特許第5918639号(P5918639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000002
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000003
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000004
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000005
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000006
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000007
  • 特許5918639-ウェーハの処理方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918639
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ウェーハの処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   H01L21/52 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-141672(P2012-141672)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-7271(P2014-7271A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】淀 良彰
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135102(JP,A)
【文献】 特開平08−088200(JP,A)
【文献】 特開2008−141135(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0155638(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0021608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインに区画され複数のデバイスが形成されたウェーハの裏面にダイボンディング用の接着剤被膜を形成するウェーハの処理方法であって、
保護テープで保護された前記ウェーハの表面側を保持テーブルに保持し、少なくとも前記分割予定ラインに対応する裏面に外的刺激により硬化する液状樹脂を塗布し、外的刺激を加えて前記液状樹脂を硬化することで複数のデバイス以外の箇所にマスキング部材を形成するマスク形成工程と、
前記マスク形成工程を実施した後に、マスクが形成されていない複数のデバイスの裏面にダイボンディング用の液状接着剤を均一な厚みで塗布し、ウェーハの複数のデバイスの裏面を接着剤被膜で被覆する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程を実施した後、接着剤被膜を硬化させる接着剤被膜硬化工程と、
前記接着剤被膜硬化工程を実施した後、前記マスキング部材をウェーハ裏面から剥離するマスク除去工程と、から構成されるウェーハの処理方法。
【請求項2】
前記ウェーハ表面は、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、前記デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とから構成され、
前記マスキング部材の外周には前記外周余剰領域の形状に合わせて成形されたマスク用テープを備えることを特徴とする請求項1記載のウェーハの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの裏面側にダイボンディング用の接着層を形成するウェーハの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの形成されたウェーハは、例えば、表面の分割予定ラインに沿って切削され、各チップに分割される。分割されたチップの裏面には、チップをフレームなどに固定(ボンディング)させるための接着層が形成される。この接着層をフレームに接触させて熱や光などの外的刺激を加えることで、接着層は硬化され、チップはフレームに固定される。接着層としては、一般に、ダイボンディング用の接着フィルム(DAF:Die Attach Film)が用いられる。
【0003】
接着フィルムをチップの裏面に貼着させる方法として、チップに分割される前のウェーハの裏面に接着フィルムを貼着させた後、ウェーハと共に接着フィルムを切削させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、ウェーハの裏面に貼着された接着フィルムは、ウェーハと共に切削されるので、適切なサイズの接着フィルムを裏面に貼着されたチップが実現される。
【0004】
