【実施例】
【0041】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。また、特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量百分率を示す。実施例中の分析方法、測定方法は以下の通りである。
【0042】
エポキシ当量:JIS K7236に準じた。
フェノール性水酸基当量:4%のメタノールを含むテトラヒドロフラン(以下THFと記す)で試料を溶解し、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを加えて、紫外可視分光光度計を用いて波長400nmから250nm間の吸光度を測定した。あらかじめ同様の測定方法で求めておいた検量線より、フェノール性水酸基を水酸基1当量当たりの試料の重量として求めた。
不揮発分:JIS K7235−1986
数平均分子量、重量平均分子量、分散:カラムとして東ソー製G−2000HXL、G−3000HXL、G−4000HXLを直列に接続したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)を用い、溶離液としてTHFを流量1.0ml/minで測定した。標準ポリスチレンより求めた検量線により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。分散は重量平均分子量を数平均分子量で除して求めた。
リン含有フェノール化合物の残存率:ハイパフォーマンスリキッドクロマトグラフィー(アジデントテクノロジー社製 HP1200)のCadenza CD−C18(150×4.6mm Prod♯ CD005)を用い、酸性溶媒(水:酢酸:酢酸アンモニウム=395:5:1)とTHF/アセトニトリル溶媒(1:1)を用いて、流量0.7ml/minでTHF/アセトニトリル溶媒が0分から15分間で40%から80%となるよう濃度勾配を掛けてリン含有フェノール化合物の面積%を測定し、あらかじめ標準のリン含有フェノール化合物を用いて測定した検量線より試料中の百分率を算出した。
リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン原子含有量を試料中の百分率で表した。
ワニス粘度:回転粘度計(トキメック社製)を用いて25℃での粘度を測定した。
溶剤溶解性:得られた樹脂溶液を目視で確認し、結晶、又は濁りがあるものを×で示した。更に樹脂溶液を25℃で7日間放置し、結晶、濁りが出たものを△、結晶、濁りが出なかったものを○で表1に示した。
組成物リン含有率:配合したリン含有エポキシ樹脂のリン含有率から計算によって求めた。
Tg:示差走査熱量測定装置(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製 DSC6100)を用いる。得られたリン含有組成物の硬化物を10℃/minで測定を行った。
難燃性試験:UL94規格に準じて測定を行った。
剥離強さ:JIS K6854−1準じて測定を行った。
【0043】
実施例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラス
コ実験装置に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10
−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA、リン含有量14.2重量%)99部及び1,4−ナフトキノン(川崎化成工業株式会社製 )71部、トルエン361部を入れ、75℃で30分間撹拌した後、系内の水分を除きながら110℃で90分間反応させた後、トルエンを除いて10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−NQ)を得た。これにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名YDPN-638、エポキシ当量176g/eq.)を531部、触媒としてトリス(2.6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(以下DMPPと記す)0.01部を加え165℃で3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMと記す)78部を加え、還流温度以下で2時間反応させた。その後、PGM43部、メチルエチルケトン(以下MEKと記す)179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1100mPa・s、実際に測定したエポキシ当量297g/eq.、フェノール性水酸基当量2800g/eq.、リン含有量2.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量3514、数平均分子量825、分散は4.26であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.29当量、理論エポキシ当量は332g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は89%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0044】
実施例2
HCAを123部、1,4−ナフトキノンを88部、YDPN−638を488部、触媒としてDMPP0.02部、反応を165℃で3.5時間、PGMを加えた後の反応時間を3時間とした以外は実施例1と同様な操作を行った。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度3700mPa・s、実際に測定したエポキシ当量359g/eq.、フェノール性水酸基当量2100g/eq.、リン含有量2.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量6986、数平均分子量1017、分散は6.87であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.40当量、理論エポキシ当量は432g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は83%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。貯蔵安定性試験として、得られた樹脂を50℃オーブン中で150日間保存し、分子量変化を観察したところ重量平均分子量7016、数平均分子量1020、分散は6.88であった。
【0045】
実施例3
HCAを99部、1,4−ナフトキノンを71部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 商品名EPPN−501H、エポキシ当量165.2g/eq.)531部、PGMを37部、触媒としてDMPP0.01部を加えて165℃で3時間反応させた後、PGM41部加え、還流温度以下で3時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1800mPa・s、実際に測定したエポキシ当量268g/eq.、フェノール性水酸基当量2200g/eq.、リン含有量2.0%、溶剤溶解性試験では濁りが見られなかった。重量平均分子量2497、数平均分子量863、分散は2.89であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.28当量、理論エポキシ当量は305g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は88%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0046】
実施例4
HCAを74部、1,4−ナフトキノンを55部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名ESN−375、エポキシ当量167g/eq.)571部、触媒としてDMPP0.01部を加えて165℃で3時間反応させた後、PGM78部を加え、還流温度以下で3時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度600mPa・s、実際に測定したエポキシ当量218g/eq.、フェノール性水酸基当量1500g/eq.、リン含有量1.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量1995、数平均分子量692、分散2.88であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.20当量、理論エポキシ当量は254g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は86%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0047】
実施例5
