(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空容器と、この真空容器内部に配置され内部でプラズマが形成される処理室と、この処理室内に配置されその上面に試料が載置される試料台と、前記処理室の上方に配置され前記プラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円形の板部材と、この板部材の上方に配置され上下方向にその軸を備えた円筒形を有しその内部に前記電界が導入される空洞部と、この空洞の上部の中心に連結され上下に延在した内部を前記電界が伝播する円筒形の導波管と、一方の端部がこの円筒形の導波管の上端部と連結され水平方向に延在した内部を前記円筒形の導波管に向かって前記電界が伝播する断面が矩形を有した導波管と、この矩形の導波管の他方の端部に配置され前記電界を発生する発生器と、この発生器と前記矩形の導波管の一方の端部との間に配置された整合器と、前記円筒形の導波管上に配置されこの導波管の内部に前記電界の円偏波を生成する手段と、備え、
前記空洞部が、前記板部材を底面とする径の大きな円筒形の空洞を有した第1の円筒空洞部及びこの第1の円筒空洞部の上方でこれに接続されて配置され前記導波管の下方で当該導波管と連結された第2の円筒空洞部であって前記導波管より径が大きく前記第1の円筒空洞部より径の小さな円筒形の空洞を有した第2の円筒空洞部と、前記第1及び第2の円筒空洞部の間でこれらを接続する第1の段差部と、前記第2の円筒空洞部と前記導波管の下端部との間に配置された第2の段差部とを備え、前記円筒形の導波管から伝播された前記電界により前記第2の円筒空洞部内において形成された第2の電界及び前記第2の円筒空洞部から伝播されたこの第2の電界により前記第1の円筒空洞部内に形成された第1の電界にが前記処理室内に供給されて前記プラズマが形成されるプラズマ処理装置。
【背景技術】
【0002】
国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Semiconductor;ITRS)によれば、2012年にMPU物理ゲート長22nmノードの量産が開始され、ウエハ面内の許容ゲート長差(CDU)<1.0nmの性能確保が必要となる。さらに、2015年に450mmウエハの処理のためのラインが立ち上がることが予想されている。これに伴い、半導体デバイスの微細化と、ウエハの大口径化に対応した次世代のプラズマ処理装置が必要となり、特に上記の450mmウエハ径(18inch)で、広範囲に渡って高い均一性を持つプラズマ源の開発が急務となる。
【0003】
半導体デバイス製造工程で、プラズマエッチング,プラズマCVD,プラズマエッチング等のプラズマ処理が広く用いられている。プラズマは、真空処理室内に高周波電力やマイクロ波電力を投入して内部に供給されたガスの粒子を励起して生成する。上記プラズマ処理では、真空処理室中に配置した半導体ウエハ等の基板状の試料がこのプラズマを用いて処理される。
【0004】
すなわち、このプラズマ中のイオン等の荷電粒子をウエハの表面に誘引しプラズマにより形成された高い反応性を有するラジカル(活性粒子)とウエハ表面に配置された膜状の材料との化学反応を促進して当該膜のプロセスを進行させ所望の形状を得ている。このようなプラズマ処理には、半導体デバイスの微細化に対応した圧力領域での形状制御性とウエハ面内処理均一性が求められている。特に、マイクロ波2.45GHzとソレノイドコイル磁場(875Gauss)とを用いてECR(Electron Cyclotron Resonance)を生じさせてプラズマを形成する有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置は、低圧力で高密度なプラズマを生成できるため、半導体製造工程で用いられてきた。
【0005】
このような従来の技術の例としては、特開平7−235394号公報(特許文献1)に開示のものが知られている。この従来技術では、2.45GHzのマイクロ波を矩形導波管と円形導波管を伝播させて円筒空洞内に導入していた。この時、マイクロ波の伝播は、矩形導波管をTE01モード、円筒導波管をTE11モードで伝播していた。このモードで円筒空洞内に入ったマイクロ波は、マイクロ波透過窓とシャワープレートを介して真空処理室に導入される。そして、真空処理室を取り囲むソレノイドコイルによって処理室内の軸方向に磁場を形成し、径方向に875Gaussの等磁場面を形成する。2.45GHzの電界と875Gaussの磁界にて、ECRを起こし、プラズマを真空処理室に発生している。具体的には、電子は磁場からローレンツ力を受け、マイクロ波がサイクロトロン周波数となるため、電子は同位相の電場を感じ、電力に応じて直流的に加速する。このため、高速電子が電離を促進し、低圧でも高密度プラズマを形成している。
【0006】
マイクロ波プラズマエッチング装置の円筒空洞部内では、円筒導波管を通ったTE11モードのマイクロ波は、円筒空洞部で処理室の複数の箇所で反射端を持つ定在波となっている。この反射端は、石英製マイクロ波透過窓,石英製シャワープレート,プラズマ,プラズマを透過し処理室内の電極(試料台),処理室下端など至る箇所が端点となる。この他に、石英が誘電体のため、マイクロ波透過窓内,シャワープレート内,マイクロ波透過窓の下面とシャワープレートの上面の間で反射を繰り返し反射端となることも判っている。
【0007】
