【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例の欠陥検査装置の構成の例を示す。本実施例における欠陥検査装置は、照明光学系ユニット10、検出光学系ユニット11、信号処理ユニット12、ステージユニット13、全体制御部14を備えて構成されている。
【0021】
照明光学系ユニット10は光源101、偏光状態制御手段102、ビーム成形ユニット103及び細線集光光学系104を備えている。このような構成において、光源101を射出した照明光は、偏光状態制御手段102とビーム成型ユニット103とを透過して、ミラー105で光路を変換されて細線集光光学系104に導入される。この時、偏光状態制御手段102は1/2波長板、1/4波長板などの偏光素子で構成され、照明光学系の光軸周りに回転できるような駆動手段(図示せず)を具備し、ステージユニット103に載置されたウェハ001を照明する照明光の偏光状態を調整する手段である。
【0022】
また、ビーム成型ユニット130は、後に述べる細線照明を形成する光学ユニットであり、ビームエキスパンダ、アナモルフィックプリズム等によって構成される。
【0023】
細線集光光学系104はシリンドリカルレンズ等により構成され、細線状に成形した照明光でウェハ(基板)001の細線状の照明領域1000を照明する。本実施例では、
図1に示すように細線照明の幅方向(細線照明領域1000の長手方向にほぼ直交する方向:矢印1300の方向)をステージ走査方向(x方向)に、細線照明領域1000の長手方向をy方向に取るものとして説明する。
【0024】
また、本実施例ではこのように、照明領域1000を絞った細線照明を行うが、これは検査対象に対する照明の照度(照明のエネルギー密度)を高くすることにより、検査スループットの向上を図ることが目的の一つである。このため、光源101には直線偏光を放射し、集光性の良い高コヒーレント光源であるレーザ光源を使用することが望ましい。また、背景技術において述べたように、欠陥からの散乱光を増大させるためにも光源の短波長化が有効であり、本実施例では光源101にはUV(Ultra Violet)レーザを用いる。たとえばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)−THG(third harmonic generation)の波長355nm固体レーザ、あるいはYAG−FHG(Fourth harmonic generation)の波長266nm固体レーザ、あるいはYAG−FHGとYAG基本波の和周波による213nm、199nm、193nm固体レーザ等の何れかを用いる。
【0025】
照明光学系ユニット10により細線照明されたウェハ001からの散乱光は、検出光学系ユニット11を通して検出される。検出光学系ユニット11は、3つの検出ユニット11a〜11cを備えている。本実施例では検出光学系11は、3つの検出ユニットから構成する例を示したが、この形態に限定するものではなく、2つの検出ユニットを用いて検出光学系を構成してもよく、又は、4つ以上の検出ユニットを備えて検出光学系を構成してもよい。以下、第1の検出ユニット11aの構成要素は添字aを、第2の検出ユニット11bの構成要素は添字bを、第3の検出ユニット11cの構成要素は添字cにより表記の区別を行う。
【0026】
第1の検出ユニット11aは、対物レンズ111a、空間フィルタ112a、偏光フィルタ113a、結像レンズ114a、一軸結像系(例えば、シリンドリカルレンズ)1140a、並列型光子計数センサ115aを備えている。第2の検出ユニット11b及び第3の検出ユニット11cも同様な光学要素を備えて構成されている。
第1の検出ユニット11aについて説明すると、照明光学系ユニット10により細線照明されたウェハ001からの散乱光は対物レンズ111aにより集光され、結像レンズ114aと一軸結像系1140aにより、並列型光子計数センサ115a上の複数の素子に跨るように、ウェハ001上の欠陥の散乱光像(点像)が結像される。第2の検出ユニット11b及び第3の検出ユニット11cも同様に、それぞれ対物レンズ111b、111cにより集光され、結像レンズ114b、114c、一軸結像系1140b、1140cにより、並列型光子計数センサ115b、115c上の複数の素子に跨るように、ウェハ上の欠陥の散乱光像(点像)が結像される。ここで対物レンズ111a、111b、111cは
