特許第5914110号(P5914110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914110
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20160422BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20160422BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C08G59/32
   C08G59/42
   C08L63/00 Z
   H01L23/30 F
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2012-80302(P2012-80302)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209502(P2013-209502A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 修一郎
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−063872(JP,A)
【文献】 特開昭61−274302(JP,A)
【文献】 特開昭53−080429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
H01L 23/29
H01L 23/31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分、
(A)一般式(1)で表され、分子量分布を有し、R1中の平均炭素数が20以上の両末端飽和環状脂肪族ジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させて得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び
(C)硬化促進剤
を必須成分として含むことを特徴とする光学部品用又は電子部品用の硬化性樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(式中、Zは炭素数4〜12の置換基を有していても良い2価の飽和環状脂肪族基を表し、縮環構造を有していても良い。R1は式(2)で表される内部にエステル結合を有する炭素数20以上の2価の炭化水素基である。式(2)中、R2、R3は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル構造を有していても良く、各々同一でも異なっていても良い。Estはエステル基を表し、nは1〜100の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(2)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。)
【請求項2】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂が、不純物として酸無水物化合物を含まず、かつカルボン酸価が1.0mgKOH/g未満であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂のエポキシ当量が、150〜800g/eq.であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(1)におけるZが、シクロヘキシレン基構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(1)におけるR1が、平均分子量500〜3000の範囲であり、内部にエステル結合を2個以上有する2価の炭化水素基から構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
一般式(1)におけるR1が、式(3)又は式(4)のいずれかで表わされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
(式中、R4は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、各々同一でも異なっていても良い。R5は炭素数4〜11の2価の炭化水素基を表す。mは1〜20の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(3)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。)
【化4】
(式中、R6は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。l、kはそれぞれ1〜20の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(4)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。)
【請求項7】
(B)成分の硬化剤が、酸無水物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の硬化促進剤が、4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに(D)成分、
(D)一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する液状エポキシ樹脂を使用し、エポキシ樹脂成分である(A)成分と(D)成分のエポキシ当量が160〜300g/eq.、25℃での粘度が0.1〜500Pa・sとなるように(D)成分を用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物
【請求項10】
さらに(E)成分、
(E)式(5)で表されるフェノール系化合物を使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化5】
(式中、Ryは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、Yは炭素数1〜60の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル結合性酸素原子を2〜8個有していても良い。)
【請求項11】
光半導体部品用の硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化性樹脂組成物を用いて封止することを特徴とするLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐着色性等に優れた硬化物が得られる末端イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物とその硬化体に関し、特に、電子材料分野や光半導体封止に適した硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、電気特性、接着性、耐熱性等に優れることから主に塗料分野、土木分野、電気分野の多くの用途で使用されている。特に、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂は、耐水性、接着性、機械物性、耐熱性、電気絶縁性、経済性などが優れることから種々の硬化剤と組み合わせて広く使用されている。しかし、これらの樹脂は芳香環を含むことから、紫外線等により劣化しやすく、耐候性、耐光性を求められる分野では使用上の制約があった。
【0003】
エポキシ樹脂組成物に関しては、硬化物の硬度が高いため、ハンドリング性に優れており、低出力の白色LED封止用途では、必要な耐久性が得られることから、低出力用途では多く用いられている。しかし、高出力LEDにおいては、発光量や発熱量の増加により変色を生じやすく、十分な寿命を得ることが難しい短所を有している。発熱量の増加による変色を防ぐために、高いガラス転移温度を発現するエポキシ樹脂が使用されるが、このようなエポキシ樹脂は高弾性である上、強度、たわみが通常のエポキシ樹脂より低く、消灯点灯による急激な温度変化などで封止材が割れを生じやすいなどの課題も有している。加えて近年のLEDの発光波長の短波長化により、連続使用すると変色を生じて発光出力が低下しやすいなどの課題も有している。このため、封止材には更なる耐熱着色性、耐光着色性の改善と同時に、高い強度と靭性を有することが求められる。
【0004】
耐熱性・耐光性を改善するために、イソシアヌル酸骨格を含有するエポキシ樹脂をベースにしたLED封止材の開発が行われている。イソシアヌル酸骨格を含有したエポキシ樹脂を用いたLED封止材は、芳香族エポキシ樹脂、及びこれを核水素化したエポキシ樹脂、シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂と比較して耐熱着色性、耐光着色性は改善されるが、近年のLEDの高出力化の要求を満足するだけの改善にはいたっていない。
【0005】
一方、トリグリシジルイソシアヌレートに代表されるイソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂は融点が100℃近辺と高いうえ、LED封止材として通常使用される芳香族エポキシ樹脂、及びこれを核水素化したエポキシ樹脂、シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂、酸無水物化合物との相溶性が非常に悪く、混合する際にはイソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の融点近くまで温度を上昇させる必要がある。その上、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂は結晶性が非常に強いため、混合後の樹脂組成物を冷却するとイソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂が容易に析出し、不均一な組成物と化してしまうため作業性が非常に悪いという欠点を有する。
【0006】
加えて、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂は、その剛直性から、硬化物としたときに非常に高いガラス転移温度が得られるという利点を有するが、その極性の高さ、剛直性、及び架橋密度の高さから、通常の芳香族エポキシ樹脂と比較して吸湿性が高く、機械強度が劣り、非常に脆いという欠点を有する。これは、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂をベースにしたLED封止材を用いたLEDパッケージを消灯点灯させる際に生じる急激な温度変化や、周囲環境の急激な冷熱サイクル、及びLEDをリフロー実装する際に硬化物の吸湿による水分が爆発的に蒸発し封止材にクラックが生じる不具合に通じる。
