(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂成分(A1)が、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)(ただし、前記構成単位(a0)を除く。)を有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
支持体上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪レジスト組成物≫
本発明のレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」という。)を含有する。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため該レジスト膜を現像すると、当該レジスト組成物がポジ型の場合は露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、当該レジスト組成物がネガ型の場合は未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
本明細書においては、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、未露光部が溶解除去されるネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
また、本発明のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0015】
本発明のレジスト組成物は露光により酸を発生する酸発生能を有するものであり、基材成分が露光により酸を発生してもよく、基材成分とは別に配合された添加剤成分が露光により酸を発生してもよい。
具体的には、本発明のレジスト組成物は、
(1)露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、「(B)成分」という。)を含有するものであってもよく;
(2)(A)成分が露光により酸を発生する成分であってもよく;
(3)(A)成分が露光により酸を発生する成分であり、且つ、さらに(B)成分を含有するものであってもよい。
すなわち、上記(2)及び(3)の場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1’)(以下、「(A1’)成分」ということがある。)であることが好ましい。このような(A1’)成分としては、露光により酸を発生する構成単位を有する樹脂を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位としては、公知のものを用いることができる。なかでも、本発明においては上記(1)の場合であることが特に好ましい。
【0016】
<(A)成分>
本発明において、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、「樹脂」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。
重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。
(A)成分としては、少なくとも樹脂が用いられ、樹脂に加えて低分子化合物をさらに併用してもよい。
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が増大するものであってもよく、酸の作用により現像液に対する溶解性が減少するものであってもよい。
また、本発明において(A)成分は、露光により酸を発生するものであってもよい。
【0017】
本発明のレジスト組成物が、アルカリ現像プロセスにおいてネガ型レジストパターンを形成する「アルカリ現像プロセス用ネガ型レジスト組成物」である場合、(または溶剤現像プロセスにおいてポジ型レジストパターンを形成する「溶剤現像プロセス用ポジ型レジスト組成物」である場合、(A)成分としては、好ましくは、アルカリ現像液に可溶性の基材成分(A−2)(以下「(A−2)成分」という。)が用いられ、さらに、架橋剤成分が配合される。かかるレジスト組成物は、露光により酸が発生すると、当該酸が作用して該(A−2)成分と架橋剤成分との間で架橋が起こり、結果、アルカリ現像液に対する溶解性が減少(有機系現像液に対する溶解性が増大)する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性(有機系現像液に対して可溶性)へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性(有機系現像液に対して難溶性)のまま変化しないため、アルカリ現像液で現像することによりネガ型レジストパターンが形成できる。また、このとき現像液として有機系現像液を用いると、ポジ型のレジストパターンが形成できる。
(A−2)成分としては、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂(以下「アルカリ可溶性樹脂」という。)が用いられる。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば特開2000−206694号公報に開示されている、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸のアルキルエステル(好ましくは炭素数1〜5のアルキルエステル)から選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂;米国特許6949325号公報に開示されている、スルホンアミド基を有するα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル樹脂またはポリシクロオレフィン樹脂;米国特許6949325号公報、特開2005−336452号公報、特開2006−317803号公報に開示されている、フッ素化アルコールを含有し、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル樹脂;特開2006−259582号公報に開示されている、フッ素化アルコールを有するポリシクロオレフィン樹脂等が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。
なお、前記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸のうち、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方または両方を示す。
架橋剤成分としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤、メラミン系架橋剤などを用いると、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。架橋剤成分の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
【0018】
本発明のレジスト組成物が、アルカリ現像プロセスにおいてポジ型パターンを形成し、溶剤現像プロセスにおいてネガ型パターンを形成するレジスト組成物である場合、(A)成分としては、酸の作用により極性が増大する基材成分(A−1)(以下「(A−1)成分」という。)が用いられる。(A−1)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても良好な現像コントラストを得ることができる。
アルカリ現像プロセスを適用する場合、該(A−1)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりポジ型パターンが形成できる。
一方、溶剤現像プロセスを適用する場合は、該(A−1)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなり有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型パターンが形成できる。
本発明において、(A)成分は、(A−1)成分であることが好ましい。
【0019】
[樹脂成分(A1)]
(A)成分は、上記一般式(a0−1)で表される構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)(以下、(A1)成分)を含有する。(A1)成分は前記(A−1)成分であることが好ましい。
【0020】
(構成単位(a0))
構成単位(a0)は、下記式(a0−1)で表される構成単位である。構成単位(a0)は、末端のスルトン骨格及びアセタール構造を有することから、スルトン骨格に由来する酸拡散制御機能及び基板密着性向上能、並びに、アセタール構造に由来する酸による酸解離性機能を併せて有するため、レジスト組成物を、リソグラフィー特性及び形状に優れたものとすることができる。
また酸解離後にカルボキシ基を生じるため、アルカリ現像によりパターン形成を行う場合、アルカリ現像液に対する溶解性に優れるため、解像性、LWR、および裾引き形状の改善等のリソグラフィー特性の向上に寄与する。
【0021】
【化3】
(式中、R
1は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表す。Xは、酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0022】
式(a0−1)中、R
2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
R
2における炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
R
2における炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、前記「R
2における炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
なかでも、R
2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であることが好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0023】
一般式(0−1)中、R
1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
R
1が表す、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基としは、前記R
2と同様のものが挙げられる。
R
1としては、LWRの改善効果および高解像度のレジストパターンを得る観点から、R
1が水素原子またはメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。また、R
1が水素原子の場合には、酸解離性部位がメチレン基となり、R
1がメチル基等のアルキル基の場合よりも相対的に酸によって解離しにくくなる。そのため、用途によって使い分けができる。
なお、後述の構成単位(a1)を組み合わせる場合、リソグラフィー特性向上の点で、R
1が水素原子の場合の方が、好ましい。これは、各構成単位の酸による解離のしにくさ(脱保護エネルギー)の差のバランスがよくなるためと考えられる。
【0024】
式(a0−1)中、Xは酸素原子(−O−)若しくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
Xにおける炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に−O−または−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。
Xとしては、LWRの改善効果および高解像度のレジストパターンを得る観点から、メチレン基または酸素原子(−O−)が好ましい。
【0025】
以下に、構成単位(a0)の具体例を示す。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0027】
(A1)成分が含有する構成単位(a0)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
(A1)成分中の構成単位(a0)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位に対し、LWRの改善効果および高解像度のフォトレジストパターンを得る観点から、5〜80モル%であることが好ましく、10〜70モル%以下であることがより好ましく、10〜50モル%であることが特に好ましい。
上記上限値以下とすることにより、有機溶剤(後述の(S)成分等)への溶解性が高まる。一方、下限値以上とすることによって、LWR等のリソグラフィー特性がより向上する。
【0028】
(A1)成分は、上記構成単位(a0)に加えて、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有することが特に好ましい。また、(A1)成分は、上記構成単位(a0)に加えて、又は、上記構成単位(a0)と構成単位(a1)とに加えて、−SO
2−含有環式基を有する構成単位(a5)を有することが好ましい。なお、構成単位(a1)及び(a5)については上記構成単位(a0)に該当しないものとする。
また、(A1)成分が露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1’)である場合、該(A1’)成分は、露光により酸を発生する部位(酸発生部位)を、側鎖中に含んでもよく、主鎖末端に含んでもよい。なかでも(A1’)成分としては、酸を発生する部位を側鎖中に含むことが好ましく、(A1)成分が構成単位(a0)、(a1)等に加えて、露光により酸を発生する構成単位を有するものが特に好ましい。
【0029】
(構成単位(a1))
(A1)成分は、上記構成単位(a0)に加えて、特に、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有することが特に好ましい。
「酸分解性基」は、露光により発生する酸(後述する(B)成分から発生する酸等)の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、たとえば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、たとえばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(−SO
3H)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に−OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基を酸解離性基で保護した基(たとえばOH含有極性基の水素原子を酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
「酸解離性基」は、露光により発生する酸の作用により、少なくとも、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基である。酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、他方、現像液が有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)の場合には溶解性が減少する。
【0030】
酸解離性基としては、特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状又は環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状又は環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基が形成される。
前記鎖状又は環状のアルキル基は、置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」という。
【0031】
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性基、脂肪族環式基を含有する酸解離性基が挙げられる。
ここで、「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。「脂肪族分岐鎖状酸解離性基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性基としては、たとえば、−C(R
71)(R
72)(R
73)で表される基が挙げられる。式中、R
71〜R
73は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基である。−C(R
71)(R
72)(R
73)で表される基は、炭素数が4〜8であることが好ましく、具体的にはtert−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基などが挙げられ、特にtert−ブチル基が好ましい。
【0032】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基又は多環式基であることを示す。
「脂肪族環式基を含有する酸解離性基」における脂肪族環式基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
該脂肪族環式基の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、該炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
脂肪族環式基としては、炭素数が3〜30であるものが好ましく、5〜30であるものがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。当該脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などの脂環式炭化水素基が挙げられる。また、これらの脂環式炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部がエーテル基(−O−)で置換されたものであってもよい。
【0033】
脂肪族環式基を含有する酸解離性基としては、たとえば、
(i)1価の脂肪族環式基の環骨格上、当該酸解離性基に隣接する原子(たとえば−C(=O)−O−における−O−)と結合する炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合して第3級炭素原子が形成されている基(以下「環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基」ということがある);
(ii)1価の脂肪族環式基と、これに結合する第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレンとを有する基などが挙げられる。
前記(i)の基において、脂肪族環式基の環骨格上、当該酸解離性基に隣接する原子と結合する炭素原子に結合する置換基としては、たとえば置換基を有していていもよいアルキル基が挙げられる。該アルキル基としては、たとえば後述する式(1−1)〜(1−9)中のR
