特許第5917512号(P5917512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917512センサー素子、結露センサー、湿度センサー、結露検知方法及び露点計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917512
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】センサー素子、結露センサー、湿度センサー、結露検知方法及び露点計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20160428BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20160428BHJP
   B82Y 15/00 20110101ALI20160428BHJP
【FI】
   G01N21/41 102
   B82Y30/00
   B82Y15/00
【請求項の数】17
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-520496(P2013-520496)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2012063858
(87)【国際公開番号】WO2012172971
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-131611(P2011-131611)
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】新田 龍三
(72)【発明者】
【氏名】松村 康史
(72)【発明者】
【氏名】榎本 靖
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−133927(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140714(WO,A1)
【文献】 KUANG M,外,Fabrication of Thermoresponsive Plasmonic Micriospheres with Long-Term Stability from Hydrogel Spher,Adv Funct Mater,2005年10月,Vol.15,No.10,P.1611-1616
【文献】 金子信,外,銀ナノ粒子分散表面の結露に対するプラズモン共鳴応答,OPTICS & PHOTONICS JAPAN講演予稿集,2010年11月 8日,P.36−37
【文献】 橋本敏,外,ナノ粒子リソグラフィを用いて作製された銀ナノ構造によるプラズモン共鳴結露センシング,電気学会ケミカルセンサ研究会資料,2009年 7月23日,P.45−48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 33/00−33/98
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/49
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子分散複合体と、
被検出物質と前記金属微粒子分散複合体との相互作用によって生じる光学的信号もしくは電気的信号の変化を検出する検出部と、
を備えたセンサー素子であって、
前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであり、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであり、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていることを特徴とするセンサー素子。
【請求項3】
前記金属微粒子分散複合体の空隙率が15〜95%の範囲内にある請求項1に記載のセンサー素子。
【請求項4】
前記金属微粒子分散複合体における金属微粒子の体積分率は、0.05〜30%の範囲内である請求項1又は3に記載のセンサー素子。
【請求項5】
前記金属微粒子が、Au、Ag又はCuの金属微粒子である請求項1、3又は4のいずれか1項に記載のセンサー素子。
【請求項6】
前記金属微粒子が、380nm以上の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる請求項1、3、4又は5のいずれか1項に記載のセンサー素子。
【請求項7】
金属微粒子分散複合体と、
前記金属微粒子分散複合体の片側に配置された光反射性部材と、
前記金属微粒子分散複合体にむけて光を照射する光源と、
前記金属微粒子分散複合体の表面及び前記光反射性部材からの反射光を受光する受光部と、
前記反射光の吸収スペクトルを測定する分光装置又は反射光強度を測定する光検出器と、
を備えた結露センサーであって、
前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであり、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであり、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていることを特徴とする結露センサー。
【請求項8】
前記金属微粒子分散複合体は、
光源から照射された光を受光する第1の面と、
該第1の面の反対側に形成された第2の面と、
を備えており、前記第2の面に接して前記光反射性部材が設けられている請求項7に記載の結露センサー。
【請求項9】
前記光反射性部材は、
光透過層と、
該光透過層に積層された金属層と、
を備えている請求項7又は8に記載の結露センサー。
【請求項10】
前記光反射性部材は、前記金属層を覆う保護層をさらに備えている請求項9に記載の結露センサー。
【請求項11】
前記保護層が、Ni−Cr合金からなる請求項10に記載の結露センサー。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1項に記載の結露センサーと、
前記金属微粒子分散複合体の温度を計測する温度測定装置と、
前記金属微粒子分散複合体の温度調節を行う温度制御装置と、を備えた露点計測装置。
【請求項13】
請求項7から11のいずれか1項に記載の結露センサーを用い、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの変化、吸収強度の変化又は反射光強度の変化をもとに結露の発生を検知する結露検知方法。
【請求項14】
光を照射する光源と、
光を受光する受光部と、
前記光源と前記受光部との間の光路に介在して設けられた金属微粒子分散複合体と、
を備えたセンサー素子であって、
前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであり、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであり、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていることを特徴とするセンサー素子。
【請求項15】
光を照射する光源と、
光を受光する受光部と、
前記光源と前記受光部との間に光路を形成する光透過性部材と、
前記光透過性部材に近接して設けられた金属微粒子分散複合体と、
を備えたセンサー素子であって、
前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであり、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであり、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていることを特徴とするセンサー素子。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のセンサー素子を備え、湿度の変化を検出する湿度センサー。
【請求項17】
前記光源は、少なくとも、湿度測定用の波長と補正用の波長の2種類の波長の光を前記金属微粒子分散複合体に照射するものである請求項16に記載の湿度センサー。
【請求項18】
基板と、
前記基板の極性に対し反対の極性を有するソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記基板上に形成されたゲート積層体と、
前記ゲート積層体上に配置された金属微粒子分散複合体と、
を備え、
前記金属微粒子複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであり、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであり、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えている電界効果トランジスタ型センサー素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のセンシングに利用可能なセンサー素子、その適用例である結露センサー、湿度センサー、結露検知方法及び露点計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの微粒子は、幾何学的な高い比表面積を有していることに加え、量子サイズ効果により、光学特性の変化、融点の低下、高触媒特性、高磁気特性等を発現する。このことから、前記微粒子は、触媒反応や発光特性などの化学的および物理的な変換特性の向上など、バルク材料では得られなかった新機能が期待され、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料、医薬品等、様々な分野において非常に重要な材料となっている。特に、数nm〜100nm程度のサイズの金属微粒子では、微粒子中の電子が、特定の波長の光と相互作用を生じて共鳴する局在型表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance ; LSPR)という現象を有しており、近年、この現象を活かして、様々なデバイスへの応用が研究されている。この局在型表面プラズモン共鳴は、金属微粒子の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化に敏感である為、「金属微粒子の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する」、という特徴を持っており、この特徴を活かして、センシング分野に応用する検討が盛んに行われている。
【0003】
ところで、近年、電子情報社会の発展に伴い、さまざまな電子デバイスが利用されている。電子デバイスを製造する過程や利用する過程では、電子回路など電子部品をショートさせる原因となる水分が大きな問題となっており、結露を前もって感知する方法の開発が求められている。結露が起こる温度を確認する方法としては、露点計による露点温度の測定が挙げられる。露点計は、静電容量式露点計と冷却式露点計に大別される。静電容量式露点計は、高分子化合物や酸化アルミニウムを用い、水分の付着による電気容量の変化を測定して、露点を計測するものである。また、冷却式露点計は、観測面を冷却していき、結露を生じた時の温度を測定するものである。しかしながら、静電容量式露点計は、高分子化合物や酸化アルミニウムの電気容量の測定結果から露点を間接的に測定することになるため、どうしても露点に誤差が生じ易いという問題がある。また、鏡面冷却式露点計は、静電容量式露点計より正確な露点が得られるものの、鏡面に結露が生じて初めて露点温度が測定されるため、結露の発生を前もって感知することができない。
【0004】
一方、特許文献1には、結露を未然に予知する結露予知装置が記載されている。この発明は、熱伝素子と、この熱伝素子に熱的に結合された結露センサーと、この熱伝素子に電流を供給する電源とを備え、結露センサーを熱伝素子により周囲温度よりも低く保持して結露を予知するものである。この方法を用いれば、周囲温度よりも低く保持された結露センサーが先に結露するため、結露を未然に予知できる。しかしながら、結露センサーを周囲温度よりも常に低く保持する必要があり、冷却装置、温度制御装置およびそれを常に作動させる電力が必要である。また、特許文献2には、結露が予測される表面の感応部材を加熱手段と冷却手段に接続し、加熱手段により表面の初期温度より温度(ΔT)上昇させ、ついで温度(2ΔT)冷却し、ΔTと2ΔTに要した時間割合により結露を予知する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、結露を予知するために、時間割合を比較する必要があるため、結露を予知するのにある程度の時間が必要で、結露発生を即座に予知することができないという問題があった。
【0005】
上記のとおり、結露を予知するための従来技術は、結露センサーを周囲温度よりも常に低く保持する機構が必要であったり、結露検出に時間を要したりするという問題があった。そのため、より簡便な方法で、短時間で精度よく結露を検出もしくは予知できる技術が求められていた。
【0006】
また、結露センサー以外にも、例えば湿度変化、化学物質、生体分子等の検出を、より簡便に、短時間で精度よく行うことができる技術の提供が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1989−127942号公報
【特許文献2】特開1994−300721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡易な装置構成で、高感度かつ迅速に種々の検出を行うことが可能なセンサー素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を行った結果、三次元的な網目構造を有するマトリックス中に金属微粒子を分散させた金属微粒子分散複合材料を利用することによって、被検出物質に対して高感度の応答性を有するセンサー素子を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の観点のセンサー素子は、金属微粒子分散複合体と、被検出物質と前記金属微粒子分散複合体との相互作用によって生じる光学的信号もしくは電気的信号の変化を検出する検出部と、を備えている。このセンサー素子において、前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の観点のセンサー素子は、前記金属微粒子分散複合体が、以下のa〜dの構成:
a)前記固体骨格部はアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)前記金属微粒子は、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
d)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていてもよい。
【0012】
本発明の第1の観点のセンサー素子は、前記金属微粒子分散複合体の空隙率が15〜95%の範囲内にあってもよい。
【0013】
本発明の第1の観点のセンサー素子において、前記金属微粒子分散複合体における金属微粒子の体積分率は、0.05〜30%の範囲内であってもよい。
【0014】
本発明の第1の観点のセンサー素子は、前記金属微粒子が、Au、Ag又はCuの金属微粒子であってもよい。
【0015】
本発明の第1の観点のセンサー素子は、前記金属微粒子が、380nm以上の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであってもよい。
【0016】
本発明の第2の観点の結露センサーは、金属微粒子分散複合体と、前記金属微粒子分散複合体の片側に配置された光反射性部材と、前記金属微粒子分散複合体にむけて光を照射する光源と、前記金属微粒子分散複合体の表面及び前記光反射性部材からの反射光を受光する受光部と、前記反射光の吸収スペクトルを測定する分光装置又は反射光強度を測定する光検出器と、を備えている。この結露センサーにおいて、前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の観点の結露センサーにおいて、前記金属微粒子分散複合体は、光源から照射された光を受光する第1の面と、該第1の面の反対側に形成された第2の面と、を備えており、前記第2の面に接して前記光反射性部材が設けられていてもよい。
