(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記6つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)のうち少なくとも1つの前記作用長を調整できるようにする、少なくとも1つの方向で大きさが異なる1組の少なくとも2つの交換可能なスペーサ要素(94;94’;130)を特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項3に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記第1結合端(46;46’)と前記担持構造(38;38’)との結合及び第2結合端(54a;54’)と前記光学素子(34;34’)との結合を維持したままスペーサ要素(94;94’;130)を前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)から取り外すことができるか又はスペーサ要素(94;94’;130)を前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)に加えることができるよう、該少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)を構成したことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の前記第1結合端(46;46’)を第1モジュール(46;46’、106)で構成し、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の前記第2結合端(54a;54’)を第2モジュール(48、86;48’)で構成し、これらを接続手段(92、90b;92’、90b)により相互に接続して、前記第1モジュール(46;46’、106)と前記第2モジュール(48、86;48’)との間の距離を変えることができるようにしたことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項5に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記第1モジュール(46)及び前記第2モジュール(48、86)を相互に対して回転可能に接続固定し、特に前記第1モジュール(46;46’、106)と前記第2モジュール(48、86;48’)との接続部で生じるトルクを吸収できるよう誘導することを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項5又は6に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記2つのモジュール(46;46’、106;48、86;48’)の少なくとも一方は一体アーム要素(48;48’)を含むことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項5〜7のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、1つ又は複数のスペーサ要素(94;94’;130)を、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の前記第1モジュール(46;46’、106)と前記第2モジュール(48、86;48’)との間に配置できることを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項5〜8のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記第1モジュール(46;46’、106)及び前記第2モジュール(48、86;48’)を、ねじ接続部(92、90b;92’、90b’)により相互に接続したことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜9のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、前記第1結合端(46;46’)を前記第2結合端(54a;54’)に対して、特に前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の前記主軸(52;52’)を中心として回転させることができる一体軸方向関節部(60;60’)を備えることを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜10のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、前記第1結合端(46;46’)を前記主軸(52;52’)に対して垂直な平面内で前記第2結合端(54a;54’)に対して傾斜させることができる少なくとも1つの一体自在関節部(76、76b)を備えることを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜11のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で180GPa〜230GPaの平均ヤング率を有することを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜12のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で600MPaを超える0.2%降伏強度Rp0.2を有することを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜13のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で205GPaのヤング率及び20℃で650MPaの0.2%降伏強度Rp0.2を有する高強度鋼、特にクロムニッケル鋼で実質的にできていることを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜14のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、少なくとも1つのバイポッドユニット(40;40’)を、調整可能な第1支持構造(42、46、94;42’、46’、94’、106)及び調整可能な第2支持構造(44、46、94;44’、46’、94’、106)から形成したことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項15に記載のヘキサポッドシステムにおいて、軸受台(46;46’)が、前記調整可能な第1支持構造(42、46、94;42’、46’、94’、106)の第1結合端及び前記調整可能な第2支持構造(44、46、94;44’、46’、94’、106)の第1結合端の両方を形成することを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項15又は16に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記調整可能な第1支持構造及び前記調整可能な第2支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の前記主軸(52;52’)は、相互に対して0°以外の角度で延びることを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項15〜17のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、ヘキサポッドを形成する3つのバイポッドユニット(40;40’)を設けたことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜18のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、
