(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線照射室の前記照射前待機部側の搬送口と、前記紫外線照射室の前記照射後退避部側の他の搬送口は、同一形状であることを特徴とする、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる基板処理システム1の構成の概略を示す平面図である。
図2及び
図3は、基板処理システム1の内部構成の概略を示す側面図である。なお、本実施の形態の基板処理システム1では、基板としてのウェハW上にSOC膜である有機膜を形成する場合について説明する。また基板処理システム1で処理されるウェハW上には、予めSiO
2膜等の所定のパターンが形成されている。
【0021】
基板処理システム1は、
図1に示すように複数、例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部と基板処理システム1との間で搬入出したり、カセットCに対してウェハWを搬入出したりするカセットステーション2と、ウェハWに所定の処理を施す複数の処理装置を備えた処理ステーション3とを一体に接続した構成を有している。
【0022】
カセットステーション2には、カセット載置台10が設けられている。カセット載置台10は、複数のカセットCをX方向(
図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。すなわち、カセットステーション2は、複数のウェハWを保有可能に構成されている。
【0023】
カセットステーション2には、X方向に延伸する搬送路11上を移動可能なウェハ搬送体12が設けられている。ウェハ搬送体12は、鉛直方向及び鉛直周り(θ方向)にも移動自在であり、カセットCと処理ステーション3との間でウェハWを搬送できる。
【0024】
処理ステーション3には、その中心部にウェハ搬送装置20が設けられている。このウェハ搬送装置20の周辺には、各種処理装置が多段に配置された、例えば4つの処理ブロックG1〜G4が配置されている。処理ステーション3の正面側(
図1のX方向負方向側)には、カセットステーション2側から第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2が順に配置されている。処理ステーション3の背面側(
図1のX方向正方向側)には、カセットステーション2側から第3の処理ブロックG3、第4の処理ブロックG4が順に配置されている。処理ステーション3のカセットステーション2側には、ウェハWの受け渡しを行うための受け渡し装置21が配置されている。ウェハ搬送装置20は、これらの処理ブロックG1〜G4内に配置された後述する各種処理装置、及び受け渡し装置21に対してウェハWを搬送できる。
【0025】
第1の処理ブロックG1には、
図2に示すように複数の液処理装置、例えばウェハWに有機膜を形成するための有機材料を塗布する塗布処理装置30、31が下から順に2段に重ねられている。第2の処理ブロックG2も同様に、塗布処理装置32、33が下から順に2段に重ねられている。これら塗布処理装置30〜33では、例えばウェハW上に有機材料を塗布するスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えば塗布ノズルからウェハW上に有機材料を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、有機材料をウェハWの表面に拡散させる。また、第1の処理ブロックG1及び第2の処理ブロックG2の最下段には、塗布処理装置30〜33に有機材料を供給するためのケミカル室34、35がそれぞれ設けられている。なお有機材料は、例えば有機膜であるSOC膜の組成物を所定の溶媒に溶解させた液体である。
【0026】
第3の処理ブロックG3には、
図3に示すようにウェハWに対して紫外線照射処理を行う紫外線照射装置40、41、42、ウェハWを加熱処理する熱処理装置43、ウェハWの温度を調節する温度調節装置44が下から順に例えば5段に重ねられている。
【0027】
第4の処理ブロックG4にも、第3の処理ブロックG3と同様に、紫外線照射装置50、51、52、熱処理装置53、温度調節装置54が下から順に5段に重ねられている。
【0028】
次に、上述した紫外線照射装置40〜42、50〜52の構成について説明する。紫外線照射装置40は、
図4及び