【0018】
本発明の第2の観点の結露センサーにおいて、前記光反射性部材は、光透過層と、該光透過層に積層された金属層と、を備えていてもよい。
【0019】
本発明の第2の観点の結露センサーにおいて、前記光反射性部材は、前記金属層を覆う保護層をさらに備えていてもよい。
【0020】
本発明の第2の観点の結露センサーは、前記保護層が、Ni−Cr合金からなるものであってもよい。
【0021】
本発明の第3の観点の露点計測装置は、上記いずれかに記載の結露センサーと、前記金属微粒子分散複合体の温度を計測する温度測定装置と、前記金属微粒子分散複合体の温度調節を行う温度制御装置と、を備えている。
【0022】
本発明の第4の観点の結露検知方法は、上記いずれかに記載の結露センサーを用い、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの変化、吸収強度の変化又は反射光強度の変化をもとに結露の発生を検知する。
【0023】
本発明の第5の観点のセンサー素子は、光を照射する光源と、光を受光する受光部と、前記光源と前記受光部との間の光路に介在して設けられた金属微粒子分散複合体と、を備えている。このセンサー素子において、前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の観点のセンサー素子は、光を照射する光源と、光を受光する受光部と、前記光源と前記受光部との間に光路を形成する光透過性部材と、前記光透過性部材に近接して設けられた金属微粒子分散複合体と、を備えている。このセンサー素子において、前記金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであることを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の観点の湿度センサーは、上記第5又は第6の観点のセンサー素子を備え、湿度の変化を検出するものである。
【0026】
本発明の第7の観点の湿度センサーにおいて、前記光源は、少なくとも、湿度測定用の波長と補正用の波長の2種類の波長の光を前記金属微粒子分散複合体に照射するものであってもよい。
【0027】
本発明の第8の観点の電界効果トランジスタ型センサー素子は、基板と、前記基板の極性に対し反対の極性を有するソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記基板上に形成されたゲート積層体と、前記ゲート積層体上に配置された金属微粒子分散複合体と、を備えている。この電界効果トランジスタ型センサー素子において、前記金属微粒子複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明のセンサー素子によれば、マトリックスが、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有する三次元的な網目構造となっており、金属微粒子がこのマトリックス内に三次元的に分散している金属微粒子分散複合体を用いるため、各種センシングをより簡便に、短時間で精度よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る結露センサーに用いることが可能なナノコンポジットにおけるマトリックスの構造を模式的に示す図面である。
図2】ナノコンポジットの厚み方向における断面の金属微粒子の分散状態を模式的に示す図面である。
図3図2のナノコンポジットの表面に平行な断面の金属微粒子の分散状態を模式的に示す図面である。
図4】金属微粒子の構造を説明する図面である。
図5】本発明の一実施の形態にかかる結露センサーの概略構成を説明する図面である。
図6】結露の判定方法の説明に供する図面である。
図7】結露センサーを応用した露点計の概略構成を説明する図面である。
図8】実施例1における露点の評価方法の一例を示すチャートである。
図9】実施例1における露点の評価方法の別の例を示すチャートである。
図10】本発明の第2の実施の形態にかかる湿度センサーの概略構成を示す説明図である。
図11】本発明の第2の実施の形態にかかる湿度センサーの外観構成の一例を示す図面である。
図12】第1の変形例に係る湿度センサーの概略構成を示す側面図である。
図13】第1の変形例に係る湿度センサーの概略構成を示す平面図である。
図14】第2の変形例に係る湿度センサーの概略構成を示す説明図である。
図15】本発明の第3の実施の形態にかかるセンサー素子の概略構成を示す説明図である。
図16】本発明の第3の実施の形態にかかるセンサー素子を用いた湿度センサーの構成例を模式的に示す説明図である。
図17】本発明の第4の実施の形態にかかるセンサー素子の概略構成を示す説明図である。
図18】第4の実施の形態にかかるセンサー素子の製造方法の説明に供する工程図である。
図19図18に続く、第4の実施の形態にかかるセンサー素子の製造方法の説明に供する工程図である。
図20】結合化学種を有するナノコンポジットの説明に供する拡大図である。
図21】結合化学種による特異的結合の説明に供する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のセンサー素子は、金属微粒子分散複合体と、被検出物質と前記金属微粒子分散複合体との相互作用によって生じる光学的信号もしくは電気的信号の変化を検出する検出部と、を備えている。そして、金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものである。このような特徴を有するセンサー素子は、例えば、結露センサー、湿度センサー、ガスセンサー、バイオセンサー、化学センサー、SERS(表面増強ラマン散乱)、SEIRA(表面増強赤外吸収)、NSOM(走査型近接場光学顕微鏡)等の各種センシング用デバイスに適しており、簡易な構成で高精度の検出が可能になる。以下、本発明のセンサー素子の好ましい実施の形態について説明する。
【0031】
[ナノコンポジット]
まず、本発明のセンサー素子に用いるナノコンポジット(金属微粒子分散複合体)の構成について、図1〜4を参照しながら詳細に説明する。図1は、ナノコンポジット10におけるマトリックス層1の構造を模式的に示している。図2は、ナノコンポジット10の厚み方向における断面の金属微粒子3の分散状態を模式的に示している。図3は、ナノコンポジット10の面方向における断面の金属微粒子3の分散状態を模式的に示している。図4は、金属微粒子3を拡大して説明する図面である。なお、図4では、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径をD、小さい方の金属微粒子3の粒子径をDと表しているが、両者を区別しない場合は単に粒子径Dと表記する。
【0032】
本発明で用いるナノコンポジット10は、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる金属微粒子分散複合体である。マトリックス内に金属微粒子が分散した金属微粒子分散複合体を、金属微粒子が持つ局在型表面プラズモン共鳴現象を利用したデバイス等の用途に適用する場合には、金属微粒子をマトリックスに固定化し安定させる必要がある。また、少なくとも、その吸収スペクトルの強度が大きいことが重要であり、加えて、一般に吸収スペクトルがシャープである程、高感度な検出が可能となる。強度が大きくシャープな吸収スペクトルを得るには、例えば、
1)金属微粒子の大きさが所定の範囲内に制御されていること、
2)金属微粒子の形状が均一であること、
3)金属微粒子が隣り合う金属微粒子とある一定以上の粒子間隔を保った状態でお互いが離れていること、
4)金属微粒子分散複合体に対する金属微粒子の体積充填割合がある一定の範囲で制御されていること、
5)金属微粒子がマトリックスの表層部から存在するとともに、その厚さ方向にも所定の粒子間距離を保ちながら偏りなく分布していること、
などの構造的特性を金属微粒子分散複合体が備えていることが好ましい。
【0033】
また、金属微粒子分散複合体を、金属微粒子の外部環境の変化によって生じる局在型表面プラズモン共鳴の波長変化を高感度に感知するセンサー用途への適用を図るには、金属微粒子分散複合体は上記特性に加えて、更に、
6)金属微粒子が外部環境に露出した状態であること、
などの構造的特性を備えることが好ましい。
【0034】
ナノコンポジット10は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有するマトリックス層1と、該マトリックス層1の固体骨格部1aに固定された金属微粒子3とを備えている。また、ナノコンポジット10は、以下のa〜dの構成を備えていることが好ましい。
a)固体骨格部1aはアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)金属微粒子3の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が60%以上である;
c)金属微粒子3は、各々の金属微粒子3同士が接することなく、隣り合う金属微粒子3における粒子径Dが大きい方の粒子径D以上の間隔で存在している;
d)金属微粒子3は、マトリックス層1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。
【0035】
(マトリックス層)
マトリックス層1は、図1に示したように、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有している。空隙1bは、マトリックス層1の外部空間に連通している。上記a)に示したとおり、固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成していることが好ましい。この場合、固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有する金属酸化物の微細な無機フィラー(又は結晶)の集合体であり、該無機フィラーは、粒子状、鱗片状、板状、針状、繊維状、キュービック状等の形状を有する。このような無機フィラーの集合体による三次元的な網目構造は、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有する金属酸化物の無機フィラーを溶液に分散したスラリーを加熱処理して得られるものが好ましい。また、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有する金属酸化物は、金属微粒子3となる金属イオンを加熱還元する際にも耐熱性を有する材料として有利であり、化学的安定性の観点からも好ましい。なお、アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)と呼ばれているものには、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)、ギブサイト、ダイアスポア等の各種のものが知られているが、この中でも特にベーマイトが最も好ましい。ベーマイトの詳細については後述する。
【0036】
このようなマトリックス層1の構造上の特徴は、マトリックス層1が気体や液体に対して透過性を有し、金属微粒子3の利用効率を高める要因となっている。金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット10の空隙率は、15〜95%の範囲内にあることが好ましい。ここで、ナノコンポジット10の空隙率は、ナノコンポジット10の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層1の固体骨格部1aを形成する材料及び金属微粒子3の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、後述する式(A)にしたがって算出することができる。空隙率が15%未満では、外部環境に対する開放性が低下するので、金属微粒子3の利用効率が低下する場合がある。また、ナノコンポジット10を製造する際に、例えば予め形成したマトリックス層1に金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる場合には、マトリックス層1全体に含浸させることが困難となり、均一な分散状態を得ることが難しい。一方、空隙率が95%を超えると、固体骨格部1aや金属微粒子3の存在比率が低下するので、機械的強度が低下したり、金属微粒子3による作用(例えば、局在型表面プラズモン共鳴効果)が低下する場合がある。
【0037】
また、ナノコンポジット10における金属微粒子3の空隙1bに対する体積割合は、上記と同様に金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット10の空隙1bの全容量に対し、好ましくは0.08〜50%の範囲内がよい。
【0038】
マトリックス層1の厚みTは、金属微粒子3の粒子径Dによっても異なるが、局在型表面プラズモン共鳴を利用する用途においては、例えば、20nm〜20μmの範囲内とすることが好ましく、30nm〜10μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0039】
ナノコンポジット10が、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合、光反射系又は光透過系のいずれの局在型表面プラズモン共鳴も利用することが可能である。光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合には、マトリックス層1は金属微粒子3の局在型表面プラズモン共鳴を生じさせるために光透過性を有することが好ましく、特に、380nm以上の波長の光を透過する材質であることが好ましい。
【0040】
固体骨格部1aは、三次元的な網目構造を形成しやすいアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有することが好ましい。固体骨格部1aは、さらに、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどや、複数種類の金属元素を含む無機酸化物を含有してもよく、これらは単独又は複数を混合することもできる。
【0041】
(金属微粒子)
本発明で用いるナノコンポジット10において、金属微粒子3の粒子径Dや粒子間距離Lの制御しやすさの観点から、金属微粒子3は、その前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものが好ましい。このようにして得られる金属微粒子3として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等の金属種を用いることができる。また、これらの金属種の合金(例えば白金−コバルト合金など)を用いることもできる。これらの中でも、特に局在型表面プラズモン共鳴を奏する金属種として好適に利用できるものは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)が挙げられる。380nm以上における可視領域の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる金属種として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)が好ましく挙げられ、特に金(Au)は表面酸化されにくく保存安定性がよいので、最も望ましい。
【0042】
金属微粒子3の形状は、例えば球体、長球体、立方体、切頭四面体、双角錘、正八面体、正十面体、正二十面体等の種々の形状であってよいが、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになる球形が最も好ましい。ここで、金属微粒子3の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより確認できる。また、金属微粒子3の平均粒子径は、任意100粒の金属微粒子3を測定したときの面積平均径とする。また、球体の金属微粒子3とは、形状が球体及び球体に近い金属微粒子で、平均長径と平均短径の比が1又は1に近いもの(好ましくは0.8以上)をいう。さらに、それぞれの金属微粒子3における長径と短径との関係が、好ましくは長径<短径×1.35の範囲内、より好ましくは長径≦短径×1.25の範囲内がよい。なお、金属微粒子3が球体でない場合(例えば正八面体など)は、その金属微粒子3におけるエッジ長さが最大となる長さを金属微粒子3の長径とし、エッジ長さが最小となる長さを金属微粒子3の短径として、さらに前記長径をその金属微粒子3の粒子径Dと見做すこととする。
