【文献】
Fredric L.Buchholz,Andrew T.Graham,Modern Superabsorbent Polymer Technology,米国,John Willey & Sons,1997年,212-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1段目の逆相懸濁重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤として、過硫酸塩を使用し、2段目の逆相懸濁重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤として、アゾ化合物及びレドックス開始剤からなる群より選択された少なくとも1種を使用する、請求項1に記載の方法。
2段目以降の懸濁重合反応における水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量が、1段目で添加された水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜300質量部である、請求項1又は2に記載の方法。
各段の逆相懸濁重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤の使用量が、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液当たり0.01〜1質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.吸収性樹脂の製造方法
本発明の吸収性樹脂の製造方法(以下、本発明の製造方法と略記することがある)は、2段以上の逆相懸濁重合反応により、水溶性エチレン性不飽和単量体から吸水性樹脂を製造する方法であって、少なくとも1段の逆相懸濁重合反応において、他段の逆相懸濁重合反応とは互いに異なるラジカル重合開始剤を使用することを特徴とする。
本発明の製造方法において採用される重合法は、逆相懸濁重合である。逆相懸濁重合とは、水溶性単量体を油性溶媒に懸濁させながら、単量体の液滴中でラジカル重合を行う重合方式である。
以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0019】
水溶性エチレン性不飽和単量体
本発明の製造方法において使用される水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリル」、及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記し、「アクリレート」、及び「メタクリレート」を合わせて「(メタ)アクリレート」とそれぞれ表記する。以下同様)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0020】
また、本発明では、各段の重合反応において異なる水溶性エチレン性不飽和単量体を使用してもよいが、各段の重合反応において同一の水溶性エチレン性不飽和単量体を使用することが好ましい。
【0021】
なお、水溶性エチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する単量体を用いる場合、その酸基を予めアルカリ金属塩などのアルカリ性中和剤によって中和してもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、及び水酸化アンモニウム等のアルカリ金属化合物が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、水溶液の状態にして用いてもよい。また、これらのアルカリ性中和剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
アルカリ性中和剤による全ての酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性などに問題が生じないようにする観点から、通常0〜100モル%とすればよく、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは50〜80モル%である。
【0023】
逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和単量体は水溶液に溶解した状態でラジカル重合反応に供される。以下、ラジカル重合反応に供されるモノマー溶液、即ち水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液を「単量体水溶液」と表記することもある。ここで、各段の懸濁重合反応に供される単量体水溶液において、水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、特に限定はされないが、単量体水溶液当り、通常20質量%以上飽和濃度以下の範囲とすればよく、好ましくは30〜55質量%、より好ましくは35〜48質量%である。このような濃度とすることによって、急激な反応を回避しながら高い生産性を保つことができる。
【0024】
溶媒
各段の重合反応において使用される油性溶媒は、特に制限されないが、疎水性炭化水素溶媒が好適なものとして挙げられる。疎水性炭化水素溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの疎水性炭化水素溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。更に、本発明では、各段の重合反応において異なる油性溶媒を使用してもよく、また各段の重合反応において同一の油性溶媒を使用してもよい。
【0025】
これらの疎水性炭化水素溶媒のなかでも、懸濁の状態が良好で、優れた吸水速度の粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易かつ品質が安定している観点から、n−ヘプタン、シクロヘキサンおよびエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:主成分としてn−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、メチルシクロヘキサンを含む混合炭化水素溶媒)が好適に用いられる。
【0026】
界面活性剤
各段の重合反応において、油性溶媒中で単量体水溶液の分散性や液滴形成性を向上させるために、界面活性剤を添加することが望ましい。界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、及びポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン系界面活性剤、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、本発明では、各段の重合反応において異なる界面活性剤を使用してもよく、また各段の重合反応において同一の界面活性剤を使用してもよい。
【0027】
これらの界面活性剤の中でも、単量体水溶液の分散安定性の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0028】
