70mg/g、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量=42mg/g、澱粉損傷度=8.6%、α化度=20.2%)を製造例1で使用したのと同じ乾熱式の穀物熱処理攪拌装置(ジャケット付きのリボンミキサー)に供給して120℃の温度で60分間熱処理して熱処理米粉(B
1)を調製し、熱処理米粉(B
1)の温度が常温(25℃)になった段階で、上記した方法で総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0043】
《製造例3》[熱処理米粉(C
1)〜(C
2)の調製]
(1)米粉の製造:
(i)原料米(新潟県産コシヒカリ)15kgを株式会社井関邦栄製造所製の電子自動洗米機「POLISH BOY RW−150」を用いて、温度15℃の水で3分間洗米した後、水から取り出してテンパリングを行なった(このときの米の水分含量=20.4質量%)。
(ii) 上記(i)で得られた加水・調湿した米(米粒)を、ホソカワミクロン社製「ACMパルベライザ」(分級機能付き気流式粉砕機)に、40kg/hrの供給量で供給して、粉砕ロータの回転数6000ppmおよび分級ロータの回転数1000ppm、気流温度30℃の条件下に粉砕し分級して粉砕機から取り出して、米粉(総蛋白質含有量=58mg/g、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量=40mg/g、澱粉損傷度=10.5%、α化度=28.5%)[以下「米粉(C
0)」という]を製造した。
(2) 上記(1)で得られた米粉(C
0)(熱処理前の米粉)の650gずつをポリプロピレン/ポリエステル積層フィルムからなるパウチに入れたものを2個作製した。
(3) 上記(2)で作製した第1のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて100℃の恒温槽に入れて30分間熱処理した後、恒温槽から取出し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチから熱処理米粉[以下「熱処理米粉(C
1)」という]を取り出して、熱処理米粉(C
1)の総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4) 上記(2)で作製した第2のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて、100℃の恒温槽に入れて90分間熱処理して熱処理米粉(C
2)を調製し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチから熱処理米粉(C
2)を取り出して、上記した方法で総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0044】
《製造例4》[熱処理米粉(D
1)〜(D
2)の調製]
(1)米粉の製造:
(i) 原料米(新潟県産コシヒカリ)15kgを株式会社井関邦栄製造所製の電子自動洗米機「POLISH BOY RW−150」を用いて、温度15℃の水で3分間洗米した後、水から取り出してテンパリングを行なった(このときの米の水分含量=30.0質量%)。
(ii) 上記(i)で得られた加水・調湿した米(米粒)を、ホソカワミクロン社製「ACMパルベライザ」(分級機能付き気流式粉砕機)に、10kg/hrの供給量で供給して、粉砕ロータの回転数4000ppmおよび分級ロータの回転数1500ppm、気流温度30℃の条件下に粉砕し分級して粉砕機から取り出して、米粉(総蛋白質含有量=62mg/g、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量=31mg/g、澱粉損傷度=3.6%、α化度=6.1%)([以下「米粉(D
0)」という]を製造した。
(2) 上記(1)で得られた米粉(D
0)の650gずつをポリプロピレン/ポリエステル積層フィルムからなるパウチに入れたものを2個作製した。
(3) 上記(2)で作製した第1のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて100℃の恒温槽に入れて10分間熱処理した後、恒温槽から取出し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチから熱処理米粉[以下「熱処理米粉(D
1)」という]を取り出して、熱処理米粉(D
1)の総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4) 上記(2)で作製した第2のパウチ入り米粉を、パウチの口を閉じて100℃の恒温槽に入れて30分間熱処理して熱処理米粉(D
2)を調製し、全体の温度が常温(25℃)になった段階でパウチから熱処理米粉(D
2)を取り出して、上記した方法で総蛋白質含有量、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量、澱粉損傷度およびα化度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0045】
【表1】
【0046】
《実施例1》[ホットケーキ用ミックス粉およびホットケーキの製造]
(1) 製造例1で用いた熱処理前の米粉(A
0)、製造例1で得られた熱処理米粉(A
1)〜(A
7)、製造例2で用いた熱処理前の米粉(B
0)、製造例2で得られた熱処理米粉(B
1)、製造例3で用いた熱処理前の米粉(C
0)、製造例3で得られた熱処理米粉(C
1)〜(C
2)、製造例4で用いた熱処理前の米粉(D
0)、製造例4で得られた熱処理米粉(D
1)〜(D
2)のそれぞれに、砂糖、グルコース、食塩および膨張剤(炭酸水素ナトリウム)を下記の表2に示す量で配合して、ホットケーキ用ミックス粉をそれぞれ製造した。
【0047】
【表2】
【0048】
(2) 卵50gと牛乳150gを混合して調製した卵乳液200gを、上記の(1)で製造したそれぞれのホットケーキ用ミックス粉200gに加えてよく混ぜて生地をそれぞれつくった。
(3) 上記(2)で得られたそれぞれの生地を、170℃に予め加熱しておいたグリドル(鉄板)の上に、約12〜13cmの直径の円形に流し入れて2分間焼成した後、ひっくり返して4分間焼成してホットケーキをそれぞれ製造した。
(4) 上記(3)で得られたそれぞれのホットケーキの食感(モチモチ感)および飲み込み易さを下記の表3に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが評価し、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
上記の表4にみるように、実験番号2〜5、12および15〜16では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5〜35mg/gの範囲内である熱処理米粉を用いてホットケーキ用ミックス粉を調製し、当該ホットケーキミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、モチモチ感の評点が2.0〜2.9点であってモチモチとして良好な食感を有し、しかも飲み込み易さの評点が2.2〜3.0点であって歯にまとわりつかず歯切れがよくて飲み込み易い、高品質のホットケーキが得られている。
