特許第5916797号(P5916797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916797
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】連鎖端子の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20160422BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20160422BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20160422BHJP
   B23K 37/053 20060101ALI20160422BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20160422BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B23K26/10
   B23K26/21 N
   B23K26/70
   B23K37/053 C
   H01R43/16
   H01R4/18 A
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-119327(P2014-119327)
(22)【出願日】2014年6月10日
(62)【分割の表示】特願2014-512569(P2014-512569)の分割
【原出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2014-184490(P2014-184490A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-33925(P2013-33925)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-33926(P2013-33926)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-33927(P2013-33927)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-33928(P2013-33928)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】繁松 孝
(72)【発明者】
【氏名】八木 三郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 幹夫
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−302341(JP,A)
【文献】 特開2000−231944(JP,A)
【文献】 特開平08−037051(JP,A)
【文献】 特開昭63−224892(JP,A)
【文献】 実開昭60−046984(JP,U)
【文献】 特開昭59−030487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 37/053
H01R 4/18
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔で曲げ加工された筒体と、前記筒体を一定の間隔で複数支持したキャリア部と、が形成された被加工対象物から、被覆導線の導体部分を収容して圧着可能な圧着部を有する圧着端子を形成する連鎖端子の製造装置であって、
前記筒体における一方の端部と他方の端部との突き合わせ界面をレーザ光により溶接接合して前記圧着部を形成する間、前記筒体を保持する保持手段と、
前記圧着部を形成する間、前記筒体を支持するキャリア部を挟み込むガイドと、を備え、
前記保持手段には、前記レーザ光が照射される側に、前記筒体に当接する2つの斜辺部から構成された略ハ字型部と、前記2つの斜辺部の間から前記レーザ光を通過させて前記突き合わせ界面へ照射させるレーザ光通過部と、が形成され、
前記ハ字型部は、前記筒体に当接する一の斜辺部の当接点と前記筒体の中心点とを結ぶ線と、前記筒体における前記突き合わせ界面と前記筒体の中心点とを結ぶ線と、が交差する角度が、0°より大きく90°未満であることを特徴とする連鎖端子の製造装置。
【請求項2】
前記被加工対象物を一定の間隔で曲げ加工された筒体を、所定の位置に位置決めする送り位置決め機構を、さらに備え、
前記保持手段は、前記筒体の前記突き合わせ界面を前記レーザ光により溶接接合して前記圧着部を形成した後に、前記圧着部から離脱し、
前記送り位置決め機構は、前記保持手段から離脱した圧着部を所定の送り方向に搬送することを特徴とする請求項1に記載の連鎖端子の製造装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記略ハ字型部を、前記筒体における左側及び右側の二点と当接しながら挟み込むことにより、前記一方の端部と前記他方の端部とを当接させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の連鎖端子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連鎖端子を製造する連鎖端子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車内配線にはワイヤハーネスが多用される。ワイヤハーネスは、車内配線の仕様に合わせて複数の被覆電線を集合部品化したものである。各被覆電線の端末には、接続用の端子(以下、圧着端子という。)が圧着されている。
【0003】
この圧着端子をワイヤハーネスの電線端末に接続する場合、電線端末の絶縁被覆層を除去して芯線を露出させ、芯線露出部に圧着端子の芯線バレルを加締め圧着することにより、電線端末と圧着端子との電気的接続がなされる。
【0004】
そして、圧着端子との接続部から電線内への水分の浸入による芯線の腐食を防止するべく、圧着端子と電線端末との接続部が樹脂封止される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−167821号
【特許文献2】特開2012−069449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2では、電線端末と圧着端子との接続部を樹脂封止しているため、ワイヤハーネスの製造単価を増加させる要因となっている。これは、使用される樹脂そのものが高価であることに加え、樹脂モールド処理或いはコーティング処理の工程で、樹脂の流し込みや硬化に時間を要することによる。
【0007】
そこで、圧着端子の電線接続部(以下、圧着部という。)をプレス成型により筒状に曲げ加工し、その筒状に曲げ加工した部分にできる板材両端の突き合わせ界面全体を、レーザ溶接により接合して電線接続部を密閉構造にする試みがなされている。
【0008】
しかしながら、板材を筒状に曲げ加工した部分にできる板材両端の突き合わせ界面には隙間が生じることがある。その原因として、スプリングバックすなわち材料自体の弾性により変形が若干もとに戻る現象が生じること、金型の劣化、気温など環境要因の変化、を挙げることができる。この突き合わせ界面における隙間の存在がレーザ溶接による突き合わせ界面の接合品質を低下させる原因になる。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被覆導線の導体部分を収容して圧着可能な圧着部を有する圧着端子の形成品質の向上を図ることができる連鎖端子の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載した本発明の連鎖端子の製造装置は、一定の間隔で曲げ加工された筒体と、前記筒体を一定の間隔で複数支持したキャリア部と、が形成された被加工対象物から、被覆導線の導体部分を収容して圧着可能な圧着部を有する圧着端子を形成する連鎖端子の製造装置であって、前記筒体における一方の端部と他方の端部との突き合わせ界面をレーザ光により溶接接合して前記圧着部を形成する間、前記筒体を保持する保持手段と、前記圧着部を形成する間、前記筒体を支持するキャリア部を挟み込むガイドと、を備え、前記保持手段には、前記レーザ光が照射される側に、前記筒体に当接する2つの斜辺部から構成された略ハ字型部と、前記2つの斜辺部の間から前記レーザ光を通過させて前記突き合わせ界面へ照射させるレーザ光通過部と、が形成され、前記ハ字型部は、前記筒体に当接する一の斜辺部の当接点と前記筒体の中心点とを結ぶ線と、前記筒体における前記突き合わせ界面と前記筒体の中心点とを結ぶ線と、が交差する角度が、0°より大きく90°未満であることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載した本発明の連鎖端子の製造装置によれば、筒体における一方の端部と他方の端部とを接合して圧着部を形成する間、筒体を保持手段により保持するため、例えば、一方の端部と他方の端部との突き合わせ界面を位置決めしてレーザ溶接することが可能となり、圧着部の形成品質を向上することができる。