図5に示すように筐体100を有している。筐体100のウェハ搬送装置20側の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
筐体は上部が開口してもよい。
【0029】
筐体100内には、ウェハWを吸着保持する、基板保持部としてのウェハ保持機構101と、紫外線を照射する光源102を備えた紫外線照射室103が設けられている。筐体100の底面には、筐体100内の一端側(
図4中のX方向負方向側)から他端側(
図4中のX方向正方向側)まで平行に延伸する2本のガイドレール104、104が設けられている。ウェハ保持機構101はガイドレール104、104上に設けられ、ウェハ保持機構101に設けられた保持部搬送機構105によってガイドレール104、104上を自在に移動できる。
【0030】
紫外線照射室103は、筐体100の中央部近傍に配置されている。紫外線照射室103のX方向正方向側及びX方向負方向側の側面には、ウェハ保持機構101が通過する搬送口110、111が形成されている。換言すれば、搬送口110、111は、ウェハ保持機構101の断面より大きな開口であり、ガイドレール104、104に対応する位置に対向して配置されている。
【0031】
紫外線照射室103に設けられた光源102は、例えばウェハWの直径より長い長尺状のランプである。この光源102は、紫外線照射室103の天井面の中央付近に、平面視においてガイドレール104、104に直交する方向に延伸して配置されている。光源102の設置高さは、光源102の照射面からウェハ保持機構101までの距離が所定の長さ、本実施の形態では例えば6.5mmとなるように調整されている。光源102から照射される紫外線の波長は、例えば172nmである。なお、図示の例において光源102は紫外線照射室103の天井面に支持されて設けられているが、当該光源102は紫外線照射室103の天井面に設けられたガラス窓(図示せず)上に設けられていてもよい。かかる場合、紫外線照射部142から照射された紫外線はガラス窓を介して処理容器130の内部に進入する。
【0032】
紫外線照射室103におけるガイドレール104、104が延伸する方向の幅は、ウェハWの直径より小さく構成されている。また、紫外線照射室103のガイドレール104、104が延伸する方向と直交する方向の幅はウェハWの直径より大きく、より具体的には、ウェハ保持機構101が通過可能な大きさに構成されている。したがって、ウェハWに紫外線を照射するにあたっては、ウェハWを保持したウェハ保持機構101をガイドレール104、104に沿って移動させて、光源102の下方を横切らせる。
【0033】
また、筐体100内における紫外線照射室103外側のX方向負方向側の領域は、平面視においてウェハ保持機構101よりも広く構成されており、紫外線照射前のウェハWを待機させる照射前待機部106として機能する。即ち、照射前待機部106では、ウェハWの全面が紫外線照射室103の外部に位置する状態でウェハ保持機構101を待機させておくことができる。また、紫外線照射室103を挟んで照射前待機部106の反対側に位置する領域も、ウェハ保持機構101よりも広く構成されている。この領域は、光源102の下方を横切って紫外線照射されたウェハWの全面が紫外線照射室103の外部に位置する状態でウェハ保持機構101を待機させる、照射後退避部107として機能する。したがって、ウェハWの全面に紫外線を照射するにあたっては、ウェハWの全面が紫外線照射室103の外側に位置する状態でウェハ保持機構101を照射前待機部106で待機させ、次いで、ウェハ保持機構101を照射後退避部107に向けて移動させる。そして、ウェハWの照射後退避部107端部(
図4のX方向正方向側の端部)からウェハWの照射前待機部106側の端部(
図4のX方向負方向側の端部)にわたって光源102の下を横切らせることで、ウェハWの全面に紫外線が照射される。
【0034】
