(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高彩度化分光特性と相関する分光分布は、前記光源光の分光分布と前記高彩度化分光特性とを乗算してなる分光分布である、ことを特徴とする請求項1に記載の高彩度色光生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような従来手法により高彩度の色(色光)を生成するためには、これまでの色材よりも彩度の高い色材を用いて色票を着色することが必要となる。しかし、高彩度の色材として知られている有機顔料は一般に耐久性が低く、このような色材を色票の着色材として用いた場合、時間的に安定した表色性能を発揮することが困難となる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、高彩度標準色として用いることができる高彩度な色光を安定して生成することが可能な高彩度色光生成装置及び色再現評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る高彩度色光生成装置は、
所定の色域に対応した色票の色の分光特性を2乗してなる分光特性を、高彩度化分光特性として設定する分光特性設定手段と、
設定された前記高彩度化分光特性に基づき、光源光の各波長成分の強度を調整し調整後の該各波長成分を合成することにより、前記高彩度化分光特性と相関する分光分布を有する
、前記所定の色域よりも彩度の高い特定の色域に対応した高彩度の色光を生成する色光生成手段と、
生成された前記高彩度の色光を拡散して出射する拡散出射手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る高彩度色光生成装置において、前記高彩度化分光特性と相関する分光分布は、前記光源光の分光分布と前記高彩度化分光特性とを乗算してなる分光分布とすることができる。
また、前記色光生成手段は、白色光源からの前記光源光を各波長成分に分光する分光素子と、前記分光素子により分光された前記各波長成分の相対強度を調整する波長成分強度調整素子と、前記波長成分強度調整素子からの前記各波長成分を合成する導光素子と、を備えてなるものとすることができる。
【0011】
また、本発明に係る色再現評価方法は、
所定の色域に対応した色票の色の分光特性を2乗してなる分光特性を、高彩度化分光特性として設定する分光特性設定ステップと、
設定された前記高彩度化分光特性に基づき、光源光の各波長成分の強度を調整し調整後の該各波長成分を合成することにより、前記高彩度化分光特性と相関する分光分布を有する
、前記所定の色域よりも彩度の高い特定の色域に対応した高彩度の色光を生成する色光生成ステップと、
生成された前記高彩度の色光を拡散して出射する拡散出射ステップと、
出射された前記高彩度の色光を、被検カメラにより撮影する色光撮影ステップと、
前記被検カメラにより撮影された前記高彩度の色光の再現色データを、該高彩度の色光の参照用色データと比較することにより、前記被検カメラによる色再現性を評価する色再現評価ステップと、を各前記色票の色についてこの順に行うことを特徴とする。
【0012】
上記「所定の色域」とは、Rec.709のような従来の一般的な色域とすることができるが、これに限定されるものではなく、任意の色域とすることが可能である。
【0013】
また、上記「所定の色域に対応した色票」とは、従来の一般的な色域での色再現評価に用いられるマクベスチャートの色票のような標準的な色票とすることが好ましいが、これに限定されるものではなく、任意の色票とすることが可能である。
【0014】
また、上記「色票の色の分光特性」とは、色票が反射型色票である場合には、該反射型色票の色の分光反射率、または該反射型色票を照明した際に該反射型色票から反射される色光の分光分布とすることができ、色票が透過型色票である場合には、該透過型色票の色の分光透過率、または該透過型色票を照明した際に該透過型色票を透過する色光の分光分布とすることができる。
【0015】
