特許第5918916号(P5918916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5918916高周波クロックの低ノイズクロッキングのための状態機械
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5918916
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】高周波クロックの低ノイズクロッキングのための状態機械
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/135 20060101AFI20160428BHJP
   G06F 1/08 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H03K5/135
   G06F1/08 510
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-559254(P2015-559254)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】US2014015005
(87)【国際公開番号】WO2014130255
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】13/776,489
(32)【優先日】2013年2月25日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591016172
【氏名又は名称】アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
(73)【特許権者】
【識別番号】316001272
【氏名又は名称】スティーブン ジェイ. コムラスチ
(73)【特許権者】
【識別番号】316001283
【氏名又は名称】ジーニョ ユスフォヴィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ. コムラスチ
(72)【発明者】
【氏名】ジーニョ ユスフォヴィック
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161051(JP,A)
【文献】 特開2009−33904(JP,A)
【文献】 特開2000−222061(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/056835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/135
G06F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の速度を有するクロックを第2の速度へ調整するための信号を受信することであって、前記第1の速度はゼロであり、前記第2の速度は基準クロック速度であり、前記第1の速度、前記第2の速度および第3の速度は、前記第1の速度が第1の乗数を基準クロック速度で乗算した値に等しく、前記第2の速度が第2の乗数を前記基準クロック速度で乗算した値に等しく、前記第3の速度が第3の乗数を前記基準クロック速度で乗算した値に等しくなるような、前記基準クロック速度に関連する、ことと、
前記信号の受信に応じて前記クロックを前記第1の速度から前記第2の速度へランプさせることと、
前記クロックを、前記基準クロック速度/2に等しい第3のクロック速度から前記第2の速度にディザーアップすることと、
前記第2の速度で前記クロックを動作することと、
を含み、
前記ランプさせることは、前記クロックの周波数を、前記第1の速度と前記第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度へ変更することを含む、
方法。
【請求項2】
前記クロックの周波数を変更することは、前記第1の速度の乗数を変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の乗数、前記第2の乗数および前記第3の乗数の各々は、独立して、0〜約10の整数、または、1〜約10の整数の逆数である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ランプさせることは、前記クロックの周波数を、複数の第3の速度の各々に順次変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の第3の速度は、乗数1/7、1/6、1/5、1/4、1/3および1/2によって前記第2の速度に関連し、前記第1の速度は、乗数0によって前記第2の速度に関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記クロックは、前記基準クロックの10サイクルから100サイクルまでにおいて、前記第1の速度から前記第2の速度へランプされる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ランプさせることは、前記クロックを、前記基準クロック速度/7から前記基準クロック速度/2にランプアップすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の速度を有するクロックであって、第2の速度と、前記第1の速度と前記第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度と、に調整することが可能なクロックと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
