(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータ電極及び前記プラズマ生成電極のそれぞれには、設定された周期単位で正の電圧値あるいは負の電圧値がパルス状に切り替わることにより、前記プラズマの生成のための前記電圧が供給される、請求項8に記載の成膜装置。
前記プラズマアクチュエータに設けられる前記貫通孔のそれぞれの中心軸の延長線上に、前記プラズマ生成ユニットに設けられる前記貫通孔の中心軸は一致する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該CVD装置では、プラズマ生成空間で生成されたラジカルは貫通孔を通して成膜処理空間に導入され、シラン等の材料ガスは隔壁部の内部空間および拡散孔を通してプラズマに触れることなく直接に成膜処理空間に導入するため、材料ガスとプラズマとの間の激しい化学反応を防止でき、その結果、パーティクルの発生を抑制し、基板へのイオン入射を防止することができる、とされている。さらに、材料ガスを均一に導入でき、かつ隔壁部に形成された複数の貫通孔によって酸素ガス等のラジカルも成膜処理空間に均一に供給でき、これによって基板の表面近傍でのラジカルとシラン等の分布を良好にし、大面積基板への成膜を有効に行うことができる、とされている。
しかし、上記CVD装置では、形成される膜の膜厚を均一にできない場合、プラズマから生成されるラジカル(ラジカル分子やラジカル原子)の密度を均一に調整すること、あるいは、プラズマから生成されるラジカルを成膜用基板に向けて噴射する噴射速度を均一に調整することが対策と考えられるが、上記CVD装置では、このような調整はできない。
【0007】
そこで、本発明は、プラズマから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度と噴射速度を別々に調整することができる、成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、プラズマを用いた成膜装置である。
当該成膜装置は、
成膜用基板が配置され、成膜用ガスが導入された成膜空間を備える成膜容器と、
前記成膜空間に設けられ、前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を前記成膜用基板に噴射するインジェクタと、を有する。
前記インジェクタは、一対のアクチュエータ電極を有し、前記アクチュエータ電極間に電圧を加えることで前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成するとともに、前記プラズマの生成により前記成膜空間内のガスを吸引し、さらに、前記プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を噴射するプラズマアクチュエータと、
一対のプラズマ生成電極を有し、前記プラズマ生成電極間に電圧を加えることで、前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、前記プラズマから成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を生成するプラズマ生成素子と、を含む。
この時、前記プラズマアクチュエータと前記プラズマ生成素子は、前記成膜用基板の面の垂直方向に縦列に設けられ、前記インジェクタから噴射する成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を前記成膜用基板に噴射して成膜する。
【0009】
前記成膜装置の好ましい形態は、以下の通りである。
前記アクチュエータ電極及び前記プラズマ生成電極は、環状の電極である。
前記プラズマアクチュエータは、第1誘電体管と、前記第1誘電体管の長さ方向の異なる位置に、前記第1誘電体管の周に沿って前記アクチュエータ電極が設けられ、前記第アクチュエータ電極のうち、前記成膜用基板からみて遠い位置にある第1電極は、前記第1誘電体管内の空間から見て露出し、前記成膜用基板からみて近い位置にある第2電極は、前記第1誘電体管内の空間から見て前記第1誘電体管の誘電体により覆われている。
前記プラズマ生成素子は、第2誘電体管と、前記第2誘電体管の長さ方向の異なる位置に、前記第2誘電体管の周に沿って前記プラズマ生成電極が設けられ、前記プラズマ生成電極のいずれも、前記第2誘電体管内の空間から見て前記第2誘電体管の誘電体により覆われている。
【0010】
このとき、前記プラズマアクチュエータの前記アクチュエータ電極は、第1プレートに設けられた貫通孔の両側の開口に沿って設けられ、
前記第1誘電体管の一方の端は、前記アクチュエータ電極のうち前記成膜用基板からみて遠い位置にある前記貫通孔の第1開口の端に一致するように設けられ、
前記第1電極は、前記貫通孔の前記第1開口の縁に沿って設けられ、
前記第2電極は、前記第1開口とは反対側にある前記貫通孔の第2開口の周に沿って設けられている、ことが好ましい。
【0011】
さらに、前記プラズマ生成素子の前記プラズマ生成電極は、第2プレートに設けられた貫通孔の両側の開口に沿って設けられている、ことが好ましい。
前記第1プレートに設けられた前記貫通孔の中心軸の延長線上に、前記第2プレートに設けられた貫通孔の中心軸は一致する、ことが好ましい。
【0012】
また、前記成膜装置の好ましい形態では、前記プラズマアクチュエータ及び前記プラズマ生成素子は、第3誘電体管を共通の管として用いられる。
前記プラズマ生成素子及び前記プラズマアクチュエータが、前記成膜用基板の側から見て、前記プラズマ生成素子、前記プラズマアクチュエータの順番に縦列に設けられる。
