【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
膜厚はジェー・エー・ウーラム・ジャパン製の多入射角分光エリプソメーターVASEを使用した。
原子間力顕微鏡はエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nano Navi L−traceを用い、カンチレバーはSI−DF40(背面ALコート)を用いて測定した。
UV照射装置はオーク製作所製、無電極ランプシステムQRE4016を用い、照度が20mW/cm
2として使用した。
電子顕微鏡は株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 S−4800を使用した。
ポリマーの平均分子量測定は東ソー株式会社製、商品名:Eco SEC HLC−8320GPCを使用した。
コバルトの定量はXPSを用い、アルバック−ファイ株式会社製、Quantera SXMを使用した。
接触角測定は協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM700型を使用した。
【0032】
実施例1
温度計、還流管を備えた2Lの4つ口フラスコに5.00g(0.0480mol;共重合体中に70mol%の割合)のスチレン、2.97g(0.0206mol;共重合体中に30mol%の割合)のアクリル酸4−ヒドロキシブチル、0.56g(0.0034mol;全モノマーに対して5mol%、ラジカル重合開始剤)のアゾビスイソブチロニトリル、844.41gのテトラヒドロフラン(固形分:1.0質量%)を加え、ダイアフラムポンプを用いて減圧し、系内を窒素置換した。次いで、マグネティックスターラーで撹拌させながら、オイルバスを用いて66℃で還流し、1時間反応させた。反応終了後、23℃まで自然冷却した。
反応液は後処理を行わず、窒素雰囲気を保持したまま、氷浴を用いて0℃に冷却し、3.12g(0.0309mol;アクリル酸4−ヒドロキシブチルの1.5当量)のトリエチルアミン、2.79g(0.0309mol;アクリル酸4−ヒドロキシブチルの1.5当量)のアクリル酸クロリドを注射器を用いて加えた。反応温度は0℃乃至5℃の間で保持したまま、3時間反応させ、次いで、氷浴を取り去り23℃で40時間反応させた。
【0033】
反応終了後、5℃の冷蔵庫で48時間放置した。反応液中のトリエチルアミンの塩酸塩をろ過し、ろ液に844.41gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加え、エバポレーターを用いて溶剤置換を行った。テトラヒドロフランを完全に留去した。
反応液のGPCを測定したところ、Mwが1007、Mnが548、Mw/Mnが1.84のポリマー(PSA)の溶液を得た。
PSAはエバポレーターを用いて完全に溶媒を留去したとき、液状であることを確認した。
【0034】
上記疎水性被覆材(PSA)を得る反応式を下記に示した。
【化5】
【0035】
500mLの1つ口フラスコに上記PSAの1質量%PGMEA溶液200.00gを秤量し、0.40gのIRGACURE369(BASFジャパン(株)製、光重合開始剤)を加え、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.50g加え、界面活性剤としてメガファックF−554(DIC(株)製)の0.01質量%PGMEA溶液を2.00g加え、47.12gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(PSAV)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0036】
実施例2
温度計、還流管を備えた2Lの4つ口フラスコに4.00g(0.0384mol;共重合体中に50mol%の割合)のスチレン、5.00g(0.0384mol;共重合体中に50mol%の割合)のジビニルベンゼン、0.17gのNafion117(Aldrich社製、カチオン重合開始剤:炭素とフッ素からなる骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖を有するパーフルオロカーボン材料)、908.33gのPGMEA(固形分:1.0質量%)を加え、ダイアフラムポンプを用いて減圧し、系内を窒素置換した。次いで、マグネティックスターラーで撹拌させながら、23℃で24時間反応させた。
反応終了後、系内に浮遊したNafion117をろ過し、ろ液を得た。
反応液のGPCを測定したところ、Mwが808、Mnが448、Mw/Mnが1.80のポリマー(PSD)の溶液を得た。
PSDはエバポレーターを用いて完全に溶媒を留去したとき、液状であることを確認した。
【0037】
上記疎水性被覆材(PSD)を得る反応式を下記に示した。
【化6】
【0038】
500mLの1つ口フラスコに上記PSDの1質量%PGMEA溶液200.00gを秤量し、0.40gのIRGACURE369(BASFジャパン(株)、光重合開始剤)を加え、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.50g加え、界面活性剤としてメガファックF−554(DIC(株))の0.01質量%PGMEA溶液を2.00g加え、47.12gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(PSDV)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0039】
実施例3
500mLの1つ口フラスコに2.00gのPiccolastic(TM)A5(イーストマンケミカルジャパン(株)、液状ポリスチレン、重量平均分子量は400)を秤量し、0.50gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(商品名カヤラッド DPHA、日本化薬(株)、液状ポリアクリレート化合物:ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート及びヘキサアクリレートの混合物、重量平均分子量は約550)を加えた。
