特許第5919002号(P5919002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919002
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20160428BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20160428BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20160428BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160428BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   B24B49/18
   B24B49/12
   B24B53/00 K
   H01L21/304 601Z
   B24B53/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-9809(P2012-9809)
(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公開番号】特開2013-146831(P2013-146831A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】湊 浩吉
(72)【発明者】
【氏名】大沼 広希
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249571(JP,A)
【文献】 特開平05−253837(JP,A)
【文献】 特開2004−160585(JP,A)
【文献】 米国特許第05718615(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/18
B24B 49/12
B24B 53/00
B24B 53/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の被加工物を保持し回転可能な保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、該保持手段に保持される被加工物の外周縁を撮像する撮像手段と、該切削ブレードが取り付けられる切削ブレード取付け面に平行な切削送り方向に該保持手段と該切削手段とを相対移動させる切削送り手段と、該切削送り方向に直交する割り出し送り方向に該保持手段と該切削手段とを相対移動させる割り出し送り手段と、該保持手段の保持面に垂直な方向である切り込み送り方向に該保持手段と該切削手段とを相対移動させる切り込み送り手段と、を少なくとも備える切削装置において、
該保持手段に隣接する位置に配設され、該切削ブレードを切り込ませて該切削ブレードの先端の偏磨耗の確認に用いる確認用被加工物を保持する確認テーブルと、
該保持手段又は該確認テーブルに隣接する位置に配設され、回転するとともに該割り出し送り方向に移動する該切削ブレードの先端を接触させて該切削ブレードの先端を研磨する研磨テーブルと、
該確認テーブルが保持した確認用被加工物に対して該切削ブレードを切り込み方向に所定量移動させて切り込ませることにより略長方形の切り込み溝を形成するとともに、該切り込み溝が形成された時の該切削手段の切り込み位置を切り込み位置記憶部に記憶する溝形成手段と、
該撮像手段が該切り込み溝を撮像することにより取得した画像情報より、該確認用被加工物の表面における該切削送り方向を長手方向とする該切り込み溝の向かい合う2辺の長さと該切込み溝の溝幅中心での該切り込み溝の長さとのそれぞれの差及び該向かい合う2辺の長さの差を求め、これらのそれぞれの差がそれぞれの所定の許容値をすべて超えているか否かによって該切り込み溝の良否判定を行う溝良否判断手段と、
該溝良否判断手段が該切り込み溝が不良と判断したときに、該切削ブレードを回転させつつ該切削ブレードの先端を該研磨テーブルに当接させ、該切削手段と該研磨テーブルとを割り出し送り手段にて所定量相対移動させて該切削ブレードの先端形状を修正するブレード先端修正手段と
を備える切削装置。
【請求項2】
前記確認テーブルにおける確認用被加工物を保持する保持面の高さ位置であるテーブル高さと、前記切り込み溝の向かい合う2辺の長さの平均値と、前記切り込み位置記憶部に記憶されている切り込み溝を形成した時の切削手段の切り込み位置とを用い、前記切削ブレードの外径を算出するブレード外形算出部を備えた
請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードの偏磨耗を監視し、偏磨耗量が所定量以上となった場合には、先端形状を修正する機能を有する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外周部が面取りされているウェーハの一方の面を研削すると、外周部が鋭角になり、その部分を起点として割れや欠けが生じることがあるため、かかるウェーハについては、研削前に、ウェーハの外周に沿って面取り部を円形に除去することが行われている。また、ウェーハの径を変更する場合も、外周に沿って円形に切り落とすことが行われている。このようにウェーハの外周に沿って切削することは、エッジトリミングと呼ばれている。