また、請求項に記載した本発明の連鎖端子の製造装置によれば、ガイドが、筒体を支持するキャリア部を挟み込むことにより、連鎖端子の浮き上がりを防止して、保持手段を圧着部から確実に離脱することができる。
さらに、請求項1に記載した本発明の連鎖端子の製造装置によれば、保持治具に形成された略ハ字型部が、筒体に当接しながら当該筒体を挟み込むことができる。
請求項に記載した本発明の連鎖端子の製造装置は、請求項に記載の連鎖端子の製造装置であって、前記被加工対象物を一定の間隔で曲げ加工された筒体を、所定の位置に位置決めする送り位置決め機構を、さらに備え、前記保持手段は、前記筒体における一方の端部と他方の端部とを接合して前記圧着部を形成した後に、前記圧着部から離脱し、前記送り位置決め機構は、前記保持手段から離脱した圧着部を所定の送り方向に搬送することを特徴とする。
請求項に記載した本発明の連鎖端子の製造装置によれば、送り位置決め機構により、保持手段から離脱した圧着部を所定の送り方向に搬送することができる。
【0017】
請求項に記載した本発明の連鎖端子の製造装置は、請求項1又は2に記載の連鎖端子の製造装置であって、前記外力方向変換部は、前記保持治具に形成され前記筒体を挟み込む凹部からなり、前記凹部に前記筒体が挟み込まれることにより前記一方の端部と前記他方の端部とを当接させることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載した本発明の連鎖端子の製造装置によれば、保持治具に形成された凹部に筒体が挟み込むため、一方の端部と他方の端部とを当接させて溶接接合等が可能となり品質の低下を抑制することができる
【発明の効果】
【0037】
このように、本発明の連鎖端子の製造装置によれば、被覆導線の導体部分を収容して圧着可能な圧着部を有する圧着端子の形成品質の向上を図ることができる連鎖端子の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る端子製造装置の概略構成図を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る連鎖端子の製造過程を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る連鎖端子の外観構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る端子製造装置の構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る被加工対象物保持装置による圧接を説明するための図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る被加工対象物保持装置を模式的に示した図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置の上クランプ治具を模式的に示した図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置の下クランプ治具を模式的に示した図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置の上クランプ治具及び下クランプ治具の変形例を示した図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置を模式的に示した図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置の変形例を模式的に示した図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[1.第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態に係る被加工対象物保持装置について図面を参照して説明する。はじめに、図1から図4を参照して、本発明の実施形態に係る被加工対象物保持装置により保持される被加工対象物を製造する端子製造装置について説明する。
【0040】
なお、図1は、本発明の実施形態に係る端子製造装置の概略を示す図である。図2(a)から図2(d)は、本発明の実施形態に係る圧着端子の製造工程を示す図である。図3は、本発明の実施形態に係る圧着端子を示す図である。図4は、本発明の実施形態に係る端子製造装置の構成を示す図である。
【0041】
以下、本発明の実施形態では、被加工対象物保持装置により保持される被加工対象物として、電線接続部(圧着部)をプレス成型により筒状に曲げ加工した連鎖端子である場合について説明する。
【0042】
[1−1.構成]
まず、本発明の実施形態に係る被加工対象物保持装置により保持される被加工対象物を製造する端子製造装置の構成について説明する。図1に示すように、端子製造装置1は、図中左側の送り方向上流側から、巻出しロール10と、プレス機20と、レーザ溶接機30と、レーザ加工性検査機40と、巻取りロール50と、これらの動作を制御する制御装置60と、を備える。
【0043】
すなわち、従来、プレス機20とレーザ溶接機30とは別々の工程として実施されており、プレス成型を施した被加工対象物を一度ロール状に巻き取った後、次工程(従来は樹脂封止工程)に運んで、再びロールから巻き出して次工程を行っていた。これに対して、本発明の実施形態の端子製造装置1は、プレス成型とその後の工程(本実施形態ではレーザ溶接)とを、一連の工程として実施するものである。
【0044】
なお、以上のことから、本発明の実施形態において、レーザ加工性検査機40は、必須の構成ではない。また、本発明の実施形態では、プレス機20とレーザ溶接機30とを別体として設けた例を示しているが、本発明の実施形態においては、これらが一体、すなわち、プレス機20にレーザ溶接機30が組み込まれている実施態様も包含する。
【0045】
さらに、説明の便宜上、レーザ溶接機30とレーザ加工性検査機40とを別の装置として分けて構成する例を示しているが、レーザ溶接機30の中にレーザ加工性検査機40の機能を組み込む態様も包含する。
【0046】
次に、端子製造装置1の各構成について説明する。巻出しロール10は、ロール状に巻回された被加工対象物である銅条CSを所定の速度で巻き出して供給する機構である。巻出しロール10は、主としてプレス機20におけるプレス加工タイミングを考慮した速度で、銅条CSをロールから連続的に送り出す。
【0047】
本発明の実施形態では、銅条CSとして銅合金による板材が用いられている。なお、被加工対象物の材料が銅合金に限定されないことはもちろんであり、例えばアルミニウム系材料が被加工対象物として用いられてもよい。本発明の実施形態では、被加工対象物の板厚は、0.25mmまたは0.32mmのものが使用されているが、板厚がこれらに限定されないことはもちろんである。
【0048】
なお、後述のように、プレス機20において、銅条CSはプレス加工のタイミングに合わせて間欠的に搬送される。そのため、図1で示すように、巻出しロール10とプレス機20との間では、銅条CSに一定のたるみを持たせて、間欠搬送と連続搬送との搬送タイミングの相違を吸収するようにしている。
【0049】
プレス機20は、巻出しロール10から供給される銅条CSを、図示しない送り機構により間欠的に搬送しながら、打ち抜きや曲げ加工等のプレス成型を施して連鎖端子Tを形成する装置である。
【0050】
具体的には、図2に示すように、ロール状から巻き出された銅条CS(図2(a))に対して、一次プレスとして、打ち抜き加工を施すことによって、図2(b)に示す連鎖端子T1が形成される。
【0051】
この連鎖端子T1は、上下にプレス機20内において連鎖端子T1を送り方向に搬送するためのキャリア部C1,C2が形成されている。このキャリア部C1,C2には、搬送時に位置決めを行うために、ピン(図示省略)を挿入する穴Hが所定ピッチで複数(ここでは連鎖端子Tの位置に合わせて一つずつ)設けられている。
【0052】
キャリア部C1,C2の間には、後工程において個片の圧着端子STの筒状の圧着部Taを成す部分と、他の端子との接続部分となる箱状のコネクタ部Tbとが形成されている。
【0053】
図2(c)は、二次プレスとして、曲げ加工を施すことによって、図2(c)に示す連鎖端子T2が形成される。この連鎖端子T2では、キャリア部C2は除去されており、キャリア部C1のみを有する状態となる。
【0054】
また、圧着部Taとコネクタ部Tbとは、曲げ加工により、図3に示すように、それぞれ筒状と箱状に形成された状態となる。この状態において、圧着部Taは、筒状の曲げ加工した部分にできる突き合わせ界面Tcが形成される。なお、曲げ加工により、圧着部の形状を段差管構造にしてもよい。
【0055】
レーザ溶接機30は、連鎖端子T1の曲げ加工した部分にできる突き合わせ界面Tcを、レーザ溶接により接合して電線接続部にする装置である。具体的には、図3の斜視図にそのイメージを示すように、端子Tにおける円筒状に曲げ加工された圧着部Taの上端部において、軸方向に向かって形成される突き合わせ界面Tcを、レーザ溶接する。