また、DBG(Dicing Before Grinding)プロセスで分割された各チップに接着フィルムを貼着させる方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、分割後のウェーハの裏面に接着フィルム及びエキスパンドテープを貼着させ、表面側から紫外光を照射させて、チップ間に位置する接着フィルムの一部を硬化させる。その後、エキスパンドテープを拡張させれば、硬化された領域で接着フィルムは破断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−182995号公報
【特許文献2】特開2008−235650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、チップの仕様によっては、ある程度の厚みのある接着フィルム(例えば、50μm以上)が必要になる場合もある。しかしながら、特許文献1のように、ウェーハと共に接着フィルムを切削させる方法では、接着フィルムが厚くなると、切削時に接着フィルムからヒゲ状の屑が発生して接着フィルム及びチップの品質は低下されてしまう。また、特許文献2のように、エキスパンドテープを拡張させて接着フィルムを破断させる方法では、接着フィルムが厚くなると、接着フィルムを適切なサイズに破断させることができなくなる恐れがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、良質な接着層をチップの裏面側に適切なサイズで形成可能なウェーハの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウェーハの処理方法は、表面に複数の分割予定ラインに区画され複数のデバイスが形成されたウェーハの裏面にダイボンディング用の接着剤被膜を形成するウェーハの処理方法であって、保護テープで保護された前記ウェーハの表面側を保持テーブルに保持し、少なくとも前記分割予定ラインに対応する裏面に外的刺激により硬化する液状樹脂を塗布し、外的刺激を加えて前記液状樹脂を硬化することで複数のデバイス以外の箇所にマスキング部材を形成するマスク形成工程と、前記マスク形成工程を実施した後に、マスクが形成されていない複数のデバイスの裏面にダイボンディング用の液状接着剤を均一な厚みで塗布し、ウェーハの複数のデバイスの裏面を接着剤被膜で被覆する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程を実施した後、接着剤被膜を硬化させる接着剤被膜硬化工程と、前記接着剤被膜硬化工程を実施した後、前記マスキング部材をウェーハ裏面から剥離するマスク除去工程と、から構成されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、デバイスに対応する領域以外を覆うマスキング部材をウェーハの裏面側に形成することで、ウェーハの裏面側のデバイスに対応する領域のみにダイボンディング用の接着剤被膜を形成できる。つまり、従来のように、切削による接着フィルム分断や、拡張による接着フィルムの破断の必要がないので、良質な接着層をチップの裏面側に適切なサイズで形成できる。
【0010】
また、本発明のウェーハの処理方法において、前記ウェーハ表面は、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、前記デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とから構成され、前記マスキング部材の外周には前記外周余剰領域の形状に合わせて成形されたマスク用テープを備えることが好ましい。この構成によれば、マスキング部材の外周にマスク用テープを備えるので、マスク用テープとマスキング部材とを一体にして容易に剥離させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良質な接着層をチップの裏面側に適切なサイズで形成可能なウェーハの処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係るウェーハの処理方法の対象となるウェーハの構成例を示す斜視図である。
図2】マスク形成工程中のマスク用テープ貼着ステップを説明するための模式図である。
図3】マスク形成工程中のマスキング部材形成ステップを説明するための模式図である。
図4】接着剤塗布工程を説明するための断面模式図である。
図5】接着剤被膜硬化工程を説明するための断面模式図である。
図6】マスク除去工程を説明するための断面模式図である。
図7】ウェーハの分割方法について説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るウェーハの処理方法は、マスク形成工程、接着剤塗布工程、接着剤被膜硬化工程、及びマスク除去工程を含む。マスク形成工程では、デバイスに対応する領域以外を覆うマスキング部材をウェーハの裏面側に形成する。接着剤塗布工程では、マスキング部材が形成されていないウェーハの裏面側の領域に液状接着剤を塗布して接着剤被膜を形成する。接着剤被膜硬化工程では、接着剤塗布工程で形成された接着剤被膜を硬化させる。マスク除去工程では、マスキング部材をウェーハの裏面側から剥離除去する。