上記界面活性剤のHLB値は、界面活性剤の種類によっても得られる1次粒子の形態が異なるため一概に決定はされないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであれば、HLB5以下の範囲のものを、ポリグリセリン脂肪酸エステルであれば、HLB10以下の範囲のものを使用すればよい。
【0029】
界面活性剤の添加量は、単量体水溶液100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。界面活性剤の添加量が
0.01質量部よりも少ない場合、単量体水溶液の分散安定性が低くなるため好ましくなく、5質量部よりも多い場合、経済的でないので好ましくない。界面活性剤の使用形態は特に限定されないが、界面活性剤を予め少量の油性溶媒に希釈もしくは溶解して使用する方法が、短時間で分散安定化できるので好ましい。
【0030】
各段の重合反応において、油性溶媒中で単量体水溶液の分散性を向上させるために、更に疎水性高分子系分散剤を添加してもよい。疎水性高分子系分散剤としては、使用する前記溶媒に対し、溶解もしくは分散するものを選択して使用することが好ましく、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、無水マレイン化ポリブタジエン、無水マレイン化EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体)等が挙げられる。これらの疎水性高分子系分散剤の分子量については、特に制限されないが、質量平均分子量として20,000以下、好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下のものが挙げられる。これらの疎水性高分子系分散剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、本発明では、各段の重合反応において異なる疎水性高分子系分散剤を使用してもよく、また各段の重合反応において同一の疎水性高分子系分散剤を使用してもよい。
【0031】
これら疎水性高分子系分散剤の中では無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0032】
疎水性高分子系分散剤を用いる場合の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して5質量部以下が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.05〜2質量部がさらに好ましい。疎水性高分子系分散剤は比較的高価なものが多いため、添加量が5質量部以下であれば生産コストの観点から好ましい。
【0033】
水溶性ラジカル重合開始剤
本発明の製造方法では、少なくとも1段の逆相懸濁重合反応において、他段の逆相懸濁重合反応とは互いに異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用する。
【0034】
本発明で使用される水溶性ラジカル重合開始剤としては、水溶性であり、且つ水溶性エチレン性不飽和単量体のラジカル重合開始剤として作用するものである限り、特に制限されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;1−{(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ}ホルムアミド、2,2'−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)二塩酸塩、2.2'−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二水塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレイン酸、2,2'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。
【0035】
なお、水溶性ラジカル重合開始剤としては、前記した化合物(酸化剤)と還元剤を併用したレドックス重合開始剤を用いてもよい。レドックス重合開始剤に使用される還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等のピロ亜硫酸塩;亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸アンモニウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸亜鉛等の亜二チオン酸塩;三チオン酸カリウム、三チオン酸ナトリウム等の三チオン酸塩;四チオン酸カリウム、四チオン酸ナトリウム等の四チオン酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩;亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸亜鉛等の亜硝酸塩;L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、D−アスコルビン酸、D−アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等のエリソルビン酸類等が挙げられる。なかでも、工業的な入手のしやすさとレドックス反応の制御のしやすさから、亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウムが好ましく用いられる。これらの還元剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
レドックス重合開始剤の中でも、本願発明の効果が得られやすいという観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、及び2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物のいずれかの酸化剤と、亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸のいずれかの還元剤との併用が好ましく用いられる。
【0037】
本発明の製造方法では、少なくとも1段の逆相懸濁重合反応において、他段の逆相懸濁重合反応とは互いに異なる水溶性ラジカル重合開始剤が使用されていればよい。本発明の製造方法において、2段の逆相重合反応を採用する場合には、1段目と2段目の逆相懸濁重合反応において、相互に異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用すればよい。また、本発明の製造方法において、3段以上の逆相重合反応を採用する場合には、3段以上の逆相重合の内、少なくとも2つの段の逆相懸濁重合反応において相互に異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用している限り、2以上の段において同一の水溶性ラジカル重合開始剤を使用しても構わない。例えば、3段の逆相懸濁重合反応を行う場合であれば、(1)1段目と2段目の逆相懸濁重合反応において異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用し、3段目の逆相懸濁重合反応において1段目又は2段目と同じ水溶性ラジカル重合開始剤を使用する態様;(2)1段目と2段目の逆相懸濁重合反応において同一の水溶性ラジカル重合開始剤を使用し、3段目の逆相懸濁重合反応において1段目と2段目とは異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用する態様;(3)1〜3段目の逆相懸濁重合反応において各々異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用する態様のいずれであってもよい。吸水性樹脂に、優れた水可溶分が少なく、優れた吸水能・吸水速度を一層有効に備えさせるという観点から、2段以上の重合反応の内、少なくとも1段目と2段目の重合反応において相互に異なる水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが望ましい。