ES=前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の平均ヤング率、
AS=前記主軸(52;52’)に対して垂直な前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の有効断面積AS、
LS=前記主軸(52;52’)の方向の前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の有効長
として特性値ZS=ES×AS/LSを規定し、
ED=前記スペーサ要素(94;94’;130)の平均ヤング率、
AD=前記主軸(52;52’)に対して垂直な前記スペーサ要素(94;94’;130)の有効断面積AD、
LD=前記主軸(52;52’)の方向の前記スペーサ要素(94;94’;130)の有効長
として各前記スペーサ要素(94;94’;130)のかかる特性値ZD=ED×AD/LDが前記調整可能な支持構造(42、44;42’、44’)の最小特性値ZS=ES×AS/LSの少なくとも10倍であるよう前記スペーサ要素(94;94’;130)を構成したことを特徴とするヘキサポッドシステム。
請求項1〜19のいずれか1項に記載のヘキサポッドシステムにおいて、前記主軸(52;52’)に沿って得られる前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の作用長を画定する前記スペーサ要素(94;94’;130)の厚さを変更及び調整できるよう該スペーサ要素(94;94’;130)を構成したことを特徴とするヘキサポッドシステム。
6つのヘキサポッド支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)を備えたヘキサポッドシステムによって半導体クリーンルーム内又は真空中で光学素子を位置合わせする方法であって、各支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、
第1結合端(46;46’)を担持構造(38;38’)に、第2結合端(54a;54’)を前記光学素子(34;34’)に結合され、
前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)が定める主軸(52;52’)に沿った前記担持構造(38;38’)と前記光学素子(34;34’)との間の距離に対応する作用長を割り当てられて画定する
方法において、
前記第1結合端(46;46’)と前記第2結合端(54a;54’)との間の結合を調整し、前記少なくとも1つの調整可能な支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、前記第2結合端(54a;54’)側から該結合を調整するための貫通路(50、84’)を有すること、および、
前記第1結合端(46;46’)と前記担持構造(38;38’)との結合及び前記第2結合端(54a;54’)と前記光学素子(34;34’)との結合を維持したままスペーサ要素(94;94’;130)を前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)から取り外すか又はスペーサ要素(94;94’;130)を前記支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)に加えること
を特徴とする方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体クリーンルーム内又は真空中、特にマイクロリソグラフィEUV投影露光装置用の照明デバイス内で光学素子を位置合わせするヘキサポッドシステムであって、
a)6つのヘキサポッド支持構造であり、それぞれが、
aa)第1結合端を担持構造に、第2結合端を光学素子に結合可能であり、
ab)支持構造が定める主軸に沿った担持構造と光学素子との間の距離に対応する作用長を割り当てられて画定する、
6つのヘキサポッド支持構造を有するヘキサポッドシステムに関する。
【0002】
本発明は、半導体クリーンルーム内又は真空中、特にマイクロリソグラフィEUV投影露光装置用の照明デバイス内で光学素子を位置合わせするヘキサポッドシステムであって、6つのヘキサポッド支持構造であり、それぞれが、
第1結合端を担持構造に、第2結合端を光学素子に結合可能であり、
支持構造が定める主軸に沿った担持構造と光学素子との間の距離に対応する作用長を割り当てられて画定し、
第1結合端を第2結合端に対して回転させること及び/又は主軸に対して垂直な平面内で第2結合端に対して傾斜させることができる少なくとも1つの一体関節部を備えた
6つのヘキサポッド支持構造を有するヘキサポッドシステムにも関する。
【0003】
本発明はさらに、6つのヘキサポッド支持構造を備えたヘキサポッドシステムによって半導体クリーンルーム内又は真空中、特にマイクロリソグラフィEUV投影露光装置用の照明デバイス内で光学素子を位置合わせする方法であって、各支持構造は、
第1結合端を担持構造に、第2結合端を光学素子に結合され、
支持構造が定める主軸に沿った担持構造と光学素子との間の距離に対応する作用長を割り当てられて画定する
方法に関する。
【背景技術】
【0004】
マイクロリソグラフィ投影露光装置により、マスク上に配置した構造が感光層、例えばフォトレジスト等に転写される。この目的で、投影露光装置は、光源及び照明系を有する照明デバイスを備え、これは、光源が発生した投影光を調整してマスクへ指向させる。照明デバイスにより照明されたマスクは、投影対物系により感光層に結像される。
【0005】
投影光の波長が短いほど、投影露光装置を用いて感光層上に画定される構造を小さくすることができる。こうした理由で、中心波長が13.5nmである極紫外スペクトル域の投影光、すなわちいわゆるEUV放射線の利用が広がりつつある。このような投影露光装置を、多くの場合は略してEUV投影露光装置と称する。
【0006】
このような短波長に十分なほど高い透過率を有する光学材料はないので、EUV投影露光装置は、ミラーの形態の反射光学素子を備える。EUV投影露光装置の照明デバイスに配置したミラーにより、光をマスクへ誘導してマスクを照明する。関連の投影対物系のミラーを用いて、照明されたマスクをこれに対応して感光層に結像する。
【0007】
それぞれ要求される精度でこれを実行するために、ミラーを全6自由度で精密に位置合わせしなければならない。
【0008】
投影対物系におけるミラーの精密な位置合わせのために、特に、異なる原理に従って動作する導入部で述べた第1及び第2タイプのヘキサポッドシステムが知られている。
【0009】