上記疎水性被覆材は以下に示した。この疎水性被覆材は液状ポリスチレンと液状ポリアクリレート化合物の混合物である。
【化7】
【0040】
その疎水性被覆材に更に、0.50gのIRGACURE369(BASFジャパン(株)、光重合開始剤)を加え、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.63g加え、界面活性剤としてメガファックF−554(DIC(株))の0.01質量%PGMEA溶液を2.50g加え、306.40gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(SDV)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0041】
比較例1
上記疎水性被覆材を準備した。この疎水性被覆材はジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(商品名カヤラッド DPHA、日本化薬(株)、液状ポリアクリレート化合物:ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート及びヘキサアクリレートの混合物、重量平均分子量は約550)である。
【0042】
【化8】
【0043】
500mLのナス型フラスコにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、商品名カヤラッド DPHA(日本化薬(株))を2.00g秤量し、0.40gのIRGACURE369(BASFジャパン(株)、光重合開始剤)を加え、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.50g加え、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株))の0.01質量%PGMEA溶液を2.00g加え、245.12gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(RV1)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0044】
比較例2
500mLのナス型フラスコにスチレンとアクリル酸を85:15(共重合体中のmol%比)で共重合したポリマー(Mw=14300、Mn=5600;大阪有機化学工業(株)、固形状ポリマー)の35%PGMEA溶液を5.00g秤量した。
この疎水性被覆材は下記に示すスチレンとアクリル酸の共重合体であった。
【化9】
【0045】
この疎水性被覆材に更に、0.35gのGT−401(ダイセル化学工業(株)、多官能脂肪族環状エポキシ樹脂:成分はエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス-(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトン)を加え、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.44g加え、界面活性剤としてメガファックF−554(DIC(株))の0.01質量%PGMEA溶液を1.75g加え、211.23gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(RV2)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0046】
比較例3
500mLのナス型フラスコにポリスチレン(Mw=2000;和光純薬工業(株)、固形状ポリマー)を2.00g秤量した。
この疎水性被覆材は下記に示すポリスチレンであった。
【化10】
【0047】
この疎水性被覆材に更に、密着促進剤としてアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの20質量%PGMEA溶液を0.50g加え、界面活性剤としてメガファックF−554(DIC(株))の0.01質量%PGMEA溶液を2.00g加え、205.52gのPGMEAを加えた後、室温にてスターラーを用いて24時間攪拌し、均一な透明溶液(RV3)を調製し、ハードディスク用平坦化膜形成組成物とした。
【0048】
<AFM(原子間力顕微鏡)による平坦化性>
実施例1乃至3で調製したPASV、PSDV、SDV、比較例1乃至3で調製したRV1、RV2、RV3はエバポレーターを用いて減圧濃縮し、固形分が4.0%質量になるように調製した。
固形分が4.0質量%に調製したワニス(ハードディスク用平坦化膜形成組成物)を用いて構造物付き基板上でスピンコートを行った。構造物付き基板の材質はシリコンであり、深さが100nm、ラインとスペースは30nmの等間隔で形成されているものを使用した。スピンコートは構造物が付いていないシリコン基板上で85nm製膜できる条件と同様の条件とした。
AFMは構造体を埋め込んだ後の製膜面を測定し、平均表面粗さ(R
a)及び最大表面粗さ(R
max)を測定した。AFMの測定箇所はラインとスペースが存在する方向の垂直方向とし、測定範囲は5μm×5μmとした。
【0049】
(AFM(原子間力顕微鏡)の測定)
固形分が4.0質量%のPSAVワニス(実施例1で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を構造物付き基板上にスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜はUV照射装置(メイン波長380nm)を用い、照度が20mW/cm
2にて10秒間(200mJ/cm
2)、大気下で光照射した。
光照射後の膜はAFMを用いて構造体上の平坦性を評価した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0050】