【0056】
さらに、圧着部Taのコネクタ部Tbとの接続部分を押し潰して接続部Tcを形成し、この部分に導体部分への水の侵入を抑制するためにレーザ溶接を行い封止する。なお、ここでは、連鎖端子Tの曲げ加工した部分に突き合わせた例を用いているが、本実施形態では、曲げ加工した部分がオーバーラップしている場合においても、レーザ溶接して接合することが可能である。
【0057】
レーザ加工性検査機40は、レーザ溶接された連鎖端子Tの加工性の検査を行う装置である。具体的には、レーザ溶接機30においてレーザ溶接された突き合わせ界面Tcにおける溶接具合について、CCDカメラ等の撮像手段により、溶接位置の軸方向での位置ずれ量やビード幅が許容範囲内かを判定するものである。
【0058】
なお、プレス機20とレーザ溶接機30との間の搬送路では、連鎖端子Tにたるみを持たせて搬送している。また、同様に、レーザ溶接機30とレーザ加工性検査機40との間の搬送路においても、連鎖端子Tにたるみを持たせて搬送している。
【0059】
これは、プレス機20とレーザ溶接機30、レーザ溶接機30とレーザ加工性検査機40の処理タイミングにずれが生じるためであり、これを、工程間の連鎖端子Tのたるみによって吸収するためである。
【0060】
巻取りロール50は、巻出しロール10と同様の速度で、連鎖端子Tの巻き取りを行う機構である。なお、巻取りロール50においても、巻出しロール10と同様に、前工程のレーザ溶接機30又はレーザ加工性検査機40において、連鎖端子Tがレーザ加工又は検査処理のタイミングに合わせて間欠的に搬送されるため、図1で示すように、巻取りロール50とレーザ加工性検査機40との間には、連鎖端子Tに一定のたるみを持たせて、間欠搬送と連続搬送との搬送タイミングの相違を吸収するようにしている。
【0061】
なお、上述のように、説明の便宜上、レーザ溶接機30とレーザ加工性検査機40とを別の装置として分けて構成する例を示しているが、レーザ溶接機30の中にレーザ加工性検査機40の機能を組み込むことも可能である。すなわち、レーザ溶接機30内において、レーザ加工部70が設けられた下流側であって連鎖端子Tの搬送路上に、画像検査カメラを設けることにより、実現可能である。
【0062】
制御装置60は、プレス機20におけるプレス成型と、レーザ溶接機30におけるレーザ加工とを一連の工程として実施するために、主としてレーザ溶接機30の動作を制御するためのものである。
【0063】
[1−2.レーザ溶接機と制御装置の具体的構成]
上述のように、プレス機20におけるプレス成型と、レーザ溶接機30におけるレーザ加工とを一連の工程として実施するためのレーザ溶接機30と制御装置60の具体的構成として、図4に示すように、以下のような構成を有する。
【0064】
まず、レーザ溶接機30は、レーザ加工部70としてレーザ光源71とレーザ照射光学装置72と、送り位置決め機構80と、を有する。
【0065】
レーザ光源71は、公知のファイバレーザであり、希土類元素を添加した石英光ファイバをレーザ媒体に使用して近赤外領域の波長のレーザ光を発振する。ファイバレーザは、連続発振、パルス発振、QCW発振、又はパルス制御された連続発振によって照射されてもよい。また、ファイバレーザはシングルモードまたはマルチモードファイバレーザでも構わない。また、ファイバレーザ溶接に代えて、YAGレーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ等のレーザビーム、又は電子ビームを用いてもよい。レーザ照射光学装置72は、レーザ光源71から出力されたレーザ光を圧着端子STに導くための光学装置であり、本実施形態では、ガルバノスキャナを用いる。
【0066】
送り位置決め機構80は、連鎖端子Tを、連鎖端子T上に並んでいる各圧着端子STの間隔Lに相当する一定のピッチで間欠的に送るか、又は所定の速度で送ることにより、各圧着端子STを溶接加工位置に順次供給する機構を備える。
【0067】
なお、本実施形態のレーザ溶接機30では、上述のように、圧着部Taは、筒状に曲げ加工した板材両端を突き合わせた突き合わせ界面Tcをレーザ溶接などで接合するだけでなく、コネクタ部Tb側の端部に、筒状に曲げ加工した板材を板状に押し潰した重ね合わせ部を形成し、この重ね合わせ部がレーザ溶接して封止部Tdを形成することも可能である。具体的に、封止部Tdは、1枚の板材を折り曲げることで見かけ上2枚の板材を重ね合わせた重ね合わせ部の長手方向の中間を端子幅方向に溶接することで形成される。
【0068】
また、レーザ光源71には、上述のようなファイバレーザを用いる場合に限らず、レーザ加工ヘッドを用い、そのレーザ加工ヘッド自体をXY方向(水平方向)に移動させることにより、レーザ光LBを掃引することも可能である。
【0069】
制御装置60は、プレス時間検出手段61と、位置決め加工時間演算手段62と、送り位置決め時間設定手段63と、加工条件設定手段64と、を備える。
【0070】
プレス時間検出手段61は、プレス機20における一個あたりの連鎖端子Tに対する打ち抜き又は曲げ加工の一工程に要する時間を検出するものである。
【0071】
位置決め加工時間演算手段62は、送り位置決め機構80が連鎖端子T一個を溶接加工位置に送り、当該連鎖端子Tにレーザ溶接を行い、レーザ溶接が終了してから次に溶接される連鎖端子Tを溶接加工位置まで搬送し位置決めするまでのインデックスタイム(搬送時間と位置決め時間の和)と、連鎖端子T一個に対するレーザ溶接に要する時間(以下、単に「レーザ加工時間」という。)を演算する手段である。
【0072】
なお、上記の例では、溶接加工位置に搬送する圧着端子STを一個ずつ搬送して処理する例を示しているが、ここでは、複数個の圧着端子STを送り位置決めし、この複数個の圧着端子に対して一括して溶接処理することも可能である。
【0073】
送り位置決め時間設定手段64は、演算された送り位置決め時間を、送り位置決め機構80に対して設定する手段である。送り位置決め機構80は、この設定された時間に基づいて制御される。また、加工条件設定手段65は、レーザ加工時間をレーザ溶接機30に入力する手段である。レーザ溶接機30は、この設定された時間に基づいて制御される。
【0074】
[1−3.クランプ装置の構成]
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る被加工対象物保持装置(以下、クランプ装置という。)について説明する。本発明の第1実施形態に係るクランプ装置は、上述したレーザ溶接機30において、連鎖端子T2(図2(c)参照)の突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際に連鎖端子T2を保持する装置である。
【0075】
なお、図5(a)は、本発明の第1実施形態に係る連鎖端子の圧着部のスプリングバックを説明するための図である。図5(b)は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置による連鎖端子の突き合わせ界面の圧接を説明するための図である。
【0076】
また、図6(a)及び図6(b)は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置により圧着部を挟み込む前の状態を示す図である。図6(c)は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置により圧着部の突き合わせ界面を圧接した状態を示す図である。
【0077】
まず、図5(a)及び図5(b)を参照して、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置による連鎖端子T2の突き合わせ界面Tcの圧接について説明する。図5(a)に示すように、上述した連続端子T2の圧着部Taは、曲げ加工を施すことで一方の端部Tdと他方の端部Teとを突き合わせて板状から筒状に形成された管状体を有している。
【0078】
このため、筒状に形成された圧着部(管状体)Taは、上述した銅条CSの材料自体の弾性により矢印A方向又は矢印B方向に変形が戻るスプリングバック等により突き合わせ界面Tcに隙間が生じ、この隙間がレーザ光LBによるレーザ溶接の際に突き合わせ界面Tcの接合品質を低下させる原因となるおそれがある。
【0079】
そこで、突き合わせ界面Tcに隙間が生じることを抑制するため、本発明の実施形態では、図5(b)に示すように、一方の端部Tdと他方の端部Teとの突き合わせ方向C及び突き合わせ方向Dから圧着部Taに外力を与えることにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させる。
【0080】