したがって、例えば、導入部で述べたような交換可能なスペーサ要素により調整できる担持構造としてのベースプレートを有する、導入部で述べた第1タイプのヘキサポッドシステムが市場で知られている。スペーサ要素を交換してヘキサポッドにより担持されるミラーを位置合わせするためには、ミラーを最初に支持構造から分離してヘキサポッドから取り外さなければならない。特定のスペーサ要素を交換した後、ミラーをヘキサポッドの支持構造に再接続する。しかしながら、この場合、関与するコンポーネントに力が加わることにより、ミラーの位置合わせがヘキサポッドに対する所望の目標位置合わせから変わる。その場合、適当な場合はこれを再調整により補正しなければならないが、これがさらにそれらの摂動の影響を受け得る。
【0010】
導入部で述べた第2タイプのヘキサポッドシステムは、別の原理に従って動作し、特に固体関節部を備えたものであり、これは例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている。このようなヘキサポッドは、支持アームの形態の6つの支持構造を備え、これらが光学素子を担持して平行運動で協働する。2つの支持アームは、この場合はそれぞれバイポッドユニットを形成する。特許文献1では、支持アームの一方の結合端が移動できることにより、光学素子と当該支持アームとの間の角度が変わって光学素子の位置が変更される。導入部で述べた支持アームの作用長は、この場合は変わらない。特許文献2では、支持アームが曲げ要素として形成される。このような曲げ要素が曲がると、その作用長が短くなる。
【0011】
担持構造は概して、照明デバイスのハウジング内に固定的に設置され、照明デバイス自体のハウジング又はフレームにより形成されてもよい。
【0012】
照明デバイスの内部は、通常は真空排気され、特に内部は高真空状態になる。こうした理由で、原理上は照明デバイスを半導体クリーンルームで用いる場合、例えばアクチュエータ、微動ねじ、又は差動ねじ装置の形態のミラーの位置を変える駆動手段の使用は、不可能であるか又は可能性が非常に限られている。アクチュエータの場合、アクチュエータ材料の脱ガスを防止するために、入念な封入が概して必要である。
【0013】
照明デバイスの動作の過程で、所与の時点で取り付け直す前に、ミラーを照明系から繰り返し取り外して別のミラーと交換することがさらに生じ得る。ミラー自体の精密な位置合わせに加えて、照明デバイスでミラーを用いる場合の特に重要な態様は、しばらくの間使用せずに保管場所に一時的に保管した場合でも、ミラーの位置及び位置合わせの再現性があることである。このミラーを再設置する場合、再度完全に位置決め及び位置合わせしなければならない。保管後に照明デバイスに再装着した後のミラーの位置及び位置合わせの再現性は、既知のシステムでは最大10μmの範囲であるので、ミラーの再位置合わせは比較的細密である。
【0014】
しかしながら、ミラーの取り外し及び再装着により、担持構造に対するミラーの位置及び設置の変位が不十分にしか計算できなくなることで、その位置合わせの精度を損なわせ得る。このとき、ミラー又は担持構造を支持構造に結合する締結手段が重大な要素である。
【0015】
全体として、マイクロリソグラフィEUV投影露光装置用の照明デバイスのミラーの位置合わせに関する精度要件は、年々増え続けている。照明デバイスにおける各ミラーの位置及び位置合わせは、今日では好ましくは1自由度当たり2μm〜3μm又は最大7μradの公差で調整可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、光学素子の位置及び位置合わせをアクチュエータ無しで高精度に再現性よく調整できる、導入部で述べたタイプのヘキサポッドシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
導入部で述べた第1タイプの光学素子を位置合わせするヘキサポッドシステムにおいて、この目的は、
b)第1結合端と担持構造との結合及び第2結合端と光学素子との結合を維持したままスペーサ要素を支持構造から取り外すことができるか又はスペーサ要素を支持構造に加えることができるよう、少なくとも1つの調整可能な支持構造を構成する
ことにより達成される。
【0019】
本発明によれば、担持構造に対する光学素子の位置合わせを変える間、担持構造及び位置合わせすべき光学素子の両方がヘキサポッド支持構造に、したがって相互に接続されたままになることができる。
【0020】
ヘキサポッド支持構造に対する光学素子及び担持構造の両方の接続を変更しない場合に、光学素子の正確な位置合わせを高い再現性でよりよく達成できることが分かった。担持構造に対する光学素子の位置及び位置合わせの調整は、この素子を取り外す必要なくその場で実行することもできる。
【0021】
ヘキサポッドシステムを光学素子と共に照明デバイスから取り外しても、担持構造に対する光学素子の相対位置は実質的に変わらない。対応して正確な担持構造用ホルダを照明デバイスに設けた場合、光学素子を対応して高い再現性で着脱することができる。
【0022】
この場合、6つの支持構造のうち少なくとも1つの作用長を調整できる、少なくとも1つの方向で大きさが異なる少なくとも2つの交換可能なスペーサ要素を設ければ有利である。これにより、3つ以上の作用長を調整することができる。
【0023】
導入部で述べた第2タイプの光学素子を位置合わせするヘキサポッドシステムにおいて、上記目的は、
6つの支持構造のうち少なくとも1つの作用長を調整できる、少なくとも1つの方向で大きさが異なる1組の少なくとも2つの交換可能なスペーサ要素
により達成される。
【0024】
本発明は、一体関節部すなわち固体関節部で動作するヘキサポッドシステムの場合でも、位置を変更して光学素子を位置合わせする交換可能なコンポーネントとしての既製のスペーサ要素の使用を可能にする精度で、これらのスペーサ要素を製造できるという発見に基づく。光学素子の位置合わせは、この目的の駆動手段を設けずに、1つ又は複数のスペーサ要素を交換することによってヘキサポッド支持構造の構造設定、特にその作用長を変更することにより実行する。したがって、システムは、半導体クリーンルーム及び/又は高真空動作にも無制限に適している。光学素子の位置合わせは、特に手動で可能である。
【0025】
本発明によるヘキサポッドシステムでは、光学素子の設定点位置から0.5μm又は約5μradの偏差での再現性を達成することがそれぞれ可能であった。
【0026】
第1タイプのヘキサポッドシステムと同様に、第2タイプのヘキサポッドシステムでは、第1結合端と担持構造との結合及び第2結合端と光学素子との結合を維持したままスペーサ要素を少なくとも1つの調整可能な支持構造から取り外すことができるか又はスペーサ要素を少なくとも1つの調整可能な支持構造に加えることができるよう、少なくとも1つの調整可能な支持構造を構成することも有利である。
【0027】
第1タイプのヘキサポッドシステム及び第2タイプのヘキサポッドシステムの両方について、少なくとも1つの調整可能な支持構造の第1結合端を第1モジュールで構成し、少なくとも1つの調整可能な支持構造の第2結合端を第2モジュールで構成し、これらを接続手段により相互に接続して、第1モジュールと第2モジュールとの間の距離を変えることができるようにすることが好ましい。
【0028】
この場合、第1モジュール及び第2モジュールを相互に対して回転可能に接続固定し、特に第1モジュールと第2モジュールとの接続部で生じるトルクを吸収できるよう誘導することが有利である。
【0029】
支持構造は、光学素子にその目標位置でできる限り小さな移動許容範囲しか与えるべきではない。これは特に、2つのモジュールの少なくとも一方が一体アーム要素を含むことで達成される。このアーム要素は、中空棒として形成することが好ましい。
【0030】
