特許第5915553号(P5915553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5915553差動信号伝送用ケーブルおよびその回路基板への接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915553
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】差動信号伝送用ケーブルおよびその回路基板への接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20160422BHJP
   H01B 11/12 20060101ALI20160422BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20160422BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160422BHJP
   H05K 3/34 20060101ALN20160422BHJP
【FI】
   H01R12/51
   H01B11/12
   H01B7/18 D
   H01B7/00 306
   !H05K3/34 504Z
   !H05K3/34 501A
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-10562(P2013-10562)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-143068(P2014-143068A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100108279
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100113642
【弁理士】
【氏名又は名称】菅田 篤志
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100147430
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 崇
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099434(JP,A)
【文献】 特開2002−270253(JP,A)
【文献】 実開平04−119961(JP,U)
【文献】 特開昭58−150279(JP,A)
【文献】 kameokatrialland,基本の斜め打ち,ヒロさんのとっておき裏ワザ,2005年12月29日,URL,https://web.archive.org/web/20051229160641/http://www.kameokatrialland.co.jp/hiro01.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/51
H01B 7/00
H01B 7/17
H01B 11/12
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の信号線導体と、
前記信号線導体の周囲に設けられ、断面形状が略楕円形形状に形成された絶縁体と、
前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体と、
前記外部導体に接続されるグラウンド用導体と、
前記グラウンド用導体に設けられる本体部と、
前記本体部に設けられ、記本体部を前記外部導体に固定するために前記絶縁体に差し込まれる差し込み固定部と、
前記本体部に設けられ、前記差し込み固定部を前記絶縁体の差し込み位置に誘導するための差し込み誘導部と、
を備え
前記差し込み固定部は、前記絶縁体の長軸方向に沿う、前記信号線導体の略真横であって、前記信号線導体と前記外部導体との間の中間点よりも前記外部導体に近接した位置に差し込まれている、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項2】
請求項1記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記差し込み固定部が、前記信号線導体の長手方向と交差する方向に延びる針金状である、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項3】
請求項1記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記差し込み固定部が、前記本体部から前記信号線導体に向けて延びる板状である、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記差し込み誘導部に、前記外部導体を前記差し込み誘導部に誘導するための傾斜壁が設けられる、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記本体部には一対の前記差し込み固定部が設けられ、これらの差し込み固定部の前記本体部に対する配置角度が異なる、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記差し込み固定部の表面粗さが、前記グラウンド用導体の他の部分の表面粗さよりも粗くされている、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の差動信号伝送用ケーブルにおいて、
前記差し込み固定部は、前記絶縁体を貫通しない、差動信号伝送用ケーブル。
【請求項8】
一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられ、断面形状が略楕円形形状に形成された絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体とを備えたケーブルアッシーを準備するケーブルアッシー準備工程と、
回路基板を準備する回路基板準備工程と、
前記外部導体に接続される本体部を備え、前記本体部には、前記絶縁体に差し込まれて前記本体部を前記外部導体に固定するための差し込み固定部と、前記差し込み固定部を前記絶縁体の差し込み位置に誘導するための差し込み誘導部とが設けられるグラウンド用導体を準備するグラウンド用導体準備工程と、
前記差し込み誘導部を前記外部導体に臨ませて、前記差し込み固定部を前記絶縁体の長軸方向に沿う、前記信号線導体の略真横であって、前記信号線導体と前記外部導体との間の中間点よりも前記外部導体に近接した位置に差し込み、前記グラウンド用導体を前記外部導体に固定して差動信号伝送用ケーブルを組み立てるケーブル組み立て工程と、
前記信号線導体および前記グラウンド用導体を、前記回路基板にそれぞれ電気的に接続する接続工程と、を備える、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項9】
請求項8記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記差し込み固定部が、前記信号線導体の長手方向と交差する方向に延びる針金状である、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項10】