次に、図6(a)から図6(c)を参照して、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させるためのクランプ装置(被加工対象物保持装置)について説明する。本発明の第1実施形態では、クランプ装置(被加工対象物保持装置)90により、突き合わせ方向C及び突き合わせ方向Dから圧着部Taに外力を加えて圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させて突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0081】
具体的には、このクランプ装置90は、圧着部Taを挟み込む右クランプ治具91a及び左クランプ治具92bと、右クランプ治具91aと左クランプ治具92bとを移動するエアチャック92と、エアチャック92を上下に移動する上下機構93と、エアチャック92を支持する支持体94とから略構成されている。
【0082】
上記のように構成されたクランプ装置90は、図6(a)に示すように、円筒状に曲げ加工された圧着部Taの突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際、図6(b)に示すように、上下機構93により支持体94を矢印E方向へ上昇させて右クランプ治具91aと左クランプ治具91bとを圧着部Taの外周に位置させる。
【0083】
つまり、右クランプ治具91aと左クランプ治具91bとを圧着部Taの外周に位置させることにより、右クランプ治具91aと左クランプ治具91bとで圧着部Taを挟み込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接可能とする。
【0084】
次に、図6(c)に示すように、エアチャック92により右クランプ治具91aを矢印C方向、左クランプ治具91bを矢印D方向へ移動させることにより、右クランプ治具91a及び左クランプ治具91bを圧着部Taの外周に当接させる。
【0085】
そして、右クランプ治具91aと左クランプ治具91bとにより左右から挟み込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。
【0086】
一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接すると、突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを照射して突き合わせ界面Tcをレーザ溶接する。このレーザ溶接が終了すると、エアチャック92により右クランプ治具91aと左クランプ治具とを矢印C方向又は矢印D方向と反対方向へ移動して圧着部Taから離脱する。
【0087】
また、上下機構93により支持体94を矢印E方向と反対方向へ下降させて右クランプ治具91aと左クランプ治具92bとを図6(a)に示す位置へ戻す。そして、図6(b)及び図6(c)に示すように、次にレーザ溶接する連鎖端子T2の圧着部Taを挟み込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接し、これを繰り返すことにより複数の連鎖端子T2の突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0088】
[1−4.作用効果]
以上のような本発明の第1実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)90は、被加工対象物(連鎖端子T2)の形状を保持する被加工対象物保持装置であって、板状の被加工対象物を筒体に曲げ加工し、曲げ加工された前記筒体における一方の端部Tdと他方の端部Teとを接合して管状体(圧着部Ta)を形成する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させて筒体を保持する保持手段(右クランプ治具91a、左クランプ治具91b)を備える。
【0089】
また、本発明の第1実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)90は、筒体(連鎖端子T2)を挟み込む一対の保持治具(右クランプ治具91a、左クランプ治具91b)を有し、一対の保持治具で筒体の側方向(矢印C方向及び矢印D方向)から筒体を挟み込むことで一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させる。
【0090】
本発明の第1実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)90によれば、突き合わせ界面Tcを接合する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて管状体(圧着部Ta)を保持するため、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消してレーザ溶接による突き合わせ界面Tcの接合品質を向上することができる。
【0091】
また、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消するため、プレス加工の精度にとらわれず、突き合わせ界面Tcを溶接することができる。
【0092】
さらに、右クランプ治具91a及び左クランプ治具91bにより横方向(矢印C方向及び矢印D方向)から圧着部Taを挟み込むため、右クランプ治具91a及び左クランプ治具91bにより圧着部Taを挟み込む際や離脱する際、キャリア部C1(図2(d)参照)と圧着部Taとを接続するくびれ部が折れる等の欠陥が生ずることがない。このため、連鎖端子T(図3参照)の品質の低下を抑制することができる。
【0093】
[2.第2の実施形態]
[2−1.クランプ装置の構成]
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)について説明する。なお、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置と略同様の構成等を有するため、同様の構成に関しては、説明を省略するものとする。また、第1実施形態に係るクランプ装置と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0094】
なお、図7(a)は、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置により圧着部を上から押え込む前の状態を示す図である。図7(b)は、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置により圧着部を上から押え込み突き合わせ界面を圧接した状態を示す図である。
【0095】
また、図8(a)は、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置により圧着部を下から押え込む前の状態を示す図である。図8(b)は、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置により圧着部を下から押え込み突き合わせ界面を圧接した状態を示す図である。
【0096】
本発明の第2実施形態に係るクランプ装置は、第1実施形態に係るクランプ装置と同様に、上述したレーザ溶接機30において、連鎖端子T2(図2(c)参照)の突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際に連鎖端子T2を保持する装置である。
【0097】
そして、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置により、一方の端部Tdと他方の端部Teとの突き合わせ方向C及び突き合わせ方向D(図6(c)参照)から圧着部Taに外力を加えることにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させる。
【0098】
図7(a)及び図7(b)に示すように、本発明の第2実施形態に係るクランプ装置290は、突き合わせ方向に直交する矢印F方向に移動可能な上クランプ治具291aと、上クランプ治具291aに形成されて圧着部Taを押え込む上クランプ凹部292aと、上クランプ治具291aに形成された貫通孔293とから略構成されている。
【0099】
上クランプ凹部292aは、上クランプ治具291aで圧着部Taを挟み込んだ際に、圧着部Taの半周に亘って挟み込むことが可能なように半円形状に形成されている。
【0100】
上記のように構成されたクランプ装置290は、図7(b)に示すように、円筒状に曲げ加工された圧着部Taの突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際、上クランプ治具291aに形成された上クランプ凹部292aを圧着部Taの外周に位置させる。
【0101】
つまり、上クランプ治具291aを矢印F方向に移動することにより、上クランプ凹部292aを圧着部Taの外周に位置させることで上クランプ治具291aと上述したガイド21とで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接可能とする。
【0102】