支持構造への1つ又は複数のスペーサ要素の適切な組み込みのために、1つ又は複数のスペーサ要素を少なくとも1つの調整可能な支持構造の第1モジュールと第2モジュールとの間に配置できれば有利である。
【0031】
モジュール間の取り扱い易い接続は、ねじ接続により達成することができる。
【0032】
少なくとも1つの調整可能な支持構造が、第1結合端を第2結合端に対して、特に支持構造の主軸を中心として回転させることができる一体軸方向関節部を備えていれば、スペーサ要素の交換又は追加時に応力及びブロッキングを回避することができる。
【0033】
支持構造が、第1結合端を主軸に対して垂直な平面内で第2結合端に対して傾斜させることができる少なくとも1つの一体自在関節部を備えていれば、支持構造を光学素子の移動にさらにより適合させることができる。光学素子の熱誘起変位も、軸方向関節部及び自在関節部の組み合わせにより補償することができる。
【0034】
システムの最低固有振動が200Hzを超えることが有利である。これは特に、少なくとも1つの調整可能な支持構造が20℃で180GPa〜230GPaの、好ましくは20℃で205GPaの平均ヤング率を有する場合に達成することができる。
【0035】
例えば5mm、好ましくは0.2mm〜5mmの範囲のスペーサ要素の大きな厚さ変動を可能にして、光学素子をその自由度に関してこの範囲内で適宜調整できるようにするために、少なくとも1つの調整可能な支持構造が20℃で600MPaを超える、好ましくは700MPaを超える0.2%降伏強度R
p0.2を有することが好ましい。さらに、この降伏強度は、システムが動作中に加熱される場合にも有利である。しかしながら、通常、支持構造の関節部に対する加熱効果の影響は、光学素子の調整を意図した所望の調整範囲の約1/5〜1/20である。
【0036】
20℃で205GPaのヤング率及び20℃で650MPaの0.2%降伏強度R
p0.2を有する高強度鋼、例えばCr−Ni鋼で実質的にできている少なくとも1つの支持構造で、剛性に関して特によい結果を得ることが可能であった。ばね鋼又は焼戻し鋼も同様に適している。
【0037】
少なくとも1つのバイポッドユニットを、調整可能な第1支持構造及び調整可能な第2支持構造から形成することが好ましい。
【0038】
この場合、軸受台が調整可能な第1支持構造の第1結合端及び調整可能な第2支持構造の第1結合端の両方を形成することが有利である。
【0039】
光学素子のアサーマルな、すなわち温度に依存しない支承を目的として、調整可能な第1支持構造及び調整可能な第2支持構造の主軸が相互に対して0°以外の角度で、特に90°の角度で延びることが好ましい。
【0040】
好ましくは、ヘキサポッドを形成する3つのバイポッドユニットを設ける。
【0041】
ヘキサポッド支持構造の設計及びその使用材料へのスペーサ要素の適合を有利に実行できるのは、少なくとも1つの調整可能な支持構造が、
E
S=支持構造の平均ヤング率、
A
S=主軸に対して垂直な支持構造の有効断面積A
S、
L
S=主軸の方向の支持構造の有効長
として特性値Z
S=E
S×A
S/L
Sを規定し、
E
S=スペーサ要素の平均ヤング率、
A
S=主軸に対して垂直なスペーサ要素の有効断面積A
S、
L
S=主軸の方向のスペーサ要素の有効長
として各スペーサ要素の上記特性値Z
D=E
D×A
D/L
Dが調整可能な支持構造の最小特性値Z
S=E
S×A
S/L
Sの少なくとも10倍、好ましくは100倍であるようスペーサ要素を構成した場合である。
【0042】
主軸に沿って得られる支持構造の作用長を画定するスペーサ要素の厚さを変更及び調整できるようスペーサ要素を構成した場合、例えばサブマイクロメータ範囲の作用長の微調整を有利に行うことができる一方で、例えばマイクロメータ範囲の作用長の粗調整をスペーサ要素の交換により行うことができる。
【0043】
導入部で述べたタイプの方法では、ここで上記目的は、
第1結合端と担持構造との結合及び第2結合端と光学素子との結合を維持したままスペーサ要素を支持構造から取り外すか又はスペーサ要素を支持構造に加える
ことにより達成される。
【0044】
その利点は、本発明による第1タイプのヘキサポッドシステムを参照して上述した利点に対応する。
【0045】
本発明の例示的な実施形態を、図面を用いてより詳細に後述する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、照明デバイス12及び投影対物系14を備えたマイクロリソグラフィEUV投影露光装置10を概略的に示す。
【0048】
投影対物系14を用いて、マスク18上に配置した反射構造16を感光層20に転写する。感光層20は、通常はフォトレジストであり、ウェハ22又は別の基板上にある。
【0049】
マスク18の反射構造16を感光層20に転写するために、照明デバイス12を用いてマスク18をEUV放射線24で照明する。照明デバイス12は、本例示的な実施形態では中心波長が13.5nmでスペクトル半値幅が約1%であるEUV放射線を発生させるので、照明デバイス12から出たEUV放射線24の大部分が13.36nm〜13.64nmの波長を有する。
【0050】
マスク18の下側で、照明デバイス12が、本例示的な実施形態ではリングセグメントに相当する固定視野26を照明する。ウェハ22上に、投影対物系14が、マスク18の視野26内で照明された構造16の縮小像28を生成する。
【0051】
投影対物系14は、マスク18及びウェハ22を投影対物系14の結像スケールによって決まる速度でそれ自体が既知の方法で相互に逆方向に移動させる走査動作を行うよう構成する。これを、
図1及び
図2において矢印P1及びP2で示す。
【0052】
照明デバイス12は、ハウジング30を備え、ハウジング30内にEUV放射線24用の光源32(
図2に示す)を配置する。光源32が発生させたEUV放射線24は、ミラー34の形態の光学素子によりマスク18に投影される。
図2における非常に概略的な図は、2つのミラー34のみを示し、中間焦点は示さない。
【0053】
各ミラー34を調整デバイス36に接続し、調整デバイス36を各ミラー34に割り当て、ハウジング30内に配置し、EUV放射線24が要求される精度でマスク18の照明用の視野26に到達するよう各ミラー34を空間的に位置合わせするために用いる。
【0054】
このような調整デバイス36を
図3に示し、これは、本例示的な実施形態では3つの調整可能なバイポッドユニット40を支承するベースプレート38を備え、バイポッドユニット40は、同じ構造を有して正三角形の頂点に位置することが好ましい。これらバイポッドユニット40はさらに、第1支持アーム42及び第2支持アーム44をそれぞれが備え、第1支持アーム42及び第2支持アーム44の一端を、第1結合端として働く共通の軸受台46によりV字形構成を形成するよう接続すると共にベースプレート38に接続する。したがって、支持アーム42、44は、第1結合端としての軸受台46をそれぞれが備え、「V」の一方の枝を形成する。
【0055】
軸受台46から離れた第2端46において、支持アーム42、44をミラー34にそれぞれ結合する。調整ユニット36をこのようにして全体的にヘキサポッドとして形成する。
【0056】
次に、バイポッドユニット40を
図4に示す断面の例を参照してより詳細に説明するが、以下では支持アーム42のみについて説明する。支持アーム44に関しては、支持アーム42に関する記述を対応して準用する。
図4に示す基準座標系は、支持アーム42に固定するので、支持アーム42と共に空間的に移動する。
【0057】