請求項8記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記差し込み固定部が、前記本体部から前記信号線導体に向けて延びる板状である、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記差し込み誘導部に、前記外部導体を前記差し込み誘導部に誘導するための傾斜壁が設けられる、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記本体部には一対の前記差し込み固定部が設けられ、これらの差し込み固定部の前記本体部に対する配置角度が異なる、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記差し込み固定部の表面粗さが、前記グラウンド用導体の他の部分の表面粗さよりも粗くされている、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記差し込み誘導部と前記回路基板との間に隙間を形成する、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の信号線導体を備え、位相を180度反転させた差動信号を伝送する差動信号伝送用ケーブルおよびその回路基板への接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数Gbit/s以上の高速デジタル信号を扱うサーバやルータ,ストレージ製品等の機器においては、差動インターフェース規格、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signal)が採用され、各機器間あるいは機器内の各回路基板間では、差動信号伝送用ケーブルを用いて差動信号の伝送が行われている。差動信号は、システム電源の低電圧化を実現しつつ外来ノイズに対する耐性が高いという特徴を有している。
【0003】
差動信号伝送用ケーブルは一対の信号線導体を備え、各信号線導体には、位相を180度反転させたプラス側信号およびマイナス側信号がそれぞれ伝送されるようになっている。そして、これらの2つの信号の電位差が信号レベルとなって、例えば、電位差がプラスであれば「High」,マイナスであれば「Low」として、当該信号レベルが受信側で認識されるようになっている。
【0004】
このような差動信号を伝送する差動信号伝送用ケーブルとしては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された差動信号伝送用ケーブルは、所定間隔で平行に並べられた一対の信号線導体を備え、これらの各信号線導体は絶縁体によって覆われている。つまり、各信号線導体は絶縁体によって所定間隔で平行に保持されている。また、絶縁体の周囲はシート状の外部導体によって覆われており、さらに、外部導体の周囲は保護外皮としてのシースによって覆われている。
【0005】
そして、差動信号伝送用ケーブルの長手方向端部を順次段剥きすることで、各信号線導体および外部導体の一部がそれぞれ外部に露出されている。外部導体の露出部分には、金属製のシールド接続端子が、加締めによって接続されている。シールド接続端子は、板状金属と当該板状金属に一体成形されたはんだ接続ピンとを備え、板状金属は、加締め時に外部導体の形状に倣って塑性変形されるようになっている。これにより、外部導体とシールド接続端子とが電気的に接続され、外部導体がシールド接続端子を介して回路基板のグラウンドパッドに電気的に接続されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−099434号公報(図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載された差動信号伝送用ケーブルによれば、外部導体をグラウンドパッドに直にはんだ接続するものに比して、はんだ接続作業で用いるコテ先の熱[約350℃]が外部導体に伝達され難くなっており、これにより絶縁体が熱により変形したり溶融したりするのを抑制することができる。しかしながら、シールド接続端子を外部導体に接続する際には、塑性変形させる前の平板状のシールド接続端子に外部導体を正しく位置決めしつつ、両者をずれないよう保持した状態のもとで加締め加工をする必要があった。したがって、差動信号伝送用ケーブルの組み立て作業が煩雑化するという問題を生じ得る。また、シールド接続端子を外部導体の形状に沿わせて加締め加工するため、外部導体の内側にある絶縁体が加締め力により弾性変形し、これにより絶縁体のさらに内側にある各信号線導体間の距離が製品毎にばらつき、製品毎の電気的特性が不安定になるという問題を生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、組み立て作業性を向上させつつ製品毎にばらつきが発生するのを抑制して、安定した電気的特性を得ることができる差動信号伝送用ケーブルおよびその回路基板への接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられる絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体と、前記外部導体に接続されるグラウンド用導体と、前記グラウンド用導体に設けられる本体部と、前記本体部に設けられ、前記絶縁体に差し込まれて前記本体部を前記外部導体に固定するための差し込み固定部と、前記本体部に設けられ、前記差し込み固定部を前記絶縁体の差し込み位置に誘導するための差し込み誘導部と、を備える。
【0010】
本発明の他の態様では、一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられる絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体とを備えたケーブルアッシーを準備するケーブルアッシー準備工程と、回路基板を準備する回路基板準備工程と、前記外部導体に接続される本体部を備え、前記本体部には、前記絶縁体に差し込まれて前記本体部を前記外部導体に固定するための差し込み固定部と、前記差し込み固定部を前記絶縁体の差し込み位置に誘導するための差し込み誘導部とが設けられるグラウンド用導体を準備するグラウンド用導体準備工程と、前記差し込み誘導部を前記外部導体に臨ませて、前記差し込み固定部を前記絶縁体に差し込み、前記グラウンド用導体を前記外部導体に固定して差動信号伝送用ケーブルを組み立てるケーブル組み立て工程と、前記信号線導体および前記グラウンド用導体を、前記回路基板にそれぞれ電気的に接続する接続工程と、を備える。
【0011】
本発明の他の態様では、前記差し込み固定部が、前記信号線導体の長手方向と交差する方向に延びる針金状である。
【0012】
本発明の他の態様では、前記差し込み固定部が、前記本体部から前記信号線導体に向けて延びる板状である。
【0013】
本発明の他の態様では、前記差し込み誘導部に、前記外部導体を前記差し込み誘導部に誘導するための傾斜壁が設けられる。
【0014】
本発明の他の態様では、前記本体部には一対の前記差し込み固定部が設けられ、これらの差し込み固定部の前記本体部に対する配置角度が異なる。
【0015】
本発明の他の態様では、前記差し込み固定部の表面粗さが、前記グラウンド用導体の他の部分の表面粗さよりも粗くされている。