14と同様のものが挙げられる。
前記(i)の基の具体例としては、たとえば下記一般式(1−1)〜(1−9)で表される基等が挙げられる。
前記(ii)の基の具体例としては、たとえば下記一般式(2−1)〜(2−6)で表される基等が挙げられる。
【0034】
【化5】
[式中、R
14は置換基を有していていもよいアルキル基であり、gは0〜8の整数である。]
【0035】
【化6】
[式中、R
15およびR
16は、それぞれ独立してアルキル基である。]
【0036】
式(1−1)〜(1−9)中、R
14のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状が好ましい。
【0037】
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn−ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが最も好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0038】
該環状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、5〜8がより好ましい。具体的にはモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状のアルキル基は、置換基を有していてもよい。具体的には、アルキル基を構成する水素原子の一部または全部がアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、カルボキシ基等で置換されていてもよく、アルキル基を構成する炭素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
gは0〜3の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましい。
【0039】
式(2−1)〜(2−6)中、R
15〜R
16のアルキル基としては、前記R
14のアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。
また、式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基が挙げられる。
【0040】
「アセタール型酸解離性基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性基と、当該アセタール型酸解離性基が結合した酸素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基が形成される。
アセタール型酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0041】
【化7】
[式中、R
1’,R
2’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Yは炭素数1〜5のアルキル基または脂肪族環式基を表す。]
【0042】
式(p1)中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
式(p1)中、R
1’、R
2’はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。R
1’、R
2’の炭素数1〜5のアルキル基としては、前記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Yにおける炭素数1〜5のアルキル基としては、上記R
1’,R
2’における炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられる。
Yにおける環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
また、R
1’及びYがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であって、R
1’の末端とYの末端とが結合していてもよい。この場合、結合により形成された環式基は、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0043】
本発明のレジスト組成物において、構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a11);ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位(a12)、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の−C(=O)−OHにおける水素原子の少なくとも一部が酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位(a13)等が挙げられる。
【0044】
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ヒドロキシ基で置換した基が挙げられる。
α置換アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基がより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0045】
「ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
以下、構成単位(a11)、構成単位(a12)、構成単位(a13)について説明する。
【0046】
(構成単位(a11))
構成単位(a11)として、具体的には、下記の一般式(a11−0−1)で表される構成単位、下記一般式(a11−0−2)で表される構成単位等が挙げられる。
【0047】
【化8】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり;X
1は酸解離性基であり;Y
3”は2価の連結基であり;X
2は酸解離性基である。]
【0048】
一般式(a11−0−1)において、Rは前記式(a0−1)中のR
2と同様である。
X
1は、酸解離性基であれば特に限定されることはなく、たとえば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性基が好ましい。
一般式(a11−0−2)において、Rは上記と同様である。
X
2は、式(a11−0−1)中のX
1と同様である。
【0049】
Y
3”の2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の基または原子)で置換されていることを意味する。
Y
3”における該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
前記Y
3”における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0050】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0051】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0052】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記Y
3”における2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、炭素数が3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
前記芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香族炭化水素環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0053】
前記Y
3”の「ヘテロ原子を含む2価の連結基」におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、−NH−C(=O)−、=N−、一般式−Y
21−O−Y
22−、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−で表される基[式中、Y
21およびY
22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。]等が挙げられる。
Y
3”が−NH−の場合、そのHはアルキル基、アリール基(芳香族基)等の置換基で置換されていてもよい。
式−Y
21−O−Y
22−、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−中、Y
21およびY
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記でY
2における「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」として挙げたものと同様のものが挙げられる。
Y
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
式−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−で表される基において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−で表される基としては、式−Y
21−C(=O)−O−Y
22−で表される基が特に好ましい。なかでも、式−(CH
2)
a’−C(=O)−O−(CH
2)
b’−で表される基が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、ヘテロ原子として酸素原子を有する直鎖状の基、例えばエーテル結合またはエステル結合を含む基、が好ましく、前記式−Y
21−O−Y
22−、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−で表される基がより好ましい。
【0054】
上記のなかでも、Y
3”の2価の連結基としては、特に、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。これらの中でも、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。
【0055】
構成単位(a11)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0056】
【化9】
[式中、R、R
1’、R
2’、n、YおよびY
3”はそれぞれ前記と同じであり、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性基を表す。]’
【0057】
式中、X’は、前記第3級アルキルエステル型酸解離性基と同様のものが挙げられる。
R
1’、R
2’、n、Yとしては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR
1’、R
2’、n、Yと同様のものが挙げられる。
Y
3”としては、上述の一般式(a11−0−2)におけるY
3”と同様のものが挙げられる。
なお、式(a1−3)で表される構成単位について、後述の式(a1−3−13)〜(a1−3−32)で表される構成単位が好ましい。
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0066】
本発明においては、構成単位(a11)として、下記一般式(a11−0−11)〜(a11−0−15)でそれぞれ表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。
なかでも、下記一般式(a11−0−11)〜(a11−0−15)でそれぞれ表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を有することがより好ましく、下記一般式(a11−0−11)〜(a11−0−13)又は(a11−0−15)で表される構成単位の少なくともいずれか一方を有することがさらに好ましい。
【0067】
【化18】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、R
21はアルキル基であり;R
22は、当該R
22が結合した炭素原子と共に脂肪族単環式基を形成する基であり;R
23は分岐鎖状のアルキル基であり;R
24は、当該R
24が結合した炭素原子と共に脂肪族多環式基を形成する基であり;R
25は炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基である。R
15およびR
16は、それぞれ独立してアルキル基である。]
【0068】
各式中、Rについての説明は前記と同じである。
式(a11−0−11)中、R
21のアルキル基としては、前記式(1−1)〜(1−9)中のR
14のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基、エチル基若しくはイソプロピル基、又は環状のアルキル基(好ましくは多環式基)が好ましい。
R
22が、当該R
22が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族単環式基としては、前記第3級アルキルエステル型酸解離性基において挙げた脂肪族環式基のうち、単環式基であるものと同様のものが挙げられる。具体的には、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。該モノシクロアルカンは、3〜11員環であることが好ましく、3〜8員環であることがより好ましく、4〜6員環がさらに好ましく、5または6員環が特に好ましい。
該モノシクロアルカンは、環を構成する炭素原子の一部がエーテル基(−O−)で置換されていてもよいし、されていなくてもよい。
また、該モノシクロアルカンは、置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基を有していてもよい。
かかる脂肪族単環式基を構成するR
22としては、たとえば、炭素原子間にエーテル基(−O−)が介在してもよい直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0069】
式(a11−0−11)で表される構成単位の具体例としては、前記式(a1−1−16)〜(a1−1−23)、(a1−1−27)、(a1−1−31)、(a1−1−37)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0070】
式(a11−0−12)中、R
23の分岐鎖状のアルキル基としては、前記式(1−1)〜(1−9)中のR
14のアルキル基で挙げた分岐鎖状のアルキル基と同様のものが挙げられ、イソプロピル基が最も好ましい。
R
24が、当該R
24が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族多環式基としては、前記第3級アルキルエステル型酸解離性基において挙げた脂肪族環式基のうち、多環式基であるものと同様のものが挙げられる。
式(a11−0−12)で表される構成単位の具体例としては、前記式(a1−1−26)、(a1−1−28)〜(a1−1−30)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
式(a11−0−12)で表される構成単位としては、R
24が、当該R
24が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族多環式基が2−アダマンチル基であるものが好ましく、特に、前記式(a1−1−26)で表される構成単位が好ましい。
【0071】
式(a11−0−13)中、RおよびR
24はそれぞれ前記と同様である。
R
25の直鎖状のアルキル基としては、前記式(1−1)〜(1−9)中のR
14のアルキル基で挙げた直鎖状のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が最も好ましい。
式(a11−0−13)で表される構成単位として具体的には、前記一般式(a1−1)の具体例として例示した、式(a1−1−1)〜(a1−1−2)、(a1−1−7)〜(a1−1−15)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
式(a11−0−13)で表される構成単位としては、R
24が、当該R
24が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族多環式基が2−アダマンチル基であるものが好ましく、特に、前記式(a1−1−1)または(a1−1−2)で表される構成単位が好ましい。また、R
24が、当該R
24が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族多環式基が「テトラシクロドデカンから1個以上の水素原子を除いた基」であるものも好ましく、前記式(a1−1−8)、(a1−1−9)又は(a1−1−30)で表される構成単位も好ましい。
【0072】
式(a11−0−14)中、RおよびR
22はそれぞれ前記と同様である。R
15およびR
16は、それぞれ前記一般式(2−1)〜(2−6)におけるR
15およびR
16と同様である。
式(a11−0−14)で表される構成単位として具体的には、前記一般式(a1−1)の具体例として例示した、式(a1−1−35)、(a1−1−36)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0073】
式(a11−0−15)中、RおよびR
24はそれぞれ前記と同様である。R
15およびR
16は、それぞれ前記一般式(2−1)〜(2−6)におけるR
15およびR
16と同様である。
式(a11−0−15)で表される構成単位として具体的には、前記一般式(a1−1)の具体例として例示した、式(a1−1−4)〜(a1−1−6)、(a1−1−34)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0074】
(構成単位(a12)、構成単位(a13))
本明細書において、構成単位(a12)は、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位である。
また、構成単位(a13)は、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の−C(=O)−OHにおける水素原子の少なくとも一部が酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位である。
構成単位(a12)、構成単位(a13)において、酸分解性基を含む置換基としては、上記構成単位(a11)において説明した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基が好ましいものとして挙げられる。
【0075】
構成単位(a12)、構成単位(a13)のなかで好適なものとしては、下記の一般式(a12−1)〜(a12−4)、一般式(a13−1)のいずれかで表される構成単位等が例示できる。
【0076】
【化19】
[式(a12−1)〜(a12−4)、(a13−1)中、Rは上記同様であり;R
88はハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり;qは0〜4の整数であり;R
1’は上記同様であり;nは0〜3の整数であり;Wは脂肪族環式基、芳香族環式炭化水素基又は炭素数1〜5のアルキル基であり;rは1〜3であり;R
41、R
42、R
43はそれぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり;X
1は酸解離性基である。]
【0077】
前記式(a12−1)〜(a12−4)、(a13−1)中、「−O−CHR
1’−O−(CH
2)
n−W」、「−O−C(O)−O−C(R
41)(R
42)(R
43)」、「−O−C(O)−O−X
1」、「−O−(CH
2)
r−C(O)−O−X
1」、および「−C(O)−O−X
1」のフェニル基との結合位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよく、本発明の効果が良好であることから、p−位が最も好ましい。
【0078】
R
88はハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
R
88のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
R
88の炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、Rの炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
R
88の置換位置は、qが1である場合はo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
qが2の場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。
ただし、1≦p+q≦5である。
【0079】
qは0〜4の整数であり、0または1であることが好ましく、特に工業上、0であることが好ましい。
nは0〜3の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
Wにおける脂肪族環式基は1価の脂肪族環式基である。脂肪族環式基は、たとえば、従来のArFレジストにおいて多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。脂肪族環式基の具体例としては、たとえば、炭素数5〜7の脂肪族単環式基、炭素数10〜16の脂肪族多環式基が挙げられる。
該脂肪族環式基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
該脂肪族環式基の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされず、該環構造中に酸素原子等を有していても良い。
炭素数5〜7の脂肪族単環式基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が例示でき、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサンなどから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
炭素数10〜16の脂肪族多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデシル基が工業上好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
Wの芳香族環式炭化水素基としては、炭素数10〜16の芳香族多環式基が挙げられる。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、1−ピレニル基等が挙げられ、2−ナフチル基が工業上特に好ましい。
Wの炭素数1〜5のアルキル基としては、上記ヒドロキシスチレンのα位に結合していてよい炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0080】
R
41〜R
43は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、具体例としては、上記Rの炭素数1〜5のアルキル基で例示したものと同様である。
X
1の酸解離性基は、上記式(a11−0−1)中のX
1の酸解離性基と同様である。
rは、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
【0081】
上記構成単位(a12)、構成単位(a13)のなかでも、構成単位(a12)が好ましく、一般式(a12−1)で表される構成単位、一般式(a12−4)で表される構成単位がより好ましい。
構成単位(a12)の好適な具体例を以下に挙げる。
【0083】
構成単位(a12)としては、化学式(a12−1−1)〜(a12−1−12)でそれぞれ表される構成単位から選択される少なくとも1種が好ましく、化学式(a12−1−1)、(a12−1−2)、(a12−1−5)〜(a12−1−12)でそれぞれ表される構成単位が最も好ましい。
【0084】
(A1)成分が含有する構成単位(a1)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
上記のなかでも、構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a11)であることが好ましい。
(A1)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位に対し、5〜70モル%が好ましく、10〜65モル%がより好ましく、15〜60モル%が特に好ましい。構成単位(a1)の割合を下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、感度、解像性、LWR等のリソグラフィー特性も向上する。また、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0085】
(構成単位(a5))
構成単位(a5)は、−SO
2−含有環式基を含む構成単位(ただし、前記構成単位(a0)を除く。)である。構成単位(a5)の−SO
2−含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めるうえで有効なものである。また、アルカリ現像液等の水を含有する現像液との親和性が向上する点で、アルカリ現像プロセスにおいて有効である。
【0086】
ここで、「−SO
2−含有環式基」とは、その環骨格中に−SO
2−を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、−SO
2−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO
2−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO
2−含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
−SO
2−含有環式基は、特に、その環骨格中に−O−SO
2−を含む環式基、すなわち−O−SO
2−中の−O−S−が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
−SO
2−含有環式基は、炭素数が3〜30であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、4〜15であることがさらに好ましく、4〜12であることが特に好ましい。ただし、該炭素数は環骨格を構成する炭素原子の数であり、置換基における炭素数を含まないものとする。
−SO
2−含有環式基は、−SO
2−含有脂肪族環式基であってもよく、−SO
2−含有芳香族環式基であってもよい。好ましくは−SO
2−含有脂肪族環式基である。
−SO
2−含有脂肪族環式基としては、その環骨格を構成する炭素原子の一部が−SO
2−または−O−SO
2−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基が挙げられる。より具体的には、その環骨格を構成する−CH
2−が−SO
2−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基、その環を構成する−CH
2−CH
2−が−O−SO
2−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基等が挙げられる。
該脂環式炭化水素環は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
該脂環式炭化水素環は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂環式炭化水素環としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0087】
−SO
2−含有環式基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、環状エーテルが有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”(R”は前記同様)と同様のものが挙げられる。
−SO
2−含有環式基として、より具体的には、下記一般式(3−1)〜(3−4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0088】
【化21】
[式中、A’は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、zは0〜2の整数であり、R
27はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり、R”は水素原子またはアルキル基である。]
【0089】
前記一般式(3−1)〜(3−4)中、A’は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。
A’における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に−O−または−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。
A’としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
zは0〜2のいずれであってもよく、0が最も好ましい。
zが2である場合、複数のR
27はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
R
27におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、前記で−SO
2−含有環式基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
以下に、前記一般式(3−1)〜(3−4)でそれぞれ表される具体的な環式基を例示する。なお、式中の「Ac」はアセチル基を示す。
【0093】
−SO
2−含有環式基としては、上記の中でも、前記一般式(3−1)で表される基が好ましく、前記化学式(3−1−1)、(3−1−18)、(3−3−1)および(3−4−1)のいずれかで表される基からなる群から選択される少なくとも一種を用いることがより好ましく、前記化学式(3−1−1)又は(3−4−1)で表される基が最も好ましい。
【0094】
構成単位(a5)の例として、より具体的には、下記一般式(a5−0)で表される構成単位が挙げられる。
【0095】
【化25】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、R
28はスルトン環を含む基であり、R
29は単結合または2価の連結基である。]
【0096】
式(a5−0)中、Rは前記と同様である。
R
28は、前記で挙げたスルトン環を含む基と同様である。
R
29は、単結合、2価の連結基のいずれであってもよい。本発明の効果に優れることから、2価の連結基であることが好ましい。
R
29における2価の連結基としては、特に限定されず、たとえば、前記一般式(a1−3)におけるY
3”と同様のものが挙げられる。それらの中でも、アルキレン基、またはエステル結合(−C(=O)−O−)を含むものが好ましい。
該アルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、前記Y
3”における脂肪族炭化水素基として挙げた直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
エステル結合を含む2価の連結基としては、特に、一般式:−R
30−C(=O)−O−[式中、R
30は2価の連結基である。]で表される基が好ましい。すなわち、構成単位(a5)は、下記一般式(a5−0−1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0097】
【化26】
[式中、RおよびR
28はそれぞれ前記と同様であり、R
30は2価の連結基である。]
【0098】
R
30としては、特に限定されず、たとえば、前記一般式(a1−3)におけるY
3”と同様のものが挙げられる。
R
30の2価の連結基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、またはヘテロ原子として酸素原子を含む2価の連結基が好ましい。
直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基またはエチレン基が好ましく、メチレン基が特に好ましい。
分岐鎖状のアルキレン基としては、アルキルメチレン基またはアルキルエチレン基が好ましく、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−または−C(CH
3)
2CH
2−が特に好ましい。
酸素原子を含む2価の連結基としては、エーテル結合またはエステル結合を含む2価の連結基が好ましい。
【0099】
(A1)成分が有する構成単位(a5)は1種でも2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a5)を有する場合、構成単位(a5)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜60モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、10〜40モル%であることが特に好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a5)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができ、DOF、CDU等の種々のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好となる。
【0100】
(構成単位(a2))
(A1)成分は、構成単位(a0)、(a1)及び(a5)に加えて、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)を有していてもよい。
構成単位(a2)のラクトン含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めるうえで有効なものである。また、アルカリ現像液等の水を含有する現像液との親和性が向上する点で、アルカリ現像プロセスにおいて有効である。
なお、前記構成単位(a0)、(a1)又は(a5)がその構造中にラクトン含有環式基を含むものである場合、該構成単位は構成単位(a2)にも該当するが、このような構成単位は構成単位(a0)、(a1)又は(a5)に該当し、構成単位(a2)には該当しないものとする。
【0101】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるものが挙げられる。
【0102】
【化27】
[式中、Ra’
21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子でありn’は0〜2の整数でありm’は0または1である。]
【0103】
下記に一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表される構成単位の具体例を挙げる。
【0106】
構成単位(a2)としては、ラクトン含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されず、構成単位(a5)の前記式(a5−0)で表される構成単位において、R
28を上記ラクトン含有環式基に置き換えた構成単位が好ましく、構成単位(a5)の前記式(a5−0−1)において、R
28を上記ラクトン含有環式基に置き換えた構成単位がより好ましい。
【0107】
かかる構成単位(a2)を(A1)成分に含有させる際には、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a2)を1〜80モル%含有させることが好ましく、10〜70モル%含有させることがより好ましい。
【0108】
(構成単位(a3))
(A1)成分は、下記一般式(a3−1)で表される構成単位(a3)を有していてもよい。
【0109】
【化30】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。P
0は−C(=O)−O−、−C(=O)−NR
0−(R
0は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合である。W
0は−COOH、−CONHCO−R
a3(R
a3は炭化水素基)、又は、置換基として−OH、−COOH、−CN、−SO
2NH
2及び−CONH
2からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する炭化水素基であり、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。]
【0110】
前記式(a3−1)中、Rは前記同様である。
前記式(a3−1)中、P
0は、−C(=O)−O−、−C(=O)−NR
0−(R
0は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合である。R
0のアルキル基としては、Rのアルキル基と同様である。
【0111】
前記式(a3−1)中、W
0は、−COOH、−CONHCO−R
a3(R
a3は炭化水素基)、又は、置換基として−OH、−COOH、−CN、−SO
2NH
2及び−CONH
2からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する炭化水素基であり、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。
「置換基を有する炭化水素基」とは、炭化水素基に結合した水素原子の少なくとも一部が置換基で置換されていることを意味する。
W
0又はR
a3における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
W
0又はR