【0038】
本発明で使用される少なくとも2種の水溶性ラジカル重合開始剤は、前述する水溶性ラジカル重合開始剤の中から適宜選択されるが、吸水性樹脂の水可溶分を一層低減させつつ、より優れた吸水能・吸水速度を備えさせるという観点から、2段以上の懸濁重合反応の内、少なくとも1段で下記水溶性ラジカル重合開始剤(1)を使用し、且つ他段で下記水溶性ラジカル重合開始剤(2)を使用することが望ましい。
水溶性ラジカル重合開始剤(1)が、前記過硫酸塩から選ばれた少なくとも1種であり、且つ
水溶性ラジカル重合開始剤(2)が、前記水溶性アゾ化合物及び前記レドックス開始剤から選ばれた少なくとも1種である;
好ましくは、水溶性ラジカル重合開始剤(1)が、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムから選ばれた少なくとも1種であり、且つ
水溶性ラジカル重合開始剤(2)が、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、及び2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物から選ばれた少なくとも1種、或いは、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムから選ばれた少なくとも1種の酸化剤と、亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸及びその塩、並びにエリソルビン酸及びその塩から選ばれた少なくとも1種の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤である;
更に好ましくは、水溶性ラジカル重合開始剤(1)が、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムから選ばれた少なくとも1種であり、且つ
水溶性ラジカル重合開始剤(2)が、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩及び2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物から選ばれた少なくとも1種である。
【0039】
上記で例示した水溶性ラジカル重合開始剤(1)及び(2)は、2段以上の懸濁重合反応の内、各々いずれの段の懸濁重合反応で使用してもよいが、水溶性ラジカル重合開始剤(1)及び(2)の一方を1段目の懸濁重合反応で使用し、他方を2段目の懸濁重合反応で使用することが好ましく、水溶性ラジカル重合開始剤(1)を1段目の懸濁重合反応で使用し、水溶性ラジカル重合開始剤(2)を2段目の懸濁重合反応で使用することが更に好ましい。
【0040】
水溶性ラジカル重合開始剤は、単量体水溶液に溶解させて懸濁重合反応に供される。各段の懸濁重合反応において使用される水溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、使用する水溶性エチレン性不飽和単量体の種類や添加量、反応条件等に応じて適宜設定されるが、通常、添加される水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部あたり、0.01〜1質量部である。0.01質量部より少ない場合、重合率が低くなり、1質量部より多い場合、急激な重合反応が起こるため好ましくない。
【0041】
内部架橋剤
本発明の効果を高めるために、各段の懸濁重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤に加え、内部架橋剤を用いてもよい。
【0042】
内部架橋剤としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール〔「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合を意味する。以下同じ〕、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のポリオール類、ポリオール類とアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸とを反応させて得られる二個以上のビニル基を有するポリ不飽和エステル類、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等の二個以上のグリシジル基を含有するポリグリシジル化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
内部架橋剤を使用する場合の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、0.0001〜1質量部がより好ましく、0.001〜0.1質量部がさらに好ましい。添加量が3質量部を超えると、架橋が過度になり、無荷重の吸水量が低くなりすぎるため好ましくない。内部架橋剤は、あらかじめ単量体水溶液に添加しておくのが好ましい。
【0044】
本発明の効果をより高めるために、1段目で使用される水溶性ラジカル重合開始剤に対する1段目で使用される内部架橋剤のモル比(C1)と、2段目で使用される水溶性ラジカル重合開始剤に対する2段目で使用される内部架橋剤のモル比(C2)が、[0.8<C2/C1<5.0]の関係式(a)を満たすことが好ましく、[1.0<C2/C1<4.0]の関係式(a’)を満たすことがより好ましく、[1.5<C2/C1<3.0](a’’)の関係式を満たすことがさらに好ましい。なお、後述するように、逆相懸濁重合反応を2段以上行う場合には、3段目以降で使用される水溶性ラジカル重合開始剤に対する内部架橋剤のモル比は、C2と同様の範囲のモル比が適用される。
【0045】
上記以外の添加剤
各段で使用される単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等が含まれていてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸等の化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
逆相懸濁重合反応の段数
本発明の製造方法は、逆相懸濁重合反応を2段以上行う多段重合により行われる。本発明において、逆相懸濁重合反応の段数については、特に制限されないが、衛生材料用途に特に適した機能を備える吸水性樹脂を得るという観点からは、2〜3段が好ましく、2段がさらに好ましい。なお、本明細書において、逆相懸濁重合反応の段数とは、逆相懸濁重合反応を行う回数を意味する。