【0016】
本発明の他の態様では、前記差し込み固定部の前記絶縁体に対する差し込み位置が、前記信号線導体と前記外部導体との間であって、かつ両者の中間点よりも前記外部導体に近接した位置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グラウンド用導体の本体部に、絶縁体に差し込まれて本体部を外部導体に固定するための差し込み固定部と、差し込み固定部を絶縁体の所定の差し込み位置に誘導するための差し込み誘導部とを設けるので、従前のような正確な位置決めを不要としつつ加締め加工も不要にできる。したがって、差動信号伝送用ケーブルの組み立て作業性を向上させることができる。また、従前のような加締め力が絶縁体には負荷されないので、絶縁体が弾性変形されるのを抑制することができ、ひいては各信号線導体間の距離が製品毎にばらつくのを抑えて、製品毎に安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブルと回路基板との接続構造を示す斜視図である。
図2図1のA矢視図である。
図3】差し込みピンが設けられる部分に対応した差動信号伝送用ケーブルの断面図である。
図4】(a),(b)は、グラウンド用導体の詳細構造を説明する斜視図である。
図5図1の差動信号伝送用ケーブルの組み立て手順を説明する説明図である。
図6】実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図である。
図7】実施の形態2に係るグラウンド用導体を示す斜視図である。
図8】実施の形態3に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図である。
図9】実施の形態4に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図である。
図10】実施の形態4に係るグラウンド用導体を示す斜視図である。
図11】実施の形態5に係るグラウンド用導体を示す斜視図である。
図12】実施の形態6に係るグラウンド用導体を示す平面図である。
図13】実施の形態7に係るグラウンド用導体を示す平面図である。
図14】実施の形態8に係るグラウンド用導体を示す平面図である。
図15】実施の形態9に係るグラウンド用導体を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブルと回路基板との接続構造を示す斜視図を、図2図1のA矢視図を、図3は差し込みピンが設けられる部分に対応した差動信号伝送用ケーブルの断面図をそれぞれ示している。
【0021】
図1ないし図3に示すように、実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブル10は、一対の信号線導体11を備えている。各信号線導体11のうちのいずれか一方には差動信号としてのプラス側信号が伝送され、各信号線導体11のうちのいずれか他方には差動信号としてのマイナス側信号が伝送されるようになっている。各信号線導体11は、例えば、その表面に錫めっき処理が施された軟銅線(Tinned Annealed Copper Wire)によって形成され、各信号線導体11は絶縁体12によって被覆されている。
【0022】
絶縁体12は、差動信号伝送用ケーブル10に柔軟性を持たせるために、例えば、発泡ポリエチレン(Foamed Poly-Ethylene)によって形成され、その断面形状は略楕円形形状に形成されている。絶縁体12は、各信号線導体11を所定間隔で平行に並ぶよう保持しており、各信号線導体11の周囲には、略同等の肉厚となるよう絶縁体12が配置されている。ここで、絶縁体12の材料である発砲ポリエチレンの溶融温度は[110℃〜120℃]に設定されている。
【0023】
ただし、絶縁体12は、図示のような断面形状が略楕円形形状のものに限らず、例えば、各信号線導体11をそれぞれ別個に被覆するよう断面形状が円形形状の絶縁体であっても良い。さらには、絶縁体12の断面形状を、一対の長さが等しい平行線と一対の半円形形状とからなる、例えば、陸上競技場のトラック(Track)に略等しい形状としても良い。
【0024】
各信号線導体11の長手方向に沿う大部分は絶縁体12の内部に配置されており、各信号線導体11の長手方向端部(図1中左側)は、絶縁体12の外部に露出されている。各信号線導体11の露出部分はシグナルパッド接続部11aとなっており、当該シグナルパッド接続部11aは、それぞれ回路基板20のシグナルパッド22にはんだ接続により電気的に接続されている。なお、各シグナルパッド接続部11aの表面には、上述のように錫めっき処理が施されているため、はんだ濡れ性が向上しており、よって質の良いはんだ接続、つまり、はんだフィレットの成形が可能となっている(図2の網掛け部分参照)。
【0025】
各シグナルパッド接続部11aは、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に接続する前に予め段付き形状にフォーミングされるようになっている。ここで、各シグナルパッド接続部11aの断面形状は円形形状となっているため、フォーミング時に応力集中することが無い。したがって、各シグナルパッド接続部11aは折損等すること無くフォーミングし易くなっている。
【0026】
絶縁体12の周囲には、外来ノイズの影響を抑制するために外部導体13が設けられている。外部導体13は、例えば、シート状の銅箔によって形成され、絶縁体12の周囲全体を被覆するようになっている。ただし、外部導体13としては、銅箔に限らず他の金属箔であっても良く、さらには軟銅線等の金属細線を編み込んだ編組シートであっても良い。
【0027】
外部導体13の長手方向に沿う大部分はシース14によって被覆されており、外部導体13の長手方向端部(図1中左側)は、シース14の外部に露出されている。ここで、シース14は、例えば、耐熱PVC(Heat Resistant Polyvinyl Chloride)によって形成され、差動信号伝送用ケーブル10を保護する外皮として機能している。
【0028】
図4(a),(b)はグラウンド用導体の詳細構造を説明する斜視図を示している。
【0029】
外部導体13の外部に露出した部分、つまり外部導体13の端部には、導電性に優れた銅等の金属板材により所定形状に形成されたグラウンド用導体15が装着されている。グラウンド用導体15は、図4に示すように、本体部15a,一対の差し込みピン15b,一対の差し込みガイド壁15c,一対のグラウンドパッド接続部15dを備えている。なお、図示において、本体部15aと各差し込みガイド壁15cとの境界を一点鎖線で示している。
【0030】
本体部15aは、略長方形形状の金属板材を外部導体13の周囲形状と同じ形状に湾曲させることで、断面が略U字形状に形成されている。ここで、本体部15aは、グラウンド用導体15を外部導体13へ装着する前に予め湾曲されるものであり、これにより従前のように絶縁体12等が弾性変形するのを防止しつつ、外部導体13に対して確実に電気的に接続できるようにしている。
【0031】
本体部15aの外部導体13側、つまり湾曲した本体部15aの内側には、一対の差し込みピン15bが一体に設けられている。各差し込みピン15bは、本体部15aの長手方向両側寄りにそれぞれ配置され、各信号線導体11の長手方向と交差する方向に延びる針金状に形成されている。ここで、各差し込みピン15bは、本発明における差し込み固定部を構成している。
