(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1めっき液または前記第2めっき液のうちいずれか一方のめっき液の添加剤の濃度は、前記凹部の上部におけるめっき反応の速度が、前記凹部の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されており、他方のめっき液の添加剤の濃度は、前記凹部の下部におけるめっき反応の速度が、前記凹部の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている、請求項1に記載のめっき処理方法。
前記第2めっき工程は、第2めっき液を基板に対して供給する第2置換工程と、前記第2置換工程の後に、第2めっき液を基板に対して供給して前記第2めっき層を形成する第2成膜工程と、を含み、
前記第2置換工程において用いられる第2めっき液の温度が、前記第2成膜工程において用いられる第2めっき液の温度よりも低くなっている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のめっき処理方法。
前記第1めっき機構が供給する前記第1めっき液または前記第2めっき機構が供給する前記第2めっき液のうちいずれか一方のめっき液の添加剤の濃度は、前記凹部の上部におけるめっき反応の速度が、前記凹部の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されており、他方のめっき液の添加剤の濃度は、前記凹部の下部におけるめっき反応の速度が、前記凹部の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている、請求項8に記載のめっき処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施の形態
以下、
図1乃至
図7を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず
図1および
図2を参照して、めっき処理装置20の全体構成について説明する。
図1は、めっき処理装置20を示す側面図であり、
図2は、めっき処理装置20を示す平面図である。なお本実施の形態においては、めっき処理装置20が、基板2に対してめっき液を吐出することにより、基板2に対するめっき処理を一枚ずつ実施する枚葉式の装置である例について説明する。
【0017】
めっき処理装置
めっき処理装置20は、ケーシング101の内部で基板2を保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板2に向けてめっき液を吐出し、特定機能を有するめっき層を基板の凹部の内面に形成するめっき機構と、めっき機構に接続され、めっき機構にめっき液を供給するめっき液供給機構と、を備えている。このうち、めっき機構は、基板2に対して第1めっき液を吐出する第1めっき機構30と、基板2に対して第2めっき液を吐出する第2めっき機構40と、を有している。まためっき液供給機構は、第1めっき機構30に第1めっき液を供給する第1めっき液供給機構71と、第2めっき機構40に第2めっき液を供給する第2めっき液供給機構72と、を有している。第1めっき液および第2めっき液の詳細については後述する。
【0018】
まためっき処理装置20は、基板2に向けて第1前処理液を吐出する第1前処理機構54をさらに備えている。第1前処理機構54には、第1前処理機構54に第1前処理液を供給する第1前処理液供給機構73が接続されている。第1前処理液は、基板2に対して第1めっき液や第2めっき液などのめっき液を吐出する前に、基板2に対して吐出される液である。第1前処理液としては、例えば、脱イオン処理が施された純水、いわゆる脱イオン水(DIW)が用いられる。
【0019】
まためっき処理装置20は、基板2に向けてプリウェット液を吐出するプリウェット機構57をさらに備えていてもよい。プリウェット機構57には、プリウェット機構57にプリウェット液を供給するプリウェット液供給機構76が接続されている。プリウェット液は、乾燥状態の基板2に対して供給される液である。プリウェット液を用いることにより、例えば、その後に基板2に対して供給される処理液と、基板2との間の親和性を高めることができる。プリウェット液としては、例えば、CO
2のイオンなどを含むイオン水が用いられる。
【0020】
基板保持機構110の周囲には、第1開口部121および第2開口部126を有し、基板2から飛散しためっき液や第1前処理液などの液体を受ける排液カップ120と、気体を引き込む開口部106を有する排気カップ105と、が配置されている。排液カップ120の第1開口部121および第2開口部126によって受けられた液体は、第1排液機構122および第2排液機構127によって排出される。排気カップ105の開口部106に引き込まれた気体は、排気機構107によって排出される。また、排液カップ120は昇降機構164に連結されており、この昇降機構164は、排液カップ120を上下に移動させることができる。このため、基板2から飛散した液の種類に応じて排液カップ120を上下させることにより、液が排出される経路を液の種類の応じて異ならせることができる。
【0021】
(基板保持機構)
基板保持機構110は、
図2に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸部材111と、回転軸部材111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板2を支持するウエハチャック113と、回転軸部材111に連結され、回転軸部材111を回転駆動する回転機構162と、を有している。
【0022】
このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転軸部材111を回転駆動させ、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板2が回転される。この場合、制御機構160は、回転機構162を制御することにより、回転軸部材111およびウエハチャック113を回転させ、あるいは停止させることができる。また、制御機構160は、回転軸部材111およびウエハチャック113の回転数を上昇させ、下降させ、あるいは一定値に維持させるように制御することが可能である。
【0023】
(めっき機構)
次に第1めっき機構30および第2めっき機構40について説明する。なお、第1めっき機構30および第2めっき機構40は、基板2に対して吐出するめっき液の組成が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、第1めっき機構30について主に説明する。
【0024】
第1めっき機構30は、基板2に向けて第1めっき液を吐出する吐出ノズル34と、吐出ノズル34が設けられた吐出ヘッド33と、を有している。吐出ヘッド33内には、第1めっき液供給機構71から供給された第1めっき液を吐出ノズル34に導くための配管や、第1めっき液を保温するための熱媒を循環させるための配管などが収納されている。
【0025】
吐出ヘッド33は、上下方向および水平方向に移動可能となるよう構成されている。例えば吐出ヘッド33は、アーム32の先端部に取り付けられており、このアーム32は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構165により回転駆動される支持軸31に固定されている。このような回転機構165および支持軸31を用いることにより、