【0003】
ウェーハの外周に沿って円形に切削加工するエッジトリミングは、回転する切削ブレードをウェーハの外周に接触させるとともにウェーハを保持した保持テーブルを回転させ、切削ブレードの厚さを利用して先端面でウェーハ外周を切削することにより行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−009550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エッジトリミング時においては、切削ブレードのウエーハ中心側とウエーハ外周側とでは、回転中心からの半径が異なるため、ウエーハ中心側とウエーハ外周側とで加工距離に違いがあるとともに、回転角度にも違いがある。そのため、切削ブレードのウエーハ中心側とウエーハ外周側とで摩耗量に差が生じてしまい、その摩耗差によって正常なエッジトリミング加工ができなくなるという問題がある。このように、切削ブレードに偏摩耗が生じた場合は、それを検出して加工不良を防止するとともに、偏摩耗が所定量以上に進行した場合は、切削ブレードの先端形状を整形する必要がある。
【0006】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、切削ブレードの偏摩耗を監視するとともに、偏摩耗量が所定量以上となった場合には切削ブレードの先端形状を整形するようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円形の被加工物を保持し回転可能な保持手段と、保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、保持手段に保持される被加工物の外周縁を撮像する撮像手段と、切削ブレードが取り付けられる切削ブレード取付け面に平行な切削送り方向に保持手段と切削手段とを相対移動させる切削送り手段と、切削送り方向に直交する割り出し送り方向に保持手段と切削手段とを相対移動させる割り出し送り手段と、保持手段の保持面に垂直な方向である切り込み送り方向に保持手段と切削手段とを相対移動させる切り込み送り手段と、を少なくとも備える切削装置に関するもので、保持手段に隣接する位置に配設され、切削ブレードを切り込ませて切削ブレードの先端の偏磨耗の確認に用いる確認用被加工物を保持する確認テーブルと、
保持手段又は確認テーブルに隣接する位置に配設され、回転するとともに割り出し送り方向に移動する切削ブレードの先端を接触させて切削ブレードの先端を研磨する研磨テーブルと、確認テーブルが保持した確認用被加工物に対して切削ブレードを切り込み方向に所定量移動させて切り込ませることにより略長方形の切り込み溝を形成するとともに、切り込み溝が形成された時の切削手段の切り込み位置を切り込み位置記憶部に記憶する溝形成手段と、撮像手段が切り込み溝を撮像することにより取得した画像情報より、確認用被加工物の表面における切削送り方向を長手方向とする切り込み溝の向かい合う2辺の長さと切込み溝の溝幅中心での切り込み溝の長さとのそれぞれの差及び該向かい合う2辺の長さの差を求め、これらのそれぞれの差がそれぞれの所定の許容値をすべて超えている否かによって切り込み溝の良否判定を行う溝良否判断手段と、溝良否判断手段が切り込み溝が不良と判断したときに、切削ブレードを回転させつつ切削ブレードの先端を研磨テーブルに当接させ、切削手段と研磨テーブルとを割り出し送り手段にて所定量相対移動させて切削ブレードの先端形状を修正するブレード先端修正手段とを備える。
【0008】
上記切削装置においては、確認テーブルにおける確認用被加工物を保持する保持面の高さ位置であるテーブル高さと、切り込み溝の向かい合う2辺の長さの平均値と、切り込み位置記憶部に記憶されている切り込み溝を形成した時の切削手段の切り込み位置とを用い、切削ブレードの外径を算出するブレード外形算出部を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、切削ブレードを切り込ませて磨耗の確認に用いる確認用被加工物を保持する確認テーブルと、切削ブレードを接触させてその先端を研磨する研磨テーブルとを備え、確認用被加工物に形成した切り込み溝を撮像してその良否判定を行い、不良と判定したときには研磨テーブルを用いて切削ブレードの先端を研磨してその先端形状を修正することとしたため、被加工物の切削加工において加工不良が生じるのを防ぐことができる。
【0010】
また、切削ブレードの外径を算出するブレード外形算出部を備えることで、切削ブレードの磨耗量を求めることができ、磨耗量を考慮して被加工物を切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削装置の一例を示す斜視図である。
図2】切削手段の構成を示す分解側面図である。
図3】確認テーブルに確認用被加工物が保持された状態を示す断面図である。
図4】確認テーブルに確認用被加工物が保持された状態を示す平面図である。
図5】研磨テーブルの一例を示す斜視図である。
