(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板保持装置および基板保持方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、重合基板の剥離を行う剥離システムに対して本願の開示する基板保持装置を適用する場合の例について説明するが、本願の開示する基板保持装置は、剥離システム以外にも適用可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図であり、
図2は、重合基板、被処理基板および支持基板の模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0011】
図1に示す第1の実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板Tを、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離するシステムである(
図2参照)。
【0012】
図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
【0013】
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、たとえば、化合物半導体ウェハまたはガラス基板などを用いることができる。
【0014】
剥離システム1は、
図1に示すように、搬入出ステーション10と、第1搬送領域20と、剥離処理ステーション30と、第2搬送領域40と、制御装置50とを備える。搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30は第1搬送領域20を介してY軸方向に並べて配置される。また、搬入出ステーション10、第1搬送領域20および剥離処理ステーション30のX軸負方向側には、第2搬送領域40が配置される。
【0015】
剥離システム1では、搬入出ステーション10へ搬入された重合基板Tが第1搬送領域20を介して剥離処理ステーション30へ搬送され、剥離処理ステーション30において被処理基板Wと支持基板Sとに剥離される。剥離後の被処理基板Wは第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、剥離後の支持基板Sは第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送される。なお、剥離システム1では、不良となった被処理基板Wを第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送することもできる。
【0016】
搬入出ステーション10では、複数の被処理基板Wが収容されるカセットCw、複数の支持基板Sが収容されるカセットCsおよび複数の重合基板Tが収容されるカセットCtが剥離システム1の外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション10には、カセット載置台11が設けられており、このカセット載置台11に、カセットCw,Cs,Ctのそれぞれが載置される複数のカセット載置板12a〜12cが設けられる。なお、カセットCwには、たとえば、不良品として剥離処理ステーション30から搬送されてきた被処理基板Wが収容される。
【0017】
第1搬送領域20では、搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30間における被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送が行われる。第1搬送領域20には、被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送を行う第1搬送装置21が設置される。
【0018】
第1搬送装置21は、水平方向への移動、鉛直方向への移動および鉛直軸を中心とする旋回が可能な搬送アーム22と、この搬送アーム22の先端に取り付けられたフォーク23とを備える搬送ロボットである。かかる第1搬送装置21は、フォーク23を用いて基板を保持するとともに、フォーク23によって保持された基板を搬送アーム22によって所望の場所まで搬送する。
【0019】
剥離処理ステーション30では、重合基板Tの剥離、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの洗浄等が行われる。この剥離処理ステーション30には、剥離装置31、受渡室32、第1洗浄装置33および第2洗浄装置34が、X軸正方向に、第1洗浄装置33、受渡室32、剥離装置31、第2洗浄装置34の順で並べて配置される。
【0020】
剥離装置31では、第1搬送装置21によって搬送された重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。
【0021】
受渡室32には、剥離装置31によって重合基板Tから剥離された被処理基板Wを第1洗浄装置33へ搬送する第2搬送装置110が設置される。第2搬送装置110は、ベルヌーイチャックであり、被処理基板Wを非接触状態で保持して第1洗浄装置33へ搬送する。
