特許第5919183号(P5919183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919183
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   H01L21/302 104Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-274193(P2012-274193)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-120591(P2014-120591A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】阿部 高廣
(72)【発明者】
【氏名】山本 直広
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】須山 淳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大介
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−038285(JP,A)
【文献】 特開2010−045398(JP,A)
【文献】 特開2001−274144(JP,A)
【文献】 特開2005−023358(JP,A)
【文献】 特開2005−277249(JP,A)
【文献】 特開2006−060172(JP,A)
【文献】 特開2008−065944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタルをマスクとして磁性膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法において、
アンモニアガスとヘリウムガスとの混合ガスのみを用いて前記磁性膜を所望の深さまでプラズマエッチングする第一の工程と、
前記第一の工程後、アンモニアガスと酸素元素を含有するガスとの混合ガスまたは、アンモニアガスと水酸基を含有するガスとの混合ガスを用いて前記所望の深さまでエッチングされた磁性膜をプラズマエッチングする第二の工程とを有することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法において、
前記酸素元素を含有するガスは、一酸化炭素ガスであることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法において、
前記水酸基を含有するガスは、メタノールガスであることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマエッチング方法において、
前記第二の工程の処理圧力は、前記第一の工程の処理圧力より低いことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項5】
請求項3に記載のプラズマエッチング方法において、
前記第二の工程の処理圧力は、前記第一の工程の処理圧力より低いことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法において、
第一の工程は、アルミナ膜とタンタル膜をマスクとして前記磁性膜のプラズマエッチングを開始するとともに前記磁性膜のプラズマエッチングの途中で前記アルミナ膜が消失する第一のエッチング工程と、前記第一の工程後、前記タンタル膜をマスクとして前記磁性膜を前記所望の深さまでプラズマエッチングする第二のエッチング工程とを有し、
前記第一のエッチング工程および前記第二のエッチング工程は、前記アンモニアガスとヘリウムガスとの混合ガスのみを用いることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング方法に係り、特に磁性材料をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブの大容量化に対応するため、磁気ヘッドは、巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive effect)からトンネリング磁気抵抗効果(TMR効果:tunnel Magneto−Resistance Effect)を利用した磁気ヘッドへ移行し、面記録密度の高密度化が急速に進んでいる。面記録密度の高密度化に伴い、ハードディスクドライブに使用される磁気ヘッドは、微細化が必要になり、磁気ヘッドの製造において微細加工技術が求められている。このため、磁気ヘッドの製造装置においては、イオンミリング装置からプラズマエッチング装置の適用が進められている。