a3における脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、脂肪族環式基(単環式基、多環式基)が好適に挙げられ、これらの説明は上記と同様である。
W
0又はR
a3における芳香族炭化水素基は、少なくとも1つ芳香環を有する炭化水素基であり、この説明は上記と同様である。
【0112】
ただし、W
0は、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。この「任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい」とは、炭化水素基、又は置換基を有する炭化水素基をそれぞれ構成する炭素原子(置換基部分の炭素原子を含む。)の一部が、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよいこと、又は炭化水素基に結合した水素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよいこと、を意味する。
以下に、一例として任意の位置に酸素原子(O)を有するW
0について例示する。
【0113】
【化31】
[式中、W
00は炭化水素基であり、R
mは炭素数1〜5のアルキレン基である。]
【0114】
前記式中、W
00は炭化水素基であり、前記式(a3−1)中のW
0と同様のものが挙げられる。W
00は、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは脂肪族環式基(単環式基、多環式基)である。
R
mは、直鎖状、分岐鎖状であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基、エチレン基であることがさらに好ましい。
【0115】
構成単位(a3)のなかで好適なものとして、より具体的には、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、下記一般式(a3−11)〜(a3−13)のいずれかで表される構成単位等が挙げられる。(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位としては、前記式(a3−1)中のP
0が単結合であり、W
0が−COOHである構成単位が挙げられる。
【0116】
【化32】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。W
01は置換基として−OH、−COOH、−CN、−SO
2NH
2及び−CONH
2からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する芳香族炭化水素基である。P
02及びP
03はそれぞれ−C(=O)−O−、−C(=O)−NR
0−(R
0は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合である。W
02は置換基として−OH、−COOH、−CN、−SO
2NH
2及び−CONH
2からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する環状の炭化水素基、又は、−CONHCO−R
a32(R
a32は環状の炭化水素基)であり、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。W
03は置換基として−OH、−COOH、−CN、−SO
2NH
2及び−CONH
2からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する鎖状の炭化水素基、又は、−CONHCO−R
a33(R
a33は鎖状の炭化水素基)である。]
【0117】
[一般式(a3−11)で表される構成単位]
前記式(a3−11)中、Rは、前記式(a3−1)中のRの説明と同様である。
W
01における芳香族炭化水素基は、前記式(a3−1)中のW
0における芳香族炭化水素基の説明と同様である。
以下に、一般式(a3−11)で表される構成単位の好適な具体例を示す。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0119】
[一般式(a3−12)で表される構成単位]
前記式(a3−12)中、Rは、前記式(a3−1)中のRの説明と同様である。
P
02は、−C(=O)−O−、−C(=O)−NR
0−(R
0は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合であり、−C(=O)−O−又は単結合であることが好ましい。R
0のアルキル基としては、Rのアルキル基と同様である。
W
02またはR
a32における環状の炭化水素基は、前記式(a3−1)中のW
0についての説明の中で例示した脂肪族環式基(単環式基、多環式基)、芳香族炭化水素基とそれぞれ同様のものが挙げられる。
W
02またはR
a32は、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよく、この説明は前記式(a3−1)中のW
0の説明と同様である。
以下に、一般式(a3−12)で表される構成単位の好適な具体例を示す。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0122】
(A1)成分が構成単位(a3)を含有する場合、(A1)成分中の構成単位(a3)は1種であっても2種以上であってもよい。
(A1)成分が構成単位(a3)を含有する場合、構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位に対して0〜85モル%であることが好ましく、0〜80モル%がより好ましい。構成単位(a3)の割合を下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果(解像性、リソグラフィー特性、パターン形状の向上効果)が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0123】
(構成単位(a4))
構成単位(a4)は、酸非解離性の脂肪族多環式基を含む構成単位である。
構成単位(a4)において、該多環式基は、たとえば、前記の構成単位(a1)の場合に例示した多環式基と同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特に、トリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)でそれぞれ表される構造のものを例示することができる。
【0124】
【化36】
(式中、Rは前記のものと同じ意味である。)
【0125】
かかる構成単位(a4)を(A1)成分に含有させる際には、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%含有させることが好ましく、5〜20モル%含有させることがより好ましい。
【0126】
本発明のレジスト組成物において、(A)成分は、上述した構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を含有するものである。
かかる(A1)成分としては、構成単位(a0)と構成単位(a1)とを有する高分子化合物、または構成単位(a0)と構成単位(a2)とを有する高分子化合物が好ましい。
【0127】
(A1)成分として具体的には、構成単位(a0)及び構成単位(a1)からなる高分子化合物;構成単位(a0)及び構成単位(a2)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)及び構成単位(a5)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)及び構成単位(a2)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)、構成単位(a5)及び構成単位(a3)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a4)からなる高分子化合物;構成単位(a0)、構成単位(a1)、構成単位(a5)及び構成単位(a4)からなる高分子化合物が例示できる。
【0128】
(A)成分中、(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。該(A1)成分の割合が25質量%以上であると、本発明の効果がより向上する。
【0129】
(A1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000〜50000が好ましく、1500〜30000がより好ましく、2000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.5が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0130】
(A)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、(A)成分には、上記重合の際に、たとえばHS−CH
2−CH
2−CH
2−C(CF
3)
2−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF
3)
2−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
各構成単位を誘導するモノマーは、市販のものを用いても、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
構成単位(a0)を誘導するモノマーは、例えば以下の様にして製造することができる。
【0131】
(構成単位(a0)を誘導するモノマーの製造方法)
構成単位(a0)を誘導するモノマー(以下、「アクリル酸エステル系誘導体(1)」ということがある。)は、以下に示すように、例えば、アルコール誘導体(3)とアルデヒド化合物(4)を酸の存在下で反応させてアルキルエーテル化合物(2)を製造し(第一工程)、次いで該アルキルエーテル化合物(2)をエステル化する(第二工程)ことにより製造できる。
【0132】
【化37】
(式中、R
1、R
2およびXは、前記定義の通りである。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【0133】
(第一工程)
第一工程で原料として使用できるアルコール誘導体(3)の具体例を以下に示すが、特にこれらに限定されない。
【0135】
第一工程で使用するアルコール誘導体(3)の製造方法については特に制限はなく、公知の方法によって製造できる。例えば、2−クロロエタンスルホニルクロリドとシクロペンタジエンから製造できるノルボルネンスルホニルクロリドの加水分解を行ってスルホン酸誘導体へと変換し、その後、酸化剤で処理することで製造できる(国際公開第2010/026974号参照)。
【0136】
また、第一工程で原料として使用するアルデヒド化合物(4)としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒドなどが挙げられる。中でも、LWRの改善効果および高解像度のフォトレジストパターンを得る観点から、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒドがより好ましい。なお、ホルムアルデヒドとしては、前駆体であるパラホルムアルデヒドを用いることが好ましい。
アルデヒド化合物(4)の使用量は、アルコール誘導体(3)1モルに対して、0.7〜10モルが好ましく、1〜10モルがより好ましく、1.2〜5モルがさらに好ましく、1.4〜2モルが特に好ましい。
【0137】
第一工程で使用する酸としては、例えば塩化水素ガス、ヨウ化水素ガスなどのハロゲン化水素ガス;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素酸;前記以外の、硫酸や硝酸などの無機酸またはその水溶液;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。なお、水の存在が反応の進行を抑制するおそれがあるため、酸としては水溶液ではないものを使用することが好ましい。中でも、アルコール誘導体(3)とアルデヒド化合物(4)の反応性の観点からは、ハロゲン化水素ガスが好ましく、生成するアルキルエーテル化合物(2)の安定性の観点からは、塩化水素ガスがより好ましい。つまり、一般式(2)中のYは、好ましくは塩素原子である。Yが塩素原子であると、アルキルエーテル化合物(2)の製造が容易であり、且つ、後述するアクリル酸エステル系誘導体(1)の製造が容易となる。
酸の使用量は、アルコール誘導体(3)1モルに対して、1〜30モルが好ましく、3〜15モルがより好ましく、アルコール誘導体(3)の消失が確認されるまで追加するのがさらに好ましい。なお、アルコール誘導体(3)の消失は、ガスクロマトグラフィーにて容易に確認できる。
【0138】
第一工程は、通常、溶媒の存在下に実施する。該溶媒としては、反応を阻害しない限り特に制限はなく、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテルが挙げられる。中でも、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムが好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、ハロゲン化炭化水素が好ましく、塩化メチレンがより好ましい。
溶媒の使用量は、アルコール誘導体(3)1質量部に対して、2質量部以上であるのが好ましく、4〜30質量部であるのがより好ましく、9〜20質量部であるのがさらに好ましい。
【0139】
第一工程の反応温度は、使用するアルコール誘導体(3)、アルデヒド化合物(4)、酸や溶媒の種類などによっても異なるが、通常、原料および酸の溶解性の観点から、好ましくは−20〜30℃、より好ましくは−10〜10℃、さらに好ましくは−10〜5℃である。第一工程の反応圧力に特に制限はないが、常圧下に実施するのが簡便で好ましい。
第一工程の反応時間には特に制限はない。通常、アルコール誘導体(3)の消失が確認されるまで反応させるのが好ましい。
【0140】
第一工程における反応操作方法には特に制限はない。原料、酸および溶媒などの投入方法および順序にも特に制限はなく、任意の方法および順序で添加できる。具体的な反応操作方法としては、例えば、回分式反応器に、アルコール誘導体(3)、溶媒およびアルデヒド化合物(4)を仕込み、得られた混合液に所定温度で酸を添加する方法が好ましい。なお、酸としてハロゲン化水素ガスを用いる場合は、該ガスを混合液へ吹き込む方法が好ましく採用される。
また、第一工程は、水の不存在下に実施することが好ましいが、特に原料や溶媒に脱水処理を施したり、反応系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下にしなくとも、十分に反応を進行させることができる。
【0141】
第一工程で得られた反応混合物からのアルキルエーテル化合物(2)の分離、精製は、有機化合物の分離、精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応終了後、有機層を濃縮することによりアルキルエーテル化合物(2)を分離でき、濃縮液をそのまま第二工程に用いてもよいし、必要に応じて、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製を行うことにより得られる高純度のアルキルエーテル化合物(2)を第二工程に用いてもよい。
【0142】
第一工程により得られるアルキルエーテル化合物(2)の具体例を以下に示すが、特にこれらに限定されない。
【0146】
(第二工程)
第二工程のエステル化の方法に特に制限はないが、例えば、第一工程で得たアルキルエーテル化合物(2)と下記一般式(5)
【0147】
【化42】
(式中、R
2は、前記定義の通りである。)
【0148】
で示されるアクリル酸系化合物(以下、アクリル酸系化合物(5)と称する。)を、好ましくは塩基の存在下に反応させる方法が挙げられる。
【0149】
第二工程で使用するアクリル酸系化合物(5)の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸などが挙げられる。アクリル酸系化合物(5)の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、アルキルエーテル化合物(2)1モルに対して0.7〜20モルであることが好ましく、0.7〜5モルであることがより好ましく、1〜5モルであることがさらに好ましい。
【0150】
第二工程で使用し得る塩基としては、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの第三級アミン;ピリジンなどの含窒素複素環式化合物などが挙げられる。中でも、弱塩基が好ましく、第三級アミン、含窒素複素環式化合物がより好ましく、第三級アミンがさらに好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
塩基を使用する場合、その使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、アルキルエーテル化合物(2)1モルに対して、0.7〜5モルであることが好ましく、0.7〜3モルであることがより好ましく、1〜3モルであることがさらに好ましい。
【0151】
第二工程は、重合禁止剤の存在下または非存在下に実施できる。重合禁止剤としては、反応を阻害しない限りは特に限定はなく、例えばヒドロキノン、ベンゾキノン、トルキノンなどのキノン系化合物;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、p−tert−ブチルカテコール、4−メトキシフェノールなどのアルキルフェノール系化合物;フェノチアジンなどのアミン系化合物などが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、アルキルフェノール系化合物が好ましく、4−メトキシフェノールがより好ましい。
重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、溶媒を含む反応混合物全体の質量に対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0152】
第二工程は、通常、溶媒の存在下に実施する。該溶媒としては、反応を阻害しない限り特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル;ジメチルホルムアミドなどのアミドが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、塩化メチレンがより好ましい。
溶媒の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、アルキルエーテル化合物(2)1質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
【0153】
第二工程の反応温度は、使用するアルキルエーテル化合物(2)、アクリル酸系化合物(5)、塩基、重合禁止剤や溶媒の種類などによっても異なるが、−50〜100℃であることが好ましく、アクリル酸系化合物(5)およびアクリル酸エステル系誘導体(1)の重合抑制の観点並びに原料や塩基等の溶媒への溶解性の観点から、−10〜50℃であることがより好ましく、−10〜15℃であることがさらに好ましく、0〜10℃であることが特に好ましい。第二工程の反応圧力に特に制限はないが、常圧下に実施するのが簡便で好ましい。
