特許第5917406号(P5917406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917406シリコンウェーハのエッジ研磨用組成物及びそれを用いたシリコンウェーハのエッジ研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917406
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】シリコンウェーハのエッジ研磨用組成物及びそれを用いたシリコンウェーハのエッジ研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160422BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20160422BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 621E
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550Z
   C09K3/14 550D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-539768(P2012-539768)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2011074213
(87)【国際公開番号】WO2012053616
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2010-237378(P2010-237378)
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荻野 一信
(72)【発明者】
【氏名】織田 博之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 修平
(72)【発明者】
【氏名】高見 信一郎
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080842(JP,A)
【文献】 特開2009−218288(JP,A)
【文献】 特開2008−124223(JP,A)
【文献】 特開2009−016759(JP,A)
【文献】 特開2003−094306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が1〜6のアルコール類と、
二酸化ケイ素と、
イミダゾール及びイミダゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種と、
アルカリ化合物と、
水とを含有するシリコンウェーハのエッジ研磨用組成物。
【請求項2】
前記アルコール類が脂肪族飽和アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のエッジ研磨用組成物。
【請求項3】
前記脂肪族飽和アルコールがグリセリンであり、前記エッジ研磨用組成物中にグリセリンを0.5質量%未満含有することを特徴とする請求項2に記載のエッジ研磨用組成物。
【請求項4】
さらにキレート剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエッジ研磨用組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のエッジ研磨用組成物を用いたシリコンウェーハのエッジ研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハのエッジを研磨する用途で使用されるエッジ研磨用組成物、及びその研磨用組成物を用いたシリコンウェーハのエッジ研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造プロセスでは、半導体インゴットをスライスして得られる基板の表面をラッピングにより成形する。スライスやラッピングにより基板表面に生じたダメージ層をエッチングにより除去した後、基板のエッジに割れや欠け、チッピングが発生するのを防止してエッジからのパーティクルの発生を抑制する目的、及びエピタキシャル成長時のエッジクラウンの発生を抑制する目的で、基板のエッジを面取りしてさらに研磨することが一般に行われている。エッジクラウンとは、半導体基板上にエピタキシャル層を成長させたときに、基板の中心部よりも基板の周辺部でエピタキシャル層が盛り上がって形成される現象をいう。
【0003】
エッジ研磨の後には、基板表面を鏡面に仕上げるために基板表面に対して一次研磨、二次研磨、及び仕上げ研磨を行うことが一般的である。場合によっては、二次研磨が省略されることや、二次研磨と仕上げ研磨の間にさらに別の研磨工程が追加されることもある。
【0004】
エッジ研磨は一般に、保持具に保持した基板のエッジに研磨用組成物を供給しながら行われるが、研磨時に飛び散ったり保持具を伝ったりして研磨用組成物が基板表面に付着し、乾燥して残留することがある。この付着残留物は、洗浄による除去が困難であり、基板表面に欠陥を生じさせる要因のひとつになっている。例えば、基板表面の付着残留物が十分に除去されないまま基板表面を研磨すると、研磨時に付着残留物が剥離し、基板表面にスクラッチが発生する原因となることがある。
【0005】
また、生産効率の向上及び低コスト化の観点から、より高い研磨速度を実現できるエッジ研磨用組成物及びエッジ研磨方法が求められている。
【0006】
半導体基板のエッジ研磨に使用される研磨用組成物として、特許文献1〜3に開示される研磨用組成物が知られている。特許文献1に開示のエッジ研磨用組成物には、研磨速度の向上と安定を主な目的として、弱酸と強塩基の組み合わせ、強酸と弱塩基の組み合わせ、及び弱酸と弱塩基の組み合わせのうちいずれかが含まれている。特許文献2に開示のエッジ研磨用組成物には、平均一次粒子径が8〜50nm、平均二次粒子径が12〜200nmであり、かつ平均二次粒子径/平均一次粒子径が1.4〜12である酸化ケイ素粒子が含まれており、この研磨用組成物は、8〜11のpH範囲でpH緩衝能を有している。特許文献3に開示のエッジ研磨用組成物には、研磨速度の向上を主な目的としてイミダゾール又はイミダゾール誘導体が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−158329号公報