固形分が4.0質量%のPSDVワニス(実施例2で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を用いて、PSAVワニスを用いた場合と同様の方法で膜を製膜し、AFMを測定した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0051】
固形分が4.0質量%のSDVワニス(実施例3で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を用いて、PSAVワニスを用いた場合と同様の方法で膜を製膜し、AFMを測定した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0052】
固形分が4.0質量%のRV1ワニス(比較例1で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を用いて、PSAVワニスを用いた場合と同様の方法で膜を製膜し、AFMを測定した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0053】
固形分が4.0質量%のRV2ワニス(比較例2で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を構造物付き基板上にスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜は大気下で200℃のホットプレートを用い5分間焼成を行った。焼成後の膜はAFMを測定した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0054】
固形分が4.0質量%のRV3ワニス(比較例3で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物を固形分4.0質量%に調整)を用いて、RV2ワニスを用いた場合と同様の方法で膜を製膜し、AFMを測定した。AFMの測定結果は表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果から、PSAV、PSDV、SDV、RV1の各膜のR
aが良好であり、R
maxが1nm以下であることから、構造物を良好に埋め込み、平坦性が良いことがわかった。この結果はワニス中の溶質が大気圧下で、液体性状を有する分子であることに起因し、構造物付き基板上での平坦性に優れることがわかった。
一方、RV2及びRV3の各膜はR
maxが1nm以上となり、表面ラフネスが大きいことがわかった。R
maxが1nm以上であると、後工程で平坦化材料にダイヤモンドライクカーボン(DLC)を積層した際に、平坦化膜のラフネスを踏襲して、DLCにラフネスが反映してしまい、ハードディスク上を浮上しているヘッドとクラッシュする可能性がある。ヘッドとハードディスクとの距離は5nm以下が求められており、1nm以下のR
maxを有していることが重要である。
【0057】
<Coコロージョン試験>
実施例1乃至3で調製したPSAV、PSDV、SDVの各膜、比較例1乃至3で調製したRV1、RV2、RV3の各膜のコバルトコロージョン試験を行った。
用いた基板はSi基板上に200nmのコバルトをスパッタリングした基板(グローバルネット(株)製、コバルト被覆基板)を使用した。
コバルトの検出にはXPSを使用した。測定条件はX線がAlKa、1486.6eV(25W、15kV)、測定範囲が1000μm×1000μm、Pass Energyが55.0eV、112.0eV、Photoelectron Taku Off Angleが基板から45°とした。XPSによるコバルトの定量は膜の最表面から膜厚方向に10nmまでの情報が得られる。また、XPSによるコバルトのピークは778.2eV付近に現れる。
【0058】
PSAVワニス(実施例1で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)をSi基板上に200nmのコバルトをスパッタリングした基板に膜厚が20nmとなるようにスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜はUV照射装置(メイン波長380nm)を用い、照度が20mW/cm
2にて10秒間(200mJ/cm
2)、大気下で光照射した。
光照射後の膜はXPSを用いて膜の最表面を測定し、コバルトを定量した。次いで、同一の膜を温度が90℃、相対湿度が90%RHに設定した恒温恒湿器を使用して120時間放置した。恒温恒湿試験後の膜はXPSを用いて膜の最表面を測定し、コバルトを定量した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0059】
PSDVワニス(実施例2で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)を用い、PSAVワニスを用いた場合と同様に試験し、XPSを測定した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0060】
SDVワニス(実施例3で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)を用い、PSAVワニスを用いた場合と同様に試験し、XPSを測定した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0061】
RV1ワニス(比較例1で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)を用い、PSAVワニスを用いた場合と同様に試験し、XPSを測定した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0062】