【0022】
ここで、ベルヌーイチャックは、保持面に設けられた噴出口から被処理基板Wの板面へ向けて気体を噴射させ、保持面と被処理基板Wの板面との間隔に応じて気体の流速が変化することに伴う負圧の変化を利用して被処理基板Wを非接触状態で保持する。
【0023】
第1洗浄装置33は、第2搬送装置110によって搬送された被処理基板Wの洗浄を行う。第1洗浄装置33は、被処理基板Wを吸着保持しながら回転するスピンチャック210を備え、かかるスピンチャック210を用いて被処理基板Wを回転させながら、被処理基板Wに対して洗浄液を吹き付けることによって被処理基板Wを洗浄する。かかる第1洗浄装置33の構成については、
図3を用いて説明する。
【0024】
第1洗浄装置33によって洗浄された被処理基板Wは、第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、後処理ステーションMにおいて所定の後処理が施される。なお、所定の後処理とは、たとえば被処理基板Wをマウントする処理や、被処理基板Wをチップ毎にダイシングする処理などである。
【0025】
第2洗浄装置34は、剥離装置31において重合基板Tから剥離された支持基板Sの洗浄を行う。第2洗浄装置34によって洗浄された支持基板Sは、第1搬送装置21によって搬入出ステーション10へ搬送される。
【0026】
第2搬送領域40は、剥離処理ステーション30と後処理ステーションMとの間に設けられる。第2搬送領域40には、X軸方向に延在する搬送路41上を移動可能な第3搬送装置120が設置され、この第3搬送装置120によって剥離処理ステーション30および後処理ステーションM間における被処理基板Wの搬送が行われる。第3搬送装置120は、第2搬送装置110と同様、ベルヌーイチャックの原理を利用して被処理基板Wを非接触状態で搬送する。
【0027】
また、第2搬送領域40には、第3洗浄装置43および第4洗浄装置44が、X軸負方向に、第3洗浄装置43および第4洗浄装置44の順で並べて配置される。これら第3洗浄装置43および第4洗浄装置44は、たとえば第1洗浄装置33と同様の構成の洗浄装置であり、スピンチャック210と同様のスピンチャック220,230をそれぞれ備える。被処理基板Wは、これら第3洗浄装置43および第4洗浄装置44によって洗浄されたうえで、後処理ステーションMへ受け渡される。
【0028】
さらに、第2搬送領域40には、剥離システム1と後処理ステーションMとの間で被処理基板Wの受け渡しを行うための受渡部45が配置される。受渡部45は、被処理基板Wを吸着保持するポーラスチャック240を備える。被処理基板Wは、第3洗浄装置43および第4洗浄装置44によって洗浄された後、第3搬送装置120によってポーラスチャック240上に載置され、ポーラスチャック240によって吸着保持される。
【0029】
なお、ポーラスチャック240は、スピンチャック210,220,230と異なり回転機能を有しておらず、また、被処理基板Wの洗浄を行うものではないためスピンチャック210と比較して径が大きい。
【0030】
制御装置50は、剥離システム1の動作を制御する装置であり、たとえば搬送制御部51を備える。搬送制御部51は、スピンチャック210による被処理基板Wの吸着保持動作や、第2搬送装置110および第3搬送装置120による基板の搬送等を制御する処理部である。
【0031】
なお、制御装置50は、たとえばコンピュータであり、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置50の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体として、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0032】
被処理基板Wの厚さは、たとえば35〜100μmと薄く、反りが生じ易い。特に、被処理基板Wが凹状に反っている場合、スピンチャック210の吸着面と被処理基板Wの外周部との距離が離れてしまうため、被処理基板Wがスピンチャック210によって適切に吸着保持されない可能性がある。このような場合、第2搬送装置110や第3搬送装置120などの基板保持装置と、スピンチャック210,220,230やポーラスチャック240などの基板保持装置との間での被処理基板Wの受け渡しが困難となるおそれがある。
【0033】
そこで、第1の実施形態に係る剥離システム1では、スピンチャック210の吸着面を径方向に沿って複数の領域に分割し、内側の領域から被処理基板Wを段階的に吸着保持することで、被処理基板Wの反りを矯正することとした。
【0034】
以下では、本願の開示する基板保持装置の一例であるスピンチャック210の具体的な構成および動作について説明する。なお、基板保持装置の他の一例であるスピンチャック220,230は、スピンチャック210と同一構成であるため、これらスピンチャック220,230の構成および動作については説明を省略する。
【0035】
