特許第5918406号(P5918406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特許5918406ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法
<>
  • 特許5918406-ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法 図000003
  • 特許5918406-ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法 図000004
  • 特許5918406-ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5918406
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/00 20160101AFI20160428BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H02P7/36 302H
   H02P7/63 302C
   H02P7/63 303V
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-31060(P2015-31060)
(22)【出願日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 弘一
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 透
(72)【発明者】
【氏名】飯島 直樹
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−327375(JP,A)
【文献】 特開2012−249494(JP,A)
【文献】 特開2010−119253(JP,A)
【文献】 特開2007−143332(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0052379(US,A1)
【文献】 特開2011−069294(JP,A)
【文献】 特開2000−341960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/00
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライ真空ポンプと、
前記ドライ真空ポンプを駆動するモータと、
前記モータに可変周波数の交流電力を供給しモータの回転速度を制御するインバータと、
前記インバータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、停電時にモータ側で発生する回生電力を前記インバータのスイッチング素子で消費し、停電からの復電時にモータからの回生電力と商用電源から供給されるモータ駆動用電力とが重畳されるように、前記インバータのスイッチング素子をオンオフさせる制御を行うことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項2】
前記インバータは、前記スイッチング素子の定格電流が汎用インバータのスイッチング素子の定格電流の1.5倍〜3.0倍であるインバータであることを特徴とする請求項1記載のドライ真空ポンプ装置。
【請求項3】
ドライ真空ポンプと、前記ドライ真空ポンプを駆動するモータと、前記モータに可変周波数の交流電力を供給しモータの回転速度を制御するインバータとを備えたドライ真空ポンプ装置の制御方法において、
停電時にモータ側で発生する回生電力を前記インバータのスイッチング素子で消費し、停電からの復電時にモータからの回生電力と商用電源から供給されるモータ駆動用電力とが重畳されるように、前記インバータのスイッチング素子をオンオフさせる制御を行うことを特徴とするドライ真空ポンプ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ真空ポンプ装置およびその制御方法に係り、特に1秒以下程度の短時間に発生する停電を指す、「瞬停」等の停電後、真空ポンプの回転を直ちに再起動できるドライ真空ポンプ装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶、太陽光パネル、LED等の生産ラインにおいて、各種処理を行うチャンバ内を真空排気するためにドライ真空ポンプ装置が広く使用されている。ドライ真空ポンプ装置が、1秒以下程度の短時間に発生する停電を指す、「瞬停」等の停電によってポンプ運転制御が停止すると、真空ポンプの排気によって実現されていたチャンバの内圧が上昇し、チャンバ内のプロセス条件変化が発生する事で製造処理を続行することができず、生産ラインが停止する。停電によるドライ真空ポンプ装置のポンプ運転制御停止時間が長引くほど、甚大な被害につながるため、復電後は直ちにドライ真空ポンプ装置を再起動することが望まれる。
【0003】
一般的に、ドライ真空ポンプ装置は、ドライ真空ポンプと、ドライ真空ポンプを駆動するモータと、モータの回転速度(回転周波数)を制御するインバータと、インバータの動作を制御する制御装置とを備え、モータに可変周波数の交流電力を供給することにより、ドライ真空ポンプの運転速度を制御するようにしている。
【0004】
上述したインバータを備えたドライ真空ポンプ装置において、停電によってインバータ装置から真空ポンプ駆動モータへの電力供給が停止するため、真空ポンプとしては運転停止状態になり、ポンプ駆動モータは減速状態となる。
その後、入力電源が復電すると、直後にインバータ装置の出力制御は機能回復するが、特にロータ側に永久磁石を用いた、直流無整流子電動機の場合、このポンプモータが回転状態にある時、インバータ出力を再開しようとすると、あたかもこのモータ自身がインバータ出力端子側に電力を供給する発電機であるかのごとく、大きな回生電力が発生する。