また、上記「高彩度化分光特性と相関する分光分布」とは、高彩度化分光特性と相等しい分光分布(高彩度化分光特性における各波長成分の割合と、相関する分光分布における各波長成分の割合とが等しい分光分布)を含む概念である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る高彩度色光生成装置及び色再現評価方法によれば、上述の特徴を備えていることにより、以下のような効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明により生成される高彩度の色光は、所定の色域に対応した色票の色の分光特性を2乗してなる高彩度化分光特性と相関する分光分布を有しているので、色票の色と同様の色相を有しつつ彩度の高い色光となる。しかも、この高彩度の色光は、色票を介して生成されるものではなく、光源光の各波長成分の強度を調整し調整後の各波長成分を合成することにより生成されるものであるので、耐久性が低い高彩度の色材を用いて色票を着色する必要はない。
【0018】
したがって、本発明によれば、安定した表色性能を発揮することが可能な高彩度の色光を生成することができ、この高彩度の色光を、従来の色域を越えた高彩度の色域において標準となる高彩度標準色として利用することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る色再現評価方法によれば、安定した表色性能を発揮することが可能な高彩度の色光を用いることにより、従来よりも高彩度な色を再現し得る色再現域の広いカメラ等の色再現評価を適正に行うことが可能となる。
【0020】
特に、高彩度化分光特性を設定する際の基礎とする色票として、マクベスチャートのような標準的なカラーチャートにおける各色の色票を順次用いるようにすれば、従来の色域を越えた高彩度の色域における色再現評価においても、従来の色域における色再現評価と同等の信頼性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る高彩度色光生成装置及び色再現評価方法の各実施形態について、上記図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
〈高彩度色光生成装置〉
図1に示す高彩度色光生成装置10は、被検カメラ70により再現される色(再現色)を評価するための色再現評価システムとして構成されたものであり、色光生成装置20、積分球30及び解析制御装置40を備えてなる。
【0024】
上記色光生成装置20は、本実施形態において色光生成手段に相当するものであり、
図2に示すように、光源21、レンズ22、分光素子23、波長成分強度調整素子24、レンズ25及び導光素子26等からなる光学系を備えている。
【0025】
光源21は、可視光域(例えば、380〜780nm)における各波長成分を総じて含む白色光源(例えば、相関色温度6500Kの光を出力するD65光源)が用いられる。分光素子23は、反射型の回折格子(透過型の回折格子やプリズムを用いてもよい)からなり、光源21からレンズ22を介して入射された光(光源光)を、各波長成分に分光するように構成されている。
【0026】
波長成分強度調整素子24は、多数の微小な可動ミラーを2次元的に配列してなるミラーアレイ素子(例えば、Texas Instruments社のDMD素子)により構成されている。ミラーアレイ素子の各ミラー列は、可視光域を所定の波長幅(例えば、5nm)の複数の波長帯域に分割したときの各波長帯域に対応しており、各ミラー列における各可動ミラーはオン方向(反射した光がレンズ25に入射する向き)とオフ方向(反射した光がレンズ25に入射しない向き)との間で、反射面の向きを切り替えられるようになっている。このため、1つのミラー列における各可動ミラーについて、オン方向を向くものとオフ方向を向くものとの割合を調整することにより、レンズ25に入射させる、そのミラー列に対応した波長成分の強度を調整することができ、この操作を各ミラー列において行うことにより、各波長成分の割合(相対強度)を調整することができるようになっている。
【0027】
導光素子26は、光ファイバーにより構成されており、レンズ25を介して波長成分強度調整素子24から入射した各波長成分を合成して色光を生成し、この色光を上記積分球30に導くようになっている。
【0028】
