特許第5912989号(P5912989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912989
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20160414BHJP
【FI】
   A23L1/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-180353(P2012-180353)
(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公開番号】特開2014-36606(P2014-36606A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100093377
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 良子
(74)【代理人】
【識別番号】100108235
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】入江 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美和
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼原 通宏
(72)【発明者】
【氏名】福留 真一
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−032964(JP,A)
【文献】 特開平04−299946(JP,A)
【文献】 特開2008−054677(JP,A)
【文献】 特開2012−105561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺生地の調製に用いる全加水量の6.2〜75質量%の水に穀粉の質量に基づいて0.1〜1質量%の有機酸を添加して調製した濃縮有機酸水溶液を穀粉に加えて混捏する第1工程を行なった後、残りの水を加えて更に混捏する第2工程を行なって麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項2】
有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の麺類の製造方法。
【請求項3】
麺生地の調製に用いる全加水量が穀粉100質量部に対して20〜65質量部である請求項1または2に記載の麺類の製造方法。
【請求項4】
食塩および/またはかん水(かん粉)を、第1工程と第2工程の両方において加えるかまたは第2工程において加える請求項1〜3のいずれか1項に記載の麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸を用いて麺類を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、有機酸を用いることによって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有する麺類を円滑に製造する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
粘弾性が強くてモチモチとした食感を有する麺類を製造するために、麺類の製造時に加工澱粉(化工澱粉)を配合することが従来から広く行われている(例えば、特許文献1、2、3を参照)。しかし、加工澱粉は、澱粉に特定の化学処理を施して得られたものであるため、麺類に添加すると麺類の風味や食味の低下をもたらすことがある。
【0003】
また、麺類の保存性を向上させたり、麺類の腰を強くしたり、弾力性を増すために、麺生地の調製時に有機酸や食酢を添加したり、麺の製造後に有機酸を含有する水溶液などで処理することが行われている(特許文献4〜9など)。
しかし、麺生地の調製時に有機酸や食酢を添加する前記した従来技術で得られる麺類は、粘弾性やモチモチ感の向上効果は十分ではない。
また、麺の製造後に麺を有機酸や食酢の水溶液で処理する方法は、防黴や保存性の向上の点ではある程度の効果が得られるが、麺類の粘弾性やモチモチ感の向上効果は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−39334号公報
【特許文献2】特開2002−223713号公報
【特許文献3】特開2005−27643号公報
【特許文献4】特開昭54−126744号公報
【特許文献5】特開昭56−144064号公報
【特許文献6】特開昭57−105176号公報
【特許文献7】特開昭61−119151号公報
【特許文献8】特開昭61−227748号公報
