(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂が、不純物として酸無水物化合物を含まず、かつカルボン酸価が1.0mgKOH/g未満であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
(C)成分の硬化促進剤が、4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)〜(C)成分を必須成分として含む。すなわち、(A)末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を必須成分として含む。以下、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を(A)成分と、硬化剤を(B)成分と、硬化促進剤を(C)成分と記すことがある。なお、本明細書でいうエポキシ樹脂とエポキシ化合物は同一の意味を有する場合があると理解される。したがって、エポキシ樹脂又はエポキシ化合物は両者を代表する意味で使用されることがある。
【0025】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、上記一般式(1)で表され、分子量分布を有し、R
1中の平均炭素数が20以上であり、末端が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成されるジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させて得ることが出来る。
【0026】
一般式(1)中のZは炭素数4〜12、好ましくは4〜10の2価の飽和環状脂肪族基を表し、内部で縮環構造を有していても良い。また、Zは置換基を有していても良く、置換基を有する場合は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。このような飽和環状脂肪族基としては、例えば、シクロブタニレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、ノルボルニレン基、メチルノルボルニレン基、デカヒドロナフチレン基、ビシクロヘキシレン基などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいZは、経済性及び反応の容易性から、シクロヘキシレン基である。
【0027】
一般式(1)中のR
1は、上記式(2)で表される内部にエステル結合を有する炭素数20以上の2価の炭化水素基であり、分子量分布を有する構造を表す。
【0028】
式(2)中、Estはエステル基を表す。エステル基の形態は、‐C(O)-O-と、-O-C(O)-の形態の2種類が挙げられるが、どちらの形態であってもよい。
【0029】
式(2)中、R
2、R
3は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。このような基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、炭素数2〜12のアルキレン基である。
【0030】
式(2)中、nは1〜100の平均の繰り返し単位数を表すが、式(2)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいnは、式(2)で表される基の平均の分子量が500〜3000の範囲に入る数である。このような構造を有することで、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の欠点であった難溶性、高吸湿性、低機械強度を改善することが可能となる。
【0031】
式(2)で表される構造のうち、本発明の効果を得る好ましい形態は、上記式(3)又は式(4)で表される2価のポリエステル構造である。
【0032】
式(2)及び式(3)において、R
4はR
2に対応し、R
5はR
3に対応すると理解される。式(2)及び式(4)において、R
6はR
3に対応し、ペンチレン基はR
2に対応すると言える。
【0033】
式(3)中、R
4は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられる。好ましいR
4は、R
2で説明したと同様である。
R
5は炭素数4〜11の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数2〜10のアルキレン基である。
さらに好ましくは、式(3)において、R
4が3−メチルペンチレン基、R
5がブチレン基又はオクチレン基である構造である。
【0034】
式(3)中のmは1〜20の数の平均繰り返し単位数を表し、かつ、式(3)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいmは、式(2)のnで説明したと同様である。
【0035】
式(4)中、R
6は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられる。好ましい基は、R
3で説明したと同様である。
【0036】
式(4)中、l、kはそれぞれ1〜20の数の平均繰り返し単位数を表し、かつ、式(4)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいl+kは、式(4)で表される基の平均の分子量が500〜3000の範囲に入る数である。
【0037】
本発明で使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、一般式(1)で表わされる末端基が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成される化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させることで得ることが出来、好ましくは1/3.5〜1/6の範囲とする。エポキシ基のモル比が3未満の場合は、反応時にゲル化を生じる恐れがあり、本発明の硬化性樹脂組成物が得られない。また、エポキシ基のモル比が10を超える場合は、(A)成分中に存在する(A1)構造由来の濃度が低くなり、イソシアヌル骨格特有の欠点である硬化物の脆さ、高い吸湿性、及び長期耐熱試験での着色が生じるため好ましくない。
【0038】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、樹脂中に酸無水物化合物を含まず、かつ酸価が1mgKOH/g未満であることが望ましい。酸無水物化合物については、後述する製造方法の項目でも説明するが、一般式(1)で表される化合物を合成する際に原料として酸無水物を用いた場合、酸無水物が完全に反応し残存していないことを、ガスクロマトグラフィー法等の公知の手法を用いて確認することが出来る。この酸無水物化合物は(A)成分又は中間体としてのジカルボン化合物(A1)を製造する際の未反応分として含まれるので、不純物である。(A)成分中に、酸無水物化合物を存在させないことにより、(A)成分の貯蔵安定性が格段に向上する。
【0039】
一方、酸価は酸無水物化合物の含有量にも関係するが、酸無水物化合物は実質的に含まれないので、実質的にジカルボン化合物(A1)のカルボキシ基の残存量に関係すると言える。この酸価が1mgKOH/g未満、好ましくは0.5mgKOH/g未満であることがよい。
酸価については、後述する製造方法の項目でも説明するが、所定の酸価となるまで、ジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を反応させることで、貯蔵安定性に優れた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂とすることが出来る。
【0040】