<2.第1洗浄装置の構成>
まず、第1洗浄装置33の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、第1洗浄装置33の模式側面図である。
【0036】
図3に示すように、第1洗浄装置33は、内部を密閉可能な処理容器331を有している。処理容器331の側面には、被処理基板Wの搬入出口(図示せず)が形成され、かかる搬入出口には、図示しない開閉シャッタが設けられる。
【0037】
処理容器331内の中央部には、被処理基板Wを吸着保持して回転させるスピンチャック210が設けられる。スピンチャック210は、円板状の本体部211と、本体部211の上面側に設けられた吸着保持部212とを備える。
【0038】
吸着保持部212は、たとえば炭化ケイ素などのセラミック素材で形成される多孔質体を含んで構成される。スピンチャック210は、本体部211の上面に載置された被処理基板Wを吸着保持部212が有する多孔質体を介して吸引することにより、かかる被処理基板Wを吸着保持する。
【0039】
スピンチャック210の下方には、支柱213が設けられる。支柱213は、下端部が基部214によって支持されるとともに、上端部においてスピンチャック210を支持する。基部214は、たとえば処理容器331の床面に固定される。
【0040】
基部214には、支柱213を回転させるモータ等の駆動部(図示せず)が設けられる。かかる駆動部によって支柱213が回転すると、かかる回転に伴ってスピンチャック210が回転することとなる。また、図示しない駆動部には、シリンダ等の昇降駆動源が設けられており、かかる昇降駆動源によって支柱213およびスピンチャック210を昇降させることができる。
【0041】
また、スピンチャック210の周囲には、被処理基板Wから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ333が設けられる。カップ333の下面には、回収した液体を排出する排出管334と、カップ333内の雰囲気を真空引きして排気する排気管335が接続される。
【0042】
また、第1洗浄装置33は、被処理基板Wに対して有機溶剤等の洗浄液を供給する洗浄液ノズル68を備える。洗浄液ノズル68は、処理容器331内に設けられた図示しないレールに沿って、カップ333外の待機部69からカップ333内の被処理基板Wの中心位置まで移動可能である。また、洗浄液ノズル68は、図示しない昇降機構によって被処理基板Wまでの高さが調節される。
【0043】
洗浄液ノズル68は、たとえば2流体ノズルであり、洗浄液を供給するための供給管61および窒素等の不活性ガスを供給するための供給管64とそれぞれ接続している。供給管61には、内部に洗浄液を貯留する洗浄液供給源62が、洗浄液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群63を介して接続される。また、供給管64には、内部に不活性ガスを貯留するガス供給源65が、不活性ガスの流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群66を介して接続される。
【0044】
洗浄液ノズル68へ供給された洗浄液および不活性ガスは、洗浄液ノズル68内で混合され、洗浄液ノズル68から被処理基板Wへ供給される。第1洗浄装置33は、スピンチャック210を回転させつつ、被処理基板Wに対して洗浄液等を供給することで、被処理基板Wを洗浄する。
【0045】
かかる第1洗浄装置33では、洗浄液等が被処理基板Wの表面だけでなく裏面へも供給されるように、スピンチャック210の本体部211の径が、被処理基板Wの径よりも小さく形成されている。したがって、被処理基板Wは、スピンチャック210よりも外側、具体的には、吸着保持部212よりも外側の部分が吸着保持されないこととなる。被処理基板Wの反りは、このような状況において発生し易い。
【0046】
一方、第1の実施形態に係る吸着保持部212は、第1保持部212aと第2保持部212bとを備える。すなわち、吸着保持部212の吸着面は、第1保持部212aの吸着面と、第2保持部212bの吸着面とに分割された状態となっている。
【0047】
<3.スピンチャックの構成および動作>
次に、スピンチャック210の構成および動作について
図4Aおよび
図4Bを用いてより具体的に説明する。
図4Aは、スピンチャック210の模式平面図である。また、
図4Bは、第1保持部212aおよび第2保持部212bと吸気装置との接続関係を示す図である。
【0048】
図4Aに示すように、吸着保持部212は、本体部211と同心円状の第1保持部212aおよび第2保持部212bに分割される。
【0049】
第1保持部212aは、本体部211の中央部に配置され、被処理基板Wの中央部を含む領域(以下、「第1領域」と記載する)を吸着保持する。また、第2保持部212bは、第1保持部212aよりも外周側に配置され、被処理基板Wの第1領域よりも外周側の領域(以下、「第2領域」と記載する)を吸着保持する。
【0050】
また、