1の速度を有するクロックを第2の速度へ調整するするための信号を受信することであって、前記第1の速度はゼロであり、前記第2の速度は基準クロック速度であり、前記第1の速度、前記第2の速度および第3の速度は、前記第1の速度が第1の乗数を基準クロック速度で乗算した値に等しく、前記第2の速度が第2の乗数を前記基準クロック速度で乗算した値に等しく、前記第3の速度が第3の乗数を前記基準クロック速度で乗算した値に等しくなるような、前記基準クロック速度に関連する、ことと、
前記信号の受信に応じて前記クロックを前記第1の速度から前記第2の速度へランプさせることと、
前記クロックを、前記基準クロック速度/2に等しい第3のクロック速度から前記第2の速度にディザーアップすることと、
前記第2の速度で前記クロックを動作することと、
を行うように構成されており、
前記ランプさせることは、前記クロックの周波数を、前記第1の速度と前記第2の速度との間の前記少なくとも1つの第3の速度へ変更することを含む、
装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1の速度の乗数を変更することによって前記クロックの周波数を変更するように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の乗数、前記第2の乗数および前記第3の乗数の各々は、独立して、0〜約10の整数、または、1〜約10の整数の逆数である、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記クロックの周波数を複数の第3の速度の各々に順次変更することによって、ランプさせるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の第3の速度は、乗数1/7、1/6、1/5、1/4、1/3および1/2によって前記第2の速度に関連し、前記第1の速度は、乗数0によって前記第2の速度に関連する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記クロックは、前記基準クロックの10サイクルから100サイクルまでにおいて、前記第1の速度から前記第2の速度へランプされる、請求項に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記クロックを、前記基準クロック速度/7から前記基準クロック速度/2にランプアップするように構成されている、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して集積回路に関し、より詳細には、集積回路クロックツリーのキャパシタンスから発生するノイズの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、その様々な部品の同期的かつ有効な動作を確保するために、クロック信号を必要とする。典型的には、位相ロックループ(PLL)によりクロック信号の同期が得られ、クロックメッシュまたはクロックツリーによって、様々な種類のクロック信号が集積回路の様々な部品へ分配される。高出力および高周波数の観点から、典型的な現代のクロックツリーは、ノイズ問題に対処する必要があり得る。例えば、クロックツリーは、多大なキャパシタンスを生成するので、集積回路の1つ以上の部品の適切な動作と干渉し得るノイズの発生の原因となり得る。係るノイズは、クロックゲーティング(例えば、クロックイネーブル、クロックディセーブリング(clock disabling))およびリセットシーケンシング(例えば、ウォームリセット、スキャンテスト)時において顕著となり得る。
【0003】
具体的には、クロックグリッド内で消費される電流は、式I=CVFで決定され得る。式中、Cはクロックキャパシタンスであり、Fは周波数であり、Vは電圧である。現在の多くのCPUにおいて知られるように、クロックオフ状態から多重GHzクロック周波数へ高速に変化することによって、クロック周波数が極めて高速に変化する場合には、dI/dTが極めて高くなるため、実質的にノイズ発生の原因となる。現在のシリコン中の電圧ノイズの1つのソースは、ダイトゥパッケージ(die-to-package)インダクタンスである。インダクタンスL上の電圧は、定義により、V=LdI/dTに等しい。電圧ノイズは、プロセッサの実行時の速度に影響を与える。
【0004】
クロックツリー内のノイズ管理のための周知技術では、現在の集積回路デバイス(例えば、コンピュータシステム)における用途には低速であるため、望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態に係る装置、システムおよび方法は、クロック状態に遷移するときにクロックメッシュに発生するノイズを、クロック信号の増減によって管理し得る。高速かつ複雑なクロック制御挙動を可能にしつつ、クロック周波数の変化速度を低減させることによって、電圧ノイズを低減することができる。係るクロック信号管理を制御および実行する機構は、成長または蒸着などの任意の手段によって、マイクロ回路内に形成され得る。