ジカルボン化合物(A1)を合成する際、酸無水物が残存していると、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を合成する際にゲル化を生じたり、また貯蔵中に粘度の上昇やエポキシ当量の上昇、ゲル化が生じるため好ましくない。末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂中の酸価が1mgKOH/g以上である場合についても、(A)成分の貯蔵中に粘度の上昇やエポキシ当量の上昇が発生し、品質上の問題が発生するため好ましくない。
【0041】
次に、(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂の製造方法について説明する。
本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させることで製造される。
【0042】
ジカルボン酸化合物(A1)は、式(8)で表される両末端にアルコール性水酸基を有するポリエステルジオールを、式(9)で表される酸無水物化合物と付加反応させる方法や、式(10)で表される2官能カルボン酸、エステル化合物、又は酸ハロゲン化物と縮合反応させる方法などにより得ることができるがこれらに限定されない。この際、多量体などの不純物が生成する場合は、再結晶等の精製が必要によりなされる。
【0043】
【化6】
(式中、R
2、R
3、Est、nは、式(2)と同義である。)
【0044】
【化7】
(式中、Z
1、Z
2は、一般式(1)におけるZと同義である。また、Xは水酸基、C1〜C3のアルキルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【0045】
ジカルボン酸化合物(A1)を得る特に好ましい手法は、反応操作の容易性、経済性から、式(8)で表される両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと、式(9)で表される酸無水物化合物を用いた付加反応である。
【0046】
式(8)で表される両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールとしては、nが上記の範囲を超えないものであれば公知のものを種々選択することができるが、好ましい原料は、下記式(11)〜(14)で表される化合物である。
【0047】
【化8】
(式中、mは平均繰り返し単位数であり、1.5<m<13を満たす数である。)
【0048】
なお、平均繰り返し単位数が1.5を超える数であれば、一般式(1)におけるR
1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが13未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)クラレ製Kuraray Polyols P−510(平均分子量500),P−1010(平均分子量1000),P−2010(平均分子量2000),P−3010(平均分子量3000)等の形で入手が可能である。
なお、本明細書中でいう平均の分子量、平均の繰り返し数は、数平均を意味する。
【0049】
【化9】
(式中、mは1.3<m<10を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数mが1.3を超える数であれば、一般式(1)におけるR
1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが10未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)クラレ製Kuraray Polyols P−2050(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0050】
【化10】
(式中、R
2bはエチレン基又はブチレン基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていても良い。mは2.3<m<17を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数mが2.3を超える数であれば、一般式(1)におけるR
1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが17未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えばDIC(株)製OD−X−355(平均分子量1000),OD−X−2330(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0051】
【化11】
(式中、R
6は一般式(4)における説明と同義であり、l、kは1より大きい数であり、3<(l+k)<26を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数の合計である(l+k)が3を超える数であれば、一般式(1)におけるR
1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、(l+k)が26未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)ダイセル製プラクセル205(平均分子量500)、プラクセル210(平均分子量1000)、プラクセル220(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0052】
式(11)〜(14)で表されたような両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールは、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
【0053】
式(9)で表される酸無水物化合物としては、公知のものであれば種々の化合物を選択できる。例えば、シクロブタン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンー1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物などの飽和環状脂肪族酸無水物化合物が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用しても良い。好ましい酸無水物化合物は、経済性、反応操作の容易性等から、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物である。
【0054】
ジカルボン酸化合物(A1)を得るための、特に好ましい手法を用いた上記両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと酸無水物の使用量は、化学量論的にはアルコール性水酸基を有する成分1モルに対して、酸無水物2モルを用いるが、硬化性樹脂としたときの硬化速度のコントロール、架橋密度の制御の点で、アルコール性水酸基を有する成分を、過剰に用いることがよい。過剰量に用いる場合、本発明の効果を損なわない観点から、酸無水物2モルに対して、両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオール2モルまでが好ましい。逆に、酸無水化合物を過剰量用いると、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の合成時にゲル化を生じやすくなる。
【0055】
ジカルボン酸化合物(A1)を得るための、特に好ましい手法を用いた反応の終点は、酸無水物が完全に消失し残存していないことを確認することで達成される。酸無水物の残存の有無は、酸価の測定ならびにガスクロマトグラフィー法等の公知の手法を用いて確認することが出来る。酸無水物が残存している状態で次に示すエポキシ変性反応を行うと、ゲル化が起こりやすいこと、また、ゲル化を生じずとも、エポキシ当量や粘度などの品質に大きく影響を及ぼすため好ましくない。
【0056】
この特に好ましい手法を用いた反応の条件については、両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと酸無水物を、通常80℃〜200℃、好ましくは100℃〜150℃で反応させることがよい。80℃以下では反応時間が長くなるため好ましくない。また、200℃以上では、重合・分解の懸念があるため好ましくない。