図4Bに示すように、第1保持部212aおよび第2保持部212bは、吸気装置216に接続される。具体的には、第1保持部212aは、吸気管215aを介して吸気装置216に接続され、第2保持部212bは、吸気管215bを介して吸気装置216に接続される。なお、吸気装置216は、たとえば基部214内に配置され、各吸気管215a,215bは、支柱213内に配置される。
【0051】
各吸気管215a,215bには、吸気装置216から供給される気体の流量を調整するためのバルブ217a,217b(流量調整弁の一例に相当)がそれぞれ設けられており、制御装置50の搬送制御部51によってかかるバルブ217a,217bの開閉が制御される。搬送制御部51は、かかるバルブ217a,217bの開閉を制御することによって、第1保持部212aおよび第2保持部212bの作動タイミング、すなわち、被処理基板Wの吸着保持タイミングを制御する。
【0052】
なお、上述したように、スピンチャック210は回転機能を備える。このため、第1の実施形態では、第1保持部212aおよび第2保持部212bを単一の吸気装置216に接続し、吸気管等の配線を簡素化することで、吸気管等によってスピンチャック210の回転動作が阻害されないようにしている。
【0053】
次に、スピンチャック210による被処理基板Wの吸着保持動作について
図5A〜
図5Cを用いて説明する。
図5A〜
図5Cは、スピンチャック210による吸着保持動作の説明図である。
【0054】
図5Aに示すように、被処理基板Wは、スピンチャック210上で凹状に反っているものとする。すなわち、被処理基板Wは、外周部がスピンチャック210の吸着保持部212から離れる方向に反っているものとする。このとき、第1保持部212aおよび第2保持部212bを作動させる前における被処理基板Wと第2保持部212bとの最大距離をL1とする。なお、理解を容易にするために、被処理基板Wの反りを実際よりも強調して示している。
【0055】
搬送制御部51は、第1保持部212aおよび第2保持部212bのうち、まず、第1保持部212aだけを作動させる。具体的には、搬送制御部51は、バルブ217a(
図4B参照)のみを開放し、第1保持部212aだけが吸気されるようにする。
【0056】
このように第1保持部212aだけが吸気を行うことで、第2保持部212bによる空引きがなくなるため、その分、第1保持部212aは、より強い吸着力で被処理基板Wを吸着保持することとなる。この結果、
図5Bに示すように、被処理基板Wの中央部を含む第1領域が、第1保持部212aによって吸着保持される。また、被処理基板Wの第1領域が第1保持部212aによって吸着保持されることで、被処理基板Wおよび第2保持部212b間の最大距離が、L1からL2に短縮される。
【0057】
つづいて、搬送制御部51は、第2保持部212bを作動させる。具体的には、搬送制御部51は、バルブ217b(
図4B参照)を開放し、第1保持部212aおよび第2保持部212bの両方を用いて吸気を行うようにする。
【0058】
このとき、被処理基板Wおよび第2保持部212b間の最大距離が、L1からL2に短縮された状態となっているため、第2保持部212bは、被処理基板Wとの最大距離がL1であるときと比較して容易に被処理基板Wを吸着保持することができる。
【0059】
この結果、
図5Cに示すように、被処理基板Wの第2領域が第2保持部212bによって吸着保持され、吸着保持部212の全面で被処理基板Wが吸着保持された状態となる。
【0060】
上述してきたように、第1の実施形態に係るスピンチャック210は、第1保持部212aと、第2保持部212bとを備える。第1保持部212aは、被処理基板Wの中央部を含む第1領域を吸着保持する。また、第2保持部212bは、被処理基板Wの第1領域よりも外周側に位置する第2領域を吸着保持する。そして、第1の実施形態では、第1保持部212aが被処理基板Wの第1領域を吸着保持した後に、第2保持部212bが被処理基板Wの第2領域を吸着保持することとした。
【0061】
すなわち、第1保持部212aによって被処理基板Wの第1領域を吸着保持させることによって第2保持部212bと被処理基板Wとの距離を縮めたうえで、第2保持部212bによって被処理基板Wの第2領域を吸着保持させることとした。これにより、第2保持部212bは、被処理基板Wが反っていたとしても、かかる被処理基板Wを吸着保持することができるようになる。したがって、第1の実施形態によれば、反りのある基板を適切に保持することができる。
【0062】
なお、第1保持部212aの吸着面積(すなわち、被処理基板Wの第1領域の面積)は、第2保持部212bの吸着面積(すなわち、被処理基板Wの第2領域の面積)よりも小さく形成される(
図4A参照)。これは、第1保持部212aが、主に、被処理基板Wおよび第2保持部212b間の距離を狭めることを目的とするものであり、被処理基板Wおよび第2保持部212b間の距離をわずかでも狭くすることで、第2保持部212bによる被処理基板Wの吸着保持を容易化することができるためである。
【0063】
また、第3洗浄装置43が備えるスピンチャック220、第4洗浄装置44が備えるスピンチャック230、受渡部45が備えるポーラスチャック240(