【0007】
イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の相溶性や機械強度を改善するため、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂を単官能のカルボン酸や、酸無水物を用いて部分的に反応させ、組成物としたときの相溶性を高めると共に、樹脂中のエポキシ基を間引き、硬化物としたときの架橋密度を低減させることで機械強度を改善する試みがなされている。しかし、単官能カルボン酸を用いて変性させたイソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂は、相溶性は改善できるものの、耐熱着色性や吸湿性を十分に改善したとは言いがたい。また、酸無水物を用いて部分的に反応させた樹脂は、元来融点の高いイソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の融点をさらに上昇させ、作業性の悪化を招くと共に、反応を制御することが難しく、往々にして不定形のゲルが生じてしまう。酸無水物を完全に反応させる前に途中で反応を停止した場合であっても、樹脂中に未反応の酸無水物が残存しているため、貯蔵中に反応が進行しLEDを封止する際に樹脂が溶融せず成型不良を生じるなど作業面で更なる改善が求められている。
【0008】
イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の機械強度を改善するため、シロキサン構造を内部に導入する試みがなされている。この手法については一定の効果が認められるものの、柔軟なシロキサンに由来し硬化物の線膨張率が上昇し、冷熱サイクル時にパッケージのワイヤーボンディング部分などの特定箇所に応力が集中しやすく、ワイヤー接合部位が外れるなどの不具合が生じることから、更なる改善が求められている。
【0009】
このように、耐熱着色性、耐光着色性に優れるイソシアヌル骨格にしても、LED封止材に要求される物性を完全に満たしているものは得られておらず、貯蔵安定性、作業性、低吸湿性、機械強度、耐熱着色、耐光着色性に優れる材料が求められている。
【0010】
一方、末端にカルボキシル基を有するポリエステルとトリグリシジルイソシアヌレートとのエポキシ樹脂組成物は粉体塗料として古くから検討されているが、この組成物に更にエポキシ樹脂の硬化剤または他の脂環エポキシ等を配合し、透明性に優れた材料とすることに関しては検討されていない。
【0011】
特許文献1には、トリアジン環含有エポキシ樹脂と芳香族エポキシ樹脂を直接水素化して得られる芳香環の水素化率が90〜100%の水素化エポキシ樹脂の混合物と、酸無水物硬化剤、硬化促進剤を含有してなる発光素子封止材用エポキシ樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、カルボン酸で変性された、置換されていてもよいトリグリシジルイソシアヌレート類と、水素化芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つのエポキシ樹脂であって、25℃で液状であるエポキシ樹脂とを混合した組成物が開示されている。特許文献3には、トリアジン誘導体エポキシ樹脂と酸無水物とをエポキシ当量/酸無水物基当量を0.6〜2.0の割合で反応させて得られる固形物の粉砕物を樹脂成分として含有してなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、硬化促進剤、ポリラクトンポリオール、ポリオルガノシロキサンを含む光半導体装置用エポキシ樹脂組成物が開示されている。特許文献5には、アルコール性水酸基を両末端に有する直鎖ポリシロキサンと炭化水素基の両末端にアルコール性水酸基を有する2価アルコールを含み、酸無水物の反応により得られる末端にカルボキシル基を有するヘミエステルと、トリグリシジルイソシアヌレートを、ヘミエステル中のカルボキシル基とトリグリシジルイソシアヌレートのエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させて得られたエポキシシリコーン樹脂が開示されている。特許文献6にはカルボキシル基を有するポリエステルにトリグリシジルイソシアヌレートを反応させたエポキシ樹脂を含む粉体塗料が開示されている。しかし、これら特許文献に記載された硬化性樹脂組成物も、上記特性を十分に有しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−306952号公報
【特許文献2】特開2008−45014号公報
【特許文献3】WO2007/15427号公報
【特許文献4】特開2011−153165号公報
【特許文献5】特開2012−1570号公報
【特許文献6】特開平4−63872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、貯蔵安定性、作業性、低吸湿性、機械強度、耐熱着色、耐光着色性に優れ、線膨張率が低く、耐クラック性も兼備する、電子材料分野や光半導体封止に適したエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、下記(A)〜(C)成分、
(A)一般式(1)で表され、分子量分布を有し、両末端飽和環状脂肪族ジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させて得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び
(C)硬化促進剤
を必須成分として含むことを特徴とする光学部品用又は電子部品用の硬化性樹脂組成物である。
【化1】
【0015】
式中、Zは置換基を有していても良い炭素数4〜12の2価の飽和環状脂肪族基を表し、縮環構造を有していても良い。R1は式(2)で表される内部にエステル結合を有する炭素数20以上の2価の炭化水素基である。
【化2】
式(2)中、R2、R3は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル構造を有していても良く、各々同一でも異なっていても良い。Estはエステル基を表し、nは1〜100の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(2)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。
【0016】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、次のいずれか1つ以上を満足することが望ましい。
1) 不純物として酸無水物化合物を含まず、かつカルボン酸価が1.0mgKOH/g未満であること。
2) エポキシ当量が、150〜800g/eq.であること。
3) 一般式(1)におけるZが、シクロヘキシレン基構造を有すること。
4) 一般式(1)におけるR1が、平均分子量500〜3000の範囲であり、内部にエステル結合を2個以上有する2価の炭化水素基から構成されていること。
5) 一般式(1)におけるR1が、式(3)又は式(4)のいずれかで表わされること。
【0017】
【化3】
(式中、R4は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、各々同一でも異なっていても良い。R5は炭素数4〜11の2価の炭化水素基を表す。mは1〜20の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(3)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。)
【化4】
(式中、R6は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。l、kはそれぞれ1〜20の数を表す平均の繰り返し単位数であるが、式(4)中に含まれる平均の炭素数は20以上である。)
【0018】
また、本発明は、(B)成分の硬化剤が、酸無水物である上記の硬化性樹脂組成物である。更に、本発明は、(C)成分の硬化促進剤が、4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩から選ばれる少なくとも1種である上記の硬化性樹脂組成物である。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に次の(D)成分及び(E)成分から選ばれる少なくとも1種の成分を含むことが望ましい。
(D)一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する液状エポキシ樹脂。この場合、エポキシ樹脂成分である(A)成分と(D)成分のエポキシ当量が160〜300g/eq.、25℃での粘度が0.1〜500Pa・sとなるように(D)成分を用いることがよい。
(E)式(5)で表されるフェノール系化合物。
【0020】
【化5】
(式中、Ryは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、Yは炭素数1〜60の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル結合性酸素原子を2〜8個有していても良い。)
【0021】
また、本発明は光学部品用樹脂組成物又は電子部品用樹脂組成物又は光半導体部品用樹脂組成物であることを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物である。更に、本発明は、上記の光半導体部品用樹脂組成物を用いて封止することを特徴とするLED装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、末端イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤を含み、貯蔵安定性及び室温で液状のエポキシ樹脂との相溶性に優れ、これを用いた硬化性樹脂組成物は、硬化処理を施して得られる硬化樹脂としたときの強度、たわみ、低線膨張性に優れ、透明性を有し、耐熱着色性、耐光着色性に優れる硬化物を得ることができる。したがって、半導体や回路基板などの電子部品材料や、光学レンズなどの光学部品材料に有用であり、特に昨今LED封止材において課題となっている熱・光による着色、温度変化によるクラック等の改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E2)のIRスペクトル
図2】末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E3)のIRスペクトル