【0014】
本実施の形態に係るウェーハの処理方法では、デバイスに対応する領域以外を覆うマスキング部材をウェーハの裏面側に形成することで、ウェーハの裏面側のデバイスに対応する領域にダイボンディング用の接着剤被膜を形成できる。つまり、本実施の形態に係るウェーハの処理方法では、従来のように、切削による接着フィルムの分断や、拡張による接着フィルムの破断の必要がないので、良質な接着層をチップの裏面側に適切なサイズで形成できる。以下、本実施の形態に係るウェーハの処理方法の詳細について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係るウェーハの処理方法の対象となるウェーハWの構成例を示す斜視図である。図1に示すように、ウェーハWは、略円板状の外形形状を有している。ウェーハWの表面W1は、格子状に配列されたストリートによって複数の領域に区画されている。ウェーハWの表面W1側において、ストリートで区画された各領域には、それぞれデバイスDが形成されている。本実施の形態では、便宜上、ウェーハWの表面W1側において、上述のように複数のデバイスDが形成される領域をデバイス領域A1と呼び、デバイス領域A1を囲繞する領域を外周余剰領域A2と呼ぶ。
【0016】
本実施の形態に係るウェーハの処理方法では、まず、マスク形成工程が実施される。マスク形成工程は、ウェーハWの裏面側にマスク用テープを貼着させるマスク用テープ貼着ステップと、ウェーハWの裏面側においてマスク用テープの貼着されていない領域にマスキング部材が形成されるマスキング部材形成ステップとを含む。図2は、マスク形成工程中のマスク用テープ貼着ステップを説明するための模式図である。図3は、マスク形成工程中のマスキング部材形成ステップを説明するための模式図である。
【0017】
マスク用テープ貼着ステップでは、図2に示すように、外周余剰領域A2に対応する裏面W2側の領域A4に、外周余剰領域A2の形状に合わせて成形されたマスク用テープT2を貼着させる。マスク用テープT2は、デバイス領域A1の形状に対応する開口部T2aを有している。このため、マスク用テープT2の貼着後には、開口部T2aから、デバイス領域A1に対応する裏面W2側の領域A3が表出される。なお、マスク用テープ貼着ステップは、オペレータの手作業で行われても良いし、貼着装置(不図示)を用いて行われても良い。ウェーハWの裏面にマスク用テープT2が貼着されると、マスク用テープ貼着ステップは終了する。
【0018】
マスク用テープ貼着ステップに続いて、マスキング部材形成ステップが行われる。なお、マスキング部材形成ステップの前には、保護部材となる保護テープT1(図2参照)をウェーハWの表面W1に貼着させておく。保護テープT1の貼着も、オペレータの手作業又は貼着装置(不図示)で行われる。マスク用テープT2及び保護テープT1を貼着されたウェーハWは、図3に示すように、マスキング部材を形成するためのマスク形成装置1に搬送される。
【0019】
マスク形成装置1は、ウェーハWを保持する保持テーブル11を備えている。保持テーブル11の上方には、ノズル12が設けられている。保持テーブル11及びノズル12は、移動機構及び回転機構(いずれも不図示)によって相対移動される。また、ノズル12は、光や熱などの外的刺激を加えられることで硬化される液状樹脂REを、保持テーブル11に保持されるウェーハWに向けて吐出可能に構成されている。
【0020】
マスキング部材形成ステップにおいては、まず、表面W1が下向きとなるようにウェーハWを保持テーブル11に保持させて、分割予定ラインに対応する位置にノズル12を位置合わせさせる。この位置合わせは、保持テーブル11の上方に設けられた赤外線カメラ(不図示)を用いて行われる。具体的には、赤外線カメラによりウェーハWの裏面W2側(上方)からウェーハWの表面W1側のアライメントパターンを撮像させ、保持テーブル11とノズル12とを撮像された画像に基づいて相対移動させる。
【0021】
位置合わせ後には、図3Aに示すように、ノズル12からマスキング部材の原料となる液状樹脂REを吐出させて、ウェーハWをX軸方向に相対移動させる。これにより、ウェーハWの第1の方向に延びる分割予定ラインに沿って液状樹脂REが塗布される。ここで、相対移動の速度や液状樹脂REの吐出量などは、液状樹脂REにより形成されるパターンの幅が一定になるように設定される。また、液状樹脂REの粘度などは、任意の厚みのパターンを形成することができるように調整される。
【0022】
次に、液状樹脂REの吐出を停止させ、ウェーハWをY軸方向に所定距離だけ相対移動させた後に、ノズル12から液状樹脂REを吐出させて、ウェーハWをX軸方向に相対移動させる。これにより、隣接する別の分割予定ラインに沿って液状樹脂REが塗布される。この動作が繰り返されることで、ウェーハWにおいて第1の方向に延びる全ての分割予定ラインに沿って液状樹脂REは塗布される。
【0023】