図1に示したように円形レンズの左右を直線状に切除して左右対称形状を持つ長円形レンズからなるように構成する。その構成と効果の詳細に関しては後述する。
検出光学系ユニット11において、開口制御フィルタ112a、112b、112cは、基板表面のラフネス等により生じる背景散乱光を遮光することで、検出時の背景光ノイズを低減して、欠陥検出感度を向上させるものである。また、偏光フィルタ(偏光板等) 113a、113b、113cは、検出散乱光から特定の偏光成分をフィルタリングすることで、背景光ノイズを低減して、欠陥検出感度を向上させるために用いるものである。
並列型光子計数センサ115a、115b、115cは光電変換により、検出された散乱光を電気信号に変換するものであり、複数のAPD素子を2次元のアレイ状に配列して構成した検出器の、各素子への光子の入射により発生するパルス電流の合計を計測する方法が知られている。この検出器はSi−PM(Silicon Photomultiplier)、PPD(Pixelated Photon Detector)、あるいはMPPC(MultiーPixel Photon Counter)などと呼ばれる素子である。
【0027】
図8は、並列型光子計数センサ115aの受光面の構成の一例である。並列型光子計数センサ115aは単一のAPD素子231を、複数個2次元に配列した構成を有する。APD素子231は各々がガイガーモード(光電子増倍率が10
5以上)で動作するように電圧が印加される。APD素子231に一つの光子が入射すると、APD素子の量子効率に応じた確立でAPD素子231内に光電子が発生し、ガイガーモードAPDの作用で増倍され、パルス状の電気信号を出力する。
図8で点線の232で囲まれた中にあるAPD素子231の集合を一つの単位(ch)として、S1方向にi個、S2方向にj個のAPD素子の各々で発生したパルス状の電気信号を合計して出力する。この合計信号が光子計数による検出光量に相当する。そしてこれらchをS2方向に複数並べることで、検出系の視野内の細線照明された領域の細線の長手方向に分割された複数の領域からのそれぞれの散乱光の像が、複数に並べたchのそれぞれ対応する位置にS1方向に拡大されて投影される。これにより、検出系の視野内の複数の領域の各々に対して、同時並列的に光子計数による散乱光の光量検出を行うことが可能となる。光子計数による散乱光検出であるため、微弱光検出が可能であり、これにより微小欠陥の検出、すなわち欠陥検出感度の向上を図ることが可能となる。
【0028】
図9は1chを構成するi×j個のAPD素子群と等価な回路の回路図の例である。図中の一つのクエンチング抵抗226とAPD227の組が、
図8で説明した一つのAPD素子231に対応する。各APD227に逆電圧V
Rが印加される。逆電圧V
RをAPD227の降伏電圧以上に設定することで、APD227がガイガーモードで動作する。
図9に示した回路構成にすることで、i×j個のAPD素子群からなる並列型光子計数センサの1chの領域に入射した光子数の合計に比例した出力電気信号(電圧、電流の波高値、あるいは電荷量)が得られる。各Chに対応する出力電気信号はアナログ−デジタル変換され、時系列のデジタル信号として並列に出力される。
【0029】
個々のAPD素子は、短い時間に複数の光子が入射しても一つの光子が入射した場合と同程度のパルス信号しか出力しないため、個々のAPD素子への単位時間当たりの入射光子数が大きくなると、一つのchの合計出力信号が入射光子数に比例しなくなり、信号の線形成が損なわれる。また、一つのchの全てのAPD素子に一定量(1素子あたり平均1光子程度)以上の入射光が入ると、出力信号は飽和する。S1、S2方向に多数のAPD素子を並べて、一軸結像系1140a〜cで並列型光子係数センサ115の受光面上に投影される散乱光の像が一つのchの多数のAPD素子上に拡大して投影されるような構成とすることにより、一画素あたりに入射光量を低減することが可能となり、より正確な光子計数が可能となる。例えばS1、S2方向にi×j個並べた1chの画素数を1000画素にすることで、APD素子の量子効率が30%の場合、検出の単位時間当たり1000光子以下の光強度で十分なリニアリティを確保でき、約3300光子程度以下の光強度を飽和することなく検出することが可能となる。
【0030】