図3】末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E4)のIRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)〜(C)成分を必須成分として含む。すなわち、(A)末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を必須成分として含む。以下、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を(A)成分と、硬化剤を(B)成分と、硬化促進剤を(C)成分と記すことがある。なお、本明細書でいうエポキシ樹脂とエポキシ化合物は同一の意味を有する場合があると理解される。したがって、エポキシ樹脂又はエポキシ化合物は両者を代表する意味で使用されることがある。
【0025】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、上記一般式(1)で表され、分子量分布を有し、R1中の平均炭素数が20以上であり、末端が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成されるジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させて得ることが出来る。
【0026】
一般式(1)中のZは炭素数4〜12、好ましくは4〜10の2価の飽和環状脂肪族基を表し、内部で縮環構造を有していても良い。また、Zは置換基を有していても良く、置換基を有する場合は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。このような飽和環状脂肪族基としては、例えば、シクロブタニレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、ノルボルニレン基、メチルノルボルニレン基、デカヒドロナフチレン基、ビシクロヘキシレン基などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいZは、経済性及び反応の容易性から、シクロヘキシレン基である。
【0027】
一般式(1)中のR1は、上記式(2)で表される内部にエステル結合を有する炭素数20以上の2価の炭化水素基であり、分子量分布を有する構造を表す。
【0028】
式(2)中、Estはエステル基を表す。エステル基の形態は、‐C(O)-O-と、-O-C(O)-の形態の2種類が挙げられるが、どちらの形態であってもよい。
【0029】
式(2)中、R2、R3は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。このような基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、炭素数2〜12のアルキレン基である。
【0030】
式(2)中、nは1〜100の平均の繰り返し単位数を表すが、式(2)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいnは、式(2)で表される基の平均の分子量が500〜3000の範囲に入る数である。このような構造を有することで、イソシアヌル骨格含有エポキシ樹脂の欠点であった難溶性、高吸湿性、低機械強度を改善することが可能となる。
【0031】
式(2)で表される構造のうち、本発明の効果を得る好ましい形態は、上記式(3)又は式(4)で表される2価のポリエステル構造である。
【0032】
式(2)及び式(3)において、R4はR2に対応し、R5はR3に対応すると理解される。式(2)及び式(4)において、R6はR3に対応し、ペンチレン基はR2に対応すると言える。
【0033】
式(3)中、R4は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられる。好ましいR4は、R2で説明したと同様である。
5は炭素数4〜11の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数2〜10のアルキレン基である。
さらに好ましくは、式(3)において、R4が3−メチルペンチレン基、R5がブチレン基又はオクチレン基である構造である。
【0034】
式(3)中のmは1〜20の数の平均繰り返し単位数を表し、かつ、式(3)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいmは、式(2)のnで説明したと同様である。
【0035】
式(4)中、R6は炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。このような基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ステアリレン基などが挙げられる。好ましい基は、R3で説明したと同様である。
【0036】
式(4)中、l、kはそれぞれ1〜20の数の平均繰り返し単位数を表し、かつ、式(4)を構成する炭素数が20以上となる数を表す。好ましいl+kは、式(4)で表される基の平均の分子量が500〜3000の範囲に入る数である。
【0037】
本発明で使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、一般式(1)で表わされる末端基が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成される化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させることで得ることが出来、好ましくは1/3.5〜1/6の範囲とする。エポキシ基のモル比が3未満の場合は、反応時にゲル化を生じる恐れがあり、本発明の硬化性樹脂組成物が得られない。また、エポキシ基のモル比が10を超える場合は、(A)成分中に存在する(A1)構造由来の濃度が低くなり、イソシアヌル骨格特有の欠点である硬化物の脆さ、高い吸湿性、及び長期耐熱試験での着色が生じるため好ましくない。
【0038】
(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、樹脂中に酸無水物化合物を含まず、かつ酸価が1mgKOH/g未満であることが望ましい。酸無水物化合物については、後述する製造方法の項目でも説明するが、一般式(1)で表される化合物を合成する際に原料として酸無水物を用いた場合、酸無水物が完全に反応し残存していないことを、ガスクロマトグラフィー法等の公知の手法を用いて確認することが出来る。この酸無水物化合物は(A)成分又は中間体としてのジカルボン化合物(A1)を製造する際の未反応分として含まれるので、不純物である。(A)成分中に、酸無水物化合物を存在させないことにより、(A)成分の貯蔵安定性が格段に向上する。
【0039】
一方、酸価は酸無水物化合物の含有量にも関係するが、酸無水物化合物は実質的に含まれないので、実質的にジカルボン化合物(A1)のカルボキシ基の残存量に関係すると言える。この酸価が1mgKOH/g未満、好ましくは0.5mgKOH/g未満であることがよい。
酸価については、後述する製造方法の項目でも説明するが、所定の酸価となるまで、ジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を反応させることで、貯蔵安定性に優れた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂とすることが出来る。
【0040】
ジカルボン化合物(A1)を合成する際、酸無水物が残存していると、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を合成する際にゲル化を生じたり、また貯蔵中に粘度の上昇やエポキシ当量の上昇、ゲル化が生じるため好ましくない。末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂中の酸価が1mgKOH/g以上である場合についても、(A)成分の貯蔵中に粘度の上昇やエポキシ当量の上昇が発生し、品質上の問題が発生するため好ましくない。
【0041】
次に、(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂の製造方法について説明する。
本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物(A1)と、トリグリシジルイソシアヌレート(A2)を、(A1)のカルボキシル基と、(A2)のエポキシ基のモル比を、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10として反応させることで製造される。
【0042】
ジカルボン酸化合物(A1)は、式(8)で表される両末端にアルコール性水酸基を有するポリエステルジオールを、式(9)で表される酸無水物化合物と付加反応させる方法や、式(10)で表される2官能カルボン酸、エステル化合物、又は酸ハロゲン化物と縮合反応させる方法などにより得ることができるがこれらに限定されない。この際、多量体などの不純物が生成する場合は、再結晶等の精製が必要によりなされる。
【0043】
【化6】
(式中、R2、R3、Est、nは、式(2)と同義である。)
【0044】
【化7】
(式中、Z1、Z2は、一般式(1)におけるZと同義である。また、Xは水酸基、C1〜C3のアルキルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【0045】
ジカルボン酸化合物(A1)を得る特に好ましい手法は、反応操作の容易性、経済性から、式(8)で表される両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと、式(9)で表される酸無水物化合物を用いた付加反応である。
【0046】
式(8)で表される両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールとしては、nが上記の範囲を超えないものであれば公知のものを種々選択することができるが、好ましい原料は、下記式(11)〜(14)で表される化合物である。
【0047】
【化8】
(式中、mは平均繰り返し単位数であり、1.5<m<13を満たす数である。)
【0048】
なお、平均繰り返し単位数が1.5を超える数であれば、一般式(1)におけるR1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが13未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)クラレ製Kuraray Polyols P−510(平均分子量500),P−1010(平均分子量1000),P−2010(平均分子量2000),P−3010(平均分子量3000)等の形で入手が可能である。