実施例1と同様にHCAを74部、1,4−ナフトキノンを53部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名ESN−485、エポキシ当量294g/eq.)573部、PGM37部、触媒としてDMPP0.01部を加えて165℃で2.5時間反応させた後、PGM41部加え、還流温度以下で2時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度880mPa・s、実際に測定したエポキシ当量463g/eq.、フェノール性水酸基当量2900g/eq.、リン含有量1.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量1515、数平均分子量753、分散2.01であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.34当量、理論エポキシ当量は551g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は84%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0048】
実施例6
実施例1と同様にHCAを148部、1,4−ナフトキノンを106部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名YDF−170、エポキシ当量170g/eq.)446部、触媒としてDMPP0.02部を加えて165℃で2時間反応させた後、PGM37部加えて2時間反応後、PGM58部、MEK138部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分75%、ワニス粘度350mPa・s、実際に測定したエポキシ当量342g/eq.、フェノール性水酸基当量900g/eq.、リン含有量3.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量825、数平均分子量434、分散1.90であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.51当量、理論エポキシ当量は551g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は62%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0049】
実施例7
実施例1と同様な実験装置に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA−HQ)を220部とYDF−170を481部加え、触媒としてDMPP0.04部を加えて165℃で1.5時間反応させた後、PGM78部を加えて2時間反応後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度500mPa・s、実際に測定したエポキシ当量308g/eq.、フェノール性水酸基当量1200g/eq.、リン含有量3.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量1153、数平均分子量612、分散1.88であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.48当量、理論エポキシ当量は474g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は65%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0050】
実施例8
実施例1と同様にHCAを123部、1,4−ナフトキノンを88部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDPN−638を488部、触媒としてトリ-パラ-トリルホスフィン0.01部とトリス(パラ-ターシャリーブトキシフェニル)ホスフィンを0.01部加えて165℃で3時間反応させた後、PGM78部を加え、還流温度以下で3時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度3800mPa・s、実際に測定したエポキシ当量376g/eq.フェノール性水酸基当量2900g/eq.、リン含有量2.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量7256、数平均分子量985、分散7.37であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.40当量、理論エポキシ当量は432g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は87%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0051】
実施例9
触媒をトリ-2,4-キシリルホスフィン0.02部とした以外は実施例8と同様な配合とし、165℃で3.5時間反応させた後、PGM78部を加え、還流温度以下で3時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度3800mPa・s、実際に測定したエポキシ当量369g/eq.フェノール性水酸基当量2500g/eq.、リン含有量2.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量7448、数平均分子量996、分散は7.48であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.40当量、理論エポキシ当量は432g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は85%であった。表1に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0052】
実施例10〜実施例14、実施例17、実施例18
実施例で得られたリン含有エポキシ樹脂にBRG−557(群栄化学工業製 フェノールノボラック硬化剤 活性水素当量105g/eq.)と硬化促進剤を表2に示す固形分量で配合し、PGM/MEKに溶解させ不揮発分50%のエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物をガラスクロス(WEA 116E106S136 日東紡績株式会社製 厚み0.1mm)に含浸し、150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
【0053】
実施例15、実施例16、実施例19
実施例で得られたリン含有エポキシ樹脂及びYDCN−704(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)に硬化剤としてジシアンジアミド(DICY 活性水酸基当量21g/eq.)と硬化促進剤を表2に示す固形分量で配合し、PGM/MEKに溶解させ不揮発分50%のエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物をガラスクロス(WEA 116E106S136 日東紡績株式会社製 厚み0.1mm)に含浸し、150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+170℃×70分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
【0054】
比較例1
HCAを99部、1,4−ナフトキノンを71部、YDPN−638を531部、触媒としてDMPPの代わりにトリフェニルホスフィン(以下TPPと記す)0.02部を加えた以外は実施例1と同様な操作を行い、反応温度160℃で5時間反応させた後、PGM78部で希釈した後、還流温度で11時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度41900mPa・s、実際に測定したエポキシ当量325g/eq.、フェノール性水酸基当量10000g/eq.以上、リン含有量2.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量14495、数平均分子量1316、分散は11.01であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基当量は0.29当量、理論エポキシ当量は328g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は99%であった。表3に合成条件とエポキシ樹脂の性状を示す。
【0055】
比較例2
実施例1と同様にHCAを123部、1,4−ナフトキノンを88部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDPN−638を488部、触媒としてTPP0.02部を加えて反応温度160℃で4時間反応させた後、PGM78部で希釈した後、還流温度で4時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度6720mPa・s、実際に測定したエポキシ当量395g/eq.、フェノール性水酸基当量6000g/eq.、リン含有量2.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量8036、数平均分子量1056、分散は7.61であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.40当量、理論エポキシ当量は423g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は93%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
実施例2と同様の方法で貯蔵安定性試験を行い、分子量変化を観察したところ重量平均分子量9166、数平均分子量1172、分散は7.82であった。
【0056】
比較例3