【0047】
1段目の懸濁重合反応
1段目の懸濁重合反応は、水溶性ラジカル重合開始剤、水溶性エチレン性不飽和単量体、及び必要に応じて他の添加剤を含む単量体水溶液と、必要に応じて他の添加剤を含む油性溶媒を調製し、当該単量体水溶液を油性溶媒中で懸濁させることにより行われる。
【0048】
1段目の懸濁重合反応において、単量体水溶液に対する油性溶媒の混合比については、特に制限されないが、単量体水溶液を均一に分散し、重合温度の制御を容易にする観点から、通常、単量体水溶液100質量部に対して、油性溶媒が40〜600質量部が好ましく、50〜400質量部がより好ましく、60〜200質量部がさらに好ましい。
【0049】
単量体水溶液を油性溶媒に添加して分散させる際、攪拌によって分散させるが、攪拌条件については、所望の分散液滴径により異なるので、一概に決定することはできない。分散液滴径は、攪拌翼の種類、翼径、回転数等により調節することができる。攪拌翼としては、例えば、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、スーパーミックス(サタケ化学機械工業(株)製)等を使用することが可能である。
【0050】
1段目の懸濁重合反応の際の反応温度は、使用する重合開始剤の種類や量によって異なるので一概には決定することができないが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜90℃である。反応温度が20℃より低い場合、重合率が低くなる可能性があり、また反応温度が100℃より高い場合は急激な重合反応が起こるため好ましくない。
1段目の懸濁重合反応の際の反応時間は、使用する重合開始剤の種類や量、反応温度等に応じて適宜設定されるが、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分が挙げられる。
【0051】
1段目の懸濁重合反応で得られる重合粒子の大きさは、最終的に得られる吸水性樹脂に適度な粒子径を備えさせるという観点から、中位粒子径20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。なお、1段目の重合粒子の中位粒子径は、前記1段目の重合が終了した後、脱水、乾燥して得られる粒子について測定した値である。中位粒子径は実施例に記載の方法に従って測定される。
【0052】
2段目以降の懸濁重合反応
2段目以降の懸濁重合反応は、水溶性ラジカル重合開始剤、水溶性エチレン性不飽和単量体、及び必要に応じて他の添加剤を含む単量体水溶液を、前段の懸濁重合反応の終了後の重合反応液に添加することにより行われる。また、必要に応じて、単量体水溶液以外に、前段の懸濁重合反応の終了後の重合反応液に他の添加剤を添加してもよい。
2段目以降の懸濁重合反応によって、1段目の懸濁重合反応にて得られた重合粒子を凝集し、衛生材料用途に適した所望の機能を吸水性樹脂に付与することが可能になる。
【0053】
2段目以降の懸濁重合反応では、添加される単量体水溶液が、独立した液滴を形成しないよう界面活性剤の作用を低下させることが望ましい。例えば、1段目の重合終了後に冷却することによって界面活性剤及び/又は高分子系分散剤を析出させた後に、2段目以降の懸濁重合反応を行うことが好ましい。
【0054】
2段目以降の水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量については、特に制限されないが、最終的に得られる吸水性樹脂に適度な粒子径を付与する観点から、1段目で添加された水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜300質量部が好ましく、80〜220質量部がより好ましく、100〜200質量部がさらに好ましく、120〜180質量部がよりさらに好ましい。
【0055】
2段目以降の懸濁重合反応において、攪拌条件、反応温度、及び反応時間については、1段目の懸濁重合反応の場合と同様である。
【0056】
後架橋反応
前述する多段の逆相懸濁重合反応終了後、得られた吸水性樹脂に、さらに水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応性を有する官能基を2個以上含有する架橋剤(後架橋剤と表記する)を添加することが好ましい。重合後に後架橋剤を添加し反応させることにより、吸水性樹脂粒子の表面層の架橋密度が高まり、荷重下の吸水量、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として特に好適な性能が付与される。
【0057】
前記架橋反応に用いられる後架橋剤としては、重合に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応しうるものであれば特に限定されない。使用される後架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物、1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
これらの中でも、重合に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性に優れている観点から、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。
【0059】
前記後架橋剤の添加量は、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量(即ち、前述する多段の逆相懸濁重合反応で得られた重合体の乾燥重量)100質量部に対して、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.02〜1質量部、よりさらに好ましくは0.03〜0.5質量部、特に好ましくは0.04〜0.2質量部である。
【0060】
後架橋剤の添加量が0.005質量部未満の場合、得られる吸水性樹脂の荷重下の吸水量、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができず、5質量部を超える場合、吸水量が低くなりすぎるため好ましくない。
【0061】
後架橋剤を使用する際には、必要に応じて溶媒として水や親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びに、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。なかでも、吸水性樹脂表面近傍における分散性が良好、低い残留性、残留した場合の安全性等の観点から、水、メチルアルコール、エチルアルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0062】
前記後架橋剤の添加時期は、最終段の重合終了後であればよく、特に限定されない。後架橋反応は、吸水性樹脂100質量部に対して、1〜200質量部の範囲の水分存在下に実施されるのが好ましく、5〜100質量部の範囲がより好ましく、10〜70質量部の範囲がさらに好ましく、20〜50質量部の範囲がよりさらに好ましい。このように、後架橋剤添加時の水分量を調整することによって、より好適に吸水性樹脂の粒子表面層における後架橋を施すことができ、優れた吸水性能を発現することができる。