【0005】
この回生電力はインバータ出力端子に発生するため、インバータとしてみると、インバータ自身がモータへ供給すべき電力に重畳してモータからの回生電力を制御する事となるため、インバータが処理すべき電力は、通常使用の領域を超えて制御する事になる。このためインバータ内部にあるスイッチング素子に対しては、通常使用以上の電力・電流が供給される場合があるため、回生電力発生時に故障を誘発する可能性がある。このスイッチング素子を保護するための手段として、一般的な手法では回生電力消費用の回生抵抗を設け、回生分の電力をこの抵抗により熱放散させる方法や、回生抵抗を設けずに、回生電力を電源側(入力側)に戻す制御を行う方法、或いは、モータが所定の回転数以下になるまで、インバータ制御は復帰せず、回生電力をモータ減速より自然減衰させる方法が提唱されている。
【0006】
しかしながら、回生電力を回生抵抗で消費するように構成する場合には、回生抵抗および回生抵抗に回生電流を流すためのスイッチング機構が必要となる。そのため、部品点数が多くなり、インバータ装置全体が大型化し且つコストが上昇するという課題点がある。
また、回生電力を電源側(入力側)に戻す制御を行う場合には、インバータ内のスイッチング素子等のパワーデバイスの制御が難しく、制御用回路を設けるコストも上昇するので、回生電力を入力側に返す制御にも課題点がある。
【0007】
そこで、上述の問題点を解消し装置コストの上昇を避けるために、通常、ドライ真空ポンプ装置においては、停電時に、回生電力がインバータ側に返らないよう、ポンプ・モータが所定の回転数以下になるまで、インバータ制御は復帰せず、回生電力をモータ減速にて自然消費させ、ポンプ・モータが所定の回転数以下になった後、ドライ真空ポンプを再起動するようにしている。
ドライ真空ポンプでは、定格回転数で運転中に停電が発生した場合、ポンプケーシング内の圧力が非常に低く保たれている場合があり、インバータからの駆動電流供給が停止した場合にも、短時間では回転減速が発生せず、ほぼ定格回転数で回転継続している場合がある。
【0008】
この状態にあって復電し、ポンプモータに通電を再開すると、モータが発電機として機能するため、インバータ出力端子には回生電力が発生する。この回生電力によりインバータ出力端子に発生する電流は、モータ駆動時にインバータが出力する電流とほぼ同等の電流が発生する可能性がある。したがって、インバータ側スイッチング素子は、通常出力する電流の2倍程度の電流が処理可能で無ければならない。
一般的なインバータ装置を使ったドライ真空ポンプでは、この回生電力が発生する事を避けるため、停電発生後の復電動作ではポンプモータの回転が充分に低下し、回生電力が発生しない条件に達するのを待って、インバータ側の出力を開始する方法が使われている。
【0009】
また、半導体製造装置に対して、ドライ真空ポンプを使用する場合、半導体製造装置業界標準として制定されているSEMI規格にて、瞬時停電に関する規定が有り、1秒以内の停電発生時には通常通りの運転継続と復電時には速やかなポンプ回転復帰が求められている。
したがって、半導体製造装置向けのドライ真空ポンプでは、停電発生復電後のポンプモータ復帰に対する制御方法が、大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−110139号公報
【特許文献2】特開2011−69294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したように回生電力がモータ側で消費されるまでドライ真空ポンプの再起動を待つという方法では、ドライ真空ポンプが減速している間にチャンバの内圧が上昇し、プロセス条件が悪化するため、生産ラインに与える影響が大きすぎるという問題点がある。
そのため、本発明者らは、停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータのパワーデバイスで消費しつつ、1秒以内の短時間に復電した場合は、直ちにインバータに電力を供給し、ドライ真空ポンプを再起動する方策について検討を重ねたものである。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータのパワーデバイスで消費しつつ復電後に直ちに電源から電力をインバータに供給することを可能とし、復電後に直ちに真空ポンプを再起動することが可能なドライ真空ポンプ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明のドライ真空ポンプ装置の第1の態様は、ドライ真空ポンプと、前記ドライ真空ポンプを駆動するモータと、前記モータに可変周波数の交流電力を供給しモータの回転速度を制御するインバータと、前記インバータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、停電時にモータ側で発生する回生電力を前記インバータのスイッチング素子で消費し、停電からの復電時にモータからの回生電力と商用電源から供給されるモータ駆動用電力とが重畳されるように、前記インバータのスイッチング素子をオンオフさせる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記インバータは、前記スイッチング素子の定格電流が汎用インバータのスイッチング素子の定格電流の1.5倍〜3.0倍であるインバータであることを特徴とする。
【0015】