また、プラズマ密度が一定以上を超えた場合(有磁場の場合、電子密度>1×1011個/cm
3)、マイクロ波のO波成分がカットオフとなり、プラズマにてマイクロ波が全反射する。これらの反射端と円形導波管の入射端から、進行波と反射波が複雑に干渉し、円筒空洞内で様々なモード、つまりは、波長を持つ定在波が発生している。この入射波TE11の単一モード、もしくは円筒空洞部の複数モードの定在波が、マイクロ波透過窓を通過し、真空室に入りプラズマの着火源として働き、プラズマの均一性を決定付けていたため、従来より、円筒空洞高さを適切に選び、均一で安定な高密度プラズマを生成していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術では、TE11モードを円形導波管で伝送しているため、円筒空洞部でもTEモード(TE11,TE21,TE01等)が生じやすく、円筒空洞部には基本的にはTEモードの定在波が発生し、真空処理室の広い範囲に渡り略均一なマイクロ波を伝播して均一なプラズマの密度を実現しようとするものである。しかしながら、このような技術では、プラズマ生成パラメータであるガス種・真空処理室内圧力・磁場プロファイル等の条件により、定在波の反射端であるプラズマ状態が変わるため、円筒空洞部での電界分布は変化し、TEモード以外のモードも発生しているという知見が、発明者らの検討により得られた。
【0010】
円筒空洞部でのTEモードの1例として、TEモードでのプロセスレートがウエハの表面の方向について(所謂面内の方向で)均一になるとして、極端に中心の電界強度が強く外周が緩やかに弱くなる、径方向に中凸形のプロファイルとなっていた。これは、プラズマにも転写され、ICF分布の場合、中心のICF電流が多く外周が小さい分布として現れ、レート分布の場合、中心レートが高く外周が低い分布として顕著に現れていた。この様なプラズマで、プロファイルが中凸型であっても、試料台の中心と外周の温度差を付け制御することで、イオンの入射量を変化させることで、試料の仕上がりを面内均一にしていた。
【0011】
この試料台での制御とは別に、従来の円筒空洞構造では、特にフッ化物系のプロセス条件で、円形導波管直下、つまりは、円形導波管と円筒空洞部上蓋の接合部が不連続となり、この不連続部極端な強電界を発生させ、処理室内に発生しているプラズマとは別に、2つの小円形プラズマ(以下、異常放電)が発生することが実験的に判っている。この異常放電は石英製シャワープレート直下や、石英製マイクロ波透過窓とシャワープレートの間などで発生する。このため、ウエハ上のエッチングレート面内分布として転写した形で現れ、径方向ではM型もしくはW型のプロファイルを取ることがあった。このため、プロセス条件によってウエハ上のレート分布が、周方向と、径方向それぞれで、明らかに均一性に欠ける場合があった。
【0012】
よって、処理室内に生成するプラズマのプロファイルは、凸や凹といった周方向に均一で、径方向はこの中心と外周の勾配差が小さい状態の場合、ウエハ試料台の温度差にて調整はできる。しかし、大部分はプラズマによるところが大きいため、φ450mmの大口径ではこの変動差が更に大きくなることが考えられる。
【0013】
本発明の目的は、試料の径方向について処理の特性や加工形状の均一さを向上させたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、真空容器と、この真空容器内部に配置され内部でプラズマが形成される処理室と、この処理室内に配置されその上面に試料が載置される試料台と、前記処理室の上方に配置され前記プラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円形の板部材と、この板部材の上方に配置され上下方向にその軸を備えた円筒形を有しその内部に前記電界が導入される空洞部と、この空洞の上部の中心に連結され上下に延在した内部を前記電界が伝播する円筒形の導波管と、一方の端部がこの円筒形の導波管の上端部と連結され水平方向に延在した内部を前記円筒形の導波管に向かって前記電界が伝播する断面が矩形を有した導波管と、この矩形の導波管の他方の端部に配置され前記電界を発生する発生器と、この発生器と前記矩形の導波管の一方の端部との間に配置された整合器と、前記円筒形の導波管上に配置されこの導波管の内部に前記電界の円偏波を生成する手段と、備え、前記空洞部が、前記板部材を底面とする径の大きな円筒形の空洞を有した第1の円筒空洞部及びこの第1の円筒空洞部の上方でこれに接続されて配置され前記導波管の下方で当該導波管と連結された第2の円筒空洞部であって前記導波管より径が大きく前記第1の円筒空洞部より径の小さな円筒形の空洞を有した第2の円筒空洞部と、前記第1及び第2の円筒空洞部の間でこれらを接続する第1の段差部と、前記第2の円筒空洞部と前記導波管の下端部との間に配置された第2の段差部とを備え、前記円筒形の導波管から伝播された前記電界により前記第2の
円筒空洞部内において形成された第2の電界及び前記第2の
円筒空洞部から伝播されたこの第2の電界により前記第1の
円筒空洞部内に形成された第1の電界にが前記処理室内に供給されて前記プラズマが形成されるプラズマ処理装置により達成される。
【0015】
さらに、
前記第1及び2の円筒空洞部の天井面が前記板部材に平行な
面を備えたことにより達成される。
【0016】
さらにまた、前記第2の円筒空洞部の天井面が前記板部材と平行に配置されこの天井面の前記板部材の上面からの高さH2は前記電界の波長λに対してλ<H2<5λ/4の範囲にされたことにより達成される。