【0043】
上記b)に示したように、金属微粒子3の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子3の割合が60%以上であることが好ましい。ここで平均粒子径とは、金属微粒子3の直径の平均値(メディアン径)を意味する。粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子3の割合(全金属微粒子に対する個数割合)が60%未満になると、局在型表面プラズモン共鳴の高い効果が得られにくい。また、金属微粒子3の粒子径Dが100nmを超えると、充分な局在型表面プラズモン共鳴効果が得られにくい。また、例えば金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット10は、その粒子径分布が比較的小さくなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなものが得られやすい。従って、金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット10は、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されず、好ましい態様となる。一方、金属微粒子3が粒子径75nmを超えるものを含むナノコンポジット10でも、金属微粒子3の粒子径分布を小さくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなピークとなる。従って、この場合も金属微粒子3の粒子径分布を小さく制御することが好ましいが、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されない。また、金属微粒子3が粒子径D以上の粒子間距離Lで分散している特徴から、例えば金属微粒子3を磁性金属微粒子とすることで、優れた特性を有する磁性体として利用が可能である。
【0044】
金属微粒子3が球形でない場合は、見掛け上の直径が大きくなる程、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードとなる傾向になるので、金属微粒子3が球形でない場合の粒子径Dは、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下がよい。また、金属微粒子3が球形でない場合には、ナノコンポジット10に存在する個々の金属微粒子3の形状は他の金属微粒子3の形状と比較して、好ましくは全体の80%以上、より好ましくは90%以上がほぼ同じ形状ものがよく、相対的にほぼ同じ形状のものが特に好ましい。
【0045】
ナノコンポジット10には、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3も存在してもよく、このようなナノコンポジット10は局在型表面プラズモン共鳴に影響を与えにくいので特に問題はない。なお、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、ナノコンポジット10における金属微粒子3の全量100重量部に対し、例えば金属微粒子3が金微粒子である場合、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下とすることがよい。ここで、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、例えばXPS(X線光電子分光)分析装置やEDX(エネルギー分散型X線)分析装置により検出することができる。
【0046】
また、より吸収スペクトル強度が高い局在型表面プラズモン共鳴効果を得るためには、金属微粒子3の平均粒子径は少なくとも3nm以上とし、好ましくは10nm以上100nm以下、より好ましくは20nm〜100nmがよい。金属微粒子3の平均粒子径が3nm未満である場合には、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる傾向となる。
【0047】
ナノコンポジット10において、金属微粒子3は、更に、光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであることが好ましい。局在型表面プラズモン共鳴を生じる波長範囲は、金属微粒子3の粒子径D、粒子形状、金属種、粒子間距離L、マトリックス層1の屈折率等によって異なるが、例えば380nm以上の波長の光によって局在型表面プラズモン共鳴が誘起されることが好ましい。
【0048】
(金属微粒子の存在状態)
上記c)に示したように、マトリックス層1の中で、金属微粒子3は、各々の金属微粒子3同士が接することなく、隣り合う金属微粒子3における粒子径Dが大きい方の粒子径D以上の間隔で存在している。つまり、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離)Lが、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上、すなわち、L≧Dである。図4において、金属微粒子3の粒子間距離Lは、大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上になっている。したがって、金属微粒子3が有する局在型表面プラズモン共鳴の特性を効率よく発現することができる。本発明で用いるナノコンポジット10は、金属微粒子3の前駆体となる金属イオンを加熱還元することにより、析出した金属微粒子3の熱拡散が容易となり、隣り合う金属微粒子3における大きい方の粒子径D以上の粒子間距離Lでマトリックス層1の内部に分散した状態となる。粒子間距離Lが、大きい方の粒子径Dよりも小さい場合には、局在型表面プラズモン共鳴の際に粒子どうしの干渉が生じて、例えば隣接する2つの粒子が一つの大きな粒子のように協働して局在型表面プラズモン共鳴が生じ、シャープな吸収スペクトルが得られなくなる場合がある。一方、粒子間距離Lは大きくても特に問題はないが、熱拡散を利用して分散状態になる金属微粒子3における各々の粒子間距離Lは、金属微粒子3の粒子径Dと後述する金属微粒子3の体積分率と密接な関係があるので、粒子間距離Lの上限は、金属微粒子3の体積分率の下限値によって制御することが好ましい。粒子間距離Lが大きい場合、言い換えるとナノコンポジット10に対する金属微粒子3の体積分率が低い場合は、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる。このような場合は、ナノコンポジット10の厚みを大きくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度を大きくすることができる。
【0049】
また、金属微粒子3は、マトリックス層1の内部に三次元的に分散している。つまり、ナノコンポジット10において三次元的な網目構造のマトリックス層1の厚み方向における断面及び該厚み方向に直交する方向における断面(マトリックス層1の表面に平行な断面)を観察すると、図2及び図3に示したように、多数の金属微粒子3が上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて縦方向及び横方向に点在した状態になる。
【0050】
さらに、金属微粒子3の90%以上が、上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて点在する単一粒子であることが好ましい。ここで、「単一粒子」とは、マトリックス層1中の各金属微粒子3が独立して存在していることを意味し、複数の粒子が凝集したもの(凝集粒子)は含まない。すなわち、単一粒子とは、複数の金属微粒子が分子間力によって凝集した凝集粒子は含まない。また、「凝集粒子」とは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、個体の金属微粒子の複数個が寄り集まって、一つの凝集体となっていることが明らかに確認されるものをいう。なお、ナノコンポジット10における金属微粒子3は、その化学構造上、加熱還元して生成する金属原子が凝集によって形成される金属微粒子とも解されるが、このような金属微粒子は金属原子の金属結合によって形成されるものと考えられるので、複数の粒子が凝集した凝集粒子とは区別し、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、一つの独立した金属微粒子3として確認されるものである。
【0051】
上記のような単一粒子が90%以上存在することにより、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープ且つ安定になり、高い検出精度が得られる。このことは、換言すると、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%未満であることを意味する。このような粒子が10%以上存在する場合、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードになったり、不安定になったりして、センサー等のデバイスに利用する場合には、高い検出精度が得られにくくなる。また、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%を超えてしまうと、粒子径Dの制御も極めて困難になる。
【0052】
また、ナノコンポジット10中の金属微粒子3の体積分率は、ナノコンポジット10に対して、0.05〜30%とすることが好ましい。ここで、「体積分率」とは、ナノコンポジット10(空隙1bを含む)の一定体積あたりに占める金属微粒子3の合計の体積を百分率で示した値である。金属微粒子3の体積分率が、0.05%未満であると、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度がかなり小さくなり、仮にナノコンポジット10の厚みを大きくしても効果は得られにくい。一方、体積分率が30%を超えると、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離L)が、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径Dより狭くなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルのシャープなピークが得られにくくなる。
【0053】
本発明で用いるナノコンポジット10において、上記d)に示したように、金属微粒子3は、マトリックス層1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。すなわち、ナノコンポジット10では、金属微粒子3が、比表面積が高い状態で三次元的に効率良く配置されているので、金属微粒子3の利用効率を高めることができる。また、金属微粒子3は、外部環境に連通する空隙1bに露出した部位を備えているため、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化にも敏感にその特性を発揮することができる。すなわち、金属微粒子3は、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する、という特性を充分に利用することが可能となる。このようなナノコンポジット10の構造上の特徴は、ナノコンポジット10が局在型表面プラズモン共鳴を利用した結露センサー、湿度センサー等への適用を最適なものとしている。
【0054】
ナノコンポジット10は、例えば透過型の電子顕微鏡等でマトリックス層1の断面を観察した場合に、透過した電子線によってマトリックス層1中に存在する金属微粒子3同士が重なって見えることがある。しかし、実際には金属微粒子3は一定の距離以上を保った状態となっており、完全に独立した単一の粒子として分散している。また、金属微粒子3は、三次元的な網目状の固体骨格部1aによって物理的又は化学的に固定化されているため、経時変化に伴う金属微粒子3の凝集や脱落が防止できるので、長期保存性にも優れており、ナノコンポジット10の繰り返しの使用においても、金属微粒子3の凝集や脱落が抑制される。
【0055】
以上の構成を有するナノコンポジット10は、金属微粒子3が三次元的な網目構造を有するマトリックス層1中で一定以上の粒子間距離Lを保った状態で、三次元的に偏りなく分散した形態を有する。そのため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープであるとともに、非常に安定しており、再現性と信頼性に優れている。さらに、金属微粒子3の表面の多くは、マトリックス層1中において外部空間に連通する空隙1bに露出しているため、金属微粒子3が有する、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を充分に発現することが可能である。したがって、ナノコンポジット10は、例えば、結露センサー、湿度センサーなどの各種のセンサー素子への利用に適しており、簡易な構成で高精度の検出が可能になる。
【0056】
次に、ナノコンポジット10の製造方法について詳しく説明する。
【0057】
<ナノコンポジットの製造方法>
ナノコンポジット10の製造方法は、大別すると、マトリックス層1を形成する過程で金属微粒子3を分散する方法(I)と、予め形成したマトリックス層1に金属微粒子3を分散する方法(II)とがある。ナノコンポジット10の製造工程数を少なくできるという観点から、(I)の方法が好ましい。
【0058】
(I)の方法は、以下の工程Ia)〜Id)を備えることができる。
Ia)固体骨格部1aを形成するためのアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
Ib)前記スラリーと、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として(本明細書において、金属化合物中に含まれる金属元素を金属の重量に換算する意味で用いる)0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
Ic)前記塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、並びに
Id)前記塗布膜を、加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス層1を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
【0059】
(II)の方法は、以下の工程IIa)〜IId)を備えることができる。
IIa)固体骨格部1aを形成するためのアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
IIb)前記スラリーを、基材上に塗布し、乾燥した後、加熱処理することにより、三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス層1を形成する工程、
IIc)前記マトリックス層1に、前記スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる工程、並びに
IId)前記工程IIcの後、加熱処理することにより、前記金属イオンを還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
【0060】
以下、(I)及び(II)の方法における各工程ついて具体的に説明するが、共通する部分は同時に説明する。ここでは、マトリックス層1における固体骨格部1aが、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)により構成される場合について代表的に例示して説明を行う。
【0061】