図8に示した並列型光子計数センサの構成では、S1方向に対して光強度が一様でなく、センサの中央部と比較して端部の光強度が弱くなる。シリンドリカルレンズの代わりにS1方向に曲率を持つ微小なシリンドリカルレンズをS1方向に多数並べたレンチキュラーレンズ、回折型光学素子、あるいは非球面レンズを用いることで、欠陥像の一軸拡大像225のS1方向の分布を、強度が一様な分布とすることが出来る。こうすることで、S1方向のAPD素子数を保ったまま、リニアリティを確保できる光強度範囲、あるいは飽和しない光強度範囲を更に拡大することが可能となる。
【0031】
このとき、先に述べた細線状の照明領域1000は、照明光の効率を向上させるために(センサの検出範囲外を照明しても無効であるため)並列型光子計数センサ115の検出範囲に絞り込むように基板を照明する。
【0032】
また、本実施例の検出光学系11では、3つの検出ユニット11a、11b、11cは同一の構造で構成する。これは、同一の構造を複数配置することにより検査装置の製造工数、製造コストの低減を図ることを可能とするためである。
【0033】
ステージユニット13は、並進ステージ130、回転ステージ131、ウェハ面高さ調整のためのZステージ132を備える。ステージユニット13によるウェハ表面の操作方法に関して、
図6、
図7により説明する。
【0034】
先ず、
図1に示したウェハ照明光学系ユニット10によって、
図6に示すようにウェハ001の表面に形成された細線状の照明領域1000の長手方向をS2とし、S2に実質的に直交する方向をS1とする。回転ステージの回転運動によって、回転ステージの回転軸を中心とした円の円周方向R1に、並進ステージの並進運動によって並進ステージの並進方向S2に走査される。円周方向R1(細線状の照明領域1000では円周の接線方向であるS1の方向)の走査により試料を1回転する間に、走査方向S2へ細線状の照明領域1000の長手方向の長さ以下の距離だけ走査することにより、
図7に示すように、照明スポット(細線状の照明領域1000)がウェハ001にらせん状の軌跡Tを描き、この走査をウェハ001の半径に細線状の照明領域1000の長さを加えた分だけ行うと、ウェハ001の表面の全面が走査され、これによりウェハ全面の検査を可能とする。
【0035】
ここで照明領域1000の長さと、検出光学系ユニット11の光学倍率、並列型光子計数センサ115の寸法との関係を説明する。高感度・高速検査を行う場合、照明領域1000の長さLiは概略200umに設定される。並列型光子計数センサ105として、ガイガーモードで動作する25um角のAPD素子が、S2方向には20素子、S1方向には160素子の並んだユニットを1chとし、これをS2方向に8ch並べて並列型光子計数センサ115を構成した場合、並列型光子計数センサ115のS1方向の全長は4mmとなり、これと照明領域の長さLi200umと比較すると、検出部の光学倍率は20倍となり、ウェハ面に投影される検出chのピッチは25umとなる。
【0036】
この条件で、試料を回転速度2000rpmで回転させ、1回転に対する並進ステージの送りピッチを12.5umとした場合、直径300mmのウェハは6秒で、直径450mmのウェハは9秒で全面が走査される。ここでは、ウェハを回転走査する際の1回転に対する並進ステージの送りピッチを、ウェハ面に投影される検出chのピッチ25umの1/2としたが、必ずしもこの値に限ることは無く、ウェハ面に投影される検出chの偶数分の1あるいは奇数分の1の任意の数、あるいは整数分の1に限ること無く任意に定めても良い。
【0037】
信号処理ユニット12は、第1、第2および第3の並列型光子計数センサ115a、115b、115c、により光電変換された散乱光信号に基づいて様々な欠陥種の分類や欠陥寸法の推定を高精度に行う。ここで信号処理ユニット12の具体的構成に付いて
図10により説明する。信号処理ユニット12は、フィルタリング処理部121a、121b、121cと、信号処理・制御部122を備えている。信号処理ユニット12は、実際には検出ユニット11a、11b、11cの各々が並列型光子検出センサ115a、115b、115cの各ch毎に複数の信号を出力する。ここではその中の一つのchの信号に注目した説明を行うが、他のchについても同様の処理が並列して行われることは言うまでもない。
【0038】