支持アーム42は、貫通路50を有する中空棒48の形態のアーム要素を備え、貫通路50は、ワイヤ及び/又はシンカー放電加工によりそれ自体が既知の方法で一体的に製造され、支持アーム42の長手方向軸52を画定する。
【0058】
支持アーム42、44のV字形構成に関して、それらの長手方向軸52は、本例示的な実施形態では相互に対して90°の角度を形成する。
【0059】
中空棒48は、ミラー34と協働する上側部分54と、軸受台46に割り当てた下側部分46とを備える。
【0060】
中空棒48の上側部分54及び下側部分56は、相互にある程度分離されており、支持アーム42の一体軸方向関節部60を形成する周方向に均一に分配した4つの接続ウェブ58により相互に一体的に接続される。接続ウェブ58を非常に細く形成するので、中空棒48の上側部分54及び下側部分56は、その長手方向軸52を中心として相互に対して回転できる。可能な回転角は限られており、特に、一体中空棒48の材料、接続ウェブ58のZ方向の大きさ、及びそれらの厚さに応じて変わる。
【0061】
上側部分54は、自由端部に、周方向対向肩部(circumferential counter-shoulder)64まで延びる雄ねじ山62を有する。中空棒48の上側部分54の自由端部には、雌ねじ山68を有する内鍔部66がさらにあり、これについては再度後述する。
【0062】
中空棒48をミラー34に接続できるように、支承肩部72を有する段付き貫通孔70をミラー34に形成する。
図2には、2つの貫通孔70しか載せていない。
【0063】
例えば
図4で見ることができるように、中空棒48は、その対向肩部64がミラー34の支承肩部72に当接するまで、その雄ねじ山62によりミラー34の貫通孔70の雌ねじ山74に螺入することができる。
【0064】
軸方向関節部60に加えて、支持アーム42は、その上側部分54に一体的に組み込んだ自在関節部76aと、その下側部分56に一体的に組み込んだ自在関節部76bとを有する。この目的で、4つのスロット78を支持アーム42の上側部分54に形成し、4つのスロット80を支持アーム42の下側部分56に形成し、これらを周方向で相互に対して90°ずらして配置することにより、2つのスロット78又は80がそれぞれ共通の平面内で相互に対向するようにする。
図4及び
図6〜
図8には、2つのスロット78及び80のみをそれぞれ載せている。
【0065】
第1自在関節部76aにより、中空棒48の上側部分54を一体接続される自由端部54a及び中間部54bに細分し、したがって雄ねじ山62を有する中空棒48の自由端部54aは、支持アーム42の第2結合端として働き、中間部54bは軸方向関節部60につながる。
【0066】
第1自在関節部76aのスロット78により、中空棒48の上側部分54の自由端部54aを、y軸と平行に延びる第1軸及びz軸と平行に延びる第2軸を中心として中間部54bに対して傾斜させることが可能である。
【0067】
したがって、これに対応して、第2自在関節部76bは、中空棒48の下側部分56を相互に一体接続される自由端部56a及び中間部56bに細分する。中間部56bは、この場合、中空棒48の軸方向上側部分54の中間部54bの反対側で軸方向関節部60につながる。
【0068】
自在関節部76a、76bにより、軸受台46の全体を、支持アーム42の長手方向軸52及び主軸に対してそれぞれ垂直な2つの相互に垂直な軸を中心として、中空棒48の上側部分54の自由端部54aに対して傾斜させることができる。したがって、すなわち、軸受台46を、長手方向軸52に対して垂直な平面内で傾斜させることができる。
【0069】
中空棒48の上側部分54の自由端部54a及び/又は下側部分56の自由端部56aを対応して傾斜させる場合、中空棒48の長手方向軸52は、中間部54b及び56bと同軸上にあると定義される。
【0070】
中空棒48の下側部分56の自由端部56aの自由前側に、ねじ山のない周方向内鍔部82により貫通開口84が形成される。これと相補的な正味の外部輪郭を有する継手スリーブ86をその中に着座させ、継手スリーブ86は、端が中空棒48の貫通路50内に残る外鍔部88を有するので、中空棒48から軸受台46の方向に抜け出すことができない。
【0071】
継手スリーブ86の反対側の第2端は、軸受台46の段付き孔90の部分90aに着座させる。この段付き孔90の部分90aは、円形断面を有するのではなく、少なくとも1つの平面断面を有する。段付き孔部分90a内に突出する継手スリーブ86の端部分の断面は、これと相補的に形成する。このようにして、継手スリーブ86の長手方向軸を中心としての回転が防止され、生じるトルクを吸収することができる。
【0072】
段付き孔の部分90aは、丸い断面を有する雌ねじ山部分90bに向かって再び内方に窄まる。
【0073】
締付けねじ92が継手スリーブ86を貫通し、六角穴付きのそのねじ頭92aが、中空棒48の貫通路50内で継手スリーブ86の外鍔部88に載る。ねじ92は、ねじ頭92aに続いてねじ無し平滑部分92bを有し、これがねじ山部分92cにつながる。これは、軸受台46の段付き孔90の雌ねじ山部分90bの雌ねじ山と相補的である。
【0074】
中空棒48と軸受台46との間に、スペーサディスク94をスペーサ要素として配置し、これが中空棒48と軸受台46との間の距離を画定し、したがって中空棒48の長手方向軸52に沿ったベースプレート38とミラー34との間の距離も画定する。
【0075】
それぞれ設けたスペーサディスク94を含む支持アーム42と軸受台46とは、作用長が長手方向軸52に沿ったベースプレート38とミラー34との間のこの距離により特に画定される支持構造を共に形成する。長手方向軸52は、作用長の方向の基準軸としての役割を果たすこの支持構造の主軸を形成する。
【0076】
図5で見ることができるように、スペーサディスク94は、舌状凹部96を有する。これが継手スリーブ86の外半径と相補的であることにより、スペーサディスク94を、外部から半径方向に継手スリーブ86に被せて装着できるようにする。
【0077】
2つの窪み98をスペーサディスク94の縁に形成して、スペーサディスクを対応の工具により外部から半径方向に把持できるようにする。
【0078】
この目的で、ミラー34は貫通スロット100を有し、これは、取り付けた支持アーム42をその自在関節部76a、76bを中心として傾斜させていない場合にその長手方向軸52に対して垂直に延びる。貫通スロット100は、この場合、取り付けたスペーサディスク94に上記工具が届くような配置及び寸法である。
図3には、2つの貫通スロット100しか載せていない。
【0079】
各バイポッドユニット40に関して、第1支持アーム42の貫通孔70及び貫通スロット100と第2支持アーム44の貫通孔70及び貫通スロット100とを、ミラー34にそれぞれ設ける。第1支持アーム42に割り当てた貫通スロット100は第2支持アーム44の貫通孔70の隣に配置し、これに対応して、第2支持アーム44に割り当てた貫通スロット100は第1支持アーム42の貫通孔70の隣に配置する。
【0080】
位置合わせデバイス36は、単一のスペーサディスク94だけでなく、厚さのみが異なる1組の複数のスペーサディスク94.1、94.2、94.3、…、94.nを備える。これを、側面図で示す3つのスペーサディスク94.1、94.2、及び94.3で
図5に示す。本例示的な実施形態のスペーサディスク94の組は、10μm刻みで3.5mm〜4.5nmの厚さを有するスペーサディスク94.1、94.2、94.3、…、94.nを備える。変形形態では、10μm刻み以外の目盛があってもよく、規則的でなくても構わない。