【0154】
第二工程の反応時間は、使用するアルキルエーテル化合物(2)、アクリル酸系化合物(5)、塩基、重合禁止剤や溶媒の種類などによっても異なるが、通常、0.5時間〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。
【0155】
第二工程は、水の不存在下に実施することが好ましいが、特に原料や溶媒に脱水処理を施したり、反応系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下にしなくとも、十分に反応を進行させることができる。
逆に、第二工程は、水の添加により、反応を停止することができる。水の使用量は、過剰の塩基1モルに対して1モル以上であればよい。使用量が少ないと過剰の塩基を完全に分解できず、副生物を生じる場合がある。
【0156】
第二工程における反応操作方法には特に制限はない。また、アルキルエーテル化合物(2)、アクリル酸系化合物(5)、重合禁止剤および溶媒などの投入方法・順序にも特に制限はなく、任意の方法・順序で添加できる。具体的な反応操作方法としては、例えば、回分式反応器に、アルキルエーテル化合物(2)、アクリル酸系化合物(5)および所望により溶媒や重合禁止剤を仕込み、こうして得られた混合液に、所定温度で塩基を添加(必要に応じて滴下)する方法が好ましい。
【0157】
第二工程で得られた反応混合物からのアクリル酸エステル系誘導体(1)の分離、精製は、有機化合物の分離、精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応終了後、反応混合物を中和した後、有機溶剤で抽出し、得られた有機層を濃縮することによりアクリル酸エステル系誘導体(1)を分離できる。必要に応じて、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製して、高純度のアクリル酸エステル系誘導体(1)を得ることができる。
アクリル酸エステル系誘導体(1)は、単一のエナンチオマー、エナンチオマー混合物のいずれであっても、フォトレジスト組成物用高分子化合物の原料に好適に使用することができる。
【0158】
<酸発生剤成分;(B)成分>
(B)成分は、露光により酸を発生する酸発生剤成分である。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記一般式(b−1)又は(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0159】
【化43】
[式中、R
101は置換基を有していてもよい環式基、又は、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基若しくはアルケニル基であり、Y
101は単結合または酸素原子を含む2価の連結基であり、V
101は単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、
R
102はフッ素原子または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であり、R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基またはフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。M
m+はm価の有機カチオンである。]
【0160】
{アニオン部}
R
101の置換基を有していていもよい環式基は、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)であってもよく、芳香族炭化水素基(芳香族環式基)であってもよく、環中にヘテロ原子を含む複素環であってもよい。
R
101における環状の脂肪族炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基で挙げたモノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いたアリール基が挙げられ、アダマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。
R
101における芳香族炭化水素基は、2価の芳香族炭化水素基で挙げた芳香族炭化水素環、または2以上の芳香環を含む芳香族化合物から水素原子を1つ除いたアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
101における複素環として具体的には下記式(L1)〜(L6)、(S1)〜(S4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0161】
【化44】
[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R
94−または−S−R
95−であり、R
94およびR
95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0162】
式中、Q”、R
94およびR
95におけるアルキレン基としては、メチレン基が好ましい。
R
101における複素環として、上記以外に以下のものが挙げられる。
【0164】
R
101の環状の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環は置換基を有していてもよい。ここで、炭化水素環又は複素環が置換基を有するとは、炭化水素環又は複素環の環構造に結合した水素原子の一部又は全部が、水素原子以外の原子又は基で置換されることをいう。置換基としてはたとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0165】
R
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状・分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0166】
R
101のアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0167】
R
101の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、上記環式基の置換基と同様のアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、ニトロ基;上記環式基等が挙げられる。
【0168】
本発明において、R
101は、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(L1)〜(L6)、(S1)〜(S4)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基または−SO
2−含有環式基等が好ましい。
【0169】
Y
101の酸素原子を含む2価の連結基は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。当該組み合わせに、さらにスルホニル基(−SO
2−)が連結されていてもよい。
該組み合わせとしては、たとえば、−V
105−O−、−V
105−O−C(=O)−、−C(=O)−O−V
105−O−C(=O)−、−SO
2−O−V
105−O−C(=O)−、−V
105−SO
2−O−V
106−O−C(=O)−(式中、V
105〜V
106はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。
V
105〜V
106におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基としては、前記V
103およびV
104におけるアルキレン基と同様のものが挙げられる。
Q
’としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−V
105−O−、−V
105−O−C(=O)−または−C(=O)−O−V
105−O−C(=O)−が好ましい。
【0170】
V
101におけるアルキレン基としては、前記V
103およびV
104におけるアルキレン基と同様のものが挙げられ、炭素数1〜5であることが好ましい。
V
101におけるフッ素化アルキレン基としては前記V
103およびV
104におけるアルキレン基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。炭素数1〜5であることが好ましく、1〜2がより好ましい。
【0171】
R
102の炭素数1〜5のフッ素化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0172】
R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基またはフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
104、R
105は直鎖状または分岐鎖状の(フッ素化)アルキル基であることが好ましい。該(フッ素化)アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該(フッ素化)アルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0173】
式(b−1)で表されるアニオン部の具体例としては、例えば下記式(b1)〜(b9)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0175】
【化47】
[式中、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、t3は1〜3の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、gは1〜20の整数であり、R
7は置換基であり、n1〜n6はそれぞれ独立に0または1であり、v0〜v6はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w6はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、Q”は前記と同じである。]
【0176】
R
7の置換基としては、前記R
101の説明で、脂肪族環式基の環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部を置換してもよい置換基として挙げたものや、芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子を置換してもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
R
7に付された符号(r1〜r2、w1〜w6)が2以上の整数である場合、当該化合物中の複数のR
7はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0177】
{カチオン部}
M
m+はm価の有機カチオンである。
M
m+におけるm価の有機カチオンとしては特に限定されるものではなく、例えば、従来、レジスト組成物のオニウム系酸発生剤等のカチオン部として知られている有機カチオンを用いることができる。
m価の有機カチオンとしてはスルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましく、特に下記一般式(ca−1)〜(ca−4)でそれぞれ表されるものが特に好ましい。
【0178】
【化48】
[式中、R
201〜R
207、およびR
210〜R
212は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表し、R
201〜R
203のいずれか2つ、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R
208〜R
209はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、L
201は−C(=O)−または−C(=O)O―を表し、Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、xは1または2であり、W
201は(x+1)価の連結基を表す。]
【0179】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0180】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアルキル基としては、鎖状・環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
【0181】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、オキソ基(=O)、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca−r−1)〜(ca−r−6)でそれぞれ表される置換基が挙げられる。
【0182】
【化49】
[式中、R’
201はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【0183】
R’
201の炭化水素基は、上記R
101の置換基を有していてもよい炭化水素基環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、アルケニル基と同様である。
R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO
2−、−SO
3−、−COO−、−CONH−または−N(R
N)−(該R
Nは炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。
形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。
形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0184】
xは1または2である。
W
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
W
201における2価の連結基としては、上記Y
3”の2価の連結基と同様のものが挙げられ、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わさった基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W
201における3価の連結基としては、2価の連結基から水素原子を1個除いた基、2価の連結基にさらに2価の連結基が結合した基、等が挙げられる。2価の連結基としては上記Y
3”の2価の連結基と同様のものが挙げられる。W
1における3価の連結基としては、アリーレン基に3個のカルボニル基が組み合わさった基が好ましい。
【0185】
式(ca−1)で表されるカチオンの好適なものとして具体的には、下記式で表されるカチオンが挙げられる。
【0187】
【化51】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0188】
【化52】
[式中、Rdは水素原子又は置換基であって、置換基としては前記R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0190】
M
m+における有機カチオンとしては、前記式(c−1)又は(c−3)で表される有機カチオンが好ましい。
【0191】
オキシムスルホネート系酸発生剤としては、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号(65〜86頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤を好適に用いることができる。
ジアゾメタン系酸発生剤としては、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤を好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0192】
(B)成分は、上述した酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜60質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜40質量部がさらに好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0193】
<任意成分>
{塩基性化合物成分;(D)成分}
(D)成分は塩基性化合物成分であって、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(B)成分等から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものである。なお、本発明において「塩基性化合物」とは、(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物をいう。
本発明における(D)成分としては、カチオン部と、アニオン部とからなる塩基性化合物(D1)(以下、「(D1)成分」という。)が挙げられる。
【0194】
[(D1)成分]
本発明における(D1)成分としては、(B)成分に対して相対的に塩基性となるものであれば特に限定されるものではないが、カチオン部とアニオン部とからなる化合物を含むことが好ましく、光反応型クエンチャーを含むことがより好ましく、下記一般式(d1)で表される化合物(d1)(以下(d1)成分という。)、下記一般式(d2)で表される化合物(d2)(以下(d2)成分という。)、及び下記一般式(d3)で表される化合物(d3)(以下(d3)成分という。)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含むことがさらに好ましい。
「光反応型クエンチャー」は、露光部においてはクエンチャーとしては作用せず、未露光部においてクエンチャーとして作用するものである。
【0195】
【化54】
[式中、Rd
1は置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Rd
2は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基である。また、式(d2)において、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Rd
3は有機基であり、Yd
1は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rd
f2はフッ素原子を含む炭化水素基である。M
m+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0196】
((d1)成分)
・アニオン部
式(d1)中、Rd
1は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
Rd