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態に係る装置は、第1の速度を有するクロックと、第1の速度を有するクロックを第2の速度へ調整するための信号を受信し、前記信号の受信に応じて、前記クロックを前記第1の速度から前記第2の速度へランプさせることを行うように構成されたプロセッサと、を備える。ランプさせることは、クロックの周波数を、第1の速度と第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度に変更することを含む。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態に係る方法は、第1の速度を有するクロックを第2の速度へ調整するための信号を受信することと、前記信号の受信に応じて、前記クロックを前記第1の速度から前記第2の速度へランプさせることと、を含む。ランプさせることは、クロックの周波数を、第1の速度と第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度に変更することを含む。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、多重計算ユニット、共有キャッシュユニットおよび電力管理ユニットを用いる任意の種類の集積回路において使用され得る。この一例は、汎用マイクロプロセッサである。
【0009】
本開示の発明を、添付の図面を参照して以下に説明する。図面中、類似の符号は類似の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のいくつかの実施形態に係るクロック回路を含む集積回路の概略図である。
図2A】本開示のいくつかの実施形態に係る、図1に示すような1つ以上の回路を含むシリコンダイ/チップを示す図である。
図2B】本開示のいくつかの実施形態に係る、製造施設において製造され得る1つ以上のダイ/チップを含むシリコンウェハを示す図である。
図3A】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図3B】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図3C】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図3D】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図3E】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図4A】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図4B】本開示のいくつかの実施形態に係る、各種クロック信号の波形図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態に係る状態機械図である。
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る、クロック信号の管理に関する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の発明は、様々な改変および代替的形態が可能であるが、そのいくつかの実施形態を例示目的のために図示し、本明細書において詳述する。しかし、本明細書中の特定の実施形態の記載は、本開示の発明を開示の特定の形態に限定することを意図していない。本発明の意図は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本開示の発明の趣旨および範囲内に含まれる改変例、均等例および代替例の全てを網羅するものであることが理解されるべきである。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態は、集積回路デバイス内のクロックをランプさせることを提供する。これにより、集積回路デバイスのクロックツリーと関連付けられたキャパシタンスから発生するノイズであって、クロックゲーティングおよびリセットシーケンシングに起因して発生するノイズを低減させることができるので、集積回路デバイスの性能が向上する。
【0013】
ここで、図1を参照すると、本開示のいくつかの実施形態に係るコンピュータシステム100の構成部品の概略的なブロック図が示されている。コンピュータシステム100は、集積回路110と、メモリデバイス115と、を少なくとも含んでよい。集積回路110の部品は、限定するものではないが、位相ロックループ(PLL)120を含んでよい。PLL120は、クロックPLLCLKを生成および分配する。バッファ125がクロック信号をバッファすると、PLLCLK_BUF信号が発生し得る。CKGEN回路(logic)130は、PLLCLK_BUF信号を受信し、ランプ信号(例えば、ランプB140およびランプA150)を生成する。フリップフロップ142は、ランプB140信号を通じてクロックし得る。フリップフロップ142は、PLLCLKの立ち上がりエッジをラッチするためのデータを提供し得る。アクティブローラッチ152は、ランプA150信号を受信し、ランプA150信号に作用し得る。ラッチ152は、PLLCLKの立ち上がりエッジに基づいて設定および保持するためのデータを提供し得る。mux155は、フリップフロップ142およびラッチ152から受信した信号に作用してもよく、信号を出力してもよい。ORゲート170は、mux155から出力された信号を受信し得る。また、ORゲート170は、テストモードに関連するクロック信号(例えば、TST_CLK160)を受信し得る。ORゲート170は、CCLK信号を、集積回路110のCCLKメッシュ180へ出力する。