【0032】
各差し込みピン15bは、図2および図3に示すように、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12に差し込まれており、これにより本体部15aは外部導体13に固定されている。ここで、各差し込みピン15bは、断面が円形形状に形成されており、その先端側は絶縁体12に容易に差し込めるよう先細り形状となっている。ただし、各差し込みピン15bの断面形状は円形に限らず、各差し込みピン15bに必要とされる強度に応じて、三角形や四角形等の多角形形状にしても良い。また、各差し込みピン15bの強度が十分であれば、各差し込みピン15bをより細く形成して、先細り形状を省略することもできる。
【0033】
各差し込みピン15bは、外部導体13を貫通して絶縁体12に差し込まれるようになっている。ここで、外部導体13はシート状の銅箔により形成され、かつ各差し込みピン15bは先細りの針金状に形成されているため、絶縁体12への各差し込みピン15bの差し込み抵抗は小さくて済む。したがって、外部導体13に対するグラウンド用導体15の接続過程において、各差し込みピン15bが屈曲変形するような不具合が生じることは無く、グラウンド用導体15を外部導体13に容易に装着することができる。
【0034】
図3に示すように、各差し込みピン15bの絶縁体12に対する差し込み位置は、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。つまり、差動信号伝送用ケーブル10の略楕円形形状の長軸方向に沿う、各信号線導体11と各差し込みピン15bとの間の距離をL1とし、各差し込みピン15bと外部導体13との間の距離をL2としたときに、L1>L2の関係を満たす位置に差し込まれている。
【0035】
また、各差し込みピン15bの本体部15aからの突出高さはh1に設定されており、その先端部分は、各信号線導体11の略図中下端部分に配置されている。つまり、各差し込みピン15bは、グラウンド用導体15の外部導体13に対する接続状態のもとで、絶縁体12を貫通しないようになっている。
【0036】
このように、各差し込みピン15bの絶縁体12に対する位置関係や突出高さ関係を設定することにより、グラウンド用導体15の外部導体13に対する固定強度を確保しつつ、各差し込みピン15bと各信号線導体11とを可能な限り遠ざけている。これにより、グラウンド用導体15が外部導体13から外れるのを防止しつつ、外来ノイズが各信号線導体11に影響するのを防止することができる。
【0037】
本体部15aの長手方向両側には、差し込みガイド壁15cがそれぞれ設けられている。各差し込みガイド壁15cは、本体部15aの長手方向両側を延長して形成され、図中一点鎖線を境界に、本体部15aと各差し込みガイド壁15cとに分けられている。ここで、各差し込みガイド壁15cは、本発明における差し込み誘導部を構成しており、グラウンド用導体15を外部導体13に接続する際に、各差し込みピン15bを絶縁体12の所定の差し込み位置(図3参照)に誘導するようになっている。
【0038】
各差し込みガイド壁15cの各差し込みピン15b側には、グラウンド用導体15を外部導体13に接続する際に、図中二点鎖線で示すように、外部導体13が摺接するようになっている。ここで、外部導体13の長軸寸法W1は、各差し込みガイド壁15cの離間距離W2よりも若干大きい寸法に設定されている(W1>W2)。これにより、グラウンド用導体15を外部導体13に接続する過程で、外部導体13からグラウンド用導体15が脱落するのを防止して、差動信号伝送用ケーブル10の組み立て作業性を向上させている。
【0039】
各差し込みガイド壁15cと各差し込みピン15bとの位置関係は、グラウンド用導体15を外部導体13に接続する過程において、図中二点鎖線で示すように、まず、外部導体13が各差し込みガイド壁15cに摺接してガイドされ、その後、各差し込みピン15bが外部導体13の所定位置に接触される位置関係となっている。つまり、外部導体13を各差し込みガイド壁15c間に挿入していくだけで、各差し込みピン15bが外部導体13を介して絶縁体12の所定の差し込み位置に差し込まれるようになっている。
【0040】
ここで、図2に示すように、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に電気的に接続した状態のもとで、各差し込みガイド壁15cと回路基板20との間には若干の隙間tが形成されており、これにより差動信号伝送用ケーブル10の電気的特性の安定化が図られている。
【0041】
なお、グラウンド用導体15の外部導体13に対して必要とされる固定強度によっては、各差し込みピン15bの突出高さh1を低くすることもできる。この場合には、各差し込みガイド壁15cが配置される位置を、図中上方に移動させることができ、ひいてはグラウンド用導体15を小型軽量化することが可能となる。また、各差し込みピン15bの突出高さh1を短くすることで、各差し込みピン15bと各信号線導体11との距離をより遠ざけることができ、したがって、外来ノイズが各信号線導体11に影響しない範囲において、距離L1と距離L2との関係をL1<L2とすることもできる。
【0042】
図4に示すように、本体部15aの長手方向両側寄りには、一対のグラウンドパッド接続部15dが一体に設けられている。各グラウンドパッド接続部15dは、断面形状が各信号線導体11(図2参照)と同じように円形形状となっている。また、各グラウンドパッド接続部15dの長さ寸法は、各シグナルパッド接続部11aの長さ寸法と略同じ長さ寸法に設定されている。ここで、各グラウンドパッド接続部15dの断面形状を円形形状とすることで、各シグナルパッド接続部11aと同様に、フォーミング時に応力集中するのを防止している。
【0043】
ただし、各グラウンドパッド接続部15dの断面形状を円形形状とせずに、各グラウンドパッド接続部15dの断面形状が正方形形状となるようにしても良い。また、各グラウンドパッド接続部15dの双方の根元部分に、当該根元部分の強度を高める幅広部(図示せず)を設けても良い。さらには、各グラウンドパッド接続部15dの断面形状は、円形形状や正方形形状(四角形)に限らず、三角形や五角形以上の多角形形状としても良い。この場合、多角形形状の1つの面が、グラウンドパッド23(図1参照)に対して面接触するよう形成するのが望ましい。
【0044】
各グラウンドパッド接続部15dは、図2に示すように、各信号線導体11を挟んで鏡像対称となるよう配置されている。このように、各信号線導体11を挟んで鏡像対称となるよう各グラウンドパッド接続部15dを配置することで、各信号線導体11を流れる電気信号がそれぞれバランスされて、差動信号伝送用ケーブル10の電気的特性の安定化が図られている。
【0045】
各グラウンドパッド接続部15dの先端部は、図1に示すように、それぞれ回路基板20のグラウンドパッド23に、はんだ接続により電気的に接続されている。ここで、各グラウンドパッド接続部15dの表面には、各シグナルパッド接続部11aと同様に錫めっき処理が施されている。したがって、はんだ濡れ性が向上しており、質の良いはんだ接続、つまり、はんだフィレットの成形が可能となっている(図2の網掛け部分参照)。