なお、本明細書中でいう平均の分子量、平均の繰り返し数は、数平均を意味する。
【0049】
【化9】
(式中、mは1.3<m<10を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数mが1.3を超える数であれば、一般式(1)におけるR1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが10未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)クラレ製Kuraray Polyols P−2050(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0050】
【化10】
(式中、R2bはエチレン基又はブチレン基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていても良い。mは2.3<m<17を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数mが2.3を超える数であれば、一般式(1)におけるR1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、mが17未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えばDIC(株)製OD−X−355(平均分子量1000),OD−X−2330(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0051】
【化11】
(式中、R6は一般式(4)における説明と同義であり、l、kは1より大きい数であり、3<(l+k)<26を満たす数である。)
なお、平均繰り返し単位数の合計である(l+k)が3を超える数であれば、一般式(1)におけるR1中の平均炭素数が20以上となり、平均分子量が500以上と解釈できる。また、(l+k)が26未満の数であれば、平均分子量が3000未満と解釈できる。このような化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば(株)ダイセル製プラクセル205(平均分子量500)、プラクセル210(平均分子量1000)、プラクセル220(平均分子量2000)等の形で入手が可能である。
【0052】
式(11)〜(14)で表されたような両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールは、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
【0053】
式(9)で表される酸無水物化合物としては、公知のものであれば種々の化合物を選択できる。例えば、シクロブタン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンー1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物などの飽和環状脂肪族酸無水物化合物が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用しても良い。好ましい酸無水物化合物は、経済性、反応操作の容易性等から、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物である。
【0054】
ジカルボン酸化合物(A1)を得るための、特に好ましい手法を用いた上記両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと酸無水物の使用量は、化学量論的にはアルコール性水酸基を有する成分1モルに対して、酸無水物2モルを用いるが、硬化性樹脂としたときの硬化速度のコントロール、架橋密度の制御の点で、アルコール性水酸基を有する成分を、過剰に用いることがよい。過剰量に用いる場合、本発明の効果を損なわない観点から、酸無水物2モルに対して、両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオール2モルまでが好ましい。逆に、酸無水化合物を過剰量用いると、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の合成時にゲル化を生じやすくなる。
【0055】
ジカルボン酸化合物(A1)を得るための、特に好ましい手法を用いた反応の終点は、酸無水物が完全に消失し残存していないことを確認することで達成される。酸無水物の残存の有無は、酸価の測定ならびにガスクロマトグラフィー法等の公知の手法を用いて確認することが出来る。酸無水物が残存している状態で次に示すエポキシ変性反応を行うと、ゲル化が起こりやすいこと、また、ゲル化を生じずとも、エポキシ当量や粘度などの品質に大きく影響を及ぼすため好ましくない。
【0056】
この特に好ましい手法を用いた反応の条件については、両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールと酸無水物を、通常80℃〜200℃、好ましくは100℃〜150℃で反応させることがよい。80℃以下では反応時間が長くなるため好ましくない。また、200℃以上では、重合・分解の懸念があるため好ましくない。
【0057】
また、この反応は無溶媒で反応を行うことも出来るが、攪拌効率を上げるなどの理由により、反応に関与しない溶媒を使用してもよい。たとえば、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族系炭化水素化合物、ウンデカン、ドデカンなどの直鎖炭化水素化合物、メチルイソブチルケントン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物が挙げられる。
【0058】
本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂は、(A1)と(A2)を、(A1)が有するカルボキシル基と(A2)が有するエポキシ基のモル数が、カルボキシル基/エポキシ基=1/3〜1/10の比率で反応させて得られるが、この反応では、(A1)が有するカルボキシル基と(A2)が有するエポキシ基が反応して、エステル結合が生成し、(A1)の末端にエポキシ置換イソシアヌル基が結合した構造となる。ここで、(A2)はエポキシ基を3個有するため、未反応のエポキシ基の一部は他の(A1)と結合して架橋構造を形成してもよい。
【0059】
また、ジカルボン酸化合物(A1)中に、不純物として両末端アルコール性水酸基を有するポリエステルジオールや片側一方が反応したモノオールが不純物として含まれている場合、これら不純物のアルコール性OH基が(A2)のエポキシ基が反応した化合物が生ずることがあるが、このような化合物が(A)成分中に少量含まれることは差し支えない。
上記のようにエポキシ基が過剰に使用されるので末端にエポキシ置換イソシアヌル基が結合したエポキシ樹脂が主成分となる。また、生成する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は通常分子量分布を持った混合物であるが、これらは分離してもよく、混合物のままの末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)として使用してもよい。
【0060】
また、この反応は上記モル比が1/3.5〜1/6の範囲がさらに好ましい。エポキシ基のモル比が3未満の場合は、反応時にゲル化を生じる恐れがあり、本発明の樹脂を得られない恐れがある。また、エポキシ基のモル比が10を超える場合は、(A)成分中に存在する(A1)構造由来の濃度が低くなり、イソシアヌル骨格特有の欠点である硬化物の脆さ、高い吸湿性、及び長期耐熱試験での着色が生じるため好ましくない。
【0061】
反応条件については、カルボキシルとエポキシ基の一般的な反応であることから、特に限定されることはない。
【0062】
例えば、反応温度については、通常50℃〜230℃、好ましくは70℃〜170℃である。50℃未満の場合、反応時間が長くなる。また、230℃を超えると反応中に樹脂が分解、あるいは副反応を起こしやすくなる。
【0063】
この反応は、無触媒でも反応を行うことが出来るが、反応時間の短縮の点から、触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、カルボキシルとエポキシ基の反応を促進させる効果があれば、公知のもので種々の化合物を選択できる。たとえば、イミダゾール系化合物およびその塩、3級アミン化合物、3級ホスフィン化合物、4級アンモニウム塩化合物、4級ホスホニウム塩化合物等が挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用しても良い。好ましい触媒は、反応時の着色を抑える観点から、4級アンモニウム塩化合物または4級ホスホニウム塩化合物である。
【0064】
上記触媒を用いる場合、用いる量としては特に限定されないが、得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を100重量部としたとき、通常0.001重量部〜5重量部、好ましくは0.005重量部〜3重量部である。また、用いる際、触媒を溶解させる溶媒を用いてあらかじめ溶液を調製しておき、この触媒溶液を反応系内に投入する手法を用いてもよい。
【0065】
また、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の着色を防ぐ観点から、酸化防止剤を添加して反応を行っても良い。この酸化防止剤としては公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどの高分子型フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類、ジラウリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3―ラウリルチオプロピオネート)等のエステル骨格含有チオエーテル化合物系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は必要に応じて2種類以上を用いてもよい。
【0066】
末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を得る反応は無溶媒で反応を行うことも出来るが、攪拌効率を上げるなどの理由により、反応に寄与しない溶媒を使用してもよい。たとえば、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族系炭化水素化合物、ウンデカン、ドデカンなどの直鎖炭化水素化合物、メチルイソブチルケントン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物が挙げられる。