【0003】
磁気ヘッドは、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生させる磁極層とそれを収容する収容層とを有し、収容層の溝部は、テーパ形状に形成される。また、収容層は、従来、アルミナ(Al23)膜で形成されていたが、近年、収容層形成工程の工程数削減に伴い、鉄(Fe)、ニッケル鉄(NiFe)、コバルト鉄(CoFe)、コバルトニッケル鉄(CoNiFe)等の磁性材料が採用されている。
【0004】
しかし、これらの磁性材料は、揮発性が非常に低いため、プラズマによるエッチング速度や垂直形状が得られにくく、磁性材料の微細加工が難しい。また、プラズマエッチング時に発生する反応生成物がプラズマ処理室内の内壁に付着してプラズマエッチング性能を経時的に変化させ易い。
【0005】
このような磁性材料に対して反応性イオンエッチングを可能とするプラズマエッチング方法として、例えば、特許文献1には、アンモニア(NH3)またはアミン類ガス等の含窒素化合物ガスを添加した一酸化炭素(CO)ガスを反応ガスとして用いるドライエッチング方法が開示されている。
【0006】
また、この含窒素化合物ガスと一酸化炭素ガスの混合ガスを用いてマスクに対する被エッチング材料の高選択比のプラズマエッチング方法として、含窒素化合物ガスを添加した一酸化炭素ガスを反応ガスとし、タンタル又は窒化タンタルによるマスクを使用してエッチングを行う方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−253881号公報
【特許文献2】特開2001−274144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に開示された従来技術であるタンタルをマスクとして一酸化炭素(CO)とアンモニア(NH3)との混合ガスを用いて磁性膜をプラズマエッチングした場合、図10に示すように収容層の間口寸法が狭くなるに従い、深さ方向の削れ量が減少し、収容層の間口寸法が250nm以下より狭くなると、深さ方向の削れ量が150nm近傍でエッチストップが生じ、エッチング時間を延ばしても削れ量が増加しない現象が生じる。
【0009】
このため、上記課題を鑑みて、本発明は、磁性膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法において、マスクの開口寸法によらず、所望のエッチング深さを得ることができるプラズマエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タンタルをマスクとして磁性膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法において、アンモニアガスとヘリウムガスとの混合ガスのみを用いて前記磁性膜を所望の深さまでプラズマエッチングする第一の工程と、前記第一の工程後、アンモニアガスと酸素元素を含有するガスとの混合ガスまたは、アンモニアガスと水酸基を含有するガスとの混合ガスを用いて前記所望の深さまでエッチングされた磁性膜をプラズマエッチングする第二の工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、磁性膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法において、マスクの開口寸法によらず、所望のエッチング深さを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が用いるプラズマエッチング装置の概略断面図である。
図2】本発明によりプラズマエッチングされる試料の膜構造である。
図3】本発明によりプラズマエッチングされたニッケル鉄膜の形状の断面図である。
図4】メタノールガスと一酸化炭素ガスとアンモニアガスとの混合ガスによりエッチングされたニッケル鉄膜を示す図である。
図5】アンモニアガスによりエッチングされたニッケル鉄膜を示す図である。
図6】アンモニアガスとヘリウムガスの混合ガスによりエッチングされたニッケル鉄膜を示す図である。
図7】アンモニアガスと一酸化炭素ガスの混合ガスによりエッチングされたニッケル鉄膜を示す図である。
図8】アンモニアガスとヘリウムガスの混合比率に対する開口寸法の依存性を示す図である。
図9】アンモニアガスの流量比率に対する溝形状のテーパ角度の依存性を示す図である。
図10】マスクの開口寸法に対する磁性膜のエッチング深さの依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて以下、説明する。最初に本発明を実施するためのプラズマエッチング装置を図1を用いて説明する。