【特許文献2】特開2001−118815号公報
【特許文献3】特開2006−114713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面欠陥の少ない半導体基板を得るために、エッジ研磨用組成物には、基板表面上に付着残留物を生じにくいこと、また、たとえ付着残留物が生じたとしても基板表面から容易に除去できることが要求される。しかしながら、特許文献1〜3に開示のエッジ研磨用組成物は、そのような要求を十分に満足するものでなく、更なる改良の余地を残している。
【0009】
そこで、本発明の目的は、表面欠陥の少ないシリコンウェーハを得るのにより適したエッジ研磨用組成物及びそれを用いたエッジ研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、炭素数が1〜6のアルコール類と、二酸化ケイ素と、イミダゾール及びイミダゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種と、アルカリ化合物と、水とを含有するシリコンウェーハのエッジ研磨用組成物を提供する。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、上記一態様のエッジ研磨用組成物を用いてシリコンウェーハのエッジを研磨する方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコンウェーハのエッジの研磨速度が高いことに加えて、ウェーハ表面上に付着残留物を生じにくい点、また、たとえ付着残留物が生じたとしてもウェーハ表面から容易に除去できる点で、表面欠陥の少ないシリコンウェーハを得るのに適したエッジ研磨用組成物が提供される。また、シリコンウェーハのエッジを高い研磨速度で研磨できることに加えて、ウェーハ表面上の付着残留物を少なくすることができるエッジ研磨方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
エッジ研磨用組成物
本実施形態のエッジ研磨用組成物は、アルコール類と、二酸化ケイ素と、イミダゾール又はイミダゾール誘導体と、アルカリ化合物と、水とを含有する。
【0015】
<アルコール類>
本発明者らの検討によれば、炭素数が1〜6のアルコール類を含有するエッジ研磨用組成物を用いて半導体基板のエッジ研磨を行った場合、研磨時及び研磨後の半導体基板の表面及びエッジがアルコール類の働きによって親水性に保たれることにより、基板表面上に付着残留物が生じにくいこと、また、たとえ付着残留物が生じたとしても基板表面から容易に除去できることがわかった。
【0016】
好ましいアルコール類は、炭素数が1〜6の脂肪族飽和アルコール、より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの直鎖又は分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールのほか、グリセリンのようにアルキル部分に水酸基などの置換基を有する脂肪族飽和アルコールが挙げられる。これらの中でも、使用後のエッジ研磨用組成物を廃棄するときの便宜の観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリンなどの炭素数が1〜3の脂肪族飽和アルコールが好ましい。最も好ましいのはグリセリンである。アルコール類は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エッジ研磨用組成物中のアルコール類の含有量は、0.005質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。アルコール類の含有量が多くなるにつれて、基板表面上に付着残留物が生じるおそれが低減する。
【0018】
エッジ研磨用組成物中のアルコール類の含有量はまた、0.5質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%未満である。アルコール類の含有量が少なくなるにつれて、エッジ研磨用組成物の分散安定性が向上する。
【0019】
<二酸化ケイ素>
本実施形態のエッジ研磨用組成物中に含まれる二酸化ケイ素は、半導体基板のエッジを機械的に研磨する働きをする。
【0020】
使用する二酸化ケイ素は、コロイダルシリカ又はフュームドシリカであることが好ましく、より好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカ又はフュームドシリカ、特にコロイダルシリカを使用した場合には、研磨により半導体基板のエッジに発生する傷が減少する。二酸化ケイ素は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
エッジ研磨用組成物中の二酸化ケイ素の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.4質量%以上である。二酸化ケイ素の含有量が多くなるにつれて、半導体基板のエッジの研磨速度が向上する。
【0022】
エッジ研磨用組成物中の二酸化ケイ素の含有量はまた、10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは5質量%未満である。二酸化ケイ素の含有量が少なくなるにつれて、エッジ研磨用組成物の分散安定性が向上する。
【0023】
<イミダゾール又はイミダゾール誘導体>
本実施形態のエッジ研磨用組成物中に含まれるイミダゾール又はイミダゾール誘導体は、イミダゾール環の1位の窒素原子の非共有電子対が半導体基板に作用し、半導体基板のエッジの研磨速度を上昇させる働きを有する。
【0024】
イミダゾール誘導体は、例えば、イミダゾール環の1位の窒素原子、2位の炭素原子、4位の炭素原子、及び5位の炭素原子に結合している水素原子のうちの少なくとも一つがメチル基及びエチル基などのアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基によって置き換えられたものであってもよい。エッジ研磨用組成物は、イミダゾール及びイミダゾール誘導体から選ばれる1種を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0025】