マトリックス層1を構成する固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)を含有する市販のベーマイト粉末を好適に使用可能であり、例えば、大明化学工業株式会社製のベーマイト(商品名)、CNDEA社製のDisperal HP15(商品名)、ユニオン昭和(株)社製のVERSAL(TM)ALUMINA(商品名)、河合石灰工業株式会社製のセラシュール(商品名)、巴工業株式会社製のCAM9010(商品名)、日産化学株式会社製のアルミナゾル520(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10A(商品名)等を使用することが可能である。
【0062】
本発明の一実施の形態で用いるベーマイト(Boehmite)とは、アルミニウムオキシ水酸化物(AlOOH)又はアルミナ水和物(Al・HO)の結晶性の高い微粒子のことを意味し、擬ベーマイトとは、ベーマイトの結晶性の低い微粒子のことを意味するが、いずれも区別なく広義の意味でベーマイトとして説明する。このベーマイト粉末は、アルミニウム塩の中和法やアルミニウムアルコキシドの加水分解法等による公知の方法で製造することができる。ベーマイト粉末は、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス層1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用できる。また、ベーマイト粉末は、酸性の水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、ベーマイト粉末のスラリーを簡便に調製することができる。ベーマイト粉末は、例えばキュービック状、針状、菱形板状とそれらの中間状、及びリンクルドシート等の粒子形状を有する平均粒子径10nm〜2μmの範囲内のものが好ましく利用できる。これらの微粒子の端面もしくは表面が結合することによって固体骨格部1aを形成し、該固体骨格部1aが三次元的な網目構造を形成することができる。なお、ここでいうベーマイト粉末の平均粒経とは、レーザー回折法により算出した値とする。
【0063】
ベーマイト粉末を含有するスラリーは、ベーマイト粉末と水又はアルコール等の極性溶媒を混合した後、この混合溶液を酸性に調整したものを使用する。(I)の方法では、このスラリーに金属微粒子3の原料となる金属化合物を添加し、均一に混合することによって塗布液を調製する。
【0064】
スラリーの調製は、ベーマイト粉末を水又は極性有機溶媒等の溶媒に分散することによって行うが、使用するベーマイト粉末は、溶媒100重量部に対して、好ましくは5〜40重量部の範囲内、より好ましくは10〜25重量部の範囲内になるように調製することがよい。使用する溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することも可能である。混合した溶液は、ベーマイト粉末の分散性を向上させるために、分散処理を行うことが望ましい。分散処理は、例えば室温で5分以上攪拌する方法や、超音波を用いる方法等により行うことができる。
【0065】
ベーマイト粉末の均一な分散ができるように、必要に応じ、混合液のpHを5以下に調整する。この場合、pH調整剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、及びこれらの塩などを適宜添加してよい。なお、pH調整剤は、単独又は複数を混合して使用してもよい。pH調整剤を添加することにより、ベーマイト粉末の粒子径分布が、pH調整剤を添加しない場合と比較して変化することがあるが、特に問題はない。
【0066】
(I)の方法では、上記のようにして調製したスラリーに、さらに金属微粒子3の原料となる金属化合物を加えて塗布液とする。この場合、加える金属化合物の量は、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるようにする。なお、調製したスラリーに金属化合物を加えると、塗布液の粘度が高くなることがあるが、その場合は、上記の溶媒を適宜添加することによって最適な粘度に調整することが望ましい。
【0067】
上記の(I)の方法で用意される塗布液中に含有される金属化合物、又は上記の(II)の方法で用意される金属イオンを含有する溶液中に含有される金属化合物としては、金属微粒子3を構成する上述の金属種を含む化合物を特に制限無く用いることができる。金属化合物としては、前記金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。また、上記金属種と有機カルボニル錯体を形成し得る有機カルボニル化合物としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸エチル等のβ−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
【0068】
金属化合物の好ましい具体例としては、H[AuCl]、Na[AuCl]、AuI、AuCl、AuCl、AuBr、NH[AuCl]・n2HO、Ag(CHCOO)、AgCl、AgClO、AgCO、AgI、AgSO、AgNO、Ni(CHCOO)、Cu(CHCOO)、CuSO、CuSO、CuSO、CuCl、CuSO、CuBr、Cu(NH)Cl、CuI、Cu(NO)、Cu(CHCOCHCOCH)、CoCl、CoCO、CoSO、Co(NO)、NiSO、NiCO、NiCl、NiBr、Ni(NO)、NiC、Ni(HPO)、Ni(CHCOCHCOCH)、Pd(CHCOO)、PdSO、PdCO、PdCl、PdBr、Pd(NO)、Pd(CHCOCHCOCH)、SnCl、IrCl、RhClなどを挙げることができる。
【0069】
調製したスラリーや塗布液には、マトリックス層1の強度、透明性、光沢性等を向上する目的で、必要に応じてバインダー成分を配合することも可能である。アルミニウムオキシ水酸化物と組み合わせて用いることのできるバインダー成分として好適なものは、例えばポリビニルアルコールまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、などのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンまたはその変性体、デンプンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物などを挙げることができる。これらのバインダー成分は単独又は複数混合して用いることができる。なお、これらのバインダー成分は、金属化合物の有無に関わらず、適宜配合することができ、配合量は、スラリーの固形分100重量部に対して、好ましくは3〜100重量部の範囲内、より好ましくは4〜20重量部の範囲内がよい。
【0070】
上記スラリーや塗布液には、バインダーの他に、必要に応じて分散剤、増粘剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
【0071】
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布する方法は、特に制限されるものではなく、例えばリップコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレー等によって塗布することができる。
【0072】
塗布に用いる基材としては、ナノコンポジット10を基材から剥離してセンサー等に使用する場合や、ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光反射系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、特に制限はない。ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、基材は、光透過性であることが好ましく、例えばガラス基板、透明な合成樹脂製基板等を用いることができる。透明な合成樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0073】
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布した後は、乾燥させて塗布膜を形成する。乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、60〜150℃の範囲内の温度条件で行うことがよいが、好ましくは、60〜150℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間をかけて乾燥を行うことがよい。
【0074】
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布し、乾燥した後、好ましくは150〜450℃の範囲内、より好ましくは170〜400℃の範囲内で加熱処理することにより、マトリックス層1を形成する。加熱処理温度が150℃未満では、マトリックス層1の三次元的な網目構造の形成が十分に起こらない場合があり、加熱処理温度が450℃を超えると、例えば金属微粒子3の材質としてAu又はAgを用いる場合、金属微粒子3の溶融が起こり、形成する粒子径Dが大きくなるため、充分な局在型表面プラズモン共鳴効果を得ることが困難になる。
【0075】
上記の(I)の方法では、マトリックス層1の形成と、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を一つの加熱工程で同時に行うことができる。上記(II)の方法では、マトリックス層1を形成した後、そこに金属イオンを含有する溶液を含浸させ、さらに加熱をすることによって、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を行う。
【0076】
上記の(II)の方法で用いる金属イオンを含有する溶液中には、金属元素として1〜20重量%の範囲内で金属イオンを含有することが好ましい。金属イオンの濃度を上記範囲内とすることで、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内とすることができる。
【0077】
上記の(II)の方法における含浸方法は、形成したマトリックス層1の少なくとも表面に金属イオンを含有する溶液が接触することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができ、例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り又は印刷法等を用いることができる。含浸の温度は0〜100℃、好ましくは20〜40℃付近の常温でよい。また、含浸時間は、浸漬法を適用する場合、例えば5秒以上浸漬することが望ましい。
【0078】
金属イオンの還元及び析出した金属微粒子3の分散は、好ましくは150〜450℃の範囲内、より好ましくは170〜400℃の範囲内での加熱処理によって行う。加熱処理温度が150℃未満では、金属イオンの還元が十分に行われず、金属微粒子3の平均粒子径を前述の下限(3nm)以上にすることが困難となる場合がある。また、加熱処理温度が150℃未満では、還元によって析出した金属微粒子3のマトリックス層1中での熱拡散が十分に起こらない場合がある。
【0079】
ここで、加熱還元による金属微粒子3の形成について説明する。金属微粒子3の粒子径D及び粒子間距離Lは、還元工程における加熱温度及び加熱時間並びにマトリックス層1に含まれる金属イオンの含有量等によって制御できる。本発明者らは、加熱還元における加熱温度及び加熱時間が一定であって、マトリックス層1中に含有する金属イオンの絶対量が異なる場合には、析出する金属微粒子3の粒子径Dが異なるという知見を得ていた。また、加熱温度及び加熱時間の制御なしに加熱還元を行った場合には、粒子間距離Lが隣接する金属微粒子3の大きい方の粒子径Dより小さくなることがあるという知見も得ていた。
【0080】
また、上記知見を応用し、例えば還元工程における熱処理を複数の工程に分けて実施することもできる。例えば、第1の加熱温度で金属微粒子3を所定の粒子径Dまで成長させる粒子径制御工程と、第1の加熱温度と同じか、又は異なる第2の加熱温度で、金属微粒子3の粒子間距離Lが所定の範囲になるまで保持する粒子間距離制御工程を行うことができる。このようにして、第1及び第2の加熱温度と加熱時間を調節することにより、粒子径D及び粒子間距離Lをさらに精密に制御することができる。
【0081】
還元方法として加熱還元を採用する理由は、還元の処理条件(特に加熱温度と加熱時間)の制御によって比較的簡便に粒子径D及び粒子間距離Lを制御できることや、ラボスケールから生産スケールに至るまで特に制限なく簡便な設備で対応できること、また枚葉式のみならず連続式にも特段の工夫なくとも対応できることなど、工業的に有利な点が挙げられることにある。加熱還元は、例えば、Ar、Nなどの不活性ガス雰囲気中、1〜5KPaの真空中、又は大気中で行うことができ、水素などの還元性ガスを用いる気相還元も利用することが可能である。
【0082】
加熱還元では、マトリックス層1中に存在する金属イオンを還元し、熱拡散によって個々の金属微粒子3を独立した状態で析出させることができる。このように形成された金属微粒子3は、一定以上の粒子間距離Lを保った状態でしかも形状が略均一であり、マトリックス層1中で金属微粒子3が三次元的に偏りなく分散している。特に、本工程で還元した場合、金属微粒子3の形や粒子径Dが均質化され、マトリックス層1中に金属微粒子3が略均一な粒子間距離Lで均等に析出、分散したナノコンポジット10を得ることができる。また、マトリックス層1を構成する無機酸化物の構造単位を制御することや、金属イオンの絶対量及び金属微粒子3の体積分率を制御することで、金属微粒子3の粒子径Dとマトリックス層1中での金属微粒子3の分布状態を制御することもできる。
【0083】
以上のようにして、ナノコンポジット10を製造することができる。なお、マトリックス層1として、ベーマイト以外の無機酸化物を用いる場合についても、上記製造方法に準じて製造することができる。
【0084】
[第1の実施の形態:結露センサー]
次に、図5図9を参照しながら、本発明のセンサー素子の第1の実施の形態に係る結露センサーについて説明する。図5は、本発明の一実施の形態にかかる結露センサー100の概略構成を説明する図面である。この結露センサー100は、ナノコンポジット10と、ナノコンポジット10の片側に配置された光反射性部材20と、この光反射性部材20に積層された保護層30と、ナノコンポジット10に対向して配置された光源・受光部40と、この光源・受光部40で受光された反射光の検出を行う分光器(又は光検出器)50と、光源・受光部40及び分光器(又は光検出器)50に接続され、これらを統括して制御する制御部60と、制御部60に接続された表示部70とを備えている。結露センサー100において、ナノコンポジット10と光反射性部材20と保護層30とは局在型表面プラズモン共鳴を発生させる「プラズモン共鳴発生部」を構成している。なお、保護層30は任意の構成であり、設けなくてもよい。
【0085】
また、結露センサー100は、筐体101内に収容されている。筐体101には、気体入口101Aと、気体出口101Bとが形成されており、これらの間には、計測対象の気体を通流させるための空間Sが形成されている。なお、筐体101は任意の構成であり、設けなくてもよい。
【0086】
本実施の形態の結露センサー100に使用されるナノコンポジット10は、上述の構成を有している(図1図4も参照)。本実施の形態で用いるナノコンポジット10は、図5に示したように、光源・受光部40から照射された光を受光する第1の面(受光面)10Aと、該第1の面10Aの反対側に形成された第2の面(裏面)10Bと、を有している。そして、第2の面10Bに接して光反射性部材20が設けられている。
【0087】
[光反射性部材]
光反射性部材20は、光透過層21と、この光透過層21に積層された金属層23とを備えている。光透過層21は、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる波長(例えば金属微粒子3が金又は銀で構成されている場合は300nm〜900nmの範囲内)の光を透過させる性質を有する材料で形成することができる。このような材料としては、例えば、ガラス、石英などの無機透明基板、インジウムスズオキサイド(ITO)、酸化亜鉛などの透明導電性膜、あるいはポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などの透明合成樹脂等を挙げることができる。