【0014】
プラズマ処理室は、石英(SiO2)または、セラミック(Al23)の非導電性材料でありプラズマ生成部を形成する放電部2と、被処理体である試料12が載置される電極6が配置された処理部3とを備える。処理部3は、アースに接地されており、電極6は、絶縁材を介して処理部3に取り付けられる。
【0015】
放電部2の上方に誘導磁場を生成しコイル状の誘導結合アンテナ1と容量結合アンテナであるファラデーシールド9とが配置され、誘導結合アンテナ1およびファラデーシールド9は、第1の高周波電源10より整合器4を介して高周波電力が供給される。また、誘導結合アンテナ1は、コイル状の第1の誘導結合アンテナ1aと前記第1の誘導結合アンテナ1aの外側に配置されコイル状の第2の誘導結合アンテナ1bとからなる。
【0016】
プラズマ処理室の内部には、ガス供給装置5から処理ガスが供給されるとともに、排気装置8によって所定の圧力に減圧排気される。また、ガス供給装置5よりプラズマ処理室内部に供給された処理ガスを誘導結合アンテナ1により発生した誘導磁場によってプラズマ化する。さらに、プラズマ7中に存在するイオンを試料12上に引き込むために電極6に第2の高周波電源11よりバイアス高周波電力を供給する。
【0017】
また、本プラズマエッチング装置は、難エッチング材料のエッチングに対応した構造を有しており、ファラデーシールド9へ高周波電圧を印加することによって、放電部2への反応生成物の付着抑制ならびに除去が可能となる。
【0018】
次に、図1に示すプラズマエッチング装置を用いた本発明について説明する。最初に本発明によりプラズマエッチングされる試料12の膜構造を図2に示す。
【0019】
AlTiC基板13上に下から順に500nmの厚さのニッケル鉄膜14と、170nmの厚さのタンタル膜15と、50nmの厚さのアルミナ膜16とが積層されている。尚、アルミナ膜16は、予めリソグラフィー技術によって溝パターンがパターニングされ、開口幅が215nmのマスクである。
【0020】
先ず最初にアルミナ膜16をマスクとして、表1のステップ1に示すように60ml/minのCl2ガスと20ml/minのBCl3ガスの混合ガスを用い、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを800W、バイアスRFパワーを50Wとするエッチング条件でタンタル膜15表層の自然酸化膜を除去する。引き続きタンタル膜15表層の自然酸化膜を除去した後、表1のステップ2に示すように75ml/minのCl2ガスと5ml/minのCF4ガスの混合ガスを用い、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを800W、バイアスRFパワーを35Wとしてタンタル膜15のマスクを形成する。
【0021】
また、表1のステップ2は、50nmの厚さのアルミナ膜16のマスクで170nmの厚さのタンタル膜15のマスクを形成するのに十分な、アルミナ膜16に対する高選択比を得ることができる条件である。さらにCF4ガス流量を調整することによって、タンタル膜15のエッチング形状の角度を所望の角度(例えば80〜90度の範囲)に制御することができる。尚、本実施例での5ml/minのCF4ガスにより、ほぼ垂直のタンタル膜15のマスクを形成できる。
【0022】
【表1】
【0023】
次に、タンタル膜15のマスク形成後、アルミナ膜16とタンタル膜15をマスクとして、表2のステップ1に示すように、280ml/minのアンモニア(NH3)ガスと370ml/minのヘリウム(He)ガスの混合ガスを用い、処理圧力を3.0Pa、ソースRFパワーを1800W、バイアスRFパワーを800Wとするエッチング条件で所望の深さまでニッケル鉄膜14をエッチングした。尚、所望の深さとは、ニッケル鉄膜14を全て除去しない所望の深さであり、本実施例では、所望の深さを300nmとした。
【0024】
また、アルミナ膜16は、タンタル膜15のマスク形成の際にマスクとして使用されて薄くなっていたため、表2のステップ1でのニッケル鉄膜14のエッチング中に消失する。このため、表2のステップ1でのエッチングの途中からタンタル膜15だけをマスクとしてニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングすることになる。
【0025】
【表2】
【0026】