なお、このような色光生成装置20としては、例えば、OneLight社の波長プログラマブルム光源(型番:OSVISX)として実用化されているものを利用することが可能である。
【0029】
上記積分球30(
図1参照)は、本実施形態において拡散出射手段に相当するものである。積分球30は、その内面が硫酸バリウムや酸化チタン等の白色塗料を塗布されてなる拡散反射面により構成されており、導光素子26から入力された色光を拡散反射することにより色光の輝度分布を均一化し、その、輝度分布が均一化された色光を出力用開口31から出射するように構成されている。
【0030】
上記解析制御装置40は、本実施形態において分光特性設定手段に相当するものであり、コンピュータ等の演算処理装置(
図1ではノート型のパーソナルコンピュータを例示しているが、これに限定されるものではない)により構成されている。この解析制御装置40は、上記色光生成装置20により生成される高彩度の色光の分光分布を規定するための高彩度化分光特性を設定するとともに、被検カメラ70による色再現性を評価するように構成されており、
図3に示すように、分光特性データ記憶部41、高彩度化分光特性算出部42及び色再現評価部43を備えている。なお、分光特性データ記憶部41、高彩度化分光特性算出部42及び色再現評価部43は、CPUやROM、RAM、電子回路等のハードウエア、及びROM等に格納された制御プログラム等のソフトウエアにより構成されるものを機能的に表したものである。
【0031】
分光特性データ記憶部41は、上記高彩度化分光特性を設定するための基礎となる分光特性のデータ(以下、適宜「基礎分光特性データ」と称する)を記憶している。本実施形態では、この基礎分光特性データとして、
図5に示す反射型のカラーチャート50の各色票(カラーパッチ)P1〜P24の色の分光反射率のデータを用いており、この分光反射率のデータが、
図4に示すように、各色票P1〜P24別に記憶されている(
図4では、一部のみを示している)。
【0032】
なお、
図5に示すカラーチャート50は、従来の色域(Rec.709)に対応した標準的な仕様のものであり、24色の反射型の色票P1〜P24を備えている。各色票P1〜P24の色は、従来のマクベスチャートにおける各色票の色と略一致するように設定されており、各色の配列順もマクベスチャートと同じとされている(色票P1〜P18は有彩色、色票P19〜P24は無彩色)。
【0033】
高彩度化分光特性算出部42は、分光特性データ記憶部41に記憶された、各色票P1〜P24の色の分光反射率のデータに基づいて、各色票P1〜P24(有彩色の色票P1〜P18としてもよい)の色ごとに、その分光反射率を2乗してなる高彩度化分光特性を算出する(分光反射率をR(λ)とするとき、{R(λ)}
2を算出する)。算出された各高彩度化分光特性のデータは分光特性データ記憶部41に格納されるように構成されている。算出された高彩度化分光特性の具体例を、
図6及び
図7に示す。なお、
図6及び
図7に示すグラフにおける縦軸の数値は反射率を示している。
【0034】
図6には、カラーチャート50(
図5参照)の色票P14の色(green)の分光反射率(図中一点鎖線で示す曲線C
1)と、これに基づき算出された、色票P14の色の分光反射率を2乗してなる高彩度化分光特性(図中破線で示す曲線C
2及び実線で示す曲線C
3)が示してある。なお、曲線C
2は、色票P14の色の分光反射率(曲線C
1の縦軸の数値)を単に2乗した場合の形状を示しており、曲線C
3は、曲線C
2におけるピークの高さが、曲線C
1におけるピークの高さと一致するように、曲線C
2を縦軸方向に定数倍したものである。曲線C
2と曲線C
3は、グラフとしての形状が異なって見えるが、各波長成分の割合(相対強度)を示すグラフとしては、互いに等しいものである。曲線C
1と曲線C
3とを比較すると、曲線C
1よりも曲線C
3の方が、ピーク波長付近での傾きが急になっており、このことから、色票P14の色の分光反射率を2乗してなる高彩度化分光特性は、色票P14の色の分光反射率よりも彩度が高い特性を有していることが分かる。
【0035】
図7には、カラーチャート50(