そして、さらに、上クランプ治具291aを矢印F方向に移動して上クランプ治具291aとガイド21とで圧着部Taを押え込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。
【0103】
一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接すると、貫通孔293から突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを照射して突き合わせ界面Tcをレーザ溶接する。このレーザ溶接が終了すると、上クランプ治具291aを矢印F方向と反対方向へ移動して圧着部Taから離脱する。具体的には、図7(C)の断面図に示すように、ガイド21には、連鎖端子Tの長手方向両端にキャリア部C1及びコネクタ部Tbをそれぞれ包み込む凹部21a、21bが形成されている。凹部21a、21bがキャリア部C1及びコネクタ部Tbをそれぞれ包み込むことにより、連鎖端子Tの浮き上がりを防止して、上クランプ治具291aを、矢印F方向と反対方向へ移動して圧着部Taから確実に離脱することができる。
【0104】
そして、上クランプ治具291aにより、次にレーザ溶接する連鎖端子T2の圧着部Taを押し込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接し、これを繰り返すことにより複数の連鎖端子T2の圧着部Taの突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0105】
また、図8に示すように、圧着部Taを押し込む際、下クランプ治具291bを用いてもよい。下クランプ治具291bには、下クランプ凹部292bが形成されている。この下クランプ凹部292bは、下クランプ治具291bで圧着部Taを挟み込んだ際に、圧着部Taの半周に亘って挟み込むことが可能なように半円形状に形成されている。
【0106】
図8(a)及び図8(b)に示すように、円筒状に曲げ加工された圧着部Taの突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際、下クランプ治具291bに形成された下クランプ凹部292bを圧着部Taの外周に位置させる。
【0107】
つまり、下クランプ治具291bを矢印G方向に移動することにより、下クランプ凹部292bを圧着部Taの外周に位置させることで下クランプ治具291bとガイド21とで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接可能とする。
【0108】
そして、さらに、下クランプ治具291bを矢印G方向に移動して下クランプ治具291bとガイド21とで圧着部Taを押え込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。具体的には、図8(C)の断面図に示すように、ガイド21に形成された凹部21a、21bがキャリア部C1及びコネクタ部Tbをそれぞれ包み込むことにより、連鎖端子Tの浮き上がりを防止して、下クランプ治具291bを、矢印G方向に移動して圧着部Taを確実に押さえ込むことができる。
【0109】
一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接すると、突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを照射して突き合わせ界面Tcをレーザ溶接する。このレーザ溶接が終了すると、下クランプ治具291bを矢印G方向と反対方向へ移動して圧着部Taから離脱する。具体的には、図8(C)の断面図に示すように、ガイド21には、キャリア部C1及びコネクタ部Tbをそれぞれ包み込む凹部21a、21bと、下クランプ治具291bが圧着部Ta表面に着脱可能な隙間21cが形成されている。ガイド21が図8(C)に示すような構造を有するので、下クランプ治具291bが圧着部Taから離脱する際に、連続端子T2がガイド21により矢印G方向と逆方向への引っ張り力を抑制し、下クランプ治具291bを圧着部Taから確実に離脱することができる。
【0110】
そして、下クランプ治具291bにより、次にレーザ溶接する連鎖端子T2の圧着部Taを押し込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接し、これを繰り返すことにより複数の連鎖端子T2の圧着部Taの突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0111】
[2−2.作用効果]
以上のような本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)290は、被加工対象物(連鎖端子T2)の形状を保持する被加工対象物保持装置であって、板状の被加工対象物を筒体に曲げ加工することにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを接合して管状体(圧着部Ta)を形成する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させて筒体を保持する保持手段を備え、保持手段は、筒体を挟み込む保持治具(上クランプ治具291a又は下クランプ治具291b)と、保持治具よって筒体にかかる上下方向の外力を左右方向へ変換する外力方向変換部(上クランプ凹部292a、下クランプ凹部292b)と、を有し、保持治具で筒体の上方向又は下方向から筒体を挟み込むことで外力方向変換部により上下方向の外力を左右方向(図5の矢印C方向及び矢印D方向)の外力へ変換し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させる。
【0112】
また、本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)290は、外力方向変換部は、保持治具(上クランプ治具291a又は下クランプ治具291b)に形成され筒体を挟み込む凹部(上クランプ凹部292a、下クランプ凹部292b)からなり、凹部に筒体が挟み込まれることにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させる。
【0113】
さらに、本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)290は、一方の端部Tdと他方の端部Teとはレーザ光LBが照射されて溶接接合され、レーザ光が照射される側の保持治具(上クランプ治具291a)には、レーザ光LBが通過する貫通孔293が形成されている。
【0114】
本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)290によれば、突き合わせ界面Tcを接合する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて管状体(圧着部Ta)を保持するため、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消してレーザ溶接による突き合わせ界面の接合品質を向上することができる。
【0115】
また、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消するため、プレス加工の精度にとらわれず、突き合わせ界面Tcを溶接することができる。
【0116】
さらに、保持治具(上クランプ治具291a)には、突き合わせ界面Tcの接合方向に貫通孔293が形成されているため、突き合わせ界面Tcへのレーザ光LBを照射する際に保持治具が邪魔になることがない。
【0117】
また、上クランプ治具291a又は下クランプ治具291bとガイド21とで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させるため、プレス成型等の際にキャリア部C1に対して連鎖端子T2が図7及び図8に示す矢印F方向又は矢印G方向に曲がった場合でも圧着部Taを押え込むことにより曲がりを矯正して、連鎖端子T2をキャリア部C1に対して水平に保つことができる。
【0118】
このようにして、本発明の第2実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)290によれば、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消ししつつ、キャリア部C1に対する連鎖端子T2の曲がりを矯正することができる。
【0119】