次に、ニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングした後、タンタル膜15をマスクとして、表2のステップ2に示すように、175ml/minのアンモニア(NH3)ガスと10ml/minの一酸化炭素(CO)ガスの混合ガスを用い、処理圧力を0.6Pa、ソースRFパワーを1800W、バイアスRFパワーを500Wとするエッチング条件でニッケル鉄膜14をエッチングして図3に示すような300nm深さの所望の角度のテーパ形状を得ることができた。
【0027】
また、表2のステップ2の処理圧力は、表2のステップ1の処理圧力より低い圧力となっている。このことにより、一酸化(CO)ガスとマスクのタンタル膜15との反応により生成された酸化タンタル(TaO)が溝の底面に到達し易くなり、溝の底面をフラット形状にするのに寄与している。このため、表2のステップ2の処理圧力は、表2のステップ1の処理圧力より低く、1.0Pa以下であることが望ましい。
【0028】
また、表2のステップ2における一酸化炭素(CO)ガス流量は、アンモニア(NH3)ガス流量に対して、多すぎると酸化タンタル(TaO)が過剰に生成されて溝の深さが浅くなる恐れがあるため、表2のステップ2における一酸化炭素(CO)ガス流量は、アンモニア(NH3)ガス流量に対して10%以下または、15ml/min以下であることが望ましい。
【0029】
さらに、表2のステップ2のバイアスRFパワーは、表2のステップ1のバイアスRFパワーより低くしている。このことにより、一酸化(CO)ガスとマスクのタンタル膜15との反応により生成された酸化タンタル(TaO)が溝の底面に付着し易くなり、溝の底面をフラット形状にするのに寄与している。このため、表2のステップ2のバイアスRFパワーは、表2のステップ1のバイアスRFパワーより低いまたは、表2のステップ2のバイアスRFパワーは、表2のステップ1のバイアスRFパワーに対して2/3以下であることが望ましい。
【0030】
以上の通り、本発明により図3に示すような300nm深さの所望の角度のテーパ形状を得ることができたが、本発明によりこのような効果を得ることができた理由は、以下のように考えられる。
【0031】
例えば、メタノール(CH3OH)ガスと一酸化炭素(CO)ガスとアンモニア(NH3)ガスとの混合ガスを用いて、開口幅が215nmであり溝パターンのタンタル膜15をマスクとしてニッケル鉄膜14をエッチングした場合、図4に示すように、混合ガスに含まれる炭素原子(C)、酸素原子(O)、窒素原子(N)、水素(H)がイオンとなり、主に物理的な作用でニッケル鉄膜14をエッチングする。
【0032】
しかし、上記の酸素原子(O)とタンタル膜15の構成元素であるタンタル原子(Ta)が反応し、酸化タンタル(TaO)が生成され、溝の底面全体に堆積し、ある程度ニッケル鉄膜14のエッチングが進むと、ニッケル鉄膜14のエッチングより酸化タンタル(TaO)の堆積が上回り、酸化タンタル(TaO)のエッチングが困難なため、ニッケル鉄膜14のエッチングがストップする。このため、エッチング時間を増加させても深さ方向へのエッチングが進行しなくなり、所望の深さまでエッチングできなくなる。
【0033】
このようなことから、タンタル膜15をマスクとしてニッケル鉄膜14を所望の深さまでエッチングするには酸化タンタルを生成させないことが重要であると考え、図5に示すように、アンモニア(NH3)ガスだけを用いて、開口幅が215nmであり溝パターンのタンタル膜15をマスクとしてニッケル鉄膜14をエッチングした場合、図5に示すように、ニッケル鉄膜14の被エッチング面には、タンタル(Ta)が堆積するが、アンモニア(NH3)ガスにより容易に除去できるため、ニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングすることができる。
【0034】
しかし、アンモニア(NH3)ガスを用いてニッケル鉄膜14をエッチングする際、タンタル膜15のマスクとの選択比が低いため、タンタル膜15のマスク肩が後退しやすくなり、間口寸法が拡がるため、溝形状のテーパ角度が大きくなる。
【0035】
このため、タンタル膜15をマスクとしてニッケル鉄膜14を所望の深さまでエッチングする際、酸化タンタル(TaO)を生成させることなく、かつ、タンタル膜15のマスクとの選択比を向上させるために、アンモニア(NH3)ガスとヘリウム(He)ガスの混合ガスを用いてニッケル鉄膜14のエッチングを行った。
【0036】
ヘリウム(He)ガスは、不活性ガスであるため、タンタル膜15との反応が乏しい。また、ヘリウム(He)ガスは、不活性ガスの中で最も軽いガスであるため、マスクのタンタル膜15に対してのダメージが少なく、特に、タンタル膜15の肩落ちが抑制される。
【0037】