前記プラズマアクチュエータ電極のうち、前記成膜用基板からみて遠い位置にある前記プラズマアクチュエータの第3電極は、前記第3誘電体管内の空間から見て露出し、前記成膜用基板からみて近い位置にある前記プラズマアクチュエータの第4電極は、前記第3誘電体管内の空間から見て前記第3誘電体管の誘電体により覆われている。
前記プラズマ生成電極のうち、前記成膜用基板からみて遠い位置にある前記プラズマ生成素子の第5電極、及び前記成膜用基板からみて近い位置にある前記プラズマ生成素子の第6電極は、前記第3誘電体管内の空間から見て前記第3誘電体管の誘電体により覆われている。このとき、前記第4電極及び前記第5電極は同一の電極である。
【0013】
本発明の他の一態様は、プラズマを用いた成膜装置である。当該成膜装置は、
成膜用基板が配置され、成膜用ガスが導入された成膜空間を備える成膜容器と、
一対のアクチュエータ電極を有し、前記アクチュエータ電極間に電圧を加えることで前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成するとともに、前記プラズマの生成により前記成膜空間内のガスを吸引し、さらに、前記プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を噴射するプラズマアクチュエータと、
前記成膜空間に設けられた一対のプラズマ生成電極を有し、前記プラズマ生成電極間に電圧を加えることで、前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、前記プラズマから成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を生成するプラズマ生成素子と、
前記プラズマアクチュエータ及び前記プラズマ生成素子においてプラズマを生成するために、前記プラズマアクチュエータ及び前記プラズマ生成素子にプラズマ生成のための電圧を供給する電源と、
前記電圧の供給を制御する制御ユニットと、を有する。
前記プラズマアクチュエータは、アクチュエータプレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔のそれぞれに設けられた誘電体管と、前記貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた前記一対のアクチュエータ電極を有する。
前記プラズマ生成素子は、プラズマ生成プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔のそれぞれに設けられた誘電体管と、前記貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた前記一対のプラズマ生成電極を有する。
【0014】
このとき、好ましくは、前記プラズマアクチュエータ及び前記プラズマ生成プレートのそれぞれのプレートの前記貫通孔は、面上の2方向に沿って複数の列及び行を成すように格子状に並べられ、
前記一対のプラズマ生成電極及び前記一対のアクチュエータ電極のうち前記プレートそれぞれの一方の面の側に設けられた複数の電極のうち、共通する行それぞれに位置する電極は、前記行毎に、第1給電線で互いに直列に繋がれて前記電源と接続され、
前記一対のプラズマ生成電極及び前記一対のアクチュエータ電極のうち前記プレートのそれぞれの他方の面の側に設けられた複数の電極のうち、共通する列それぞれに位置する電極は、前記列毎に、第2給電線で互いに直列に繋がれて前記電源と接続されている。
【0015】
このとき、前記アクチュエータ電極及び前記プラズマ生成電極のそれぞれには、設定された周期単位で正の電圧値あるいは負の電圧値がパルス状に切り替わることにより、前記プラズマの生成のための前記電圧が供給される、ことが好ましい。
【0016】
前記プラズマアクチュエータに設けられる前記貫通孔のそれぞれの中心軸の延長線上に、前記プラズマ生成ユニットに設けられる前記貫通孔の中心軸は一致する、ことが好ましい。
【0017】
本発明のさらに他の一態様は、プラズマを用いた成膜方法である。当該成膜方法は、
成膜用基板が配置された成膜空間に、成膜用ガスを導入する工程と、
前記成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を前記成膜用基板に噴射し成膜する工程と、を有し、
前記成膜する工程は、前記成膜空間内のガスを吸引し、前記ラジカル分子あるいは前記ラジカル原子を噴射する力を生成する工程と、前記ラジカル分子あるいは前記ラジカル原子を生成するために、前記成膜空間内のガスからプラズマを生成する工程と、を含み、
前記力を生成する工程では、前記力の調整をすることにより、前記ラジカル分子あるいは前記ラジカル原子の噴射速度を調整し、
前記プラズマを生成する工程では、前記プラズマの強度の調整をすることにより、前記ラジカル分子あるいは前記ラジカル原子の密度を調整し、
前記力を生成する工程における前記力の調整と、前記プラズマを生成する工程における前記プラズマの強度の調整とは個別に行われ
ることにより、前記噴射速度の調整と前記密度の調整が個別に実現される。
【発明の効果】
【0018】
上述の成膜装置及び成膜方法は、プラズマから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度と噴射速度を別々に調整することができる。これにより、例えば均一な膜を成膜用基板に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
【0021】
(成膜装置の概略説明)
本実施形態の成膜装置の概要をまず説明する。
成膜装置は、成膜容器とインジェクタを有する。成膜容器には、成膜用基板が配置されている。成膜容器は、成膜用ガスが導入された成膜空間を備える。