図6】被加工物の面取り部の上方に切削ブレードが位置する状態を示す正面図である。
図7】被加工物の面取り部に切削ブレードが接触した状態の第1例を示す正面図である。
図8】被加工物の面取り部に切削ブレードが接触した状態の第2例を示す正面図である。
図9】確認用被加工物に切り込み溝を形成する手順を略示的に示す断面図である。
図10】確認用被加工物に形成された切り込み溝の第1例を示す平面図である。
図11】確認用被加工物に形成された切り込み溝の第2例を示す平面図である。
図12】切削ブレードの先端部を研磨する状態を模式的に示す側面図である。
図13】切削ブレードの磨耗量を求めるための各要素を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す切削装置1は、保持手段2に保持された被加工物に対して2つの切削手段3a、3bによって切削加工を施す装置であり、これらは互いに相対的に切削送り方向(X軸方向)、切削送り方向に直交する割り出し送り方向(Y軸方向)、及び、切削送り方向及び割り出し送り方向に直交する切り込み送り方向(Z軸方向)に移動可能となっている。図1の例では、保持手段2が切削送り手段4によって駆動されてX軸方向に移動し、切削手段3a、3bが割り出し送り手段5及び切り込み送り手段6によって駆動されてY軸方向およびZ軸方向に移動する構成としているが、この構成には限定されない。
【0013】
保持手段2は、例えば多孔質部材によって形成され円形の被加工物を保持する保持部材20を備えている。保持部材20は、図示しない吸引源に連通している。
【0014】
図2に示すように、切削手段3a、3bは、Y軸方向の軸心を有するスピンドル31の先端にマウント32が装着され、マウント32に切削ブレード33が装着されて構成されている。マウント32は、切削ブレード33を面で支持するフランジ部320と、切削ブレード33が挿入されるブレード挿入部321とから構成され、ブレード挿入部321には、切削ブレード33を固定するためのナットを螺着させる雄ねじ321aが形成されている。
【0015】
切削ブレード33は、ブレード挿入部321に挿入するための貫通孔330aが中心部に形成された基台330と、基台330から外周側に突出した状態で固着された切り刃331とから構成され、切削ブレード33をブレード挿入孔321に挿入し、図示しないナットを雄ねじ321aに螺着させると、切り刃331が、フランジ部320の切削ブレード取り付け面320aに密着して面で支持される。ブレード取り付け面320aは、X軸方向に対して平行となっている。
【0016】
図1に示すように、切削送り手段4は、X軸方向に延びるボールスクリュー40と、ボールスクリュー40と平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールスクリュー40の一端に連結されたモータ42と、ボールスクリュー40に螺合するナットを内部に有するとともに下部がガイドレール41に摺接する移動基台43とから構成され、モータ42に駆動されてボールスクリュー40が回動するのにともない、ガイドレール41にガイドされて移動基台43がX軸方向に移動する構成となっている。また、移動基台43の上には保持手段2が設けられており、移動基台43の移動によって保持手段2も同方向に移動する。
【0017】
割り出し送り手段5は、Y軸方向に延びるボールスクリュー50と、ボールスクリュー50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールスクリュー50の一端に連結されたモータ52と、ボールスクリュー50に螺合するナットを内部に有するとともに側部がガイドレール51に摺接する移動基台53とから構成され、モータ52に駆動されてボールスクリュー50が回動するのにともない、ガイドレール51にガイドされて移動基台53がX軸方向に移動する構成となっている。また、移動基台53には、切り込み送り手段6を介して切削手段3a、3bが設けられており、移動基台53の移動によって切削手段3も同方向に移動する。
【0018】
切り込み送り手段6は、Z軸方向に延びるボールスクリュー60と、ボールスクリュー60と平行に配設された一対のガイドレール61と、ボールスクリュー60の一端に連結されたモータ62と、ボールスクリュー60に螺合するナットを内部に有するとともに側部がガイドレール61に摺接する移動基台63とから構成され、モータ62に駆動されてボールスクリュー60が回動するのにともない、ガイドレール61にガイドされて移動基台63がX軸方向に移動する構成となっている。また、移動基台63の下端では切削手段3a、3bをそれぞれ支持しており、移動基台63の昇降によって切削手段3a、3bもそれぞれ同方向に昇降する。
【0019】
図1に示すように、移動基台43上には、保持手段2に隣接する位置に確認テーブル8を備えている。確認テーブル8の上面である保持面80には、図3及び図4に示すように、確認用被加工物81が保持される。確認テーブル8の内部には吸引路82が形成され、吸引路82は吸引源83に連通しており、保持面80において吸引力を作用させることにより確認用被加工物81を吸引保持することができる。この確認用被加工物81は、切削手段3を構成する切削ブレード31を切り込ませることにより、切削ブレード31の先端の偏磨耗を確認するのに用いられる。