図5参照)の色票P5の色(blue flower)の分光反射率(図中一点鎖線で示す曲線C
11)と、これに基づき算出された、色票P5の色の分光反射率を2乗してなる高彩度化分光特性(図中破線で示す曲線C
12及び実線で示す曲線C
13)が示してある。なお、曲線C
12は、色票P5の色の分光反射率(曲線C
11の縦軸の数値)を単に2乗した場合の形状を示しており、曲線C
13は、曲線C
12における最大のピーク(長波長側のピーク)の高さが、曲線C
11における最大のピーク(同じ長波長側のピーク)の高さと一致するように、曲線C
12を縦軸方向に定数倍したものである。曲線C
12と曲線C
13は、グラフとしての形状が異なって見えるが、各波長成分の割合(相対強度)を示すグラフとしては、互いに等しいものである。曲線C
11と曲線C
13とを比較すると、曲線C
11よりも曲線C
13の方が、2つのピーク波長付近での傾きが共に急になっており、このことから、色票P5の色の分光反射率を2乗してなる高彩度化分光特性は、色票P5の分光反射率色よりも彩度が高い特性を有していることが分かる。
【0036】
色再現評価部43(
図3参照)は、被検カメラ70により撮影された色光の再現色データを、参照用色データと比較することにより、被検カメラ70による色再現性を評価するように構成されている。
【0037】
上記解析制御装置40は、高彩度化分光特性算出部42により算出された、各色票P1〜P24の色に基づく各々の高彩度化分光特性を、上記色光生成装置20により生成される色光の分光分布を規定するために順次設定する。
【0038】
上記色光生成装置20は、設定された各高彩度化分光特性に基づき、波長成分強度調整素子24において、光源光の各波長成分の割合(相対強度)を調整することにより、高彩度化分光特性と相関する分光特性、例えば、光源光の分光分布と高彩度化分光特性とを乗算してなる分光特性(光源光の分光分布をP(λ)、高彩度化分光特性を{R(λ)}
2とするとき、P(λ)×{R(λ)}
2となる分光特性)を有する高彩度の色光を、設定された各々の高彩度化分光特性ごとに順次生成する。生成された各高彩度の色光は、上記積分球30において拡散され輝度分布を均一化された後、出力用開口31から出射される。
【0039】
〈高彩度の色光の色度点〉
上述したカラーチャート50の各色の色票P1〜P24の色度点(色度座標)は、国際照明委員会(CIE)が定めたXYZ表色系のxy色度図上において、
図8に示すように分布している。これに対し、本実施形態の高彩度色光生成装置10により生成される各高彩度の色光の色度点は、xy色度図上において、
図9に示すように分布している。なお、
図8,9に示す各色度点は、下記参考文献1に記載された色データに基づき、D65光源の分光分布下で計算により求めたものである。
参考文献1:大田登 色再現工学の基礎 コロナ社 1997年
【0040】
図8に示すように、カラーチャート50の各色の色票の色度点は、従来のHDTVでの色域(図中の小さい方の三角形の領域)内において分布している。これに対し、高彩度色光生成装置10により生成される各高彩度の色光の色度点は、
図9に示すように、それらのうちの幾つかの色度点がHDTVの色域を超えた領域に分布するなど、全体として次世代のUHDTVで提案されている広色域(図中の大きい方の三角形の領域)内に広く分布していることが分かる。このため、高彩度色光生成装置10により生成される各高彩度の色光は、次世代のUHDTVで提案されている広い色域に対応した色を代表する色光として、テレビカメラ等における色再現評価に用いることが可能となっている。
【0041】
図10に、実在する表面色のデータベースであるポインターカラー(pointer’s color)の色度分布を示す。このポインターカラーの色度分布を参照すると、高彩度色光生成装置10により生成される各高彩度の色光の色度点は、カラーチャート50の各色の色票の色度点よりも、実在する色の分布を代表していることが分かる。
【0042】
なお、本実施形態の高彩度色光生成装置10は、上記カラーチャート50の各色票P1〜P24の色と同じ分光特性を有する色光(以下、適宜「標準彩度の色光」と称する)を生成することも可能である。この場合には、上述の各高彩度化分光特性の代わりに、各色票P1〜P24の色の分光反射率を、上記色光生成装置20により生成される色光の分光分布を規定するための分光特性として設定すればよい。