インジェクタは、成膜空間に設けられ、成膜空間内のガス、例えば成膜用ガスを用いてプラズマを生成し、プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を成膜用基板に噴射する。
このインジェクタは、プラズマアクチュエータとプラズマ生成素子を含む。
プラズマアクチュエータは、一対のアクチュエータ電極を有し、アクチュエータ電極間に電圧を加えることで成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成するとともに、このプラズマの生成により成膜空間内のガスを吸引し、さらに、このプラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を噴射する。
プラズマ生成素子は、一対のプラズマ生成電極を有し、このプラズマ生成電極間に電圧を加えることで、成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、プラズマから成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を生成する。
ここで、プラズマアクチュエータとプラズマ生成素子は、成膜用基板の面の垂直方向に対して縦列に設けられる。成膜装置は、このようなインジェクタから噴射する成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を成膜用基板に噴射して成膜する。
【0022】
ここで、上述のプラズマアクチュエータとプラズマ生成素子は、プラズマを生成する点では同じであるが、プラズマアクチュエータは、プラズマの生成に加えて、ガス(成膜空間内のガス)を一方の側から吸引し、他方の側からガス(ラジカル分子あるいはラジカル原子)を噴射する誘起流れをつくるアクチュエータとして機能する点で、プラズマ生成素子と異なる。すなわち、プラズマアクチュエータとプラズマ生成素子により、生成されるプラズマの強度を調整することができる。このため、プラズマから生成されるラジカル(ラジカル分子、ラジカル原子)密度を調整することができる。さらに、プラズマアクチュエータにより、プラズマから生成される成膜成分であるラジカル分子やラジカル原子のインジェクタからの噴射速度を調整することができる。したがって、噴射速度を調整する場合、プラズマアクチュエータの動作を高める。このとき、生成されるプラズマの強度も同時に高まるため、プラズマ生成素子の動作を低くする。プラズマ生成素子にて生成されるプラズマの強度を低くすることで、インジェクタから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度を一定保ちつつ、ラジカル分子やラジカル原子の噴射速度を高くすることができる。また、プラズマアクチュエータの動作を一定に保ちつつ、プラズマ生成素子の動作を高めることにより、ラジカル分子やラジカル原子の噴射速度を一定に保ちつつ、ラジカル分子やラジカル原子の密度を高くすることができる。
このようなプラズマアクチュエータとプラズマ生成素子の組を、成膜用基板に対して対向する位置に複数設け、複数の組の動作を個別に制御することにより、成膜用基板に形成される膜の厚さを所望の分布に、例えば均一に、さらに、膜質を均一にすることができる。
【0023】
(成膜装置)
図1は、本実施形態の成膜装置10の全体の概略構成図である。成膜装置10は、成膜本体部12と、ガス源14と、排気ユニット16と、プラズマ生成ユニット18と、を有する。
成膜本体部12は、成膜容器20と、サセプタ22と、を主に有する。成膜容器20は、成膜容器20内の成膜空間を所定の圧力に減圧維持し、あるいは、所定の圧力に維持し、成膜空間の成膜用基板を成膜処理するための容器である。サセプタ22は、表面に成膜用基板24を載せる載置面26を有し、成膜空間内に設けられている。サセプタ22の内部に図示されないヒータが設けられて成膜用基板24を加熱する。成膜用基板24は、成膜容器20に設けられた図示されない開口したシャッターを通して、成膜容器20の外部から内部に搬入されてサセプタ22の載置面26に載せられる。また、成膜済みの成膜用基板24は、上記シャッターを通して成膜容器20の外部に搬出される。
【0024】
成膜容器20の天井面には、ガス源14と接続した図示されない配管と接続された供給口28が設けられる。ガス源14から供給される成膜用ガスは、供給口28を通して成膜容器20内に供給される。成膜容器20の床面には、成膜容器20内の成膜空間内の不要なガスを排気する排気口30が設けられている。排気口30は、排気ユニット16と接続した図示されない配管と接続されている。これにより、成膜空間は一定の圧力に維持される。
【0025】
成膜空間内のサセプタ22の上方には、プラズマ生成ユニット18に属するインジェクタ32が設けられている。インジェクタ32は、複数のプラズマアクチュエータを備えるアクチュエータプレート34と、複数のプラズマ生成素子を備えるプラズマ生成プレート36とを有する。
アクチュエータプレート34及びプラズマ生成プレート36のそれぞれは、樹脂あるいはガラス板によって構成された誘電体基板である。アクチュエータプレート34及びプラズマ生成プレート36のそれぞれは、プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔38,40(
図2参照)を有し、この貫通孔38,40の内部でプラズマを生成する。貫通孔38はアクチュエータプレート34に設けられ、貫通孔40はプラズマ生成プレート36に設けられる。
図2では、括弧書きにて、貫通孔40及びプラズマ生成プレート36が記されている。アクチュエータプレート34及びプラズマ生成プレート36については後述する。また、
図2では、アクチュエータ電極34a,34b及び誘電体管34cの図示は省略されている。