【0081】
全体として、上記例示的な実施形態では、各バイポッドユニット40の各支持アーム42、44の長さを、規定のゼロ位置から開始して例えば5μm刻みで1mmの範囲で、すなわち+/−0.5mmずつ対応のスペーサディスク94により変えることができる。この調整範囲に基づき、指定の0.2%降伏強度R
p0.2を有する上記鋼を用いることが有利である。
【0082】
調整デバイス36は、最大約200kgの重量を有するミラー34に用いることができる。バイポッドユニット40の中空棒48は、実際には長さが約75mmであり、取り付けるミラー34の重量に応じて直径が約24mm〜約30mmである。
【0083】
ベースプレート38、軸受台46、及びスペーサディスク94を含む各支持アーム42、44の全コンポーネントは、例えば高強度鋼製である。少なくとも200Hzの調整デバイス36の機械的固有振動数を達成するために、導入部で述べたように、選択材料は、20℃で180GPa〜230GPaのヤング率を有するべきである。0.2%降伏強度R
p0.2は、20℃で600MPa〜700MPaにあるべきである。
【0084】
本例示的な実施形態では、20℃で205GPaのヤング率及び20℃で650MPaの0.2%降伏強度R
p0.2を有する高強度鋼X46CrNi13を用いる。この材料により、スペーサディスク94をその厚さに関して+/−1.0μmの公差で既知の製造技法により作製することができる。
【0085】
ミラー34のアサーマルな、熱的に分離された支承が調整デバイス36により達成されることにより、その幾何学的中心がその温度に依存した膨張に関係なく不変位置を占めるようにする。ミラー34のこのアサーマルな支承は、支持アーム42、44の軸方向関節部60及び自在関節部76a、76bと共に、特に各バイポッドユニット40の支持アーム42と44との間の90°の角度により確保される。このようにして、各バイポッドユニット40の支持アーム42、44は、ミラー34の温度に依存した膨張に起因するその熱誘起変位を補償することができる。
【0086】
ミラー34は、ヘキサポッドとして形成した調整デバイス36によりベースプレート38に対して6自由度で空間的に位置合わせすることができる。空間位置34は、この場合、4つのバイポッドユニット40の1つ又は複数の支持アーム42、44における1つ又は複数のスペーサディスク94を交換することにより、開始位置から目標位置へ変更する。
【0087】
これは、ベースプレート38に対する、又は単に支持アーム42、44に対するミラー34の接続を解除する必要なく、調整デバイス36で行うことができる。
【0088】
次に、スペーサディスク94の交換を、バイポッドユニット40の支持アーム42について
図6〜
図8を用いて説明する。
【0089】
最初に、
図6は、変更すべきミラー34の開始位置を再度示す。中空棒48は、上側部分54のその雄ねじ山62でミラー34の関連の貫通孔70に螺入され、下側部分56においてねじ92により軸受台46に接続されている。設けたスペーサディスク94は、それにより中空棒48と軸受台46との間に強固に挟持されている。
【0090】
ここで、工具(それ自体は図示せず)がねじ92のねじ頭92aに係合するまで、工具をミラー34のうち支持アーム42から離れた側からミラー34の貫通孔70を通して中空棒48の貫通路50に入れることにより、ねじ92を緩める。
【0091】
ねじ92を、軸受台46の孔90の雌ねじ山部分90bから完全にではないがある程度外すことにより、ミラー34が支持アーム42によりベースプレート38に接続されたままとなるようにする。ねじ92のねじ頭92aは、このとき中空棒48の貫通路50内で継手スリーブ86から分離される。これを
図7に示す。
【0092】
ねじ92用の工具をここで取り外し、カウンタねじ(counter-screw)102をミラー34のうち支持アーム42から離れた側からミラー34の貫通孔70を通して中空棒48の貫通路50に入れる。カウンタねじ102は、中空棒48の内鍔部66の雌ねじ山68と相補的な雄ねじ山104を有する。これにより、カウンタねじ102を、最初に、中空棒48の貫通路50内にあるその端102aがねじ92のねじ頭92aに接触するまで中空棒48に螺入する。カウンタねじ102を続いて中空棒48にさらに螺入すると、中空棒48及びそれに結合したミラー34の両方が軸受台46から離れる方向に動かされることにより、中空棒48と軸受台46との間の距離が増加する。
【0093】
この移動は、ミラー34とバイポッドユニット40の他の全ての支持アーム42及び44との位置合わせ及び向きに影響を及ぼし、個々の支持アーム42、44の軸方向関節部60及び自在関節部76a、76bにより可能である。軸方向関節部60及び自在関節部76a、76bにより、個々の支持アーム42及び44は、歪み又はブロッキングが生じることなく、またミラー34への支持アーム42又は44の接続をこの目的で解除する必要なく、ミラー34の位置変化にある程度まで従うことができる。
【0094】
図8で見ることができるように、中空棒48と軸受台46との間の距離が大きくなったので、スペーサディスク94は挟持されなくなる。すでに上述したスペーサディスク94用の把持工具を、ここでミラー34の対応の貫通スロット100(
図6〜
図8では見えない)に差し込む。スペーサディスク94を把持し、ミラー34の貫通スロット100を通して抜去する。これを
図8に矢印P3で示す。
【0095】
取り外したスペーサディスク94とは異なる厚さを有する交換スペーサディスク94を、ミラー34の貫通スロット100及び継手スリーブ86を通して差し込む。このプロセスを、破線矢印P4と共に破線で示したスペーサディスク94により、
図8に示す。
【0096】
カウンタねじ102を続いて中空棒48から再度取り外す。交換スペーサディスク94が中空棒48と軸受台46との間に強固に挟持されるまで、ねじ92を対応の工具により軸受台46の段付き孔90にさらに螺入し戻す。ねじ92のねじ頭92aは、継手スリーブ86に当接すると、そこに生じて作用するトルクを吸収することができる。
【0097】
この場合も、ミラー34の移動が生じ、バイポッドユニット40の他方の支持アーム42、44がその軸方向関節部60及び自在関節部76a、76bそれぞれによりこの移動に従うことができる。
【0098】
バイポッドユニット40の単一の支持アーム42又は44におけるスペーサディスク94の交換は、ミラー34の全長に影響を及ぼし、他方の支持アーム42、44のそれぞれでミラー34に対する相対的位置合わせが変わる。
【0099】
ミラー34をベースプレート38に対する所望の目標位置合わせ及び目標向きにするために、いわゆるスペーサ公式の計算を実行し、これは、各バイポッドユニット40の各支持アーム42、44について、所望の厚さを有する特定のスペーサディスク94又は複数のスペーサディスク94の組み合わせを特定するものである。このスペーサ公式に従い、スペーサディスク94を上述の交換プロセスに従ってそれぞれ関連の支持アーム42又は44に割り当てる。
【0100】
ミラー34の位置合わせは、この場合、1自由度当たり2μm未満又は7μrad未満の精度で調整することができる。
【0101】
動作状態の、すなわち全ての支持アーム42、44の全てのねじ92を締めた場合の調整デバイス36は、静定システムである。3つの空間軸それぞれの方向の力全部の和と、3つの空間軸それぞれについてのモーメント全部の和とは、いずれの場合もゼロに等しいので、ベースプレート38に対するミラー34の位置及び位置合わせの変更は、外的介入がなければ不可能である。