【0057】
また、この反応は無溶媒で反応を行うことも出来るが、攪拌効率を上げるなどの理由により、反応に関与しない溶媒を使用してもよい。たとえば、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族系炭化水素化合物、ウンデカン、ドデカンなどの直鎖炭化水素化合物、メチルイソブチルケントン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物が挙げられる。
【0058】
本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、(A1)と(A2)を、(A1)が有するカルボキシル基と(A2)が有するエポキシ基のモル数が、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10の比率で反応させて得られるが、この反応では、(A1)が有するカルボキシル基と(A2)が有するエポキシ基が反応して、エステル結合が生成し、(A1)の末端にエポキシ置換イソシアヌル基が結合した構造となる。ここで、(A2)はエポキシ基を3個有するため、未反応のエポキシ基の一部は他の(A1)と結合して架橋構造を形成してもよい。
【0059】
また、ジカルボン酸化合物(A1)中に、不純物として両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールや片側一方が反応したモノオールが不純物として含まれている場合、これら不純物のアルコール性OH基が(A2)のエポキシ基が反応した化合物が生ずることがあるが、このような化合物が(A)成分中に少量含まれることは差し支えない。
上記のようにエポキシ基が過剰に使用されるので末端にエポキシ置換イソシアヌル基が結合したエポキシ樹脂が主成分となる。また、生成する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は通常分子量分布を持った混合物であるが、これらは分離してもよく、混合物のままの末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)として使用してもよい。
【0060】
また、この反応は上記モル比が1/3.5〜1/6の範囲がさらに好ましい。エポキシ基のモル比が3未満の場合は、反応時にゲル化を生じる恐れがあり、本発明の樹脂を得られない恐れがある。また、エポキシ基のモル比が10を超える場合は、(A)成分中に存在する(A1)構造由来の濃度が低くなり、イソシアヌル骨格特有の欠点である硬化物の脆さ、高い吸湿性、及び長期耐熱試験での着色が生じるため好ましくない。
【0061】
反応条件については、カルボキシルとエポキシ基の一般的な反応であることから、特に限定されることはない。
【0062】
例えば、反応温度については、通常50℃〜230℃、好ましくは70℃〜170℃である。50℃未満の場合、反応時間が長くなる。また、230℃を超えると反応中に樹脂が分解、あるいは副反応を起こしやすくなる。
【0063】
この反応は、無触媒でも反応を行うことが出来るが、反応時間の短縮の点から、触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、カルボキシルとエポキシ基の反応を促進させる効果があれば、公知のもので種々の化合物を選択できる。たとえば、イミダゾール系化合物およびその塩、3級アミン化合物、3級ホスフィン化合物、4級アンモニウム塩化合物、4級ホスホニウム塩化合物等が挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用しても良い。好ましい触媒は、反応時の着色を抑える観点から、4級アンモニウム塩化合物または4級ホスホニウム塩化合物である。
【0064】
上記触媒を用いる場合、用いる量としては特に限定されないが、得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を100重量部としたとき、通常0.001重量部〜5重量部、好ましくは0.005重量部〜3重量部である。また、用いる際、触媒を溶解させる溶媒を用いてあらかじめ溶液を調製しておき、この触媒溶液を反応系内に投入する手法を用いてもよい。
【0065】
また、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の着色を防ぐ観点から、酸化防止剤を添加して反応を行っても良い。この酸化防止剤としては公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどの高分子型フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類、ジラウリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3―ラウリルチオプロピオネート)等のエステル骨格含有チオエーテル化合物系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は必要に応じて2種類以上を用いてもよい。
【0066】
末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を得る反応は無溶媒で反応を行うことも出来るが、攪拌効率を上げるなどの理由により、反応に寄与しない溶媒を使用してもよい。たとえば、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族系炭化水素化合物、ウンデカン、ドデカンなどの直鎖炭化水素化合物、メチルイソブチルケントン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物が挙げられる。
【0067】
この反応で得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、反応混合液から溶媒等を分離して得られる反応混合物として使用することが有利である。
【0068】
上記反応は、反応が進むにつれジカルボン酸(A1)中のカルボキシル基が消失されていくが、酸価が1.0mgKOH/g未満となるまで、カルボキシ基が消失するまで行うことがよい。酸価が1.0mgKOH/gまでカルボキシル基を消失させることで、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の貯蔵安定性が良好なものとなり、(A)成分を用いた硬化物は透明性、耐熱着色性、低吸湿性が良好なものとなる。酸価が1.0mgKOH/g以上で反応を停止した場合、貯蔵中に吸湿が大きくなったり、エポキシ当量や粘度などの品質に大きく影響を及ぼす。
【0069】
末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を含む反応混合物は、エポキシ当量が150〜800g/eq.であることが望ましい。この範囲であることで、透明性、耐熱着色性、ガラス転移点温度、曲げたわみに優れた硬化物を得ることができる。エポキシ当量がこの範囲から外れる場合は、硬化物が脆くなる、耐熱着色性が悪くなる、硬化物の透明性が損なわれるなどの恐れがある。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、有機アミン化合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール及びその誘導体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、ナフタレンジオール、4,4’−ビフェノールなどの2価フェノール化合物、フェノールやナフトール類とホルムアルデヒドあるいはキシリレングリコール類との縮合反応により得られるノボラック樹脂あるいはアラルキルフェノール樹脂、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物、アジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物を適用することができ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明の効果を得るための好ましい硬化剤は酸無水物であり、更に好ましくは無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、水素化無水ナジック酸等の脂肪族環状酸無水物である。