図2(a)に示すように、吐出ヘッド33を、基板2に向けて第1めっき液を吐出する際に位置する吐出位置と、第1めっき液を吐出しない際に位置する待機位置との間で移動させることができる。
【0026】
吐出ヘッド33は、
図1に示すように、基板2の中心部から基板2の周縁部までの長さ、すなわち基板2の半径の長さに対応するよう延びていてもよい。この場合、吐出ヘッド33には、第1めっき液を吐出する吐出ノズル34が複数設けられていてもよい。この場合、第1めっき液を吐出する際に複数の吐出ノズル34が基板2の半径方向に沿って並ぶよう吐出ヘッド33を位置づけることにより、基板2の広域にわたって同時に第1めっき液を供給することができる。
【0027】
第2めっき機構40は、基板2に向けて第2めっき液を吐出する吐出ノズル44と、吐出ノズル44が設けられた吐出ヘッド43と、を有している。また吐出ヘッド43は、アーム42の先端部に取り付けられており、このアーム42は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構167により回転駆動される支持軸41に固定されている。
【0028】
(めっき液供給機構)
次に、めっき機構30,40にめっき液を供給するめっき液供給機構71,72について、
図3を参照して説明する。なお、第1めっき液供給機構71および第2めっき液供給機構72は、収容されているめっき液の組成が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、第1めっき液供給機構71について主に説明する。
【0029】
図3に示すように、第1めっき液供給機構71は、第1めっき液71cを貯留するタンク71bと、タンク71b内の第1めっき液71cを第1めっき機構30へ供給する供給管71aと、を有している。供給管71aには、第1めっき液71cの流量を調整するためのバルブ71dおよびポンプ71eが取り付けられている。またタンク71bには、タンク71b内に貯留される第1めっき液71cを加熱するための加熱ユニット71gが設けられている。同様に、第2めっき液供給機構72は、供給管72a、タンク72b、バルブ72d、ポンプ72eおよび加熱ユニット72gを有している。
【0030】
ところで、本実施の形態においては、後述するように、基板に形成された、大きなアスペクト比を有する凹部の内面に対するめっき処理が実施される。また、凹部の深さは、従来の凹部の深さに比べて著しく大きくなっており、例えば10μm以上となっている。このような深い凹部に対してめっき液を供給する場合、めっき液に含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部の下部にまで到達する。ところで、拡散現象は、時間の経過とともに徐々に進行する現象である。このため、凹部の内部における、めっき液の各成分の濃度分布は、めっき反応によってめっき層が形成されながら、時間とともに変化する。従って、深い凹部に対してめっき液を供給する場合、凹部の内部におけるめっき液の各成分の濃度分布は一般に不均一になっている。このため、単一のめっき液を凹部に対して供給する場合、凹部の内面に形成されるめっき層の厚みが、凹部内における位置に応じて異なることが考えられる。
【0031】
ここで本実施の形態によれば、特定機能を有するめっき層を基板の凹部の内面に形成する際に、組成の異なる2種類のめっき液を用いることにより、上述の課題を解決している。以下、本実施の形態において用いられる、第1めっき液および第2めっき液について説明する。
【0032】
(めっき液)
第1めっき液および第2めっき液は、基板2の表面に形成される、特定機能を有するめっき層に対応する材料を含んでいる。例えば、めっき処理装置20によって基板2に形成されるめっき層が、配線を構成する金属材料が絶縁膜や基板2の内部に浸透することを防止するバリア膜である場合、第1めっき液および第2めっき液は、バリア膜の材料となるCo(コバルト)、W(タングステン)やTa(タンタル)などを含んでいる。また、めっき処理装置20によって基板2に形成されるめっき層が、配線材料の埋め込みを容易化するためのシード膜である場合、第1めっき液および第2めっき液は、配線の材料となるCu(銅)などを含んでいる。その他にも、含まれる材料やめっき反応の種類に応じて、錯化剤や還元剤(B(ホウ素)、P(リン)を含む化合物)、界面活性剤などが第1めっき液および第2めっき液に含まれていてもよい。
【0033】
また、第1めっき液および第2めっき液のうち少なくとも一方のめっき液は、めっき反応の速度に影響を与えることができる添加剤を含んでいる。添加剤は、めっき液に含まれる材料などに応じて適宜選択される。例えば、第1めっき液および第2めっき液が、バリア膜の材料となるCoおよびWを含む場合、第1めっき液および第2めっき液のうち少なくとも一方のめっき液は、添加剤として、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、いわゆるSPSを含んでいる。
【0034】
以下、めっき液に添加剤を入れることの目的について詳細に説明する。本実施の形態においては、第1めっき液に含有される添加剤の濃度と、第2めっき液に含有される添加剤の濃度とが異なっている。例えば添加剤としてSPSが用いられる場合、第1めっき液に含有されるSPSの濃度が、第2めっき液に含有されるSPSの濃度よりも低くなっている。具体的には、第2めっき液に含有されるSPSの濃度が、5ppm以上となっており、第1めっき液に含有されるSPSの濃度が、5ppm未満、例えば0ppmとなっている。これによって、第1めっき液から形成される第1めっき層および第2めっき液から形成される第2めっき層を含むめっき層の厚みの均一性を向上させることができる。
【0035】
以下、添加剤の濃度が異なる2種類のめっき液を用いることにより、めっき層の厚みの均一性を向上させることができることのメカニズムについて説明する。
【0036】
本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、一例として後述する実施例での実験結果で支持されているように、大きな深さを有する凹部に対するめっき処理においては、凹部の内面のうちめっき層が形成されやすい部分が、添加剤の濃度によって変化することを見出した。例えば、SPSが含有されていないめっき液を用いた場合、めっき層は、凹部の内面の上部に優先的に形成された。一方、SPSが含有されているめっき液を用いた場合、めっき層は、凹部の内面の下部に優先的に形成された。このように、めっき層が優先的に形成される位置が添加剤の濃度に応じて変化する理由としては、様々なことが考えられる。例えば、理由の1つとして、めっき液中において、めっき層の材料となる元素の拡散速度と添加剤の拡散速度とが異なることが考えられる。
【0037】
このような知見に基づいて、本実施の形態においては、第1めっき液の添加剤の濃度は、基板の凹部の上部におけるめっき反応の速度が、凹部の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている。また、第2めっき液の添加剤の濃度は、基板の凹部の下部におけるめっき反応の速度が、凹部の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている。このような2種類のめっき液を用いて、特定機能を有する1つのめっき層、例えばバリア膜やシード膜を形成することにより、後述するように、凹部の内面に形成されるめっき層の厚みの均一性を向上させることができる。