【0014】
ここで、図2Aを参照すると、いくつかの実施形態では、集積回路110は、シリコンダイ/チップ240上に存在し得る。シリコンダイ/チップ240は、マザーボードまたはコンピュータシステム100の他の構造内に収容されてもよい。1つ以上の実施形態において、各シリコンダイ/チップ240上には、2つ以上の集積回路110が存在してもよい。集積回路110の様々な実施形態は、様々な電子デバイス内に用いられてもよい。
【0015】
ここで、図2Bを参照すると、いくつかの実施形態によれば、上述したように、集積回路110は、シリコンチップ/ダイ240に含まれてもよい。シリコンチップ/ダイ240は、1つ以上の異なる構成の集積回路110を含んでもよい。シリコンチップ/ダイ240は、製造施設(または「ファブ」)290において、シリコンウェハ230上に生成されてもよい。すなわち、シリコンウェハ230およびシリコンダイ/チップ240は、ファブ290の出力または製造物と称されてもよい。シリコンチップ/ダイ240は、電子デバイス内で用いられてもよい。
【0016】
本明細書に記載の回路は、当該技術分野において周知の任意の手段によって、半導体材料上に形成され得る。この形成は、例えば成長もしくは蒸着、または、当該技術分野において周知の他の任意の手段によって行われてもよい。異なる種類のハードウェア記述言語(HDL)が、マイクロ回路デバイスの設計および製造のプロセスに用いられ得る。例を挙げると、VHDLおよびVerilog/Verilog−XLがある。一実施形態において、HDLコード(例えば、レジスタ転送レベル(RTL)コード/データ)は、GDSデータ、GDSIIデータなどの生成に用いられ得る。GDSIIデータは、例えば記述ファイルフォーマットであり、半導体製品またはデバイスの3次元モデルを表現する異なる実施形態において用いられ得る。係るモデルは、半導体製品および/またはデバイスを製造する半導体製造施設によって用いら得る。GDSIIデータは、データベースまたは他のプログラム保存構造として保存され得る。このデータは、コンピュータ可読記憶デバイス(例えば、データ記憶ユニット、RAM、コンパクトディスク、DVD、ソリッドステート記憶装置など)上に保存されてもよく、一実施形態において、本開示の様々な態様を具現化することの可能なデバイスを生成するための製造施設(例えば、マスクワークの使用を通じて)の構成に用いられてもよい。当業者であれば理解するように、このデータは、コンピュータ、プロセッサまたはコントローラ内にプログラムされてもよく、これにより、半導体製品およびデバイスを製造するために、半導体製造施設(またはファブ)の動作を全体的または部分的に制御する。これらのツールは、本明細書に記載される開示の実施形態の構築に用いられ得る。
【0017】
図3A図3Eは、様々な状況の波形図である。図3Aは、CCLKを、PLLCLK/10の初期クロック値からPLLCLK/4へランプさせるための波形を示す図である。PLLCLK/4値は、スキャンシフト動作に適切であってよい。図3Bは、CCLKを、スキャンシフト後に、PLLCLK/4からPLLCLKへランプさせるための波形を示す図である。図3Cは、CCLKを、PLLCLKからPLLCLK/4でのスキャンシフトへ直接切り換えるための波形を示す図である。図3Dは、ゲータ(gater)がデアサートした場合にCCLKをランプダウンさせるための波形を示す図である。これにより、集積回路が低電力モードに移行することが可能になる。図3Eは、ゲーターがアサートされた場合にCCLKをランプアップさせるための波形を示す図である。これにより、集積回路が低電力モードを終了することが可能になる。
【0018】
図3D図3Eは、CCLKのディザー期間を示している。本明細書中、「ディザー」とは、2つの周波数間のクロックイネーブルサイクルのパターンの使用により、一定期間に亘ってクロックを第1の周波数から第2の周波数へ転換させ、第1の周波数から第2の周波数へランプさせることをいう。中間クロックイネーブルサイクルのパターンは、ランダムであってもよいし、事前にプログラムされていてもよい。例えば、図3Dは、(PLLCLKに等しい)CCLKの第1の周波数から(PLLCLK/2に等しい)CCLKの第2の周波数へのディザーダウンを示している。図3Eは、(PLLCLK/2に等しい)CCLKの第1の周波数から(PLLCLKに等しい)CCLKの第2の周波数へのディザーアップを示している。
【0019】
クロックディザーは、中期の電流引き込みの平滑化に役立つことができ、これにより、PLLCLK/2からPLLCLKへの変更を単一ステップで行った場合に予期されるdi/dt事象が最小化される。例えば、フル周波数において電流が2Aであり、ハーフ周波数において1Aである場合には、4サイクル以上の平均電流を、例えば以下に述べるようなディザーパターンを用いて緩やかにランプさせることができる。この電流ランプによって、電流変化に応答するためのより大きなオフダイコンデンサ時間が得られ、急変からの電圧降下を低減することができる。
【0020】
