【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)第四級アンモニウム
塩系防腐剤を含有する粘膜適用組成物において、(B)エデト酸及び/又はその塩、並びに(C)ポリソルベートを特定の比率を充足するように配合することによって、優れた安定性を有し、刺激性がなく良好な使用感を備え得ることを見出した。更に、上記の各含有成分が特定の比率を充足することにより、第四級アンモニウム塩系防腐剤が0.02重量%以下の範囲においても、優れた安定性を備え、実用可能な粘膜適用組成物を提供できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する:
項1. (A)第四級アンモニウム塩系防腐剤、(B)エデト酸及び/又はその塩、並びに(C)
ポリソルベートを含有する粘膜適用組成物であって、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤
1重量部に対して、(C)ポリソルベートが0.5〜110重量部であり、且つ(C)ポリソルベート1重量部に対して、(B)エデト酸及び/又はその塩が0.001〜1.5重量部で
あることを特徴とする粘膜適用組成物。
項2. (A)第四級アンモニウム塩系防腐剤1重量部に対して、(C)ポリソルベートが1〜60重量部であり、且つ(C)ポリソルベート1重量部に対して、(B)エデト酸及び/又はその塩が0.002〜0.08重量部である、項1記載の粘膜適用組成物。
項3. 粘膜適用組成物中に、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤を0.0001〜0.
02重量%含有する、項1又は2に記載の粘膜適用組成物。
項4. (A)第四級アンモニウム塩系防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニ
ウム及び塩化デカリニウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1乃至3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
項5. (B)エデト酸及び/又はその塩が、エデト酸2ナトリウムである、項1乃至4の
いずれかに記載の粘膜適用組成物。
項6. (C)ポリソルベートが、ポリソルベート80である、項1乃至5のいずれかに記
載の粘膜適用組成物。
項7. 更に、多価アルコール、等張化剤および香料からなる群より選択される1種以上を含有する、項1乃至6のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
項8. 鼻腔粘膜適用組成物である、項1乃至7のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
項9. 項1乃至8のいずれかに記載の粘膜適用組成物が透明容器に充填されてなることを特徴とする粘膜適用剤製品。
項10. 前記透明容器が、ポリエチレンテレフタレート又はガラスから構成されていることを特徴とする、項9記載の粘膜適用剤製品。
【0009】
以下、本発明について、詳述する。
【0010】
本発明の粘膜適用組成物は、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤(以下、単に(A)成分と表記することもある)を含有する。本発明において、第四級アンモニウム塩系防腐剤とは、防腐及び/又は殺菌作用を有する第四級アンモニウム塩であり、公知の防腐及び/又は殺菌成分である。第四級アンモニウム塩系防腐剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジステ
アリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウムなどが例示される。これらの中でも、危険性が低く無臭で有るうえに抗菌スペクトルが広く、安全性および有効性に優れる点から、好ましくは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウムであり、更に好ましくは塩化ベンザルコニウムである。当該(A)成分は、1種単独で使用してもよ
く、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
また、本発明の粘膜適用組成物は、(B)エデト酸及び/又はその塩(以下、単に(B)成分と表記することもある)を含有する。エデト酸とは、別名エチレンジアミン四酢酸とも称されており、公知の化合物である。本発明の粘膜適用組成物において、(B)成分として使
用されるエデト酸の塩としては、例えば、2ナトリウム塩、2ナトリウムカルシウム塩、4ナトリウム塩等が挙げられる。これらのエデト酸の塩は、二水物や四水物等の水和物であってもよい。これらの中でも、安全性に優れ、水に対する溶解度が高いためポリソルベート等の他成分に作用しやすい点から、好ましくは、エデト酸の2ナトリウム塩であり、更に好ましくはエデト酸の2ナトリウム塩である。当該(B)成分は、1種を単独で使用し
てもよく、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0012】