その後、保持テーブル11を90度回転させて、第1の方向と直交する第2の方向に延びる分割予定ラインに沿って液状樹脂REを塗布させる。ウェーハWの裏面W2において、領域A4はマスク用テープT2で覆われている(図2参照)。このため、液状樹脂REは、マスク用テープT2で覆われていない領域A3のみに塗布される。塗布された液状樹脂REにより、領域A3内において分割予定ラインに対応する領域は覆われる。デバイスDに対応する領域は、表出された状態で維持される。
【0024】
液状樹脂REの塗布開始位置及び塗布終了位置は、マスク用テープT2と重なる位置に設定されることが好ましい。ノズル12からの液状樹脂REの吐出量は、吐出の開始される塗布開始位置及び吐出の終了される塗布終了位置において大きく変動される。このため、塗布開始位置及び塗布終了位置をマスク用テープT2と重なる位置に設定することで、ノズル12からの吐出量が不安定な状態での領域A3への塗布を避けることができる。つまり、領域A3への液状樹脂REの吐出量を安定させることができるので、液状樹脂REにより形成されるパターンの幅及び高さの均一性を高めることができる。
【0025】
塗布された液状樹脂REに光や熱などの外的刺激が加えられると、液状樹脂REは硬化され、図3Bに示すように、格子状のマスキング部材M1が形成される。上述のように、デバイスDに対応する領域は、表出された状態で維持されている。このため、マスキング部材M1は、デバイスDに対応する領域以外を覆うように形成される。このマスキング部材M1の端部は、マスク用テープT2と接着される。また、マスキング部材M1は、マスク用テープT2と共に、接着層となる接着剤被膜を形成する際のマスクとして機能される。マスキング部材M1が形成されると、マスキング部材形成ステップ及びマスク形成工程は終了する。
【0026】
マスク形成工程の後には、接着剤塗布工程が行われる。図4は、接着剤塗布工程を説明するための断面模式図である。接着剤塗布工程は、液状接着剤を塗布するための接着剤塗布装置2を用いて行われる。接着剤塗布装置2は、ウェーハWを保持して高速回転させるスピンナテーブル21を備えている。スピンナテーブル21の上方には、ノズル22が設けられている。ノズル22は、ダイボンディング用の接着層の原料となる液状接着剤ADを、スピンナテーブル21に保持されるウェーハWに向けて吐出可能に構成されている。
【0027】
接着剤塗布工程においては、まず、表面W1が下向きとなるようにウェーハWをスピンナテーブル21に保持させる。そして、スピンナテーブル21を高速回転させて、ウェーハの中央付近にノズル22を位置付けさせる。この状態で、図4Aに示すように、ノズル22からウェーハWの裏面W2に向けて液状接着剤ADを吐出させると、液状接着剤ADは、回転の遠心力によって径方向外向きに拡がるようにウェーハWの裏面W2に塗布される。その結果、図4Bに示すように、ウェーハWの裏面W2には、均一な厚みの接着剤被膜F1が形成される。
【0028】
液状接着剤ADとしては、光や熱などの外的刺激を加えられると硬化される液状樹脂を用いることができる。本実施の形態では、液状接着剤ADとして、紫外光を照射されると硬化される紫外線硬化樹脂を用いる。スピンナテーブル21の回転速度、液状接着剤ADの吐出量、液状接着剤ADの粘度などは、均一な厚みの接着剤被膜F1を形成できるように設定される。なお、後のマスク除去工程でマスキング部材M1が容易に剥離除去されるように、液状接着剤ADとしては、マスキング部材M1との接着性が低い液状樹脂を用いるのが好ましい。
【0029】
ウェーハWの裏面W2において、領域A4には、マスク用テープT2が貼着されている。また、領域A3において、分割予定ラインに対応する領域には、マスクとして機能するマスキング部材M1が形成されている。このため、ノズル22から吐出された液状接着剤ADは、マスキング部材M1及びマスク用テープT2で覆われていない領域に塗布される。すなわち、液状接着剤ADは、デバイスDに対応する領域のみに塗布される。図4Bに示すように、ウェーハWの裏面W2のデバイスDに対応する領域に接着剤被膜F1が形成されると、接着剤塗布工程は終了する。
【0030】
接着剤塗布工程の終了後には、接着剤被膜硬化工程が行われる。図5は、接着剤被膜硬化工程を説明するための断面模式図である。接着剤被膜硬化工程は、接着剤被膜F1に対して紫外光を照射させるための紫外光照射装置3を用いて行われる。紫外光照射装置3は、保持テーブル31に保持されるウェーハWに向けて紫外光UVを照射させる光源32を備えている。
【0031】
接着剤被膜硬化工程においては、表面W1が下向きとなるようにウェーハWを保持テーブル31に保持させて、光源32からウェーハWの裏面W2側に向けて紫外光UVを照射させる。紫外光UVの照射光量や照射時間などは、液状の接着剤被膜F1が半硬化状態となるように設定される。ここで、半硬化状態とは、完全に硬化される前の、ある程度の粘着性を有する状態をいう。図5に示すように、接着剤被膜F1が半硬化されて接着剤被膜F2が形成されると、接着剤被膜硬化工程は終了する。
【0032】
接着剤被膜硬化工程に続いて、マスク除去工程が行われる。図6は、マスク除去工程を説明するための模式図である。マスク除去工程は、保持テーブル41に保持されるウェーハWから、剥離装置(不図示)によりマスク用テープT2の端部を上方に引き上げるようにして行われる。マスク用テープT2とマスキング部材M1とは一体になっているので、マスク用テープT2の端部を上方に引き上げることで、マスク用テープT2とマスキング部材M1とは一度に剥離される。