【0071】
硬化促進剤(C)としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤とし公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、3級アミン及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機金属塩が挙げられ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明の効果を得るための好ましい硬化促進剤は、4級アンモニウム塩類、有機ホスフィン化合物、4級ホスホニウム塩類であり、更に好ましい触媒は4級ホスホニウム塩類である。
である。
【0072】
本発明の硬化樹脂組成物は、上記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分とするが、粘度、硬化速度の調整等を目的として(A)成分以外の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物を用いてもよい。特に(D)成分として一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する液状エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0073】
(D)成分は、一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する液状エポキシ樹脂であれば特に制限はないが、下記式(15)〜(17)に示すシクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0074】
【化12】
(式中、R
7、R
8は炭素数1〜20の2価の有機残基を表す。)
【0075】
【化13】
(式中、R
9は炭素数1〜20の2価の炭化水素基または単結合を表す。)
【0076】
一般的に(D)成分のみを用いた硬化性樹脂組成物は脆く、耐熱着色性に劣るという欠点を有する。本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、イソシアヌル酸骨格を含有するエポキシ樹脂の欠点である難溶性を克服しており、さらに(D)成分と併用することで、(D)成分の欠点である脆さと耐熱着色性の両方を改善することも可能となる。すなわち、(D)成分を併用することで本発明の特徴である良好な耐熱着色性、硬度、強度、たわみ、低線膨張性を維持したまま、さらに好ましい作業性や機械強度の向上を達成することが可能となる。好ましい(D)成分の構造としては、低粘度性、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)との併用による効果、入手の経済性から、式(15)で表されるエポキシ樹脂のうち、R
7がメチレン基で表されるエポキシ樹脂であり、(D)成分を併用する量としては、(A)成分を混合した後、混合後のエポキシ当量が160〜300g/eq、で、25℃での粘度が0.1〜500Pa/sであることがより好ましい。全エポキシ成分に対して(D)成分が最大でも80%好ましくは50%以内で使用することが良い。(D)成分を80%を超えて使用すると(A)成分による顕著な効果が減少する。
【0077】
(A)成分の使用量は、全エポキシ成分に対して、20〜100wt%、好ましくは50〜100wt%、より好ましくは70〜100wt%である。ここで、全エポキシ成分は、(A)成分、D成分の他に、他のエポキシ樹脂を配合する場合は、これらの合計をいう。
【0078】
さらにD成分以外の公知の他のエポキシ樹脂も併用することができる。他のエポキシ樹脂としては、たとえば、レソルシノール、ハイドロキノン、2,5−ジターシャリブチルヒドロキノンなどの単環型二価フェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香環を核水素化したもの、1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香環を核水素化したもの、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−(1−α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3−ジメチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−ターシャリーブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニル等のビスフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香族環を核水素化したエポキシ樹脂等がある。
【0079】
更に、イソシアヌル骨格を有するエポキシ樹脂として、N―メチル−N’,N’’−ジグリシジルイソシアヌレート、N−アリル−N’,N’’−ジグリシジルイソシアヌレートで表されるイソシアヌル骨格を有するエポキシ化合物がある。
【0080】
更に、下記式(18)、式(19)等で表されるエポキシシリコーン樹脂などが挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
【0081】
(R
10SiO
3/2)
j(R
11R
12SiO)
i(Me
3SiO
1/2)
h (18)
(式中、R
10〜R
12は、それぞれ内部にエポキシ基を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、芳香族基であり、内部にエーテル性酸素原子を1〜3個有していても良い。ただし、R
10〜R
12のうち、1つ以上は必ずエポキシ基を含む。またR
11、R
12が同時にエポキシ基を有することはない。i〜kは、i+j+k=1,0≦k<1、0<j<1、0<i0.75を満たす数である。)
【0082】
【化14】
(式中、R
13は環状構造を有していても良い、炭素数2〜20の1価の炭化水素基を表す。R
14は炭素数1〜20の2価の有機残基を表す。gは0〜100の整数である)
【0083】
(A)及び(D)成分以外のこれらの他のエポキシ樹脂の配合量は、全エポキシ樹脂成分の30wt%以下が望ましい。
【0084】
本発明における硬化性樹脂組成物をLED封止用途として使用する際には、酸化防止剤を配合し、加熱時の酸化劣化を防止し着色の少ない硬化物とすることが好ましい。酸化防止剤としては上記式(5)で表されるフェノール系化合物が特に好適に用いられる。興味深いことに、式(5)で表される酸化防止剤は、エポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートを単独で用い、酸無水物化合物との熱処理で得られる硬化物では、耐熱着色性の改善は全く見受けられないが、本発明で使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を用いた場合には劇的な耐熱着色性の改善が達成される。詳細なメカニズムは不明であるが、元来難溶性化合物であるトリグリシジルイソシアヌレートとは構造を異にし、内部にポリエステル構造を導入することで酸化防止剤との相溶性が向上したためと推測される。
【0085】
式(5)中、R
yは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、Yは炭素数1〜60の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル結合性酸素原子を2〜8個有していても良い。