エッジ研磨用組成物中のイミダゾール及びイミダゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.004質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、最も好ましくは0.03質量%以上である。この含有量が多くなるにつれて、半導体基板のエッジの研磨速度が向上する。
【0026】
エッジ研磨用組成物中のイミダゾール及びイミダゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量は、1質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%未満であり、最も好ましくは0.1質量%未満である。この含有量が少なくなるにつれて、エッジ研磨後の半導体基板の表面の荒れが抑制される。
【0027】
<アルカリ化合物>
本実施形態のエッジ研磨用組成物中に含まれるアルカリ化合物は、半導体基板のエッジをエッチングする作用を有し、半導体基板のエッジを化学的に研磨する。
【0028】
使用可能なアルカリ化合物の例としては、例えばアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、及びN−メチルピペラジンが挙げられる。エッジ研磨後の半導体基板の金属汚染を抑える目的では、使用するアルカリ化合物は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、又は炭酸アンモニウムであることが好ましく、さらに好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、又は炭酸カリウムである。アルカリ化合物は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
エッジ研磨用組成物中のアルカリ化合物の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、最も好ましくは0.2質量%以上である。アルカリ化合物の含有量が多くなるにつれて、半導体基板のエッジの研磨速度が向上する。
【0030】
エッジ研磨用組成物中のアルカリ化合物の含有量は、2質量%未満であることが好ましく、より好ましくは1質量%未満である。アルカリ化合物の含有量が少なくなるにつれて、エッジ研磨後の半導体基板の表面の荒れが抑制される。
【0031】
<水>
本実施形態のエッジ研磨用組成物中に含まれる水は、エッジ研磨用組成物中の他の成分を溶解又は分散させる働きをする。水は、他の成分の作用を阻害する不純物をできるだけ含有しないことが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂を使って不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去したイオン交換水、あるいは純水、超純水又は蒸留水が好ましい。
【0032】
<キレート剤>
本実施形態のエッジ研磨用組成物は、キレート剤をさらに含有してもよい。キレート剤を含有する場合、エッジ研磨用組成物による半導体基板の金属汚染を抑えることができる。使用可能なキレート剤の例としては、例えば、アミノカルボン酸系キレート剤及び有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の具体例としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸、並びにこれら酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びリチウム塩が挙げられる。有機ホスホン酸系キレート剤の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸及びα−メチルホスホノコハク酸、並びにこれら酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びリチウム塩が挙げられる。中でも好ましいキレート剤は、アミノカルボン酸系キレート剤では、ジエチレントリアミン五酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸、並びにそれら酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びリチウム塩であり、有機ホスホン酸系キレート剤では、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びトリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、並びにそれら酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びリチウム塩である。最も好ましく使用されるキレート剤はエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)である。
【0033】
エッジ研磨方法
本実施形態のエッジ研磨用組成物は、半導体基板のエッジの研磨で通常に用いられるのと同じ装置及び条件で使用することができる。一般的には、半導体基板を保持具によって保持し、基板表面に対して垂直又は斜めに配置した研磨パッドを基板のエッジに押し付けた状態で、エッジ研磨用組成物を研磨パッドに供給しながら、半導体基板及び研磨パッドをエッジの円周方向に回転させる。このとき、研磨パッド及びエッジ研磨用組成物中の二酸化ケイ素が半導体基板のエッジに摩擦することによる物理的作用と、エッジ研磨用組成物中のイミダゾール又はイミダゾール誘導体とアルカリ化合物の組み合わせが半導体基板のエッジに与える化学的作用によって半導体基板のエッジは研磨される。
【0034】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
【0035】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、水溶性高分子をさらに含有してもよい。この場合、半導体基板の表面及びエッジが水溶性高分子の働きによってより親水性に保たれることにより、研磨後の半導体基板の表面上に付着残留物が生じるおそれはさらに低減する。使用可能な水溶性高分子の例としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、プルランが挙げられる。中でも好ましい水溶性高分子はヒドロキシエチルセルロース又はポリビニルアルコール、最も好ましいのはヒドロキシエチルセルロースである。
