(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が前記圧力容器の胴部の内周面に接合され、前記耐圧試験圧力がかけられる前記チャンバー側に前記隔壁の凹曲面が面していることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器の耐圧試験方法。
前記隔壁は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が前記圧力容器の胴部の内周面に接合され、前記耐圧試験気圧力がかけられる前記チャンバー側に前記隔壁の凹曲面が面していることを特徴とする請求項3に記載の圧力容器の耐圧試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水圧による耐圧試験では、容器全体に水を満たすため以下のような問題ある。
(1)容器自体の重量に試験水の重量が付加されるため試験時の耐震性において、容器自体や基礎、アンカーボルトが強度不足となり、試験が実施できない場合がある。
(2)蒸留塔のような内部にトレイを保持している容器では注水時や試験後の排水時にトレイが差圧により破損しないように流量を制限しなくてはならないため非常に時間がかかり、定修工事等の短期工事期間では現実性がない。
(3)大型の容器では水量が膨大となるため、水の確保や注排水に時間がかかり過ぎ現実的でない。
【0006】
また、気体圧による耐圧試験では、容器全体に気体を満たすため、改造部以外の既存耐圧部は安全性を確保するために時前に健全性の検証を実施しなければならない。検証には耐圧部の板厚や溶接部の非破壊検査が行われるが、実施に際しては、一般圧力容器ではほとんどが保温を行っているため、これの撤去や復旧、容器内外の足場の設置や撤去、非破壊検査のための溶接部の表面処理等を時前作業として行わなければならない。これらの後、健全性確認の実施をするため、一連の作業量は膨大となり、コストや工期が非現実的なものとなる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、従来の耐圧試験に要する手間がかかることがなく容易かつ確実に、圧力容器の一部を改造または更新してなる更新部分における圧力容器の耐圧試験を行える耐圧試験方法、耐圧試験装置および耐圧試験装置の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の圧力容器の耐圧試験方法は、両端部が閉塞された筒状の圧力容器の一部を改造または更新してなる更新部分における圧力容器の耐圧試験方法であって、
前記圧力容器の内部を、当該圧力容器の軸方向と交差する少なくとも1つの隔壁によって前記軸方向に仕切ることによって、複数のチャンバーに分割しておき、
前記複数のチャンバーのうち少なくとも1つのチャンバーは前記更新部分を含み、
この更新部分を含むチャンバーに気体による耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバーに隣り合う更新部分を含まないチャンバーに、前記耐圧試験圧力より低圧で、かつ前記圧力容器の外部より高圧の気体による所定圧力をかけることを特徴とする。
【0009】
ここで、「チャンバーが更新部分を含む」とは、圧力容器の胴部の一部を更新してなる胴部分にチャンバーが面する他、当該胴部の一部を更新しなくても、胴部に設けられているノズル等の部品を更新した場合、このノズルの一部がチャンバーに面することを意味する。
また、更新部分を含まないチャンバーにかける所定圧力としては、圧力容器の設計圧力が好ましく、この設計圧力よりある程度小さくてもよいが、設計圧力を超える圧力は好ましくない。
【0010】
本発明においては、圧力容器の内部を隔壁によって複数のチャンバーに分割しておき、更新部分を含むチャンバーに気体による耐圧試験圧力をかけるので、当該更新部分を含むチャンバーの胴部の全体に耐圧試験圧力がかかる。したがって、従来の耐圧試験に要する手間がかかることがなく、しかも容易かつ確実に更新部分における圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