【0102】
軸受台46の段付き孔90の雌ねじ山部分90bと組み合わせて、ねじ92は、第1モジュールとしての軸受台46を継手スリーブ86を含む第2モジュールとしての中空棒48に接続するねじ接続部を形成し、2つのモジュールの相互間の距離を変更できるようにする。
【0103】
図9〜
図11は、例示的な第2実施形態による調整デバイス36’のスペーサディスク94の交換プロセスを示す。この場合、
図1〜
図8に示す調整デバイス36のコンポーネントに対応するコンポーネントは、アポストロフィを末尾に付けた同じ参照符号を有する。別段の明示がない限り、調整デバイス36に関する上記記述を調整デバイス36’にも対応して準用する。
【0104】
図9〜
図11に示すように、調整デバイス36’の場合の軸受台46’は、構造ユニットに組み合わせた接続ウェブ78’及び80’により形成した一体自在関節ユニット106を支承する。中空棒48’は、対応して上側部分54’及び下側部分56’を有し、これらを軸方向関節部60’により相互に一体接続するが、自在関節部は組み込まない。
【0105】
段付き孔70の代わりに、ミラー34’には一定断面を有する6つの貫通孔108がある。締付けスリーブ110が、ミラー34’のうちバイポッドユニット40’から離れた側で環状面114に鍔部112を載せて貫通孔80を密閉し、ミラー34’の反対側で対応の雄ねじ山116を中空棒48’の雌ねじ山68’と係合させる。
【0106】
この例示的な実施形態のねじ92’は、中空棒48’の貫通開口84’に継手スリーブを用いずに直接差し込み、ねじ山部分92cをそれと相補的な自在関節ユニット106のねじ孔118に螺入する。
【0107】
したがって、この場合、ねじ接続部としてのねじ92’は、第1モジュールとしての自在関節ユニット106及び軸受台46’を第2モジュールとしての中空棒48に接続して、それら相互間の距離を変更できるようにする。
【0108】
既存のスペーサディスク94’を別のスペーサディスク94’と交換するために、調整デバイス36′の場合、調整デバイス36に関して上述したのと同じ手順を実行する。これは、
図9に示す開始状況から始めて、ねじ92’を最初に緩めることを意味する(
図10)。
【0109】
カウンタねじ102’を続いて中空棒48’に螺入することにより、カウンタねじ102’がねじ92’の頭部に押し当たり、中空棒48’をミラー34’と共に自在関節ユニット106から持ち上げるようにする(
図11)。スペーサディスク94’は、自在関節ユニット106と中空棒48’との間に挟持されなくなり、上記工具を用いてミラー34’のスロット100’を通して把持して交換することができる。
【0110】
固体関節部を全体として形成する上述の支持アーム42、44及び42’、44’は、それぞれが有効断面積A
S[cm
2]及び有効アーム長又はアーム高さL
S[cm]を有する。これらの固体関節部に関する所与の平均ヤング率E
S[GPa]から得られる最小値Z
S=E
S×A
S/L
Sは、上述のスペーサディスク94、94’の構成の指針値を与える。
【0111】
これらは、各スペーサディスク94、94’の対応値Z
D=E
D×A
D/L
Dが固体関節部又は支持アーム42、44若しくは42’、44’の最小値Z
S=E
S×A
S/L
Sの少なくとも10倍、好ましくは100倍であるよう構成することが好ましい。
【0112】
したがって、各スペーサ要素94、94’の有効面積Au[mm
2]、有効厚Du[mm]、及びヤング率Euを有する適当な材料を計算することができる。スペーサ要素94、94’に対するこの構成規則の適用により、ミラー34又は34’及びヘキサポッド36又は36’から成るシステムの最低固有振動数がスペーサディスク94又は94’の形態のスペーサ要素の使用によってより低い振動数に不都合にシフトしないことが保証される。
【0113】
図12は、変更型の支持アーム42の断面を概略的に示す。支持アーム42は、同軸上に配置した第1アーム部材120及び第2アーム部材122を備える。第1アーム部材120は、雄左ねじを有するねじ端124を有し、第2アーム部材122は、雄右ねじを有するねじ端126を有するか、又はその逆である。ねじ端124から遠い端で、第1アーム部材120をミラー34に結合し、ねじ端126から遠い端で、第2アーム部品122を軸受台46に結合し、こうしてベースプレート38に結合するが、この場合は明確化のためにベースプレート38を具体的に図示していない。
【0114】
この変更型の支持アーム42でも、一体的に形成した関節部を提供するが、これらも図示していない。
【0115】
アーム部材120及び122の2つのねじ端124及び126は、相互に対向し、スペーサ要素130を配置する間隔128がそれらの間に残る。
【0116】
雌ねじを有するスリーブ状の回転継手134を、アーム部材120及び122のねじ端124及び126に螺合し、回転継手134は、通路により半径方向に開いている。回転継手134をその長手方向軸を中心として回転させることにより、回転方向に応じて、アーム部材120及び122を相互に対して接離移動させることができる。このために、回転継手134は、適当な工具用の接触点を備える。効果的な支持アーム42は、アーム部材120、122及び回転継手124とスペーサ要素130とにより、こうして形成する。動作の際、回転継手134を締めることにより、アーム部材120及び122をスペーサ要素130に対して締め付ける。
【0117】
支持アーム42の作用長を変更する場合、スペーサ要素130をz方向の大きさが既存のスペーサ要素130とは異なる別のスペーサ要素130と交換する。この場合も、z方向の大きさが異なる、すなわちz方向で大きさが異なる、すなわち厚さが異なる1組のスペーサ要素130がある。
【0118】
最初に、回転継手134をアーム部材120及び122が相互に離れるよう回転させ、それにより、間隔128内のスペーサ要素130が挟持されなくなるので解放される。適当な工具により、既存のスペーサ要素130を回転継手134の通路132の1つを通して間隔128から取り外し、支持アーム42の異なる作用長を提供する厚さが異なる別のスペーサ要素130と交換する。
【0119】
ここで、アーム部材120及び122を相互に近付けて戻すよう回転継手134を回転させ、それにより、アーム部材120、122をスペーシング128内のスペーサ要素130に対して締め付けて支持アーム42の新たな作用長を調整する。
【0120】
全交換プロセス中、一方でミラー34への、他方でベースプレート38への、支持アーム42の結合が維持される。
【0121】
種々のスペーサ要素130は、それ自体が既知であり特殊なスロット構造等を必要としない、いわゆるスペーサのように構成する。単純な座金に従った設計も考えられ得る。
【0122】
上記例示的な実施形態のさらに別の変更形態では、スペーサ要素の組は、上記スペーサディスク84又は上記スペーサ要素130であれば、作動可能なスペーサ要素を含む。このような作動可能なスペーサ要素94、130は、支持アーム42で得られる作用長を画定するその厚さを変更及び調整できるよう作動することができ、またそのように構成する。
【0123】
したがって、その場合、スペーサ要素94、130を交換しなければならない要件を伴わずに支持アーム42の作用長をさらに変更することができる。このようなスペーサ要素94、130の厚さを変更することにより、支持アーム42の作用長を、例えばサブマイクロメータ範囲で設定できるが、適当なサイズのスペーサ要素94、130を配置することによりマイクロメータ範囲の粗調整を事前に実行した。