【特許文献9】特開昭63−271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い粘弾性を有していてモチモチ感に優れ、しかも滑らかさおよび食味などの点でも優れる麺類およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々研究を重ね、当該研究の一環として、麺生地の調製に用いる全加水量の一部の水に所定量の有機酸を添加して濃縮有機酸水溶液をつくり、その濃縮有機酸水溶液を穀粉に加えて混捏する第1工程を行なった後に、残りの水を加えて更に混捏する第2工程を行なって麺生地を調製し、その麺生地を用いて麺類を製造するという従来にない新しい製麺方法を試みた。その結果、全く予想外なことに、本発明者らが試みた当該新しい製麺方法による場合は、穀粉に麺生地の製造に必要な水の全量を一度に加え、それと同時に有機酸や食酢を一緒に加えて有機酸や食酢を含有する麺類を製造する上記した従来技術や、麺の製造後に有機酸や食酢の水溶液で麺を処理する上記した従来技術に比べて、より強い粘弾性を有していてソフトでモチモチとした良好な食感を有し、その上滑らかさ、食味、風味などの点でも優れる麺類が得られること、しかも当該製麺方法で得られた麺類の品質が、加工澱粉を用いて得られる麺類の品質と同等であるかまたはそれよりも優れていることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 麺生地の調製に用いる全加水量の6.2〜75質量%の水に穀粉の質量に基づいて0.1〜1質量%の有機酸を添加して調製した濃縮有機酸水溶液を穀粉に加えて混捏する第1工程を行なった後、残りの水を加えて更に混捏する第2工程を行なって麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法である。
【0008】
そして、本発明は、
(2) 有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸から選ばれる少なくとも1種である前記(1)類麺類の製造方法;および、
(3) 麺生地の調製に用いる全加水量が穀粉100質量部に対して20〜65質量部である前記(1)または(2)の麺類の製造方法;
である。
【0009】
さらに、本発明は、
(4) 食塩および/またはかん水(かん粉)を、第1工程と第2工程の両方において加えるかまたは第2工程において加える前記(1)〜(3)のいずれかの麺類の製造方法である。
そして、本発明は、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法で得られる麺類である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法で麺類を製造することにより、加工澱粉を用いた場合と同等またはそれ以上に、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有し、しかも滑らかさおよび食味などの点でも優れる麺類を得ることができる。
本発明の製造方法で得られる麺類は、黴や菌類などが発生しにくく、保存性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明では、第1工程と第2工程からなる2段の工程を採用して麺生地を調製する。
第1工程では、穀粉に、麺生地の調製に用いる全加水量(第1工程と第2工程で加える水の合計量)の6.2〜75質量%の水に穀粉の質量に基づいて0.1〜1質量%の有機酸を添加して調製した濃縮有機酸水溶液を加えて混捏する。
【0012】
この第1工程で用い得る有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、酢酸および/または乳酸が酸味がきつくない点から好ましく用いられる。
本発明では、有機酸として、前記した有機酸自体を用いてもよいし、または前記した有機酸の1種または2種以上を含有する醸造酢(例えば、米酢、米黒酢、穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢、果実酢など)などの有機酸の水溶液を用いてもよい。
但し、有機酸として醸造酢などのような有機酸の水溶液を用いる場合は、醸造酢などの有機酸の水溶液中に含まれる水と外部から新たに加える水の合計量が、本発明で規定する「麺生地の調製に用いる全加水量の6.2〜75質量%の水」という規定の範囲内となるようにすることが必要である。
【0013】
また、穀粉としては、麺類の製造に従来から用いられている穀粉のいずれもが使用できる。本発明で用い得る穀粉の例としては、小麦粉、そば粉、米粉、大麦粉、大豆粉、澱粉類などを挙げることができ、これらの穀粉の1種を単独で用いてもよいし、または2種以上の穀粉を組み合わせて用いてもよい。そのうちでも、麺類を製造する際の作業性や得られる麺類の品質などの点から、本発明では、穀粉として小麦粉を単独で用いるかまたは小麦粉の割合が50質量%以上、特に90質量%以上であるようにして小麦粉と他の穀粉を組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
小麦粉としては、麺類の製造に従来から用いられている小麦粉のいずれもが使用でき、中力粉、準強力粉、強力粉、薄力粉、デュラム小麦粉、これらの2種または3種以上をブレンドした小麦粉などを用いることができる。そのうちでも、小麦粉としては、中力粉、準強力粉、デュラム小麦粉がモチモチ感に優れる麺類が得られる点から好ましく用いられる。
また、薄力粉、中力粉、準強力粉および強力粉は、それぞれ、タンパク質含量と灰分含量に基づいて一等粉、準一等粉、二等粉、三等粉、末粉に区分されているが、本発明では、小麦粉として、灰分含量の少ない上級粉(一等粉、準一等粉)だけでなく、灰分含量の多い下等粉(例えば、二等粉など)も用いることができ、下等粉を用いた場合にも、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有する麺類を与える有機酸含有小麦粉組成物を製造することができる。
【0015】