また、更新部分を含むチャンバーに隣り合う更新部分を含まないチャンバーに、耐圧試験圧力より低圧で、かつ圧力容器の外部より高圧の気体による所定圧力をかけるので、隔壁には、耐圧試験圧力から所定圧力を減じた圧力(差圧)が作用することになる。したがって、隔壁には耐圧試験圧力の過大な圧力をかけることなく、隔壁の健全性を保つことができ、この結果、確実な圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
【0011】
また、耐圧試験を限定的に行えるので、容器全体の耐圧試験では対応できなかった改造や部分更新が可能になる。
また、隔壁には、耐圧試験圧力から所定圧力を減じた圧力(差圧)が作用するので、隔壁を差圧設計で行える。このため隔壁を薄くして軽量とすることができ、大型の圧力容器の耐圧試験でも対応可能となる。特に最大で試験圧力の1/5の圧力で隔壁の厚さを設計できるので、隔壁の大幅な軽量化を図れる。
さらに、気体による耐圧試験を限定した範囲で行えるので、既存胴部に設置されているトレイ等の内部品の一時撤去や損傷等の問題がなくなる。
加えて、耐圧試験時に既存胴部(更新部分を含まない胴部)にかける気体圧力を設計圧力以内とすることで、既存胴部の健全性確認のための非破壊検査が不要となる。
【0012】
本発明の前記構成において、前記隔壁は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が前記圧力容器の胴部の内周面に接合され、前記耐圧試験圧力がかけられる前記チャンバー側に前記隔壁の凹曲面が面しているのが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、更新部分を含むチャンバーにかけられる耐圧試験圧力が欠球状の隔壁の凹曲面に均等に作用し、当該隔壁の裏側の凸曲面に所定圧力が均等に作用するので、隔壁の厚さを均等にかつ極力薄くできる。
【0014】
また、本発明の圧力容器の耐圧試験装置は、前記圧力容器の耐圧試験方法に使用される耐圧試験装置であって、
前記圧力容器の内部を当該圧力容器の軸方向に仕切ることにより、前記圧力容器の内部に複数のチャンバーを、これらチャンバーのうち少なくとも1つのチャンバーが前記更新部分を含むように形成する少なくとも1つの隔壁と、
前記更新部分を含むチャンバーに気体による耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバーに隣り合う前記更新部分を含まないチャンバーに、前記耐圧試験圧力より低圧で、かつ前記圧力容器の外部より高圧の気体による所定圧力をかける圧力付与手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、更新部分を含むチャンバーに、圧力付与手段によって、気体による耐圧試験圧力をかけるので、当該更新部分を含むチャンバーの胴部の全体に耐圧試験圧力がかかる。したがって、従来の耐圧試験に要する手間がかかることがなく、しかも容易かつ確実に更新部分における圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
また、更新部分を含むチャンバーに隣り合う更新部分を含まないチャンバーに、圧力付与手段によって、耐圧試験圧力より低圧で、かつ圧力容器の外部より高圧の気体による所定圧力をかけるので、隔壁には、耐圧試験圧力から所定圧力を減じた圧力(差圧)が作用することになる。したがって、隔壁には耐圧試験圧力の過大な圧力をかけることなく、隔壁の健全性を保つことができ、この結果、確実な圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
【0016】
本発明の前記構成において、前記隔壁は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が前記圧力容器の胴部の内周面に接合され、前記耐圧試験気圧力がかけられる前記チャンバー側に前記隔壁の凹曲面が面しているのが好ましい。
【0017】
ここで「欠球状に形成された隔壁」とは、内部が中空の球をその軸と直交する平面で切断することによって、球面の一部を構成する曲面で構成された曲面板状の隔壁のことを意味する。
【0018】