【0033】
マスク用テープT2及びマスキング部材M1が剥離されると、図6に示すように、ウェーハWの裏面W2には各デバイスDに対応する領域に接着剤被膜F2が残存され、マスク除去工程は終了する。ウェーハWの表面W1に貼着されている保護フィルムT1は、マスク除去工程の終了後に剥離される。以上に説明したウェーハの処理方法によって、ウェーハWの裏面W2側にダイボンディング用の接着層として機能する接着剤被膜F2が形成される。
【0034】
次に、本実施の形態に係るウェーハの処理方法で処理されたウェーハWの分割方法について説明する。図7は、ウェーハWの分割方法について説明するための断面模式図である。以下において説明する分割方法は、内部に形成される改質層を分割起点としてウェーハWを分割させる方法であり、エキスパンドテープ貼着工程、改質層形成工程、及びエキスパンドテープ拡張工程を含む。なお、図7に示す分割方法は一例に過ぎず、他の分割方法を適用することも可能である。
【0035】
まず、エキスパンドテープ貼着工程が行われる。エキスパンドテープ貼着工程では、ウェーハWの表面W1にエキスパンドテープT3を貼着させる。エキスパンドテープT3を貼着されたウェーハWは、改質層を形成するためのレーザー加工装置5に搬送される。なお、エキスパンドテープ貼着工程は、オペレータの手作業で行われても良いし、貼着装置(不図示)を用いて行われても良い。
【0036】
レーザー加工装置5は、ウェーハWを保持する保持テーブル51を備えている。保持テーブル51の上方には、レーザー光線を射出する加工ヘッド52が設けられている。改質層形成工程では、図7に示すように、ウェーハWの表面W1側をチャックテーブル51に保持させて、加工ヘッド52の射出口をウェーハWの分割予定ラインに位置付けさせる。また、レーザー光線の集光点がウェーハWの内部に位置付けられるように光学系を調整する。この状態で、レーザー光線を発振させて、チャックテーブル51を分割予定ラインに沿って移動させる。その結果、ウェーハWの内部に分割予定ラインに沿う改質層Lが形成される。なお、集光点におけるレーザー光線のパワー密度は、アブレーションが生じない程度とする。
【0037】
改質層Lが形成された後には、エキスパンドテープ拡張工程が行われる。エキスパンドテープ拡張工程では、エキスパンドテープT3を拡張させてウェーハWに応力を加える。その結果、ウェーハWは、分割予定ラインに沿って形成された改質層Lを分割起点として各チップに分割される。以上により、接着層として機能する接着剤被膜F2が裏面に形成されたチップを得ることができる。
【0038】
このように、本実施の形態に係るウェーハの処理方法では、デバイスDに対応する領域以外を覆うマスキング部材M1をウェーハWの裏面W2側に形成することで、ウェーハWの裏面W2側のデバイスDに対応する領域にダイボンディング用の接着剤被膜F2を形成できる。つまり、本実施の形態に係るウェーハの処理方法では、切削によって接着フィルムを分断する必要はなく、拡張によって接着フィルムを破断する必要もないので、良質な接着層をチップの裏面側に適切なサイズで形成できる。本実施の形態に係るウェーハの処理方法は、厚い接着層を形成する場合に特に有効である。
【0039】
また、本発明のウェーハの処理方法では、外周余剰領域A2の形状に合わせて成形されたマスク用テープT2を用いるので、マスク用テープT2とマスキング部材M1とを一体にして容易に剥離させることができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、いわゆるスピンコート法を用いて液状接着剤を塗布させているが、液状接着剤の塗布方法はこれに限られない。例えば、スプレーコート法を用いることもできる。また、塗布された液状樹脂は、ヘラなどの平坦化部材を用いて平坦化されても良い。
【0041】
また、上記実施の形態では、内部に形成される改質層を分割起点としてウェーハを分割させる方法を例示しているが、ウェーハの分割方法はこれに限られない。切削ブレードを裏面側から切り込ませる方法でウェーハを分割させても良い。
【0042】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のウェーハの処理方法は、ウェーハの裏面側にダイボンディング用の接着層を形成する際に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 マスク形成装置
2 接着剤塗布装置
3 紫外光照射装置
11,31,41 保持テーブル
12,22 ノズル
21 スピンナテーブル
32 光源
A1 デバイス領域
A2 外周余剰領域
A3,A4 領域
AD 液状接着剤
D デバイス
F1,F2 接着剤被膜
M1 マスキング部材
RE 液状樹脂
T1 保護テープ
T2 マスク用テープ
T2a 開口部
UV 紫外光
W ウェーハ
W1 表面
W2 裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7