【0063】
後架橋反応における反応温度は、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜180℃、60〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃が挙げられる。また、後架橋反応における反応時間は、例えば、5〜600分、好ましくは20〜500分、さらに好ましくは30〜400分、より好ましくは60〜300分が挙げられる。
【0064】
乾燥工程
以上の多段の懸濁重合反応、及び必要に応じて後架橋反応を経た後、得られた吸水性樹脂は乾燥工程に処せられる。本発明において、乾燥工程は常圧下でも減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥工程が常圧の場合、乾燥温度は70〜250℃が好ましく、80〜180℃がより好ましく、80〜140℃がさらに好ましく、90〜130℃がよりさらに好ましい。また、減圧下の場合、乾燥温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。
【0065】
かくして得られる吸水性樹脂の乾燥後における水分率は、流動性を持たせる観点から20質量%未満であり、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。また、流動性を向上させるために、非晶質シリカ粉末を添加してもよい。水分率は、実施例に記載の方法に従って測定される。
【0066】
2.吸水性樹脂
また、本発明は、上記製造方法により得られる吸水性樹脂を提供する。上記製造方法により得られる吸水性樹脂は、適度な粒子径と共に、優れた吸水性能と衛生材料に好適な吸水速度を備え、水可溶分が少ないという特性を有している。
【0067】
上記製造方法により得られる吸水性樹脂が、かかる特性を具備できる理由は十分には解明されておらず、本発明の限定的解釈を望むものではないが、以下のように推察される。従来法では吸水性樹脂の荷重下の吸水量を向上させるためには、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤等が用いられるが、得られる吸水性樹脂の吸水速度は好適ではなかった。一方、吸水速度や水可溶分には過硫酸系開始剤等が優れているとされているが、得られる吸水性樹脂の荷重下の吸水量は低い傾向であった。粒子径と粒子径分布が衛生材料に好適な吸水性樹脂が得られる多段の逆相懸濁重合反応において、これらの開始剤を、各々別の重合反応にて使用した結果、驚くべきことに、各々の開始剤に由来する有利な吸水性能を兼ね備えた吸水性樹脂が得られたものと考えられる。
【0068】
本発明の吸水性樹脂の中位粒子径としては、例えば200〜800μmが挙げられるが、衛生材料用途に好適に用いられる観点から、250〜600μmがより好ましく、300〜550μmがさらに好ましく、350〜500μmがよりさらに好ましい。粉体としての流動性が悪く、かつ吸水時のゲルブロッキング現象を発生しやすい微粉末の使用を避け、吸収体の吸収性能を高める観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は200μm以上であることが好ましく、吸収体のゴツゴツする感触を低減して、触感を改善するという観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は800μm以下であることが好ましい。中位粒子径は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0069】
本発明の吸水性樹脂の粒子径分布の均一度は、例えば1.0〜2.2が挙げられるが、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.2〜1.8である。吸水性樹脂を吸収体として使用する場合、大きな粒子が多ければ、圧縮後の吸収体が部分的に硬くなるため好ましくない。さらに、小さな粒子が多ければ、薄型吸収体中で粒子が移動しやすく、均一性が損なわれるため好ましくない。従って、吸収体に用いる吸水性樹脂は、狭い粒子径分布を持つもの、言い換えると粒子径分布の均一度が小さいほうが好ましい。上記範囲を満たす本発明の吸水性樹脂は、粒子径分布の均一度が小さいので、衛生材料に好適に用いることができる。粒子径分布の均一度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0070】
本発明の吸水性樹脂の
無荷重下での生理食塩水吸水量は、例えば35g/g
以上が挙げられるが、好ましくは40〜85g/g、より好ましくは45〜75g/g、特に好ましくは50〜70g/gである。このような範囲の数値を満たすことによって、ゲルを強く保ってゲルブロッキングを防止し、かつ過度な架橋を避けて吸収容量を高めることができる。生理食塩水吸水量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0071】
本発明の吸水性樹脂の荷重下での生理食塩水吸水量は、例えば15mL/g以上が挙げられるが、好ましくは17mL/g以上であり、より好ましくは20mL/g以上、さらに好ましくは21mL/g以上、特に好ましくは23mL/g以上である。これらの数値が高いほうが吸収体として用いた場合、荷重下における使用においても、液体をより吸収することができる。上記範囲の数値を満たす本発明の吸水性樹脂は、吸収体として用いた際の性能を維持することができる。吸水性樹脂の荷重下での生理食塩水吸水量の測定は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0072】
本発明の吸水性樹脂の初期吸水速度は、例えば0.35mL/s以下が挙げられるが、液浸透の初期におけるゲルブロッキング現象の発生を抑制して吸収体における液拡散を促進させる観点から、好ましくは0.05〜0.30mL/sであり、さらに好ましくは0.10〜0.25mL/sである。液拡散させつつ、液浸透の初期における肌へのドライ感を確保する観点から、0.05mL/s以上がより好ましい。なお、本明細書において、初期吸水速度とは、吸水時間0〜30秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)である。吸水性樹脂の初期吸水速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0073】
本発明の吸水性樹脂の中期吸水速度は、例えば0.20mL/s以上が挙げられるが、液浸透の初期において拡散した液体を、吸収体から漏れが発生しない程度で速やかに吸収し、肌へのドライ感を確保する観点から、好ましくは0.25〜0.60mL/sであり、さらに好ましくは0.30〜0.50mL/sである。なお、本明細書において、中期吸水速度とは、吸水時間60〜120秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)である。吸水性樹脂の中期吸水速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0074】