このような構成によれば、更新部分を含むチャンバーにかけられる耐圧試験圧力が欠球状の隔壁の凹曲面に均等に作用し、当該隔壁の裏側の凸曲面に所定圧力が均等に作用する。隔壁の厚さは、これ等の相殺した圧力で強度計算することができるため、極力薄くできる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記欠球状の隔壁は、前記圧力容器の胴部の内周面に接合されるリング状の欠球リングと、この欠球リングに固定されて、当該欠球リングの内側を塞ぐ欠球鏡板とを備え、
前記欠球リングは、その周方向に複数に分割されたリング片を互いに接合することによって構成されているのが好ましい。
【0020】
ここで、「欠球リング」とは、内側が中空の欠球を当該欠球の軸に直交する平面で切断してなるリングのことを意味する。
また、「欠球鏡板」とは、内部が中空の球をその軸と直交する平面で切断することによって、球面の一部を構成する曲面で構成された曲面状の板のことを意味する。
【0021】
このような構成によれば、圧力容器の胴部の内周面に接合される欠球リングがその周方向に複数に分割されたリング片を互いに接合することによって構成されているので、リング片を圧力容器の胴部の内周面に前記欠球リングを構成するようにして接合するとともに隣り合うリング片どうしを接合することによって、圧力容器の胴部の内周面に欠球リングを容易に取り付けることができる。そして、この欠球リングに、当該欠球リングの内側を塞ぐようにして欠球鏡板を固定することによって、欠球状の隔壁を容易に形成できる。
また、既設胴部(更新部分を含まない胴部)に変形等が生じて真円度に狂いが生じていても、胴部の内周長に対して、リング片の孤の長さで接合されるため、真円度の狂いがリング片の分割数で分散される。従って、当該既設胴部の内周面への肌合わせが容易となり欠球リングを容易に形成できる。
また、欠球リングを分割することにより、重量の軽減や大きさが小形となるため、現場の作業性が良くなり、時間の短縮や安全性の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明の圧力容器の耐圧試験装置の施工方法は、
前記リング片に分割された前記欠球リングと前記欠球鏡板とを前記圧力容器が設置された現場に搬入し、
次に、前記リング片を前記圧力容器の胴部の内周面に前記欠球リングを構成するようにして溶接するとともに隣り合うリング片どうしを溶接して接合し、
次に、前記胴部の内周面に溶接された前記欠球リングにその内側を塞ぐようにして前記欠球鏡板を溶接することによって前記隔壁を設け、
次に、前記圧力付与手段を前記圧力容器に取り付けることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、現場に搬入されたリング片を圧力容器の胴部の内周面に欠球リングを構成するようにして溶接するとともに隣り合うリング片どうしを溶接して接合することによって、現場で圧力容器の胴部の内周面に欠球リングを容易に溶接できる。そして、前記胴部の内周面に溶接された欠球リングにその内側を塞ぐようにして欠球鏡板を溶接することによって、現場で欠球状の隔壁を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来の耐圧試験に要する手間がかかることがなく容易かつ確実に、圧力容器の一部を改造または更新してなる更新部分における圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
この実施の形態は、本発明を石油精製装置の常圧蒸留装置や減圧蒸留装置の主蒸留塔である圧力容器の胴部を部分的に更新する場合に適用したものである。
【0027】
図1において符号1は圧力容器を示す。圧力容器1はその頂部が欠球状に形成された円筒状の胴部2を有するものであり、その下端部は地盤に設けられた基礎に設置されている。なお、胴部2の直径は4〜10m程度である。
胴部2は、円弧板状の胴板3を複数個、胴部2の周方向および軸方向に溶接によって接合して円筒状に形成されたものである。
【0028】
そして、本実施の形態では、胴部2のうち上下方向の中間部の一部分である胴部分5を新しいもの(更新部分)に変更し、その変更後の圧力容器1の耐圧試験を行う。
以下、
図2〜
図13を参照して、圧力容器1の耐圧試験方法について説明する。
まず、
図2(a),(c)に示すように、圧力容器1内を仕切る隔壁を構成する構成部材を工場にて製作しておく。