【0026】
ガス源14は、例えば、シランガスや水素ガス等の成膜用ガス源であり、成膜用基板24に形成する薄膜の成分を含むガスである。薄膜として微結晶シリコンの膜を成膜用基板24に形成するとき、成膜用ガスとして例えばシランガス及び水素ガスが用いられる。この場合、シランガス源と水素ガス源をガス源14として別々に用意し、予め定められたシランガスと水素ガスの流量比で、シランガスと水素ガスが成膜空間に供給される。
【0027】
排気ユニット16は、ロータリポンプあるいはドライポンプ等を含み、成膜空間を、一定の圧力に維持する。また、成膜空間における圧力を大気圧に比べて低くする場合、排気ユニット16は、定められた圧力まで排気を行う。
【0028】
プラズマ生成ユニット18は、上述したインジェクタ32と、第1制御ユニット44と、第2制御ユニット46と、高周波電源42と、を有する。
インジェクタ32を構成するアクチュエータプレート34は、成膜容器20内に設けられたプレートであって、このプレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔38と、これらの貫通孔38それぞれの両側の開口の周りに設けられた一対のアクチュエータ電極と、貫通孔38のそれぞれに、貫通孔38を貫通するように設けられた誘電体管と、を備える。貫通孔38、アクチュエータ電極及び誘電体管により、後述するプラズマアクチュエータが構成される。
【0029】
インジェクタ32を構成するプラズマ生成プレート36は、成膜容器20内に設けられたプレートであって、このプレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔40と、これらの貫通孔40それぞれの両側の開口の周りに設けられた一対のアクチュエータ電極と、貫通孔40のそれぞれに、貫通孔40を貫通するように設けられた誘電体管と、を備える。貫通孔40、アクチュエータ電極及び誘電体管により、後述するプラズマ生成素子が構成される。
【0030】
アクチュエータプレート34とプラズマ生成プレート36は、成膜用基板24から見て、成膜用基板24の面の垂直方向に縦列に設けられている。
図1に示すように、成膜空間内において、上方から、プラズマ生成プレート36、アクチュエータプレート34、成膜用基板24の順番に配置されている。したがって、プラズマアクチュエータとプラズマ生成素子は、成膜用基板24の面の垂直方向に縦列に設けられ、成膜用基板24からみて、近い位置にプラズマアクチュエータが、遠い位置にプラズマ生成素子が設けられている。
本実施形態のように、アクチュエータプレート34とプラズマ生成プレート36とが離間している場合、成膜用基板24から近い順にプラズマアクチュエータ、プラズマ生成素子が設けられていることが好ましい。これは、プラズマアクチュエータによるラジカル分子やラジカル原子の噴射速度を効果的に生かし、噴射速度に基いて膜厚の分布を効率よく調整するためである。勿論、成膜用基板24から近い順にプラズマ生成素子、プラズマアクチュエータが設けられてもよい。
【0031】
(プラズマアクチュエータ)
図3(a)は、本実施形態のプラズマアクチュエータの要部の断面斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す要部の外観斜視図である。
プラズマアクチュエータ35は、アクチュエータプレート34に設けられている。
プラズマアクチュエータ35は、一対のアクチュエータ電極34a,34bを有し、アクチュエータ電極34a,34b間に電圧を加えることで成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成するとともに、プラズマの生成により成膜空間内のガスを吸引し、さらに、プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を噴射する。すなわち、プラズマアクチュエータ35は、プラズマの生成により誘起流れを作る素子である。
このような素子は、以下のような形態であることが好ましい。
【0032】
すなわち、アクチュエータ電極34a,34bは、環状の電極である。プラズマアクチュエータ35は、誘電体管34c(第1誘電体管)と、誘電体管34cの長さ方向の異なる位置に、誘電体管34cの周に沿ってアクチュエータ電極34a,34bが設けられる。成膜用基板24からみて遠い位置にあるアクチュエータ電極34aは、誘電体管34c内の空間から見て露出している。成膜用基板24からみて近い位置にあるアクチュエータ電極34bは、誘電体管34c内の空間から見て誘電体管34cの誘電体により覆われている。
図3(a),(b)の例では、アクチュエータ電極34bは、誘電体管34cの外周を取り巻くように設けられている。
【0033】
アクチュエータ電極34aは、アクチュエータプレート34の面上に形成された給電線34dと接続されている。給電線34dは、
図1に示す第2制御ユニット46に接続されており、アクチュエータ電極34aには、例えば高周波の電圧パルスが、電力として給電線34dを通して供給される。アクチュエータ電極34bは、アクチュエータプレート34に設けられた接地導体34fと接続されている。接地導体34fは、第2制御ユニット46を介して接地されている。したがって、アクチュエータ電極34bの電位は0になっている。
プラズマアクチュエータ35では、アクチュエータ電極34a,34bに印加される電力によって、プラズマPの強度、及びラジカル分子やラジカル原子の噴射速度が調整される。したがって、プラズマPから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度及びその噴射速度は、アクチュエータ電極34a,34bに印加される電力によって調整される。