【0086】
式(5)で表されるフェノール系化合物としては、公知のものであれば特に限定はされないが、例えば下記式(20)〜(22)で表される化合物が挙げられ、必要に応じて2種以上用いても良い。
【0087】
【化15】
(式(20)、(21)、(22)中、R
yは式(5)における説明と同義である。)
【0088】
上記フェノール性化合物のうち、本発明の効果を得るために、特に好ましい構造は、下記式(23)で表される3,9−ビス(2−(3−(3−テトラブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンである。
【化16】
【0089】
式(5)で表されるフェノール系化合物の他に、他の酸化防止剤を式(5)で表されるフェノール系化合物と共に、またはこれに代えて配合することもできるが、式(5)で表されるフェノール系化合物と共に配合することが有利である。
【0090】
上記他の酸化防止剤としては、公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などの高分子型フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類、ジラウリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3―ラウリルチオプロピオネート)等のエステル骨格含有チオエーテル化合物系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は必要に応じて2種類以上を用いてもよい。
【0091】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には他の硬化性樹脂を配合することもできる。このような硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性アミノ樹脂、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性ウレア樹脂、熱硬化性シアネート樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性オキセタン樹脂、熱硬化性エポキシ/オキセタン複合樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須成分とするが、樹脂成分(樹脂の他、硬化して樹脂の一部となる成分、例えば、モノマー、硬化剤、硬化促進剤を含むが、溶剤、充填剤は含まない)の60wt%以上、好ましくは80wt%以上、より好ましくは90wt%以上が(A)成分〜(B)成分であることがよい。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、次のようにして決めることがよい。
【0093】
(A)成分のエポキシ基と(B)成分の硬化剤中の官能基が当量比で0.8〜1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、又は硬化剤中の官能基が残留し、硬化物としたときの硬度や耐熱性等の機能が低下するため好ましくない。また、硬化促進剤である(C)成分の配合割合としては、(A)成分と(B)成分の合計に対して、0.1wt%〜5wt%の範囲が好ましい。0.1wt%未満ではゲル化時間が遅くなって硬化時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、5.0wt%を超えると成形途中で硬化が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
【0094】
本発明の硬化性樹脂を電子部品として適用する場合、その用途、製造プロセスについては公知のものであれば特に限定されるものではない。たとえば、半導体封止材料であれば本発明の硬化性樹脂組成物にシリカなどのフィラーを混合し、ニーダーや熱3本ロールにて混練したのち、タブレット化して封止用金型のキャビティに送り込み熱硬化させるトランスファーモールド方式や、液状エポキシ樹脂と混合し、所望の粘度としたのち、所定の位置に樹脂を注入するディスペンス方式をとることが出来る。
【0095】
また、回路基板としては、たとえばガラスクロスなどの基材に本発明の硬化性樹脂組成物を含浸させた後、銅箔をプレス成型により貼り合わせる方法や、銅箔に本発明の硬化性樹脂組成物をキャスト法などにより塗布し、所望の基材と貼り合わせる方法をとることが出来る。
【0096】
また、光学部品用途としては、たとえば光学レンズ、光半導体用封止材、光半導体用筐体、光半導体接着剤などがあげられるがその用途についてはこれらに限定されず、公知の用途、製造プロセスであれば適用が可能である。
【0097】
たとえば、光学レンズ材料としては、ディスペンス方式、トランスファーモールド方式、液状射出成型方式等の公知のプロセスにより製造が可能である。
【0098】
光半導体装置(LED装置)用封止材としては、光半導体素子を金ワイヤー等で外部電極に接続したのち、トランスファーモールド方式、ポッティング方式、ディスペンス方式等公知の技術を用いて充填する方法が適用できる。この際、本発明の硬化性樹脂組成物に、光半導体素子から発光する光を変換する目的で、各種公知の蛍光粉末を用いてもよい。
【0099】
光半導体装置用筐体としては、本発明の硬化性樹脂組成物に、シリカ、酸化チタン、アルミナなどのフィラーを混合し、ニーダーや熱3本ロールにて混練したのち、タブレット化して封止用金型のキャビティに送り込み熱硬化させるトランスファーモールド方式等を適用できる。
【0100】
光半導体装置用接着剤としては、本発明の硬化性樹脂組成物を、公知のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂等の材料とフィラーをロール等による混練によりペースト化したものをディスペンス等の方法で基材に塗布、またはさらに公知のフィルム材を用いてフェルム状としたものを、基材の上に貼り合わせ、光半導体素子をマウントし熱硬化させる方法等を適用できる。
【実施例】
【0101】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
合成例1
式(11)において、平均繰り返し単位数mが1.56のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−510、アルコール性水酸基当量250g/mol、平均分子量500、平均炭素数約25)37重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した300mlのセパラブルフラスコに投入した。使用した各原料のモル数については、ポリエステルジオール1モルに対して、酸無水物化合物は2モルである。160℃に到達した後攪拌を4時間続けることで、化合物(A1-1)を合成した。化合物(A1-1)は、一般式(1)中のR
1が式(3)で表わされ、式(3)におけるR
4が3−メチルペンチレン基、R
5がブチレン基、mが1.56であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物である。得られた化合物(A1-1)を、サンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、144mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0103】
ついで、得られた化合物(A1-1)60重量部に、(A2)成分であるトリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100g/eq.)69重量部を投入した。この際の、カルボキシル基とエポキシ基のモル比は1:4.7である。次に、反応触媒として、テトラエチルアンモニウムクロリドの4%メタノール溶液を、0.6重量部滴下し、170℃の反応温度で5時間反応を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.21mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を118重量部得た。得られた樹脂のエポキシ当量は235g/eq.、軟化点が50℃の固形状樹脂であり、150℃の粘度は0.22Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E1とする。