【0067】
この反応で得られる末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、反応混合液から溶媒等を分離して得られる反応混合物として使用することが有利である。
【0068】
上記反応は、反応が進むにつれジカルボン酸(A1)中のカルボキシル基が消失されていくが、酸価が1.0mgKOH/g未満となるまで、カルボキシ基が消失するまで行うことがよい。酸価が1.0mgKOH/gまでカルボキシル基を消失させることで、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)の貯蔵安定性が良好なものとなり、(A)成分を用いた硬化物は透明性、耐熱着色性、低吸湿性が良好なものとなる。酸価が1.0mgKOH/g以上で反応を停止した場合、貯蔵中に吸湿が大きくなったり、エポキシ当量や粘度などの品質に大きく影響を及ぼす。
【0069】
末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を含む反応混合物は、エポキシ当量が150〜800g/eq.であることが望ましい。この範囲であることで、透明性、耐熱着色性、ガラス転移点温度、曲げたわみに優れた硬化物を得ることができる。エポキシ当量がこの範囲から外れる場合は、硬化物が脆くなる、耐熱着色性が悪くなる、硬化物の透明性が損なわれるなどの恐れがある。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、有機アミン化合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール及びその誘導体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、ナフタレンジオール、4,4’−ビフェノールなどの2価フェノール化合物、フェノールやナフトール類とホルムアルデヒドあるいはキシリレングリコール類との縮合反応により得られるノボラック樹脂あるいはアラルキルフェノール樹脂、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物、アジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物を適用することができ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明の効果を得るための好ましい硬化剤は酸無水物であり、更に好ましくは無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、水素化無水ナジック酸等の脂肪族環状酸無水物である。
【0071】
硬化促進剤(C)としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤とし公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、3級アミン及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機金属塩が挙げられ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明の効果を得るための好ましい硬化促進剤は、4級アンモニウム塩類、有機ホスフィン化合物、4級ホスホニウム塩類であり、更に好ましい触媒は4級ホスホニウム塩類である。
である。
【0072】
本発明の硬化樹脂組成物は、上記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分とするが、粘度、硬化速度の調整等を目的として(A)成分以外の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物を用いてもよい。特に(D)成分として一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する液状エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0073】
(D)成分は、一分子中に2個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する液状エポキシ樹脂であれば特に制限はないが、下記式(15)〜(17)に示すシクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0074】
【化12】
(式中、R7、R8は炭素数1〜20の2価の有機残基を表す。)
【0075】
【化13】
(式中、R9は炭素数1〜20の2価の炭化水素基または単結合を表す。)
【0076】
一般的に(D)成分のみを用いた硬化性樹脂組成物は脆く、耐熱着色性に劣るという欠点を有する。本発明に使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)は、イソシアヌル酸骨格を含有するエポキシ樹脂の欠点である難溶性を克服しており、さらに(D)成分と併用することで、(D)成分の欠点である脆さと耐熱着色性の両方を改善することも可能となる。すなわち、(D)成分を併用することで本発明の特徴である良好な耐熱着色性、硬度、強度、たわみ、低線膨張性を維持したまま、さらに好ましい作業性や機械強度の向上を達成することが可能となる。好ましい(D)成分の構造としては、低粘度性、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)との併用による効果、入手の経済性から、式(15)で表されるエポキシ樹脂のうち、R7がメチレン基で表されるエポキシ樹脂であり、(D)成分を併用する量としては、(A)成分を混合した後、混合後のエポキシ当量が160〜300g/eq、で、25℃での粘度が0.1〜500Pa/sであることがより好ましい。全エポキシ成分に対して(D)成分が最大でも80%好ましくは50%以内で使用することが良い。(D)成分を80%を超えて使用すると(A)成分による顕著な効果が減少する。
【0077】
(A)成分の使用量は、全エポキシ成分に対して、20〜100wt%、好ましくは50〜100wt%、より好ましくは70〜100wt%である。ここで、全エポキシ成分は、(A)成分、D成分の他に、他のエポキシ樹脂を配合する場合は、これらの合計をいう。
【0078】
さらにD成分以外の公知の他のエポキシ樹脂も併用することができる。他のエポキシ樹脂としては、たとえば、レソルシノール、ハイドロキノン、2,5−ジターシャリブチルヒドロキノンなどの単環型二価フェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香環を核水素化したもの、1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香環を核水素化したもの、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−(1−α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3−ジメチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−ターシャリーブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニル等のビスフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香族環を核水素化したエポキシ樹脂等がある。
【0079】
更に、イソシアヌル骨格を有するエポキシ樹脂として、N―メチル−N’,N’’−ジグリシジルイソシアヌレート、N−アリル−N’,N’’−ジグリシジルイソシアヌレートで表されるイソシアヌル骨格を有するエポキシ化合物がある。
【0080】
更に、下記式(18)、式(19)等で表されるエポキシシリコーン樹脂などが挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
【0081】
(R10SiO3/2j(R1112SiO)i(Me3SiO1/2h (18)
(式中、R10〜R12は、それぞれ内部にエポキシ基を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、芳香族基であり、内部にエーテル性酸素原子を1〜3個有していても良い。ただし、R10〜R12のうち、1つ以上は必ずエポキシ基を含む。またR11、R12が同時にエポキシ基を有することはない。i〜kは、i+j+k=1,0≦k<1、0<j<1、0<i0.75を満たす数である。)
【0082】
【化14】
(式中、R13は環状構造を有していても良い、炭素数2〜20の1価の炭化水素基を表す。R14は炭素数1〜20の2価の有機残基を表す。gは0〜100の整数である)
【0083】
(A)及び(D)成分以外のこれらの他のエポキシ樹脂の配合量は、全エポキシ樹脂成分の30wt%以下が望ましい。
【0084】
本発明における硬化性樹脂組成物をLED封止用途として使用する際には、酸化防止剤を配合し、加熱時の酸化劣化を防止し着色の少ない硬化物とすることが好ましい。酸化防止剤としては上記式(5)で表されるフェノール系化合物が特に好適に用いられる。興味深いことに、式(5)で表される酸化防止剤は、エポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートを単独で用い、酸無水物化合物との熱処理で得られる硬化物では、耐熱着色性の改善は全く見受けられないが、本発明で使用する末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(A)を用いた場合には劇的な耐熱着色性の改善が達成される。詳細なメカニズムは不明であるが、元来難溶性化合物であるトリグリシジルイソシアヌレートとは構造を異にし、内部にポリエステル構造を導入することで酸化防止剤との相溶性が向上したためと推測される。
【0085】
式(5)中、Ryは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、Yは炭素数1〜60の2価の炭化水素基を表し、内部にエステル結合性酸素原子を2〜8個有していても良い。
【0086】
式(5)で表されるフェノール系化合物としては、公知のものであれば特に限定はされないが、例えば下記式(20)〜(22)で表される化合物が挙げられ、必要に応じて2種以上用いても良い。
【0087】
【化15】
(式(20)、(21)、(22)中、Ryは式(5)における説明と同義である。)
【0088】
上記フェノール性化合物のうち、本発明の効果を得るために、特に好ましい構造は、下記式(23)で表される3,9−ビス(2−(3−(3−テトラブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンである。