【0038】
(第1前処理機構およびプリウェット機構)
次に第1前処理機構54およびプリウェット機構57について説明する。第1前処理機構54は、基板2に向けて第1前処理液を吐出する吐出ノズル54aを有している。同様に、プリウェット機構57は、基板2に向けてプリウェット液を吐出する吐出ノズル57aを有している。
図1に示すように、各吐出ノズル54a,57aは、吐出ヘッド53に取り付けられている。吐出ヘッド53は、上下方向および水平方向に移動可能となるよう構成されている。例えば第1めっき機構30の吐出ヘッド33の場合と同様に、第1前処理機構54の吐出ヘッド53は、アーム52の先端部に取り付けられている。アーム52は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構166により回転駆動される支持軸51に固定されている。この場合、
図2(b)に示すように、吐出ヘッド53は、基板2の中心部に対応する位置と基板2の周縁部に対応する位置との間で支持軸51を軸として水平方向に移動可能となっている。
【0039】
(第1前処理液供給機構およびプリウェット液供給機構)
次に
図4を参照して、第1前処理機構54に第1前処理液を供給する第1前処理液供給機構73、および、プリウェット機構57にプリウェット液を供給するプリウェット液供給機構76について説明する。なお、第1前処理液供給機構73およびプリウェット液供給機構76は、収容されている処理液の種類が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、前処理液供給機構73について主に説明する。
【0040】
図4に示すように、第1前処理液供給機構73は、DIWなどの第1前処理液73cを貯留するタンク73bと、タンク73b内の第1前処理液73cを第1前処理機構54へ供給する供給管73aと、を有している。供給管73aには、第1前処理液73cの流量を調整するためのバルブ73dおよびポンプ73eが取り付けられている。また第1前処理液供給機構73は、第1前処理液73c中の溶存酸素や溶存水素などの気体を除去する脱気手段73fをさらに有していてもよい。脱気手段73fは、
図4に示すように、タンク73bに貯留されている第1前処理液73cに窒素などの不活性ガスを送り込むガス供給管として構成されていてもよい。これによって、不活性ガスを第1前処理液73c中に溶解させることができ、このことにより、第1前処理液73c中に既に溶存していた酸素や水素などを外部に排出することができる。すなわち、第1前処理液73cに対していわゆる脱ガス処理を施すことができる。
【0041】
以上のように構成されるめっき処理装置20は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160により駆動制御され、これにより基板2に対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0042】
めっき処理方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。ここでは、基板2に形成された凹部12の内面に、無電解めっき法によって、CoWBを含むバリア膜を形成するめっき処理方法について説明する。
図5は、めっき処理方法を示すフローチャートである。また
図6A乃至
図6Fは、めっき処理方法の各工程の際の基板2の様子を示す断面図である。
【0043】
はじめに、配線材料を埋め込むための凹部12を基板2に形成する。凹部12を基板2に形成する方法としては、従来から公知の方法の中から適宜採用することができる。具体的には、例えば、ドライエッチング技術として、弗素系又は塩素系ガス等を用いた汎用的技術を適用できる。特にアスペクト比(孔の径に対する孔の深さの比)の大きな凹部12を形成するには、高速な深掘エッチングが可能なICP−RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:誘導結合プラズマ−反応性イオンエッチング)の技術を採用した方法をより好適に採用できる。特に、六フッ化硫黄(SF
6)を用いたエッチングステップとC
4F
8などのテフロン系ガスを用いた保護ステップとを繰り返しながら行う、ボッシュプロセスと称される方法を好適に採用できる。
【0044】
凹部12の内部におけるめっき液の各成分の移動が、流動ではなく主に拡散に基づく限りにおいて、凹部12の具体的な形状が特に限られることはない。例えば、凹部12のアスペクト比は、5〜30の範囲内となっている。具体的には、凹部の横断面が円形状である場合、凹部12の直径が、0.5〜20μmの範囲内、例えば8μmとなっている。また、凹部12の高さまたは深さが、10〜250μmの範囲内、例えば100μmとなっている。その後、凹部12の内部に絶縁膜が形成される。絶縁膜の形成する方法としては、例えば、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により堆積されるシリコン酸化膜(SiO
2)を形成する方法が用いられる。
【0045】
次に、基板2をケーシング101の内部に準備し、プリウェット処理機構57を用いて、基板2に向けてプリウェット液を吐出する(プリウェット工程S10)。これによって、基板2の表面、例えば凹部の内面および基板2の上面と、後に基板に対して供給される前処理液との間の親和性を高めることができる。プリウェット液としては、例えば、CO
2のイオンなどを含むイオン水が用いられる。
【0046】
次に、第1前処理機構54を用いて、基板2に向けて第1前処理液73cを吐出する(第1前処理工程S20)。これによって、
図6Aに示すように、凹部12の内部が第1前処理液73cによって充填される。第1前処理液73cとしては、例えば、脱ガス処理が施されたDIWが用いられる。
【0047】
次に、第1めっき機構30を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するための第1めっき液71cを吐出する(第1めっき工程S21)。具体的には、はじめに、第1めっき液供給機構71を用いて、所定の温度に加熱された第1めっき液71cを第1めっき機構30に供給する。供給される第1めっき液71cの温度は、めっき反応が適切な速度で進行するよう設定されており、例えば45℃に設定されている。次に
図7に示すように、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル34から、基板2に向けて第1めっき液71cが吐出される。これによって、基板2の広域にわたって同時に第1めっき液71cを供給することができる。このことにより、基板2上における第1めっき液71cの温度分布を、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。例えば、基板2の中心部分に到達した第1めっき液71cの温度と、基板2の周縁部分に到達した第1めっき液71cの温度とを略同一にすることができる。
【0048】
基板2に向けて第1めっき液71cを吐出すると、
図6Bに示すように、凹部12の内部の第1前処理液73cが第1めっき液71cによって置換され、凹部12の内部に第1めっき液71cが充填される。この際、第1めっき液71cにおけるめっき反応が進行する。この結果、