図2(a)に示すものは、下部用の隔壁10を構成するものであり、当該隔壁10は、円環状の欠球リング11とこの欠球リング11の内側を塞ぐ欠球鏡板12とによって構成されている。
【0029】
欠球リング11は、その周方向に複数に分割されたリング片11aを互いに溶接によって接合することによって構成されるものであり、工場ではこのリング片11aを所定数製作しておく。
欠球鏡板12は欠球状に形成された鏡板本体12aと、この鏡板本体12aの頂部に形成された、蓋12bを有するマンホール部12cとによって構成されている。
そして、
図2(b)に示すように、欠球鏡板12を欠球リング11にその内側を塞ぐようにして溶接して固定することによって、隔壁10が形成されるようになっている。このような隔壁10は全体的に下側に凸の欠球状に形成されている。
【0030】
図2(c)に示すものは、上部用の隔壁20を構成するものであり、当該隔壁20は、前記隔壁10と同様に、円環状の欠球リング21とこの欠球リング21の内側を塞ぐ欠球鏡板22とによって構成されている。
欠球リング21は、欠球リング11と同様に、リング片21aを互いに溶接によって接合することによって構成されるものである。
欠球鏡板22は、欠球状に形成された鏡板本体22aと、この鏡板本体22aの頂部に形成された蓋22bを有するマンホール部22cとによって構成されている。
そして、
図2(d)に示すうように、欠球鏡板22を欠球リング21にその内側を塞ぐようにして溶接して固定することによって、隔壁20が形成されるようになっている。このような隔壁20は全体的に上側に凸の欠球状に形成されている。
なお、前記隔壁10と隔壁20は上下の向きが逆になっているだけであるので、実際には工場等において、一方の隔壁10(20)を製作しておけばよい。
【0031】
また、隔壁10(20)を構成する部材を製作する場合、薄板で形成された欠球状の部材(内部が中空の球の一部を当該球の軸と直交する平面で切断した部材)を欠球リング11(21)と鏡板本体12a(22a)とに切断して分割することによって、欠球リング11(21)と鏡板本体12a(22a)を製作し、さらに、欠球リング11(21)をその周方向に複数に分割することによって複数のリング片11a(21a)を製作しておけばよい。
また、鏡板本体12a(22a)の頂部に孔を形成し、この孔にマンホール部12c(22c)を取り付けることによって、欠球鏡板12(22)を製作する。
【0032】
図3は、前記圧力容器1の胴部2の中間部分を示すものであり、当該中間部分の一部である胴部分5を切断して撤去する。この場合、胴部2の外周部に切断すべき切断位置を罫書いて切断ラインS,Sを決定するとともに、胴部分5およびその周辺に取り付いていた取付部品(図示略)を撤去する。その後、
図4に示すように、切断ラインS,Sで胴部2を切断して、撤去する。なお、胴部分5の撤去はクレーン等を使用して行うとともに、当該胴部分5より上方にあった既設の胴部分6はクレーン等によって移動して、適宜の場所に仮り置きしておく。
【0033】
次に、
図5Aに示すように、胴部分5を切断撤去した後の既設の胴部2の上端部の内周面に隔壁10を構成する欠球リング11を、胴部2の上端より所定長さだけ下方の位置に接合する。
なお、欠球リング11を構成する複数のリング片11aおよび欠球鏡板12は工場から予め現場に搬入されている。
胴部2の内周面に欠球リング11を接合する場合、リング片11aを胴部2の上端部の内周面に欠球リング11を構成するようにして溶接するとともに隣り合うリング片11a,11aどうしを溶接して接合する。
【0034】
すなわちまず、
図5A(a)に示すように、胴部2の上端部の内周面に取付位置を罫書いて決定した後、リング片11aを胴部2の内周面の取付位置に沿わせて配置する。この場合、位置決め用治具を25を予めリング片11aの外周部に取り付けておき、この位置決め治具25を胴部2の内周面に沿わせてセットすることによって、胴部2の内周面にリング片11aの外周部を沿わせて配置して仮止めしたうえで、位置決め用治具25をリング片11aから取り外し、その後、リング片11aの外周部と胴部2の内周面とを溶接する。このようにすることによって、リング片11aを、当該リング片11aと胴部2の内周面とのなす角度が所定角度になるようにして容易に胴部2の内周面に溶接できる。
【0035】
そして、