また、紫外線照射室103の天井面であって、光源102の例えば照射後退避部107側には、紫外線照射室103内を排気して減圧する排気機構120が排気管121を介して接続されている。また、光源102を挟んで排気管121とは反対側の天井面には、紫外線照射室103内に処理ガスを導入するガス供給機構122がガス供給管123を介して接続されている。ガス供給管123には、処理ガスの流れを制御するバルブや流量調整機構等を含む供給機器群124が設けられている。本実施の形態における処理ガスは、例えば酸素ガスを含むガスである。但し、紫外線照射室103内に酸素を含むガスを供給する場合は、ガス供給機構122を設けず、ガス供給管123に代えて天井面に大気を吸い込むための開口を形成してもよい。また、ウェハWを保持した状態のウェハ保持機構101が搬送口110、111を通過する際に、搬送口110、111とウェハ保持機構101との間に形成される隙間からも大気が吸い込まれるので、必ずしも開口そのものを設ける必要もない。かかる場合も、排気機構120により紫外線照射室103内を減圧することで、紫外線照射室103の外部から酸素を含んだガスである大気を紫外線照射室103内へ導入できる。また、排気管121及びガス供給管123も必ずしも紫外線照射室103の天井面に配置する必要はなく、紫外線照射室103内を所望の雰囲気にできれば、その接続位置は任意に設定が可能である。
【0035】
ウェハ保持機構101は、ウェハWの直径より大きく構成されており、所定の厚みを有する略矩形状に構成されている。ウェハ保持機構101の上面には、ウェハWの直径より大きく下方に窪んだ窪み部101aが形成されており、当該窪み101aにウェハWを収容できる。窪み部101aの底面には、図示しない吸気口が複数形成されており、この吸引口によりウェハWを吸着保持できる。また、窪み部101aの底面にはギャップピン130が複数設けられている。そして、この窪み部101aは、ウェハ保持機構101で保持したウェハWの上端面の高さが、ウェハ保持機構101の上端面の高さと同じとなるような深さを有している。そのため、ウェハWを保持した状態のウェハ保持機構101が搬送口110、111を通過する際に、搬送口110、111とウェハ保持機構101との間に形成される隙間の形状を一定に保つことができる。したがって、保持機構101が搬送口110、111を通過する際に、隙間から吸い込まれる大気の量の変動を最小限に抑制できる。その結果、紫外線照射室103内の圧力やガスの濃度、本実施の形態では酸素の濃度を概ね一定に保つことができる。
【0036】
また、ウェハ保持機構101には、加熱機構としてのヒータ131が内蔵されており、保持したウェハWを所定の温度に加熱することができる。
【0037】
照射前待機部106の下方であって、例えばウェハ保持機構101がウェハ搬送装置20との間でウェハWの受け渡しを行う位置には、ウェハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン132が例えば3本設けられている。昇降ピンは図示しない昇降機構により上下動できる。ウェハ保持機構101の中央部付近には、当該ウェハ保持機構101を厚み方向に貫通する貫通孔133が例えば3箇所に形成されている。そして、昇降ピン132は貫通孔133を挿通し、ウェハ保持機構101の上面から突出可能になっている。
【0038】
紫外線照射装置41、42、50〜52の構成は、上述した紫外線照射装置40の構成と同様であるので説明を省略する。
【0039】
以上の基板処理システム1には、
図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1における成膜処理を実行するプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0040】
本実施の形態にかかる基板処理システム1は以上のように構成されている。次に、その基板処理システム1で行われる有機膜を成膜する処理について説明する。
図6は基板処理システム1で処理される前のウェハWの状態を示し、
図7はウェハ処理の各工程におけるウェハWの状態を示している。
【0041】
基板処理システム1で処理されるウェハW上には、
図6に示すように予めSiO
2膜等の所定のパターンPが形成されている。ウェハW上においてパターンPは疎密に形成されており、ウェハW上には、パターンPの窪み部が形成されず、膜(パターンP)がウェハWの表面を覆う第1の領域Aと、パターンP、P間に窪み部Qが形成された第2の領域Bとが形成されている。すなわち、第1の領域Aはいわゆるブランケット領域であり、第2の領域Bは例えばラインアンドスペースのパターンPが形成された領域である。
【0042】
先ず、ウェハ搬送体12によって、カセット載置台10上のカセットCからウェハWが取り出され、処理ステーション3の受け渡し装置21に搬送される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置20によって温度調節装置44に搬送され、所定の温度に温度調節される。