【0017】
さらにまた、前記第1の円筒空洞部の天井面が前記板部材と平行に配置されこの天井面の前記板部材の上面からの高さH1は前記電界の波長λに対してλ/4<H1の範囲にされたことにより達成される。
【0018】
さらにまた、前記第2の円筒空洞部の円筒形の半径R2が前記電界の波長λに対してλ/4<R2の範囲にされたことにより達成される。
【0019】
さらにまた、前記第2の円筒空洞部が中心を円筒形を有した前記試料台の中心軸に合わせて配置され、前記
第1の段差部が前記中心軸から外周側に向かう方向について円筒形状を有した前記試料台の外周より中央側に配置されたことにより達成される。
【0020】
さらにまた、前記電界が2.45GHzのマイクロ波の電界であって、前記処理室内に875Gaussの磁界を供給する磁場発生手段を有して、前記処理室内にECRにより前記プラズマが形成されることにより達成される。
【0021】
さらにまた、前記
円筒形の導波管からTE11モードの前記マイクロ波が前記空洞部に供給されることにより達成される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に説明する本発明に係るプラズマ処理装置の実施の形態では、円筒空洞部を径の異なる第1及び第2の円筒空洞部を有する複数の円筒形状部分が同心状に上下方向に連結され複数段の円筒形状の空洞を備えて上記の課題を解決する目的を達成する。以下に詳細を説明する本発明の実施例に係るプラズマ処理装置において、その上部配置される電界を伝播するための構成である導波管及び空洞共振部は、その上部に上面が複数の段差を有した円筒形の空洞を内部に有しており、この内部に導入されるマイクロ波の電界は下方の処理室に伝播して導入される電界の分布の不均一を抑制して均一性を高めるように、所望の共振及び伝播の分布にされる。
【0024】
本実施の形態では、円形導波管をTE11モードで伝播したマイクロ波は、円筒空洞部にてTM12モードに変換される。これにより、真空処理室の中心と壁面の中間の位置で従来よりも強いプラズマを形成する。このことにより、プラズマの密度や強度の分布の不均一さが低減され均一性の向上した処理を行うことができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面にて説明する。
【0026】
〔実施例〕
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。本図において、本実施例に係るプラズマ処理装置100は、円筒形状を有した処理室114を内部に備えた真空容器と、その上部に配置され処理室114内へ導入される電界が生成され伝播する電界導入部と、真空容器下方に配置され処理室114内のガスや生成物、プラズマの粒子が真空容器外に排出され処理室114内部を排気する排気部とを備えている。
【0027】
電界導入部は大きく分けて、周波数2.45GHzのマイクロ波の電界の形成手段であるマグネトロン101とこれが端部に配置され各々断面の形状が矩形及び円形を有する管路が連結された導波管と、この導波管の下端部に連結されて処理室114の上方でこれを覆って配置される円筒形状を有する室内空間を有する共振部と備えて、これらは説明の順に連結されて配置されている。導波管部の端部(図上は左端部)に配置されたマグネトロン101で励起されて形成された周波数2.45GHzのマイクロ波は、導波管部を構成しマグネトロン101がその一端部の側面に設置された矩形導波管102の内部を伝播する。
【0028】
導波管部は、上部に配置されて図上水平方向に延在するものであってその一端部に上記電界の形成手段が連結されて配置され断面が矩形を有した矩形導波管102と、この矩形導波管102の他端部の下方でこれと連結され上下方向に延在するものであって断面が円形状を有する円形導波管104とを有している。矩形導波管102及び円形導波管104の内部ではマイクロ波の電界はその強度あるいは密度の支配的な分布として特定のモードを有して導波管部の端部に向けて伝播する。なお、本実施例では矩形導波管102の一端部と他端部との間の上面に、方向性結合器と自動整合器103を有している。
【0029】
本実施の形態では、本実施例ではTE01モードを有して図上右端部に向けてマイクロ波の電界が矩形導波管102内部を進行して伝播する。矩形導波管102の右端部に到達した電界は、変換導波管を介して、下方に連結され配置された円形導波管104内部に導入される。円形導波管104内部では電界はTE11モードを支配的な分布として有して図上下方の下端部に向けて伝播する。
【0030】
円形導波管104は、その断面が円形の管内部に電界の円偏波モード変換のために石英等の誘電体材305を具備している。誘電体材305は円筒形状を有して管内の内壁面に接して稠密に配置されている。この誘電体材305をTE11モードの合成電界ベクトルに対し45度方向の位置に挿入すると、導入されるTE11モードの電界は90度位相が遅れるために出口では円周方向に回転した円偏波とすることができる。
【0031】
この円形導波管104の円形の断面での周方向に回転する電界により電界はその強度或いは密度の分布はその時間的に不均一が抑制されて均一性が向上されたものにされる。このような電界が下方に導入されて処理室内に形成されるプラズマの強度或いは密度の分布の均一性も同様に向上される。
【0032】