図5A(b)に示すように、丸で囲った番号で示す順番で、胴部2の内周面に、前記と同様にしてリング片11aの外周部を沿わせて配置した後、当該リング片11aの外周部と胴部2の内周面とを順次溶接する。その後、隣り合うリング片11a,11aどうしを溶接して接合する。つまり、先に胴部2の内周面に溶接したリング片11aに次のリング片11aを溶接して接合する。
【0036】
この場合、予め工場等において、隣り合うリング片11a,11aのうちのいずれか一方の裏面に、裏当金26をリング片11aの端部から突出するようにして溶接によって取り付けておき、他方のリング片11aの端部を一方のリング片11aの端部に突き当てたうえで、当該突き当て部27を溶接する。このように、胴部2の上端部の内周面に周方向に沿ってリング片11aを次々に溶接していく。その後、隣り合うリング片11a,11aどうしを溶接していくことによって、胴部2の上端部の内周面に欠球リング11を形成する。
また、胴部2の内周長に誤差が生じている場合、リング片11a,11aどうしの接合部は裏当金26が取付いていることから、リング片11a,11aどうしの突き当部の間隔を少しずつ均等に変えることにより、胴部2の内周長の誤差を調整できる。
【0037】
なお、胴部2の上端部の内周面に前記のようにして欠球リング11を接合する場合、
図5A(a)に示すように、必要に応じて胴部2の外周面に補強リング28を欠球リング11に対向させて溶接によって接合してもよい。
また、胴部2の直径が大きくて、
図5A(c)に示すように、欠球リング11が大きくなる場合、リング片11aの数が増えて、当該リング片11aを周方向に溶接する場合に誤差が生じる。この場合、リング片11a,11aどうしの接合部に取付いている裏当金26によりリング片11a,11aどうしの間隔を少しずつ均等に変えることでは、胴部2の内周長の大小の誤差を調整しきれない場合が想定される。
この誤差を吸収するために、欠球リング11のリング片11a,11aどうしの接合部分のうち、適当な接合部分に調整代29を設ければよい。この場合、丸で囲った番号で示す順番でリング片11aを周方向に配置して溶接していく一方で、四角で囲った番号で示す順番でリング片11aを前記周方向と同方向に配置して対角同時に溶接していく。そして、丸で囲った1番のリング片11aと四角で囲った4番のリング片11aとの間に、片方のリング片11aに形成された調整代29(
図5B参照)を設けるとともに、四角で囲った1番のリング片11aと丸で囲った4番のリング片11aとの間にも、片方のリング片11aに形成された調整代29を設ける。
これによって、胴部2の内周長の調整を
図5Bに示すように、調整代29を適切な位置で切断することにより、誤差が大きくても、欠球リング11を容易かつ確実に胴部2の内周面に接合できる。
【0038】
なお、調整代29を設ける場合、
図5Bに示すように、予め所定のリング片11aを他のリング片11aに比べて長さを大きく形成して調整代29を含めておき、所定の隣り合うリング片11a,11aどうしの隙間が適正であることを確認したうえで、リング片11aと調整代29を含んでいるリング片11aどうしを溶接する。
【0039】
次に、
図6に示すように、欠球リング11にその内側を塞ぐようにして欠球鏡板12を溶接して固定する。
この場合、欠球リング11の上方から欠球鏡板12をその凸曲面を下方に向けてクレーン等によって吊下ろしていき、当該欠球鏡板12の頂部のマンホール部12cが欠球リング11の下側になるように設置し、鏡板本体12aの外周部を欠球リング11の内周縁部に乗せたうえで溶接する。
この場合、鏡板本体12aの外周縁と欠球リング11の内周縁より若干内側の部分とを溶接する。また、必要に応じて、欠球リング11の内周縁と鏡板本体12aの外周縁より若干内側の部分とを溶接し、さらに、鏡板本体12aと欠球リング11とが重なった部分の中央部をプラグ溶接してもよい。
また、この接合方法は、欠球リング11と欠球鏡板12の接合部を両側重ね隅肉溶接で接合するため、突き合せ溶接のような接合部の肌合わせが不要となるほか、欠球リング11の内径と欠球鏡板12の外径に誤差が生じても接続部の重なり代の範囲で調整が可能となる。
【0040】