本発明の吸水性樹脂の吸水速度は、吸水性樹脂が吸収体に用いられた際に、液体の浸透速度を速め、肌へのドライ感を増す観点から、20〜70秒であり、より好ましくは25〜60秒であり、さらに好ましくは30〜50秒である。吸水性樹脂の吸水速度の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0075】
本発明の吸水性樹脂の水可溶分は、例えば20質量%以下が挙げられるが、好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。水可溶分が20質量%より高い場合、吸水後のゲルから溶出した水可溶分が、吸収性物品の装着者の肌に触れ、ぬめり等の不快感や皮膚かぶれが生じるおそれがある。水可溶分は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0076】
更に、本発明は、下記(イ)〜(ニ)の性能を全て充足することできる吸水性樹脂をも提供する。下記(イ)〜(ニ)の性能の好適な範囲については、前記と同様である。
(イ)中位粒子径が200〜800μm、かつ粒子径分布の均一度が1.0〜2.2
(ロ)無荷重下の吸水量が35g/g以上、かつ荷重下の吸水量が15mL/g以上
(ハ)初期吸水速度が0.35mL/s以下、かつ中期吸水速度が0.20mL/s以上
(ニ)水可溶分が20質量%以下
上記(イ)〜(ニ)の性能を充足する吸水性樹脂は、例えば上記製造方法によって得ることができる。
【0077】
上記吸水性樹脂は、吸収体の構成素材として使用される。当該吸収体の好適な一態様としては、上記吸水性樹脂と親水性繊維を含むものが挙げられる。当該吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂の粒子と親水性繊維を均一にブレンドしたミキシング構造、層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂の粒子を保持したサンドイッチ構造、吸水性樹脂の粒子と親水性繊維とをティッシュで包んだ構造等が挙げられるが、本発明はかかる例示に限定されるものではない。なお、吸収体には補強材として、合成繊維が含まれていても良い。
【0078】
吸収体における吸水性樹脂の含有量は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは15〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%であり、特に好ましくは30〜65質量%である。吸水性樹脂の含有量が10質量%未満の場合、吸収容量が少なくなり、液モレ及び逆戻りの増加につながる傾向がある。また吸水性樹脂の含有量が90質量%を超える場合、吸収体がコスト高になったり、吸収体の感触が硬くなる傾向がある。
【0079】
親水性繊維としては、例えば、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等が挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、親水性繊維は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維を含有してもよい。
【0080】
上記吸収体は、吸収性物品の構成素材として使用できる。当該吸収性物品の構造の一例として、上記吸収体を、水性液体が通過し得る液体透過性シート(トップシート)と、水性液体が通過し得ない液体不透過性シート(バックシート)との間に保持した構造が挙げられる。吸収性物品としては、具体的には、紙おむつ、生理用品、失禁パッド、ペットシート等の衛生材料;止水剤、結露防止剤等の工業資材等が挙げられる。吸収性物品が衛生材料である場合、通常、液体透過性シートは身体と接触する側に配され、液体不透過性シートは、身体と接触することがない側に配される。
【0081】
液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等からなる不織布、多孔質の合成樹脂シート等が挙げられる。液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等からなるフィルム、これらの合成樹脂と不織布との複合材料からなるフィルム等が挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0082】
液体透過性シート及び液体不透過性シートの大きさは、吸収性物品の用途によって異なるので、一概に決定することができない。したがって、かかる大きさは、その用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
各実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂の中位粒子径、中位粒子径の均一度、水分率、生理食塩水吸水量(荷重下、無荷重下)、初期吸水速度、中期吸水速度、生理食塩水の吸水速度、水可溶分は、以下に示す方法により評価した。
【0085】
(A)中位粒子径
吸水性樹脂50gを、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50質量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50質量%より多い量が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒子径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂約50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0086】
(B)粒子径分布の均一度
前記中位粒子の中位粒子径測定において、積算質量百分率が15.9質量%に相当する粒子径(X1)、及び84.1質量%の相当する粒子径(X2)を求め、下記式により均一度を求めた。
均一度=X1/X2
すなわち、粒子径分布が狭い場合、一般に均一度は1に近づき、粒子径分布が広くなれば、均一度はより大きくなる。
【0087】
(C)生理食塩水の無荷重下の吸水量
長さ3cmの回転子入り500mLビーカーに0.9質量%塩化ナトリウム水溶液500gを入れ、マグネチックスターラーで液を撹拌しながら、吸水性樹脂2.0gを精秤(Wa)し、ママコにならないように加えた後、撹拌速度600rpmで1時間撹拌する。
直径20cmの目開き106μmのJIS標準篩でゲルを濾過し、篩上に残ったゲルの余剰水をフッ素樹脂の板でおおよそ水切りした後、篩を傾け30分放置して更に水切りを行った。篩上に残ったゲルの重さ(Wb)を量り、下式より生理食塩水の無荷重吸水量を算出した。
生理食塩水の無荷重下の吸水量(g/g)=Wb÷Wa
【0088】
(D)荷重下の吸水量
吸水性樹脂の荷重下の吸水量は、
図1に概略を示した測定装置Yを用いて測定した。