図6Cに示すように、凹部12の内面12aに第1めっき層13が形成される。ところで上述のように、第1めっき液71cに含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部12の下部にまで到達する。このため、凹部12の内部における第1めっき液71cの各成分の濃度分布は、めっき反応の進行により、一般に凹部12の上部と下部で不均一になっている。また、第1めっき液71cに含有されるSPSの濃度は、第2めっき液72cに含有されるSPSの濃度よりも低くなっており、例えば0ppmになっている。このため、第1めっき工程S21においては、凹部12の上部に優先的に第1めっき層13が形成される。すなわち
図6Cに示すように、凹部12の内面12aに形成される第1めっき層13の厚みが、凹部12の下部に比べて凹部の上部において大きくなっている。
【0049】
次に、第2めっき機構40を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するための第2めっき液71cを吐出する(第2めっき工程S31)。具体的には、はじめに、第2めっき液供給機構72を用いて、所定の温度に加熱された第2めっき液72cを第2めっき機構40に供給する。供給される第2めっき液72cの温度は、めっき反応が適切な速度で進行するよう設定されており、例えば45℃に設定されている。次に、第1めっき工程S21の場合と同様に、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル44から、基板2に向けて第2めっき液72cが吐出される。これによって、基板2の広域にわたって同時に第2めっき液72cを供給することができる。このことにより、基板2上における第2めっき液72cの温度分布を、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。例えば、基板2の中心部分に到達した第2めっき液72cの温度と、基板2の周縁部分に到達した第2めっき液72cの温度とを略同一にすることができる。
【0050】
基板2に向けて第2めっき液72cを吐出すると、
図6Dに示すように、凹部12の内部の第1めっき液71cが第2めっき液72cによって置換され、凹部12の内部に第2めっき液72cが充填される。この際、第2めっき液72cにおけるめっき反応が進行する。この結果、
図6Eに示すように、第1めっき層13上に第2めっき層14が形成される。ところで、第1めっき液71cの場合と同様に、第2めっき液72cに含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部12の下部にまで到達する。このため、凹部12の内部における第2めっき液72cの各成分の濃度分布は一般に不均一になっている。また、第2めっき液72cに含有されるSPSの濃度は、第1めっき液71cに含有されるSPSの濃度よりも高くなっており、例えば5ppmになっている。このため、第2めっき工程S31においては、凹部12の下部に優先的に第2めっき層14が形成される。すなわち
図6Eに示すように、凹部12の内面12aに形成される第2めっき層14の厚みは、凹部12の上部に比べて凹部の下部において大きくなっている。
【0051】
このように本実施の形態によれば、第1めっき工程S21においては、凹部12の上部に優先的に第1めっき層13が形成され、一方、第2めっき工程S31においては、凹部12の下部に優先的に第2めっき層14が形成される。このため、第1めっき層13および第2めっき層14を含むめっき層15として形成されるバリア膜の厚みを、凹部12内の位置に依らず略均一にすることができる。なお、上述の第1めっき工程S21および第2めっき工程S31が実施される時間は、めっき層15の厚みが凹部12内の位置に依らず略均一になり、かつ、めっき層15の厚みが全体的に所望の厚みにまで到達するよう、適切に調整される。
【0052】
その後、基板2に向けてリンス液を吐出するリンス処理工程S32,S40、基板2に向けて後洗浄液を吐出する後洗浄工程S33、および、基板2をエアやIPAなどによって乾燥する乾燥工程S41などの後工程を実施する。このようにして、表面にめっき層15からなるバリア膜が形成された基板2を得ることができる。
【0053】
その後、
図6Fに示すように、めっき層15からなるバリア膜上にシード膜16が形成されてもよい。また、シード膜16によって覆われた凹部12内に、銅などの金属材料を含む配線17が形成されてもよい。シード膜16および配線17を形成する方法が特に限られることはないが、例えば無電解めっき法が用いられ得る。この際、めっき層15からなるバリア膜を形成する場合と同様に、含有されている添加剤の濃度が異なる2種類のめっき液が用いられてもよい。
【0054】
本実施の形態によれば、上述のように、含有れている添加剤の濃度が異なる2種類のめっき液71c,72cを順に用いて、特定機能を有するめっき層15を凹部12の内面12aに形成する。この場合、各めっき液71c,72cの添加剤の濃度を適切に調整することにより、第1めっき液71cを用いる際のめっき反応の速度と、第2めっき液72cを用いる際のめっき反応の速度との間の適切なバランスを実現することができる。例えば、めっき層15の厚みが凹部12内の位置によらず略均一になるよう、各めっき反応の速度を調整することができる。これによって、1種類のめっき液のみを用いてめっき層15を形成する場合に比べて、めっき層15の厚みの均一性を容易に向上させることができる。
【0055】
また本実施の形態によれば、上述のように、第1前処理工程において基板2に供給される第1前処理液73cとして、脱ガス処理が施されたDIWが用いられる。このため、凹部12の内面12aなどの基板2の表面に、第1前処理液73c内の溶存ガスに起因する気泡が形成されることを防ぐことができる。これによって、基板2の表面におけるめっき反応が気泡によって阻害されることを防ぐことができ、このことにより、基板2の表面に万遍なくめっき層15を形成することができる。
【0056】
また本実施の形態によれば、上述のように、プリウェット工程において基板2に供給されるプリウェット液として、CO
2のイオンなどを含むイオン水が用いられる。このため、DIWなどの電気的に中性な処理液がはじめに基板2に供給される場合に比べて、めっき処理の際に放電が生じることを抑制することができる。
【0057】
また本実施の形態によれば、上述のように、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル34,44から、基板2に対してめっき液71c,72cが吐出される。このため、基板2上におけるめっき液71c,72cの温度分布を、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。このことにより、基板2に形成されるめっき層15の厚みを、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。
【0058】
変形例