なお、クランプ装置290は、図9(a)に示すような上クランプ治具295aと、上クランプ治具295aに形成されて圧着部Taを押え込む略ハ字型部296aと、上クランプ治具295aに形成された貫通孔293とから構成してもよい。略ハ字型部296aは、上クランプ治具295aで圧着部Taを挟み込んだ際に、圧着部Taにおける左側及び右側の二点(当接点297L、297R)と当接しながら挟み込むことが可能なように略ハの字型に形成されている。ここで、当接点297Lと圧着部Taの中心点とを結ぶ線と、突き合わせ界面Tcと圧着部Taの中心点とを結ぶ線と、が交差する角度θLを、0<θL<90度の範囲にすることが、隙間を確実に解消する観点から好ましい。また、当接点297Rと圧着部Taの中心点とを結ぶ線と、突き合わせ界面Tcと圧着部Taの中心点とを結ぶ線と、が交差する角度θRを、0<θR<90度の範囲にすることが、隙間を確実に解消する観点から好ましい。上記のように構成されたクランプ装置290も、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消することができる。
【0120】
また、クランプ装置290は、図9(b)に示すような下クランプ治具295bと、下クランプ治具295bに形成されて圧着部Taを押え込む略ハ字型部296bとから構成してもよい。略ハ字型部296bは、下クランプ治具295bで圧着部Taを挟み込んだ際に、圧着部Taにおける左側及び右側の二点と当接しながら挟み込むことが可能なように略ハの字型に形成されている。上記のように構成されたクランプ装置290も、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消することができる。
【0121】
[3.第3の実施形態]
[3−1.クランプ装置の構成]
次に、図10を参照して、本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)について説明する。なお、本発明の第3実施形態に係るクランプ装置は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置と略同様の構成等を有するため、同様の構成に関しては、説明を省略するものとする。また、第1実施形態に係るクランプ装置と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0122】
なお、図10(a)は、本発明の第3実施形態に係るクランプ装置により圧着部を挟み込む前の状態を示す図である。図10(b)は、本発明の第3実施形態に係るクランプ装置により圧着部を挟み込み突き合わせ界面を圧接した状態を示す図である。
【0123】
本発明の第3実施形態に係るクランプ装置は、第1実施形態に係るクランプ装置と同様に、上述したレーザ溶接機30において、連鎖端子T2(図2(c)参照)の突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際に連鎖端子T2を保持する装置である。
【0124】
そして、本発明の第3実施形態に係るクランプ装置により、一方の端部Tdと他方の端部Teとの突き合わせ方向C及び突き合わせ方向D(図6(c)参照)から圧着部Taに外力を加えることにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させる。
【0125】
図10(a)及び図10(b)に示すように、本発明の第3実施形態に係るクランプ装置390は、突き合わせ方向に直交する矢印F方向に移動可能な上クランプ治具391aと、突き合わせ方向に直交する矢印G方向に移動可能な下クランプ治具391bと、上クランプ治具391a及び下クランプ治具391bに形成されて圧着部Taを押え込む上クランプ凹部392a及び下クランプ凹部392bと、上クランプ治具391aに形成された貫通孔393とから略構成されている。
【0126】
上クランプ凹部392a及び下クランプ凹部392bは、上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを挟み込んだ際に、圧着部Taの全周に亘って挟み込むことが可能なように半円形状に形成されている。
【0127】
また、上クランプ凹部392aは、圧着部Taを押え込む際、下クランプ凹部392bが圧着部Taを押え付ける力よりも緩くなるように下クランプ凹部392bよりも若干大きい半円形状が形成されている。
【0128】
上記のように構成されたクランプ装置390は、図10(b)に示すように、円筒状に曲げ加工された圧着部Taの突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際、上クランプ治具391aに形成された上クランプ凹部392aと、下クランプ治具391bに形成された下クランプ凹部392bとを圧着部Taの外周に位置させる。
【0129】
つまり、上クランプ治具391aを矢印F方向へ、下クランプ治具391bを矢印G方向へ移動することにより、上クランプ凹部392aと下クランプ凹部392bとを圧着部Taの外周に位置させることで上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接可能とする。
【0130】
そして、さらに、上クランプ治具391aを矢印F方向へ、下クランプ治具391bを矢印G方向へ移動して、上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを押え込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。
【0131】
一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接すると、貫通孔393から突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを照射して突き合わせ界面Tcをレーザ溶接する。このレーザ溶接が終了すると、上クランプ治具391aを矢印F方向と反対方向へ、下クランプ治具391bを矢印G方向と反対方向へ移動して圧着部Taから離脱する。
【0132】
そして、上クランプ治具391a及び下クランプ治具391bにより、次にレーザ溶接する連鎖端子T2の圧着部Taを押し込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接し、これを繰り返すことにより複数の連鎖端子T2の圧着部Taの突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0133】
[3−2.作用効果]
以上のような本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)390は、被加工対象物(連鎖端子T2)の形状を保持する被加工対象物保持装置であって、板状の被加工対象物を筒体に曲げ加工することにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを接合して管状体(圧着部Ta)を形成する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させて筒体を保持する保持手段を備え、保持手段は、筒体を挟み込む保持治具(上クランプ治具391a又は下クランプ治具391b)と、保持治具よって筒体にかかる上下方向(図10の矢印F方向及び矢印G方向)の外力を左右方向(図5の矢印C方向及び矢印D方向)へ変換する外力方向変換部上クランプ凹部392a、下クランプ凹部392bと、を有し、保持治具で筒体の上方向及び下方向から筒体を挟み込むことで外力方向変換部により上下方向の外力を左右方向の外力へ変換し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させる。
【0134】
また、本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)390は、保持治具は、上方向から筒体(連鎖端子T2)を挟み込む上側保持治具(上クランプ治具391a)と、下方向から筒体を挟み込む下側保持治具(下クランプ治具391b)と、を有し、外力方向変換部は、上側保持治具及び下側保持治具にそれぞれ形成され筒体を挟み込む凹部(上クランプ凹部392a、下クランプ凹部392b)からなり、筒体が支持される支持体側に形成された凹部の方(上クランプ凹部392a)が他方の凹部(下クランプ凹部392b)よりも大きく形成されている。
【0135】
さらに、本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)390は、一方の端部Tdと他方の端部Teとはレーザ光LBが照射されて溶接接合され、保持治具(上クランプ治具391a)には、一方の端部Tdと他方の端部Teとを接合するためのレーザ光LBが通過する貫通孔393が形成されている。
【0136】
本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)390によれば、突き合わせ界面Tcを接合する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて管状体(圧着部Ta)を保持するため、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消してレーザ溶接による突き合わせ界面の接合品質を向上することができる。
【0137】
また、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消するため、プレス加工の精度にとらわれず、突き合わせ界面Tcを溶接することができる。