図1に示した測定装置Yは、ビュレット部7と導管8、測定台9、測定台9上に置かれた測定部10からなっている。ビュレット部7は、ビュレット70の上部にゴム栓74、下部に空気導入管71とコック72が連結されており、さらに、空気導入管71は先端にコック73を有している。ビュレット部7と測定台9の間には、導管8が取り付けられており、導管8の内径は6mmである。測定台9の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管8が連結されている。測定部10は、円筒100(プレキシグラス製)と、この円筒40の底部に接着されたナイロンメッシュ101と、重り102とを有している。円筒100の内径は、20mmである。ナイロンメッシュ101の目開きは、75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ101上に吸水性樹脂11が均一に撒布されている。重り102は、直径19mm、質量119.6gである。この重りは、吸水性樹脂11上に置かれ、吸水性樹脂11に対して4.14kPaの荷重を加えることができるようになっている。
次に測定手順を説明する。測定は25℃の室内にて行なわれる。まずビュレット部7のコック72とコック73を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水をビュレット70上部から入れ、ゴム栓74でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部7のコック72、コック73を開ける。次に、測定台9中心部の導管口から出てくる0.9質量%食塩水の水面と、測定台9の上面とが同じ高さになるように測定台9の高さの調整を行う。
別途、円筒100のナイロンメッシュ101上に0.10gの吸水性樹脂11粒子を均一に撒布して、この吸水性樹脂11上に重り102を置いて、測定部10を準備する。次いで、測定部10を、その中心部が測定台9中心部の導管口に一致するようにして置く。
吸水性樹脂11が吸水し始めた時点から、ビュレット100内の0.9質量%食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂11が吸水した0.9質量%食塩水量)Wc(mL)を読み取る。吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂11の荷重下の吸水量は、以下の式により求めた。
荷重下の吸水量(mL/g)=Wc/0.10
【0089】
(E)吸水性樹脂の初期吸水速度及び中期吸水速度
吸水性樹脂の初期吸水速度及び中期吸水速度は、
図2に示す測定装置を用いて測定した。
当該測定装置は、ビュレット部1と導管2、測定台3、不織布4、架台6、クランプ7からなるものであった。ビュレット部1は、0.1mL単位で目盛が記載されたビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、ビュレット10の下部の先端にコック13を有していた。ビュレット部1はクランプ7で固定されていた。ビュレット部1と測定台3の間には、導管2が取り付けられており、導管2の内径は6mmであった。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されていた。測定台3は架台6によって適切な高さに支持されていた。
このような測定装置Xを用いた、初期吸水速度及び中期吸水速度の測定は以下の手順によって実施した。測定は温度25℃、湿度45〜75%の室内にて行なわれた。まずビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開けた。次に、気泡を除去しながら導管2内部に0.9質量%食塩水を満たし、測定台3中心部の導管口から出てくる0.9質量%食塩水の水面と、測定台3の上面とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行った。
次いで、測定台3中心部の導管口に30×30mmに裁断した不織布4(目付量25g/m2の親水性レーヨンスパンレース)を敷き、平衡になるまで不織布に吸水させた。不織布が吸水している状態では、空気導入管11からビュレット10への気泡発生が見られたが、数分内に気泡発生が停止したことを確認して、平衡に到達したと判断した。平衡後、ビュレット10の目盛を読んで、ゼロ点を確認した。
別途、吸水性樹脂5を0.10g正確に測りとり、不織布4の中心部に一気に投入した。ビュレット10内の0.9質量%食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂5の粒子が吸水した0.9質量%食塩水量)を順次読み取り、吸水性樹脂5の投入から起算して30秒後の0.9質量%食塩水の減量分Wc(g)を吸水性樹脂0.10gあたりの初期吸水量として記録した。なお、同様にして、吸水性樹脂5の投入から起算して60〜120秒における0.9質量%食塩水の減量分Wd(g)を吸水性樹脂0.10gあたりの中期吸水量として記録した。測定は1種類の吸水性樹脂に対して5回実施し、最低値と最高値を除いた3点の平均値を用いた。
投入から30秒後に吸水性樹脂5が吸水した0.9質量%食塩水の量Wc(mL)を吸水性樹脂1gあたりの吸水量に変換し、さらに30(秒)で割って得られた商を、当該吸水性樹脂の初期吸水速度(mL/s)とした。すなわち、初期吸水速度(mL/s)=Wc÷(0.10×30)である。
また、投入から60〜120秒の間に吸水性樹脂5が吸水した0.9質量%食塩水の量Wd(mL)を吸水性樹脂1gあたりの吸水量に変換し、さらに60(秒)で割って得られた商を、当該吸水性樹脂の中期吸水速度(mL/s)とした。すなわち、中期吸水速度(mL/s)=Wd÷(0.10×60)である。
【0090】
(F)吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度とした。
【0091】
(G)吸水性樹脂粒子の水可溶分
500mL容のビーカーに、生理食塩水500gを量り取り、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm)を投入し、マグネチックスターラーの上に配置した。引続きマグネチックスターラーバーを600rpmで回転するように調整し、
次に、吸水性樹脂粒子2.0gを、ビーカー中の渦中央とビーカー側面の間に素早く流し込み分散させ、3時間撹拌した。3時間撹拌後の吸水性樹脂粒子分散水を、JIS標準ふるい(目開き75μm)でろ過し、得られたろ液をさらに桐山式ロート(濾紙No.6)を用い吸引ろ過した。
あらかじめ140℃で乾燥して恒量し、室温まで冷却した100mL容のビーカーに得られたろ液を80±0.01g量りとり、内温を140℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で恒量になるまで乾燥させ、ろ液固形分の質量We(g)を測定した。
一方、吸水性樹脂粒子を用いずに上記操作と同様に行い、ブランク質量Wf(g)測定して、次式より水可溶分を算出した。
水可溶分(質量%)=[(We−Wf)×(500÷80)]÷2×100
【0092】
(H)水分率
吸水性樹脂約2.5gをアルミカップに精秤し(Wg)、105℃の熱風乾燥機を用いて2時間乾燥後、乾燥した吸水性樹脂の質量(Wh)を測定して、下記式より水分率を算出した。(アルミカップの乾燥前後の風袋質量は一定とした。)
水分率(質量%)=(Wg−Wh)÷Wg×100