検出光学系11a、11b、11cの各々に備えられた並列型光子計数センサ115a、115b、115cから出力された、検出散乱光量に対応する出力信号は、フィルタリング処理部121a、121b、121cにおいて、ハイパスフィルタ604a、604b、604cの各々により欠陥信号603a、603b、603cの各々が抽出され、欠陥判定部605に入力される。前述したステージ走査において、照明領域1000の幅方向(ウェハの円周方向)S1に走査されるため、欠陥信号の波形は照明領域1000のS1方向の照度分布プロファイルを拡大縮小したものとなる。従って、ハイパスフィルタ604a、604b、604cの各々により、欠陥信号波形の含まれる周波数帯域を通し、ノイズが相対的に多く含まれる周波数帯域および直流成分をカットすることで、欠陥信号603a、603b、603cのS/Nが向上する。
【0039】
各ハイパスフィルタ604a、604b、604cとしては、特定のカットオフ周波数を持ち、その周波数成分以上の成分を遮断するように設計されたハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタ、あるいは照明領域1000の照度分布の形状が反映された欠陥信号の波形と相似形を成すFIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いる。
【0040】
信号処理制御部122の欠陥判定部605はハイパスフィルタ604a、604b、604cの各々から出力された欠陥波形を含む信号の入力に対してしきい値処理を行い、欠陥の有無を判定する。即ち、欠陥判定部605には、複数の検出光学系からの検出信号に基づく欠陥信号が入力されるので、欠陥判定部605は、複数の欠陥信号の和や、加重平均に対してしきい値処理を行うか、または複数の欠陥信号に対してしきい値処理により抽出された欠陥群について、ウェハの表面に設定された同一座標系でORやANDを取ることなどにより、単一の欠陥信号に基づく欠陥検出と比較して高感度の欠陥検査を行うことが可能となる。
【0041】
更に、欠陥判定部605は、欠陥が存在すると判定された箇所について、その欠陥波形と感度情報信号に基づいて算出されるウェハ内の欠陥位置を示す欠陥座標および欠陥寸法の推定値を欠陥情報として制御部53に提供して表示部などに出力する。欠陥座標は欠陥波形の重心を基準として算出される。欠陥寸法は欠陥波形の積分値、あるいは最大値を元に算出される。
【0042】
さらに、並列型光子係数センサ115a、115b、115cから出力された信号は、信号処理部121a、121b、121cを構成するハイパスフィルタ604a、604b、604cに加えて、ローパスフィルタ601a、601b、601cの各々に入力され、ローパスフィルタ601a、601b、601cの各々について、ウェハ状の照明領域1000における微小ラフネスからの散乱光量(ヘイズ)に対応する周波数の低い成分および直流成分が出力される。
【0043】
このようにローパスフィルタ601a、601b、601cの各々からの出力信号602a、602b、602cは、信号処理制御部122のヘイズ処理部606に入力されてヘイズ情報の処理が行われる。即ち、ヘイズ処理部605は、ローパスフィルタ601a、601b、601cの各々から得られる入力信号602a、602b、602cの大きさから、ウェハ001上の場所毎のヘイズの大小に対応する信号をヘイズ信号として出力する。
【0044】
また、微小ラフネスの空間周波数分布に応じてラフネスからの散乱光量の角度分布が変わるため、互いに異なる方向に設置された複数の検出系11a、11b、11cからの出力信号であるヘイズ信号602a、602b、602cをヘイズ処理部606への入力とすることで、ヘイズ処理部606からは、それらの強度比などから微小ラフネスの空間周波数分布に関する情報を得ることが出来る。このようにヘイズ信号から得られた情報の処理により、ウェハの表面状態の情報をも併せて得ることが可能となる。
【0045】
制御ユニット14は前記照明光学系ユニット10、検出光学系ユニット11、信号処理ユニット12、ステージユニット13を制御する。
【0046】
スキャン中にウェハが検出光学系11の焦点範囲から外れると、並列型光子計数センサ115a、115b、115cで検出される微弱散乱光の状態が変化し、欠陥検出感度が低下する。このためスキャン中にはZステージ(図示せず)により常にウェハ001の表面のz位置(高さ方向の位置)が検出光学系ユニット11の焦点範囲にあるように制御される。このウェハ001の表面のz位置の検出は、図示していないウェハ001の表面のz位置検出手段により行われる。