このように構成された隔壁10は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が圧力容器1の胴部2の上端部の内周面に接合され、後述する耐圧試験気圧力がかけられるチャンバー1a側に隔壁10の凹曲面が面している。
【0041】
次に、
図7に示すように、新規の胴部分30を既設の胴部2の上端部に設置して、当該胴部分30の下端部と既設の胴部2の上端部を溶接して接合する。この胴部分30が本実施の形態における更新部分30である。
更新部分30である胴部分30は前記撤去した胴部分5と等しい大きさ形状のものである。また、胴部2の上端と胴部分30の下端の接合部(溶接部)30aは、前記欠球リング11と欠球鏡板12とからなる隔壁10より上方に位置している。
次に、新規の胴部分30の上下方向中央部より上側に足場31を設置する。
【0042】
次に、
図8に示すように、隔壁20を構成する構成部材である、複数のリング片21aと欠球鏡板22とを前記足場31に仮置きする。この場合、リング片21aは胴部分30の内周面に沿って仮り置きし、欠球鏡板22は胴部分30の平面視における中央部に仮置きする。
なお、欠球リング21を構成する複数のリング片21aおよび欠球鏡板22は工場から予め現場に搬入されている。
【0043】
次に、
図9および
図10に示すように、適宜の場所に仮り置きしておいた前記既設の胴部分6をクレーン等によって吊り上げて、前記胴部分30に設置して、胴部分6の下端部と胴部分30の上端部を溶接して接合する。
【0044】
次に、
図10に示すように、足場31に仮り置きしておいた欠球鏡板22をチェンブロック等32によって吊上げ、胴部分6に保持する。吊り上げられた欠球鏡板22は胴部分30と胴部分6との接合部(溶接部)30bより上方に位置している。
【0045】
次に、
図11に示すように、足場31に仮り置きされているリング片21aを、前記リング片11aを胴部2の内周面に溶接して接合した場合と同様にして、胴部分6の下端部内周面に溶接して接合する。
つまり、胴部分6の下端部の内周面に周方向に沿ってリング片21aを次々に溶接していく。その後、隣り合うリング片21a,21aどうしを溶接していくことによって、胴部分6の下端部の内周面に欠球リング21を形成する。
【0046】
次に、
図12に示すように、欠球リング21にその内側を塞ぐようにして欠球鏡板22を溶接する。この場合、吊り下げてある欠球鏡板22をその凸曲面を上方に向けて吊下ろしていき、欠球リング21の上方から鏡板本体22aの外周部を欠球リング11の内周縁部に乗せたうえで溶接する。
この場合、
図6(b)に示すように、鏡板本体22aの外周縁と欠球リング21の内周縁より若干内側の部分とを溶接する。また、欠球リング21の内周縁と鏡板本体22aの外周縁より若干内側の部分とを溶接し、さらに、鏡板本体22aと欠球リング21とが重なった部分の中央部をプラグ溶接してもよい。
【0047】
このように構成された隔壁20は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が圧力容器1の胴部分6の下端部の内周面に接合され、後述する耐圧試験気圧力がかけられるチャンバー1a側に隔壁20の凹曲面が面している。
【0048】
このようにして、隔壁10,20を圧力容器1内に設けることによって、圧力容器1の内部は、
図13に示すように、当該圧力容器1の軸方向と交差する欠球状の2つの隔壁10,20によって軸方向に仕切られ、これによって、圧力容器1の内部は3つのチャンバー1a,1b,1cに分割される。
そして、これらチャンバー1a,1b,1cのうち、チャンバー1aは前記更新部分30を含んでいる。
【0049】
次に、前記圧力容器1に圧力付与手段40を取り付ける。
この圧力付与手段40は、更新部分30を含むチャンバー1aに空気による耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1aに隣り合う更新部分30を含まないチャンバー1b,1cに、耐圧試験圧力より低圧で、かつ圧力容器1の外部より高圧の空気による設計圧力をかけるものである。
【0050】
圧力付与手段40はコンプレッサー41と、このコンプレッサー41から圧縮空気をチャンバー1aに送り込む管路42と、コンプレッサー41から圧縮空気をチャンバー1b,1cに送り込む管路43と、これら管路42と管路43とを接続する接続管路44とを備え、管路42には接続管路44との接続部よりコンプレッサー41側にバルブ45が設けられ、前記接続管路44にバルブ46が設けられている。