【0034】
図3(a)に示すように、プラズマアクチュエータ35は、好ましい形態として以下の構成が用いられる。
具体的には、プラズマアクチュエータ35の環状のアクチュエータ電極34a,34bは、アクチュエータプレート34(第1プレート)に設けられた貫通孔38(
図2参照)の両側の開口に沿って設けられる。誘電体管34c(第1誘電体管)の一方の端(
図3(a)の上方の端)は、貫通孔38の両側の開口のうち成膜用基板24からみて遠い位置にある第1開口の端に一致するように設けられる。しかも、アクチュエータ電極34a(第1電極)は、貫通孔38の上記第1開口の縁に沿って設けられる。アクチュエータ電極34aの内周は、誘電体管34cの内周に一致している。したがって、アクチュエータ電極34aの内周は、誘電体管34cの
図3(a),(b)中の上方の端に誘電体管34cの内周に沿うように、アクチュエータ電極34aは誘電体管34cに設けられる。
一方、環状のアクチュエータ電極34b(第2電極)は、上記第1開口とは反対側にある貫通孔38の第2開口の周に沿って設けられる。アクチュエータ電極34bの内周は、誘電体管34cの
図3(a),(b)中の下方に誘電体管34cの外周に一致するように構成され、アクチュエータ電極34bは誘電体管34cの外周に沿うように設けられる。
したがって、アクチュエータ電極34aは、誘電体管34c内の空間から見て露出し、アクチュエータ電極34bは、誘電体管34c内の空間から見て誘電体管34cの誘電体により覆われている。
【0035】
このような構成により、アクチュエータ電極34aが給電を受けると、アクチュエータ電極34aとアクチュエータ電極34bとの間の電圧により、プラズマが生成する。
図4は、プラズマの生成による誘起流れを説明する図である。
アクチュエータ電極34a,34bに電圧を印加することで、アクチュエータ電極34a,34b間に成膜空間内のガス、例えば成膜用ガスを用いたプラズマPが生成される。このとき、成膜用基板24から遠いアクチュエータ電極34aは、誘電体管34c内の空間から見て露出し、成膜用基板24に近いアクチュエータ電極34bは誘電体34c内の空間から見て誘電体管34cの誘電体で覆われているので、生成したプラズマPによりアクチュエータ電極34aからアクチュエータ電極34bの方へ引っ張る力が生成される。このようなプラズマPの発生による生じる力は、例えば、“Experimental Investigation of DBD Plasma Actuators Driven by Repetitive High Voltage Nanosecond Pulses with DC or Low-Frequency Sinusoidal Bias”(Dmitry F. Opaits et al., 38
th AIAA Plasmadynamics and Lasers Conference<br> in conjunction with the <br> 16
th, 25-28 June 2007)において説明されている。したがって、本実施形態のアクチュエータ35においても、成膜用ガスを吸引し、プラズマPから生成されるラジカル分子やラジカル原子を噴射させるアクチュエータとして機能する。
上記噴射速度は、アクチュエータ電極34aに給電する電力及び成膜空間の減圧雰囲気によって異なるが、例えば0.1m/秒〜2m/秒の噴射速度が得られる。
このように、成膜空間内のガスを用いて貫通孔38内の空間である誘電体管34c内でプラズマPが生成されると、
図4中の下向きに引っ張る力が発生するので、プラズマPによって生成されたラジカル分子やラジカル原子は貫通孔38の下側の第2開口に引っ張られ、第2開口から拡散するように下方に噴射される。
【0036】
図5は、縦5個、横5個のプラズマアクチュエータ35を設けたアクチュエータプレート34において、各プラズマアクチュエータ35において発生するプラズマPの発光をアクチュエータ電極34aの側から見た図である。縦5個、横5個のプラズマアクチュエータ35のうち、内側に位置する9つのプラズマアクチュエータのプラズマの発光強度が高くなっている状態が示されている。
本実施形態のアクチュエータ35は、貫通孔38及び誘電体管34cを円管形状とし、アクチュエータ電極34a,34bも円環形状の電極としたが、これらの形状は円管形状や円環形状に制限されない。貫通孔38及び誘電体管34cの断面は矩形形状としてもよく、アクチュエータ電極34a,34bも矩形の環形状としてもよい。
【0037】
(プラズマ生成素子)
図6は、本実施形態のプラズマ生成素子37におけるプラズマの生成を説明する図である。
プラズマ生成素子37は、プラズマ生成プレート36に設けられている。
プラズマ生成素子37は、環状の一対のプラズマ生成電極36a,36bと、誘電体管36c(第2誘電体管)と、を有する。プラズマ生成電極36a,36bは、誘電体管36cの長さ方向の異なる位置に、誘電体管36cの周に沿って設けられる。プラズマ生成電極36a,36bのいずれも、誘電体管36cの空間から見て誘電体管36cの誘電体により覆われている。
プラズマ生成電極36a,36bは、
図6に示すように、プラズマ生成ユニット36(第2プレート)に設けられた貫通孔40の両側の開口に沿って設けられることが好ましい。プラズマ生成素子37の構成において、プラズマ生成電極36bに比べて成膜用基板24から遠いプラズマ生成電極36aが誘電体に覆われている点が、プラズマアクチュエータ35と異なる。これ以外の構成は、プラズマアクチュエータ35と同じである。したがって、プラズマ生成素子37の構成の説明は省略する。なお、プラズマ生成素子についても、貫通孔40及び誘電体管36cを円管形状とし、プラズマ生成電極36a,36bも円環形状の電極としたが、これらの形状は円管形状や円環形状に制限されない。貫通孔40及び誘電体管36cの断面は矩形形状としてもよく、プラズマ生成電極36a,36bも矩形の環形状としてもよい。