【0047】
焦点外れは、並列型光子計数センサ115a、115b、115c上に形成される欠陥の散乱光像の状態に大きく影響を与え、欠陥検出感度を大幅に低下させる要因となる。これを避けるために本実施例では、照明光学系ユニット10と検出光学系ユニット11とを以下のように構成した。すなわち検出光学系ユニット11において同一の構造で構成された各検出ユニット11a、11b、11cは、その光軸110a、110b、110cは一つの平面内(以下、この平面を検出光軸面と呼称する)に検出仰角を変えて配置してあり、この検出光軸面が、検査対象面ウェハ001の表面)の法線(z方向)と細線状の照明領域1000の長手方向(y方向:S2方向)とが成す平面に対しほぼ直交するように構成する。また、検出ユニットの光軸110a、110b、110cは、照明光学系の光軸1010とほぼ一点で交差するように構成する。
【0048】
このように構成することにより、同一構成の検出光学系11a、11b、11cを複数配置して異なる方向から散乱光を検出する場合において、検出光学系ユニット11の並列型光子計数センサ115a、115b、115cが検出する検査面上の検出範囲の各点と各々の並列型光子計数センサ115a、115b、115cの各検出面との距離を同一に保つことが可能となり、特段の機構を設けることなく、並列型光子計数センサ115a、115b、115cの検出領域全面で合焦点で散乱光を検出することが可能となる。
【0049】
また、先に説明した本実施例の対物レンズ111a、111c、111cは、円形レンズの左右を直線状に切除して左右対称形状を持つ長円形レンズを使用するが、切除した直線部は、先に説明した検出光軸面に垂直となるように配置する。このことにより、複数の検出ユニットを配置した場合、通常の円形のレンズを使用した場合と比較して、検出開口を大きくして散乱光の捕捉効率を向上することが可能となると共に、並列型光子計数センサ115a、115b、115cの検出領域全面で合焦点で散乱光を得ることを可能にした。また、光子計数センサ115a、115b、115cの長手方向と検出ユニット11a、11b、11cとの光軸とが成す平面に対して対称な光学系を構成することにより検出散乱光を光子計数センサ115a、115b、115cの検出領域全面で均等とすることを可能とする。これにより試料表面からの散乱光の光子計数を並列的に行って、欠陥検出感度の向上と併せて、検査スループットの向上を可能とする。
【0050】
本実施例の長円形レンズの構成について、
図2〜
図5を用いて説明する。
図2は、長円形レンズ111の単レンズ形状を説明する長円形レンズの三面図である。左上は長円形レンズ111の平面図、右は側面図、下は正面図である。長円形レンズ111の平面形状は
図2の左上の平面図に示すように、円形レンズの左右を2つの直線状の切断面1110で切除してほぼ左右対称となる長円形になるように加工する。また、正面形状は、
図2の下側に示すように、前記単レンズを組合せて組レンズとして構成するときの検出開口角(短辺方向)をθw2としたときレンズ焦点面からの距離Lに対しレンズの半幅W2≒L・tanθw2となるよう、斜めに切除する。これによりレンズの検出開口は、
図2の右側の側面図に示したy方向の開口角θw1と
図2の下側の正面図に示したx方向の開口角θw2とで異なるものとなり、θw1>θw2となるが、これを実際の装置上でどのように配置するかは次に説明する。
【0051】
図3は、前記説明した長円形レンズ111の検査装置上での配置を説明する図である。
図3の上側は平面図、
図3の下側は正面図である。なお、
図3の上側の平面図(xy平面内)で3つの長円形対物レンズ111a、111b、111cはいずれも同一の開口を持つものであるが、対物レンズ111b、111cは光軸が傾いており、これをxy平面内で見た図として示しているため、対物レンズ111aよりも見た目が小さく表示されているものである。3つの長円形対物レンズ111a、111b、111cは、その焦点位置をウェハ001の表面の細線状の照明領域1000の位置に合わせるように配置する。この時、ウェハ001の表面に対する法線1111と、細線状の照明領域1000の長手方向(y軸方向)との成す面に対してほぼ垂直な、検出光軸面1112の同一平面内に長円形対物レンズ111a、111b、111cの光軸を配置し、且つ、これら光軸がウェハ001の表面に対する法線1111を中心に対称に配置する。レンズ切断面1110a、1110b、1110cはなるべく近接させて平行に配置する。また、この時レンズ切断面1110a、1110b、1110cの方向は細線状の照明領域1000の長手方向と平行に配置され、検査時にはこの方向と直角な方向1300にウェハを走査する。レンズの検出開口はx方向にθw2であり、y方向にθw1である。単独のレンズだけで見ると、開口の大きさはx方向<y方向であるが、複数のレンズ111a、111b、111cを組み合わせることにより、全体的にはx方向の開口を大きくする構成である。