【0051】
したがって、このような圧力付与手段40では、バルブ45,46の双方を開いて、コンプレッサー41から圧縮空気を管路42、接続管路44、管路43を通してチャンバー1a,1b,1cに送り込むことによって、これらチャンバー1a,1b,1cを設計圧力まで加圧できる。
そして、バルブ46を閉じたうえで、さらにコンプレッサー41から圧縮空気をチャンバー1aに送り込むことによって、チャンバー1aに耐圧試験圧力をかけることができる。なお、耐圧試験圧力は設計圧力の1.25倍である。
【0052】
このようにして、更新部分30を含むチャンバー1aに空気による耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1aに隣り合う更新部分30を含まないチャンバー1b,1cに、耐圧試験圧力より低圧で、かつ圧力容器1の外部より高圧の気体による設計圧力をかけて更新部分30における圧力容器1の耐圧試験を行う。
【0053】
耐圧試験終了後は、バルブ45,46を開けて、チャンバー1a,1b,1cを常圧まで減圧する。その際、チャンバー1aが負圧にならないように注意して、バルブ45,46の開操作を行う。
【0054】
次に、隔壁10,20をそれぞれ構成する欠球リング11,21を切断して、欠球鏡板22のマンホール部22cの蓋22bを外して、当該マンホール部22cから欠球リング11,21の切断片を外部に搬出する。
この場合、
図14に示すように、既設の胴部2および胴部分6と、欠球リング11,21との切り離し部50は10〜16mm残した状態とする。
【0055】
以上のように本実施の形態によれば、圧力容器1の内部を隔壁10,20によって3つのチャンバー1a,1b,1cに分割しておき、更新部分30を含むチャンバー1aに空気による耐圧試験圧力をかけるので、当該更新部分30を含むチャンバー1aの胴部2の全体に耐圧試験圧力がかかる。したがって、従来の耐圧試験に要する手間がかかることがなく、しかも容易かつ確実に更新部分30における圧力容器の耐圧試験を行うことができる。
また、更新部分30を含むチャンバー1aに隣り合う更新部分30を含まないチャンバー1b,1cに、耐圧試験圧力より低圧で、かつ圧力容器1の外部より高圧の空気による設計圧力をかけるので、隔壁10,20には、耐圧試験圧力から設計圧力を減じた圧力が作用することになる。したがって、隔壁10,20には耐圧試験圧力の過大な圧力をかけることなく、隔壁10,20の健全性を保つことができ、この結果、確実な圧力容器1の耐圧試験を行うことができる。
【0056】
また、隔壁10,20は欠球状に形成されるとともに、その外周部分が圧力容器1の胴部2の内周面に接合され、耐圧試験気圧力がかけられるチャンバー1a側に隔壁10,20の凹曲面が面しているので、耐圧試験圧力が当該凹曲面に均等に作用し、隔壁10,20の裏側の凸曲面に設計圧力が均等に作用するので、隔壁10,20の厚さを均等にかつ極力薄くできる。
【0057】
さらに、欠球状の隔壁10,20が、圧力容器1の胴部2の内周面に接合される欠球リング11,21と、この欠球リング11,21に固定されて、当該欠球リング11,21の内側を塞ぐ欠球鏡板12,22とを備え、欠球リング11,21は、その周方向に複数に分割されたリング片11a,21aを互いに接合することによって構成されているので、現場に搬入されたリング片11a,21aを圧力容器1の胴部2の内周面に欠球リング11,21を構成するようにして接合するとともに隣り合うリング片11a,11a(21a,21a)どうしを接合することによって、圧力容器1の胴部2の内周面に現場で欠球リング11,21を容易に取り付けることができる。そして、この欠球リング11,21に、当該欠球リング11,21の内側を塞ぐようにして欠球鏡板12,22を固定することによって、現場で欠球状に隔壁10,20を容易に形成できる。
【0058】
なお、本実施の形態では、縦型の圧力容器1に2つの隔壁10,20を設ける場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限ることはない。
例えば