【0020】
図1に示す移動基台43上には、保持手段2又は確認テーブル8に隣接する位置において研磨テーブル9が配設されている。研磨テーブル9は、回転するとともに割り出し送り方向に移動する切削ブレード31の先端を接触させて切削ブレードの先端を研磨するのに用いる。図5に示すように、研磨テーブル9は、回転軸90に連結され、この回転軸90は、カップリング91によってモータ92の回転軸に連結されており、モータ92に駆動されて研磨テーブル9が回転する構成となっている。
【0021】
図1に示すように、切り込み送り手段6を構成するモータ62及び切削手段3a、3bには、溝形成手段10が接続されている。溝形成手段10は、切削ブレード33を回転させるとともに、切削ブレード33を確認用被加工物81に切り込ませることにより、確認用被加工物に切り込み溝を形成する。この切り込み溝は、切削ブレード33の切り刃331の先端の磨耗の有無及び程度を判断するためのものである。溝形成手段10は、切り込み溝が形成された時の切削手段3aの切り込み方向の位置(切り込み位置)、具体的には、切削ブレード33の回転中心のZ軸方向の位置を切り込み位置記憶部15に記憶する。
【0022】
切削手段3a、3bの側部には、下方を撮像する撮像手段7a、7bが固定されており、撮像手段7a、7bには、溝良否判断手段11が接続されている。溝良否判断手段11は、CPU、メモリ等を有しており、撮像手段7a、7bが上記切り込み溝を撮像し取得した画像情報から、切り込み溝の形状の良否、すなわち切削ブレード31の先端形状の良否の判定を行う機能を有する。
【0023】
ブレード外径算出部12は、確認用被加工物81に形成した切り込み溝の長さ、前記切り込み位置記憶部15に記憶された切り込み送り手段6の切り込み位置等に基づき、切削ブレード33の外径を算出する機能を有する。
【0024】
ブレード先端修正手段13は、溝良否判断手段11が切り込み溝を不良と判断したときに、切削ブレード31を回転させて切り刃331の先端を研磨テーブル9に当接させることにより、先端形状を修正する機能を有する。
【0025】
テーブル位置記憶部14は、確認テーブル8の保持面80の高さ位置であるテーブル高さを記憶するとともに、切削ブレード33の切り刃331の先端とテーブル高さとの距離を記憶する。
【0026】
以下では、図1に示した保持手段2において円形の被加工物を保持し、切削手段3aを構成する切削ブレード33を用いて、被加工物の外周に沿って切削ブレード33を切り込ませて切削加工を行う場合について説明する。
【0027】
図6に示すように、保持手段2に保持された被加工物Wは、外周に面取り部W1が形成されている。最初に撮像手段7aを移動させながら被加工物Wの撮像を行い、被加工物Wの外周縁に形成された面取り部W1を検出する。そして、面取り部W1が検出されると、切削ブレード33を回転させながら面取り部W1の上方に位置させる。
【0028】
次に、保持手段2を回転させるとともに、回転する切削ブレード33を下降させ、図7に示すように、面取り部W1に切削ブレード33の切り刃331の先端部331aを接触させる。そうすると、面取り部W1が円形に除去されてエッジトリミングが行われるとともに、切り刃331の先端部331aが磨耗する。図7に示すように、先端部331aの半分のみを面取り部W1に接触させた場合は、先端部331aの接触した半分のうち、接触時間の長い部分が多く磨耗し、左右が非対称の形状となる。
【0029】
一方、図8に示すように、先端部331aのほぼ全体を面取り部W1に接触させた場合は、被加工物Wの中心側(図8における右側)と外周側(図8における左側)とで加工距離に違いがあり、接触時間の長い部分が多く磨耗するため、先端部331aの中心が窪んだ形状に磨耗する。
【0030】
このように、切削ブレード33の切り刃331の先端部331aが磨耗した場合は、そのまま切削加工を続行すると、切削不良を起こすおそれがあるため、先端部331aの整形を行う。
【0031】
具体的には、図1に示した溝形成手段10による制御の下で、図9(a)に示すように、移動基台43をX軸方向に移動させるとともに、整形の必要のある切削ブレード33を有する切削手段、例えば切削手段3aをY軸方向に移動させ、確認テーブル80に保持された確認用被加工物81の直上に切削ブレード33を位置させる。
【0032】
そして、図9(b)に示すように、回転する切削ブレード33をZ軸方向に所定量下降させて先端部331aを確認用被加工物81に切り込ませ、その後上昇させることにより、図9(c)に示すように、確認用被加工物81の表面に、X軸方向を長手方向とする略長方形の切り込み溝810を形成する。なお、確認用被加工物81としては、被加工物Wと同じ材質のものが使用される。例えば、被加工物Wがシリコンウェーハである場合は、確認用被加工物としてシリコンピースが使用される。
【0033】
次に、切削ブレード33の下方から確認用被加工物81を退避させ、図9(d)に示すように、切り込み溝810の上方に、いずれかの撮像手段、例えば、切削に使用していない切削手段3bに固定された撮像手段3bを移動させる。そして、撮像手段3bによって切り込み溝810を撮像し、その画像情報を図1に示した溝良否判断手段11に転送する。