【0088】
金属層23は、例えば銀、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、白金等の金属材料の薄膜である。これらの金属材料の中でも、アルミニウムは、光の反射率が高く、且つ、酸化耐性や光透過層21との密着性も高いため、金属層23の材質としてもっとも好ましい。金属層23は、光透過層21の片面に、例えばスパッタ、CVD、蒸着、塗布、インクジェット塗布、無電解メッキ、電解メッキ等の方法で成膜することができる。
【0089】
なお、図5では、光反射性部材20として、光透過層21と金属層23とを積層した積層体を例示したが、光反射性部材20は前記波長の光を反射できるものであればよく、例えば鏡面加工された金属板などを光反射性部材20として用いることもできる。
【0090】
また、ナノコンポジット10と、光反射性部材20とは、必ずしも密着させて設ける必要はなく、ナノコンポジット10に対して光反射性部材20を任意の距離で離間させて設けてもよい。
【0091】
[保護層]
保護層30は、金属層23を外側から覆うことによって保護する機能を有している。保護層30は、ナノコンポジット10を作製する過程で行われる熱処理によって金属層23が酸化することを防止する。従って、金属層23が、酸化されにくい金属種である場合は、保護層30を設ける必要はない。保護層30は、耐熱性や耐酸化性を有する材料や、酸素透過を抑制するバリア性がある材料などにより形成することができる。このような観点から、保護層30の材質として、例えばニッケル、クロム、Ni−Cr合金などの金属材料や、ガラスなどの無機材料、ポリイミドやエポキシ樹脂など耐熱性が高い有機材料等を用いることができる。この中でも特に、耐熱性や耐酸化性が高いニッケル、クロム、Ni−Cr合金等を用いることが好ましい。保護層30は、金属層23の表面に、例えばスパッタ、CVD、蒸着、塗布、インクジェット塗布、無電解メッキ、電解メッキ等の方法で成膜することができる。
【0092】
結露センサー100において、ナノコンポジット10の厚みは、局在型表面プラズモン共鳴の検出感度を高くする観点から、例えば30nm以上10μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0093】
また、光透過層21の厚みは、特に制限はないが、例えば1μm以上10mm以下の範囲内とすることができる。
【0094】
金属層23の厚みは、特に制限はないが、例えば50nm以上10μm以下の範囲内とすることができる。
【0095】
さらに、保護層30を設ける場合、その厚みは、金属層23の酸化防止機能を十分に持たせるために、例えば100nm以上10μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0096】
[光源・受光部]
光源・受光部40は、光源40Aと、受光部40Bとを含む。光源40Aは、ナノコンポジット10において局在型表面プラズモン共鳴を生じさせ得る波長(例えば金属微粒子3が金又は銀で構成されている場合は300nm〜900nmの範囲内)の光を照射できるものであればその種類を問わず、特に制限なく利用できる。好ましい光源40Aとしては、例えばハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、タングステン−ハロゲンランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、クリプトンランプ、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、HIDランプ、ELランプ等を挙げることができる。受光部40Bは、例えば反射光を受光する集光器及び光ファイバーを備えた受光プローブ(図示せず)を有している。なお、光源40Aと受光部40Bとは距離をおいて別々に設けてもよく、ナノコンポジット10の表面に対して、光源40Aからの光を垂直に入射させる場合に限らず、該表面に対して光を任意の角度で入射させ、その反射光を受光部40Bで受光するようにしてもよい。
【0097】
[分光器(又は光検出器)]
分光器(又は光検出器)50は、受光部40Bと例えば光ファイバーなどの光学的接続手段により接続されている。分光器(又は光検出器)50は、それぞれ測定の目的に応じて選択することができる。すなわち、分光器は、受光部40Bから送出された局在型表面プラズモン共鳴による反射光の吸収スペクトルを測定することができ、また光検出器は、受光部40Bから送出された光の強度を測定することができる。
【0098】
[制御部]
制御部60は、コンピュータ機能を備えており、分光器(又は光検出器)50で検出された局在型表面プラズモン共鳴による反射光の吸収スペクトル(又は反射光の強度)のデータを元に解析や演算処理などを行う。制御部60は、例えば図示しないハードディスク装置や不揮発性メモリ(フラッシュメモリ素子など)及び揮発性メモリ(例えばRAMなど)を含む記憶手段を備えてもよい。また、制御部60は、反射光の解析結果に基づき、結露の検知状況を電気信号として表示部70へ送出する。
【0099】
[表示部]
表示部70は、制御部60からの信号に基づき、結露の発生を例えばモニターに文字、画像などで表示する。なお、モニター表示に代えて、例えばランプ、警告音などで告知する方式でもよい。
【0100】
以上のような構成を備えた結露センサー100は、空間Sに計測対象の気体を通流させながら、図5中に破線の矢印によって模式的に示したように、光源・受光部40の光源40Aからナノコンポジット10を備えたプラズモン共鳴発生部へ向けて光を連続的若しくは間欠的に照射する。照射された光は、一部分がナノコンポジット10の第1の面10Aにおいて反射され、他の部分は、ナノコンポジット10の網目構造の内部を通過して光反射性部材20の金属層23によって反射される。これらの反射光は、光源・受光部40の受光部40Bによって検出され、分光器(又は光検出器)50で局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトル(又は反射光の強度)が測定される。これらのデータは、必要に応じて制御部60で解析され、結露の検知情報として表示部70に表示される。
【0101】
結露センサー100では、金属微粒子3が三次元的な網目構造を有するマトリックス層1中で一定以上の粒子間距離Lを保った状態で、三次元的に偏りなく分散したナノコンポジット10を備えている。そのため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープであるとともに、非常に安定しており、再現性と信頼性に優れ、高感度に結露の発生を検知することができる。また、三次元的な網目構造は結露を促進する効果を持つため、露点より高い温度で三次元的な網目構造を有するマトリックス層1内部に結露が生じる。さらに、ナノコンポジット10の第1の面10Aにおける表面反射光に加え、光反射性部材20における反射光も測定することによって、表面反射光だけを測定する方式に比べて検出感度を大幅に高めることができる。このように、局在型表面プラズモン共鳴を利用した結露センサー100は、鏡面冷却式の結露センサーに比べ、非常に高感度であるとともに、結露をより高温側で正確に早く検知できるものであり、結露の予防センサーとして有用である。また、表面反射光に加えて光反射性部材20における反射光も利用することによって、装置全体を小型化できるとともに、同じ強度の局在型表面プラズモン共鳴の吸収を得るために必要な照射光の光量を低減できるので、省電力で高感度の測定を実現できる。
【0102】
[結露の判定]
結露センサー100において、結露の発生を判定する方法は任意であるが、局在型表面プラズモン共鳴の吸収スペクトルから計算される吸収ピーク波長の変化を元に評価する方法が一例として挙げられる。この場合の結露発生(露点の決定)について図6を参照して説明する。図6は、分光器50で計測された局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの吸収ピーク波長と温度変化の関係を概念的に示した図である。図6中、細い曲線Aは、吸収ピーク波長の変化を示しており、太い破線Bは、曲線Aの縦軸を大きく拡大したもので、温度をtからtに降下させるまでの細かな吸収ピーク波長の変化を示している。つまり、現実には、分光器50で計測される局在型表面プラズモン共鳴による吸収ピーク波長は破線Bのような細かな増減を繰り返しながら、曲線Aのように推移していく。
【0103】
曲線Aでは、温度をtから徐々に降下させていく場合、温度tを変曲点として吸収ピーク波長が急激に変化している。そのため、曲線Aの傾きが所定のしきい値を超えて変化した温度tを結露の発生(又は露点)として判定することができる。この判定に用いる変曲点の傾きのしきい値は、例えばバックデータを元に予め設定した値を制御部60の記憶手段に保存しておき、それを読み出すことにより、最新の吸収ピーク波長の測定データから得られる曲線Aの傾きとリアルタイムで比較し、判定することができる。このようにして、本実施の形態に係る結露センサー100は、結露の発生に対して高感度の応答性を有する結露センサーとしての利用が可能となる。
【0104】
別の判定方法では、例えば、吸収ピーク波長がほぼ定常状態であるtからtまでの間の任意の区間で、吸収ピーク波長の標準偏差σおよび吸収ピーク波長の平均値νを逐次モニターしていき、吸収ピーク波長が最初にν±3σを超えて変化したときの温度tを、結露の発生(露点)として判定することができる。この判定に用いる吸収ピーク波長の標準偏差σ及び平均値νの情報は、制御部60で順次演算し、その記憶手段に順次更新して保存していくことにより、最新の吸収ピーク波長の測定結果と、それ以前に測定された吸収ピーク波長の履歴情報に基づくν±3σとを、リアルタイムで比較し、判定することができる。また、あらかじめ標準状態の吸収ピーク波長の標準偏差σおよび標準状態の吸収ピーク波長の平均値νを入力しておき、ν±3σの情報と、吸収ピーク波長の測定結果とを比較して露点を判定することもできる。このようにして、本実施の形態に係る結露センサー100は、結露の発生を未然に予知する結露予知センサーとしての利用が可能となる。
【0105】
なお、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの吸収ピーク波長に代えて、吸収ピーク強度の変化量、又は特定の波長における吸収強度の変化量若しくは反射光の強度を元に判定を行ってもよい。ここで、特定の波長とは、吸収強度又は反射光強度が変化する波長を選択することができる。特に、強度の変化量が大きい波長を選択することが好ましい。例えば、マトリックス層1における固体骨格部1aが、ベーマイトで構成され、金属微粒子3が金で構成されている場合には、マトリックス層1の厚み又は金属微粒子3の粒子径Dや粒子間距離Lにもよるが、約700nmの波長を好適に選択できる。
【0106】
また、図5の結露センサー100では、制御部60や表示部70を備えた構成としたが、分光器(又は光検出器)50に吸収スペクトルの解析、演算機能やその結果を表示する機能を持たせることによって、制御部60や表示部70を省略できる。
【0107】
[プラズモン共鳴発生部の製造]
結露センサー100におけるプラズモン共鳴発生部は、例えば以下の二通りの方法で製造することができる。まず、第1の方法は、ナノコンポジット10を作製する過程で使用する基材の代わりに、光反射性部材20(保護層30を備えていてもよい)を用いる方法である。例えば、光透過層21と金属層23と保護層30とをこの順番で積層した積層体を準備する。そして、例えば光透過層21の表面に、固体骨格部1aを形成するためのスラリーと金属化合物とを混合してなる塗布液を塗布した後に熱処理することにより、固体骨格部1a及び空隙1bを有するマトリックス層1の形成と、金属微粒子3の析出とを行うことができる(図1図3を参照)。あるいは、例えば、光透過層21の表面に、固体骨格部1aを形成するためのスラリーを塗布し、固体骨格部1a及び空隙1bを有するマトリックス層1を形成した後、金属イオンを含有する溶液を含浸させて熱処理をすることによって、金属微粒子3の析出を行ってもよい(図1図3を参照)。このように光反射性部材20(保護層30を備えていてもよい)を基材として用いることによって、ナノコンポジット10の製造と並行してプラズモン共鳴発生部を作製できる。この時、金属層23が加熱によって酸化されやすい金属で構成されている場合は、予め光反射性部材20に保護層30を設けておくことによって、熱処理の際に金属層23の金属材料が酸化され、光反射機能が劣化することを有効に防止できる。
【0108】
結露センサー100におけるプラズモン共鳴発生部を製造する第2の方法は、ナノコンポジット10と、光反射性部材20とをそれぞれ別々に作製した後、ナノコンポジット10を光反射性部材20の光透過層21の表面に重ねて配置し、固定する方法である。この場合、ナノコンポジット10と光反射性部材20は、局在型表面プラズモン共鳴の発生に影響を与えないように、例えばナノコンポジット10の周縁部において任意の手段(例えば、接着剤による接着、プレスによる接着など)で固定することができる。また、第2の方法では、光反射性部材20の金属層23を熱処理する工程がないため、保護層30を省略することができる。
【0109】
[結露センサーの応用例]
本実施の形態の結露センサーは、温度制御機能及び温度計測機能を持たせることで、露点計(露点計測装置)としても利用できる。図7は、本実施の形態の結露センサー100を利用した露点計200の概略構成を説明する図面である。なお、図7において、図5と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。この露点計200は、図5の結露センサー100の構成[つまり、ナノコンポジット10、光反射性部材20、保護層30、光源・受光部40、分光器(又は光検出器)50、制御部60、及び表示部70]に加えて、ナノコンポジット10の温度を計測する熱電対などの温度測定装置80と、ナノコンポジット10の温度調節を行うペルチェ素子などの温度制御装置90とを備えている。温度測定装置80と温度制御装置90は、制御部60に電気的に接続されて制御される。温度測定装置80は、ナノコンポジット10の表面(内部でもよい)に装着されている。温度制御装置90は、光反射性部材20及び保護層30を介してナノコンポジット10との間で熱交換できるように、ナノコンポジット10の下方に配置されている。
【0110】
露点計200では、温度制御装置90によって、ナノコンポジット10を所定の速度で降温していきながら、空間Sに計測対象の気体を通流させる。そして、図7中に破線の矢印によって模式的に示したように、光源・受光部40の光源40Aからナノコンポジット10を備えたプラズモン共鳴発生部へ向けて光を連続的若しくは間欠的に照射する。照射された光は、一部分がナノコンポジット10の第1の面10Aにおいて反射され、他の部分は、ナノコンポジット10の網目構造の内部を通過して光反射性部材20の金属層23によって反射される。反射光は、光源・受光部40の受光部40Bによって検出され、分光器(又は光検出器)50で、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトル(又は反射光の強度)が測定される。結露の発生は、吸収スペクトルのピーク波長シフト量、ピーク強度の変化量、特定の波長における吸収強度の変化量や反射光強度の変化量から、図5の結露センサー100と同様の方法で判定することができる。
【0111】
一方、ナノコンポジット10の温度は、温度測定装置80によってリアルタイムで計測され、制御部60に温度情報として送信される。温度の計測データと、その温度における吸収スペクトルの測定データを制御部60で解析することにより、結露が発生した時点の温度を露点として判定する。露点は、例えば表示部70に表示することができる。
【0112】