このため、アンモニア(NH3)ガスとヘリウム(He)ガスの混合ガスを用いて、開口幅が215nmであり溝パターンのタンタル膜15をマスクとしてニッケル鉄膜14をエッチングした場合、図6に示すように、タンタル膜15のマスク間口寸法の拡大を抑制できるとともにニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングすることができたものと考えられる。
【0038】
しかし、エッチング底面がラウンド形状となっている。このようなラウンド形状であると、成膜不良やデバイス特性の劣化などの悪影響を及ぼす可能性がある。このため、溝の底面のラウンド形状をフラット形状にする必要がある。このようなことから、アンモニア(NH3)ガスとヘリウム(He)ガスの混合ガスを用いてニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングした後、アンモニア(NH3)ガスと一酸化炭素(CO)ガスとの混合ガスを用いてさらにニッケル鉄膜14のエッチングを行った。
【0039】
このアンモニア(NH3)ガスと一酸化炭素(CO)ガスとの混合ガスによるニッケル鉄膜14のエッチングでは、図7に示すように一酸化炭素(CO)ガスとマスクのタンタル膜15との反応により、酸化タンタル(TaO)が生成され、酸化タンタル(TaO)がエッチング底面に堆積して、深さ方向へのエッチングが抑制されることによって溝形状の底面をフラット形状にすることができたものと考えられる。
【0040】
以上のことより、本発明によって、図3に示すような300nm深さの所望の角度のテーパ形状を得ることができたと考えられる。
【0041】
本実施例の表2のステップ1では、アンモニア(NH3)ガスを280ml/min、ヘリウム(He)ガスを370ml/minとすることにより、215nmの開口幅の溝形状を得ることができたが、図8に示すように、アンモニア(NH3)ガスとヘリウム(He)ガスの混合比を制御することにより、開口寸法を制御できる。
【0042】
また、本実施例では溝の底面をフラット形状にするためにアンモニア(NH3)ガスと一酸化炭素(CO)ガスの混合ガスを用いたが、一酸化炭素(CO)ガスの代わりに二酸化炭素(CO2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス等の酸素元素を含有するガスを用いても良い。
【0043】
さらに、本実施例では溝の底面をフラット形状にするためにアンモニア(NH3)ガスと一酸化炭素(CO)ガスの混合ガスを用いたが、アンモニア(NH3)ガスとメタノール(CH3OH)ガスの混合ガスを用いても良い。
【0044】
例えば、表3のステップ1に示すエッチング条件にてニッケル鉄膜14を300nmの深さまでエッチングした後、タンタル膜15をマスクとして、表3のステップ2に示すように、175ml/minのアンモニア(NH3)ガスと10ml/minのメタノール(CH3OH)ガスの混合ガスを用い、処理圧力を0.6Pa、ソースRFパワーを1800W、バイアスRFパワーを500Wとするエッチング条件でニッケル鉄膜14をエッチングして図3に示すような300nm深さの所望の角度のテーパ形状を得ることができた。
【0045】
【表3】
【0046】
また、表3のステップ2の処理圧力は、表3のステップ1の処理圧力より低い圧力となっている。このことにより、メタノール(CH3OH)ガスとマスクのタンタル膜15との反応により生成された酸化タンタル(TaO)が溝の底面に到達し易くなり、溝の底面をフラット形状にするのに寄与している。このため、表3のステップ2の処理圧力は、表3のステップ1の処理圧力より低く、1.0Pa以下であることが望ましい。
【0047】
また、表3のステップ2におけるメタノール(CH3OH)ガス流量は、アンモニア(NH3)ガス流量に対して、多すぎると酸化タンタル(TaO)が過剰に生成されて溝の深さが浅くなる恐れがあるため、表3のステップ2におけるメタノール(CH3OH)ガス流量は、アンモニア(NH3)ガス流量に対して10%以下または、15ml/min以下であることが望ましい。
【0048】
さらに、表3のステップ2のバイアスRFパワーは、表3のステップ1のバイアスRFパワーより低くしている。このことにより、メタノール(CH3OH)ガスとマスクのタンタル膜15との反応により生成された酸化タンタル(TaO)が溝の底面に付着し易くなり、溝の底面をフラット形状にするのに寄与している。このため、表3のステップ2のバイアスRFパワーは、表3のステップ1のバイアスRFパワーより低いまたは、表3のステップ2のバイアスRFパワーは、表3のステップ1のバイアスRFパワーに対して2/3以下であることが望ましい。