【0038】
図6は、プラズマPの生成を説明する図である。
プラズマ生成電極36a,36bに電圧を図示されない給電線を通して印加することで、プラズマ生成電極36a,36b間に成膜空間内のガスによるプラズマPが生成される。このとき、成膜用基板24から遠いプラズマ生成電極36a及び成膜用基板24に近いプラズマ生成電極36bはいずれも誘電体36c内の空間から見て誘電体管36cの誘電体で覆われているので、プラズマアクチュエータ37と異なり、誘起流れは生じない。すなわち、プラズマ生成素子37は、供給された電力によりプラズマPを生成するだけである。
プラズマ生成電極36a,36bは、
図1に示す第1制御ユニット44に接続されており、プラズマ生成電極36aは、電力、例えば高周波の電圧パルスを、図示されない給電線を通して供給される。プラズマ生成電極36bは、第1制御ユニット44を介して接地されている。したがって、プラズマ生成電極36bの電位は0になっている。
このような構成のプラズマ生成素子37では、プラズマ生成電極36a,36bに印加される電力によって、プラズマPの強度が制御される。したがって、プラズマPから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度は、プラズマ生成電極36a,36bに印加される電力によって制御される。
【0039】
第1制御ユニット44及び第2制御ユニット46は、高周波電源42と接続されており、第1制御ユニット44及び第2制御ユニット46は、所望の制御情報に従って各プラズマアクチュエータ35及び各プラズマ生成素子37に給電する電力を調整して、各プラズマアクチュエータ35及び各プラズマ生成素子37に個別に供電する。
例えば、供給する電力は、10kHz〜100MHzの高周波であり、一定の高周波電圧で作られる電圧パルスを用いる。このとき、第1制御ユニット44及び第2制御ユニット46は、図示されないスイッチング回路を用いて電圧パルスの単位時間当たりのパルス数を制御して、あるいは、パルス幅を制御して、供給する電力を制御することができる。
なお、本実施形態では、アクチュエータプレート34に設けられた貫通孔38の中心軸の延長線上に、プラズマ生成プレート36に設けられた貫通孔40の中心軸が一致することが、プラズマアクチュエータ35による誘起流れ(ガスの吸引と噴射)を、プラズマ生成素子37で生成したラジカル分子やラジカル原子にも有効に利用させる点で好ましい。
【0040】
(変形例1)
図7は、本実施形態の変形例1を示す図である。本変形例は、プラズマアクチュエータ35とプラズマ生成素子37を1つのプレートと1つの誘電体管を用いて構成した素子である。
当該素子は、プラズマアクチュエータ35及びプラズマ生成素子37は、1つの誘電体管34c,36c(第3誘電体管)を共通の管として用いる。成膜用基板24の側から見て、プラズマ生成素子37、プラズマアクチュエータ35の順番に縦列に設けられている。
図7に示すように、図中の上方から、プラズマアクチュエータ35、プラズマ生成素子37の順番に配置されている。
【0041】
プラズマアクチュエータ電極34a,34bのうち、成膜用基板24からみて遠い位置にあるアクチュエータ電極34a(第3電極)は、1つの誘電体管34c,36c内の空間から見て露出し、成膜用基板24からみて近い位置にあるアクチュエータ電極34b(第4電極)は、1つの誘電体管34c,36c(第3誘電体管)内の空間から見て1つの誘電体管34c,36c(第3誘電体管)の誘電体により覆われている。
プラズマ生成電極36a,36bのうち、成膜用基板24からみて遠い位置にあるプラズマ生成電極36a(第5電極)、及び成膜用基板24からみて近い位置にあるプラズマ生成電極36b(第6電極)は、誘電体管34c,36c内の空間から見て誘電体管34c,36cの誘電体により覆われている。そして、アクチュエータ電極34b及びプラズマ生成電極36aは、同一の電極である。以降、この電極は、アクチュエータ/プラズマ生成電極34b,36aと記載する。
【0042】
アクチュエータ電極34a、アクチュエータ/プラズマ生成電極34b,36a、及びプラズマ生成電極36bは、図示されない給電線を通して第3制御ユニット41に接続されている。第3制御ユニット41は、高周波電源42に接続されている。
アクチュエータ電極34a、アクチュエータ/プラズマ生成電極34b,36a、及びプラズマ生成電極36bへの給電についていうと、上記実施形態と同様に、第3制御ユニット41による電圧パルスの調整により電力が調整されている。したがって、アクチュエータ/プラズマ生成電極34b,36aを基準として、アクチュエータ電極34aに供給する電圧パルスを調整することにより、また、アクチュエータ/プラズマ生成電極34b,36aを基準として、プラズマ生成電極36bに供給する電圧パルスを調整することにより、本素子から、所望のラジカル分子あるいはラジカル原子の密度と噴射速度を制御することができる。
【0043】
なお、本変形例では、プラズマアクチュエータ35を上方に(成膜用基板24から遠い位置に)、プラズマ生成素子37を下方に(成膜用基板24に近い位置に)設けており、上述の実施形態とは配置が異なる。本変形例では、プラズマアクチュエータ35及びプラズマ生成素子37を1つの誘電体管で共用するので、プラズマアクチュエータ35を上方に配置して誘起流れを1つの誘電体管34c、36cの上方で生成しても1つの誘電体管34c,36cの下方から噴射するラジカル分子やラジカル原子の噴射速度は維持される。なお、アクチュエータ電極34aは、1つの誘電体管34c,36cの内側空間から見て露出するように設けられているので、アクチュエータ電極34aを配置する点から、プラズマアクチュエータ35を上方に設けることが好ましい。勿論、プラズマアクチュエータ35を下方に(成膜用基板24から近い位置に)、プラズマ生成素子37を上方に(成膜用基板24から遠い位置に)設けることもできる。