【0052】
図4は、実際の対物レンズが複数の単レンズの組合せから成る組レンズであることを想定して、これを長円形レンズで構成した場合の実施例を説明する図である。
図4では対物レンズ111a、111b、111cをそれぞれ5枚の組レンズで構成した例を示している。この場合、必ずしもすべてのレンズを長円形レンズとする必要は無い。ウェハ001からの距離が離れるに従ってレンズの光軸間の距離も離れるため、円形レンズではレンズ同士が干渉を起こす部分のみを長円形レンズで構成すればよい。
【0053】
本実施例では、円形レンズのままではレンズ同士が干渉するため、ウェハ側に近い4枚のレンズを長円形で構成した実施例である。切断の基本的な状態は
図2で説明したものと同じである。すなわち対物レンズ111a、111b、111cの先端4枚を切断面1110a、1110b、1110cにより、検出開口角θwとなるように切断したものである。レンズ間で干渉を起こさない後側1枚は切断不要であるため切断していない。
【0054】
また、
図3で説明したのと同様、3つの対物レンズ111a、111b、111cは、その焦点位置を細線状の照明領域1000の位置に焦点を合わせるように配置する。この時、ウェハ001の表面に対する法線1111と、細線状の照明領域1000の長手方向(y軸方向・図示せず)との成す面に対してほぼ垂直な同一平面(検出光軸面1112に相当)に対物レンズ111a、111b、111cの光軸を配置し、且つ、これら光軸がウェハ001の表面に対する法線1111を中心に対称に配置する。また、レンズ切断面1110a、1110b、1110cはなるべく近接させて平行に配置する。
【0055】
図5A及び
図5Bは、長円形レンズを採用した場合の利点について説明する図である。
図5Aは同一の円形レンズ111na、111nb、111ncにより異なる3つの検出方向から検出を行なう場合の開口を示すものである。なお、レンズの開口はいずれも同一の大きさで円形であるが、対物レンズ111nb、111ncは光軸が傾いており、これをxy平面内で見た図として示しているため、対物レンズ111naよりも見た目が小さく表示されているものである。
【0056】
この場合、レンズの干渉を避けるためにレンズの開口を小さくする必要があり、円形開口であるためx方向にもy方向にも開口は小さくする必要がある。本実施例では、検出光学系は結像光学系でウェハの像を形成することを前提としており、そのための条件として複数の対物レンズの光軸を同一平面内に配置することを想定しているため、その前提で円形レンズを複数個配置した場合、検出開口が非常に制限され、特にy方向の検出開口が小さくなるという支障が生じる。
一方で
図5Bに示すように、長円形レンズ111a、111b、111cを採用して、個々の対物レンズのx方向とy方向の開口を任意に設定できるようにすれば、一つの対物レンズはレンズが干渉するx方向のみの開口を小さくして、その分複数個並べれば良く、またy方向の開口は、x方向の開口と関係なく必要な大きさで設定することが可能であり、複数の検出光学系で結像検出を行なう場合でも、円形レンズで構成した場合と比較べて、欠陥から発生する微弱散乱光の検出効率を向上して欠陥検出感度を向上させることが可能となる。
上記の実施例においては、検出光学系ユニット11の3つの検出ユニット11a〜11cを同じ構成の光学系で構成した例を説明したが、本発明はこれに限ることなく、第1の検査ユニット11aの対物レンズ111aを第2及び第3の検出ユニット11b及び11cの対物レンズ111b及び111cよりも大きくして、ウェハ001に対して垂直方向及びその近傍に散乱した光を第1の検査ユニット11aの対物レンズ111aでより多く集光して結像するように構成してもよい。検出光学系をこのように構成することにより、第1の検査ユニット11aのNAをより大きくすることができ、第1の検査ユニット11aでより微細な欠陥を検出することができる。