1の置換基を有していていもよいアルキル基は、鎖状であっても環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
アルキル基の炭素数は、1〜11が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基や、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
また、Rd
1のアルキル基は、フッ素原子や他の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、たとえば酸素原子、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
なかでも、Rd
1がフッ素化アルキル基となる場合、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換された基(パーフルオロアルキル基)であることが好ましい。
【0197】
Rd
1の置換基を有していてもよい炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、(B)成分中のR
101の置換基を有していていもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、アルケニル基と同様のものが挙げられる。
なかでもRd
1の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基やナフチル基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0198】
また、Rd
1の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、あるいは脂環式アルキル基、又は、フッ素化アルキル基であることも好ましい。
Rd
1の直鎖状、分岐鎖状あるいは脂環式アルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。
【0199】
以下に(d1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0201】
・カチオン部
式(d1)中、M
m+はm価の有機カチオンであり、上記(B)成分におけるカチオンと同様である。中でも、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましく、前記式(ca−1−1)〜(ca−1−57)でそれぞれ表されるカチオンが好ましい。
(d1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0202】
((d2)成分)
・アニオン部
式(d2)中、Rd
2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基である。
Rd
2の置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、前記(B)成分中のR
101の置換基を有していていもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、アルケニル基と同様のものが挙げられる。
なかでも、Rd
2の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい)であることがより好ましい。
Rd
2の炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、(B)成分中のR
101と同様のものが挙げられる。ただし、Rd
2において、SO
3−におけるS原子に隣接する炭素は、フッ素置換されていないものとする。SO
3−とフッ素原子とが隣接しないことにより、当該(d2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(d2)成分のクエンチング能が向上する。
以下に(d2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0204】
・カチオン部
式(d2)中、M
m+は、前記式(d1)中のM
m+と同様である。
(d2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0205】
((d3)成分)
・アニオン部
式(d3)中、Rd
3は有機基である。
Rd
3の有機基は、特に限定されるものではないが、アルキル基、アルコキシ基、−O−C(=O)−C(Rd
31)=CH
2(Rd
31は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である)、または−O−C(=O)−Rd
32(Rd
32は炭化水素基である)である。
Rd
3のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rd
3のアルキル基の水素原子の一部は水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rd
3のアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
【0206】
Rd
3が−O−C(=O)−C(Rd
31)=CH
2である場合、Rd
31は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
Rd
31における炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rd
31におけるハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rd
31としては、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0207】
Rd
3が−O−C(=O)−Rd
32である場合、Rd
32は炭化水素基である。
Rd
32の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族炭化水素基であってもよい。Rd
32の炭化水素基として具体的には、(B)成分中のR
101の置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、アルケニル基と同様のものが挙げられる。
なかでも、Rd
32の炭化水素基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rd
32が脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することによりリソグラフィー特性が良好となる。また、Rd
32が芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0208】
なかでも、Rd
3としては、−O−C(=O)−C(Rd
31’)=CH
2(Rd
31’は水素原子又はメチル基である。)、又は、−O−C(=O)−Rd
32’(Rd
32’は脂肪族環式基である。)であることが好ましい。
【0209】
式(d3)中、Yd
1は、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基である。
Yd
1の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基としては、前記Y
3”における2価の連結基のうち、「直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」、「環状の脂肪族炭化水素基」、「芳香族炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
なかでも、Yd
1としては、アルキレン基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0210】
式(d3)中、Rd
f2は、フッ素原子を含む炭化水素基である。
Rd
f2のフッ素原子を含む炭化水素基は、フッ素化アルキル基であることが好ましく、上記式(d1)中のRd
1のフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
以下に(d3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0213】
・カチオン部
式(d3)中、M
m+は、前記式(d1)中のM
m+と同様である。
(d3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0214】
(d1)〜(d3)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d1)〜(d3)成分の合計の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10.0質量部であることが好ましく、0.5〜8.0質量部であることがより好ましく、1.0〜8.0質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0215】
上記(d1)成分、(d2)成分の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。また、(d3)成分の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、前記式(d3)中のRd
3が、Yd
1と結合する末端に酸素原子を有する基である場合、下記一般式(i−1)で表される化合物(i−1)と、下記一般式(i−2)で表される化合物(i−2)とを反応させることにより、下記一般式(i−3)で表される化合物(i−3)を得、化合物(i−3)と、所望のカチオンM
m+を有するZ
−M
m+(i−4)とを反応させることにより、一般式(d3)で表される化合物(d3)が製造される。
【0216】
【化59】
[式中、Rd
3、Yd
1、Rd
f2、M
m+は、それぞれ、前記一般式(d3)中のRd
3、Yd
3、Rd
f2、M
m+と同じである。Rd
3aはRd
3から末端の酸素原子を除いた基であり、Z
−は対アニオンである。]
【0217】
まず、化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る。
式(i−1)中、Rd
3は前記同様であり、Rd
3aは前記Rd
3から末端の酸素原子を除いた基である。式(i−2)中、Yd
1、Rd
f2は前記同様である。
化合物(i−1)、化合物(i−2)としては、それぞれ、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、適当な酸触媒の存在下で、化合物(i−2)と化合物(i−1)とを有機溶媒中で反応させた後に、反応混合物を洗浄、回収することにより、実施できる。
【0218】
上記反応における酸触媒は、特に限定されるものではなく、例えばトルエンスルホン酸等が挙げられ、その使用量は化合物(i−2)1モルに対して0.05〜5モル程度が好ましい。
上記反応における有機溶媒としては、原料である化合物(i−1)及び化合物(i−2)を溶解できるものであればよく、具体的には、トルエン等が挙げられ、その使用量は、化合物(i−1)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−2)の使用量は、通常、化合物(i−1)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
【0219】
上記反応における反応時間は、化合物(i−1)と化合物(i−2)との反応性や、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は、20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
【0220】
次いで、得られた化合物(i−3)と、化合物(i−4)とを反応させ、化合物(d3)を得る。
式(i−4)中、M
m+は前記同様であり、Z
−は対アニオンである。
化合物(i−3)と化合物(i−4)とを反応させ、化合物(d3)を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、適当なアルカリ金属水酸化物の存在下で、化合物(i−3)を適当な有機溶媒及び水に溶解し、化合物(i−4)を添加して攪拌により反応させることにより実施できる。
【0221】
上記反応におけるアルカリ金属水酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、その使用量は化合物(i−3)1モルに対して0.3〜3モル程度が好ましい。
上記反応における有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の溶媒が挙げられ、その使用量は、化合物(i−3)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−4)の使用量は、通常、化合物(i−3)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
【0222】
上記反応における反応時間は、化合物(i−3)と化合物(i−4)との反応性や、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は、20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
反応終了後、反応液中の化合物(d3)を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、たとえば濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等をいずれか単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0223】
上記のようにして得られる化合物(d3)の構造は、
1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、
13C−NMRスペクトル法、
19F−NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0224】
(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10.0質量部であることが好ましく、0.5〜8.0質量部であることがより好ましく、1.0〜8.0質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0225】
[(D2)成分]
(D)成分は、上記(D1)成分に該当しない他の塩基性化合物成分(以下、(D2)成分という。)を含有していてもよい。
(D2)成分としては、(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物であって酸拡散制御剤として作用するものであり、且つ(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0226】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0227】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0228】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0229】
(D2)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D2)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0230】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.3〜12質量部であることがより好ましく、0.5〜12質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、レジスト組成物とした際、ラフネス等のリソグラフィー特性がより向上する。また、より良好なレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0231】
{(E)成分}
本発明のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、ならびにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、(E)成分という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0232】
本発明のレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂(例えば、撥水性等を向上させるためのフッ素含有樹脂)、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0233】
{(S)成分}
本発明のレジスト組成物は、材料を有機溶剤(以下、(S)成分ということがある)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。たとえば極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA、EL、または前記PGMEAと極性溶剤との混合溶媒と、γ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0234】
上記本発明のレジスト組成物は、リソグラフィー特性に優れ、矩形性の高い良好な形状のレジストパターンを形成できる。
本発明の(A1)成分が有する構成単位(a0)は、アセタール型酸解離性基と−SO
2−含有環式基とを両方有するために、酸の拡散制御と酸解離性の両方を発揮できる。
即ち、本発明のレジスト組成物は、上記構成単位(a0)を有することで、構成単位(a1)の役割を担う構成単位の(A1)成分中の割合を増やすことができ、且つ、構成単位(a0)を有することで、構成単位(a2)や(a5)の役割を担う構成単位の(A1)成分中の割合を増加できる。
そして、構成単位(a0)が、構成単位(a1)と、構成単位(a2)及び(a5)と同様の機能を併せ有することにより、構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a5)以外の他の機能を有する構成単位(例えば、構成単位(a3)、(a4)等)の(A1)成分中の割合を高めることができるという利点がある。
また、構成単位(a0)は、酸解離後にカルボキシ基を生じるため、アルカリ現像によりパターン形成を行う場合、アルカリ現像液に対する溶解性に優れるため、解像性、LWR、および裾引き形状の改善等リソグラフィー特性向上の利点がある。
【0235】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第二の態様のレジストパターン形成方法は、支持体上に、前記本発明のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
本発明のレジストパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