【0046】
各グラウンドパッド接続部15dは、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に電気的に接続する前に、各シグナルパッド接続部11aと同様に予め段付き形状にフォーミングされるようになっている。なお、これらのフォーミングは同時に容易に行うことができ、ひいては回路基板20のシグナルパッド22やグラウンドパッド23へのはんだ接続の作業性を向上させている。
【0047】
また、図1および図2に示すように、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dは、差動信号伝送用ケーブル10を側方から見た時に略重なるようになっている。これにより、高周波域(Ghz帯)における電気的特性の劣化、つまり、特性インピーダンスの劣化やスキュー特性の劣化等を抑制している。
【0048】
図1および図2に示すように、差動信号伝送用ケーブル10が電気的に接続される回路基板20は、樹脂製の基板本体21を備え、当該基板本体21の表面部21aには、一対のシグナルパッド22と一対のグラウンドパッド23とが形成されている。各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23は、差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dに対応して、一列に並んで配置されている。
【0049】
各シグナルパッド22は、基板本体21の表面部21aに形成された一対のシグナルライン24にそれぞれ電気的に接続され、これらの各シグナルライン24を通じて差動信号が伝送されるようになっている。一方、各グラウンドパッド23は、基板本体21の表面部21aから裏面部21bに向けて貫通するスルーホール25の一端部にそれぞれ電気的に接続されている。また、各スルーホール25の他端部は、裏面部21bに形成された全面グラウンド26に電気的に接続されている。
【0050】
ここで、各シグナルパッド22,各グラウンドパッド23,各シグナルライン24および全面グラウンド26は、他の回路パターン(図示せず)とともに、基板本体21の表面部21aおよび裏面部21b上に同時に形成されるようになっている。
【0051】
次に、以上のように形成した差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0052】
図5図1の差動信号伝送用ケーブルの組み立て手順を説明する説明図を示している。
【0053】
[ケーブルアッシー準備工程]
まず、図5に示すように、別の製造工程で製造されたケーブルアッシーCAを準備する。ここで、ケーブルアッシーCAとは、所定間隔で平行に並べられた一対の信号線導体11と、信号線導体11の周囲に設けられる絶縁体12と、絶縁体12の周囲に設けられる外部導体13と、外部導体13の周囲に設けられるシース14とを備え、グラウンド用導体15を装着していないサブアッセンブリの状態を指している。
【0054】
[回路基板準備工程]
次に、図1および図2に示すように、別の製造工程で製造された回路基板20、つまり、各シグナルパッド22,各グラウンドパッド23,各シグナルライン24,各スルーホール25,全面グラウンド26および他の回路パターンが形成された回路基板20を準備する。
【0055】
[グラウンド用導体準備工程]
さらに、図4に示すように、別の製造工程で製造されたグラウンド用導体15を準備する。つまり、ケーブルアッシーCAの外部導体13に接続される本体部15aを備え、本体部15aには、絶縁体12に差し込まれて本体部15aを外部導体13に固定するための差し込みピン15bと、差し込みピン15bを絶縁体12の所定の差し込み位置に誘導するための差し込みガイド壁15cとが設けられたグラウンド用導体15を準備する。
【0056】
なお、上述の[ケーブルアッシー準備工程],[回路基板準備工程]および[グラウンド用導体準備工程]は、それぞれ別の製造工程で製造されるため、その順番は入れ替えても構わない。
【0057】
[接続部形成工程]
ケーブルアッシーCA,回路基板20およびグラウンド用導体15を準備した後は、図5に示すように、ケーブルアッシーCAの長手方向端部を順次段剥きする処理を施す。具体的には、ケーブルアッシーCAの長手方向端部から所定長さの分、絶縁体12および外部導体13を取り除いて各信号線導体11の長手方向端部を露出させる。これにより回路基板20の各シグナルパッド22(図1参照)に電気的に接続される各シグナルパッド接続部11aを形成する。さらには、外部導体13の長手方向端部から所定長さの分、シース14を取り除いて外部導体13を露出させる。これにより、接続部形成工程が完了する。ここで、外部導体13の露出部分の長さは、グラウンド用導体15の本体部15aの短手方向に沿う長さ寸法に合わせるようにする。
【0058】
[グラウンド用導体固定工程]
次に、図5の矢印M1に示すように、段剥きして外部導体13が露出した部分に、グラウンド用導体15を臨ませる。このとき、各差し込みガイド壁15cを外部導体13に臨ませて、各差し込みガイド壁15c間に外部導体13が入り込めるようにする。そして、グラウンド用導体15を、外部導体13の略楕円形形状の短軸方向に沿う一方側(図中上側)から押圧することにより、外部導体13が各差し込みガイド壁15cにガイドされつつ、各差し込みピン15bの先端部に近付いていく。
【0059】
その後、グラウンド用導体15を外部導体13に向けてさらに押圧することで、各差し込みピン15bが外部導体13を介して絶縁体12の所定の差し込み位置に差し込まれていく。その後さらにグラウンド用導体15を押圧することで、本体部15aが外部導体13に電気的に接続されて、これにより差動信号伝送用ケーブル10が完成する。
【0060】
ここで、グラウンド用導体15のケーブルアッシーCAへ固定工程において、外部導体13は、各差し込みガイド壁15cおよび本体部15aによってふらつくこと無く安定的に保持されるので、各差し込みピン15bが絶縁体12をこじるようなことは無く、十分な固定強度が確保されるようになっている。
【0061】
[接続工程]
次に、完成した差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dを、一括して段付き形状にフォーミングする。そして、フォーミングした各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dの先端部を、回路基板20の各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23にそれぞれ臨ませて、合計4箇所を接続治具(はんだごて等)で電気的に接続する。これにより、接続工程が完了し、差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続作業が終了する。
【0062】
ここで、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dの先端部を接続するため、接続治具の熱(例えば200℃〜400℃)は絶縁体12に伝達し難くなっている。したがって、接続時に生じる熱によって絶縁体12が溶融するようなことは無い。ただし、接続に用いる接続治具としては、はんだごて等に限らず、レーザー溶接等の他の接続治具を用いることもできる。