【0043】
また、標準彩度の色光と高彩度の色光を生成する場合には、両色光の明るさ(強度)が互いに略等しくなるように、生成する色光の明るさの調整を行うことが好ましい。例えば、上記色票P14の色に対応する標準彩度の色光と高彩度の色光の明るさを揃えるためには、色票P14の色の分光特性においてピーク波長となる波長成分の強度が、標準彩度の色光と高彩度の色光とにおいて互いに略等しくなるように調整することが挙げられる。同様に、上記色票P5の色に対応する標準彩度の色光と高彩度の色光の明るさを揃えるためには、色票P5の色の分光特性において最大のピーク波長となる波長成分の強度が、標準彩度の色光と高彩度の色光とにおいて互いに略等しくなるように調整することが挙げられる。他の色票の色についても同様に調整することが可能である。
【0044】
〈色再現評価方法〉
以下、上述した高彩度色光生成装置10を用いた色再現評価方法について説明する。
【0045】
《装置のセッティング》
図1に示すように、被検カメラ70が積分球30の出力用開口31から出射される色光を撮影し得るように、高彩度色光生成装置10の積分球30を被検カメラ70の前方に配置する。その際、被検カメラ70のレンズのシェーディングが解析に影響しないように、撮影時の画角や視距離が調整される。
【0046】
本実施形態では、被検カメラ70により撮影された画像データを、解析制御装置40において解析することにより、被検カメラ70の色再現評価を行う。解析制御装置40への指示は、キーボードやマウス等からなる入力装置(図示略)を介して行い、被検カメラ70により撮影された画像や色再現評価の結果等は、解析制御装置40の表示画面上に表示されるようになっている。
【0047】
《色再現評価の手順》
(1)解析制御装置40において、カラーチャート50の各色票P1〜P18のうちの所定の色票(例えば、色票P1)の色の分光特性を2乗してなる分光特性を、高彩度化分光特性として設定する(分光特性設定ステップ)。
【0048】
(2)解析制御装置40により設定された高彩度化分光特性に基づき、色光生成装置20において、光源光の各波長成分の強度を調整し調整後の各波長成分を合成することにより、光源光の分光分布と高彩度化分光特性とを乗算してなる分光特性を有する高彩度の色光を生成する(色光生成ステップ)。
【0049】
(3)色光生成装置20により生成された高彩度の色光を、積分球30において拡散し出力用開口31から出射する(拡散出射ステップ)。
【0050】
(4)積分球30の出力用開口31から出射された高彩度の色光を、被検カメラ70により撮影する(色光撮影ステップ)。
【0051】
(5)解析制御装置40において、被検カメラ70により撮影された高彩度の色光の再現色データを、該高彩度の色光の参照用色データ(例えば、
図9に示す色度点)と比較する(例えば、両者の色差を求める)ことにより、被検カメラ70による色再現性を評価する(色再現評価ステップ)。
【0052】
(6)上記(1)〜(5)のステップを、カラーチャート50の各色票P1〜P18の色について、順次繰り返す。
【0053】
なお、高彩度色光生成装置10によりカラーチャート50の各色票P1〜P24の色と同じ分光特性を有する標準彩度の色光を生成し、この標準彩度の色光を用いて、上述の(1)〜(6)のステップと同様の手順により、被検カメラ70による色再現性を評価するようにしてもよい。この場合、無彩色の色票P19〜P24の色に関する色再現評価は、標準彩度の色光を用いて行い、高彩度の色光は、有彩色の色票P1〜P18に対応した色光のみを生成して、高彩度な色域での有彩色の色再現評価に用いるようにしてもよい。
【0054】
図11に、各高彩度の色光を被検カメラ70により撮影した際に、被検カメラ70により再現された各高彩度の色光の色(以下、適宜「再現色」と称する)と、その本来の色(以下、適宜「参照色」と称する)との色差の一例を示す。なお、
図11に示すグラフの横軸は、カラーチャート50の各色票P1〜P24の番号(1〜24)を表し、縦軸は、CIE94色差(ΔE
*94)の値を表している。