【化16】
【0089】
式(5)で表されるフェノール系化合物の他に、他の酸化防止剤を式(5)で表されるフェノール系化合物と共に、またはこれに代えて配合することもできるが、式(5)で表されるフェノール系化合物と共に配合することが有利である。
【0090】
上記他の酸化防止剤としては、公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などの高分子型フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類、ジラウリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3―ラウリルチオプロピオネート)等のエステル骨格含有チオエーテル化合物系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は必要に応じて2種類以上を用いてもよい。
【0091】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には他の硬化性樹脂を配合することもできる。このような硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性アミノ樹脂、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性ウレア樹脂、熱硬化性シアネート樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性オキセタン樹脂、熱硬化性エポキシ/オキセタン複合樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須成分とするが、樹脂成分(樹脂の他、硬化して樹脂の一部となる成分、例えば、モノマー、硬化剤、硬化促進剤を含むが、溶剤、充填剤は含まない)の60wt%以上、好ましくは80wt%以上、より好ましくは90wt%以上が(A)成分〜(B)成分であることがよい。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、次のようにして決めることがよい。
【0093】
(A)成分のエポキシ基と(B)成分の硬化剤中の官能基が当量比で0.8〜1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、又は硬化剤中の官能基が残留し、硬化物としたときの硬度や耐熱性等の機能が低下するため好ましくない。また、硬化促進剤である(C)成分の配合割合としては、(A)成分と(B)成分の合計に対して、0.1wt%〜5wt%の範囲が好ましい。0.1wt%未満ではゲル化時間が遅くなって硬化時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、5.0wt%を超えると成形途中で硬化が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
【0094】
本発明の硬化性樹脂を電子部品として適用する場合、その用途、製造プロセスについては公知のものであれば特に限定されるものではない。たとえば、半導体封止材料であれば本発明の硬化性樹脂組成物にシリカなどのフィラーを混合し、ニーダーや熱3本ロールにて混練したのち、タブレット化して封止用金型のキャビティに送り込み熱硬化させるトランスファーモールド方式や、液状エポキシ樹脂と混合し、所望の粘度としたのち、所定の位置に樹脂を注入するディスペンス方式をとることが出来る。
【0095】
また、回路基板としては、たとえばガラスクロスなどの基材に本発明の硬化性樹脂組成物を含浸させた後、銅箔をプレス成型により貼り合わせる方法や、銅箔に本発明の硬化性樹脂組成物をキャスト法などにより塗布し、所望の基材と貼り合わせる方法をとることが出来る。
【0096】
また、光学部品用途としては、たとえば光学レンズ、光半導体用封止材、光半導体用筐体、光半導体接着剤などがあげられるがその用途についてはこれらに限定されず、公知の用途、製造プロセスであれば適用が可能である。
【0097】
たとえば、光学レンズ材料としては、ディスペンス方式、トランスファーモールド方式、液状射出成型方式等の公知のプロセスにより製造が可能である。
【0098】
光半導体装置(LED装置)用封止材としては、光半導体素子を金ワイヤー等で外部電極に接続したのち、トランスファーモールド方式、ポッティング方式、ディスペンス方式等公知の技術を用いて充填する方法が適用できる。この際、本発明の硬化性樹脂組成物に、光半導体素子から発光する光を変換する目的で、各種公知の蛍光粉末を用いてもよい。
【0099】
光半導体装置用筐体としては、本発明の硬化性樹脂組成物に、シリカ、酸化チタン、アルミナなどのフィラーを混合し、ニーダーや熱3本ロールにて混練したのち、タブレット化して封止用金型のキャビティに送り込み熱硬化させるトランスファーモールド方式等を適用できる。
【0100】
光半導体装置用接着剤としては、本発明の硬化性樹脂組成物を、公知のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂等の材料とフィラーをロール等による混練によりペースト化したものをディスペンス等の方法で基材に塗布、またはさらに公知のフィルム材を用いてフェルム状としたものを、基材の上に貼り合わせ、光半導体素子をマウントし熱硬化させる方法等を適用できる。
【実施例】
【0101】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
合成例1
式(11)において、平均繰り返し単位数mが1.56のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−510、アルコール性水酸基当量250g/mol、平均分子量500、平均炭素数約25)37重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した300mlのセパラブルフラスコに投入した。使用した各原料のモル数については、ポリエステルジオール1モルに対して、酸無水物化合物は2モルである。160℃に到達した後攪拌を4時間続けることで、化合物(A1-1)を合成した。化合物(A1-1)は、一般式(1)中のR1が式(3)で表わされ、式(3)におけるR4が3−メチルペンチレン基、R5がブチレン基、mが1.56であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物である。得られた化合物(A1-1)を、サンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、144mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0103】
ついで、得られた化合物(A1-1)60重量部に、(A2)成分であるトリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100g/eq.)69重量部を投入した。この際の、カルボキシル基とエポキシ基のモル比は1:4.7である。次に、反応触媒として、テトラエチルアンモニウムクロリドの4%メタノール溶液を、0.6重量部滴下し、170℃の反応温度で5時間反応を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.21mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、(A)成分の末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を118重量部得た。得られた樹脂のエポキシ当量は235g/eq.、軟化点が50℃の固形状樹脂であり、150℃の粘度は0.22Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E1とする。
【0104】
合成例2
式(11)において、平均繰り返し単位数mが3.61のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−1010、アルコール性水酸基当量500g/mol、平均分子量1000、平均炭素数約43)を74重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、実施例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(3)におけるR4が3−メチルペンチレン基、R5がブチレン基、mが3.61であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-2)を合成した。これをサンプリングし、0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、85.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0105】
ついで、得られた化合物(A1-2)97重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.18mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を151重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は306g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.25Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E2とする。この樹脂のIRスペクトルを、図1に示す。
【0106】
合成例3
式(11)において、平均繰り返し単位数mが7.7のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−2010、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約100)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(3)におけるR4が3−メチルペンチレン基、R5がブチレン基、mが7.7であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-3)を合成した。これをサンプリングし、0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0107】