断面の周方向に回転し所定のモードであるTE11モードを有して円形導波管104の端部に到達した電界は、下端部の下方でこれに連結された円筒空洞部内に導入される。本実施例の円筒空洞部は上記の通り異なる2つの径を有した円筒形状が上下に同心状に連結された内部の空洞を有しており、下方の円筒形の空洞部である第1円筒空洞部106の径よりも上方に配置される第2円筒空洞部107の径のほうが小さくされている。
【0033】
本実施の例では、第1円筒空洞部は下方に配置されて同心状の円筒形状を有する処理室114と同径を有している。円形導波管104の下端部は、上記第1円筒空洞部106の上方に配置された第2円筒空洞部107の上面を構成するリング状の円板107′の中央部に配置された円形の開口の内周縁に沿って接続され、円形の開口と円形導波管104の内部とが連通することで、第2円筒空洞部107内部と円形導波管104内部とが連通されている。
【0034】
第2円筒空洞部107内に導入されることで円筒空洞部内に導入された円偏波であるマイクロ波の電界は、円筒空洞部内において所定の強度や密度の分布と伝播のモードを有したものになり、第1円筒空洞部106の底面を構成してこれと同心状に配置される石英等の誘電体製の円板であるマイクロ波導入窓108とその下方に配置されて処理室114内部に面してその天井面を構成する石英等の誘電体製の円板であるシャワープレート109とを透過して処理室114内部に導入される。
【0035】
なお、電界導入部は、処理室114を構成する真空容器及び円筒空洞部の側壁の外周と上面の上方でこれらを囲んで配置された1系統ないし3系統のソレノイドコイル110とヨーク111とを有している。これらは供給された直流電力により処理室114内部にその軸方向に静磁界を形成する。
【0036】
マイクロ波導入窓108はその外周縁部において、下方の処理室114の内部と外部との間を気密に封止するOリング等のシール手段を有している。このシール手段により、処理中に減圧されて所定の真空度にされる処理室114内外が所期の圧力差を維持できるようにシールされている。
【0037】
マイクロ波導入窓108の下方にはこれと所定のすき間をあけて円板状のシャワープレート109が配置されている。シャワープレート109の中央の所定の範囲には貫通孔が複数配置され、これらを介して処理室114内部に処理用のガスが導入される。処理用のガスは図示しないガス源に連結された供給管路を通り、マイクロ波導入窓108とシャワープレート109との間のすき間に導入され、そのすき間内で拡散し当該すき間と連通した上記複数の貫通孔から処理室114内に上方から流入することで、処理室114内での処理用ガスの分布の不均一が低減される。
【0038】
処理室114の内部のシャワープレート109下方には、円筒形状を有して内部に導電体製の円板状の電極を有して試料である半導体ウエハが載せられる試料台116が配置されている。試料台116は円筒形を有した処理室114の側壁との間とすき間を開けて配置され、側壁との間は水平方向(図上左右方向)の複数の支持梁により連結されている。これら支持梁によって試料台116は、真空容器内部の処理室114内において試料台116の下方に空間を開けて、謂わば中空に保持されている。
【0039】
真空容器の下方には、処理室114内部を排気して処理中等において内部を所定の圧力に調節する排気部が配置されている。処理室114の下部であって試料台116の直下方には、処理室114内部に導入された処理用ガスや処理のさいに形成された生成物やプラズマ等の粒子が外部に流出する開口が配置され、この開口から流路を通して粒子が排出される。
【0040】
本実施例に係るプラズマ処理装置100においては、開口の下方には、排気部を構成して、流路の軸方向に交差して配置された回転軸周りに回転して流路の断面積を増減するための複数の板状のフラップを有したバリアブルバルブ113及びその下方で入口が流路の出口に連通された真空ポンプであるターボ分子ポンプ112が配置されている。ガス源から上記すき間を通り導入孔から導入される処理用ガスの導入の量速度とともに、ターボ分子ポンプ112及びバリアブルバルブ113の回転の動作が調節されることで、処理室114内部の圧力が所定の真空度に調節される。
【0041】
プラズマ処理装置100はその真空容器の側壁において、処理室114と同等の真空度まで減圧される搬送室を構成した図示しない別の真空容器である搬送容器と連結されて、内部の処理室114と搬送室とが図示しないゲートバルブ等の開閉弁により開放、遮断される。処理室114内にAr等のガスが導入されて所定の真空度まで減圧された状態で搬送室内を図示しないロボットアーム等の搬送手段の上に載せられて搬送されてきた試料は、上記ゲートバルブが開放された状態で処理室114内の試料台116の上面を構成する載置面上方で試料台116側に受け渡される。
【0042】
上記ゲートバルブが閉塞されて処理室114内部が外部と気密に封止された後、試料が試料台116の載置面上に載せられて図示しない静電吸着手段により吸着保持され、試料の裏側面と載置面との間のすき間にこれらの間の熱伝達を促進するための熱伝導性ガスが載置面上に配置された導入口から供給される。
【0043】
試料台116の載置面の上方にこれと並行に配置されたシャワープレート109の中央部の所定半径の領域内に配置された複数の導入孔から処理用ガスが処理室114内に導入される。さらに、処理室114内部は試料台114の直下方に配置された開口を介して排気部のターボ分子ポンプ112,バリアブルバルブ113の動作によって排気され内部が減圧されて、これらのバランスにより処理室114内部が0.05〜5Paの範囲の所定の真空度の圧力に調節される。