なお本実施の形態において、基板2の凹部12の上部におけるめっき反応の速度が凹部12の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、第1めっき液71cの添加剤の濃度が設定され、かつ、基板2の凹部12の下部におけるめっき反応の速度が凹部12の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、第2めっき液72cの添加剤の濃度が設定される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、基板2の凹部12の下部におけるめっき反応の速度が凹部12の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、第1めっき液71cの添加剤の濃度が設定され、かつ、基板2の凹部12の上部におけるめっき反応の速度が凹部12の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、第2めっき液72cの添加剤の濃度が設定されていてもよい。例えば、第1めっき液71cに含有されるSPSの濃度が、第2めっき液72cに含有されるSPSの濃度よりも高くなっていてもよい。この場合も、めっき層15は、第1めっき液71cから形成される第1めっき層13と、第2めっき液72cから形成される第2めっき層14との積層体として構成される。このため、めっき層15の厚みを、凹部内の位置に依らず略均一にすることができる。なお本変形例においては、
図8に示すように、基板2に対して第2前処理液を供給し、これによって凹部12内に第2前処理液を充填させる第2前処理工程S30を、第1めっき工程S21と第2めっき工程S31との間に実施してもよい。このような第2前処理工程S30を実施することにより、凹部12内に充填されていた第1めっき液71cを除去することができる。これによって、第2めっき工程S31の際のめっき液におけるSPSの濃度を、第1めっき工程S21の際のめっき液におけるSPSの濃度よりも確実に低くすることができる。なお、第2前処理工程S30において用いられる第2前処理液は、第1前処理工程S20において用いられる第1前処理液73cと略同一である。また、第2前処理液を基板に対して供給する第2前処理機構は、第1前処理工程S20において用いられる第1前処理機構54と略同一である。なお、第1前処理機構と第2前処理機構とが、それぞれ別個に設けられていてもよく、若しくは、1個の前処理機構として共通化されていてもよい。
【0059】
なお
図8に示すように、第1めっき工程S21と第2めっき工程S31との間に、基板2に向けてリンス液を吐出するリンス処理工程S22や、基板2に向けて後洗浄液を吐出する後洗浄工程S23をさらに実施してもよい。
【0060】
また本実施の形態において、めっき機構30,40に供給されるめっき液71c,72cを加熱するための加熱ユニット71g,72gが、タンク71b,72bに設けられる例を示した。しかしながら、めっき液71c,72cを加熱するための形態がこれに限られることはない。例えば加熱ユニット71g,72gは、タンク71b,72bではなく供給管71a,72aに設けられていてもよい。
【0061】
第2の実施の形態
次に
図9乃至
図13を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図9乃至
図13に示す第2の実施の形態において、第1めっき工程および第2めっき工程は各々、低温で実施される置換工程と、高温で実施される成膜工程と、を含んでいる。
図9乃至
図13に示す第2の実施の形態において、
図1乃至
図8に示す第1の実施の形態またはその変形例と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
めっき処理装置
はじめに
図9および
図10を参照して、本実施の形態において用いられるめっき処理装置20について説明する。
図9は、めっき処理装置20を示す側面図であり、
図10は、後述する各置換ユニット55,56にめっき液を供給するめっき液供給機構74,75を示す図である。以下、
図9および
図10を参照して、本実施の形態におけるめっき機構30,40について説明する。なお、第1めっき機構30および第2めっき機構40は、基板2に対して吐出するめっき液の組成が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、第1めっき機構30について主に説明する。
【0063】
第1めっき機構
第1めっき機構30は、低温の第1めっき液を基板2に向けて吐出する第1置換ユニット55と、第1置換ユニット55において用いられる第1めっき液の温度よりも高い温度を有する高温の第1めっき液を基板2に向けて吐出する第1成膜ユニット35と、を含んでいる。なお「低温」とは、第1置換ユニット55から吐出される第1めっき液の温度が、めっき反応が有意に進行しない程度の温度となっていることを意味している。例えば、第1置換ユニット55から吐出される第1めっき液によって形成される第1めっき層13の成膜の速度が、最終的に高温処理時に得られる第1めっき層13の成膜の速度と比較して10%以下となっていることを意味している。また「高温」とは、第1成膜ユニット35から吐出される第1めっき液の温度が、現実的な処理時間内でめっき処理を完了させることができる程度の温度となっていることを意味している。
【0064】
図9に示すように、第1成膜ユニット35は、第1めっき液を基板2に向けて吐出する複数の吐出ノズル34を含んでいる。また第1成膜ユニット35には、第1成膜ユニット35に高温の第1めっき液を供給する成膜用第1めっき液供給機構71が接続されている。各吐出ノズル34および成膜用第1めっき液供給機構71は、上述の第1の実施の形態における各吐出ノズル34および第1めっき液供給機構71と略同一である。
【0065】
また
図9に示すように、第1置換ユニット55は、吐出ヘッド53に設けられ、基板2に向けて低温の第1めっき液を吐出する吐出ノズル55aを有している。また第1置換ユニット55には、第1置換ユニット55に低温の第1めっき液を供給する置換用第1めっき液供給機構74が接続されている。
【0066】
図10に示すように、置換用第1めっき液供給機構74は、低温、例えば常温の第1めっき液74cを貯留するタンク74bと、タンク74b内の第1めっき液74cを第1置換ユニット55へ供給する供給管74aと、を有している。供給管74aには、第1めっき液74cの流量を調整するためのバルブ74dおよびポンプ74eが取り付けられている。なお、置換用第1めっき液供給機構74から供給される第1めっき液74cは、温度を除いて、成膜用第1めっき液供給機構71から供給される第1めっき液71cと略同一である。
【0067】
第2めっき機構
第2めっき機構40は、低温の第2めっき液を基板2に向けて吐出する第2置換ユニット56と、高温の第2めっき液を基板2に向けて吐出する第2成膜ユニット45と、を有している。「低温」および「高温」という用語の意味は、上述の第1めっき機構30の場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0068】
図9に示すように、第2成膜ユニット45は、第2めっき液を基板2に向けて吐出する複数の吐出ノズル44を含んでいる。また第2成膜ユニット45には、第2成膜ユニット45に高温の第2めっき液を供給する成膜用第2めっき液供給機構72が接続されている。また
図9に示すように、第2置換ユニット56は、吐出ヘッド53に設けられ、基板2に向けて低温の第2めっき液を吐出する吐出ノズル56aを有している。また第2置換ユニット56には、第2置換ユニット56に低温の第2めっき液を供給する置換用第2めっき液供給機構75が接続されている。
【0069】