【0052】
それに対して、実験番号1、9および11では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が35mg/gよりも多い非熱処理米粉を用いてホットケーキ用ミックス粉を調製し、当該ホットケーキミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、実験番号1、9および11で得られたホットケーキは、モチモチ感には優れているが、飲み込み易さの評点が1.3〜1.9点であって、歯にまとわりついて歯切れが悪く飲み込みにくい。
また、実験番号14では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量は5〜35mg/gの範囲内にあるが熱処理されていない米粉をを用いてホットケーキミックス粉を調製し、当該ホットケーキミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、実験番号14で得られたホットケーキは、モチモチ感には優れているものの、飲み込み易さの評点が1.4点であって、歯にまとわりついて歯切れが悪く飲み込みにくい。
【0053】
また、実験番号6〜8、10および13では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5mg/gよりも少ない熱処理米粉を用いてホットケーキ用ミックス粉を調製し、当該ホットケーキミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、実験番号6〜8、10および13で得られたホットケーキは、飲み込み易いが、モチモチ感の評点が1.4〜1.8点であってモチモチ感が小さく、食感に劣っている。
【0054】
《実施例2》[お好み焼き用ミックス粉およびお好み焼きの製造]
(1) 製造例1で用いた熱処理前の米粉(A
0)、製造例1で調製した熱処理米粉(A
2)、(A
3)および(A
5)のそれぞれ100質量部に食塩2質量部を添加して、お好み焼き用ミックス粉をそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれのお好み焼き用ミックス粉102gに、水200gおよび全卵液50gを混合して生地をそれぞれ調製し、それぞれの生地に刻みキャベツ200gをそれぞれ加えて混ぜ合わせた、それを180℃に予め加熱しておいたグリドル(鉄板)の上に円形に流し入れて6分半焼成した後、ひっくり返して6分半焼成してお好み焼きをそれぞれ製造した。
(3) 上記(3)で得られたそれぞれのお好み焼きの食感(モチモチ感)および飲み込み易さを上記の表4に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが評価し、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0055】
【表5】
【0056】
上記の表5にみるように、実験番号2および3では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5〜35mg/gの範囲内である熱処理米粉(A
2)または(A
3)を用いてお好み焼き用ミックス粉を調製し、当該お好み焼き用ミックス粉を用いてお好み焼きを製造したことにより、モチモチ感の評点が2.4点または2.1点であってモチモチとして良好な食感を有し、しかも飲み込み易さの評点が2.8点または2.2点であって歯にまとわりつかず歯切れがよくて飲み込み易い、高品質のお好み焼きが得られている。
【0057】
それに対して、実験番号1では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が35mg/gよりも多い非熱処理米粉(A
0)を用いてお好み焼き用ミックス粉を調製し、当該お好み焼き用ミックス粉を用いてお好み焼きを製造したことにより、実験番号1で得られたお好み焼きはモチモチ感には優れているが、飲み込み易さの評点が1.9点であって、歯にまとわりついて歯切れが悪く飲み込みにくい。
また、実験番号4では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5mg/gよりも少ない熱処理米粉(A
5)を用いてお好み焼き用ミックス粉を調製し、当該お好み焼き用ミックス粉を用いてお好み焼きを製造したことにより、実験番号4で得られたお好み焼きは、飲み込み易いが、モチモチ感の評点が1.5点であってモチモチ感に欠け、食感に劣っている。
【0058】
《実施例3》[蒸しパン用ミックス粉および蒸しパンの製造]
(1) 製造例1で用いた熱処理前の米粉(A
0)、製造例1で調製した熱処理米粉(A
2)、(A
3)および(A
5)のそれぞれに、上白糖、ベーキングパウダーおよび食塩を下記の表6に示す量で配合して、蒸しパン用ミックス粉をそれぞれ製造した。
【0059】
【表6】
【0060】
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの蒸しパン用ミックス粉500gに、牛乳290gおよび全卵液54gを混合して生地をそれぞれ調製し、アルミカップにそれぞれの生地を70gずつ流し入れた後、蒸し庫中で100℃で20分間蒸して蒸しパンをそれぞれ製造した。
(3) 上記(3)で得られたそれぞれの蒸しパンの食感(モチモチ感)および飲み込み易さを上記の表4に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが評価し、その平均値を採ったところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0061】
【表7】
【0062】
上記の表7にみるように、実験番号2および3では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5〜35mg/gの範囲内である熱処理米粉(A
2)または(A
3)を用いて蒸しパン用ミックス粉を調製し、当該蒸しパン用ミックス粉を用いて蒸しパンを製造したことにより、モチモチ感の評点が2.9点または2.2点であってモチモチとして良好な食感を有し、しかも飲み込み易さの評点が2.5点または2.3点であって歯にまとわりつかず歯切れがよくて飲み込み易い、高品質の蒸しパンが得られている。
【0063】
それに対して、実験番号1では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が35mg/gよりも多い非熱処理米粉(A
0)を用いて蒸しパン用ミックス粉を調製し、当該蒸しパン用ミックス粉を用いて蒸しパンを製造したことにより、実験番号1で得られた蒸しパンはモチモチ感には優れているが、飲み込み易さの評点が1.6点であって、歯にまとわりついて歯切れが悪く飲み込みにくい。
また、実験番号4では、0.05N酢酸可溶性蛋白質の含有量が5mg/gよりも少ない熱処理米粉(A
5)を用いて蒸しパン用ミックス粉を調製し、当該蒸しパン用ミックス粉を用いて蒸しパンを製造したことにより、実験番号4で得られた蒸しパンは、飲み込み易いが、モチモチ感の評点が1.8点であってモチモチ感に乏しく、食感に劣っている。