本発明のドライ真空ポンプ装置の制御方法は、ドライ真空ポンプと、前記ドライ真空ポンプを駆動するモータと、前記モータに可変周波数の交流電力を供給しモータの回転速度を制御するインバータとを備えたドライ真空ポンプ装置の制御方法において、停電時にモータ側で発生する回生電力を前記インバータのスイッチング素子で消費し、停電からの復電時にモータからの回生電力と商用電源から供給されるモータ駆動用電力とが重畳されるように、前記インバータのスイッチング素子をオンオフさせる制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータのパワーデバイスで消費しつつ復電後に直ちに電源から電力をインバータに供給することが可能であるため、復電後に直ちにドライ真空ポンプを再起動することが可能である。従って、ドライ真空ポンプによって排気されるチャンバの内圧の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係るドライ真空ポンプ装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2(a),(b)は、従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御と本発明によるドライ真空ポンプの制御を対比して示すグラフであり、図2(a)は従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御を示し、図2(b)は本発明によるドライ真空ポンプ装置の制御を示す。
図3図3(a),(b)は、従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御と本発明によるドライ真空ポンプ装置の制御を示すグラフであり、図3(a)は従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御を示し、図3(b)は本発明によるドライ真空ポンプ装置の制御を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るドライ真空ポンプ装置およびその制御方法の実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。図1乃至図3において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係るドライ真空ポンプ装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、ドライ真空ポンプ装置は、ドライ真空ポンプ1と、ドライ真空ポンプ1を回転駆動するモータ2と、モータ2の回転速度を制御するモータドライバ3と、モータドライバ3の動作を制御する制御装置4とを備えている。モータドライバ3は、ブレーカ6を介して商用電源等のAC電源7に接続されている。ドライ真空ポンプ1の吸気口は半導体製造装置等のチャンバ5に接続されており、チャンバ5内をドライ真空ポンプ1により真空排気するように構成されている。
【0019】
モータドライバ3は、AC電源7から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータ10と、変換された直流電力を所望の周波数を有する交流電力に変換するインバータ11と、インバータ11のスイッチング素子S1〜S6のON−OFF動作を指令するゲートドライブ信号をインバータ11に送るドライバ制御部12とを備えている。コンバータ10には、電圧を平滑化するためのコンデンサC1が備えられている。
【0020】
ドライバ制御部12は、ドライ真空ポンプ1の運転指令速度等に基づいてPWM信号を生成し、これをインバータ11に送信する。制御装置4は、ドライバ3全体の動作を制御し、さらに外部の上位機器との通信をするように構成されている。ドライバ制御部12は、モータ2の運転情報として、モータドライバ3からモータ2に供給される電流値を受け取り、この電流値からモータ2の回転速度を算出し、予め定められた目標回転速度と算出された回転速度との差に基づいてPWM信号を生成し、これをモータドライバ3のインバータ11に送信する。インバータ11はPWM信号に従ってスイッチング素子S1〜S6を駆動し、モータ2を目標回転速度で回転させるための入力電圧をモータ2に印加する。さらに、制御装置4は、ユーザの操作に従ってドライ真空ポンプ1の起動信号および停止信号をドライバ制御部12に送信するように構成されている。
【0021】
図1に示すように構成されたドライ真空ポンプ装置において、瞬停等の停電時には、ドライ真空ポンプ1が運転停止になるが、この運転停止時の減速に伴い、モータ2において回生電力が発生する。この回生電力はインバータ11に返ってくる。
本発明においては、停電後の復電時に制御装置4からモータドライバ3にドライ真空ポンプ1の起動信号を送信、或いは停電最中も起動信号を送信し続け、AC電源7からインバータ11にモータ駆動用電力を供給するように構成しているため、インバータ11にはモータ2からの回生電力とAC電源7から供給されるモータ駆動用電力とが重畳されることになる。すなわち、インバータ11には、モータ2からの回生電流とAC電源7からのモータ駆動用電流とが重畳されることになるため、この重畳される大きな電流にインバータ11が耐えられるようにする必要がある。そのため、本発明においては、インバータのスイッチング素子の定格電流について、汎用インバータの定格電流よりも大きい定格電流の専用インバータを用いている。
【0022】
汎用インバータの定格電力と、使用するスイッチング素子の定格電流仕様の関係は、インバータメーカ各社で独自の計算方法を採用しているが、表1は、その一例と、本発明で用いる専用インバータとの比較対比表である。
【表1】
表1では、スイッチング素子の定格電流について、インバータの定格電力毎に、汎用インバータと専用インバータとを比較対比している。表1から明らかなように、本発明においては、スイッチング素子の定格電流(設定)について、汎用インバータの1.5倍〜2.5倍の専用インバータを用いている。本発明者らの知見によれば、汎用インバータに対する本発明の専用インバータの定格電流比は、1.5倍〜2.5倍に限らず、1.5倍〜3.0倍程度の範囲であればよい。
【0023】