図1参照)も、スピンチャック210と同様の構成であり、スピンチャック210と同様の吸着保持動作を行うものとする。
【0064】
(第2の実施形態)
ところで、第1保持部212aに用いられる多孔質体および第2保持部212bに用いられる多孔質体は、同一である必要はなく、異なる素材のものを使用してもよい。以下では、かかる点について
図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施形態に係る第1保持部212aが有する多孔質体および第2保持部212bが有する多孔質体の疎密関係を示す図である。
【0065】
図6に示すように、たとえば、第1保持部212aの多孔質体として、比較的密度の低い多孔質体を用い、第2保持部212bの多孔質体として、第1保持部212aに用いられる多孔質体よりも密度の高い多孔質体を用いてもよい。ここで、「密度が低い」とは、たとえば、多孔質体に形成される気孔の大きさが大きいこと、もしくは、多孔質体に形成される気孔の数が少ないことを意味する。
【0066】
このように、第2保持部212bに用いられる多孔質体の密度を第1保持部212aに用いられる多孔質体の密度よりも高くすることで、第2保持部212bの吸着力を相対的に高めることができ、反りのある被処理基板Wをより確実に吸着保持することができる。
【0067】
また、上記とは反対に、密度の高い多孔質体を第1保持部212aの多孔質体として用い、第1保持部212aに用いられる多孔質体よりも密度の低い多孔質体を第2保持部212bの多孔質体として用いることとしてもよい。
【0068】
すなわち、第1の実施形態に係るスピンチャック210のように、第1保持部212aおよび第2保持部212bが単一の吸気装置216に接続される場合、
図5Bに示す状態から
図5Cに示す状態へ移行する際に、第1保持部212aの吸気量が低下し、第1保持部212aの吸着力が弱まることとなる。この結果、第1保持部212aが被処理基板Wを吸着保持しきれず、被処理基板Wの反りが元の状態(すなわち、
図5Aに示す状態)に戻ってしまう可能性がある。
【0069】
そこで、第1保持部212aに用いる多孔質体の密度を第2保持部212bに用いる多孔質体の密度よりも高くし、第1保持部212aの吸着力を相対的に高めることとすれば、
図5Bに示す状態から
図5Cに示す状態へ移行する際にも、被処理基板Wの反りが元の状態に戻ってしまう事態を生じ難くすることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
ところで、上述した第1の実施形態では、第1保持部212aと第2保持部212bとが単一の吸気装置216(
図4B参照)に接続される場合の例を示したが、第1保持部および第2保持部を、それぞれ異なる吸気装置に接続してもよい。以下では、かかる点について
図7を用いて説明する。
図7は、第3の実施形態に係る第1保持部および第2保持部と吸気装置との接続関係を示す図である。
【0071】
図7に示すように、スピンチャック210_1が備える吸着保持部212_1は、第1保持部212a_1と、第2保持部212b_1とに分割される。
【0072】
第1保持部212a_1は、吸気管215a_1を介して吸気装置216aに接続され、第2保持部212b_1は、吸気管215b_1を介して吸気装置216bに接続される。吸気管215a_1には、吸気装置216aから供給される気体の流量を調整するためのバルブ217a_1が設けられ、吸気管215b_1には、吸気装置216bから供給される気体の流量を調整するためのバルブ217b_1が設けられる。
【0073】
このように、第1保持部212a_1および第2保持部212b_1に対して吸気装置216a,216bを個別に接続してもよい。これにより、第1保持部212a_1および第2保持部212b_1のうち一方を作動させた場合でも、他方の吸気量(吸着力)が変化しないため、第1保持部212a_1および第2保持部212b_1の吸着動作を安定して行うことができる。
【0074】
(第4の実施形態)
また、上述した各実施形態では、吸着保持部を第1保持部および第2保持部の2つに分割する場合の例について説明したが、吸着保持部は、3つ以上に分割されてもよい。以下では、かかる点について説明する。
図8は、スピンチャックの他の構成を示す模式平面図である。
【0075】
図8に示すように、スピンチャック210_2が備える吸着保持部212_2は、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの3つに分割される。第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eは、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの順で、本体部211_2の中心部から外周部へ向けて同心円状に配置される。
【0076】