以上のように、本実施の形態の結露センサー100は、結露を促進させる効果を持つナノメートルサイズの微細構造を有するとともに、特定の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる金属微粒子分散複合体(ナノコンポジット10)を用いるため、簡易な装置構成で、微小な結露を光学特性変化として迅速に検出できる。すなわち、本実施の形態の結露センサー100に組み込まれたナノコンポジット10は、マトリックス層1が、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有する三次元的な網目構造となっており、金属微粒子3がこのマトリックス層1内に三次元的に分散しているため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が大きい。しかも、マトリックス層1の内部に存在する金属微粒子3が所定の粒子径Dの範囲内に制御され、粒子間距離Lを保ちながら偏りなく分散しているので、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープである。さらに、金属微粒子3が網目構造のマトリックス層1の内部の空隙1bに露出した部位を備えているので、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を最大限に利用することができる。また、本実施の形態の結露センサーは、光反射性部材20を備えているため、ナノコンポジット10の表面反射光に加え、光反射性部材20における反射光も測定することによって、表面反射光だけを測定する方式に比べて検出感度を大幅に高めることができる。
【0113】
本実施の形態の結露センサー100によれば、微量な水分を含む気体についても、鏡面冷却式露点計で計測される露点よりも高い温度で、高感度に結露を検出することが可能になる。従って、本実施の形態の結露センサー100は、結露の発生を未然に検知する予防センサーや、露点計等の用途に有用である。
【0114】
次に、実施例を挙げて本実施の形態の結露センサーについてさらに詳しく説明するが、以下の実施例はあくまでも例示であり、これらによって制約されるものではない。なお、特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
【0115】
[金属微粒子の平均粒子径の測定]
金属微粒子の平均粒子径の測定は、試料の断面をミクロトーム(ライカ社製、ウルトラカットUTCウルトラミクロトーム)を用いて超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測した。尚、ガラス基板上に作製した試料を上記の方法で観測することは困難であるため、ポリイミドフィルム上に同条件で作製したものを用い観測した。また、金属微粒子の平均粒子径は面積平均径とした。
【0116】
[金属微粒子分散複合体の空隙サイズの測定]
金属微粒子分散複合体の空隙サイズ(細孔径)の平均値は、水銀ポロシメーター法による細孔分布測定により求めた。
【0117】
[金属微粒子分散複合体の空隙率の測定]
金属微粒子分散複合体の空隙率は、金属微粒子分散複合体の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層の固体骨格部を形成する材料及び金属微粒子の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、下記式(A)にしたがって空隙率を算出した。
【0118】
空隙率(%)=(1−嵩密度/真密度)×100 …(A)
【0119】
[試料の反射吸収スペクトル測定]
作製したナノコンポジット試料の反射吸収スペクトルは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)により観測した。
【0120】
[実施例1]
<ナノコンポジットの作製>
6gのベーマイト粉末(大明化学工業社製、商品名;C−01、平均粒子径;0.1μm、粒子形状;キュービック状)に、17gの水と0.5gの酢酸を加え、5分間の超音波処理を行った。さらに17gのエタノール、0.6gの3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび1.25gの塩化金酸・四水和物を加え、5分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー1を調製した。このときの金錯体含有スラリー1におけるAu元素の割合は、ベーマイト100重量部に対して10重量部である。次に、Ni−Cr合金薄膜(厚み193nm)/Ag薄膜(厚み233nm)/ガラス基板(厚み0.7mm)3層構造の基板(12cm角)のガラス面に、得られた金錯体含有スラリー1をスピンコーター(ミカサ株式会社製、商品名;SPINCOATER 1H−DX2)を用いて塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット1(厚さ1.80μm)を作製した。ナノコンポジット1中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。このナノコンポジット1の特徴は、次のとおりであった。
1)ナノコンポジット1の空隙率;58%、空隙サイズ;平均8nm、最大110nm。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;34nm、最小粒子径;12nm、最大粒子径;54nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%、粒子間距離の平均値;117nm、ナノコンポジット1に対する金属金微粒子の体積分率;0.66%。
3)ナノコンポジット1における金属金微粒子の空隙に対する体積割合;ナノコンポジット1の空隙の全容量に対し1.1%。
また、ナノコンポジット1の金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の反射吸収スペクトルは、ピークトップが565nm、半値幅が157nm、波長700nmにおける吸光度が0.264の吸収ピークが観測され、水中における反射吸収スペクトルは、ピークトップが603nm、半値幅が204nm、波長700nmにおける吸光度が0.769の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピーク波長の単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及び波長700nmにおけるピーク強度変化量は、それぞれ115.2nm及び0.859であった。
【0121】
<冷却特性評価>
図7に示した露点計200の構成を模して、次のような手順で実験を行った。ガラス切りを用いて、ナノコンポジット1を1.5cm角にカットし、ナノコンポジットが形成された面を上に向けて、ペルチェ素子上に設置すると共に、熱電対をナノコンポジット1の表面に設置し、金属製治具で熱電対を押さえ込むようにしてナノコンポジット1ごとペルチェ素子に固定した。ナノコンポジット1を固定したペルチェ素子を容量73.9cmの金属製容器で囲むとともに、水分量を一定に制御した気体aを0.5L/minの流量で金属製容器内部へ送り続けた。気体aの露点を鏡面冷却式露点計(神栄テクノロジー社製、製品名;デュースターS−2S)で測定したところ、4.50±0.07℃であった。この値を、図8及び図9において露点として示した。
【0122】
ナノコンポジット1表面へ光源(Ocean optics社製、製品名;LS-1)からの光を入射し、反射光を受光部(Ocean optics社製、製品名;QR400−7−SR)で受光した。ペルチェ素子でナノコンポジット1表面の温度が25℃になるよう制御し、20分放置した。続いて、熱電対が0.5℃/minの速度で冷却されるようペルチェ素子でナノコンポジット1を冷却しながら受光した反射光を分光器(Ocean optics社製、製品名;QE−65000)で解析した。25℃から15℃までの吸収ピーク波長の標準偏差σは0.109nm、吸収ピーク波長の平均値νは569.170nmであった。ナノコンポジット1表面の温度が13.0℃に達した際に、吸収ピーク波長は、ν±3σを超えて長波長側にシフトした。このときの評価方法を示すチャートを図8に示した。また、ナノコンポジット1の表面温度が8.4℃に達した際に、8.4℃を変曲点として、吸収ピーク波長および波長700nmにおける反射光強度が急激に変化した。このときの評価方法を示すチャートを図9に示した。以上のことから、ナノコンポジット1は、鏡面冷却式露点計で測定した露点(4.50±0.07℃)よりも高い温度で結露を検出できることが確認された。
【0123】
[実施例2]
冷却速度を1.0℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、冷却特性を評価した。25℃から15℃までの吸収ピーク波長の標準偏差σは0.113nm、吸収ピーク波長の平均値νは569.794nmであった。ナノコンポジット1表面の温度が10.6℃に達した際に、吸収ピーク波長は、ν±3σを超えて長波長側にシフトした。また、ナノコンポジット1の表面温度が8.6℃に達した際に、8.6℃を変曲点として、吸収ピーク波長および波長700nmにおける反射光強度が急激に変化した。以上のことから、ナノコンポジット1は、鏡面冷却式露点計で測定した露点(4.50±0.07℃)よりも高い温度で結露を検出できることが確認された。
【0124】
[実施例3]
気体aの代わりに気体b(鏡面冷却式露点計で測定した露点;−11.80±0.05℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、冷却特性を評価した。25℃から15℃までの吸収ピーク波長の標準偏差σは0.136nm、吸収ピーク波長の平均値νは570.458nmであった。ナノコンポジット1表面の温度が−0.5℃に達した際に、吸収ピーク波長は、ν±3σを超えて長波長側にシフトした。また、ナノコンポジット1の表面温度が−8.9℃に達した際に、−8.9℃を変曲点として、吸収ピーク波長および波長700nmにおける反射光強度が急激に変化した。以上のことから、ナノコンポジット1は、鏡面冷却式露点計で測定した露点(−11.80±0.05℃)よりも高い温度で結露を検出できることが確認された。
【0125】
[実施例4]
冷却速度を0.5℃/minの代わりに1.0℃/minとしたこと、および気体aの代わりに気体c(鏡面冷却式露点計で測定した露点;−11.50±0.15℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、冷却特性を評価した。25℃から15℃までの吸収ピーク波長の標準偏差σは0.221nm、吸収ピーク波長の平均値νは570.555nmであった。ナノコンポジット1表面の温度が−8.2℃に達した際に、吸収ピーク波長は、ν±3σを超えて長波長側にシフトした。また、ナノコンポジット1の表面温度が−9.3℃に達した際に、−9.3℃を変曲点として、吸収ピーク波長および波長700nmにおける反射光強度が急激に変化した。以上のことから、ナノコンポジット1は、鏡面冷却式露点計で測定した露点(−11.50±0.15℃)よりも高い温度で結露を検出できることが確認された。
【0126】
[第2の実施の形態:湿度センサー]
次に、図10及び図11を参照しながら、本発明のセンサー素子の第2の実施の形態に係る湿度センサーについて説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態にかかる湿度センサー300の概略構成を説明する図面である。図11は、湿度センサー300の外観構成の一例を示す図面である。湿度センサー300は、光を照射する光源部310と、光を電流に変換する素子(図示せず)を有する受光部320と、光源部310と受光部320との間の光路に介在して設けられたナノコンポジット10と、を備えている。また、湿度センサー300は、スイッチ部315、LED用のドライバ317、電源319及びアンプ321を具えている。
【0127】
光源部310は、波長が異なる2種以上の光を同時もしくは交互に照射できるように構成されている。例えば、光源部310は、湿度に対する感度が高い波長である647nmの赤色光を照射する赤色LEDランプ311と、湿度に対する感度が低い波長である570nmの緑色光を照射する緑色LEDランプ313と、を有している。光源部310は、スイッチ部315に接続されている。スイッチ部315は、赤色LEDランプ311と緑色LEDランプ313のON/OFFを独立して切り替える。スイッチ部315は、LED用のドライバ317に接続され、さらに、ドライバ317は、電源319に接続されている。
【0128】
受光部320は、光を電流に変換する素子、例えばフォトダイオードなど(図示せず)を有している。受光部320は、アンプ321に接続されており、そこで受光部320によって変換された微弱な電流を増幅する。アンプ321は、外部の計測部323に接続されている。計測部323は、汎用のマルチメーターにより構成されており、電流を電圧に変換してその大きさを表示する。なお、計測部323を湿度センサー300の一構成部分に含めてもよい。
【0129】
湿度センサー300において、ナノコンポジット10は、局在型表面プラズモン共鳴を発生させる「プラズモン共鳴発生部」を構成している。ナノコンポジット10は、例えば1〜2mm程度の厚みの薄膜状をなしており、支持枠325に保持されて光源部310と受光部320との間に着脱可能に挿入されている点を除き、上述のナノコンポジット10と同様の構成を有している(図1図4も参照)。
【0130】
図11は、スイッチ部315、ドライバ317、電源319、光源部310、受光部320及びアンプ321を板状の筐体327に内蔵した携帯型の湿度センサー300を例示している。本実施の形態の湿度センサー300において、ナノコンポジット10は、図11に示すように、支持枠325に固定された状態で、筐体327に設けられた装着用スリット329に挿入されて使用される。装着用スリット329の内側には、光源部310と受光部320とが対向して配置されている。装着用スリット329内の光源部310と受光部320との間隔L(図10を参照)は、例えば2〜3mm程度とすることができる。このように、ナノコンポジット10を着脱可能に構成することによって、ナノコンポジット10の劣化、例えば金属微粒子3の酸化、固体骨格部1aの変形、変質などによって、湿度の検出精度が低下した場合には、新品に交換することが容易になる。
【0131】
湿度センサー300では、電源319をONにして、スイッチ部315の切り替えにより赤色LEDランプ311のみを点灯させた状態で、湿度センサー300が置かれた環境の湿度を電圧値として測定することができる。湿度センサー300に組み込まれたナノコンポジット10は、周囲の湿度に応じて、局在型表面プラズモン共鳴を発生させる波長が変化する。そのため、赤色LEDランプ311から湿度に対する感度が高い赤色光を照射すると、ナノコンポジット10を透過する際に、湿度の影響を受けて波長に変化が生じる。この透過光を受光部320で電流に転換し、計測部323で電圧値の変化として計測することができる。
【0132】
また、湿度センサー300では、電源319をONにして、スイッチ部315の切り替えにより湿度に対する感度が低い波長である緑色LEDランプ313のみを点灯させた状態で、計測部323で電圧値の測定を行い、このときの測定値をもとに、発光側及び受光側のそれぞれについて、ドリフト補償を行うことができる。さらに、湿度センサー300では、電源319をOFFにして赤色LEDランプ311と緑色LEDランプ313をともに消灯した状態で、計測部323で電圧値の測定を行い、このときの測定値をもとに、外乱光に対する補償を行うことができる。このように、湿度センサー300では、ドリフトや外乱光に対する補正を行うことによって、湿度の変化を高精度に検出することができる。
【0133】
次に、図12図14を参照しながら、第2の実施の形態の湿度センサーの変形例について説明する。
【0134】
<第1の変形例>
図12は、第1の変形例に係る湿度センサー301の概略構成を示す側面図であり、図13は、同平面図である。この湿度センサー301は、光を照射する光源部310と、光を電流に変換する素子(図示せず)を有する受光部320と、光源部310と受光部320との間の光路に介在して設けられたナノコンポジット10と、このナノコンポジット10を支持する基材331と、を備えている。ナノコンポジット10は、基材331の上に積層されている。
【0135】