【0063】
以上詳述したように、実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブル10およびその回路基板20への接続方法によれば、グラウンド用導体15の本体部15aに、絶縁体12に差し込まれて本体部15aを外部導体13に固定するための差し込みピン15bと、差し込みピン15bを絶縁体12の所定の差し込み位置に誘導するための差し込みガイド壁15cとを設けたので、従前のような正確な位置決めを不要としつつ加締め加工も不要にできる。したがって、差動信号伝送用ケーブル10の組み立て作業性を向上させることができる。また、従前のような加締め力が絶縁体12には負荷されないので、絶縁体12が弾性変形されるのを抑制することができ、ひいては各信号線導体11間の距離が製品毎にばらつくのを抑えて、製品毎に安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【0064】
次に、本発明の実施の形態2について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図6は実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図を、図7は実施の形態2に係るグラウンド用導体を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0066】
図6および図7に示すように、実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブル30は、実施の形態1に比して、グラウンド用導体31の構造が異なっている。グラウンド用導体31の本体部15aには、一対の差し込み刃(差し込み固定部)31aが一体に設けられている。各差し込み刃31aは、先端側に刃先を有する板状に形成され、その刃先は本体部15aから各信号線導体11に向けてそれぞれ延ばされている。各差し込み刃31aは、差動信号伝送用ケーブル30の長軸方向に沿う、各信号線導体11の略真横に配置されている。
【0067】
また、各差し込み刃31aの幅方向は、差動信号伝送用ケーブル30の短軸方向に向けられている。これにより、各差し込み刃31aは、図中矢印M2に示す方向から、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようになっている。
【0068】
ここで、各差し込み刃31aにおいても、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12にそれぞれ差し込まれるようになっている。さらには、各差し込み刃31aの絶縁体12に対する差し込み位置においても、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。つまり、差動信号伝送用ケーブル10の長軸方向に沿う、各信号線導体11と各差し込み刃31aの刃先との間の距離をL3とし、各差し込み刃31aの刃先と外部導体13との間の距離をL4としたときに、L3>L4の関係を満たす位置に差し込まれている。
【0069】
また、グラウンド用導体31を外部導体13に接続する過程において、まず、外部導体13が各差し込みガイド壁15cに摺接してガイドされ、その後、各差し込み刃31aが外部導体13の所定位置に接触されるようになっている。つまり、外部導体13を各差し込みガイド壁15c間に挿入していくだけで、各差し込み刃31aが外部導体13を介して絶縁体12の所定の差し込み位置に差し込まれるようになっている。
【0070】
ただし、グラウンド用導体31の外部導体13に対する固定強度が十分に得られるのであれば、外部導体13および絶縁体12への切り込み量を少なくして、各差し込み刃31aを本体部15aの底部寄り(図中上方寄り)に配置しても良い。この場合、各差し込み刃31aと各信号線導体11との距離をより遠ざけることができ、外来ノイズが各信号線導体11に影響しない範囲において、距離L3と距離L4との関係をL3<L4とすることもできる。
【0071】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、実施の形態2においては、本体部15aから各信号線導体11に向けて延びる板状の差し込み刃31aとし、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようにしたので、実施の形態1の各差し込みピン15bに比してその突出高さ寸法を低くすることができる。したがって、各差し込み刃31aの剛性を高めることができ、ひいては歩留まりをより向上させることが可能となる。
【0072】
次に、本発明の実施の形態3について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図8は実施の形態3に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図を示している。
【0074】
図8に示すように、実施の形態3に係る差動信号伝送用ケーブル40は、実施の形態1に比して、グラウンド用導体41の構造が異なっている。グラウンド用導体41の本体部15aには、実施の形態1の各差し込みピン15bの突出高さh1(図3参照)よりも低い高さ寸法h2の差し込みピン41aが一体に設けられている(h2<h1)。この差し込みピン41aは、一方の信号線導体11(ここでは図中右側)のみに対応させて1本のみ設けられている。なお、差し込みピン41aの絶縁体12に対する差し込み位置は、実施の形態1(図3参照)と同様に、一方の信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ一方の信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。
【0075】
また、差し込みピン41aの高さ寸法h2を低くしたことに伴い、各差し込みガイド壁15cを、実施の形態1に比して図中上方に移動させている。つまり、各差し込みガイド壁15cを、実施の形態1に比して差し込みピン41aの根元寄りに配置している。このように、差し込みピン41aおよび各差し込みガイド壁15cの位置関係を設定することで、実施の形態1と同様に、グラウンド用導体41を外部導体13に接続する過程において、まず、外部導体13が各差し込みガイド壁15cに摺接してガイドされ、その後、差し込みピン41aが外部導体13の所定位置に接触されるようにしている。
【0076】
さらに、各差し込みガイド壁15cの本体部15a側とは反対側(図中下側)には、それぞれ傾斜壁41bが一体に設けられている。各傾斜壁41bは、上述のように各差し込みガイド壁15cを図中上方に移動させたことで、各差し込みガイド壁15cの本体部15a側とは反対側に形成されたスペースに配置されている。各傾斜壁41bは、各差し込みガイド壁15cから図中下方に向かうに連れて、外部導体13側とは反対側(外側)に傾斜されている。
【0077】
これにより、外部導体13が入り込む側(導入側)の各傾斜壁41bの離間距離W3は、各差し込みガイド壁15cの離間距離W2および外部導体13の長軸寸法W1(図3参照)よりも大きく設定される(W3>W1>W2)。つまり、各傾斜壁41bは、グラウンド用導体41を外部導体13に接続する際に、図中二点鎖線で示すように、外部導体13を各差し込みガイド壁15c間に誘導するようになっている。