【0034】
溝良否判断手段11では、図10に示すように、切り込み溝810の向かい合う2つの長辺の長さa、bと、切り込み溝810の溝幅Wの中心における切り込み溝810の長さcとを画像処理によって求める。そして、|a−b|、|a−c|、|c−b|の値をそれぞれ計算する。図11に示す切り込み溝810aのように、幅方向の中心部が短く形成されている場合等も、同様の計算を行う。
【0035】
溝良否判定手段11に備えたメモリには、上記|a−b|、|a−c|、|c−b|の値の所定の許容値Xab、Xac、Xcbがあらかじめ記憶されており、溝良否判定手段11では、|a−b|とXab、|a−c|とXac、|c−b|とXcbをそれぞれ比較し、以下の関係式(1)〜(3)が成り立つと判断したときには、先端部331aの磨耗が許容範囲を超えており、先端部331aの整形を要すると判断する。
Xab<|a−b| ・・・関係式(1)
Xac<|a−c| ・・・関係式(2)
Xcb<|c−b| ・・・関係式(3)
【0036】
上記関係式(1)〜(3)がすべて成立する場合は、図1に示したブレード先端修正手段13による制御の下で、切削ブレード33の切り刃331の先端部331aを整形し、形状を修正する。具体的には、切削ブレード33を図1及び図5に示した研磨テーブル9の上方に移動させ、図12に示すように、切削ブレード33を回転させつつ切削ブレード33の先端部331aを研磨テーブル9に当接させ、切削手段3aを割り出し送り手段5によって所定量Y軸方向に移動させて切削手段3aと研磨テーブル9とをY軸方向に所定量相対移動させることで、切削ブレード33の先端部331aを研磨してその形状を修正し、切削ブレード33を上昇させる。その後、研磨テーブル9を回転させることで、次の研磨が行われる際に、研磨テーブル9の未使用部分を用いて研磨を行うことができる。かかる修正により、切削ブレード33の先端部331aが円形に整形され、被加工物Wを切削できる状態となるため、被加工物Wの切削を再開する。以上のようにして切削ブレード33の先端部331aを研磨することにより、被加工物に加工不良が生じるのを防止することができる。
【0037】
一方、いずれかの関係式が成立しない場合は、先端部331aの整形をすることなく被加工物Wの切削を行うが、いずれにしても、先端部331aの磨耗量を考慮して切削時の切り込み深さを調整することで、被加工物Wに対して所望の切削加工を行うことができる。
【0038】
切削ブレード33の使用前の外径(半径)は、予めブレード外形算出部12に記憶されている。したがって、磨耗後の切削ブレード33の外径を算出すれば、摩耗量を求めることができ、磨耗量を考慮して切削ブレード33のZ軸方向の高さ位置を制御することにより、被加工物に対する切り込み量を均一にすることができる。
【0039】
撮像部7bによる撮像及び画像処理により、図13に示すように、切削ブレード33の先端部331aを確認用被加工物81に切り込ませた際に形成された切り込み溝810の長さLを求める。この切り込み溝810の長さLは、図10に示した2辺a,bの長さの平均値をとることが望ましい。
【0040】
また、確認テーブル8の保持面80と切削ブレード33の回転中心との距離Hは、テーブル位置記憶部14に記憶されているテーブル高さと、切り込み位置記憶部15に記憶された切削ブレード33の回転中心のZ軸方向の高さ位置との差から求められる。
【0041】
したがって、確認用被加工物の厚さをTとすると、切削ブレードの外径Rは、
(H−T)+(L/2)=R
の関係式から算出することができる。そして、使用前の切削ブレード33の外径から算出した外径Rの値を引くことにより、先端部331aの磨耗量を算出することができ、切削手段3aの切り込み送り方向の位置を制御する際に、この磨耗量を考慮することで、被加工物に対して切削ブレード33を所望量切り込ませることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:切削装置
2:保持手段 20:保持手段
3a、3b:切削手段
31:スピンドル
32:マウント
320:フランジ部 320a:切削ブレード取り付け面
321:ブレード挿入部 321a:雄ねじ
33:切削ブレード 330:基台 330a:貫通孔 331:切り刃
4:切削送り手段
40:ボールスクリュー 41:ガイドレール 42:モータ 43:移動基台
5:割り出し送り手段
50:ボールスクリュー 51:ガイドレール 52:モータ 53:移動基台
6:切り込み送り手段
60:ボールスクリュー 61:ガイドレール 62:モータ 63:移動基台
7a、7b:撮像手段
8:確認テーブル
80:保持面 81:確認用被加工物
9:研磨テーブル 90:回転軸 91:カップリング 92:モータ
10:溝形成手段
11:溝良否判断手段
12:ブレード外径算出部
13:ブレード先端修正手段
14:テーブル位置記憶部
15:切り込み位置記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13