湿度センサー301において、光源部310、受光部320の構成は上記と同様である。また、湿度センサー301は、図示は省略するが、スイッチ部315、ドライバ317、電源319及びアンプ321を備えている(図10参照)。また、アンプ321は、外部の計測部323に接続されている。これらの構成も、上記と同様である。
【0136】
基材331の材質としては、ナノコンポジット10を支持できれば特に制限がなく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、石英、セラミックス、酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属などを利用できる。これらの中でも、誘電体が好ましく、透光性の高いものがより好ましい。なお、基材331は単層に限らず、異なる材質で2層以上としてもよい。
【0137】
湿度センサー301において、ナノコンポジット10は、局在型表面プラズモン共鳴を発生させる「プラズモン共鳴発生部」を構成している。ナノコンポジット10は、外形が板状をなしており、光源部310と受光部320との間に介在配置されている。湿度センサー301では、板状のナノコンポジット10において、最も面積の広い主面と平行な方向に光が照射されるように、基材331の上に配置されている。
【0138】
湿度センサー301では、電源319をONにしてスイッチ部315の切り替えにより赤色LEDランプ311のみを点灯させた状態で、湿度センサー301が置かれた環境の湿度を電圧値として測定することができる。湿度センサー301に組み込まれたナノコンポジット10は、周囲の湿度に応じて、局在型表面プラズモン共鳴を発生させる波長が変化する。そのため、赤色LEDランプ311から湿度に対する感度が高い赤色光を照射すると、ナノコンポジット10を透過する際に、湿度の影響を受けて波長に変化が生じる。この透過光を受光部320で電流に転換し、計測部323で電圧値の変化として計測することができる。
【0139】
また、湿度センサー300では、上記と同様に、緑色LEDランプ313のみを点灯させたときの測定値をもとに、発光側及び受光側のそれぞれについて、ドリフト補償を行うことができる。さらに、湿度センサー300では、赤色LEDランプ311と緑色LEDランプ313をともに消灯したときの測定値をもとに、外乱光に対する補償を行うことができる。
【0140】
<第2の変形例>
図14は、第2の変形例に係る湿度センサー302の概略構成を示している。この湿度センサー302は、共通の電源319に電気的に接続された発光/受光/計測のシステムを2系統備えている。
【0141】
第1のシステム302Aは、ドライバ317A、スイッチ部315A、光源部310A、受光部320A、アンプ321A及び計測部323Aを備えている。光源部310Aは、赤色LEDランプ311Aと、緑色LEDランプ313Aと、を有している。光源部310Aは、スイッチ部315Aに接続されており、このスイッチ部315Aは、LED用のドライバ317Aに接続されている。ドライバ317Aは、共通の電源319に接続されている。スイッチ部315Aは、赤色LEDランプ311Aと緑色LEDランプ313AのON/OFFを独立して切り替えることが可能に構成されている。光源部310Aに対応して設けられた受光部320Aは、アンプ321Aに接続されており、このアンプ321Aは、計測部323Aに接続されている。
【0142】
第2のシステム302Bは、ドライバ317B、スイッチ部315B、光源部310B、受光部320B、アンプ321B及び計測部323Bを備えている。光源部310Bは、赤色LEDランプ311Bと、緑色LEDランプ313Bと、を有している。光源部310Bは、スイッチ部315Bに接続されており、このスイッチ部315Bは、LED用のドライバ317Bに接続されている。ドライバ317Bは、共通の電源319に接続されている。スイッチ部315Bは、赤色LEDランプ311Bと緑色LEDランプ313BのON/OFFを独立して切り替えることが可能に構成されている。光源部310Bに対応して設けられた受光部320Bは、アンプ321Bに接続されており、このアンプ321Bは、計測部323Bに接続されている。
【0143】
第1のシステム302Aの光源部310Aと受光部320Aとの間の光路には、ナノコンポジット10が介在して配備されているが、第2のシステム302Bの光源部310Bと受光部320Bとの間には、ナノコンポジット10は配備されていない。すなわち、第2のシステム302Bは、第1のシステム302Bで湿度のセンシングを精度良く行うための対照として機能する。
【0144】
計測部323A,323Bは、共通の電源制御部330に接続され、それぞれ計測された電圧を信号として電源制御部330へ送信する。電源制御部330は、電源319に接続され、電源319のパワーをコントロールする。電源319から供給されるパワーが不安定であると、第1のシステム302Aの発光部310Aから照射される光の強度が不安定になり、受光部320Aで受光され、計測部323Aで計測される電圧値が不安定になるため、正確なセンシングが困難になる。本変形例では、ナノコンポジット10を配備していない第2のシステム302Bで計測された電圧によって、電源319における供給パワーの変化を検出し、電源制御部330が電源319のパワーが安定するように制御する。このようなフィードバック制御によって、電源319から第1のシステム302Aの光源部310Aへ供給される電力を安定化させ、高精度なセンシングを可能にしている。なお、アンプ321A,321B及び計測部323A,323Bを介さず、受光部320A,320Bから、電源制御部330へ、それぞれ直接電流を送り、該電流に基づき電源319の制御を行うように構成してもよい。
【0145】
以上、第2の実施の形態について説明したが、本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、第2の実施の形態の湿度センサーでは、受光部で受光された光を電流に変換して測定を行ったが、第1の実施の形態と同様に、吸収スペクトルや光の強度を測定対象としてもよい。
【0146】
[第3の実施の形態;間接照射型センサー素子]
次に、図15及び図16を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係るセンサー素子について説明する。図15は、本発明の第3の実施の形態にかかるセンサー素子400の概略構成を説明する図面である。このセンサー素子400は、光を照射する光源部410と、光を受光する受光部420と、光源部410と受光部420との間に介在して光路を形成する光透過性部材430と、この光透過性部材430に近接して設けられたナノコンポジット10と、を備えている。センサー素子400は、例えば結露センサー、湿度センサー等の用途に利用できるものである。
【0147】
センサー素子400において、ナノコンポジット10は、板状をなし、上述の構成を有している(図1図4も参照)。
【0148】
光源部410及び受光部420は、例えば第1の実施の形態の結露センサー100における光源40A及び受光部40Bや、第2の実施の形態の湿度センサー300における光源部310及び受光部320と同様の構成とすることができる。
【0149】
光透過性部材430は、厚みのある板状をなし、透光性及び屈折率の調節が可能な材質により構成されている。そのような材質としては、例えばガラス、石英、シリコンなどを用いることができる。センサー素子400において、ナノコンポジット10及び光透過性部材430は、局在型表面プラズモン共鳴を発生させる「プラズモン共鳴発生部」を構成している。ナノコンポジット10は、光透過性部材430に近接して設けられており、好ましくは接して設けられている。
【0150】
センサー素子400では、光源部410から光を照射すると、透明な光透過性部材430中に光路が形成される。光透過性部材430中を通過する透過光によって、光透過性部材430に近接して設けられたナノコンポジット10に局在型表面プラズモン共鳴が生じる。この局在型表面プラズモン共鳴は、ナノコンポジット10の周囲の誘電率の変化、例えば湿度の変化によって共鳴波長が変化する。従って、透過光を受光部420で受光し、吸収スペクトルや光の強度を計測することによって、センサー素子400を結露センサー、湿度センサー等の用途に利用することができる。
【0151】
図16は、図15に示すセンサー素子400を用いた湿度センサー401の構成例を模式的に示している。湿度センサー401は、筐体440内に、光透過性部材430とナノコンポジット10とが積層した状態で収容されている。筐体440には、気体を導入するため導入口441、及び気体を排出するための排出口443が形成されている。導入口441から導入される気体は、筐体440の内部の空間Sが流路となり、供給された気体中に含まれる水分がナノコンポジット10に接触できるように構成されている。
【0152】
また、筐体440の1つの側部には光源部410が設けられており、反対側の側部には、受光部420が設けられている。光源部410から照射された光は、光透過性部材430の片側の側面から入射して光透過性部材430内の光路を伝搬し、反対側の側面から出射して受光部420で受光される。光透過性部材430中を通過する透過光によって、光透過性部材430に近接して設けられたナノコンポジット10に局在型表面プラズモン共鳴が生じる。この局在型表面プラズモン共鳴の波長は、空間Sを通流する気体中の湿度によって変化するため、受光部420で受光される光の吸収スペクトルを測定することによって、気体中の湿度を検出できる。また、センサー素子400では、受光部420において、第2の実施の形態と同様に、光を電流/電圧に変換して計測してもよい。
【0153】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、センサー素子400において、ナノコンポジット10を照射光の進行方向に2つ以上の領域に分割して設けてもよい。さらに、光源部410において、第2の実施の形態と同様に、2種類以上の光を発生する光源を設けて、ドリフト補償や外乱光の補償を行うようにしてもよい。
【0154】
[第4の実施の形態;FET型センサー素子]
次に、図17図19を参照しながら、本発明の第4の実施の形態に係るセンサー素子について説明する。図17は、本発明の第4の実施の形態にかかるセンサー素子500の概略構成を説明する図面である。このセンサー素子500は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)を含むFET型センサー素子である。センサー素子500は、Si基板501と、Si基板501の極性に対し反対の極性を有するソース領域503及びドレイン領域505と、ソース領域503とドレイン領域505との間のSi基板501上に形成されたゲート積層体511と、ゲート積層体511上に配置されたナノコンポジット10とを備えている。
【0155】
FETとしては、あらゆる構造を適用可能であり、典型的には例えば、n−MOS(Metal Oxide Semiconductor)FETまたはp−MOSFETなどのMOSFET構造が好ましい。センサー素子500において、Si基板501がn型にドーピングされている場合、ソース領域503及びドレイン領域505は、それぞれp型にドーピングされる。また、センサー素子500において、Si基板501がp型にドーピングされている場合、ソース領域503及びドレイン領域505は、それぞれn型にドーピングされる。ソース領域503から供給されるキャリア(例えば、自由電子または正孔)は、ドレイン領域505へ向けて移動する。ゲート積層体511のゲート電極層517に電圧を印加することによって、ソース領域503とドレイン領域505との間のキャリアの流れを制御することができる。
【0156】
ゲート積層体511は、特に限定されるものではないが、例えば、ゲート酸化膜513と、ゲート酸化膜513上に配置されるポリシリコン層515と、ポリシリコン層515上に配置されるゲート電極層517と、を含むことができる。ゲート電極層517の材質は、例えば金属が好ましい。
【0157】
センサー素子500において、ナノコンポジット10は、板状をなし、上述のナノコンポジット10と同様の構成を有している(図1図4も参照)。ナノコンポジット10は、ゲート電極517の上に積層されている。
【0158】
センサー素子500がnチャネル型のMOSFETの場合、ゲート電極層517に電圧を印加していない状態では、n型半導体からなるソース領域503とドレイン領域505の間に性質の異なるp型半導体が挟まれて存在しているため、ソース領域503とドレイン領域505の間は電気的に絶縁される。一方、ゲート電極層517に電圧をかけると、ゲート積層体511の真下にあるチャネル領域に自由電子が引き寄せられ、ソース領域503とドレイン領域505の間で自由電子が豊富な状態となり、ソース領域503とドレイン領域505の間に電流が流れる。ここで、ゲート積層体511の上に積層されたナノコンポジット10は、空隙1bを有するマトリックス層1中に、多数の金属微粒子3を有している。そのため、金属微粒子3に、例えば被検出物質である化学物質、生体分子、水分子などが接触もしくは結合すると、ナノコンポジット10の電気的性質が変化する。例えば、ゲート電極層517に電圧をかけた状態で、ナノコンポジット10の電気的性質が変化すると、それがFETのソース領域503とドレイン領域505間を流れる電流に影響を与える。このソース/ドレイン間の電流の変化をモニターすることによって、被検出物質をセンシングすることが可能になる。
【0159】
次に、図18及び図19を参照しながら、センサー素子500の製造方法について説明する。センサー素子500は、一般的なFETを元に製造することができる。図18及び図19は、FETからセンサー素子500を製造する場合の工程例を示している。なお、センサー素子500を製造する場合は、サーマルバジェットを低減するため、上記(I)の方法を適用してナノコンポジット10の製造を行うことが好ましい。
【0160】
まず、完成されたFETにおいて、ゲート積層体511のゲート電極層517が露出するようにエッチングを行う。具体的には、図18(a)に示したように、ゲート積層体511を覆うパッシベーション膜521、電極用の金属層523,525を順次エッチングして、開口527を形成する。このエッチングは、フォトリソグラフィー技術を利用して既知の手法で行うことができる。
【0161】
次に、図18(b)に示したように、固体骨格部1aを形成するためのアルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物のスラリーを含有する塗布液を塗布し、乾燥して塗布膜531を形成する。この工程は、上記(I)の方法の工程Ia)〜工程Ic)と同様に実施できる。
【0162】
次に、図18(c)に示したように、開口527内にフォトレジスト材料を選択的にパターニング塗布してフォトレジスト層533を形成する。
【0163】
次に、図19(a)に示したように、エッチングによって、開口527の外部に形成された塗布膜531を除去する。このエッチング処理は、例えばドライエッチングによって行うことができる。
【0164】
次に、図19(b)に示したように、開口527内のフォトレジスト層533を除去する。最後に、加熱処理を行うことによって、図19(c)に示したように、ナノコンポジット10を形成する。加熱処理の条件は、上記方法(I)の工程Id)と同様に実施できる。以上の様にして、一般的な構成のMOSFETから、FET型のセンサー素子500を製造することができる。
【0165】
また、本実施の形態のセンサー素子500では、上述の構成のナノコンポジット10(図1図4も参照)を使用できるが、好ましい態様では、例えば図20に拡大して示すように、金属微粒子3の表面に結合化学種11を固定したナノコンポジット10’を用いることができる。ナノコンポジット10’において、結合化学種11は、例えば金属微粒子3と結合可能な官能基Xと、例えば検出対象分子などの特定の物質と相互作用する官能基Yと、を有する物質と定義できる。結合化学種11は、単一の分子に限らず、例えば二以上の構成成分からなる複合体等の物質も含む。結合化学種11は、金属微粒子3の表面において、官能基Xによって金属微粒子3との結合により固定される。この場合、官能基Xと金属微粒子3との結合は、例えば化学結合、吸着等の物理的結合等を意味する。また、官能基Yと特定の物質との相互作用は、例えば化学結合、吸着等の物理的結合のほか、官能基Yの部分的若しくは全体的な変化(修飾や脱離など)などを意味する。