すなわち、まず支持体上に前記本発明のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えばArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。
現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)用いて行う。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、レジストパターンを得ることができる。
【0236】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と、下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)とに分けられる。
【0237】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。前記レジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用としての有用性が高い。
【0238】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0239】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤のなかから適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としてはたとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコーン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
現像処理は、公知の現像方法により実施でき、該方法としてはたとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0240】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液が含有する有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、アルコール系溶剤およびエステル系溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、アルコール系溶剤が特に好ましい。
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0241】
≪高分子化合物≫
本発明の第三の態様の高分子化合物は、下記一般式(a0−1)で表される構成単位(a0)を有する。本発明の高分子化合物についての説明は、前記本発明のレジスト組成物の(A1)成分についての説明と同じである。
【0242】
【化60】
(式中、R
1は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
2は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表す。Xは、酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【実施例】
【0243】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、NMRによる分析において、
1H−NMRの内部標準および
13C−NMRの内部標準は、テトラメチルシラン(TMS)である。また、
19F−NMRの内部標準は、ヘキサフルオロベンゼンである(但し、ヘキサフルオロベンゼンのピークを−160ppmとした)。
【0244】
<合成例1>
5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン(アルコール誘導体)の合成:
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積2Lの四つ口フラスコに、フェノチアジン0.80g、テトラヒドロフラン(THF)2308.1g、シクロペンタジエン174.0g(2.64mol)を仕込み、攪拌しながら5℃以下に冷却した。次いで、別々の滴下ロートに、2−クロロエタンスルホニルクロリド391.4g(2.40mol)、トリエチルアミン293.45g(2.9mol)をそれぞれ入れ、内温5〜10℃で4時間かけて同時に滴下を行った。
滴下終了後、反応混合物を5〜10℃で5時間攪拌した後、析出している塩を減圧ろ過し、続いてろ別した塩にTHF1200.0gを注いで、ろ液3261.2gを得た(該ろ液を「ろ液(A)」と称する)。該ろ液(A)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドを356.4g(1.85mol)含んでいた(2−クロロエタンスルホニルクロリドに対して収率77.1%)。
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積5Lの三つ口フラスコに水1800gを入れ、20℃以下に冷却した。攪拌しながら、水酸化ナトリウム160.6g(4.02mol)を内温が20℃以下になるように入れた。ろ液(A)2600g(5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリド:283.8g(1.474mol))を、内温20〜25℃で、5時間かけて滴下した。
滴下終了から1時間後に反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドは完全に消失していた。反応混合液を減圧下に濃縮し、THFを除去した後、5Lの分液ロートに移してトルエン600gで3回洗浄し、5−ノルボルネン−2−スルホン酸ナトリウム塩を含む水溶液2144.6gを得た(該水溶液を「水溶液(A)」と称する)。
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積5Lの三つ口フラスコに、水溶液(A)を全て入れ、10℃に冷却した。99%ギ酸186.54g(4.02mol)を内温10〜15℃で滴下した後、加熱して内温を50〜52℃としたところに、30%過酸化水素水325.0g(2.86mol)を3時間かけて滴下した。滴下終了後も内温を50℃前後に維持し、滴下終了から21時間後に反応混合液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホン酸の変換率は99.2%であった。
反応混合液を15℃まで冷却後、亜硫酸ナトリウム73.1g(0.58mol)を内温10〜16℃でゆっくり加え、デンプン紙により過酸化水素が検出されないことを確認し、炭酸水素ナトリウム281.9g(3.36mol)を内温12〜15℃でゆっくり加え、反応混合液のpHを7.2とした。酢酸エチル1800gで2回抽出を行い、得られた有機層を合わせて減圧下に濃縮し、黄白色の固体141.9gを得た。この固体を酢酸エチル280gに50℃で溶解させた後、10℃までゆっくり冷却し、析出した結晶をろ過した。ろ別した結晶を5℃の酢酸エチル70gで洗浄し、40℃で2時間減圧下に乾燥することで、下記構造の5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン113.2g(純度99.3%、0.6mol)を得た(5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドに対して収率40.4%)。
【0245】
【化61】
【0246】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:1.72(1H,dd,J=11.6、1.6Hz)、2.06−2.1(3H,m)、2.22(1H,dd,J=11.2、1.6Hz)、2.44(1H,m)、3.44(1H,m)、3.50−3.53(1H,m)、3.93(1H,brs)、4.61(1H,d,J=4.8Hz)
【0247】
<合成例2>
5−クロロメトキシ−2,6−ノルボルナンスルトンの製造(第一工程):
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積300mLの三つ口フラスコに、合成例1で得た5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン25.1g(0.132mol)、パラホルムアルデヒド6.6g(0.22mol)、ジクロロメタン230gを仕込み、攪拌しながら5℃以下に冷却した。次いで、塩化水素ガスを吹き込み、ガスクロマトグラフィーでアルコール体(5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン)の消失を確認した。
反応終了後、分液操作を行って水層を除き、下記構造の5−クロロメトキシ−2,6−ノルボルナンスルトン24.1g(0.1mol)を含むジクロロメタン溶液234.5g(5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトンに対して収率76.5%)を得た。
【0248】
【化62】
【0249】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:1.67−1.76(1H,m)、2.01−2.18(3H,m)、2.62(1H,m)、3.40−3.46(1H,m)、3.48−3.53(1H,m)、3.91(1H,d,J=1.7Hz)、4.74(1H,d,J=4.6Hz)、5.45−5.54(2H,m)
【0250】
<合成例3>
メタクリル酸−4−オキサ−5−チオ−5,5−ジオキシド−トリシクロ[4,2,1,0
3,7]ノニル−2−オキシメチルの製造(第二工程):
攪拌装置および温度計を取り付けた内容積300mLの三つ口フラスコに、合成例2で得た5−クロロメトキシ−2,6−ノルボルナンスルトン24.1g(0.1mol)を含むジクロロメタン溶液234.5g、4−メトキシフェノール0.035g(0.28mmol)、メタクリル酸10.7g(0.124mol)を仕込んだ。続いて、攪拌しながら内温2〜8℃で、トリエチルアミン11.9g(0.118mol)を30分かけて滴下した。
滴下終了後、25℃で2時間攪拌し、水150gを加えた。続いて分液を行って得た水層を酢酸エチル100gで2回抽出を行い、得られた有機層を合わせて水100gで洗浄し、その後減圧下で濃縮することで茶色固体28.7gを得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/7)で精製することにより、下記構造のメタクリル酸−4−オキサ−5−チオ−5,5−ジオキシド−トリシクロ[4,2,1,0
3,7]ノニル−2−オキシメチル10.49g(0.036mol、5−クロロメトキシ−2,6−ノルボルナンスルトンに対して収率31.6%)を得た。
【0251】
【化63】
【0252】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:1.68(1H,dd,J=11.5、1.6Hz)、1.96(3H,s)、2.04−2.13(3H,m)、2.54(1H,brs)、3.38−3.49(2H,m)、3.80(1H,d,J=1.4Hz)、4.69(1H,d,J=4.8Hz)、5.37(2H,dd,J=9.5、6.4Hz)、5.66(1H,s)、6.17(1H,s)
【0253】
<高分子化合物合成例(1)>
[高分子化合物1の合成]
温度計、還流管、窒素導入管を繋いだセパラブルフラスコに、10.0g(34.71mmol)の化合物(1)と6.24g(26.63mmol)の化合物(2) とを、21.6gのメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた。この溶液に、重合開始剤としてアゾビスイン酪酸ジメチル(V−601)を0.77mmol添加し、溶解させた。これを窒素雰囲気下、3時間かけて、80℃に加熱したMEK16.24gに滴下した。滴下終了後、反応液を4時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。
得られた反応重合液を大量のノルマルヘプタン/2−プロパノール混合溶液に滴下して重合体を析出させる操作を行い、沈殿した白色粉体をろ別、ノルマルヘプタン/2−プロパノール混合溶液、メタノールにて洗浄、乾燥して、目的物である高分子化合物1を11.3g得た。
この高分子化合物1について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は7,300であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.82であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m=60/40であった。
【0254】
【化64】
【0255】
[高分子化合物2〜20の合成]
高分子化合物2〜20は、各高分子化合物を構成する構成単位を誘導するモノマーとして下記化合物(1)〜(12)を用い、高分子化合物1と同様の方法により合成した。
得られた高分子化合物について、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR、内部標準:テトラメチルシラン)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(Mw/Mn)をそれぞれ表1〜2に示した。
【0256】
【化65】
【0257】
【表1】
【0258】
【表2】
【0259】
<レジスト組成物の調製(1)>
(実施例1〜17、比較例1〜3)
表3〜4に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0260】
【表3】
【0261】
【表4】
【0262】
表3〜4中、各記号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1〜(A)−20:それぞれ前記高分子化合物1〜20。
(B)−1:下記構造式(B)−1で表される化合物。
(B)−2:下記構造式(B)−2で表される化合物。
(D)−1:トリ−n−ペンチルアミン。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−1:PGMEA。
(S)−2:PGME。
【0263】
【化66】
【0264】
得られたレジスト組成物を用いて、以下の手順に従ってレジストパターンを形成し、以下に示す評価をそれぞれ行った。
【0265】
[レジストパターンの形成]
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚89nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、該有機系反射防止膜上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート温度110℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
次に、ArF露光装置NSR−609B(ニコン社製;NA(開口数)=1.07,Cross pole(in/out=0.78/0.97)with Polano)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクを介してトップコートが形成された前記レジスト膜に対して選択的に照射した。
そして、表5に示す所定の温度で、60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業社製)で10秒間アルカリ現像し、純水を用いて15秒間水リンスし、振り切り乾燥を行った。
続いて、ホットプレート上で200℃、5分間のポストベークを行った。
その結果、ライン幅49nm,ピッチ98nmの1:1のラインアンドスペース(LS)パターンがそれぞれ形成された。
該LSパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm
2;感度)を求めた。その結果を表5に併記した。また、上記Eopにおける限界解像度(nm)についても表5に併記する(表5中、該限界解像度を「解像性(nm)」と表記した)。
【0266】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
前記Eopで形成されたLSパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、ライン幅を、ラインの長手方向に400箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、400箇所の3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。その結果を表5に示す。
この3sの値が小さいほど、その線幅のラフネスが小さく、より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0267】
[レジストパターン形状の評価]
前記Eopで形成されたLSパターンにおいて、形成されたLSパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(商品名:SU−8000、日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、その形状を下記の評価基準により評価した。その結果を表5に示す。
(評価基準)
○:矩形性が高く、良好な形状であった。
×:テーパー形状(裾引き形状)であった。
【0268】
【表5】
【0269】
<レジスト組成物の調製(2)>
(実施例18〜20、比較例4〜6)
表6に示す各成分を混合して溶解し、レジスト組成物を調製した。
【0270】
【表6】
【0271】
表6中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−21:下記高分子化合物(A)−21[Mw=5900、Mw/Mn=1.59、l/m/n=34.3/19.3/46.4(モル比)]。
(A)−22:下記高分子化合物(A)−22[Mw=6600、Mw/Mn=1.62、l/m=45.2/54.8(モル比)]。
(B)−3:下記化合物(B)−3。
(D)−2:下記化合物(D)−2。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−3:PGMEA/PGME/シクロヘキサノン=45/30/25(質量比)の混合溶媒。
【0272】
【化67】
【0273】
得られたレジスト組成物を用いて、以下の手順に従ってレジストパターンを形成し、以下に示す評価をそれぞれ行った。
【0274】
[レジストパターンの形成]
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚98nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、該有機系反射防止膜上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート温度90℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚80nmのレジスト膜を形成した。