図10に示すように、置換用第2めっき液供給機構75は、低温、例えば常温の第2めっき液75cを貯留するタンク75bと、タンク75b内の第2めっき液75cを第2置換ユニット56へ供給する供給管75aと、を有している。供給管75aには、第2めっき液75cの流量を調整するためのバルブ75dおよびポンプ75eが取り付けられている。なお、置換用第2めっき液供給機構75から供給される第2めっき液75cは、温度を除いて、成膜用第2めっき液供給機構72から供給される第2めっき液72cと略同一である。
【0070】
なお
図10においては簡略化のために省略されているが、本実施の形態においても、
図1に示す第1の実施の形態の場合と同様に、めっき処理装置20が、基板2に向けてプリウェット液を吐出するプリウェット機構57を備えていてもよい。
【0071】
めっき処理方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。ここでは、基板2に形成された凹部12の内面12aに、無電解めっき法によって、CoWBのバリア膜を形成するめっき処理方法について説明する。
図11は、めっき処理方法を示すフローチャートである。また
図12A乃至
図12Dは、めっき処理方法の各工程の際の基板2の様子を示す断面図である。
【0072】
はじめに、凹部12が形成された基板2を準備する。次に、第1の実施の形態の場合と同様に、プリウェット工程S10および第1前処理工程S20を実施する。これによって、
図12Aに示すように、凹部12の内部が第1前処理液73cによって充填される。
【0073】
次に、第1めっき機構30を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するための第1めっき液を吐出する(第1めっき工程S21)。第1めっき工程S21は、
図11に示すように、低温の第1めっき液74cを基板2に向けて吐出する第1置換工程S21aと、高温の第1めっき液71cを基板2に向けて吐出する第1成膜工程S21bと、を含んでいる。
【0074】
第1置換工程S21aにおいては、はじめに、置換用第1めっき液供給機構74を用いて、低温の第1めっき液74cを第1置換ユニット55に供給する。供給される第1めっき液74cの温度は、めっき反応が有意に進行しない温度になっており、例えば常温(約25℃)になっている。次に、吐出ヘッド53に取り付けられた吐出ノズル55aから、基板2に向けて第1めっき液74cが吐出される。
【0075】
ところで、上述のように、大きな深さを有する凹部12においては、第1めっき液74cの各成分は、主に拡散に基づいて凹部12の下部にまで到達する。拡散現象は、時間の経過とともに徐々に進行する現象である。このため、第1めっき液74cの各成分を凹部12の下部にまで十分に到達させるためには、所定の時間を要する。従って、基板2に対して第1めっき液74cを供給する第1置換工程S21aは、凹部12内の第1前処理液73cを第1めっき液74cに十分に置換することができるよう、所定の時間にわたって継続される。
【0076】
以下、第1置換工程S21aの継続時間を決定するための方法の一例について説明する。
【0077】
めっき液中における非定常状態拡散は、一般に、以下に示すフィックの第2法則によって表される。
【数1】
ここで、Dは、拡散する成分の拡散係数であり、Cは、拡散する成分の濃度であり、tは、時間であり、xは、基準位置からの距離である。フィックの第2法則に基づいて、めっき液中のめっき成分(めっき層を構成する材料の成分)が拡散する際の拡散時間と拡散距離との関係を計算した結果を
図15に示す。
図15においては、横軸が時間を表しており、縦軸が凹部12の上端からの距離を表している。なお、この計算においては、時間t=0の際には、凹部12内に第1前処理液73cのみが充填されており、また時間t=0の際に、凹部12の上端よりも上方に存在する液が第1めっき液74cに置換されるという条件を仮定している。また、凹部12の深さは無限大であると仮定している。また
図15において、「x%(x=50,65,80,88または95)」という注釈が付された実線または破線は、対応する距離におけるめっき成分の濃度が、凹部12の上端におけるめっき成分の濃度のx%に到達することに要する拡散時間を表している。例えば
図15において符号Aが付された点は、凹部12の上端から70μmの距離の位置におけるめっき成分の濃度が、凹部12の上端におけるめっき成分の濃度の95%に到達することに要する拡散時間が、600秒であることを意味している。
【0078】
図15に示される関係に基づいて、第1置換工程S21aの継続時間を決定することができる。例えば、深さが100μmである凹部12について、凹部12の底部におけるめっき成分の濃度を、基板2に供給された第1めっき液74cのめっき成分の濃度の約90%に到達することが求められる場合、第1置換工程S21aの継続時間が約600秒に設定される。このように長時間にわたって第1置換工程S21aを継続することにより、凹部12の底部にまで十分に第1めっき液74cを到達させることができる。これによって、凹部12内に充填される第1めっき液74cの濃度分布を略均一にすることができる。
【0079】
また本実施の形態においては、上述のように、第1置換工程S21aにおいて基板2に対して供給される第1めっき液74cの温度が、めっき反応が有意に進行しない程度の低温に設定されている。例えば、第1置換工程S21aの際に形成される第1めっき層13の成膜の速度が、最終的に高温処理時に得られる第1めっき層13の成膜の速度と比較して10%以下となるよう、第1めっき液74cの温度が設定されている。このため、凹部12の底部にまで十分に第1めっき液74が到達するよりも前にめっき反応が有意に進行してしまうことを防ぐことができる。
【0080】
その後、第1成膜ユニット35を用いて、基板2に向けて、高温の第1めっき液71cを吐出する(第1成膜工程S21b)。具体的には、はじめに、成膜用第1めっき液供給機構71を用いて、高温に加熱された第1めっき液71cを第1成膜ユニット35に供給する。供給される第1めっき液71cの温度は、めっき反応が適切な速度で進行するよう設定されており、例えば45℃に設定されている。次に、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル34から、基板2に向けて第1めっき液71cが吐出される。これによって、
図12Cに示すように、凹部12の内部の低温の第1めっき液74cが、高温の第1めっき液71cによって置換される。ここで本実施の形態によれば、以下に説明するように、凹部12の内部に迅速に高温の第1めっき液71cを充填することができる。
【0081】
第1成膜工程S21bが開始される際、上述のように、凹部12の内部には低温の第1めっき液74cが既に充填されている。この場合、基板2に対して高温の第1めっき液71cを供給すると、はじめに、凹部12の上端よりも上方において、すなわち基板2の上面11aよりも上方において、低温の第1めっき液74cが高温の第1めっき液71cに置換される。次に、凹部12の内部に充填されている低温の第1めっき液74cが、高温の第1めっき液71cからの熱によって加熱される。ここで一般に、液体における熱の伝導速度は、液体における所定の成分の拡散速度よりも大きい。このため凹部12内の低温の第1めっき液74cは、迅速に加熱されて高温の第1めっき液71cとなる。すなわち、凹部12内に迅速に高温の第1めっき液71cを充填することができる。なお、第1めっき液74cおよび第1めっき液71cは、異なる符号が付されてはいるが、上述のように、温度を除いて略同一である。従って、低温の第1めっき液74cを加熱することにより、低温の第1めっき液74cを高温の第1めっき液71cに置換する、若しくは変化させることができる。