【0166】
結合化学種11が有する官能基Xは、金属微粒子3の表面に固定され得る官能基であり、金属微粒子3の表面と化学結合により固定される官能基であってもよいし、吸着により固定され得る官能基であってもよい。このような官能基Xとしては、例えば−SH、−NH、−NHX(但し、Xはハロゲン原子)、―COOH、−Si(OCH、−Si(OC、−SiCl、−SCOCH等の1価の基、−S−、−S−等の2価の基が挙げられる。このなかでも、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基などのような硫黄原子を含有するものが好ましい。
【0167】
また、結合化学種11が有する官能基Yは、例えば金属又は金属酸化物などの無機化合物、あるいはDNA又は蛋白質などの有機化合物との結合を可能とする置換基や、例えば酸やアルカリ等によって脱離を可能とする脱離基等が挙げられる。このような相互作用が可能な官能基Yとしては、例えば−SH、−NH、−NRX(但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Xはハロゲン原子)、―COOR(但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)、−Si(OR)(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基)、−SiX(但し、Xはハロゲン原子)、−SCOR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基)、−OH、−CONH、−N、−CR=CHR’(但し、R、R’は独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)、−C≡CR(但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)、−PO(OH)、−COR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基)、イミダゾリル基、ヒドロキノリル基、−SOX(但し、Xはアルカリ金属)、N−ヒドロキシスクシンイミド基(−NHS)、ビオチン基(−Biotin)、−SOCHCHX(但し、Xはハロゲン原子、−OSOCH、−OSOCH、−OCOCH、−SO、又はピリジウム)等が挙げられる。
【0168】
結合化学種11の具体例としては、HS−(CH−OH(但し、n=11、16)、HS−(CH−COOH(但し、n=10、11、15)、HS−(CH−COO−NHS(但し、n=10、11、15)、HS−(CH−NH・HCl(但し、n=10、11、16)、HS−(CH11−NHCO−Biotin、HS−(CH11−N(CHCl、HS−(CH−SONa(但し、n=10、11、16)、HS−(CH11−PO(OH)、HS−(CH10−CH(OH)−CH、HS−(CH10−COCH、HS−(CH−N(但し、n=10、11、12、16、17)、HS−(CH−CH=CH(但し、n=9、15)、HS−(CH−C≡CH、HS−(CH−CONH(但し、n=10、15)、HS−(CH11−(OCHCH−OCH−CONH(但し、n=3、6)、HO−(CH11−S−S−(CH11−OH、CH−CO−S−(CH11−(OCHCH−OH(但し、n=3、6)等が挙げられる。
【0169】
結合化学種11の他の例として、2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、2−アミノ−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−アミノ−4−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−4−フェニル−5−テトラデシルチアゾール、2−アミノ−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−4−フェニルチアゾール、4−アミノ−5−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、2−アミノ−6−(メチルスルフォニル)ベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2−アミノ−5−(メチルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メチルチオ−1H−1,2,4チアゾール、6−アミノ−1−メチルウラシル、3−アミノ−5−ニトロベンズイソチアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4−チアゾールアセチックアシッド、2−アミノ−2−チアゾリン、2−アミノ−6−チオシアネートベンゾチアゾール、DL−α−アミノ−2−チオフェンアセチックアシッド、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−6−プリンチオール、4−アミノ−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、N−(2−アミノ−4−ピリミジニル)スルファニルアミド、3−アミノロダニン、5−アミノ−3−メチルイソチアゾール、2−アミノ−α−(メトキシイミノ)−4−チアゾールアセチックアシッド、チオグアニン、5−アミノテトラゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール、2−アミノプリン、アミノピラジン、3−アミノ−2−ピラジンカルボン酸、3−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル、3−アミノ−4−ピラゾールカルボン酸、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、5−アミノ−2−ピリジンカルボニトリル、2−アミノ−3−ピリジンカルボキサルデヒド、2−アミノ−5−(4−ピリジニル)−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、4−アミノ−5−ピリミジンカルボニトリル等のアミノ基又はメルカプト基を有する複素環化合物や、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−2−(メルカプトエチル)−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−2−(メルカプトエチル)−3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルメルカプト及びN−フェニル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。なお、これらは特に限定されるものではなく、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0170】
また、結合化学種11の分子骨格としては、官能基X及び官能基Yの間が、炭素原子、酸素原子及び窒素原子からなる群より選択される原子からなり、例えば直鎖部分が炭素の原子数が2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜10である直鎖状又は分岐状、あるいは環状の化学構造を有するものであってもよく、単一の分子種であっても、2種以上の分子種を用いて設計されるものであってもよい。好適に利用できる形態の一例を挙げると、例えば検出対象分子などを有効に検出する場合、結合化学種11によって形成される単分子膜(又は単分子層)の厚みは、約1.3nm〜3nmの範囲内にあることが好ましい。このような観点から、分子骨格として炭素数11〜20のアルカン鎖を有する結合化学種11が好ましい。この場合、官能基Xによって金属微粒子3の表面に固定され、長いアルカン鎖がこの表面からほぼ垂直に伸びるようにして単分子膜(又は単分子層)を形成するので、その形成された単分子膜(又は単分子層)の表面を官能基Yで充填させることができるものと考えられる。このような結合化学種11としては、自己組織化単分子膜(SAM)の形成試薬として適用されている公知のチオール化合物が好適に利用可能である。
【0171】
ここで、ナノコンポジット10’の製造方法について簡単に説明する。ナノコンポジット10’の製造方法は、上記の(I)の方法又は(II)の方法によって、ナノコンポジット10を製造した後、以下の工程を付加することにより行うことができる。
【0172】
Ie)前記工程Idの後、金属微粒子3の表面に、結合化学種11を固定する工程。
【0173】
IIe)前記工程IIdの後、金属微粒子3の表面に、結合化学種11を固定する工程。
【0174】
(I)の方法における工程Ia)〜Id)、(II)の方法における工程IIa)〜IId)は、上記(I)の方法、上記の(II)の方法においてそれぞれ説明した内容と同じであるため説明を省略する。工程Ie)、IIe)は、ナノコンポジット10の金属微粒子3に、さらに結合化学種11を付加させることによりナノコンポジット10’を得る結合化学種の固定化工程であり、以下のようにして実施できる。
【0175】
結合化学種の固定化工程:
結合化学種11の固定化工程では、結合化学種11を、金属微粒子3の露出部位の表面に固定させる。結合化学種11の固定化工程は、結合化学種11を金属微粒子3の露出部位の表面に接触させることにより行うことができる。例えば結合化学種11を溶剤に溶解した処理液で、金属微粒子3の表面処理を行うことが好ましい。結合化学種11を溶解する溶剤としては、水、炭素数1〜8の炭化水素系アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等、炭素数3〜6の炭化水素系ケトン類、例えば、アセトン、プロパノン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等、炭素数4〜12の炭化水素系エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等、炭素数3〜7の炭化水素系エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、マロン酸ジエチル等、炭素数3〜6のアミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等、炭素数2のスルホキシド化合物、例えば、ジメチルスルホキシド等、炭素数1〜6の含ハロゲン化合物、例えば、クロロメタン、ブロモメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、1、2−ジクロロエタン、1、4−ジクロロブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等、炭素数4〜8の炭化水素化合物、例えば、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0176】
処理液中の結合化学種11の濃度は、例えば0.0001〜1M(mol/L)とすることが好ましく、低濃度である方が金属微粒子3の表面への余分な結合化学種11の付着が少ない点で有利と考えられるが、結合化学種11による十分な膜形成の効果を得たい場合には、より好ましくは0.005〜0.05Mである。
【0177】
上記処理液で金属微粒子3の表面を処理する場合、処理液と金属微粒子3の露出部位の表面が接触すればよく、その方法は限定されないが、均一に接触させることが好ましい。例えば、金属微粒子3を有するナノコンポジット10ごと処理液に浸漬してもよいし、また、スプレー等でナノコンポジット10における金属微粒子3の露出部位に処理液を吹き付けてもよい。また、この際の処理液の温度は、特に制限なく例えば−20〜50℃の範囲内の温度で実施することができる。また、例えば、表面処理に浸漬法を採用した場合には、浸漬時間を1分〜24時間とすることが好ましい。
【0178】
表面処理の終了後、金属微粒子3の表面に余分に付着した結合化学種11を有機溶剤で溶解除去する洗浄工程を行うことが好ましい。この洗浄工程で使用する有機溶剤には、結合化学種11を溶解することができる有機溶媒を使用することができる。その例としては、結合化学種11を溶解する際に用いる上記例示の溶剤を用いることができる。
【0179】
洗浄工程で金属微粒子3の表面を有機溶剤で洗浄する方法は限定されない。例えば、有機溶剤に浸漬してもよく、また、スプレー等で吹き付けて洗い流してもよい。この洗浄では、金属微粒子3の表面に余分に付着した結合化学種11を溶解除去するが、結合化学種11の全部を除去してはならない。有利には、結合化学種11の膜が金属微粒子3の表面に単分子膜程度の厚みとなるように結合化学種11を洗浄除去する。この方法としては、まず水で洗浄する工程を上記洗浄工程の前に設け、次に上記洗浄工程を行い、その後、更に水で洗浄する工程を設ける方法がある。この際の上記洗浄工程における有機溶剤の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜50℃の範囲である。また、洗浄時間は、好ましくは1〜1000秒間、より好ましくは3〜600秒間の範囲である。有機溶剤の使用量は、好ましくはナノコンポジット10の表面積1m2あたり1〜500L、より好ましくは200〜400Lの範囲である。
【0180】
また、必要に応じて、固体骨格部1aの表面に付着した結合化学種11をアルカリ水溶液で除去することが好ましい。このとき使用するアルカリ水溶液は、濃度が10〜500mM(mmol/L)、温度が0〜50℃であることが好ましい。例えば、アルカリ水溶液の浸漬による場合には、浸漬時間を5秒間〜3分間とすることが好ましい。
【0181】
以上のような構成を有するナノコンポジット10’を備えたセンサー素子500は、例えばアフィニティーセンサーとして利用できる。図21は、ナノコンポジット10’をアフィニティーセンサーに利用する場合の概念図である。まず、固体骨格部1aに固定された金属微粒子3の露出部位(空隙1bに露出した部分)に、結合化学種11(リガンド)が結合した構造を有するナノコンポジット10’を準備する。次に、アナライト13と非検出対象物質15を含むサンプルを、金属微粒子3に結合化学種11を結合させたナノコンポジット10’に接触させる。結合化学種11は、アナライト13に対して特異的結合性を有しているため、接触によってアナライト13と結合化学種11との間に特異的結合が生じる。化学結合種11への特異的結合性を有しない非検出対象物質15は、結合化学種11に結合しない。結合化学種11を介してアナライト13が結合したナノコンポジット10’は、アナライト13が結合しておらず結合化学種11だけが結合した状態のナノコンポジット10’に比べて、電気的性質が変化する。その結果、センサー素子500のゲート電極層517に電圧をかけた状態において、FETのソース領域503とドレイン領域505間を流れる電流に影響を与える。このソース/ドレイン間の電流の変化をモニターすることによって、被検出物質であるアナライト13を高感度に検出することができる。このように、ナノコンポジット10’を備えたセンサー素子500では、標識物質を使用する必要がなく、簡易な構成によるセンシングの手法として、例えばバイオセンサー、ガスセンサー、ケミカルセンサー等の幅広い分野に利用できる。
【0182】
なお、図示は省略するが、本実施の形態において、センサー素子500のナノコンポジット10,10’を加熱して検出効率を高めるために、ナノコンポジット10,10’に近接してヒーター等の加熱手段を配備してもよい。
【0183】
以上、本発明の実施の形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0184】
1…マトリックス層、1a…固体骨格部、1b…空隙、3…金属微粒子、10…ナノコンポジット、20…光反射性部材、21…光透過層、23…金属層、30…保護層、40…光源・受光部、50…分光器(又は光検出器)、60…制御部、70…表示部、80…温度測定装置、90…温度制御装置、100…結露センサー、101…筐体、200…露点計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21