図4A図4Bは、クロックゲーテッドコア(clock gated core)または他の計算ユニットのキャッシュをプローブするために使用することができる波形図である。図4Aにおいて、例えばCPUコアのクロック制御(CoreClkOn)がクロックゲーテッド状態に移行しそうになるのと同時に、プローブ要求(PrbRequest)が生成されてもよい。CoreClkOn信号をプローブ状態機械へlowに保持することにより、実際のクロック除去の前にプローブが休止されることが保証される。図示の実施形態では、PrbRequestが発生しているので、ProbeActiveがhighに設定され、MasterClockEnableはlowにならない。プローブが完了(PrbResponseがhighに設定され、ProbeActiveがlowに設定されることで示される)した後に、CoreClkOnがlowになり、その後、ProbeActiveがlowであるため、MasterClockEnableがlowになる。
【0021】
図4Bでは、CPUコアのロック制御(CoreClkOn)がクロックゲーテッド状態に移行した後に、プローブが要求される。図示の例において、MasterClockEnableおよびCoreClkOnはlowに設定される。その結果、プローブ状態機械は、PrbRequestを送るように構成されておらず、その代わりに、ProbeActiveをhighに設定して、クロックをランプアップするために信号をクロック制御回路に送る。(ProbeActiveの立ち上がりエッジ後の)クロックがランプアップした後に、CoreClkOnはhighになり、プローブ要求および応答が発生し得る。プローブが完了した後に、クロックを再度オフにすることができる(CoreClkOnをlowに設定)。
【0022】
図5は、本開示のいくつかの実施形態に係る状態機械図である。状態405において、基準クロック周波数nrefを有するクロックは、オフである。クロック(例えば、ClkEn==1)をイネーブルするための第1の信号を受信すると、状態410に移行し、クロックがnref/7からnref/2へランプアップされる。一実施形態において、ランプアップさせることは、7から3へ除数をデクリメントしたときでの1サイクルと、2の除数における1または8サイクルと、を含んでよい。その後、命令取り消し信号が無い場合には、状態415に移行し、クロックは、nref/2からnrefへディザーアップされる。
【0023】
例えば、nref/2はnrefと同じとみなされてもよく、クロックサイクルが互いにディセーブルされる。この例を続けると、nrefのクロックイネーブルパターンが1111111111…である(すなわち、各クロックサイクルまたは100%のクロックサイクルがイネーブルされる)場合には、nref/2のクロックイネーブルパターンは、1010101010…となる(すなわち、他のクロックサイクルの各々または約50%のクロックサイクルがイネーブルされる)。その後、nref/2からnrefへディザリングアップさせることは、上記の2つのパターン(すなわち、約50%〜100%のクロックサイクルがイネーブルされたクロックイネーブルパターン)間のクロックイネーブルパターンを付加することを含み、その後、ディザリングアッププロセスにおいてより多くのサイクルがイネーブルされる。例えば、ディザリングアップさせることは、クロックイネーブルパターン1101111011111…の付加を含んでよい。
【0024】
ディザリングは、所望のプログラムされたサイクル数(例えば、8サイクル)用に行われてもよい。その後、状態420に移行し、クロックはnrefで動作する。
【0025】
クロックをディセーブルにするための第2の信号(例えば、ClkEn==0)を受信すると、状態420から状態425に移行し、クロックがnref/2からnrefへディザーダウンされる。nref/2からnrefへディザーダウンすることは、上記のパターン間のクロックイネーブルパターン(すなわち、約50%〜100%のクロックサイクルがイネーブルされたクロックイネーブルパターン)を付加することを含んでもよく、ディザリングダウンプロセスにおいて、より少ない数のサイクルが後にイネーブルされる。例えば、ディザリングダウンさせることは、クロックイネーブルパターン01111011…の付加を含んでよい。ディザリングは、所望のプログラムされたサイクル数(例えば、8サイクル)用に行われてもよい。その後、状態430に移行し、クロックは、nref/2からnref/7へランプダウンされる。一実施形態において、ランプダウンさせることは、2〜7の除数での1サイクルを含んでよく、さらに、除数をインクリメントする。その後、状態405に移行し、クロックがディセーブルされる。
【0026】
クロックをイネーブルするための第1の信号は、状態430(例えば、サイクリングと、除数のインクリメントと、の間の時間)において受信されてもよく、その後、状態410に移行してもよい。状態430から状態410に移行すると、7の除数を用いてランプアップを開始してもよいし、状態430における除数の最終値に等しい除数を用いて開始してよい。状態410においてランプアップさせることが完了した後に、システムは状態415に移行し、その後、上述したように状態420に移行する。状態405から状態410への遷移、状態410から状態415への遷移、および/または、状態415から状態420への遷移に関連する例示的波形を図3Eに示す。
【0027】
クロックをディスエーブルにするための第2の信号は、例えば、サイクリングと、除数のデクリメントと、の間などのような状態410において受信されてもよく、その後、状態430に移行してもよい。状態410から状態430に移行した後に、2の除数を用いてランプダウンを開始してもよいし、状態410における除数の最終値に等しい除数を用いて開始してもよい。状態430でランプダウンさせることが完了した後、システムは、上述したように状態405に移行してよい。