次に、前記レジスト膜上に、保護膜形成用塗布液「TILC−057」(商品名、東京応化工業株式会社製)を、スピンナーを用いて塗布し、90℃で60秒間加熱することにより、膜厚35nmのトップコートを形成した。
次に、ArF露光装置NSR−S610C((ニコン社製;NA(開口数)=1.30,Cross pole(in/out=0.78/0.97)with Polano)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、ハーフトーンマスクを介してトップコートが形成された前記レジスト膜に対して選択的に照射した。
そして、80℃、60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業社製)で10秒間アルカリ現像し、純水を用いて15秒間水リンスし、振り切り乾燥を行った。
その結果、ライン幅42nm固定で、ピッチ84nm,168nm,252nmの1:1,1:3,1:5のラインアンドスペース(LS)パターンがそれぞれ形成された。
該LSパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm
2;感度)を求めた。その結果を表7〜9に記載した。なお、組成物1を用いて形成されたレジストパターンを実施例(実施例18〜20)、組成物2を用いて形成されたレジストパターンを比較例(比較例4〜6)として評価を行った。
【0275】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
前記Eopで形成されたLSパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、ライン幅を、ラインの長手方向に400箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、400箇所の3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。その結果を表7〜9に示す。
この3sの値が小さいほど、その線幅のラフネスが小さく、より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0276】
[レジストパターン形状の評価]
前記Eopで形成されたLSパターンにおいて、形成されたLSパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(商品名:SU−8000、日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、その形状を下記の評価基準により評価した。その結果を表7〜9に示す。
(評価基準)
○:矩形性が高く、良好な形状であった。
×:テーパー形状(裾引き形状)であった。
【0277】
【表7】
【0278】
【表8】
【0279】
【表9】
【0280】
表5、7〜9に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜20のレジスト組成物は、比較例1〜6のレジスト組成物と比較して、いずれも、LWR等のリソグラフィー特性に優れ、矩形性の高い良好な形状のレジストパターンを形成できることが確認できた。
【0281】
<合成例4>
2−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド(アルコール誘導体)の合成:
原料となるビニルスルホン酸メチルを、Angew.Chem.,77(7),291−302(1965)に記載された合成例に準じて合成した。具体的には、まず、攪拌機、温度計、滴下漏斗、三方コックを取り付けた内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、2−クロロエタンスルホニルクロリド326.0g(2.00mol)を入れ、氷浴にて冷却し、次いで25質量%ナトリウムメトキシド(メタノール溶液)を滴下漏斗から内温が2〜5℃の範囲になるように滴下した。滴下終了後、氷浴を外して室温にて1時間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮して、濃縮物を単蒸発操作することにより、ビニルスルホン酸メチル197.2g(純度97.3%、1.571mol)を得た(2−クロロエタンスルホニルクロリドに対して収率78.5%)。
【0282】
次に、目的物である2−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシドを、特開2007−31355号公報に記載された実施例2に準じて合成した。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積300mLの四つ口フラスコに、フラン150g(2.20mol)、ヨウ化亜鉛15.0gを入れ、25〜27℃にて滴下漏斗からビニルスルホン酸メチル41.5g(0.34mol)を加えた。そのままの温度で2日間攪拌を継続した後、反応液を1Lの分液漏斗に移した。水300mLで2回洗浄した後、減圧下に未反応のフランを留去して7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル22.0gを得た。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積1000mLの四つ口フラスコに、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル22.0gと塩化メチレン450gを順次入れ、4℃まで冷却し、撹拌下にm−クロロ過安息香酸22.9g(0.17mol)を10℃以下になるようにゆっくりと投入した。5〜7℃にて4時間攪拌した後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液100gを添加し、30分間攪拌した。静置して分液した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100gで3回洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮して2,3−エポキシ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル20.2gを得た。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積300mLの四つ口フラスコに、5.0(mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液を仕込み、滴下漏斗から2,3−エポキシ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル29.5gを内温が20〜23℃の範囲で滴下した。滴下終了から4時間撹拌した後、氷水で冷却しながら濃塩酸を滴下してpHを7.3とした後に、酢酸エチル300mLで4回抽出した後、得られた有機層を合わせて濃縮後、その濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、2−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド4.75g(純度98.8%、0.024mol)を得た。
【0283】
【化68】
【0284】
1H−NMR(400MHz、CD
3OD、TMS、ppm)δ: 2.17 (1H,dd,J=2.6、14.4Hz) 、2.28(1H,ddd,J=5.5、10.7、14.4Hz)、3.81(1H,ddd,J=2.6、4.9、10.7Hz)、3.92(1H、s)、4.54(1H,d,J=5.5Hz)、4.65(1H,dd,J=1.4、4.8Hz)、5.52(1H,dd,J=4.8、4.8Hz)
【0285】
<合成例5>
2−クロロメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシドの製造(第一工程):
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積100mLの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド4.0g(20.8mmоl)、パラホルムアルデヒド1.04g(ホルムアルデヒド換算で34.7mmоl)、塩化メチレン32.4gを仕込み、攪拌しながら5℃以下に冷却した。次いで、塩化水素ガスを吹き込み、ガスクロマトグラフィーで2−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシドの消失を確認した。
反応後、分液操作を行って水層を除き、2−クロロメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド3.78g(15.7mmоl)を含む塩化メチレン溶液32.6gを得た(収率75%)。
【0286】
【化69】
【0287】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:2.28−2.44(2H,m)、3.68(1H,m)、4.13(1H,s)、4.70(1H,m)、4.86(1H,m)、5.52(3H,m)
【0288】
<合成例6>
2−メタクリルオキシメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシドの製造(第二工程):
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積100mlの四つ口フラスコに、2−クロロメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド1.16g(4.82mmоl)を含む塩化メチレン溶液10.0g、4−メトキシフェノール1mg、メタクリル酸0.52g(6.0mmоl)を仕込んだ。続いて、攪拌しながら内温2〜9℃で、トリエチルアミン0.57g(5.64mmоl)を30分かけて滴下した。
滴下終了後、10℃で30分攪拌し、水10gを加えた。続いて分液を行い、得られた有機層を減圧下に濃縮して残渣2.54gを得た。この残渣を、酢酸エチルを溶媒として再結晶し、2−メタクリルオキシメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド1.17g(4.03mmоl)を得た(収率84%)。
【0289】
【化70】
【0290】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:1.96(3H,s)、2.26−2.40(2H,m)、3.66(1H,m)、4.06(1H,s)、4.77(1H,m)、4.83(1H,m)、5.43(2H,m)、5.52(1H,m)、5.71(1H,m)、6.20(1H,m)
【0291】
<高分子化合物合成例(2)>
[高分子化合物(a)の合成]
温度計、還流管、窒素導入管を繋いだセパラブルフラスコに、下記化学式(II−2)で表される化合物(II−2)11.95g(50.55mmol)、メチルエチルケトン17.75gおよびシクロヘキサノン17.75gを入れて溶解させ、80℃に加熱した。この溶液に、下記化学式(VII−10)で表される化合物(VII−10)19.34g(84.75mmol)、化合物(II−2)2.99g(12.64mmol)、合成例3で得たメタクリル酸−4−オキサ−5−チオ−5,5−ジオキシド−トリシクロ[4,2,1,0
3,7]ノニル−2−オキシメチル11.41g(39.56mmol)および重合開始剤として2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル4.31g(18.75mmol)をメチルエチルケトン42.44gおよびシクロヘキサノン42.44gの混合溶液に溶解させた溶液を、窒素雰囲気下、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応液を1時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のn−ヘプタンに滴下して、重合体を析出させ、沈殿した白色粉体をろ別、メタノールにて洗浄、乾燥して、下記高分子化合物(a)28.78gを得た。
この高分子化合物(a)について、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は9,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.68であった。また、
13C−NMR(600MHz)により求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n=45.2/33.7/21.1であった。
【0292】
【化71】
【0293】
[高分子化合物(b)の合成]
温度計、還流管、窒素導入管を繋いだセパラブルフラスコに、化合物(II−2)11.95g(50.55mmol)、メチルエチルケトン17.75gおよびシクロヘキサノン17.75gを入れて溶解させ、80℃に加熱した。この溶液に、化合物(VII−10)19.34g(84.75mmol)、化合物(II−2)2.99g(12.64mmol)、合成例6で得た2−メタクリルオキシメトキシ−4,8−ジオキサ−5−チアトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン=5,5−ジオキシド11.48g(39.56mmol)および重合開始剤として2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル4.31g(18.75mmol)をメチルエチルケトン42.44gおよびシクロヘキサノン42.44gの混合溶液に溶解させた溶液を、窒素雰囲気下、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応液を1時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のn−ヘプタンに滴下して、重合体を析出させ、沈殿した白色粉体をろ別、メタノールにて洗浄、乾燥して、下記高分子化合物(b)28.02gを得た。
この高分子化合物(b)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は9,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.70であった。また、
13C−NMR(600MHz)により求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n=45.0/33.8/21.2であった。
【0294】
【化72】
【0295】
[高分子化合物(c)の合成]
温度計、還流管、窒素導入管を繋いだセパラブルフラスコに、化合物(II−2)11.95g(50.55mmol)、メチルエチルケトン17.75gおよびシクロヘキサノン17.75gを入れて溶解させ、80℃に加熱した。この溶液に、化合物(VII−10)19.34g(84.75mmol)、化合物(II−2)2.99g(12.64mmol)、下記化学式(VI−2)で表される化合物(VI−2)7.84g(39.56mmol)および重合開始剤として2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル4.31g(18.75mmol)をメチルエチルケトン42.44gおよびシクロヘキサノン42.44gの混合溶液に溶解させた溶液を、窒素雰囲気下、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応液を1時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のn−ヘプタンに滴下して、重合体を析出させ、沈殿した白色粉体をろ別、メタノールにて洗浄、乾燥して、目的物である高分子化合物(c)26.58gを得た。
この高分子化合物(c)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は10,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.86であった。また、
13C−NMR(600MHz)により求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n=45.2/33.7/21.1であった。
【0296】
【化73】
【0297】
<レジスト組成物の調製(3)>
(実施例21、22;比較例7)
前記<高分子化合物合成例(2)>でそれぞれ得た高分子化合物(a)、(b)、(c)を100質量部、光酸発生剤として「TPS−109」(製品名、成分;ノナフルオロ−n−ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、みどり化学株式会社製)4.5質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/シクロヘキサノン混合溶媒(質量比=1:1)1896質量部を混合し、各例のレジスト組成物を調製した。
【0298】
[レジストパターンの形成]
各例のレジスト組成物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いてそれぞれろ過した。
次いで、クレゾールノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社製「PS−6937」)6質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をスピンコーティング法により塗布して、ホットプレート上で200℃、90秒間加熱することにより膜厚100nmの反射防止膜(下地膜)を形成させた直径10cmのシリコンウェハー上に、各例のレジスト組成物をそれぞれスピンコーティング法により塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プリベークして膜厚300nmのレジスト膜を形成させた。このレジスト膜に波長193nmのArFエキシマレーザーを用いて二光束干渉法露光した。引き続き、130℃、90秒間ポストエクスポージャーベークした後、2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像処理することにより、1:1のラインアンドスペースパターンを形成させた。
【0299】
[評価]
現像済みウェハーを割断したものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、線幅100nmのラインアンドスペースを1:1で解像した露光量におけるパターンの形状観察と線幅の変動(LWR)の測定を行った。
LWRは、測定モニタ内において、線幅を複数の位置で検出し、その検出位置のバラツキの分散(3σ)を指標とした。また、パターンの断面形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、パターンの矩形性が高いものを「良好」とし、短形性が低いものを「不良」として評価した。結果を表10に示す。
【0300】
【表10】
【0301】
表10より、本発明を適用した実施例21、22レジスト組成物は、良好な形状のレジストパターンを形成でき、また、比較例7のレジスト組成物と比べてLWRが改善されていることが分かる。すなわち、本発明により、高解像度のフォトレジストパターンの形成とLWRの低減とを両立させることができる。