第1工程において濃縮有機酸水溶液の形態にして穀粉に加える有機酸の量は、上記したように麺生地の調製に用いる全穀粉の合計質量に基づいて0.1〜1.0質量%であることが必要であり、0.2〜1.0質量%であることが好ましく、0.2〜0.5質量%であることがより好ましい。
ここで、本発明における前記した有機酸の量は、「有機酸自体」の量をいう。そのため、醸造酢などのような有機酸の水溶液を用いる場合は、醸造酢などの有機酸の水溶液中に含まれている有機酸の量をいう。
有機酸を前記した範囲の量で穀粉に加えることによって、粘弾性が強くて、ソフトでモチモチとした良好な食感を有し、しかも滑らかさや食味にも優れる麺類を製造することができる。
有機酸の添加量が少なすぎると、粘弾性が強くてモチモチとした良好な食感を有する麺類が得られなくなり、一方有機酸の添加量が多すぎると、酸味が強くなり過ぎて、得られる麺類の食味や風味が低下し、しかも柔らかすぎて脆い食感となる。
【0016】
第1工程において有機酸水溶液の形態で穀粉に加える水の量は、麺生地の調製に用いる全加水量(第1工程および第2工程で加える水の合計質量)の6.2〜75質量%であることが必要であり、全加水量の10〜70質量%であることが好ましく、25〜60質量%であることがより好ましい
第1工程で穀粉に加える水の量が前記範囲であることによって、有機酸を有機酸水溶液の形態で穀粉全体に均一またはほぼ均一に添加することができ、しかも生地の混捏が円滑に行なえて、粘弾性が強くて、モチモチとした食感を有する麺類を得ることができる。
第1工程で穀粉に加える水の量が少なすぎると、有機酸を有機酸水溶液の形態で穀粉全体に均一またはほぼ均一に添加することが困難になり、粘弾性が強くて、モチモチとした食感を有する麺類を得ることが困難になる。一方、第1工程で穀粉に加える水の量が多すぎると、有機酸の濃度が薄くなってその効果が弱まるため、粘弾性が強くて、モチモチとした食感を有する麺類を得ることが困難になる。
【0017】
ここで、麺生地の調製に用いる全加水量(第1工程および第2工程で加える水の合計質量)は、製造する麺類の種類、穀粉の種類や性質、配合比率などによって異なり得るが、一般的には、穀粉(麺類の製造に用いる全穀粉の合計)100質量部に対して20〜65質量部であることが好ましく、30〜60質量部であることがより好ましく、40〜55質量部であることが更に好ましい。
麺生地の調製に用いる全加水量が少なすぎると、柔軟な麺生地が得られなくなって、麺の品質(特に加工性、粘弾性、モチモチ感などの食感)が低下したものになり易く、一方全加水量が多すぎると、生地がべたついて団子状になり、生地の混捏が円滑に行えなくなったり、麺帯や麺線が互いに粘着するなどして作業性が低下し、工業的な生産が困難になり易い。
【0018】
穀粉に有機酸水溶液を加える第1工程では、穀粉に濃縮有機酸水溶液を加えて混捏した生地が均一にまとまった状態になるまで、好ましくは15〜30℃、より好ましくは20〜25℃の温度下で混捏作業を行なうことが好ましい。
混捏作業は、麺生地を製造する際に通常用いられている混捏装置、例えばトーキョーメンキ社製「横型ミキサー」やその他の混捏装置を用いて行なうことができる。
第1工程での混捏時間としては、麺類の種類、穀粉の種類や性質、第1工程で穀粉に加える水(濃縮有機酸水溶液)の量、混捏に用いる装置の種類、規模、構造、回転数などによって変わり得るが、一般的には、1〜10分間、特に2〜5分間が好ましく採用される。
第1工程での混捏が不足すると生地が不均一になり易い。
【0019】
上記の第1工程で得られる有機酸を含有する混捏生地に、次いで第2工程において残りの水(麺生地の調製に用いる全加水量の93.8〜25質量%の水)を加えて更に混捏して麺生地を調製する。
第2工程では、残りの水を加えて混捏した生地がしっとりとした状態になるまで、好ましくは15〜30℃、より好ましくは20〜25℃の温度下で混捏作業を行なうことが好ましい。
第2工程は、第1工程で用いたのと同じ混捏装置をそのまま用いて行なってもよいし、または第1工程で用いたのとは異なる混捏装置を用いて行なってもよい。
第2工程での混捏時間としては、製造する麺類の種類、穀粉の種類や性質、第2工程で加える水の量、混捏に用いる装置の種類、規模、構造、回転数などによって変わり得るが、一般的には、3〜15分間、特に5〜10分間が好ましく採用される。
第2工程での混捏が不足すると生地が不均一で粉っぽくなり易く、一方第2工程での混捏が過剰になると生地がダレたり、べたついたりし易い。
【0020】
第2工程による混捏が終了した麺生地は、麺生地の調製に用いた穀粉100質量部に対して20〜65質量部の水を含有していることが好ましく、30〜60質量部の水を含有していることがより好ましく、40〜55質量部の水を含有していることが更に好ましい。第2工程による混捏が終了した麺生地における水分含量が少なすぎると、しっとりとした生地が得られなくなって、麺の品質(特に粘弾性、モチモチ感)が低下したものになり易く、一方水の含有量が多すぎると、麺生地がべたついて麺線や麺皮への切り出し工程での作業性が悪くなったり、乾燥して乾燥麺や半乾燥麺を製造する際に乾燥に長時間を要するようになったり、得られる麺類の食感が粘弾性のない弱いものになり易い。
【0021】