【0043】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置20によって塗布処理装置30に搬送される。塗布処理装置30に搬入されたウェハWは、スピンコーティングによりウェハW上に有機材料が塗布される(工程S1)。
【0044】
このとき、
図7(a)に示すようにウェハW上に塗布された有機材料Lの表面張力や粘度に起因して、第2の領域Bの有機材料L(以下、「有機材料L
B」という。)は、第1の領域Aの有機材料L(以下、「有機材料L
A」という。)に比べて窪む。すなわち、有機材料L
BのパターンP表面からの高さH
B1は、有機材料L
AのパターンP表面からの高さH
A1より低くなる。そして、有機材料L
Aと有機材料L
Bとの間で段差D
1が生じる。
【0045】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置20によって紫外線照射装置40に搬送される。このとき、ウェハ保持機構101は照射前待機部106で待機している。紫外線照射装置40に搬入されたウェハWは、先ずウェハ保持機構101の上方に搬送され、予め上昇して待機していた昇降ピン132に受け渡される。続いて昇降ピン132が下降して、ウェハWはウェハ保持機構101のギャップピン130に載置されて吸着保持される。そしてウェハ保持機構101上のウェハWは、ヒータ131により所定の温度、例えば300℃に加熱される。ウェハWが所定の時間加熱されると、ウェハW上の有機材料Lが加熱されて、
図7(b)に示すようにウェハW上に有機膜Fが形成される(工程S2)。なお、第1の領域Aの有機膜F(以下、「有機膜F
A」という場合がある。)と第2の領域Bの有機膜F(以下、「有機膜F
B」という場合がある。)との間には、上述した段差D
1が生じている。
【0046】
次いで、ウェハ保持機構101が紫外線照射室103側に移動する。このとき、紫外線照射室103には、予めガス供給機構122から酸素ガスを含む処理ガスが供給されると共に、排気機構120により排気されて、所定の減圧雰囲気、例えば本実施の形態では、1Paに維持されている。この際、紫外線照射室103はウェハWの直径よりも幅が狭いため、短時間で所定の圧力まで減圧できる。そして、ウェハ保持機構101上のウェハWが光源102の下方を横切ることにより、ウェハWの全面に紫外線が照射される。このとき、照射された紫外線によって、紫外線照射室103内の酸化性ガスの処理雰囲気中に活性酸素とオゾンが発生する。これら活性酸素とオゾンによって、有機膜Fの表面が分解されて除去される(工程S3)。すなわち、有機膜Fのエッチバックが行われる。
【0047】
ここで、紫外線照射による活性酸素とオゾンの発生について詳述する。例えば有機膜Fの分解の速度を高めるためには、ウェハWの表面近傍において、特に活性酸素の密度を高めることが好ましい。しかしながら、活性酸素の寿命は極めて短いため、ウェハWと光源との間の領域で生成された活性酸素の全てがウェハWの表面近傍に到達するわけではなく、その大半はウェハWの表面近傍に到達することなく失活する。そのため、ウェハWの表面近傍の活性酸素の密度を高めるには、ウェハWの表面近傍における活性酸素の生成量を増加させる必要がある。しかしながら、紫外線は雰囲気中の酸素により吸収されて減衰するため、ウェハWの表面近傍において十分な紫外線の照射量を確保するには、例えば光源からの紫外線の照度を強めることが考えられるが、それにも限界がある。そのため従来は、ウェハWと光源との距離を、例えば1mm程度に近づけるという対策が取られている。しかしながら、ウェハWと光源102との距離を近づけると、紫外線の照度のばらつきに起因して、ウェハWの全面で均一な処理を行うことが困難であった。
【0048】
そこで、本発明者らは鋭意検討し、減圧雰囲気下で紫外線を照射することで、紫外線の照度を増加させることなく、ウェハWに到達する活性酸素の量を増加させることができるという点に想到した。即ち、活性酸素の寿命は概ね平均自由工程を移動する時間と同程度であり、減圧雰囲気下で紫外線を照射することで活性酸素の平均自由工程、即ち寿命を延ばし、その結果ウェハWに到達する活性酸素の量が増加する。
【0049】
より具体的には、例えば