【0028】
状態420において、クロックをウォームリセットするための第3の信号(例えば、WarmReset)を受信してもよい。これに応じて、状態435に移行してもよい。状態435において、クロックがディセーブルされる。その後、状態440に移行してもよく、第1の除数を有するスキャンシフトリセットに移行してもよい。システムは、適切な電力の指標を受信するまで状態440に留まり、このとき、状態445に移行してもよい。状態420から状態435への遷移、状態435から状態440への遷移、および/または、状態440から状態445への遷移に関連する例示的な波形を図3Cに示す。状態440から状態445への遷移に関連する別の例示的波形を図3Aに示す。状態445において、スキャンシフトは、第2の除数にリセットされる。システムは、スキャンシフトが完了するまで状態445に留まってよい。このとき、状態450に移行してよい。状態450において、スキャンシフトが終了し得る。その後、状態410に移行してよい。その後、上述したように、状態415および420(または、状態430および405)への遷移が行われ得る。状態445から状態450への遷移、状態450から状態410への遷移、状態410から状態415への遷移、および/または、状態415から状態420への遷移に関連する例示的な波形を図3Bに示す。状態420から状態425への遷移、状態425から状態430への遷移、および/または、状態430から状態405への遷移に関連する例示的な波形を図3Dに示す。
【0029】
図6は、本開示のいくつかの実施形態方法500を示すフローチャートである。方法500は、510にてクロックを第1の速度から第2の速度へ調整するための信号を受信することと、520にてクロックを第1の速度から第2の速度へランプさせることと、を含み、ランプさせることは、クロックの周波数を、第1の速度と第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度へ変更することを含む。いくつかの実施形態において、ランプさせることは、クロックの周波数を、複数の第3の速度に順次変化させることを含む。クロックの周波数を変化させることは、第1の速度の乗数を変化させることを含んでよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の速度、第2の速度および第3の速度は、第1の速度が第1の乗数を基準クロック速度で乗算した値に等しく、第2の速度が第2の乗数を基準クロック速度で乗算した値に等しく、第3の速度が第3の乗数を基準クロック速度で乗算した値に等しくなるような、基準クロック速度に関連し得る。一部の実施形態において、第1の乗数、第2の乗数および第3の乗数は、それぞれ独立して、0〜約10の整数または1〜約10の整数の逆数である。
【0031】
方法500は、530にてクロックを第3の速度から第2の速度へディザーすることをさらに含んでもよい。
【0032】
方法500は、クロックを、開始クロック速度(例えば、基準クロック速度nref)からゼロの最終クロック速度(例えば、クロックをディセーブルにすること)にするために行われてもよい。または、クロックを、ゼロのクロック速度から最終クロック速度(例えば、基準クロック速度nref(例えば、クロックのイネーブル))にするための方法500が行われてもよい。いくつかの実施形態において、クロックは、10サイクル〜100サイクルの基準クロックにて第1の速度から第2の速度にされてもよい。これにより、クロック速度の増加と関連付けられたdI/dT事象を軽減しつつ、クロックを迅速にフルスピードにすることができる。
【0033】
クロックがイネーブルされると、複数の第3の速度は、乗数1/7、1/6、1/5、1/4、1/3および1/2によって第2の速度に関連してもよく、第1の速度は、乗数0により第2の速度に関連してもよい。
【0034】
クロックがディセーブルされると、複数の第3の速度は、乗数1/2、1/3、1/4、1/5、1/6および1/7によって第1の速度に関連してもよく、第2の速度は、乗数0により第1の速度に関連してもよい。
【0035】
開示の発明は、本明細書の教示内容の利益を受ける当業者にとって自明な、異なるが均等な態様で変更および実施することが可能であるため、上述した特定の実施形態は、例示的なものに過ぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載のもの以外の、本明細書に示された構造または設計の詳細に限定されることを意図していない。よって、上記の特定の実施形態は、改変または変更が可能であり、係る変更例の全ては、開示された発明の趣旨および範囲内に含まれるものであるとみなされることが明らかである。よって、本明細書において求められる保護は、以下の特許請求の範囲に記載の通りである。
【要約】
集積回路のクロックツリーにおけるキャパシタンスから発生するノイズの管理に関連する方法、装置および製造技術が提供される。いくつかの実施形態において、方法は、第1の速度を有するクロックを第2の速度へ調整するための信号を受信することと、信号の受信に応じてクロックを第1の速度から第2の速度へランプさせることであって、クロックの周波数を、第1の速度と第2の速度との間の少なくとも1つの第3の速度へ変更することと、を含む。
【選択図】図5
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6