本発明では、麺生地の調製時に、例えば、食塩、かん水(かん粉)、乳化剤、着色料、防腐剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸などの栄養強化剤、山芋粉、卵液、卵粉末、茶粉末、海藻粉末などの添加剤の1種または2種以上を添加することができる。これらの添加剤を添加する場合は、第1工程と第2工程のいずれか一方または両方で加えることができるが、第1工程と第2工程の両方において加えるかまたは第2工程において加えることが好ましい。特に、添加剤の添加量が少ないときは、第2工程で添加することがより好ましい。また、添加剤の添加量が多くて第2工程のみにおいて添加すると均一に添加できない場合は、第1工程と第2工程の両方において加えることが好ましい。前記した添加剤を添加する際の添加量や組み合わせも特に制限されず、製造する麺の種類などに応じて、従来の製麺技術におけるのと同様にして行なえばよい。
【0022】
本発明で製造する麺の種類は特に制限されず、例えば、うどん、冷麦、そうめん、きしめん、中華麺、焼きそば、麺皮類(ギョウザ、シュウマイ、春巻、ワンタンの皮など)、日本そば、スパゲッティ、マカロニなどのいずれであってもよい。また、麺の形態も何ら制限されず、生麺、乾燥麺、半乾燥麺、茹麺、蒸麺、冷凍麺、即席麺などのいずれであってもよい。
そのため、上記の第1工程および第2工程を経て得られた麺生地を用いて行う以降の製麺工程は、製造する麺の種類などに応じて、従来技術で採用されているのと同様の方法を採用して行なえばよい。
【実施例】
【0023】
以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されない。
【0024】
《実施例1》
(1) 水2000g(2L)に酢酸(関東化学社製「酢酸」、純度100%)50gおよび食塩200gを添加して、酢酸水溶液2250gを調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)10kg(10000g)に、上記(1)で調製した酢酸水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で5分間混捏して生地を調製した(第1工程)。
(3) 上記(2)で得られた生地に、食塩200gを水2000g(2L)に溶解した食塩水を加えて、同じ混捏装置を使用して20℃で10分間混捏して麺生地を調製した(第2工程)。
(4) 上記(3)で得られた麺生地を製麺ロールにてロール間隔10mmで麺帯にまとめ、室温下(20℃)にビニール袋中で30分間熟成させた。熟成後、この麺帯を更に製麺ロールにて圧延して約2.5mm厚の麺帯にした後、No.10角切刃を用いて麺線に切り出して生うどんを製造した。
(5) 上記(4)で得られた生うどんを十分量の沸騰水中で茹で歩留りが250%になるようにして茹で時間を調節しながら茹上げた後、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(6) 上記(5)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0025】
《実施例2》
(1) 水890g(0.89L)に穀物酢(ミツカン社製「穀物酢」、酢酸含量4.2質量%、水分含量93.3質量%)1190g(酢酸50gおよび水1110g)および食塩200gを添加して、穀物酢水溶液2280g(酢酸含量50g、水含量2000g)を調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)10kg(10000g)に、上記(1)で調製した穀物酢水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で5分間混捏して生地を調製した(第1工程)。
(3) 上記(2)で得られた生地に、食塩200gを水2000g(2L)に溶解した食塩水を加えて、同じ混捏装置を使用して20℃で10分間混捏して麺生地を調製した(第2工程)。
(4) 上記(3)で得られた麺生地を用いて、実施例1の(4)と同様にして生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げ、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(5) 上記(4)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0026】
《実施例3》
(1) 水1950g(1.95L)に乳酸(CSMジャパン社製「PURAC FCC 50」;純度50%)100g(乳酸50gに相当)および食塩200gを添加して、乳酸水溶液2250gを調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)10kg(10000g)に、上記(1)で調製した乳酸水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で5分間混捏して生地を調製した(第1工程)。
(3) 上記(2)で得られた生地に、食塩200gを水2000g(2L)に溶解した食塩水を加えて、同じ混捏装置を使用して20℃で10分間混捏して麺生地を調製した(第2工程)。
(4) 上記(3)で得られた麺生地を用いて、実施例1の(4)と同様にして生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げ、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(5) 上記(4)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0027】
《比較例1》