更に、本発明の粘膜適用組成物は、(C)ポリソルベート(以下、単に(C)成分と表記することもある)を含有する。ポリソルベートとは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシド20モルを付加させた親水性の非イオン界面活性剤である。本発明に使用されるポリソルベートとして、具体的には、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンオレエート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンステアレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンラウレート)、ポリソルベート85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート)等が例示される。これらの中でも、粘膜適用組成物の安定性、とくに(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤の溶解性を一層向上させるという点から、好ましくはポ
リソルベート80、ポリソルベート60であり、更に好ましくはポリソルベート80である。当該(C)成分は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用し
てもよい。
【0013】
本発明の粘膜適用組成物の安定性をより向上させ、粘膜適用時に感じる刺激性をより一層低減させて使用感をも良好にするという観点から、上記(A)〜(C)成分の組み合わせ態様として、塩化ベンザルコニウム、エデト酸の2ナトリウム塩、及びポリソルベート80の組み合わせが好適に例示される。
【0014】
本発明の粘膜適用組成物において、前記(A)成分1重量部に対する(C)成分の配合比率は、0.5〜110重量部であり、好ましくは0.7〜100重量部であり、より好ましくは1〜60重量部である。当該配合比率が0.5重量部未満または110重量部を超えると、低温下および高温下での安定性が低下し、析出物が発生したり、不快な臭いがする。
【0015】
また、本発明の粘膜適用組成物において、前記(C)成分1重量部に対する(B)成分の配合比率は、0.001〜1.5重量部であり、好ましくは0.002〜1.0重量部であり、より好ましくは0.002〜0.08重量部である。当該配合比率が0.001重量部未満であると、高温下での安定性が低下し、また、1.5重量部を超えると、低温下および高温下での安定性が低下する。安定性が低下すると、析出物が発生したり、不快な臭いがする。
【0016】
上記の比率を具備するように(A)、(B)及び(C)成分を含有することにより、優れた安定
性を獲得し、刺激性がなく良好な使用感を得ることができる。
【0017】
本発明の粘膜適用組成物において、前記(A)成分の濃度としては、前記(A)〜(C)成分の
配合比率、(A)成分の種類等に応じて異なるが、該組成物当たり、通常0.01×10
−
2〜0.1重量%、好ましくは0.01×10
−1〜0.05重量%、更に好ましくは0.02×10
−1〜0.02重量%である。このような範囲内で、(A)成分を含有するこ
とにより、防腐乃至殺菌作用を有効に発揮させることができる。
【0018】
また、前記(B)及び(C)成分の濃度については、前述する(A)〜(C)成分の配合比率を充足する範囲内で設定される限り特に制限されないが、これらの成分の配合量の一例として、粘膜適用組成物当たり、通常(B)成分が0.01×10
−4〜1.8重量%且つ(C)成分が0.05×10
−2〜2.2重量%;好ましくは(B)成分が0.02×10
−4〜1.2
重量%且つ(C)成分が0.07×10
−2〜2重量%;更に好ましくは(B)成分が0.02×10
−4〜0.1重量%且つ(C)成分が0.01×10
−1〜1.2重量%が例示され
る。
【0019】
(A)成分を0.02重量%以下で含有する組成物では、従来、40℃以上の温度条件で
は析出物の発生が顕著になり、特に安定性が損なわれ易くなるという問題点があったが、(A)、(B)及び(C)成分が上記の比率を満たすことにより、低濃度で(A)成分を含有していながらも、優れた安定性を備えることができる。従って、低濃度で(A)成分を含有する組成
物における長年の問題点を解決するという観点から、本発明の粘膜適用組成物の好適な一実施態様として、(A)成分が0.02重量%以下の低濃度であることが挙げられる。低濃
度で(A)成分を含有する場合として、より具体的には、粘膜適用組成物当たり、(A)成分が、0.01×10
−2〜0.02重量%、好ましくは0.01×10
−1〜0.01重量%、更に好ましくは0.02×10
−1〜0.05×10
−1重量%となる濃度が例示される。このような濃度で(A)成分を使用する粘膜適用組成物は、粘膜の洗浄等を目的とす
る場合に特に好適である。
【0020】
また、(A)成分を0.02重量%以下で含有する場合において、前記(B)及び(C)成分の
濃度については、前述する(A)〜(C)成分の配合比率を充足する範囲内で適宜設定されるが、これらの成分の濃度として、粘膜適用組成物当たり、(B)成分が0.01×10
−4〜
0.1重量%且つ(C)成分が0.05×10
−2〜1.2重量%;好ましくは(B)成分が0.02×10
−4〜0.05重量%且つ(C)成分が0.07×10
−2〜0.12重量%
;更に好ましくは(B)成分が0.02×10
−4〜0.25×10
−1重量%且つ(C)成分が0.01×10