【0044】
この状態で、マイクロ波導入窓108,シャワープレート109を透過して処理室114内に上方から2.45GHzの電界が導入され、並行してソレノイドコイル110により形成され2.45GHzの電界とECRを生起するための875Gaussの強さの静磁場が導入される。この電界と磁界との相互作用により生じたECRにより処理用ガスが励起されてプラズマ115が処理室114内に形成される。
【0045】
プラズマ115が形成されると、試料が載置されている試料台116内に配置された図示しない導電性部材により構成された電極に400kHz乃至13.56MHzの高周波電力がこれに電気的に接続された高周波電源117から1系統ないし2系統印加される。この供給された高周波電力により試料台116の載置面または試料の上面上方にバイアス電位が形成され、プラズマ115の電位とバイアス電位との電位差によってプラズマ115中のイオン等荷電粒子が試料表面に誘引されて試料表面の処理対象の膜に衝突する。この衝突の際の入射エネルギーを用いてプラズマ115中に生じる活性の高い粒子と膜を構成する材料との反応を促進して上記膜を含む膜構造が所望の形状にエッチングされる。
【0046】
上記エッチングの処理が所望の形状にされたこと、あるいは処理対象の膜の処理が終点まで到達したことが検出されると、高周波電力の供給が停止されてプラズマ115が消失される。この後、試料の裏面に導入された熱伝導性ガスの供給が停止されると共に、試料の静電気力を用いた載置面上での吸着,保持が解除されて試料が試料台116上に載置面から遊離して取り外される。
【0047】
この後ゲートバルブが開放されてロボットアームにより試料が処理室114あるいは真空容器外の搬送室内に搬出される。次に処理室114内で処理されるべき試料が有る場合にはこの試料が再度ロボットアームにより処理室114内に搬入されて試料台116上に載せられて上記と同様に処理される。
【0048】
上記の試料の処理に際するプラズマ処理装置100の各部の動作は、図示しない制御部により調節される。各部はその動作の状態を検知するセンサ等の検知手段を有し、検知手段と制御部とは通信手段により通信可能に接続されている。制御部は、受信した上記検知手段からの信号からその状態を判定したり各部への指令信号を算出するための演算器と、受信した信号からの状態を記憶したり判定や指令を算出するためのプログラムを記憶する半導体メモリやハードディスクドライブ等の記憶手段、及び演算器からの指令信号や検知手段から出力された信号を通信手段との間でやり取りするインターフェースを有して、演算器からの指令信号に基づいて各部の動作が適切なタイミングで適切な量だけ実施される。
【0049】
図2を用いて、本実施例の円筒空洞部内での電界の伝播について説明する。
図2は、
図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の上部に配置された電界導入部を拡大して示した縦断面図である。本図において、マイクロ波導入窓108下方には処理室114を構成して円筒形の内部の空間でプラズマ115が形成される放電部とこれを囲む真空容器の円筒形の側壁部まで示しているが、その真空容器の下方の部分については図示を略している。また、
図1と同じ符合が引用された部分については、特に必要の無いものについては説明を省略する。
【0050】
本実施例において、円形導波管104内を伝播してきたマイクロ波の電界は円形導波管104の下端部に到達すると、これに連結され円形導波管104の半径よりも大きな径を有する円筒形の空洞を内部に備えた円形空洞部内に導入される。本実施例の円筒空洞は、その内部に円筒形を有した処理室114の中心から内側壁表面までの半径と同じかこれと見なせる程度に近似した大きさを有する径R1を有した大径の第1の円筒空洞部106と、この第1の円筒空洞部106の上方でこれに同心状に連結されて配置され径R1より値の小さい径R2を有する小径の第2の円筒空洞部107とを有している。
【0051】
さらに、第2の円筒空洞部107の上部は中央部が円形の空間を有したリング状の平面円板であってその下面が第2の円筒空洞部107内の円筒形の空間の天井面を構成する第2の上面板107′を有している。第2の上面板107′の中央部の円形の開口は上方に連結された円形導波管104内に面して第2の円筒空洞部107と円形導波管104とは内部が円形の開口により連通されている。さらに、本実施例において円形の開口の内周縁の半径は円形導波管104の内径と同値からそれと見なせる程度に近似した大きさを有して、第2の上面板107′の円形開口の内周端が円形導波管104の円形の開口とその外周側のフランジを有した下端部に接続されている。
【0052】
さらに、第1の円筒空洞部106の上部は中央部が円形の空間を有したリング状の平面円板であってその下面が第1の円筒空洞部106内の円筒形の空間の天井面を構成する第1の上面板106′を有している。第1の上面板106′の中央部の円形の開口は上方に連結された第2の円筒空洞部107内に面して第1の円筒空洞部106と第2の円筒空洞部107とはそれら内部が第1の上面板106′中央部の円形の開口により連通されている。
【0053】