【0104】
合成例2
式(11)において、平均繰り返し単位数mが3.61のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−1010、アルコール性水酸基当量500g/mol、平均分子量1000、平均炭素数約43)を74重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、実施例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(3)におけるR
4が3−メチルペンチレン基、R
5がブチレン基、mが3.61であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-2)を合成した。これをサンプリングし、0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、85.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0105】
ついで、得られた化合物(A1-2)97重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.18mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を151重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は306g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.25Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E2とする。この樹脂のIRスペクトルを、
図1に示す。
【0106】
合成例3
式(11)において、平均繰り返し単位数mが7.7のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−2010、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約100)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(3)におけるR
4が3−メチルペンチレン基、R
5がブチレン基、mが7.7であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-3)を合成した。これをサンプリングし、0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0107】
ついで、得られた化合物(A1-3)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.15mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を231重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は442g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.43Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E3とする。この樹脂のIRスペクトルを、
図2に示す。
【0108】
合成例4
式(12)において、平均繰り返し単位数mが6.27のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−2050、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約107)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(3)におけるR
4が3−メチルペンチレン基、R
5がオクチレン基、mが6.27であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-4)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.4mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0109】
ついで、得られた化合物(A1-4)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を228重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は448g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.48Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E4とする。この樹脂のIRスペクトルを、
図3に示す。
【0110】
合成例5
式(13)において、R
2bがエチレン基とブチレン基の混成構造、平均繰り返し単位数mが約10.5のポリエステルジオール(DIC(株)製OD−X−2330,アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約95)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(3)におけるR
4がエチレン基とブチレン基の混成構造、R
5がブチレン基、mが10.5であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-5)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.3mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0111】
ついで、得られた化合物(A1-5)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を226重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は432g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.40Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E5とする。
【0112】
合成例6
式(14)で表されるポリエステルジオール(ポリカプロラクトンジオール、(株)ダイセル製プラクセル220、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(4)で表わされ、式(4)におけるR
6が炭素数2〜20の2価の炭化水素基であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-6)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0113】
ついで、得られた化合物(A1-6)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.12mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を226重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は438g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.52Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E6とする。