【0124】
例えば、厚さのこうした調整は、規定の電場を印加することにより圧電素子の場合に可能である。別の可能性は、磁歪材料でできた、したがって磁場の影響下で予想通りにその拡張を変えるスペーサ要素94、130を用いることにある。さらに、異なる温度で異なる大きさを有する材料でできたスペーサ要素94、130を用いることができる。感温性のスペーサ要素94、130は、例えば電気的に加熱することができる。別の例示的な代替形態として、熱を受けて膨張する流体、すなわちガス又は液体を充填した空洞を有する蛇腹状の弾性スペーサ要素94、130が挙げられ、これにより、スペーサ要素94、130の拡張、ひいては支持アーム42の作用長も調整することができる。
【0125】
こうしたスペーサ要素94、130を加熱するために、上記電気ヒータに加えて、例えば赤外光での照射も用いることができる。
【0126】
本発明の一般的な態様を、次に以下の項を用いて要約する。
【0127】
1.特にマイクロリソグラフィEUV投影露光装置用の照明デバイスにおいて光学素子を位置合わせするシステムであって、
a)第1結合端(46;46’)を担持構造(38;38’)に、第2結合端(54a;54’)を光学素子(34:34’)に結合可能である少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)を備えた調整ユニット(36;36’)を有し、
b)支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)が定める主軸(52;52’)に沿った担持構造(38;38’)と光学素子(34;34’)との間の距離に対応する作用長を割り当てられて画定する、
システムにおいて、
c)支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の作用長を調整できるようにする、少なくとも1つの方向で大きさが異なる1組の少なくとも2つの交換可能なスペーサ要素(94)
を特徴とするシステム。
【0128】
2.項1に記載のシステムにおいて、第1結合端(46;46’)と担持構造(38;38’)との結合及び第2結合端(54a;54’)と光学素子(34;34’)との結合を維持したままスペーサ要素(94;94’)を支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)から取り外すことができるか又はスペーサ要素(94;94’)を支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)に加えることができるよう、支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)を構成したことを特徴とするシステム。
【0129】
3.項1又は2に記載のシステムにおいて、支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の第1結合端(46;46’)を第1モジュール(46;46’、106)で構成し、支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の第2結合端(54a;54’)を第2モジュール(48、86;48’)で構成し、これらを接続手段(92、90b;92’、90b’)により相互に接続して、第1モジュール(46;46’、106)と第2モジュール(48、86;48’)との間の距離を変えることができるようにしたことを特徴とするシステム。
【0130】
4.項3に記載のシステムにおいて、2つのモジュール(46;46’、106;48、86;48’)の少なくとも一方は一体アーム要素(48;48’)を含むことを特徴とするシステム。
【0131】
5.項3又は4に記載のシステムにおいて、1つ又は複数のスペーサ要素(94;94’)を、支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の第1モジュール(46;46’、106)と第2モジュール(48、86;48’)との間に配置できることを特徴とするシステム。
【0132】
6.項3〜5のいずれか1項に記載のシステムにおいて、第1モジュール(46;46’、106)及び第2モジュール(48、86;48’)を、ねじ接続部(92、90b;92’、90b’)により相互に接続したことを特徴とするシステム。
【0133】
7.項1〜6のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、第1結合端(46;46’)を第2結合端(54a;54’)に対して、特に支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の主軸(52;52’)を中心として回転させることができる軸方向関節部(60;60’)を備えることを特徴とするシステム。
【0134】
8.項1〜7のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、第1結合端(46;46’)を主軸(52;52’)に対して垂直な平面内で第2結合端(54a;54’)に対して傾斜させることができる少なくとも1つの自在関節部(76、76b;106)を備えることを特徴とするシステム。
【0135】
9.項1〜8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で180GPa〜230GPaの、好ましくは20℃で205GPaの平均ヤング率を有することを特徴とするシステム。
【0136】
10.項1〜9のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で600MPa〜700MPaの0.2%降伏強度R
p0.2を有することを特徴とするシステム。
【0137】
11.項1〜10のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)は、20℃で205GPaのヤング率及び20℃で650MPaの0.2%降伏強度R
p0.2を有する高強度鋼、特に鋼X46CrNi13で実質的にできていることを特徴とするシステム。
【0138】
12.項1〜11のいずれか1項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つのバイポッドユニット(40;40’)を、第1支持構造(42、46、94;42’、46’、94’、106)及び第2支持構造(44、46、94;44’、46’、94’、106)から形成したことを特徴とするシステム。
【0139】
13.項12に記載のシステムにおいて、軸受台(46;46’)が、第1支持構造(42、46、94;42’、46’、94’、106)の第1結合端及び第2支持構造(44、46、94;44’、46’、94’、106)の第1結合端の両方を形成することを特徴とするシステム。
【0140】
14.項12又は13に記載のシステムにおいて、第1支持構造及び第2支持構造(42、44、46、94;42’、44’、46’、94’、106)の主軸(52;52’)は、相互に対して0°以外の角度で、特に90°の角度で延びることを特徴とするシステム。
【0141】
15.項12〜14のいずれか1項に記載のシステムにおいて、ヘキサポッドを形成する少なくとも2つのバイポッドユニット(40;40’)、好ましくは少なくとも3つのバイポッドユニット(40;40’)を設けたことを特徴とするシステム。