【0055】
また、
図12に、XYZ表色系のxy色度図上において、上記再現色の色度点(図中「再現色度点」と表記)と上記参照色の色度点(図中「参照色度点」と表記)をプロットしたグラフを示す。なお、
図12のグラフ中に表記された数字(1〜19,24)は、カラーチャート50の各色票P1〜P24の番号に対応している。
【0056】
〈色再現の校正〉
被検カメラ70により再現された色を校正する場合には、例えば、被検カメラ70の色再現特性を決める3×3のマトリックスの係数を、上記再現色と上記参照色との色差が最小になるように最適化する。通常、この最適化の過程において、上述した色再現評価が何度も行われ、最適化されたときの色再現評価値が被検カメラ70の色再現性能とされる。なお、最適化するための手法としては、例えば、Nelder-Meadシンプレックス法(下記参考文献2,3を参照)を用いることができる。
【0057】
参考文献2:Nelder, J. A. and R. Mead, "A Simplex Method for Function Minimization," Computer Journal, Vol. 7, p. 308-313, 1965.
参考文献3:Dennis, J. E. Jr. and D. J. Woods, "New Computing Environments: Microcomputers in Large-Scale Computing," edited by A. Wouk, SIAM, 1987, pp. 116-122.
【0058】
〈態様の変更〉
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0059】
例えば、上記高彩度色光生成装置10では、カラーチャート50の各色票の色の分光反射率を、色票の色の分光特性として用いているが、カラーチャート50を標準的な光(例えば、D65光源の光)で照明した際に各色票から反射される各色光の分光分布を、色票の色の分光特性として用いることも可能である。また、各色票が透過型の色票である場合には、各色票の色の分光透過率や、各色票を標準的な光で照明した際に各色票を透過する色光の分光分布を、色票の色の分光特性として用いることも可能である。
【0060】
また、生成する高彩度の色光が有するべき理想の分光分布、例えば、D65光源の光の分光分布をP
D65(λ)、色票の色の分光反射率を{R(λ)}
2とするとき、P
D65(λ)×{R(λ)}
2となる分光分布を予め設定し、実際に生成される高彩度の色光の分光分布が理想の分光分布と一致するように、上記色光生成装置20の波長成分強度調整素子24において、光源光の各波長成分の割合(相対強度)を調整するようにしてもよい。この場合には、実際に生成される高彩度の色光の分光分布を測定する分光分布測定手段や、測定された実際の分光分布と理想の分光分布とを比較して実際の分光分布が理想の分光分布に近づくように調整する比較調整手段等のフィードバック機構を備えることが好ましい。
【0061】
また、上記高彩度色光生成装置10では、色光生成装置20により生成された色光を拡散して出射するための拡散出射手段として積分球30を用いているが、フライアイやロッドレンズ、拡散板等の他の光学素子を拡散出射手段として用いるようにしてもよい。
【0062】
また、上記高彩度色光生成装置10では、高彩度の色光を一色ずつ生成して出射するように構成されている。このため、カラーチャート50の各色票を一度に撮影する場合に懸念されるグレアの影響(隣り合う色票の光の漏れ)を考慮する必要が無いという利点があるが、各高彩度の色光を全て撮影するのに時間がかかる。そこで、高彩度色光生成装置10を複数配列して、異なる色の高彩度の色光を各高彩度色光生成装置10においてそれぞれ生成し、それらを一度に撮影できるように構成することも可能である。
【0063】
また、本発明では、所定の色域に対応した色票の色の分光特性を2乗してなる分光特性を高彩度化分光特性として設定しているが、色票の色の分光特性を「2」以外の他の数値(例えば、1<a≦3や、1.7≦a≦2.3を満たす任意の定数a)で冪乗してなる分光特性を高彩度化分光特性として設定することも可能である。