【0044】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2を示す。
図8は、アクチュエータプレート34を説明する図である。本変形例2では、
図8に示すアクチュエータプレート34を、
図1に示すアクチュエータプレートとして用い、
図8に示すアクチュエータプレート34の上面の電極を誘電体で覆った構成を採用した図示されないプラズマ生成プレートを、
図1に示すプラズマ生成プレートとして用いる。
【0045】
変形例2のプラズマアクチュエータは、アクチュエータプレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、貫通孔のそれぞれに設けられた誘電体管と、貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた一対のアクチュエータ電極を有する。一方、プラズマ生成素子は、プラズマ生成プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、貫通孔のそれぞれに設けられた誘電体管と、貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた一対のプラズマ生成電極を有する。この点では、上述した実施形態と変わらない。
【0046】
具体的には、変形例2では、プラズマアクチュエータ及びプラズマ生成プレートのそれぞれのプレートの貫通孔は、面上の2方向に沿って複数の列及び行を成すように格子状に並べられる。一対のプラズマ生成電極及び一対のアクチュエータ電極のうちプレートそれぞれの一方の面の側に設けられた複数の電極のうち、共通する行それぞれに位置する電極は、行毎に、1つの給電線(第1給電線)で互いに直列に繋がれて電源と接続される。さらに、一対のプラズマ生成電極及び一対のアクチュエータ電極のうちプレートのそれぞれの他方の面の側に設けられた複数の電極のうち、共通する列それぞれに位置する電極は、列毎に、給電線(第2給電線)で互いに直列に繋がれて電源と接続される。
各プレートに設けられるプラズマアクチュエータ及びプラズマ生成素子の構成は、
図4、
図6に示す構成と同様なので同じ部分の説明は省略する。
【0047】
アクチュエータプレート34は、プレート厚さ方向に貫通する複数の同一の大きさの貫通孔38が、図中のX方向及びY方向に沿って一定の間隔で整然と並んで格子状に設けられている。Y方向に沿って並んだ貫通孔38の群を列といい、X方向に沿って並んだ貫通孔38の群を行という。
図8に示す例では、列7、行7からなる貫通孔のそれぞれにプラズマアクチュエータが設けられている例であるが、列の数、行の数は7に限定されず、複数の数であればよい。
【0048】
アクチュエータプレート34の一方の面には、X方向に沿って並んだ7つのプラズマアクチュエータと接続された給電線50U
1〜50U
7が設けられている。アクチュエータプレート34の他方の面には、Y方向に沿って並んだ7つのプラズマアクチュエータと接続された給電線50D
1〜50D
7が設けられている。給電線50U
1〜50U
7は、貫通孔のそれぞれに設けられた誘電体管内の空間から見て露出した、アクチュエータプレート34の上方に位置するアクチュエータ電極に接続されている。給電線50D
1〜50D
7は、誘電体管内の空間から見て誘電体管の誘電体で覆われた、アクチュエータプレート34の下方に位置するアクチュエータ電極に接続されている。
【0049】
給電線50U
1〜50U
7の一方の端(
図8中の左側の端)は、上部制御ユニット46Uに接続されており、上部制御ユニット46Uは、さらに、上部電源42Uに接続されている。給電線50U
1〜50U
7の他方の端(
図8中の右側の端)は、図示されないコンデンサを介して接地されている。上部制御ユニット46Uは、各給電線50U
1〜50U
7に所望の電圧パルスを供給するように、それぞれ所望の制御信号U1〜U7に基づいて電圧パルスが生成されるようになっている。したがって、給電線50U
1〜50U
7のそれぞれに印加される電力は、共通する。
【0050】
一方、給電線50D
1〜50D
7の一方の端(
図8中の上側の端)は、下部制御ユニット46Dに接続されており、下部制御ユニット46Dは、さらに、下部電源42Dに接続されている。給電線50D
1〜50D
7の他方の端(
図8中の下側の端)は、図示されないコンデンサを介して接地されている。下部制御ユニット46Dは、各給電線50D
1〜50D
7に所望の電圧パルスを供給するように、それぞれ所望の制御信号L1〜L7に基づいて電圧パルスが生成されるようになっている。したがって、給電線50D
1〜50D
7のそれぞれに印加される電力は、共通する。
【0051】
このように、給電線50U
1〜50U
7の電圧パルスと給電線50D
1〜50D
7の電圧パルスに電圧差が生じるとき、給電線50U
1〜50U
7と給電線50D
1〜50D
7の交点に位置するプラズマアクチュエータ17は動作を行い、プラズマPの生成とプラズマPの生成による誘起流れが生じる。
このように、給電線50U
1〜50U
7と給電線50D
1〜50D
7の交点に位置するプラズマアクチュエータ17で所望の動作が生じるように、給電線50U
1〜50U
7と給電線50D
1〜50D
7に印加する電圧パルスのタイミング及び電圧パルスのパルス幅等は定められる。したがって、給電線50U
1〜50U
7と給電線50D
1〜50D