【0138】
さらに、圧着部Taを挟み込む上クランプ凹部392aと下クランプ凹部393aにより圧着部Taが全周に亘って挟み込まれるため、圧着部Taの突き合わせ界面Tcに隙間が生じている場合でも、突き合わせ界面Tcが強制的に圧接され、その隙間が解消される。
【0139】
また、保持治具(上クランプ治具291a)には、突き合わせ界面Tcの接合方向に貫通孔393が形成されているため、突き合わせ界面Tcへのレーザ光LBを照射する際に保持治具が邪魔になることがない。
【0140】
さらに、上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを押え込むため、クランプ治具を動かすストロークが短くなり、突き合わせ界面Tcを圧接する工程を含むレーザ加工時間の高速化を図ることができる。
【0141】
また、上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させるため、プレス成型等の際にキャリア部C1に対して連鎖端子T2(図3参照)が矢印F方向又は矢印G方向に曲がった場合でも圧着部Taを押え込むことにより曲がりを矯正して、連鎖端子T2をキャリア部C1に対して水平に保つことができる。
【0142】
さらに、上クランプ凹部392aは、下クランプ凹部392bよりも若干大きい半円形状に形成されているため、上クランプ治具391aが圧着部Taから離脱する際に連続端子T2と干渉することによる傷等が生じることによる連鎖端子T2の品質の低下を抑制することができる。
【0143】
また、下クランプ治具391bが圧着部Taから離脱する際は、連続端子T2がガイド21により矢印F方向への引っ張り力を抑制するため、下クランプ治具391bが圧着部Taから離脱しやすくなる。
【0144】
このようにして、本発明の第3実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)390によれば、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消ししつつ、キャリア部C1に対する連鎖端子T2の曲がりを矯正することができる。そして、さらに、圧着部Taから離脱する際に圧着部Taから離脱し易くすることができる。
【0145】
なお、第3の実施形態の変形例に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)395として次のような構成を採用してもよい。すなわち、クランプ装置395は、図11(a)に示すような、上クランプ治具396aと、上クランプ治具396aに形成されて圧着部Taを押え込む略ハ字型部297aと、上クランプ治具396aに形成された貫通孔398と、下クランプ治具396abと、下クランプ治具396aに形成されて圧着部Taを押え込む略ハ字型部397bと、から構成してもよい。略ハ字型部397a、367bは、図11(b)に示すように、上クランプ治具396aと下クランプ治具396aとで圧着部Taを挟み込んだ際に、それぞれ圧着部Taにおける左側及び右側の二点と当接しながら挟み込むことが可能なように略ハの字型に形成されている。上記のように構成されたクランプ装置395も、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消することができる。
【0146】
[4.第4の実施形態]
[4−1.クランプ装置の構成]
次に、図12を参照して、本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)について説明する。なお、本発明の第4実施形態に係るクランプ装置は、本発明の第1実施形態に係るクランプ装置と略同様の構成等を有するため、同様の構成に関しては、説明を省略するものとする。また、第1実施形態に係るクランプ装置と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0147】
なお、図12(a)は、本発明の第4実施形態に係るクランプ装置により圧着部を挟み込む前の状態を示す図である。図12(b)は、本発明の第4実施形態に係るクランプ装置により圧着部を挟み込み突き合わせ界面を圧接した状態を示す図である。
【0148】
本発明の第4実施形態に係るクランプ装置は、第1実施形態に係るクランプ装置と同様に、上述したレーザ溶接機30において、連鎖端子T2(図2(c)参照)の突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際に連鎖端子T2を保持する装置である。
【0149】
そして、本発明の第4実施形態に係るクランプ装置により、一方の端部Tdと他方の端部Teとの突き合わせ方向C及び突き合わせ方向D(図6(c)参照)から圧着部Taに外力を加えることにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させる。
【0150】
図12(a)及び図12(b)に示すように、本発明の第4実施形態に係るクランプ装置490は、突き合わせ方向に直交する矢印F方向に移動可能な上クランプ治具491aと、突き合わせ方向に直交する矢印G方向に移動可能な下クランプ治具491bと、上クランプ治具491aに形成された貫通孔493とから略構成されている。
【0151】
上クランプ治具491aは、一対の固定片494a、494bを有している。また、下クランプ治具491bは、一対の可動片495a、495bと、弾性変形により一対の可動片495a、495bを所定の方向にそれぞれ移動可能な弾性部材496a、496bとを有している。
【0152】
また、一対の固定片494a、494bは、固定片傾斜部497a、497bを有し、一対の可動片495a、495bは、可動片傾斜部498a、498bを有している。この固定片傾斜部497aと可動片傾斜部498a、固定片傾斜部497bと可動片傾斜部498bは、それぞれ当接可能に形成されている。
【0153】
一対の固定片傾斜部497a、497bは、上クランプ治具491aが矢印F方向へ下降する際に一対の可動片傾斜部498a、498bを横方向内側(矢印C方向及び矢印D方向(図5(b)参照))へ移動可能にそれぞれ所定の傾斜が形成されている。
【0154】
具体的には、上クランプ治具491aが矢印F方向へ移動することにより一対の固定片傾斜部497a、497bが一対の可動片傾斜部498a、498bに当接して可動片495a、495bを移動可能に構成されている。
【0155】
つまり、クランプ装置490は、上クランプ治具491aが下降することによる縦方向の力を可動片495a、495bを横方向の力へ変えることが可能な機構を有している。
【0156】
上記のように構成されたクランプ装置490は、図12(b)に示すように、円筒状に曲げ加工された圧着部Taの突き合わせ界面Tcをレーザ溶接により接合する際、上クランプ治具491aと、下クランプ治具491bとを圧着部Taの外周に位置させる。
【0157】
つまり、上クランプ治具491aを矢印F方向へ、下クランプ治具491bを矢印G方向へ移動することにより、上クランプ治具491aと下クランプ治具491bとを圧着部Taの外周に位置させることで上クランプ治具391aと下クランプ治具391bとで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接可能とする。
【0158】
また、下クランプ治具491bを矢印G方向へ移動すると、弾性部材496a、496bの弾性変形により可動片傾斜部498a、498bが圧着部Taに当接する。
【0159】
そして、さらに、上クランプ治具491aを矢印F方向へ、下クランプ治具491bを矢印G方向へ移動して、上クランプ治具491aと下クランプ治具491bとで圧着部Taを押え込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。
【0160】
また、上クランプ治具491aが矢印F方向へ下降することにより、固定片傾斜部497a、497bが可動片傾斜部498a、498bに形成された傾斜に沿って下降するため、弾性部材496a、496bの弾性変形により可動片495a、495bが横方向内側(矢印C方向及び矢印D方向(図5(b)参照))へ移動して圧着部Taを押え込む。
【0161】
このように、上クランプ治具491aを矢印F方向へ、下クランプ治具491bを矢印G方向へ移動して、上クランプ治具491aと下クランプ治具491bとで圧着部Taを押え込むことにより圧着部Taを保持し、一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接する。
【0162】
一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接すると、貫通孔493から突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを照射して突き合わせ界面Tcをレーザ溶接する。このレーザ溶接が終了すると、上クランプ治具491aを矢印F方向と反対方向へ、下クランプ治具491bを矢印G方向と反対方向へ移動して圧着部Taから離脱する。