【0057】
図12には、検出光学系ユニット11の対物レンズ111、制御開口フィルタ112、偏光フィルタ113、結像レンズ114、一軸結像系1140と並列型光子計数センサ115の関係を示す(検出光学系ユニット11の3つの検査ユニット11a.11b.11cは同じ構造であるので、
図12の説明においては、各構成部品の添え字の表示を省略する。)。ウェハ001上の欠陥111の散乱光像(点像)は対物レンズ111、結像レンズ114から構成される結像光学系により、ウェハ面と共役な試料面共役面205に結像されるが、このとき、一軸結像系1140により、欠陥の散乱光像は一軸方向(S1の方向)に引き伸ばされた像225として結像される。並列型光子計数センサ115は、そのセンサ面を試料面共役面と実質的に同一となるように設置され、これにより欠陥の散乱光像はS1の方向において並列型光子計数センサ115上の複数のAPD素子116(
図8のAPD素子231に相当)に跨って形成される。
【0058】
一軸結像系1140は、円周走査方向(円周接線方向)S1に対応する方向のみ光を集光させる作用を持ち、シリンドリカルレンズ等のアナモルフィック光学素子により構成される。一軸結像系1140の作用により、試料共役面205上すなわち並列型光子計数センサ115のセンサ面上に形成される欠陥の散乱光像225は円周走査方向S1に対応した方向に拡大される。一方、S1と直角なS2の方向に対して一軸結像系1140は結像に影響を与えず、試料面共役面205に形成される像のS2方向の大きさは、結像レンズ114の条件で規定される。即ち、試料共役面205上における欠陥の散乱光像225は、S1方向とS2方向とで異なる拡大率の像となる。
【0059】
試料共役面205上の欠陥像(点像)の大きさは、照明光の波長より小さい微小欠陥を想定すると、対物レンズ111および結像レンズ114の光学的解像度によって定まる。一般に、顕微鏡レンズなどに代表される、光学系の波面収差が0.1λ以下(ストレール比0.8以上)などで定義される、高精度な光学系である「無収差光学系」においては、対物レンズのNA(Numerical Aperture)をNAo、対物レンズ111および結像レンズ114からなる結像光学系の倍率をM、照明光源の波長λにより、像の大きさWは、レーリーの結像理論により以下の(数1)により定まる。
W=1.22×λ/(NAo/M) …(数1)
ここで、λ=0.355(um)、NAo=0.8、M=20(倍)とすると、無収差光学系を使用した場合の、試料共役面205上すなわち並列型光子計数センサ115のセンサ面上に形成される欠陥の散乱光像225の、一軸結像系で引伸ばされないS2方向の欠陥像の大きさWは10.8umとなる。しかし、先に実施例として示した並列型光子計数センサ115のAPD素子116(231)の大きさ25umと比較しても、また、並列型光子計数センサ115の1chのS2方向の幅500um(20素子分)と比較しても不必要に小さいものとなる。
【0060】
光子計数センサによる光量計測の原理から、欠陥の散乱光像225の並進走査方向であるS2方向の大きさは1chの並進走査方向であるS2方向の幅(20素子)に相当する500umに拡大することが必要である。無収差光学系を前提とすれば、並列型光子計数センサ115のセンサ面を試料共役面205から離間して設置し、焦点をセンサ面から外すことで散乱光像を拡大することも考えられるが、無収差光学系は収差補正のためにレンズ枚数も多くなり、このような高精度の光学系をわざわざ焦点を外して使用することは、不要に高精度の光学系を使用していることとなり、光学系のコストを不要に増大させることとなる。
【0061】
すなわち、本実施例における結像光学系はそもそも無収差光学系の必要は無く、ある程度の収差が許容される。上記実施例においては、レーリーの結像理論から計算される点像(10.8um)の大きさの約46倍の大きさ(500um)で、共役面205に欠陥の散乱光像を結像出来れば良い。このように光学系の収差条件を緩めることの利点は、無収差光学系とした場合と比較して、対物レンズ111および結像レンズ114の枚数を減らし、加工精度、組立精度の条件も緩和することが可能となり、低コストの光学系で高感度検査を行うことが可能となることである。
【0062】
一方、本実施例での並列型光子計数センサ115は円周接線方向に相当するS1の方向には、各chともAPD素子116(231)が160素子並んだ4mmの全長を持つ。これに関しては一軸結像系1140により欠陥の散乱光像を、並列型光子計数センサ115のS1方向の長さと同等かそれ以下となるように引伸ばすようにする。