7に印加する電圧パルスは、上部制御ユニット46U及び下部制御ユニット46Dにより調整することで制御することができる。この上部制御ユニット46U及び下部制御ユニット46Dによる調整は、制御信号U1〜U7及び基制御信号L1〜L7に基いて行われる。制御信号U1〜U7及び基制御信号L1〜L7は、例えば図示されないコンピュータで作成されて、上部制御ユニット46U及び下部制御ユニット46Dに供給される。
【0052】
プラズマ生成プレートでは、上述したように、
図8に示すアクチュエータユニット34の上方に設けられるプラズマアクチュエータ電極を誘電体層で覆うことにより、プラズマ生成電極を形成している。このため、プラズマ生成ユニットのプラズマ生成素子は、プラズマアクチュエータとは異なり、誘起流れを生じることなく、プラズマPを生成する。プラズマ生成プレートは、アクチュエータプレートと同様の構成で各電極に電力が給電線を通じて給電されるので、プレートの上側に設けられる給電線と下側に設けられる給電線の交点に位置するプラズマ生成素子はプラズマ生成の動作を行い、プラズマPの生成が生じる。
【0053】
したがって、上側の給電線と下側の給電線の交点に位置するプラズマ生成素子で所望の動作が生じるように、上側の給電線と下側の給電線に印加する電圧パルスのタイミング及び電圧パルスのパルス幅は定められる。したがって、上側の給電線と下側の給電線に印加する電圧パルスは、上部制御ユニット及び下部制御ユニットにより調整することで制御することができる。この上部制御ユニット及び下部制御ユニットによる調整は、上部制御ユニット及び下部制御ユニットに送られる制御信号に基いて行われる。この制御信号は、例えば図示されないコンピュータで作成されて、上部制御ユニット及び下部制御ユニットに供給される。
この場合、プラズマアクチュエータのアクチュエータ電極及びプラズマ生成素子のプラズマ生成電極のそれぞれには、設定された周期単位で正の電圧値あるいは負の電圧値がパルス状に切り替わることにより、プラズマの生成のための電圧が供給されることが、供給する電力を制御する点で好ましい。
【0054】
なお、変形例2では、
図1に示すようにアクチュエータプレートとプラズマ生成プレートを離間して成膜空間内に設ける場合、アクチュエータプレートを、プラズマ生成プレートに比べて成膜用基板24に近い位置に設けることが、噴射したラジカル分子やラジカル原子を効果的に成膜用基板24に堆積させる点で、好ましい。特に、プラズマアクチュエータに設けられる貫通孔のそれぞれの中心軸の延長線上に、プラズマ生成ユニットに設けられる貫通孔の中心軸を一致させることが、効率よく成膜用基板24に堆積させる点で好ましい。
【0055】
(成膜方法)
以下、
図1に示す本実施形態の成膜装置で行われる成膜方法について説明する。変形例1,2のける成膜方法も同様であるのでその説明は省略する。
まず、成膜装置10では、成膜容器12内の成膜空間の雰囲気は、一定の圧力に維持されるように排気ユニット16は駆動される。一方、成膜空間内には、ガス源14から成膜用ガスが所定流量で定常的に導入される。このとき、成膜用基板24はサセプタ22に載せられている。すなわち、成膜用基板24が配置された成膜空間に、成膜用ガスが導入される。
この後、成膜用基板24は成膜される。具体的には、成膜空間内のガスを用いてプラズマを生成し、プラズマから生成される成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を成膜用基板24に噴射し成膜する。より具体的には、成膜空間内のガスを吸引し、ラジカル分子あるいはラジカル原子を噴射する力を生成する。すなわち、プラズマアクチュエータを用いて、プラズマの生成と誘起流れを生じさせる。さらに、同時に、ラジカル分子あるいはラジカル原子を生成するために、プラズマ生成素子を用いて、成膜用ガスからプラズマを生成させる。
【0056】
このとき、誘起流れを生じさせる力の調整と、プラズマの強度の調整とは個別に行われる。誘起流れはプラズマアクチュエータのみで発生し、プラズマの強度の調整は、プラズマアクチュエータ及びプラズマ生成素子で発生する。したがって、誘起流れを生じさせる力の調整は、プラズマアクチュエータに供給する電力、具体的には、電圧パルスのパルス数やパルス幅を制御することで行われる。一方、プラズマの強度の調整は、プラズマアクチュエータ及びプラズマ生成素子に供給する電力、具体的には、電圧パルスの単位時間当たりのパルス数やパルス幅を制御することで行われる。
【0057】
したがって、誘起流れを生じさせる力の調整と、プラズマの強度の調整とは個別に行うことができる。誘起流れを生じさせる力は、プラズマから生成されるラジカル分子やラジカル原子の噴射速度に対応するため、プラズマアクチュエータに供給する電力を制御することで、ラジカル分子やラジカル原子の噴射量を制御することができる。
プラズマの強度は、プラズマから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度に対応するため、プラズマアクチュエータ及びプラズマ生成素子に供給する電力を制御することで、ラジカル分子やラジカル原子の密度を制御することができる。
【0058】
以上、本実施形態成膜装置及び成膜方法は、プラズマアクチュエータ35とプラズマ生成素子37を用いる。このプラズマアクチュエータ35とプラズマ生成素子37は、成膜用基板24の面の垂直方向に縦列に設けられ、インジェクタ32から噴射する成膜成分のラジカル分子あるいはラジカル原子を成膜用基板24に噴射して成膜するので、プラズマから生成されるラジカル分子やラジカル原子の密度と噴射速度を別々に調整することができる。
【0059】
以上、本発明の成膜装置及び成膜方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。