【文献】
Int. J. Food Microbiol.,2005年,Vol. 103,P. 143-155
【文献】
Dig. Dis. Sci.,2008年,Vol. 53,P. 2464-2473
【文献】
Int. Immunopharmacol.,2008年,Vol. 8,P. 574-580
【文献】
Anal. Biochem.,2004年,Vol. 335,P. 73-80
【文献】
Immunol. Cell Biol.,2010年,Vol. 88,P. 685-689,Published onlile 16 Mar. 2010
【文献】
Immunol. Cell Biol.,2011年,advance online publication, 15 Feb. 2011,P. 1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1181菌株(受託番号:FERM BP−11269)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、芳香族炭化水素レセプター(AhR)活性化能を有するプロバイオティクスに関する。
本発明において、「AhR活性化能」とは、AhR活性化によって開始されるシグナル伝達経路を活性化することができる能力のことをいい、活性化するメカニズムは何であってもよい。したがって、必ずしも菌体そのものがAhRのリガンドである必要はなく、例えば菌が産生する分泌物質がAhR活性化能を有していてもよいし、死菌体またはその破砕物などによってAhRが活性化されてもよい。したがって、本発明において「微生物」、「細菌」という場合または特定の菌についていう場合、生菌そのものだけでなく、死菌体またはその破砕物、該菌の培養物または分泌物も含まれる。しかし、好ましくは生菌、死菌体またはその破砕物などの菌体そのものであり、消化管内で細菌叢を形成することができるという観点から、より好ましくは生菌である。
【0022】
本発明において、「プロバイオティクス」とは、上述のとおり「消化管内の細菌叢を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物と、それらの増殖促進物質」のことをいう。したがって、本発明のプロバイオティクスには、細菌叢を形成する細菌のみならず、かかる細菌の増殖を促進する物質もまた包含される。また、本発明において「プロバイオティクス」とは、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物及びこれらの微生物が産生した物質(微生物の培養物)を包含する。AhR活性化能を有する増殖促進物質には、物質そのものがAhR活性化能を有している場合も、物質そのものはAhR活性化能を有さないが、AhR活性化能を有する細菌の増殖を促進する場合も含まれる。好適な腸内環境を形成し得ること、作用が腸内環境の個体差に依存しないことなどから、プロバイオティクスが生菌であることが好ましいが、一時的なAhRの活性化が所望される場合には、死菌体、菌分泌物などが好ましい。
【0023】
本発明のプロバイオティクスに含まれる菌としては、これに限定するものではないが、例えば乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌、バクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性レンサ球菌、腸球菌、大腸菌などが挙げられる。しかし、安全性などの観点から、乳酸菌、ビフィズス菌およびプロピオン酸菌が好ましく、乳酸菌およびビフィズス菌がより好ましい。その中でも、菌体そのものがAhR活性化能を有し、生菌だけでなく死菌体もAhRを活性化し得るものが存在するという観点から、さらに好ましくは乳酸菌である。乳酸菌の中でも、ヨーグルトの製造に用いられ、食品としての応用が容易であるなどの観点から、特に好ましくはLactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilusなどである。
【0024】
近年、リポ多糖(LPS)の刺激によってAhRがStat1と結合してNF−κBの転写活性を抑制するという報告がなされた(Kimura, A. et al., J Exp Med. 2009 Aug 31;206(9):2027-35)。しかしながら、細胞膜構造にLPSを有さない乳酸菌、ビフィズス菌およびプロピオン酸菌などのグラム陽性菌においてAhR活性化能を有するものが見出されたことは、新しい発見である。
【0025】