図15(a)に示すように、縦型の圧力容器1の頂部を更新してなる更新部分30aにおける圧力容器1の耐圧試験方法においては、圧力容器1の内部を1つの欠球状の隔壁10によって軸方向に仕切ることによって、2つのチャンバー1d,1eに分割しておき、2つのチャンバー1d,1eのうちチャンバー1dは更新部分30aを含み、この更新部分30aを含むチャンバー1dに耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1dに隣り合う記更新部分30aを含まないチャンバー1eに、耐圧試験圧力より低圧な設計圧力をかけるようにしてもよい。
【0059】
また、
図15(b)に示すように、縦型の圧力容器1の頂部にあるノズルを更新してなる更新部分30b,30bにおける圧力容器1の耐圧試験方法においては、圧力容器1の内部を1つの欠球状の隔壁10によって軸方向に仕切ることによって、2つのチャンバー1d,1eに分割しておき、2つのチャンバー1d,1eのチャンバー1dは更新部分30b,30bを含み、この更新部分30b,30bを含むチャンバー1dに耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1dに隣り合う記更新部分30bを含まないチャンバー1eに、耐圧試験圧力より低圧な設計圧力をかけるようにしてもよい。
【0060】
また、
図15(c)に示すように、横型の圧力容器1の右端部を更新してなる更新部分30cにおける圧力容器1の耐圧試験方法においては、圧力容器1の内部を1つの欠球状の隔壁10によって軸方向に仕切ることによって、2つのチャンバー1d,1eに分割しておき、2つのチャンバー1d,1eのうちチャンバー1dは更新部分30cを含み、この更新部分30cを含むチャンバー1dに耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1dに隣り合う記更新部分30cを含まないチャンバー1eに、耐圧試験圧力より低圧な設計圧力をかけるようにしてもよい。
【0061】
また、
図15(d)に示すように、横型の圧力容器1の右端部にあるノズルを更新してなる更新部分30dにおける圧力容器1の耐圧試験方法においては、圧力容器1の内部を1つの隔壁10によって軸方向に仕切ることによって、2つのチャンバー1d,1eに分割しておき、2つのチャンバー1d,1eのチャンバー1dは更新部分30dを含み、この更新部分30dを含むチャンバー1dに耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1dに隣り合う記更新部分30dを含まないチャンバー1eに、耐圧試験圧力より低圧な設計圧力をかけるようにしてもよい。
【0062】
さらに、
図15(e)に示すように、縦型の圧力容器1の下端部を更新してなる更新部分30eにおける圧力容器1の耐圧試験方法においては、圧力容器1の内部を1つの欠球状の隔壁20によって軸方向に仕切ることによって、2つのチャンバー1f,1gに分割しておき、2つのチャンバー1f,1gのうちチャンバー1fは更新部分30eを含み、この更新部分30eを含むチャンバー1fに耐圧試験圧力をかけるとともに、このチャンバー1fに隣り合う記更新部分30eを含まないチャンバー1gに、耐圧試験圧力より低圧な設計圧力をかけるようにしてもよい。
なお、この場合、圧力容器1の下端部に設けられて、当該圧力容器1を支持するスカート部を更新した場合、このスカート部の更新部1sには圧力容器1内の内圧は作用しない。
【0063】
また、本実施の形態では、隔壁10,20はすべて欠球状に形成したが、これに限ることはない。例えば、隔壁に、耐圧試験圧力から設計圧力を減じた圧力が作用した場合に当該隔壁の健全性を保つことができれば、隔壁を平板状やその他の形状に形成してもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、本発明にかかる圧力容器の耐圧試験方法を、円筒状の胴部分5を新たな胴部分(更新部分)30に一気に取り換える場合を例にとって説明したが、更新する胴部分を周方向に部分的に切断して取り除き、取り除いて生じた開口に新規部分胴板を溶接により取り付けることを繰り返すことにより、胴部分を順次更新するものにも適用できる。この場合、前記開口から隔壁10,20を構成する部材(リング片11a,21a、欠球鏡板12,22)を胴部内に搬入すればよい。