−1〜0.06重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の粘膜適用組成物には、上記(A)〜(C)成分に加えて、使用感を向上させるために、多価アルコール、等張化剤、及び香料の中の1種又は2種以上を組み合わせて配合しておくことが望ましい。特に、その使用感を、長期保存や温度変化等に影響されず安定で、しかも良好なものにするには、上記(A)〜(C)成分と共に、多価アルコール、等張化剤、及び香料の3種全てを組み合わせて含有することが望ましい。
【0022】
ここで、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン(濃グリセリンを含む)、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコール中で、粘膜適用組成物の等張化に加え、味および香りの点で優れることから、好ましくはグリセリンである。多価アルコールを配合する場合、その配合割合としては、例えば0.0125〜3重量%、好ましくは0.05〜2.5重量%、更に好ましくは0.2〜2重量%が挙げられる。
【0023】
等張化剤としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。これらの中で、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。これらの等張化剤は、1種のみを使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。等張化剤を配合する場合、その配合割合は、他の成分の配合量等に応じて適宜設定されるが、通常0.15重量%〜1.5重量%、好ましくは0.3〜1.2重量%、更に好ましくは0.45〜0.9重量%となる割合が挙げられる。
【0024】
前記多価アルコールおよび等張化剤を組み合わせて使用し、前記範囲の配合量とすることで、特に優れた使用感の粘膜適用組成物とすることができる。
【0025】
香料としては、粘膜適用組成物の安定性に影響を及ぼさない限りとくに制限されず、天然香料、合成香料及び調合香料等を広く使用することができる。特に、本発明の粘膜適用組成物に優れた使用感を付与するという観点からは、ペパーミント香料、ペパーミント油、l-メントール等の香料が好適に使用される。本発明の粘膜適用組成物において、香料は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて調香して使用してもよい。香料を配合する場合、その配合割合は、使用する香料の種類等に応じて適宜設定されるが、通常0.0001〜2重量%以下、好ましくは0.001〜1重量%以下、更に好ましくは0.01〜0.5重量%以下となる割合が挙げられる。
【0026】
本発明の粘膜適用組成物において、上記(A)〜(B)成分と共に、グリセリン、塩化ナトリウム、及びペパーミント香料を組み合わせて含有させることにより、特に良好な使用感を付与することができる。また、かかる態様の粘膜適用組成物によれば、長期保存又は環境的影響によっても、その良好な使用感が損なわれることなく安定に保持されので、粘膜適用組成物の形態及び使用感の双方の点で優れた安定性を備えることができる。
【0027】
本発明の粘膜適用組成物には、上記成分の他に、消炎剤、殺菌剤、抗菌剤、収斂剤、充血除去剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類、アミノ酸類等の薬理成分や、溶解剤、増粘剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を適当量含んでいても良い。
【0028】
本発明の粘膜適用組成物は、液状であり、滅菌水、蒸留水、精製水、海洋深層水等に上記配合成分を所定量添加して溶解させ、必要に応じて滅菌処理に供することにより製することができる。
【0029】
本発明の粘膜適用組成物において、適用対象となる粘膜については、特に制限されず、鼻腔粘膜、眼粘膜、口腔粘膜、咽頭部粘膜、膣粘膜、直腸粘膜等のあらゆる粘膜に適用される。中でも、特に鼻腔粘膜に適用される組成物として有用である。特に、本発明の粘膜適用組成物は、(A)〜(C)成分を低濃度(即ち、(A)成分が0.02重量%以下)で含有す
る場合には、粘膜用洗浄液、特に鼻腔粘膜用の洗浄液として有用である。
【0030】
本発明の粘膜適用組成物は、光が透過可能な透明容器に充填できる。従来、析出物が発生し易い粘膜適用組成物は、内容物を目視にて確認できない容器に充填されることが一般的であった。従来は、このような容器を使用することによって、析出物の発生が認識されて使用者に不快な心理的影響を与えるのを回避していた。これに対して、本発明の粘膜適用組成物は、透明容器に充填するのに適している。即ち、本発明の粘膜適用組成物を透明容器に充填した粘膜適用剤製品は、長期間保存しても、析出物が発生することなく安定であるので、容器内の粘膜適用組成物の性状を目視できるようにしても、使用者に不快な心理的影響を与える等の不都合はない。更に、当該粘膜適用剤製品は、使用者にとっては、容器内部の残存量を容易に確認可能になるという利点があり、その実用的価値が高められ
ている。
【0031】
本発明の粘膜適用組成物を充填する容器は、ガラス製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等のいずれであってもよいが、特にガラス製又はポリエチレンテレフタレート製に充填することにより、本発明の粘膜適用組成物は、経時的安定性や温度変化に対する安定性をより有効に発揮することができる。