そして、スピンチャック210_2は、本体部211_2の中心部から順に、すなわち、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの順で被処理基板Wの吸着保持を行う。このように、吸着保持部212_2の分割数を増やすことで、被処理基板Wの反りを滑らかに矯正することができる。
【0077】
なお、第1の実施形態において説明したように、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの吸着面積は、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの順に大きくすることが好ましい。
【0078】
また、第2の実施形態において説明したように、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eが有する多孔質体の密度を、第1保持部212c、第2保持部212dおよび第3保持部212eの順に高くしてもよい。これにより、第1保持部212cよりも第2保持部212d、第2保持部212dよりも第3保持部212eの吸着力を相対的に高めることができ、反りのある被処理基板Wをより確実に吸着保持することができる。
【0079】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るスピンチャックの構成について
図9を参照して説明する。
図9は、第5の実施形態に係るスピンチャックの模式側面図である。
【0080】
上述した第1〜第4の実施形態では、スピンチャックの上面(被処理基板Wの保持面)が平面に形成される場合の例について説明した(
図4B参照)。これに対し、第5の実施形態に係るスピンチャック210_3は、
図9に示すように、吸着保持部212の下部およびその周縁を囲むように配置される本体部211_3の上面が、吸着保持部212(第1保持部212aおよび第2保持部212b)の上面よりも高さhだけ高く形成される。
【0081】
このように、スピンチャック210_3は、外周部が第1保持部212aおよび第2保持部212bの上面よりも高さhだけ高くなっている。かかる形状とすることにより、スピンチャック210_3の外周部と吸着保持部212と凹状に沿った被処理基板Wとによって狭い空間が形成されて吸着力が高まるため、凹状に反った被処理基板Wをより適切に吸着することができる。
【0082】
高さhは、0.1〜1.0mm程度であることが好ましい。高さhが0.1mm未満であると上述した狭い空間が形成されにくく、1.0mmを超えると被処理基板Wを吸着した際に被処理基板Wが割れるおそれがあるためである。
【0083】
なお、剥離後の被処理基板Wは、保持せず放置した状態では、周縁が反ってしまう。そこで、剥離後の被処理基板Wは、常に周縁が反らないように、第2搬送装置110により被処理基板Wを平らな(反らない)状態に保持して、スピンチャック210へ受け渡される。同様に、第3搬送装置120により被処理基板Wを平らな(反っていない)状態に保持して、スピンチャック210,220,230、ポーラスチャック240の間をそれぞれ搬送される。
【0084】
ここで、スピンチャック210に対して、第2搬送装置110が被処理基板Wを平らな(反っていない)状態で渡しても、スピンチャック210の周縁部の保持力が弱い場合には、第2搬送装置110からスピンチャック210に被処理基板Wを渡した直後に被処理基板Wは元の形状に戻り、被処理基板Wの周縁が反ってしまう。これは、スピンチャック220,230、ポーラスチャック240においても同様である。しかし、上述した第1〜第5の実施形態によれば、スピンチャック210,220,230、ポーラスチャック240において、被処理基板Wの周縁部を強く保持できるため、被処理基板Wの周縁部が反ることを防止することができる。
【0085】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係るスピンチャックの構成について
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、第6の実施形態に係るスピンチャックの一例を示す模式平面図であり、
図11は、第6の実施形態に係るスピンチャックの他の一例を示す模式平面図である。
【0086】
上述した第1の実施形態では、第1保持部212aの吸着面積が、第2保持部212bの吸着面積よりも小さい場合の例について説明した。しかし、
図10に示すスピンチャック210_4のように、第1保持部212aの吸着面積と第2保持部212bの吸着面積とは、同等であってもよい。また、
図11に示すスピンチャック210_5のように、第1保持部212aの吸着面積が、第2保持部212bの吸着面積より大きくてもよい。いずれの場合であっても、第1保持部212aと第2保持部212bとを備えることで、被処理基板Wを反ることなく保持することが可能となる。
【0087】
上述してきた第1〜第6の実施形態は適宜組み合わせることが可能であり、これらの実施形態を組み合わせることにより、反りのある被処理基板Wをより適切に保持することが可能となる。
【0088】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。