【0093】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は80μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.13g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド33.1mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.10gを添加し、80℃で2時間保持した後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.8gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は400μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0094】
実施例2
実施例1において、第1段目の単量体に添加する過硫酸アンモニウムに代えて、過硫酸カリウム0.11gを添加し、重合後スラリーの温度を24℃に変更し、さらに、水とn−ヘプタンを共沸による系外に抜き出した水を258.1gに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂216.1gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は360μm、水分率は7質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0095】
実施例3
実施例2において、第2段目の単量体に添加する2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩に代えて、過硫酸カリウム0.03gとL−アスコルビン酸0.002gを添加する以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂215.8gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は440μm、水分率は7質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0096】
実施例4
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル18.4mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を500rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は60μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル51.5mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、21℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、259.2gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持した後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂233.1gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は490μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0097】
比較例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸カリウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は80μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.13g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド11.0mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、259.1gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.10gを添加し、80℃で2時間保持した後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.5gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は360μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0098】
比較例2
比較例1において、第1段目の単量体に添加する過硫酸カリウムに代えて、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11gを添加し、N,N’−メチレンビスアクリルアミドの量を18.4mgに変更し、さらに第2段目の単量体に添加する過硫酸カリウムに代えて、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.13gを添加し、N,N’−メチレンビスアクリルアミドの量を33.1mgに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂215.0gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は390μm、水分率は7質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0099】
比較例3
比較例1において、第1段目の単量体に次亜リン酸ナトリウム1水和物0.014gを添加し、N,N’−メチレンビスアクリルアミドの量を18.4mgに変更し、さらに第2段目の単量体に次亜リン酸ナトリウム1水和物0.017gを添加し、N,N’−メチレンビスアクリルアミドの量を22.1mgに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂216.1gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は420μm、水分率は8質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、実施例1−4の吸水性樹脂は、適度な粒子径を有し、優れた吸水性能(無荷重吸水量と荷重下の吸水量)と衛生材料に好適な吸水速度を有し、水可溶分が少ないことがわかる。これに対し、1段目と2段目で使用した水溶性ラジカル重合開始剤が同一である比較例1−3の吸水性樹脂では、衛生材料の吸収体に求められる特性を満足させることができなかった。具体的には、比較例1の吸水性樹脂においては、荷重下での吸水能が劣るため、衛生材料の吸収体として当該吸水性樹脂を用いた場合、荷重下(装着時)において液漏れのおそれがある。また、比較例2及び3の吸水性樹脂では、初期吸水速度は実施例とほぼ変わらないことからゲルブロッキング現象は抑制されるが、中期吸水速度が劣るため、液漏れの発生や肌ドライ感確保の点で問題がある。さらに、比較例2及び3の吸水性樹脂は、水可溶分の数値が高いことから、衛生材料の吸収体として使用した場合に不快感や皮膚かぶれを引き起こす可能性が高い。また、いずれの比較例も吸水速度が比較的劣っているため、肌ドライ感が劣ると考えられる。