ついで、得られた化合物(A1-3)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.15mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を231重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は442g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.43Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E3とする。この樹脂のIRスペクトルを、図2に示す。
【0108】
合成例4
式(12)において、平均繰り返し単位数mが6.27のポリエステルジオール((株)クラレ製Kuraray Polyols P−2050、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約107)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(3)におけるR4が3−メチルペンチレン基、R5がオクチレン基、mが6.27であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-4)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.4mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0109】
ついで、得られた化合物(A1-4)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を228重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は448g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.48Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E4とする。この樹脂のIRスペクトルを、図3に示す。
【0110】
合成例5
式(13)において、R2bがエチレン基とブチレン基の混成構造、平均繰り返し単位数mが約10.5のポリエステルジオール(DIC(株)製OD−X−2330,アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000、平均炭素数約95)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(3)におけるR4がエチレン基とブチレン基の混成構造、R5がブチレン基、mが10.5であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-5)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.3mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0111】
ついで、得られた化合物(A1-5)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を226重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は432g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.40Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E5とする。
【0112】
合成例6
式(14)で表されるポリエステルジオール(ポリカプロラクトンジオール、(株)ダイセル製プラクセル220、アルコール性水酸基当量1000g/mol、平均分子量2000)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(4)で表わされ、式(4)におけるR6が炭素数2〜20の2価の炭化水素基であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-6)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0113】
ついで、得られた化合物(A1-6)171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.12mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を226重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は438g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.52Pa・sであった。この末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂を、E6とする。
【0114】
合成例7
下記式(24)で表される両末端水酸基含有シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製XF42−B0940、平均分子量1700、アルコール性水酸基当量850g/mol)を126重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例1と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、末端基が飽和環状脂肪族ジカルボン酸基で構成されるポリシロキサン化合物を合成した。これを、サンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、55.8mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。得られた(A1)類似の末端カルボキシル基含有シリコーン樹脂をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【化17】
(式中、pは平均繰り返し単位数を表し、約18である。)
【0115】
ついで、得られたシリコーン樹脂171重量部に、トリグリシジルイソシアヌレート69重量部を投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.17mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、エポキシシリコーン樹脂を226重量部得た。このエポキシシリコーン樹脂のエポキシ当量は432g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.40Pa・sであった。このエポキシシリコーン樹脂を、E7とする。
【0116】
合成例8
合成例3で使用したポリエステルジオール(P−2010)を148重量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸23重量部を用いて、合成例3と同様160℃に到達した後攪拌を4時間続けた。このようにして、一般式(1)中のR1が、式(3)におけるR4が3−メチルペンチレン基、R5がブチレン基、mが7.7であり、Zがシクロヘキシレン基であるジカルボン酸化合物(A1-8)を合成した。これをサンプリングし0.1NのKOH/メタノール溶液にて酸価を測定したところ、48.6mgKOH/gであり、定量的に反応が進んでいることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、未反応の酸無水物は検出されなかった。
【0117】
ついで、得られた化合物(A1-8)171重量部に、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日化エポキシ製造(株)製エポトートYD−128、エポキシ当量187g/eq.)を129重量部投入し、合成例1と同様の操作を行った。サンプリングを行い、酸価を測定すると0.25mgKOH/gであり、実質上カルボキシル基が消失していることを確認した。150メッシュの金網を用いて反応樹脂液をろ過した。このようにして、エステル変性エポキシ樹脂を283重量部得た。このエステル変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は559g/eq.、室温で半固形状の樹脂であり、150℃の粘度は0.88Pa・sであった。このエステル変性エポキシ樹脂を、E8とする。
【0118】
実施例1〜6
合成例1〜6で得られた(A)成分である末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E1〜6)を、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸(MH:酸無水物当量168g/eq.)を用いて、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0119】
実施例7
(A)成分として、合成例2で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E2)を70重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を30重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は218g/eq.であった。この樹脂液と、MHを用いて、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0120】
実施例8
(A)成分として、合成例3で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E3)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は199g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0121】
実施例9
(A)成分として、合成例4で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E4)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は199g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0122】
実施例10