【0078】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、実施の形態3においては、差し込みガイド壁15cに、外部導体13を差し込みガイド壁15cに誘導するための傾斜壁41bを設けたので、差動信号伝送用ケーブル10の組み立て作業性を向上させることができる。また、差し込みピン41aを1本のみとしたので、グラウンド用導体41の形状を簡素化することができる。
【0079】
次に、本発明の実施の形態4について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
図9は実施の形態4に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した断面図を、図10は実施の形態4に係るグラウンド用導体を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0081】
図9および図10に示すように、実施の形態4に係る差動信号伝送用ケーブル50は、実施の形態1に比して、グラウンド用導体51の構造が異なっている。グラウンド用導体51の本体部15aには、一対の差し込み刃(差し込み固定部)51aが一体に設けられている。各差し込み刃51aは、先端側に刃先を有する板状に形成され、その刃先は本体部15aから各信号線導体11に向けてそれぞれ延ばされている。各差し込み刃51aは、差動信号伝送用ケーブル50の長軸方向に沿う、各信号線導体11の略真横に配置されている。
【0082】
また、各差し込み刃51aの幅方向は、差動信号伝送用ケーブル50の長手方向に向けられている。これにより、各差し込み刃51aは、図中矢印M3に示す方向に向けて、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようになっている。つまり、実施の形態2の各差し込み刃31aの幅方向に対して、各差し込み刃51aの幅方向は直交している。
【0083】
ここで、各差し込み刃51aにおいても、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12にそれぞれ差し込まれるようになっている。さらには、各差し込み刃51aの絶縁体12に対する差し込み位置においても、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。
【0084】
さらに、本体部15aの短手方向に沿う各グラウンドパッド接続部15d側とは反対側には、図中一点鎖線を境界として、差し込みガイド壁(差し込み誘導部)51bが設けられている。この差し込みガイド壁51bにおいても、グラウンド用導体51を外部導体13に接続する際に、各差し込み刃51aを絶縁体12の所定の差し込み位置(図9に示す位置)に誘導するようになっている。
【0085】
これにより、グラウンド用導体51を外部導体13に接続する過程において、まず、外部導体13が差し込みガイド壁51bに摺接してガイドされ、その後、各差し込み刃51aが絶縁体12の所定位置に接触されるようになっている。つまり、外部導体13を差し込みガイド壁51bに摺接させるだけで、各差し込み刃51aが絶縁体12の所定の差し込み位置に差し込まれるようになっている。
【0086】
また、差し込みガイド壁51bの本体部15a側とは反対側には、傾斜壁51cが一体に設けられている。傾斜壁51cは、差し込みガイド壁51bから離れるに連れて、外部導体13側とは反対側(外側)に拡開するよう傾斜されている。これにより傾斜壁51cは、実施の形態3(図8参照)と同様に、グラウンド用導体51を外部導体13に接続する際に、外部導体13を差し込みガイド壁51bに向けて誘導するようになっている。
【0087】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、実施の形態4においては、実施の形態2と同様に、各差し込み刃51aの剛性を高めることができ、ひいては歩留まりをより向上させることが可能となる。また、実施の形態3と同様に、傾斜壁51cにより差動信号伝送用ケーブル10の組み立て作業性を向上させることができる。
【0088】
次に、本発明の実施の形態5について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
図11は実施の形態5に係るグラウンド用導体を示す斜視図を示している。
【0090】
図11に示すように、実施の形態5に係る差動信号伝送用ケーブル60は、複数本のケーブルアッシーCA(図示では3本)を纏めて接続し得るグラウンド用導体61を備えた点が異なっている。グラウンド用導体61は、3つの本体部15aをその長手方向に並べて一体化しており、各本体部15aの内側にはそれぞれ一対の差し込みピン15b(図示では1つのみ示す)が一体に設けられている。
【0091】
また、差し込みガイド壁15cは、各本体部15aに4つ設けられている。4つの差し込みガイド壁15cのうちの内側にある2つの差し込みガイド壁15cは、それぞれ共通の差し込みガイド壁15cとして機能し、隣り合う一対のケーブルアッシーCA用となっている。
【0092】
さらに、グラウンドパッド接続部15dにおいても、各本体部15aに4つ設けられている。4つのグラウンドパッド接続部15dのうちの内側にある2つのグラウンドパッド接続部15dは、それぞれ共通のグラウンドパッド接続部15dとして機能し、隣り合う一対のケーブルアッシーCA用となっている。
【0093】
そして、差動信号伝送用ケーブル60の組み立てにおいては、実施の形態1と同様に、図中矢印M4に示す方向から、グラウンド用導体61を外部導体13に向けて押圧するようにする。ここで、各ケーブルアッシーCA間でクロストークが発生しないようにするために、隣り合うケーブルアッシーCA同士を接触させないようにする。
【0094】
ここで、図示はしないが、差動信号伝送用ケーブル60が接続される回路基板は、図13に示すように、6つのシグナルパッド接続部11aと4つのグラウンドパッド接続部15dに対応して形成されたものが用いられる。つまり、差動信号伝送用ケーブル60に対応した回路基板は、6つのシグナルパッドと4つのグラウンドパッドとを備えている。
【0095】
以上のように形成した実施の形態5においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
次に、本発明の実施の形態6について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
図12は実施の形態6に係るグラウンド用導体を示す平面図を示している。
【0098】
図12に示すように、実施の形態6においては、グラウンド用導体15の本体部15aに設けられる各差し込みピン(差し込み固定部)15bに対して、図中一点鎖線に示すように比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込みピン15bの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込みピン15bの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15dが延びる方向となっている。