RV2ワニス(比較例2で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)をSi基板上に200nmのコバルトをスパッタリングした基板に膜厚が20nmとなるようにスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜は大気下で200℃のホットプレートを用い5分間焼成を行った。焼成後の膜はXPSを用いて膜の最表面を測定し、コバルトを定量した。次いで、同一の膜を温度が90℃、相対湿度が90%RHに設定した恒温恒湿器を使用して120時間放置した。恒温恒湿試験後の膜はXPSを用いて膜の最表面を測定し、コバルトを定量した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0063】
RV3ワニス(比較例3で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)を用い、RV2ワニスを用いた場合と同様に試験し、XPSを測定した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0064】
また、上記平坦化膜を塗布していないコバルト基板はその最表面をXPSを用いて測定し、コバルトを定量した。次いで温度が90℃、相対湿度が90%RHに設定した恒温恒湿器を使用して120時間放置した。恒温恒湿試験後のコバルト基板はXPSを用いて基板の最表面を測定し、コバルトを定量した。XPSの測定結果は表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2の結果から、恒温恒湿試験前のコバルトの定量値は0.00atm%となり、製膜直後の膜の最表面にはコバルトが存在していないことがわかった。参照用として試験したコバルト基板は恒温恒湿試験前が4.87atm%、恒温恒湿試験後が9.54atm%と非常に高い値となった。
恒温恒湿試験後のコバルトの定量値はPSAV、PSDV、SDV、RV3の各膜において0.1atm%以下となり、平坦化膜の表面にコバルトが拡散している割合が非常に小さいことがわかった。一方でRV1及びRV2の各膜は0.86atm%及び0.69atm%となり、平坦化膜の表面にコバルトが拡散していることがわかった。RV2はポリスチレン骨格を有するポリマーでありながら、コバルトが検出されるのは、極性基としてカルボン酸を有しているためである。カルボン酸はルイス酸として機能しコバルト基板を腐食させてしまうことがわかった。
【0067】
ハードディスクの中でディスクリートパターンメディアの非磁性体膜として用いる場合、非磁性体と磁性体とが磁性において分割されているため、デバイスを組み終わった後の信頼性試験を行ったときに、磁性体から磁性体であるコバルトは非磁性体に拡散してしまうことはサイドライト、クロストークの原因となり、問題となる。
非磁性体に磁性体が検出されてしまう現象は、磁性体のコバルト基板が酸やアルカリ、水蒸気などでイオン化して腐食(コロージョン)し、このイオン化した成分が非磁性体に拡散(マイグレーション)すると考えられる。したがって、恒温恒湿試験後の非磁性体の表面からコバルトが検出されないことは、非磁性体材料が磁性体であるコバルト基板を腐食させず、拡散させないことを示しており、高信頼性のハードディスクを提供できる。
【0068】
<水接触角の測定>
実施例1乃至実施例3、比較例1乃至比較例3で得た膜の水接触角を測定した。
PSAVワニス(実施例1で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)をコバルト基板に膜厚が20nmとなるようにスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜はUV照射装置(メイン波長380nm)を用い、照度が20mW/cm
2にて10秒間(200mJ/cm
2)、大気下で光照射した。コバルト基板上に塗布されたPSAV膜の水接触角を測定した。測定結果は表3に示す。
PSDV膜の水接触角は、PSAV膜を用いた場合と同様に測定した。測定結果は表3に示す。
SDV膜の水接触角は、PSAV膜を用いた場合と同様に測定した。測定結果は表3に示す。
RV1膜の水接触角は、PSAV膜を用いた場合と同様に測定した。測定結果は表3に示す。
RV2ワニス(比較例2で得られたハードディスク用平坦化膜形成組成物)をコバルト基板に膜厚が20nmとなるようにスピンコート法で製膜した。スピンコート後の膜は大気下で200℃のホットプレートを用い5分間焼成を行った。
コバルト基板上に塗布されたRV2膜の水接触角を測定した。測定結果は表3に示す。
RV3膜の水接触角は、RV2膜を用いた場合と同様に測定した。測定結果は表3に示す。
【0069】
水接触角の測定は22Gの針を用い、2.0μLの水を一定で滴下し、Youngの式の準じたθ/2法を用いて測定した。
【表3】
【0070】
表3の結果から、PSAV、PSDV、SDV、RV3において70°以上の水接触角を有していることがわかった。一方でRV1及びRV2は70°以下の水接触角となった。
これらの水接触角の結果は、表2で示したコバルトのコロージョン試験結果と相関関係があることがわかり、
図1に示した。
図1はコバルト被覆基板上に平坦化膜を被覆して恒温恒湿試験後の平坦化膜表面のコバルトの定量値と、別途コバルト被覆基板上に被覆した平坦化膜の水接触角試験値との相関関係を示す図である。縦軸はコバルトの定量値(atom%)であり、横軸は水接触角の測定値(°)である。すなわち、水接触角が70°以上の疎水的な有機膜を用いることでコバルトのコロージョンを著しく抑制できることが明らかとなった。
【0071】
HDD(ハードディスクドライブ)の非磁性体としての平坦化膜は構造体を埋め込んだ後の有機膜表面の平坦性が1nm以下であり、恒温恒湿試験を経た後にコバルトのコロージョン及びマイグレーションが抑制できることを求められることから、PSAV、PSDV、SDVの各膜が良好であることがわかった。一方で、RV1の膜は平坦性が良好であるものの、コバルトコロージョンが不良であり、RV2の膜は平坦性、コバルトコロージョンが不良であり、またRV3の膜はコバルトコロージョンが良好であるものの平坦性が不良である。平坦性とコバルトコロージョンとは両立して良好である必要があり、これらを両立できる本発明の平坦化膜形成組成物はHDDの平坦化膜として良好に使用できる。