実施例1と同様にHCAを123部、1,4−ナフトキノンを88部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDPN−638を488部、触媒としてTPP0.02部を加えて反応温度160℃で4時間反応させた後、PGM78部で希釈した後、還流温度で3時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度5600mPa・s、実際に測定したエポキシ当量381g/eq.、フェノール性水酸基当量3800g/eq.、リン含有量2.5%、得られたリン含有エポキシ樹脂には濁りが見られた。重量平均分子量7731、数平均分子量962、分散は8.04であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.40当量、理論エポキシ当量は423g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は90%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0057】
比較例4
実施例1と同様にHCAを99部、1,4−ナフトキノンを71部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにEPPN−501Hを531部、PGM37部、触媒としてTPP0.02部を加えて反応温度160℃で5時間反応させた後、PGM41部を加え、還流温度で9時間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度28000mPa・s、実際に測定したエポキシ当量305g/eq.、フェノール性水酸基当量10000g/eq.以上、リン含有量2.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量6566、数平均分子量1335、分散は4.92であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.28当量、理論エポキシ当量は305g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は100%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0058】
比較例5
実施例1と同様にHCAを99部、1,4−ナフトキノンを71部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにEPPN−501Hを531部、PGM37部、触媒としてTPP0.02部を加えて反応温度160℃で5時間反応させた後、PGM41部を加え、還流温度で7間反応させた。その後、PGM43部、MEK179部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度2500mPa・s、実際に測定したエポキシ当量289g/eq.、フェノール性水酸基当量5500g/eq.、リン含有量2.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量3062、数平均分子量953、分散は3.21であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.28当量、理論エポキシ当量は305g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は95%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0059】
比較例6
実施例1と同様にHCAを108部、1,4−ナフトキノンを80部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにESN−375を833部、触媒としてTPP0.02部を加えて反応温度150℃で3時間反応させた後、PGM113部を加え、還流温度で3時間反応させた。その後、PGM63部、MEK262部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度700mPa・s、実際に測定したエポキシ当量239g/eq.、フェノール性水酸基当量4000g/eq.、リン含有量1.5%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量2073、数平均分子量716、分散は2.90であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.20当量、理論エポキシ当量は254g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は94%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0060】
比較例7
実施例1と同様にHCAを209部、1,4−ナフトキノンを150部仕込み、実施例1と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDF−170を641部、触媒としてTPP0.09部を加えて165℃で4時間反応させた後、その後、MEK429部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度440mPa・s、実際に測定したエポキシ当量409g/eq.、フェノール性水酸基当量1700g/eq.、リン含有量3.0%、溶剤溶解性試験では濁りは見られなかった。重量平均分子量1160、数平均分子量603、分散は1.92であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.50当量、理論エポキシ当量は539g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は76%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0061】
比較例8
実施例7と同様にHCA−HQを314部、YDF−170を687部、触媒としてTPP0.06部を加えて165℃で4時間反応させた後、その後、MEK429部で希釈し、常温まで冷却し反応を終了させた。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度510mPa・s、実際に測定したエポキシ当量301g/eq.、フェノール性水酸基当量800g/eq.、リン含有量3.0%、溶剤溶解性試験では樹脂溶液を25℃で7日間放置した際に結晶、濁りが見られた。重量平均分子量1126、数平均分子量587、分散1.92であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.48当量、理論エポキシ当量は474g/eq.、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合は64%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状を示す。
【0062】
比較例9〜13
比較例で得られたリン含有エポキシ樹脂にBRG−557と硬化促進剤を表4に示す固形分量で配合し、PGM/MEKに溶解させ、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物をガラスクロス(WEA 116E106S136 日東紡績株式会社製 厚み0.1mm)に含浸し、150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。比較例9から比較例11で得られたリン含有エポキシ樹脂は粘度が高いため、比較例9、比較例11を不揮発分45%、比較例10を不揮発分48%に調整した。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
【0063】
比較例14〜比較例16
比較例で得られたリン含有エポキシ樹脂及びYDCN−704に硬化剤としてDICYと硬化促進剤を表4に示す固形分量で配合し、PGM/MEKに溶解させ不揮発分50%のエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物をガラスクロス(WEA 116E106S136 日東紡績株式会社製 厚み0.1mm)に含浸し、150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+170℃×70分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
実施例1から実施例9に示す様に、本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造方法は、従来技術の比較例1から比較例8と比較して重量平均分子量、数平均分子量が低いため、粘度が低い。そのため、ガラスクロスへの含浸性が良好であり、作業性に優れる。また、理論エポキシ当量に対する実際に測定したエポキシ当量の割合も低いため、実施例10から実施例19で示す様に、本発明で得られたリン含有エポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物として用いることで従来技術の比較例9から比較例14と比較して硬化後の物性も良好である。50℃恒温状態における貯蔵安定性試験では、本発明のリン含有エポキシ樹脂は従来製法のリン含有エポキシ樹脂に比べて分子量分布の変化が少なく、貯蔵安定性に優れている。溶剤溶解性試験では従来製法のリン含有エポキシ樹脂ではエポキシ当量が低いと保存時に結晶、濁りが見られたが、本発明で得られたリン含有エポキシ樹脂は結晶、濁りが見られず、溶剤溶解性も良好である。