【0114】
合成例7
下記式(24)で表される両末端水酸基含有シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製XF42−B0940、平均分子量1700、アルコール性水酸基当量850g/mol)を126重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、末端基が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成されるポリシロキサン化合物を合成した。これを、サンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、55.8mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。得られた(A1)類似の末端カルボキシル基含有シリコーン樹脂をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【化17】
(式中、pは平均繰り返し単位数を表し、約18である。)
【0115】
ついで、得られたシリコーン樹脂171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、エポキシシリコーン樹脂を226重量部得た。このエポキシシリコーン樹脂のエポキシ当量は432g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.40Pa・sであった。このエポキシシリコーン樹脂を、E7とする。
【0116】
合成例8
合成例3で使用したポリエステルジオール(P−2010)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例3と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR
1が、式(3)におけるR
4が3−メチルペンチレン基、R
5がブチレン基、mが7.7であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-8)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0117】
ついで、得られた化合物(A1-8)171重量部に、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日化エポキシ製造(株)製エポトートYD−128、エポキシ当量187g/eq.)を129重量部投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.25mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、エステル変性エポキシ樹脂を283重量部得た。このエステル変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は559g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.88Pa・sであった。このエステル変性エポキシ樹脂を、E8とする。
【0118】
実施例1〜6
合成例1〜6で得られた(A)成分である末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E1〜6)を、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸(MH:酸無水物当量168g/eq.)を用いて、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0119】
実施例7
(A)成分として、合成例2で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E2)を70重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を30重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は218g/eq.であった。この樹脂液と、MHを用いて、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0120】
実施例8
(A)成分として、合成例3で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E3)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は199g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0121】
実施例9
(A)成分として、合成例4で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E4)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は199g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0122】
実施例10
(A)成分として、合成例5で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E5)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は200g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0123】
実施例11
(A)成分として、合成例3で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E3)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、3,9−ビス(2−(3−(3−テトラブチル−4−ヒドロキシー5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン(以降、PH1と表記する。)を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0124】
実施例12
(A)成分として、合成例4で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E4)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0125】
実施例13
(A)成分として、合成例5で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E5)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0126】
比較例1
合成例7で得られたエポキシシリコーン樹脂(E7)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0127】
比較例2
合成例8で得られたエステル変性エポキシ樹脂(E8)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0128】
比較例3
(A)成分を使用せず、トリグリシジルイソシアヌレート(EpT、エポキシ当量100g/eq.)を20重量部、MHを34重量部用いた他は、比較例1と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0129】
比較例4
(A)成分を使用せず、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC)を26重量部,MHを34重量部用いた他は、実施例8と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0130】