(1) 水4000g(4L)に酢酸(関東化学社製「酢酸」、純度100%)50gおよび食塩400gを添加して、食塩を含有する酢酸水溶液4450gを調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)10kg(10000g)に、上記(1)で調製した食塩を含有する酢酸水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で15分間混捏して、1段で麺生地を調製した。
(3) 上記(2)で得られた麺生地を用いて、実施例1の(4)と同様にして生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げ、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(4) 上記(3)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0028】
《比較例2》
(1) 水3950g(3.95L)に乳酸(CSMジャパン社製「PURAC FCC 50」;純度50%)100g(乳酸50gに相当)および食塩400gを添加して、食塩を含有する乳酸水溶液4450gを調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)10kg(10000g)に、上記(1)で調製した食塩を含有する乳酸水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で15分間混捏して、1段で麺生地を調製した。
(3) 上記(2)で得られた麺生地を用いて、実施例1の(4)と同様にして生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げ、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(4) 上記(3)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0029】
《対照例1》
(1) 実施例1で使用した小麦粉8kg(8000g)、加工澱粉(松谷化学工業社製「さくら」;澱粉をアセチル化処理して得られた加工澱粉)2kg(2000g)、食塩400gおよび水4000gを混合した後(食塩は予め水に溶解しておいた)、混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で15分間混捏して、1段で麺生地を調製した。
(2) 上記(1)で得られた麺生地を用いて、実施例1の(4)と同様にして生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げ、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(3) 上記(2)で得られた茹麺の食感および食味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
上記の表2の結果にみるように、実施例1〜3では、麺生地の調製に用いる全加水量の6.2〜75質量%の範囲内の水に穀粉の質量に基づいて0.1〜1質量%の範囲内の有機酸を添加した濃縮有機酸水溶液を穀粉に加えて混捏する第1工程を行なった後、残りの水を加えて更に混捏する第2工程を行なって麺生地を調製したことにより、穀粉に全加水量の水と穀粉の質量に基づいて0.1〜1質量%の範囲内の量の有機酸を一度に加えて1段の工程で麺生地を製造した比較例1および2に比べて、粘弾性がより強く、ソフトでモチモチした良好な食感を有する麺(うどん)が得られている。
【0033】
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)において、麺生地を製造するための第1工程における酢酸の添加量を変えた以外は、実施例1の(1)〜(4)と同じ操作を行なって生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げた後、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の食感および食味を上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0034】
【表3】
【0035】
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)において、麺生地を製造するための第1工程における加水量を下記の表4に示すように変えて(第1工程における酢酸の添加量は実施例1と同様に小麦粉10000gに対して50g)、実施例1の(1)〜(4)と同様の操作を行なって生うどんを製造した後、実施例1の(5)と同様にして茹で歩留りが250%になるように茹で上げた後、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の食感および食味を上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0036】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製造方法によって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有し、しかも滑らかさおよび食味にも優れる麺類を円滑に製造することができるため、本発明の製造方法は高品質の麺類の製造方法として有用である。