図8に示すように、ウェハWの表面から平均自由工程以上の距離が離れた領域Uで生成された活性酸素の大半はウェハWに到達することなく失活する。ここで、例えば大気圧下での活性酸素の平均自由工程は例えば65nm程度であるため、ウェハWから65nm以上離れた領域Uは光源102からの紫外線を減衰させるのみであり、有機膜Fの分解には寄与しない。かかる場合、有機膜Fの分解に寄与するのは、ウェハWから平均自由工程の範囲内にある領域Vに到達した紫外線により生成された活性酸素である。しかしながら、領域Vに到達する紫外線は、領域Uで大幅に減衰しまうため、領域Vで生成される活性酸素も領域Uと比較して大幅に低下してしまう。したがって、例えば従来のように光源とウェハWとの距離を1mmとしても、依然として大半の紫外線は領域Uで吸収されて減衰することとなる。このことから、光源102とウェハWとの距離を平均自由工程以下とすることが好ましいが、ナノオーダーで光源102とウェハWとの距離を調整することは極めて困難であり、現実的ではない。
【0050】
そこで、例えば紫外線照射室103の圧力を、大気圧の約十万分の一である1Pa程度に減圧すると、平均自由工程は約十万倍の6.5mmとなる。したがって、本実施の形態のように光源102の照射面からウェハWの表面までの距離を6.5mmに設定すると、
図8に示した、ウェハWの表面から平均自由工程以上の距離が離れた領域Uは存在しないこととなる。そうすると、光源102から照射された紫外線により生成された活性酸素はその大半が失活することなくウェハWの表面に到達する。かかる場合、例えば大気圧下において光源とウェハWとの間の距離を65nmに設定する場合と同様の効果が得られる。したがって、本実施の形態では、光源102からの紫外線の照度が従来と同じであっても、ウェハWに到達する活性酸素の量が飛躍的に増加し、活性酸素による有機膜Fのエッチバックを効率的に行うことができる。
【0051】
また、ウェハWと光源102との距離を、従来の1mmよりも広い6.5mmとしているので、光源102の照度のばらつきを緩和し、ウェハW面内に紫外線を均一に照射できる。これにより、ウェハW面内での有機膜Fのエッチング量を均一にすることができる。
【0052】
さらに、ウェハ保持機構101の窪み部101aにより、ウェハ保持機構101が搬送口110、111を通過するにあたり、搬送口110、111とウェハ保持機構101との間に形成される隙間の形状が一定に保たれるので、紫外線照射室103内の圧力が概ね一定に保たれる。その結果、有機膜Fのエッチング処理が安定して行われる。
【0053】
このように有機膜Fの表面の除去は、減圧雰囲気下の紫外線処理室103において、ウェハ保持機構101によって有機膜Fを加熱しながら、光源102から紫外線を照射することで行われる。そして、
図7(c)に示すように有機膜Fの表面の除去は、有機膜F
Aが完全に除去される所定の深さまで、すなわち高さH
A1分の有機膜Fの表面が除去される。そうすると、パターンPの表面が露出し、第1の領域Aには有機膜F
Aが存在せず、第2の領域BにおいてパターンPの窪み部Q内に高さH
C1(=H
A1−H
B1)の有機膜F
Bが残存する。
【0054】
なお、紫外線照射室103で紫外線処理を行う際、有機膜Fを加熱することによって、有機膜Fの表面の除去を短時間で効率よく行うことができる。例えば常温(23℃)の有機膜Fの表面を100nm除去する場合、紫外線照射処理を10分間行う必要があるのに対し、本実施の形態のように300℃で有機膜Fを加熱しながら当該有機膜Fの表面を100nm除去する場合、紫外線照射処理は30秒間行うだけでよい。
【0055】
なお、光源から照射する紫外線の波長は、特に限定されるものではないが、本実施の形態のように172nmが好ましい。紫外線の波長が短いほど、紫外線照射処理を行う際のパワーが大きく、効率よく有機膜Fの表面を除去することができる。その反面、当該波長の短い紫外線は雰囲気に存在する物質に吸収されて減衰し易くなるが、本実施の形態のように紫外線照射室103を減圧雰囲気とすることで、光源102からの紫外線の減衰を抑制できるので、紫外線の波長は172nmとすることが好ましい。
【0056】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置20によって温度調節装置44に搬送され、所定の温度に温度調節される。
【0057】
以上のように工程S1におけるウェハW上への有機材料Lの塗布処理、工程S2におけるウェハW上の有機材料Lの加熱処理、工程S3におけるウェハW上の有機膜Fの表面除去処理が順次行われて、ウェハW上に有機膜Fが形成される。そして、これら工程S1〜S3が複数回、例えばn回行われる。なお、各回の工程S3後には温度調節装置44、54におけるウェハWの温度調節が行われるが、以下においては説明を省略する。