さらに、本実施例において当該円形の開口の内周縁の半径は第2の円筒空洞部107またはその内部の円筒形の空間の半径と同値からそれと見なせる程度に近似した大きさを有して、第1の上面板106′の円形開口の内周端が第2の円筒空洞部107の円筒形の側壁の円形の下端部に接続されている。本実施例の第1の円筒空洞部106及び第2の円筒空洞部107の各々は円形導波管104及び下方のマイクロ波導入窓108,円筒形を有する処理室114の上下方向の軸と同心状に位置しており、これらは同軸状に配置されている。第1の円筒空洞部106及び第2の円筒空洞部107の各円筒を構成する側壁は上記軸に対し平行に配置されており、これら第2の円筒空洞部107の側壁の下端および第1の上面板106′とはおよそ垂直をなして接続されており第1の円筒空洞部106と第2の円筒空洞部107とは段差を構成して全体の円筒空洞部が複数段(2段)の円筒形状を備えている。
【0054】
このような構成の円筒空洞内に進行したマイクロ波の電界は、小径の第2の円筒空洞部107内で拡散する(一次拡散)。拡散した電界は第2の上面板107′の円形の開口の内周縁または円形導波管104の円形の下端部を発点として上下左右に均等に分散,進行する。そして、円形の開口の外周側に向かって進行した電界は第2の円筒空洞部107の内側壁面で反射し、さらに外周側に向かって拡散する電界と干渉して、定常状態としての定在波が生じる。
【0055】
このような第2の円筒空洞部107内に形成された電界は下方にも伝播して第1の円筒空洞部106内にも導入される。この結果、第2の円筒空洞部107と円形導波管104との接続部での作用と同様に、第1の上面板106′の中央部の円形の開口の内周縁を始点として電界が上下左右に均等に分散,進行して拡散する(二次拡散)。そして、第1の円筒空洞部106の内側側壁面で反射して後続の電界と干渉して、定常状態としての定在波が発生する。
【0056】
上下2つの円筒形の空間の内部で生じた2つのマイクロ波の電界の定在波は、円筒空洞部を下方に伝播してマイクロ波導入窓108及びシャワープレート109を透過して処理室114内に進入して、処理室114に導入された処理用ガスを励起してプラズマ115を形成する。円筒空洞部内の上記定在波は、マイクロ波導入窓108やシャワープレート109、さらにはプラズマ115,試料台116上面等の処理室114の構成が全体として反射端となり、複雑な定在波がマイクロ波導入窓108と円筒空洞部内で形成されて定常の状態となる。
【0057】
本実施例と従来技術との円筒空洞部内部の電界または磁界の分布について
図3,
図4を用いて比較して説明する。
図3は、従来の技術における円筒空洞部内部の電界または磁界の分布を模式的に示す図である。
【0058】
従来の技術では、円形導波管とこれの下方で連結された円筒空洞部の上蓋と接続部では、その表面が段差を有して電界の分布が不連続となり他の箇所よりも強い電界が局所的に生じて異常放電が発生する虞が有った。この点について、従来の技術における円筒空洞部内を水平方向に切った断面での分布を説明すると、
図3(a)に示すような電界の分布となる。さらに、これと平行してこの分布において電界の向き直行する磁界がソレノイドコイル110によって形成されて印加されている。この際の磁界の磁力線の等高分布は
図3(b)に示す様になる。
【0059】
これらの図に示すように、従来の技術においては円形導波管直下の円筒空洞部内で電界及び磁界の強度や密度の値の増減はその山谷として処理室114の中心近傍で発生している。このような電界,磁界の分布(電磁場)は円筒空洞部の円形断面の円周方向について回転しており、その1回転の周期に合わせて周期的に変動することになって、円筒空洞部または下方の処理室の半径方向についての強度や密度の分布は所定の半径位置、例えば円形導波管の周縁部の直下方の位置において極大(山)となるTM11モードとなると考えられる。このような電界または磁場の分布に応じて形成されるプラズマを用いた処理では、そのプロセスの条件によっては円形導波管の断面の半径といった処理室の中心軸の近傍に極大が存在する影響が処理の特性、例えば試料の表面における半径方向のエッチングの速度(レート)の分布(レートプロファイル)として現れて試料の面内方向について処理後の形状に許容範囲を越える差が生じてしまうという問題が生起していた。
【0060】
上記の本実施例では、第1の円筒空洞部106の上方に小径の第2の円筒空洞部107を接続して配置している。上記の通り、第2の円筒空洞部107の側壁の下端部での側壁内面と第1の円筒空洞部106の第1の上面板106′の下面とは略垂直をなして接続されており、この接続部の内部に形成される電界の分布はこの内側に、謂わば突出した角部において不連続になり、この接続部を始点として下方に向けて伝播する強い電界Ezが局所的に生じる。
【0061】
このような電界の分布が不連続となることにより生じる強い電界Ezは、第2の円筒空洞部107の第2の上面板107′の中央の円形開口と円形導波管104の下端部との接続部においても生じており、本実施例の円筒空洞部では、円形導波管104の下端部での内周縁の直下方と第2の円筒空洞部107の側壁の下端部の直下方という、中心軸から半径方向について2つの位置にEzを有している。これらの強い電界Ezが円筒空洞部から下方に伝播する電界と重畳されたものが処理室114内に伝播する。
【0062】
本実施例での第1の円筒空洞部106内での水平方向の断面での電界分布を
図4(a)に示す。さらに、従来の技術と同様に、電界の方向に直交する磁界がソレノイドコイル110により生起されて印加されており、その分布は