(A)成分として、合成例5で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E5)を50重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130g/eq.)を50重量部配合した樹脂液を調製した。この(A)成分と(D)成分を配合した樹脂液のエポキシ当量は200g/eq.であった。この樹脂液を使用して、実施例7と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0123】
実施例11
(A)成分として、合成例3で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E3)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、3,9−ビス(2−(3−(3−テトラブチル−4−ヒドロキシー5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン(以降、PH1と表記する。)を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0124】
実施例12
(A)成分として、合成例4で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E4)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0125】
実施例13
(A)成分として、合成例5で得られた末端イソシアヌル基含有エポキシ樹脂(E5)と、MHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0126】
比較例1
合成例7で得られたエポキシシリコーン樹脂(E7)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0127】
比較例2
合成例8で得られたエステル変性エポキシ樹脂(E8)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0128】
比較例3
(A)成分を使用せず、トリグリシジルイソシアヌレート(EpT、エポキシ当量100g/eq.)を20重量部、MHを34重量部用いた他は、比較例1と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0129】
比較例4
(A)成分を使用せず、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC)を26重量部,MHを34重量部用いた他は、実施例8と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0130】
比較例5
EpTを50重量部、EpCを50重量部使用しエポキシ樹脂混合物(C1)を作成した。これにMHを用いてエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加えた以外は実施例8と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0131】
比較例6
EpTとMHをエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0132】
比較例7
EpCとMHをエポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、合計100重量部の樹脂液を調製した。ついで、フェノール系化合物として、PH1を0.3重量部投入し混合した。さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0133】
比較例8
トリグリシジルイソシアヌレートと酢酸を、モル比1:0.3で反応させ、トリグリシジルイソシアヌレート上のエポキシ基を部分的にカルボキシル基で変性したエポキシ樹脂(以降、EpTAと表記する。)233重量部と、水素化ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX−8000、エポキシ当量202g/eq.、以降、EpHと表記する。)100重量部を混合し、エポキシ樹脂混合物(C2)を作成した。この混合物のエポキシ当量は136g/eq.であった。この混合物に、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1、となるようにMHを加え、化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0134】
合成例9
反応釜にトリグリシジルイソシアヌレートを39重量部、MHを61重量部、反応触媒として、テトラエチルアンモニウムクロリドの4%メタノール溶液を、0.5重量部加え、100℃にて1時間溶融混合したところ、反応物がゲル化した。
【0135】
比較例9
反応釜にトリグリシジルイソシアヌレートを39重量部、MHを61重量部、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](以降、PH2と表記する。)を0.5重量部投入し、100℃にて3時間溶融混合し部分的に反応させた。次に冷却固化させて軟化点60℃の反応中間物(H9)を得た。この反応中間物の酸価は205mgKOH/gであった。この固形物を粉砕し、さらにテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、熱2本ロールミルにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕した組成物を得た。この組成物を金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0136】
比較例10
トリグリシジルイソシアヌレートを10重量部、MHを17重量部、カプロラクトンポリオールとして、プラクセル305(株式会社ダイセル製;アルコール性水酸基当量166g/mol、以降P305と表記する。)を1.7重量部、ジベンジルアミンを0.1重量部を混合し、真空脱気して金型内で、150℃で3時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0137】
(貯蔵安定性)
合成例1〜8で得られたエポキシ樹脂E1〜E8、及び比較例9に記載の反応中間物(H9)を、室温で3ヶ月放置し、150℃での粘度を測定した。室温で3ヶ月後放置した樹脂の粘度を、初期の粘度の倍数として表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
(結晶析出の有無)
合成例1〜8で得られた樹脂E1〜E8と、EpCを用いて重量比50:50の混合物を作成した(EB1〜EB8)。ここで、樹脂E1とEpCの混合物をEB1とし、以下同様とする。また、比較例5で作成したエポキシ樹脂混合物(C1)、比較例8で作成したエポキシ樹脂混合物(C2)を、室温で3ヶ月放置し、結晶の析出の有無を目視で確認した。○:結晶析出なし、×結晶析出有り。
【0140】
【表2】
【0141】
硬化した樹脂板の物性測定は以下の方法にて行った。
(1)硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、線膨張率の変化した温度をガラス転移温度とした。昇温速度は5℃/分とした。
【0142】
(2)線膨張率の測定。
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、40℃と60℃の2点で結ばれた直線の傾きから線膨張率を算出した。昇温速度は5℃/分とした。
【0143】
(3)硬化物の初期透過度
日立製作所製自記分光光度計U−3410を用いて、厚さ1mm硬化物の400nmの透過度を測定した。
【0144】
(4)耐UV性の測定
厚さ4mm硬化物をQパネル社製耐候性試験機QUVを用いて、600時間UV照射した後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。QUVのランプにはUVA340nmを用い、ブラックパネル温度は55℃とした。
【0145】
(5)初期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、72時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0146】
(6)長期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、480時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0147】
(7)硬度の測定
テクロック(株)性硬度計TYPE−Dを用いて、室温での硬化物の表面硬度を測定した。
【0148】
(8)硬化物形状
金型取り外し後の硬化物形状は、金型を外したとき、硬化物の均一性や硬化収縮による硬化物の割れを目視にて判定した。○:均一な硬化物である。△:金型の形状を保っているが硬化物中にクラックが生じている。×:金型の形状を保たず、樹脂が割れている。
【0149】
(9)曲げ、たわみ特性試験
JIS−7171に準拠し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所(株)製)により曲げ弾性率、曲げ強度、曲げたわみを測定した。曲げたわみ試験において、○は破断せずを意味する。
【0150】
(10)吸湿率の測定
4mm厚の硬化物を、110℃の真空下で3時間処理した後、85℃、85%の環境下に100時間放置した。試験前後の重量増を電子天秤で秤量し、増分を百分率で表記した。
【0151】
実施例1〜6により得られた硬化物の各試験の測定結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
実施例7〜13により得られた硬化物の各試験の測定結果を表4に示す。
【0154】
【表4】
【0155】
比較例1〜5により得られた硬化物の各試験の測定結果を表5に示す。表5〜6中、(A)成分は、(A)成分に類似する成分を含む意味で使用される。
【0156】
【表5】
【0157】
比較例6〜10により得られた硬化物の各試験の測定結果を表6に示す。
【0158】
【表6】
【0159】
実施例14〜26、比較例11〜20
実施例1〜13、比較例1〜10の配合により得られた組成物を、底辺部が銀メッキされた青色LED用プレモールドパッケージに、注型により充填し、100℃2時間、150℃5時間硬化させて封止して、LED装置を作成した。
【0160】
封止されたLED装置の物性測定は以下の方法にて行った。
(11)熱衝撃試験の測定。
封止されたLEDパッケージを、−40℃〜100℃、500サイクルの試験に供し、顕微鏡にてクラック及び封止材の剥がれ、ワイヤー破断の有無を確認した。結果を表4に示す。クラック及び封止材の剥がれ、又はワイヤー破断が、無しを○、有りをXとした。
【0161】
【表7】
図1
図2
図3