【0058】
次に2回目の工程S1〜S3について説明する。なお、2回目の工程S1〜S3は、それぞれ1回目の工程S1〜S3と同様の工程であり、以下の説明では要点のみについて説明する。
【0059】
2回目の工程S1では、塗布処理装置31においてウェハW上に有機材料Lが塗布される。この2回目の工程S1においては、1回目の工程S1に比べて、有機材料Lが小さい膜厚で塗布される。そして、後述する
図7(d)に示すように2回目の有機膜F
A、F
B(有機材料L
A、L
B)の高さH
A2、H
B2は、1回目の有機膜F
A、F
Bの高さH
A1、H
B1よりも小さくなる。
【0060】
その後、2回目の工程S2では、紫外線照射装置41のウェハ保持機構101においてウェハW上の有機材料Lが加熱されて、
図7(d)に示すようにウェハW上に有機膜Fが形成される。このとき、有機膜F
Aと有機膜F
Bとの間には、段差D
2が生じている。但し、2回目の工程S1において有機材料Lの膜厚を小さくした分、この段差D
2は上述した1回目の段差D
1よりも小さくなっている。
【0061】
その後、2回目の工程S3では、ウェハ保持機構101でウェハW上の有機膜Fを加熱しながら、紫外線照射室103の光源102から紫外線を照射することによって、
図7(e)に示すように有機膜Fの表面が除去される。有機膜Fの表面の除去は、有機膜F
Aが完全に除去されるまで、すなわち高さH
A2分の有機膜Fの表面が除去される。そうすると、第1の領域Aには有機膜F
Aが存在せず、第2の領域BにおいてパターンPの窪み部Q内に高さH
C2(=H
A1−H
B1)の有機膜F
Bが残存する。なお、2回目の工程S3後に残存する有機膜F
Bの高さH
C2は、1回目の工程S3後に残存する有機膜F
Bの高さH
C1よりも大きくなっている。すなわち、工程S1〜S3の回数を重ねるごとに、パターンPの窪み部Qに有機膜F
Bが溜まっていく。
【0062】
以上の2回目の工程S1〜S3と同様に、3回目〜n回目の工程S1〜S3を行う。そうすると、有機膜F
Aと有機膜F
Bとの間の段差D
3〜D
nは小さくなり、最終的には段差D
nはほぼゼロになる。そうすると、
図7(f)に示すように有機膜F
Bの表面の高さとパターンPの表面の高さが同一になる。
【0063】
その後、塗布処理装置32においてウェハW上に所定の膜厚の有機材料Lを塗布し、熱処理装置43でウェハW上の有機材料Lを加熱する。こうして、
図7(g)に示すようにウェハW上に所定の膜厚であり、且つ表面が平坦化された有機膜Fが形成される。
【0064】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置20によって受け渡し装置21に搬送され、ウェハ搬送体12によってカセットCに戻される。こうして基板処理システム1における一連の成膜処理が終了する。
【0065】
以上の実施の形態によれば、紫外線照射室103を挟んで照射前待機部106と照射後退避部107が設けられ、ウェハWを保持したウェハ保持機構101を保持部搬送機構105により紫外線照射室を横切らせることで、ウェハWの全面に紫外線を照射できる。この際、排気機構120により紫外線照射室103内が減圧されているので、紫外線照射室103内での紫外線の減衰を抑えることができる。そのため、光源102とウェハWとの間に所定の間隔、本実施の形態では、紫外線照射室103の圧力下における活性酸素の平均自由工程と概ね等しい距離である6.5mmを確保できるので、光源102の照度のばらつきを緩和できる。その結果、ウェハW面内に紫外線を均一に照射し、ウェハW面内での均一な処理を行うことができる。ここで、紫外線照射室103の幅は、ウェハWの直径より小さいため、紫外線照射室103内の容積を小さくできる。したがって、大がかりな排気機構120を設けることなく紫外線照射室103内を所望の圧力に減圧できる。また、紫外線照射室103内を所望の圧力まで減圧させるのに要する時間も低減できるため、スループットの低下を最低限に抑えることができる。
【0066】