図4(b)に示された分布となる。
【0063】
この図に示される通り、本実施例での第1の円筒空洞部106内の電界の分布は、TM12モードを有しておりこの分布の電界が円筒空洞部の断面の円周方向について所定の周期で回転することで、その周期的に強度,密度が変動する。単位時間あたりに時間的に平均して考察した場合には、本実施例での第1の円筒空洞部106内での電界の分布はその半径方向について複数(2箇所)での電界Ezからの影響を強く受けたものとなり、典型的には半径方向について複数(2つ)の極大(山)を有したものとなる。
【0064】
図5を用いて、本実施例の円筒空溝内の電界について説明する、
図5は、
図1に示す実施例の円筒空洞部内の電界について模式的に示す縦断面図である。特に、処理室114と同径の第1の円筒空洞部106とこの上方に接続されて配置され円形導波管104の下方でこれと接続された小径の第2の円筒空洞部107の径を、円筒空洞部内での電界の定在波の波長λに対してλ/4<R2、及びλ<H2<λ+λ/4(=5λ/4),λ/4<H1を満たす値の範囲にした場合の定在波の発生について説明する。
【0065】
なお、
図2の場合と同様に、本図において、
図1に示す実施例の電界導入部を拡大して示すものであってマイクロ波導入窓108下方には処理室114を構成して円筒形の内部の空間でプラズマ115が形成される放電部とこれを囲む真空容器の円筒形の側壁部まで示しているが、その真空容器の下方の部分については図示を略している。また、マグネトロン101と水平方向に延在する矩形導波管102等は示していない。さらに、
図1と同じ符合が引用された部分については、特に必要の無いものの説明を省略する。
【0066】
本図において、円形導波管104の下端部から第2の円筒空洞部107内に導入されたマイクロ波の電界は、内部の空洞内で拡散を起こす(一次拡散)。すなわち、円形導波管104の下端または第2の上面板107′の中央部の開口の内周縁から上下左右の周囲に均等に電界が進行する。第2の円筒空洞部107の外周に向けて進行した電界は、第2の円筒空洞部107の垂直な内側壁面で反射し、後続の拡散する電界と干渉を生じ、この結果第2の円筒空洞部107内に定常状態としての定在波が生起される。そして、このような電界の分布は、およそ垂直をなして配置される円形導波管104の下端部での内壁面と第2の上面板107′の下面との接続部401において不連続なものとなり、この接続部401においてZ方向(図上下方、円形導波管104または処理室114の中心軸の方向)に大きな強度を有する電界Ez2を生じる。
【0067】
このような第2の円筒空洞部107内の電界は下方に伝播して接続された第1の円筒空洞部106内に導入される。この導入された電界は、上記の円形導波管104からの電界と同様に、第1の円筒空洞部106内の空洞内で拡散する(二次拡散)。この際、第2の円筒空洞部107と第1の円筒空洞部106との間の段差を構成する接続部403においても、第2の円筒空洞部107と同様に、ここを中心とする乱反射した波面が発生し、局所的にZ方向に強い強度を有する電界Ez1を生じる。これにより、第1の円筒空洞部106及び第2の円筒空洞部107内で段差を構成するこれらの間の接続部403を湧き出し口と吸い込み口とする電気力線404が生じる。
【0068】
このような分布となる本実施例においては、円形導波管104の下端部の周縁直下方で発生する電界Ez1と第2の円筒空洞部107の側壁の下端部の直下方で発生する電界Ez2との重畳により得られる電界の強度の分布が、下方に配置される処理室114内もしくはそのECRが生じる面において半径方向(図上水平方向,r方向)について不均一が低減されて均等に近付くように、第1の円筒空洞部106の高さH1や第2の円筒空洞部107の高さH2の値を適正に調節して設定される。このことにより、処理室114中心と外周との間のプラズマの密度,強度の不均一が低減され、処理室114または下方の試料台116の載置面上に載せられる試料の中心から外周縁までの半径方向について均一性が向上したプラズマが形成される。
【0069】
本実施例では、TM12モードの自由空間中の実効波長λ=130〜140mmである。このことから、マイクロ波導入窓108の上面と第2の円筒空洞部107内の空間の天井面(第2の上面板107′下面)までの距離H2は、λ<H2<λ+λ/4(=5λ/4)の範囲にされることが好ましい。また、第1の円筒空洞部106の天井面(第1の上面板106′の下面)のマイクロ波導入窓108の上面との距離H1は、上記実効波長を効率よく伝播して下方の処理室114内に導入するために、λ/4<H1の範囲とすることが好ましい。さらに、本実施例においては第1の円筒空洞部106の中心軸から側壁までの距離(半径)R1は円筒形を有した処理室114またはその放電部の径と同等であるが、第2の円筒空洞部107の中心軸と側壁までの距離(半径)R2は、λ/4<R2の範囲とすることが好ましい。
【0070】
第1の円筒空洞部106内ではこれらEz1とEz2とが重畳された結果の分布を有する電界が下方に向けて伝播される。この分布を、下方で形成される処理室114内のプラズマの分布が所望の分布となる、例えば中心から半径方向外側にわたり密度または強度の均一性を向上させた分布となるように、第1の円筒空洞部106の高さH1や半径、第2の円筒空洞部の高さ402、半径R2が適切な値の範囲に調節されて設定される。例えば、前記所望の密度や強度の半径方向の勾配を持たせるため、マイクロ波導入窓108上面と第1の円筒空洞部106の天井面及び第2の円筒空洞部107の天井面との間の距離間あるH1,H2を調整して設定した後、試料の処理が行われる。