【0163】
上クランプ治具491aが矢印G方向へ上昇することにより、固定片傾斜部497a、497bが可動片傾斜部498a、498bに形成された傾斜に沿って上昇するため、弾性部材496a、496bの弾性変形により可動片495a、495bが外側(矢印C方向及び矢印D方向と反対方向(図5(b)参照))へ移動して圧着部Taから離脱する。
【0164】
そして、上クランプ治具491a及び下クランプ治具491bにより、次にレーザ溶接する連鎖端子T2の圧着部Taを押し込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接し、これを繰り返すことにより複数の連鎖端子T2の圧着部Taの突き合わせ界面Tcの隙間を解消する。
【0165】
[4−2.作用効果]
以上のような本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)490は、被加工対象物(連鎖端子T2)の形状を保持する被加工対象物保持装置であって、板状の被加工対象物を筒体に曲げ加工することにより一方の端部Tdと他方の端部Teとを接合して管状体(圧着部Ta)を形成する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを当接させて筒体を保持する保持手段を備え、保持手段は、上下方向(矢印F方向及び矢印G方向)に移動する上下方向移動部材(上クランプ治具491a、下クランプ治具491b)と、左右方向(図5(b)の矢印C方向及び矢印D方向)に移動することで筒体を保持する保持部材(可動片495)と、上下方向移動部材の移動に伴い保持部材を移動させる移動方向変換部材(固定片494)と、を有する。
【0166】
また、本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)490は、移動方向変換部(固定片494)は、上下方向移動部材(上クランプ治具491a、下クランプ治具491b)が保持部材方向(矢印F方向及び矢印G方向)に移動することにより保持部材(可動片495)を、筒体を挟み込む方向へ移動可能とする傾斜部(固定片494の固定片傾斜部497)を備えている。
【0167】
さらに、本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)490は、一方の端部Tdと他方の端部Teとはレーザ光LBが照射されて溶接接合され、レーザ光LBが照射される側の上下方向移動部材(上クランプ治具491a)には、レーザ光LBが通過する貫通孔498が形成されている。
【0168】
本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)490によれば、突き合わせ界面Tcを接合する間、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて管状体(圧着部Ta)を保持するため、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消してレーザ溶接による突き合わせ界面の接合品質を向上することができる。
【0169】
また、一方の端部Tdと他方の端部Teとを圧接させて突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消するため、プレス加工の精度にとらわれず、突き合わせ界面Tcを溶接することができる。
【0170】
さらに、上クランプ治具491aが矢印F方向へ下降することにより、可動片495a、495bが横方向内側(矢印C方向及び矢印D方向(図5(b)参照))へ移動して圧着部Taを押え込むため、上クランプ治具491aが圧着部Taを強く抑え込む必要がなく、上クランプ治具491aが圧着部Taから離脱しやすくなる。
【0171】
また、上クランプ治具491aが圧着部Taから離脱する際、固定片傾斜部497a、497bが可動片傾斜部498a、498bに形成された傾斜に沿って上昇するため、弾性部材496a、496bの弾性変形により可動片495a、495bが外側(矢印C方向及び矢印D方向と反対方向(図5(b)参照))へ移動して連鎖端子T2に外力が加わらないため、連鎖端子T2に等が生じることによる連鎖端子T2の品質の低下を抑制することができる。
【0172】
さらに、保持治具(上クランプ治具491a)には、突き合わせ界面Tcの接合方向に貫通孔493が形成されているため、突き合わせ界面Tcへのレーザ光LBを照射する際に保持治具が邪魔になることがない。
【0173】
また、上クランプ治具491aと下クランプ治具491bとで圧着部Taを押え込んで一方の端部Tdと他方の端部Teとを強制的に圧接させるため、プレス成型等の際にキャリア部C1に対して連鎖端子T2(図3参照)が矢印F方向又は矢印G方向に曲がった場合でも圧着部Taを押え込むことにより曲がりを矯正して、連鎖端子T2をキャリア部C1に対して水平に保つことができる。
【0174】
このようにして、本発明の第4実施形態に係る被加工対象物保持装置(クランプ装置)490によれば、突き合わせ界面Tcに生じる隙間を解消ししつつ、キャリア部C1に対する連鎖端子T2の曲がりを矯正することができる。そして、さらに、圧着部Taから離脱する際に圧着部Taから離脱し易くすることができる。
【0175】
以上、本発明の被加工対象物保持装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0176】
本発明が適用される被加工対象物保持装置は、プレス成形された端子の突き合せ界面に隙間がない場合にも、溶接品質が安定した端子を多量に製造することができる点で好ましい。具体的には、端子製造時にプレス機からレーザ溶接機に連続して端子を送る場合には、レーザ溶接はプレス機から送り出される速度に合わせなければならない。つまり、非常に速い速度で端子が流れてくるにもかかわらず、非常に高い位置精度で、突き合わせ界面を固定することが求められる。この点、本発明が適用される被加工対象物保持装置は、高速で流れる端子の突き合わせ界面Tcを精度よく固定できるため、プレス成形された端子の突き合せ界面に隙間が生じるか否かを問わず、溶接品質が安定した端子を多量に製造することができる。
【0177】
また、本実施形態では、連鎖端子T1の曲げ加工した部分にできる突き合わせ界面Tcを、レーザ溶接により接合する場合について説明したが、これに限定されず、他の溶接方法及び接合方法であってもよい。
【0178】
また、本実施形態では、クランプ装置90、290、390、395、490により一方の端部と他方の端部を圧接させた突き合せ界面を溶接する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、突き合わせ界面に限らず一方の端部を他方の端部に重ね合わせるようにクランプ装置90、290、390、395、490により保持して溶接してもよい。
【0179】
以上のように、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えても、本発明の実施形態に係るクランプ装置90、290、390、395、490と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0180】
1 端子製造装置
20 プレス機
30 レーザ溶接機
40 レーザ加工性検査機
50 巻取りロール
60 制御装置
70 レーザ加工部
80 送り位置決め機構
90 クランプ装置(第1実施形態)
91a 右クランプ治具(第1実施形態)
91b 左クランプ治具(第1実施形態)
290 クランプ装置(第2実施形態)
291a 上クランプ治具(第2実施形態)
291b 下クランプ治具(第2実施形態)
292a 上クランプ凹部(第2実施形態)
292b 下クランプ凹部(第2実施形態)
293 貫通孔(第2実施形態)
390 クランプ装置(第3実施形態)
395 クランプ装置(第3実施形態)
391a 上クランプ治具(第3実施形態)
396a 上クランプ治具(第3実施形態)
391b 下クランプ治具(第3実施形態)
396b 下クランプ治具(第3実施形態)
392a 上クランプ凹部(第3実施形態)
397a 上クランプ凹部(第3実施形態)
392b 下クランプ凹部(第3実施形態)
397b 下クランプ凹部(第3実施形態)
393 貫通孔(第3実施形態)
398 貫通孔(第3実施形態)
490 クランプ装置(第4実施形態)
491a 上クランプ治具(第4実施形態)
491b 下クランプ治具(第4実施形態)
492a 上クランプ凹部(第4実施形態)
492b 下クランプ凹部(第4実施形態)
493 貫通孔(第4実施形態)
494 固定片(第4実施形態)
495 可動片(第4実施形態)
496 弾性部材(第4実施形態)
497 固定片傾斜部(第4実施形態)
498 固定片傾斜部(第4実施形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12