このように、インバータ11を大電流に耐えられるインバータで構成することにより、停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータ11のパワーデバイスで消費しつつAC電源7から電力をインバータ11に供給することにより、1秒以内の短時間の停電発生、復電後は直ちにドライ真空ポンプ1を再起動することが可能である。
【0024】
図2(a),(b)は、従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御と本発明によるドライ真空ポンプ1の制御を対比して示すグラフであり、図2(a)は従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御を示し、図2(b)は本発明によるドライ真空ポンプ装置1の制御を示す。図2(a),(b)において、横軸は時間(t)を示し、1秒は1sで示す。縦軸は、インバータへの入力電圧(V)、インバータ出力、ポンプ回転数(rpm)およびチャンバ内圧を示す。
図2(a)に示すように、従来技術においては、瞬停によってインバータへの入力電圧がOFFになると、インバータ出力もOFFになる。瞬停後に復電しても、モータの回転数が低下し、回生電力が発生しない、もしくは、発生する回生電力が十分に小さくなるのを待つため、インバータ出力OFFの状態は1秒近く継続する。インバータ出力がOFFの間に、ポンプ回転数は低下し、チャンバ内圧は上昇する。図2(a)においては瞬停の時間が短い場合と、やや長い場合と、中間の場合の三つの態様が示されているが、瞬停の時間の長短に拘わらずインバータ出力は約1秒間OFFとなり、いずれの態様においてもポンプ回転数の低下度合およびチャンバ内圧の上昇度合は概略同一である。
【0025】
図2(b)に示すように、本発明においては、瞬停によってインバータへの入力電圧がOFFになるとインバータ出力もOFFになるが、復電すると、モータの回転数低下によって発生する回生電力が低下するのを待つことなく、直ちにインバータ出力はONになる。図2(b)においても、瞬停の時間が短い場合と、やや長い場合と、中間の場合の三つの態様が示されているが、いずれの態様においても復電すると直ちにインバータ出力はONになる。このように、復電後にインバータ出力が直ちにONになるために、ポンプ回転数の低下およびチャンバ内圧の上昇は抑制される。
【0026】
図3(a),(b)は、従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御と本発明によるドライ真空ポンプ装置1の制御を示すグラフであり、図3(a)は従来技術によるドライ真空ポンプ装置の制御を示し、図3(b)は本発明によるドライ真空ポンプ装置1の制御を示す。図3(a),(b)において、横軸は時間(t)を示し、1秒は1sで示す。縦軸は、インバータへの入力電圧(V)、インバータ出力、ポンプ回転数(rpm)およびチャンバ内圧を示す。
図3(a)に示すように、従来技術においては、短時間の間に瞬停が繰返し起こると(図では、瞬停が1秒おきに三回繰返し起こった場合を示す)、最初の瞬停でインバータへの入力電圧がOFFになると、インバータ出力はOFFとなり、その後一時的に復電しても、発生する回生電力の低下を待つため次の瞬停までにインバータ出力がONになることはなく、インバータ出力は最後の瞬停までOFF状態が続く。最後の瞬停後に復電すると時間遅れをもってインバータ出力はONとなる。このように、短時間の間に瞬停が繰返し起こると、インバータ出力は、かなり長い時間(図示例では3秒)に亘ってOFF状態になる。その間、ポンプ回転数は低下し続け0rpmまで低下する。そのため、チャンバ内圧は最高レベル(High)まで上昇する。
【0027】
図3(b)に示すように、本発明においては、短時間の間に瞬停が繰返し起こると(図では、瞬停が1秒おきに三回繰返し起こった場合を示す)、インバータへの入力電圧がその都度OFFになり、インバータ出力はその都度OFFになるが、回生電力が低下するのを待つことがないため、復電するとインバータ出力は、瞬停の時間の長短に拘わらずいずれの場合も直ちに回復してONになる。瞬停が起こるとポンプ回転数はその都度僅かに低下するが、復電すると直ちにインバータ出力が回復するため、ポンプ回転数の低下度合は少なく、またチャンバ内圧の上昇度合も僅かである。そのため、インバータ出力の回復とともにチャンバ内圧は最低レベル(Low)に直ちに到達する。このように本発明によれば、停電によってインバータ出力がOFFになっても、復電後直ちにインバータ出力をONにすることが可能であり、真空ポンプの回転数が定格回転数にわずかな時間で回復するため、チャンバ内圧の変動を抑制することができる。
【0028】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 ドライ真空ポンプ
2 モータ
3 モータドライバ
4 制御装置
5 チャンバ
6 ブレーカ
7 AC電源
10 コンバータ
11 インバータ
12 ドライバ制御部
C1 コンデンサ
S1〜S6 スイッチング素子
【要約】
【課題】停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータのパワーデバイスで消費しつつ復電後に直ちに電源から電力をインバータに供給することを可能とし、復電後に直ちに真空ポンプを再起動することが可能なドライ真空ポンプ装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】ドライ真空ポンプ1と、ドライ真空ポンプ1を駆動するモータ2と、モータ2に可変周波数の交流電力を供給しモータ2の回転速度を制御するインバータ11と、インバータ11を制御する制御装置4とを備え、制御装置4は、停電時にモータ側で発生する回生電力をインバータ11のパワーデバイスで消費しつつ、復電直後からインバータ11からモータ2への駆動電力を供給するようにインバータ11を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3