【0063】
光学系を以上のように構成することにより、欠陥からの散乱光像を、並列型光子計数センサ115の1chの大きさに合わせるように結像して、欠陥からの散乱光の光子計数による光量測定を、必要なダイナミックレンジ(欠陥からの散乱光を検出するAPDの素子数=欠陥からの散乱光像の範囲内にあるAPDの素子数に相当)で行うことが可能となる。
【0064】
検出光学系11を構成する対物レンズ111、結像レンズ114の構成の実施例について
図13A、
図13B、及び
図14A、
図14Bを用いて説明する。
【0065】
図13Aは検出光学系(結像光学系)11を構成するレンズの全系を示す。なお、本図ではレンズを切断しない状態での構成を図示している。111が対物レンズ、114が結像レンズである。対物レンズは4枚のレンズ、結像レンズは2枚のレンズで構成されており、対物レンズのNAは0.8、倍率は20倍である。使用波長は355nmを想定している。NA0.8という高NAの対物レンズとすることで、ウェハ上の欠陥から発生する散乱光を広範囲で効率よく検出することが可能となる。
【0066】
図13Bは、
図13Aに示した検出光学系(結像光学系)の結像性能を示すスポットダイヤグラムである。
図13Bの上段は視野高さで焦点がウェハ001の表面にあった状態を±0mmとしている。
図13Bの下段はそれぞれの視野高さにおいて観察される像を示している。これはウェハ面上の点からの散乱光がセンサ面上で結像される状態を示すものであり、視野内全域で直径500um程度で均一に点像が形成されていることを示すものである。先にも説明したように、顕微鏡の結像光学系の様に無収差光学系であれば、スポットダイヤグラムは10.8umが得られるが、本発明における検出光学系はそこまでの収差性能(分解能)を必要としないため、非常に少ないレンズ枚数で、高NAの光学系を構成することを可能としている。
【0067】
図14Aは
図13Aに示した検出光学系に一軸結像系1140を追加した構成であり、結像レンズとセンサ面の間にシリンドリカルレンズを設置したものである。
図14Bは
図13Bで示した欠陥の散乱光像を一軸結像系1140で引伸ばした像を示すスポットダイヤグラムである。
図14Bの上段は視野高さで焦点がウェハ001の表面にあった状態を±0mmとしている。
図14Bの下段はそれぞれの視野高さにおいて観察される像を示している。視野内全域で均等にS1方向に4mm引伸ばされている。このような光学系構成をとることで、並列型光子計数センサの各chの各素子に対して、均等に欠陥の散乱光を入射させることが可能となり、光子計数による欠陥検出が可能となる。
【0068】
並列型光子計数センサ224の変形例1の構成図を
図11A及び
図11Bに示す。APD素子を配列した並列型光子計数センサ224において、個々のAPD素子を小さくした場合、APD素子間に配置される配線やクエンチング抵抗からなる不感帯の面積が、受光部の有効面積に対して相対的に大きくなるため、並列型光子計数センサの開口率が低下し、光検出効率が低下する問題がある。そこで
図11Aに示すように並列型光子計数センサ234の受光面の前に、マイクロレンズアレイ228を設置することで、素子間の不感帯領域に入射する光の割合を低減し、実効的な効率を向上させることが出来る。マイクロレンズアレイ228は、APD素子231の配列ピッチと同じピッチで微小な凸レンズが並んだものであり、並列型光子計数センサ234への入射光の主光軸と平行な光線(
図11Aの点線)が対応するAPD素子231の受光面の中央付近に入射するように設置される。
【0069】
並列型光子計数センサ224の変形例2の構成図を
図11Bに示す。APD素子231は一般的にはシリコン系の材料を用いたデバイスであるが、シリコンデバイスは一般的に紫外光領域での量子効率が低下する。これを改善するためには、シリコンナイトライド、ガリウムナイトライド系の材料を用いたデバイスとするか、あるいは
図11Bに示すように
図11Aで説明したマイクロレンズアレイ228と、シリコンプロセスで製作されたAPD素子231の間に波長変換材料(シンチレータ)235を設置して、紫外光を長波長光(可視光等)に変換して、APD素子231の受光面に長波長光を入射させることで実質的に変換効率を上げることが可能となる。