比較例5
EpTを50重量部、EpCを50重量部使用しエポキシ樹脂混合物(C1)を作成した。これにMHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加えた以外は実施例8と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0131】
比較例6
EpTとMHをエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0132】
比較例7
EpCとMHをエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0133】
比較例8
トリグリシジルイソシアヌレートと酢酸を、モル比1:0.3で反応させ、トリグリシジルイソシアヌレート上のエポキシ基を部分的にカルボキシル基で変性したエポキシ樹脂(以降、EpTAと表記する。)233重量部と、水素化ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX−8000、エポキシ当量202g/eq.、以降、EpHと表記する。)100重量部を混合し、エポキシ樹脂混合物(C2)を作成した。この混合物のエポキシ当量は136g/eq.であった。この混合物に、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるようにMHを加え、化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0134】
合成例9
反応釜にトリグリシジルイソシアヌレートを39重量部、MHを61重量部、反応触媒として、テトラエチルアンモニウムクロリドの4%メタノール溶液を、0.5重量部加え、100℃にて1時間溶融混合したところ、反応物がゲル化した。
【0135】
比較例9
反応釜にトリグリシジルイソシアヌレートを39重量部、MHを61重量部、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](以降、PH2と表記する。)を0.5重量部投入し、100℃にて3時間溶融混合し部分的に反応させた。次に冷却固化させて軟化点60℃の反応中間物(H9)を得た。この反応中間物の酸価は205mgKOH/gであった。この固形物を粉砕し、さらにテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、熱2本ロールミルにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕した組成物を得た。この組成物を金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0136】
比較例10
トリグリシジルイソシアヌレートを10重量部、MHを17重量部、カプロラクトンポリオールとして、プラクセル305(株式会社ダイセル製;アルコール性水酸基当量166g/mol、以降P305と表記する。)を1.7重量部、ジベンジルアミンを0.1重量部を混合し、真空脱気して金型内で、150℃で3時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0137】
(貯蔵安定性)
合成例1〜8で得られたエポキシ樹脂E1〜E8、及び比較例9に記載の反応中間物(H9)を、室温で3ヶ月放置し、150℃での粘度を測定した。室温で3ヶ月後放置した樹脂の粘度を、初期の粘度の倍数として表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
(結晶析出の有無)
合成例1〜8で得られた樹脂E1〜E8と、EpCを用いて重量比50:50の混合物を作成した(EB1〜EB8)。ここで、樹脂E1とEpCの混合物をEB1とし、以下同様とする。また、比較例5で作成したエポキシ樹脂混合物(C1)、比較例8で作成したエポキシ樹脂混合物(C2)を、室温で3ヶ月放置し、結晶の析出の有無を目視で確認した。○:結晶析出なし、×結晶析出有り。
【0140】
【表2】
【0141】
硬化した樹脂板の物性測定は以下の方法にて行った。
(1)硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、線膨張率の変化した温度をガラス転移温度とした。昇温速度は5℃/分とした。
【0142】
(2)線膨張率の測定。
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、40℃と60℃の2点で結ばれた直線の傾きから線膨張率を算出した。昇温速度は5℃/分とした。
【0143】
(3)硬化物の初期透過度
日立製作所製自記分光光度計U−3410を用いて、厚さ1mm硬化物の400nmの透過度を測定した。
【0144】
(4)耐UV性の測定
厚さ4mm硬化物をQパネル社製耐候性試験機QUVを用いて、600時間UV照射した後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。QUVのランプにはUVA340nmを用い、ブラックパネル温度は55℃とした。
【0145】
(5)初期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、72時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0146】
(6)長期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、480時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0147】
(7)硬度の測定
テクロック(株)性硬度計TYPE−Dを用いて、室温での硬化物の表面硬度を測定した。
【0148】
(8)硬化物形状
金型取り外し後の硬化物形状は、金型を外したとき、硬化物の均一性や硬化収縮による硬化物の割れを目視にて判定した。○:均一な硬化物である。△:金型の形状を保っているが硬化物中にクラックが生じている。×:金型の形状を保たず、樹脂が割れている。
【0149】
(9)曲げ、たわみ特性試験
JIS−7171に準拠し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所(株)製)により曲げ弾性率、曲げ強度、曲げたわみを測定した。曲げたわみ試験において、○は破断せずを意味する。
【0150】
(10)吸湿率の測定
4mm厚の硬化物を、110℃の真空下で3時間処理した後、85℃、85%の環境下に100時間放置した。試験前後の重量増を電子天秤で秤量し、増分を百分率で表記した。
【0151】
実施例1〜6により得られた硬化物の各試験の測定結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
実施例7〜13により得られた硬化物の各試験の測定結果を表4に示す。
【0154】
【表4】
【0155】
比較例1〜5により得られた硬化物の各試験の測定結果を表5に示す。表5〜6中、(A)成分は、(A)成分に類似する成分を含む意味で使用される。
【0156】
【表5】
【0157】
比較例6〜10により得られた硬化物の各試験の測定結果を表6に示す。
【0158】
【表6】
【0159】
実施例14〜26、比較例11〜20
実施例1〜13、比較例1〜10の配合により得られた組成物を、底辺部が銀メッキされた青色LED用プレモールドパッケージに、注型により充填し、100℃2時間、150℃5時間硬化させて封止して、LED装置を作成した。
【0160】
封止されたLED装置の物性測定は以下の方法にて行った。
(11)熱衝撃試験の測定。
封止されたLEDパッケージを、−40℃〜100℃、500サイクルの試験に供し、顕微鏡にてクラック及び封止材の剥がれ、ワイヤー破断の有無を確認した。結果を表4に示す。クラック及び封止材の剥がれ、又はワイヤー破断が、無しを○、有りをXとした。
【0161】
【表7】