【0099】
以上のように形成した実施の形態6においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態6においては、絶縁体12に対するグラウンド用導体15の固定強度をより向上させることができ、ひいてはグラウンド用導体15と外部導体13とのより安定した電気的な接続が可能となる。ただし、各差し込みピン15bの傾斜角度は、絶縁体12への差し込み抵抗の増大を抑制するためにも、比較的緩やかな傾斜角度(例えば5°未満)とするのが望ましい。
【0100】
次に、本発明の実施の形態7について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1,2と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0101】
図13は実施の形態7に係るグラウンド用導体を示す平面図を示している。
【0102】
図13に示すように、実施の形態7においては、上述した実施の形態2に比して、本体部15aから延びて各差し込み刃(差し込み固定部)31aを通過する線分(図中一点鎖線)を基準として、各差し込み刃31aに比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込み刃31aの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込み刃31aの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15dが延びる方向となっている。
【0103】
以上のように形成した実施の形態7においても、上述した実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。
【0104】
次に、本発明の実施の形態8について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1,4と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
図14は実施の形態8に係るグラウンド用導体を示す平面図を示している。
【0106】
図14に示すように、実施の形態8においては、上述した実施の形態4に比して、各差し込み刃(差し込み固定部)51aの幅方向(図中左右方向)に延びる線分(図中一点鎖線)を基準として、各差し込み刃51aに比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込み刃51aの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込み刃51aの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15dが延びる方向に対して交差する方向となっている。
【0107】
以上のように形成した実施の形態8においても、上述した実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。
【0108】
次に、本発明の実施の形態9について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
図15は実施の形態9に係るグラウンド用導体を示す部分断面図を示している。
【0110】
図15に示すように、実施の形態9においては、上述した実施の形態1に比して、グラウンド用導体15の本体部15aに設けられる各差し込みピン(差し込み固定部)70の表面粗さを、グラウンド用導体15の他の部分の表面粗さよりも粗くした点(図中網掛部分)が異なっている。
【0111】
以上のように形成した実施の形態9においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態1においては、絶縁体12に対するグラウンド用導体15の固定強度をより向上させることができ、ひいてはグラウンド用導体15と外部導体13とのより安定した電気的な接続が可能となる。ただし、各差し込みピン70の表面粗さは、絶縁体12への差し込み抵抗の増大を抑制するためにも、粗くし過ぎないようにするのが望ましい。
【0112】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15dを、各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23にはんだ接続する際に、それぞれ予め段付き形状にフォーミングするようにしたものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、各シグナルパッドおよび各グラウンドパッドが回路基板の端部に形成されている場合には、フォーミング作業を省略することもできる。これにより、製造工程の簡素化を図ることができ、製造コストを低減することが可能となる。また、各シグナルパッド接続部および各グラウンドパッド接続部をそれぞれ真っ直ぐの状態にすることができるので、さらに安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【0113】
さらに、上記各実施の形態においては、回路基板20に差動信号伝送用ケーブル10,30,40,50,60を電気的に接続して、当該状態のもとで接続作業を終了したものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、回路基板と差動信号伝送用ケーブルとの接続部分を樹脂モールドで被覆するようにしても良い。この場合、金属部分を埃や水分等から保護することができるので、長期に亘って所定の電気的特性を維持することが可能となる。
【0114】
また、上記各実施の形態においては、グラウンド用導体15,31,41,51,61を、図中上方から被せるようにして外部導体13に装着するようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、回路基板20上のスペースに応じて、図中下方から(回路基板20側から)被せるようにして外部導体13に装着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0115】
10 差動信号伝送用ケーブル
11 信号線導体
12 絶縁体
13 外部導体
15 グラウンド用導体
15a 本体部
15b 差し込みピン(差し込み固定部)
15c 差し込みガイド壁(差し込み誘導部)
20 回路基板
30 差動信号伝送用ケーブル
31 グラウンド用導体
31a 差し込み刃(差し込み固定部)
40 差動信号伝送用ケーブル
41 グラウンド用導体
41a 差し込みピン(差し込み固定部)
41b 傾斜壁
50 差動信号伝送用ケーブル
51 グラウンド用導体
51a 差し込み刃(差し込み固定部)
51b 差し込みガイド壁(差し込み誘導部)
51c 傾斜壁
60 差動信号伝送用ケーブル
61 グラウンド用導体
70 差し込みピン(差し込み固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
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図15