【0071】
このような条件を満たすことで、2つの円筒空洞部からの電界は下方に伝播して処理室114内に形成されるECR面に効率よく吸収される。このことによって、処理室114の中心から外周に渡りより密度の高く不均一性が低減されたプラズマが生成される。
【0072】
前述のように、従来の技術では、中心から外周部にかけて、特に外周部においてプラズマの強度や密度が小さくなってしまう分布となる。一方、本実施例では処理室114の中心から半径方向について外周側の複数の箇所で電界の強度または密度の局所的に高い領域を配置している。このため、処理室114の中心から外周部にかけて密度や強度の低下が顕著に生じる従来の技術の問題を抑制し、外周部に渡る密度,強度の勾配は従来技術よりも低くされ、処理室114の半径方向について均一性が向上したプラズマが形成できる。このような本実施例において、試料台上の試料上方でのICF分布とエッチング処理の特性、例えば処理のレートの分布を確認した結果、従来の技術と比較して均一性が改善する結果を得ている。
【0073】
また、円形導波管104に円偏波発生用の誘電体材105を挿入し、円形導波管104中のTE11モードの位相を45度変えることで、円筒空洞部の入射端で均一なTE11モードが得られる。このため、TMモードによる径方向の分布改善と円偏波による周方向の分布改善により、処理室114内で発生するプラズマの均一性を併せて改善する効果を得られる。このようなプラズマにより得られたラジカルの分布は、試料上面の処理対象膜の等方的なエッチングに有効になることは言うまでもない。これにより、大口径化した試料に対して処理の性能を向上させたプラズマ処理装置を提供できる。
【0074】
本実施例の円筒空洞部の形状の調節は、使用者が高さH1,H2は第1の上面板106′,第2の上面板107′の上下方向の位置を移動させて行うことができる。なお、図示しないが第1の上面板106′,第2の上面板107′の外周縁部には、側壁との間の相対移動とともに側壁と上面板とを短絡させるチョークフランジ等の電界の漏洩を抑制するための手段を備えている。
【0075】
また、本実施例の第2の円筒空洞部107の半径R2は、下方に配置される円筒形状を有する試料台116の外形よりも小さい値にされている。また、試料台116上面に配置される載置面の外周縁の径よりも大きい値にされている。このような配置により、接続部403に発生する電界EZ2による電界の密度の強い箇所(半径位置)は試料台116の外形より内側であって試料の外周側に形成することができる。このことにより、接続部403及び接続部401の箇所に対応する半径位置に生じる電界EZ1,EZ2によって、プラズマの密度や強度の試料の半径方向についての分布が試料の外周側部分で大きく低下してしまい処理の当該半径方向の特性が不均一になるという従来技術の問題の生起を抑制して、より均一性が向上したプラズマ処理を行うことができる。
【0076】
図6を用いて、本実施例の作用・効果について説明する。
図6は、従来の技術及び
図1に示す本実施例の処理室114内でのプラズマ115から試料台116内の電極に流れ込むイオン電流の試料の面内方向の分布(ICF分布)を示すグラフである。本図の例において、プラズマ115の形成に用いた処理用ガスはCl
2/HBr/O
2/Arの混合ガスであり、処理室114内の圧力は0.4Pa、試料台116の載置面の表面からのECR面の高さは165mm、供給されるマイクロ波の電力を従来の円筒空洞部の場合は1200W、本実施例では1800Wとした場合に得られた結果である。
【0077】
従来の技術では、中心部のイオン電流が高く外周部が低い分布を示している。このため、プラズマの分布は凸型形状となっていた。特に、イオン電流の密度は試料の外周側部分(150mm以上)の領域において低下が顕著であり、プラズマ115の密度や強度も同様に外周側部分において大きな低下が生じていると考えられる。そして、この条件での従来の技術による試料の処理の面内の方向についての均一性は11%であった。
【0078】
一方、本実施例の場合には、試料台116の中心から半径方向について150mmの近傍においてイオン電流が高くなっていることが示されている。一方、試料の中心と外周部分においてICFは低い分布を示している。つまり、本実施例の上記条件でのプラズマの強度や密度はM型形状の分布となっている。そして、当該条件での試料の処理の面内方向についての均一性は5%となった。
【0079】
上記の検出データは、ECR面の高さとともにマイクロ波のパワーを各々複数の値に変動させて複数の条件での処理において検出したうちで最も均一性が良い結果を示したものである。また、フッ化物系のプロセス条件でも均一性の改善結果が得られた。
【0080】
また、均一性が高い状態では、ラジカルが均一にウエハに照射されるため、ラジカル起因のエッチングにも有利であることは言うまでもない。特に高圧力条件(3Pa〜10Pa)では電離した電子やイオンの拡散度は大きく、ウエハ上にはイオンよりもラジカルが支配的となり、高圧においてもウエハ面内の形状やレートのばらつきを改善する。
【0081】
以上の通り、本実施例によれば、処理室内に形成されるプラズマの密度や強度の分布の不均一を低減して、試料の径方向について処理の特性や加工形状の均一さを向上させたプラズマ処理装置を提供できる。