【0082】
凹部12の内部に高温の第1めっき液71cが充填されると、
図12Dに示すように、凹部12の内面12aに第1めっき層13が形成される。ここで上述のように、凹部12内の高温の第1めっき液71cは、凹部12内において略均一な濃度分布を有していた低温の第1めっき液74cを加熱することにより得られたものである。このため本実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態の場合と比べて、凹部12内における第1めっき液71cの濃度分布をより均一にすることができる。これによって、第1成膜工程S21bにおけるめっき反応を、凹部12の位置によらず略均一の濃度を有する第1めっき液71cを用いて開始することが可能となる。このことにより、凹部12の内面12aに形成される、凹部12の上部に優先的に形成される特徴を持つ第1めっき層13の厚みの均一性を高めることができる。
【0083】
その後、
図11に示すように、リンス処理工程S22、後洗浄工程S23、および第2前処理工程S30を実施する。これによって、第1めっき層13が形成された凹部12の内部に第2前処理液が充填される。
【0084】
次に、第2めっき機構40を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するための第2めっき液を吐出する(第2めっき工程S31)。第2めっき工程S31は、
図11に示すように、低温の第2めっき液75cを基板2に向けて吐出する第2置換工程S31aと、高温の第2めっき液72cを基板2に向けて吐出する第2成膜工程S31bと、を含んでいる。
【0085】
第2置換工程S31aにおいては、上述の第1置換工程S21aの場合と同様に、凹部12内の第2前処理液が低温の第2めっき液75cによって十分に置換されるまで、基板2に対して第2めっき液75cが供給される。その後、第2成膜工程S31bにおいては、高温に加熱された第2めっき液72cの熱によって、凹部12内の低温の第2めっき液75cが十分に加熱される。これによって、凹部12内に、略均一な濃度分布を有する高温の第2めっき液75cを迅速に充填することができる。このことにより、第1めっき層13上に形成される、凹部12の下部に優先的に形成される特徴を持つ第2めっき層14の厚みの均一性を高めることができる。
【0086】
その後、リンス処理工程S32,S40、後洗浄工程S33、および乾燥工程S41などの後工程を実施する。このようにして、凹部12の表面に形成される、凹部12の上部に優先的に形成される特徴を持つ第1めっき層13の膜の厚さの均一性、および、凹部12の下部に優先的に形成される特徴を持つ第2めっき層14の膜の厚さの均一性をそれぞれ高めることができる。これにより、第1めっき層13と第2めっき層14とを合わせためっき層15からなる、膜厚の均一性が高められたバリア膜が形成された基板2を得ることができる。
【0087】
本実施の形態によれば、上述のように、各めっき工程S21,S31は、低温のめっき液74c,75cを用いる置換工程S21a,S31aと、高温のめっき液71c,72cを用いる成膜工程21b,31bと、を含んでいる。このように2段階に分けてめっき工程を実施することにより、高温のめっき液71c,72cにおけるめっき反応を進行させる際、凹部12内におけるめっき液71c,72cの濃度分布を、凹部12内の位置によらず略均一にすることができる。このことにより、凹部12に形成される第1めっき層13および第2めっき層14の厚みの均一性をそれぞれ高めることができる。このため、各めっき層13,14の厚みの均一性が乏しい場合に比べて、第1めっき層13および第2めっき層14を含むめっき層15における厚みの均一性を容易に高めることができる。
【0088】
変形例
なお本実施の形態において、第1めっき工程S21および第2めっき工程S31の各々が置換工程S21a,S31aおよび成膜工程21b,31bを含む例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1めっき工程S21または第2めっき工程S31のいずれか一方のみにおいて、置換工程および成膜工程の2工程を実施してもよい。この場合、第1めっき工程S21または第2めっき工程S31のいずれか他方においては、高温のめっき液を用いる成膜工程のみが実施される。
【0089】
また本実施の形態において、第1めっき工程S21と第2めっき工程S31との間に、めっき液以外の処理液が基板2に対して供給される例を示した。例えば、第1めっき工程S21と第2めっき工程S31との間に、基板2に向けて第2前処理液を供給する第2前処理工程S30が実施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1めっき工程S21の直後に第2めっき工程S31を実施してもよい。この場合、第2めっき工程S31は、第2成膜工程S31bのみを含んでいてもよく、若しくは、第2置換工程S31aおよび第2成膜工程S31bの両方を含んでいてもよい。
【0090】
また本実施の形態の第1置換工程S21aにおいて、
図13に示すように、矢印Sに沿った方向へ吐出ヘッド53が移動している間に、吐出ヘッド53に取り付けられた吐出ノズル55aから、基板2に向けて第1めっき液74cを吐出してもよい。この場合、吐出される第1めっき液74cの速度成分に、吐出ヘッド53の移動速度に対応する速度成分が追加される。このため、方向Sに沿って第1めっき液74cが第1前処理液73cを押す力を強めることができる。また、各凹部12内に充填されている第1前処理液73cに対して、第1めっき液74cの運動エネルギーに基づく衝撃力を直接に印加することができる。これらのことにより、第1前処理液73cを第1めっき液74cに置換する効率を高めることができる。また図示はしないが、第2置換工程S31aにおいても、吐出ヘッド53が移動している間に、吐出ヘッド53に取り付けられた吐出ノズル56aから、基板2に向けて第2めっき液75cを吐出してもよい。
なお、矢印Sに沿った方向は、例えば、基板2の中心部から基板2の周縁部に向かう方向に平行なっている。
【0091】
また本実施の形態において、第1成膜ユニット35に第1めっき液71cを供給するためのタンク71bと、第1置換ユニット55に第1めっき液74cを供給するためのタンク74bとが別個に準備される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1成膜ユニット35に第1めっき液71cを供給するためのタンクと、第1置換ユニット55に第1めっき液74cを供給するためのタンクとが共通化されていてもよい。例えば
図14に示すように、共通のタンクとして、低温の第1めっき液74cを貯留するタンク74bを用いることができる。この場合、
図14に示すように、成膜用第1めっき液供給機構71の供給管71aには、めっき液を加熱するための加熱ユニット71gが設けられている。これによって、1つのタンクを用いながら、高温の第1めっき液71cを第1成膜ユニット35に供給し、かつ、低温の第1めっき液74cを第1置換ユニット55に供給することができる。
【0092】
なお、加熱ユニット71gによって加熱された第1めっき液を再びタンク74b内に戻すことが求められる場合がある。この場合、図示はしないが、高温の第1めっき液をタンク74bに戻すための返送管がさらに設けられていてもよい。また返送管には、めっき液を冷却するための冷却ユニットが取り付けられていてもよい。これによって、低温に戻されためっき液をタンク74bに戻すことができる。なお、返送管に取り付けられた冷却ユニットと、供給管71aに取り付けられた上述の加熱ユニット71gとは、一体の熱交換器として構成されていてもよい。