また、表3のステップ2では、アンモニア(NH3)ガスとメタノール(CH3OH)ガスの混合ガスを用いたが、メタノール(CH3OH)ガスの代わりにエタノール(C26O)ガス、プロパノール(C38O)ガス等の水酸基を含有するガスでも良い。
【0049】
また、本実施例では、アンモニア(NH3)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスにより、300nmの深さまでニッケル鉄膜14をエッチングしたが、アンモニア(NH3)ガスの流量をリファレンスの流量に対して±15%の範囲で増減することによって、溝形状のテーパ角度をリファレンスの角度に対し±1.2度の範囲で制御できる。
【0050】
例えば、アンモニア(NH3)ガスの流量を245nm/min、ヘリウム(He)ガスの流量を305nm/minとする混合ガスの場合、図9に示すように13.5度のテーパ形状となる。続いて、アンモニア(NH3)ガスの流量を210nm/min、ヘリウム(He)ガスの流量を305nm/minとする混合ガスの場合、図9に示すように14.7度のテーパ形状となり、一方、アンモニア(NH3)ガスの流量を280nm/min、ヘリウム(He)ガスの流量を305nm/minとする混合ガスの場合、図9に示すように12.3度のテーパ形状となる。これらの結果は以下のように考えられる。
【0051】
ヘリウム(He)ガスの流量に対してアンモニア(NH3)ガス流量を増加することによって、アンモニア(NH3)ガスの処理圧力に対する分圧が増加し、プラズマ中のイオンが散乱しやすくなることにより溝パターンの側壁にイオンが衝突しやすくなる。このため、溝形状が垂直形状に近づき、テーパの角度が小さくなる。
【0052】
一方、ヘリウム(He)ガスの流量に対してアンモニア(NH3)ガスの流量を低下させると、アンモニア(NH3)ガスの処理圧力に対する分圧が減少し、溝パターンの側壁へのイオンの衝突が減少する。このため、溝形状がテーパ形状に近づき、テーパの角度が大きくなる。
【0053】
このようにアンモニア(NH3)ガスの流量をリファレンスの流量に対して±15%の範囲で増減することによって、溝形状のテーパ角度をリファレンスの角度に対し±1.2度の範囲で制御できるが、アンモニア(NH3)ガスの流量を±15%の範囲を超えて増減させると、アンモニア(NH3)ガスの滞在時間や排気速度とのバランスが崩れ、エッチャント不足や反応生成物の再付着などが生じて図9に示すような溝パターンの側壁のテーパ角度とアンモニア(NH3)ガス流量比率との比例関係が成り立たなくなる。
【0054】
本実施例では、タンタル膜15をマスクとして用いたが、酸化した場合にニッケル鉄膜14との選択比が十分に高い材料であれば良いので、例えば、チタン(Ti)、ジルコニア(Zr)、イットリア(Y)、ハフニウム(Hf)等をマスクに用いても良い。
【0055】
また、本実施例は、ニッケル鉄膜14をエッチングした例で説明したが、鉄(Fe)元素、ニッケル(Ni)元素、コバルト(Co)元素の中で少なくとも一つの元素を含む磁性膜をエッチングしても本実施例と同様な効果を得ることができる。例えば、コバルト鉄(CoFe)膜、コバルトニッケル鉄(CoNiFe)でも良い。
【0056】
さらに、本実施例では、誘導結合型のプラズマエッチング装置を用いた例で説明したが、マイクロ波と磁界を利用したECR(Electron Cyclotron Resonance)方式のマイクロ波プラズマエッチング装置、ヘリコン波プラズマエッチング装置、容量結合型プラズマエッチング装置等に適用しても本実施例と同等の効果を得ることができる。
【0057】
以上、上述した通り、本発明は、タンタルをマスクとしてアンモニアガスとヘリウムガスの混合ガスを用いて磁性膜を所望の深さまでプラズマエッチングし、引き続き、アンモニアガスと酸素元素を含有するガスとの混合ガスまたは、アンモニアガスと水酸基を含有するガスとの混合ガスを用いて所望の深さまでエッチングされた磁性膜をプラズマエッチングすることを特徴とする。
【0058】
また、本発明により、250nm以下の開口寸法のタンタルをマスクとして300nm以上の深さまで磁性膜をエッチングすることができるとともに収容層となる溝形状の底面をフラット形状にすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 誘導結合アンテナ
2 放電部
3 処理部
4 整合器
5 ガス供給装置
6 電極
7 プラズマ
8 排気装置
9 ファラデーシールド
10 第1の高周波電源
11 第2の高周波電源
12 試料
13 AlTiC基板
14 ニッケル鉄膜
15 タンタル膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10