また、ウェハ保持機構101の窪み部101aにより、ウェハ保持機構101が搬送口110、111を通過するにあたり、搬送口110、111とウェハ保持機構101との間に形成される隙間の形状が一定に保たれる。そのため、紫外線照射室103内の圧力が概ね一定に保たれ、有機膜Fのエッチング処理が安定して行われる。なお、搬送口110、111は同一形状であることが好ましい、そうすることで、例えば照射前待機部106から紫外線照射室103に吸い込まれる大気の量と、照射後退避部107から紫外線照射室103に吸い込まれる大気の量が等しくなり、紫外線照射室103に圧力の偏りが生じることを防ぐことができる。これにより、紫外線照射室103内での活性酸素の濃度を均一にし、ウェハWに面内均一な処理を施すことができる。
【0067】
さらには、ウェハ保持機構101がヒータ131を備えているので、ウェハW及び有機膜Fを加熱しながら紫外線処理を行うことができる。したがって、有機膜Fの表面の除去を短時間で効率よく行うことができる。なお、ウェハWの加熱は、例えばガス供給機構122から供給する処理ガスを加熱することにより行っても良い。かかる場合、ガス供給機構122、あるいはガス供給管121に、処理ガスを加熱する加熱機構を設けてもよい。
【0068】
なお、照射前待機部106及び照射後退避部107は、ウェハWに紫外線照射室103の光源102からの紫外線が照射されない位置までウェハ保持機構101を移動できる程度の広さを有していればよく、必ずしもウェハ保持機構101全体が紫外線照射室103の外部に退避できる大きさを有していなくてもよい。反対に、ウェハWに紫外線が照射されない位置までウェハ保持機構101を退避させた場合に、例えば
図9に示すように、ウェハW保持機構の一部が、紫外線照射室103に進入した状態となるように、例えばガイドレール104、104の端部の位置、照射前待機部106及び照射後退避部107の広さ、ウェハ保持機構101の大きさを調整してもよく、あるいは保持部移動機構105の動作を制御してもよい。なお、
図9では、ウェハ保持機構101の照射後退避部107側の端部を照射後退避部107側に伸ばした状態を描図している。ウェハW保持機構の一部を、常時、紫外線照射室103に進入した状態とすることで、常に搬送口110、111とウェハ保持機構101との間に隙間が形成された状態となる。これにより、搬送口110、111から紫外線照射室103側に吸い込まれる大気の量を低減できるので、紫外線照射室103内を常に所定の減圧状態に維持できる。したがって、複数のウェハWに紫外線を照射するにあたり、その都度紫外線照射室103の圧力が下がるのを待つ必要がなく、スループットの低下を避けることができる。
【0069】
また、搬送口110、111から紫外線照射室103側に吸い込まれる大気の量を低減するという観点からは、搬送口110、111とウェハ保持機構101との間の隙間は極力狭くすることが好ましい。また、搬送口110、111の内側に例えばラビリンスシールとして機能する凹凸を設け、搬送口110、111からの大気の吸い込み量を低減するようにしてもよい。
【0070】
なお、以上の実施の形態では、照射前待機部106と、照射後退避部107は筺体100により囲われた状態となっていたが、紫外線照射室103を適切に排気できれば、照射前待機部106と、照射後退避部107は大気圧の状態であってもよいため、照射前待機部106と、照射後退避部107は必ずしも筺体100に囲われている必要はない。かかる場合、例えば筺体100上部の照射前待機部106と、照射後退避部107に対応する位置が開口していてもよい。
【0071】
以上の実施の形態では、ガス供給機構122から酸素ガスを含むガスを供給したが、ガス供給機構122から供給するガスは、紫外線照射装置103で行う処理により任意に設定が可能であり、例えばアンモニアガス、水蒸気、又はメタノールやエタノールなどを供給してもよい。例えば、ガス供給機構122からアンモニアガスを含んだガスを供給し、光源102から紫外線を照射することで、窒素ラジカルを生成して、ウェハWの表面に例えば窒化膜を形成できる。また、水蒸気、メタノール及びエタノールを供給することで、ウェハWの表面を酸化し、例えば酸化膜を形成したり、例えば炭素汚染の原因となる炭素を酸化させて洗浄を行ったりすることができる。
【0072】
以上の実施の形態では、ウェハ保持機構101は吸引口によりウェハWを保持する、いわゆる真空チャックであったが、ウェハWを吸着保持できれば他の機構、例えば静電チャックであってもよい。なお、ウェハWを吸着保持するのは、紫外線照射室103と照射前待機部106及び照射後退避部107との圧力差によりウェハWが浮き上がったり動いたりすることを防止するためである。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。