【0093】
また
図14に示す場合と同様に、第2成膜ユニット45に第2めっき液72cを供給するタンクと、第2置換ユニット56に第2めっき液75cを供給するタンクとが共通化されていてもよい。
【0094】
また本実施の形態において、高温のめっき液71c,72cを吐出する吐出ノズル34,44と、低温のめっき液74c,75cを吐出する吐出ノズル55a,56aとが別個に準備される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、高温のめっき液71c,72cを吐出する吐出ノズルと、低温のめっき液74c,75cを吐出する吐出ノズルとが共通化されていてもよい。
【0095】
また本実施の形態の成膜工程S21b,31bにおいて、高温のめっき液71c,72cを基板2に対して供給することにより、凹部12に既に充填されている低温のめっき液74c,75cを加熱する例を示した。しかしながら、基板2に対して高温のめっき液を供給するための方法がこれに限られることはない。例えば、基板2やターンテーブル112を加熱することによって、基板2の凹部12内に充填されている低温のめっき液74c,75cを加熱し、これによって高温のめっき液71c,72cを得てもよい。この際、基板2を加熱する方法が特に限られることはなく、様々な方法が用いられ得る。例えば、基板2の下方から基板2に向けて光を照射するランプヒータが用いられてもよい。また、基板2の下側において温水などの熱媒体を循環させ、これによって基板2を加熱してもよい。なお、下方から基板2を加熱する場合、凹部12内に充填されているめっき液は、凹部12の下部側から加熱される。このように凹部12の下部側からめっき液を加熱することは、凹部12の上部に優先的にめっき層を形成するタイプのめっき液が用いられる場合に有利であると考えられる。なぜなら、凹部12の下部側からめっき液を加熱することにより、凹部12の下部において先にめっき反応を開始させることができ、これによって、凹部12の下部に形成されるめっき層の厚みと凹部12の上部に形成されるめっき層の厚みとの間の差を小さくすることができるからである。
【0096】
また上述の各実施の形態において、基板2に形成された凹部12の内面12aに直接的に、めっき層15からなるバリア膜が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、凹部12の内面12aとバリア膜との間にその他の層が介在されていてもよい。例えば、めっき反応を促進するための触媒層が、凹部12の内面12aとバリア膜との間に介在されていてもよい。触媒層を構成する材料は、めっき層を構成する材料に応じて適宜選択される。例えばめっき層がCoWBを含む場合、触媒層を構成する材料としてPd(パラジウム)が用いられ得る。また、凹部12の内面12aと触媒層との間の密着性を向上させるための密着層がさらに設けられていてもよい。密着層は、例えば、シランカップリング剤などのカップリング剤を用いたSAM処理を実施することによって形成され得る。また凹部12の内面12aに、TEOSやPI(ポリイミド)などの絶縁膜が形成されていてもよい。
【0097】
また上述の各実施の形態において、めっき処理装置20が、基板2に対してめっき液を吐出することにより、基板2に対するめっき処理を一枚ずつ実施する枚葉式の装置である例を示した。しかしながら、本発明の技術的思想が適用され得るめっき処理装置が、枚葉式の装置に限られることはない。例えば、本発明の実施の形態によるめっき処理装置が、複数の基板2に対するめっき処理を一括で実施することができる、いわゆるディップ式の装置であってもよい。ディップ式の装置においては、めっき液が貯留されているめっき槽の中に基板2を投入することにより、基板2に対してめっき液が供給される。その他の構成は、上述の枚葉式のめっき処理装置20と略同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0098】
なお、上述した各実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0099】
上述のめっき処理装置20を用いて、基板2の凹部12の内面12aにCoWBのめっき層15を形成した例について説明する。
【0100】
はじめに、凹部12が形成された基板2を準備した。凹部12の直径は8μmであり、凹部12の深さは100μmであった。
【0101】
次に、プリウェット工程S10を実施し、その後、基板2に向けて第1前処理液を吐出する第1前処理工程S20を実施した。これによって、凹部12内に第1前処理液を充填した。第1前処理液としては、脱ガス処理が施されたDIWを用いた。
【0102】
次に、凹部12の内面12aに第1めっき層13を形成する第1めっき工程S21を実施した。具体的には、はじめに、25℃の第1めっき液を基板2に向けて吐出する第1置換工程S21aを、10分間にわたって実施した。次に、45℃の第1めっき液を基板2に向けて吐出する第1成膜工程S21bを、20分間にわたって実施した。なお、各第1めっき液に含有されるSPSの濃度は0ppmであった。
【0103】
その後、基板2に対して第2前処理液を供給し、これによって凹部12内に第2前処理液を充填させる第2前処理工程S30を、10分間にわたって実施した。第2前処理液としては、脱ガス処理が施されたDIWを用いた。
【0104】
次に、凹部12の内面12aに第2めっき層14を形成する第2めっき工程S31を実施した。具体的には、はじめに、25℃の第2めっき液を基板2に向けて吐出する第2置換工程S31aを、10分間にわたって実施した。次に、45℃の第2めっき液を基板2に向けて吐出する第2成膜工程S31bを、30分間にわたって実施した。なお、各第2めっき液に含有されるSPSの濃度は5ppmであった。このようにして、第1めっき層13および第2めっき層14を含むめっき層15を得た。その後、リンス処理工程S32などの適切な後工程を実施した。
【0105】
各めっき工程によって形成されためっき層を観察した。具体的には、第1めっき工程S21の終了後、および第2めっき工程S31の終了後の各々において、凹部12の上部、下部(底部)、および、上部と下部との間の中間部に形成されためっき層を観察した。結果を
図16に示す。なお
図16には、形成されためっき層の厚みが併せて示されている。
【0106】
図16に示すように、第1めっき工程S21によって形成された第1めっき層13の厚みは、凹部12の上部において58nmであり、中間部において45nmであり、底部において20nmであった。この場合、底部におけるカバレッジ(Coverage)は33%であった。なおカバレッジとは、凹部12の上部におけるめっき層の厚みに対する、凹部の下部(底部)におけるめっき層の厚みの比率のことである。
【0107】
また、第1めっき工程S21によって形成された第1めっき層13と、第2めっき工程S31によって形成された第2めっき層14と、を含むめっき層15の厚みは、凹部12の上部において62nmであり、中間部において65nmであり、底部において55nmであった。この場合、底部におけるカバレッジ(Coverage)は88%であった。このように本実施例によれば、凹部12の上部に形成されるめっき層15の厚みと、凹部12の下部に形成されるめっき層15の厚みとを略同一にすることができた。