【0036】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、防腐剤、界面活性剤のような公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
【0037】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。
【0038】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、研磨装置内で循環使用されてもよい。その場合、エッジ研磨用組成物中のアルコール類、二酸化ケイ素、イミダゾール又はイミダゾール誘導体、アルカリ化合物、キレート剤の各含有量に減少が生じたときには適宜、循環使用中に減少分を補充するようにしてもよい。
【0039】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、製造時及び販売時には濃縮された状態であってもよい。すなわち、前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、エッジ研磨用組成物の原液の形で製造及び販売してもよい。
【0040】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物は、エッジ研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
【0041】
・ 前記実施形態のエッジ研磨用組成物を用いたエッジ研磨方法で使用される研磨パッドは、特に限定されないが、不織布タイプ、スウェードタイプなどのいずれの種類の研磨パッドを使用してもよく、また、砥粒を含むものであっても、砥粒を含まないものであってもよい。
【0042】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0043】
二酸化ケイ素、イミダゾール又はイミダゾール誘導体、アルカリ化合物及びアルコール類を、必要に応じてキレート剤とともにイオン交換水に混合して実施例1〜30のエッジ研磨用組成物を調製した。二酸化ケイ素、イミダゾール又はイミダゾール誘導体、アルカリ化合物、アルコール類、キレート剤及びその他の化合物から選ばれる成分の一部又は全部をイオン交換水に混合して比較例1〜8のエッジ研磨用組成物を調製した。実施例1〜30及び比較例1〜8の各エッジ研磨用組成物中の成分の詳細を表1に示す。
【0044】
表1の“二酸化ケイ素”欄において、“A”は平均一次粒子経が45nmで平均二次粒子径が104nmのコロイダルシリカを表し、“B”は平均一次粒子径が80nmで平均二次粒子径が97nmのコロイダルシリカを表す。
【0045】
表1の“アルカリ化合物”欄において、“KOH”は水酸化カリウムを表し、“KCO”は炭酸カリウムを表し、“TMAH”は水酸化テトラメチルアンモニウムを表す。
【0046】
表1の“アルコール類”欄において、“IPA”は2−プロパノール(別名イソプロピルアルコール)を表す。
【0047】
表1の“キレート剤”欄において、“TTHA”はトリエチレンテトラミン六酢酸を表し、“DTPA”はジエチレントリアミン五酢酸を表し、“EDTPO”はエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)を表す。
【0048】
表1の“その他の化合物”欄において、“HEC”はヒドロキシエチルセルロースを表し、“PEG”はポリエチレングリコールを表す。
【0049】
実施例1〜30及び比較例1〜8の各エッジ研磨用組成物を用いて、シリコンウェーハのエッジを表2に記載の条件で研磨した。使用したシリコンウェーハは、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であった。このとき、電子天秤を用いて計測される研磨前後のシリコンウェーハの重量の差から求められるエッジの研磨速度について評価した結果を表1の“研磨速度”欄に示す。同欄中、“A(特優)”は研磨速度が17.5mg/分以上であったことを示し、“B(優)”はそれが15mg/分以上17.5mg/分未満であったこと、“C(良)”は12.5mg/分以上15mg/分未満であったこと、“D(可)”は10mg/分以上12.5mg/分未満であったこと、“E(やや不良)”は7.5mg/分以上10mg/分未満であったこと、“F(不良)”は7.5mg/分未満であったことを示す。
【0050】
実施例1〜30及び比較例1〜8の各エッジ研磨用組成物を用いてエッジを研磨した後のシリコンウェーハを純水でスクラブ洗浄した後、シリコンウェーハの表面を目視にて観察して、ウェーハ表面上の付着残留物の量について評価した結果を表1の“付着残留物”欄に示す。同欄中、“A(優)”はシリコンウェーハの表面に付着残留物が全く認められなかったことを示し、“B(良)”はそれがほとんど認められなかったこと、“C(可)”はごく僅かにしか認められなかったこと、“D(やや不良)”はウェーハ表面の全体に亘り少量認められたこと、“E(不良)”はウェーハ表面の全体に亘り大量に認められたことを示す。
【0051】
実施例1〜30及び比較例1〜8の各エッジ研磨用組成物について、調製直後と調製から1ヵ月経過後で、シリコンウェーハのエッジの研磨速度を上記と同様にして測定し、両者を比較することにより各エッジ研磨用組成物の保存安定性を評価した。その結果を表1の“安定性”欄に示す。同欄中、“A(特優)”は調製から1ヶ月経過後の研磨速度と調製直後の研磨速度との差が3%未満であったことを示し、“B(優)”はそれが3%以上5%未満であったこと、“C(良)”は5%以上10%未満であったこと、“D(可)”は10%以上15%未満であったこと、“E(やや不良)”は15%以上20%未満であったこと、“F(不良)”は20%以上であったことを示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
表1に示すように、実施例1〜30においては、研磨速度及び安定性の評価がA〜Dで、付着残留物の評価がA〜Cであり、実用上満足できる結果が得られた。それに対し、比較例1〜8においては、研磨速度及び安定性のいずれかの評価がE又はFであるか、あるいは付着残留物の評価がD又はEであり、実用上満足できる結果が得られなかった。