本発明者らの研究により、AhR活性化能を有する新規なプロバイオティクスとして、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1181菌株(受託番号:FERM BP−11269)が単離された。したがって、本発明の一態様において、本発明のプロバイオティクスは、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1181菌株を含む。
【0026】
本発明のOLL1181菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、2010年7月16日付、受託番号:FERM BP−11269として寄託されており、以下の特徴を有する新規Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus菌である。
(a)形態的性質
桿菌
(b)培養的性質
培地名:Lactobacilli MRS Broth (Difco, Ref. No. 288130)
pH:無調整
培養温度:37℃
培養時間:18時間
(1)形状:円形
(2)直径:1〜2mm
(3)色調:白色
(4)隆起状態:半球状
(5)周縁:全縁
(6)表面形状:スムーズ
(7)透明度:不透明
(8)粘稠度:バター様
(c)生理学的性質
(1)グラム染色性:陽性
(2)乳酸発酵形式:ホモ乳酸発酵
(3)酸素要求性:通性嫌気
(4)発育温度:15℃+、45℃−
【0027】
OLL1181菌株は、AhRを活性化し、そのシグナル伝達経路の下流でPGE2の産生を増大させ、その結果消化管内で抗炎症作用を発揮することができる。OLL1181菌株は、生菌および死菌体双方でAhR活性化能を有することが、本発明者らの研究により分かった。LPSを有さないグラム陽性菌であるOLL1181菌株の菌体が、AhR活性化能を有していることは、驚くべき発見である。また、OLL1181菌株はLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus菌であり、生体毒性を有さない安全な菌であるため、食品組成物、飲料組成物などの経口摂取用組成物を含む様々な用途に用いることができるという点で、プロバイオティクスとして非常に有用である。また、OLL1181菌株は、菌体そのものがAhRを活性化できるため、組成物中に含まれる菌の生死に関係なく、AhR活性化能を発揮することができる。したがって様々な組成物中に含ませ得るという点においてもまた非常に有用である。
【0028】
本発明のプロバイオティクスはAhR活性化能を有し、AhRを活性化することによりPGE2の産生を促進し、その結果抗炎症性の効果を発揮することができる。したがって、本発明のプロバイオティクスを抗炎症剤の有効成分として用いることができる。本発明のプロバイオティクスを抗炎症剤の有効成分として用いる場合、生菌、死菌、培養物、その加工物およびそれらの組み合わせを用いることが可能である。前記培養物とは、本発明のプロバイオティクスの培養終了後の培養上清や培地成分をそのまま用いるものであり、前記加工物は、培養物に由来すればとくに限定されないが、例えば、培養物の濃縮、ペースト化、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、液状化、希釈、破砕などの加工により得られる物が挙げられる。これらの加工には、公知の方法を適宜用いることができる。前記培養物中または前記加工物中において、菌体および/またはその破砕物が含まれてもよく、菌体として含まれる場合は、生菌であっても死菌であってもよい。摂取によって腸内有害菌の増殖を抑制して腸内環境を改善する、という観点から、好ましくは生菌として組成物中に含まれる。また、上記抗炎症剤には、本発明のプロバイオティクスに加えて、これに限定するものではないが、例えば薬学的に許容可能な担体、賦形剤、添加剤、希釈剤などの任意の成分をさらに含んでよい。
【0029】
また本発明のプロバイオティクス、その培養物、またはその加工物には、適宜、例えば、培地成分、経口経管摂取に適した添加物および水などの溶媒、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属、香料、薬学的に許容し得る担体、食品添加物などの任意成分を添加し、医薬組成物や食品組成物などとすることができる。
【0030】
本発明の抗炎症剤は、PGE2の産生促進に起因して抗炎症性効果を発揮し得るものであり、したがって本発明の抗炎症剤は、炎症性疾患の治療、改善および/または予防用に用いることができる。かかる炎症性疾患はいかなる炎症性疾患であってもよいが、有効成分であるプロバイオティクスの効果を最大限に発揮できること、すなわち炎症局所への作用とその他増悪因子の改善効果などから、好ましくは、これに限定するものではないが例えば炎症性腸疾患などの消化管の炎症に用いられる。
【0031】
本発明の抗炎症剤に含まれ得るプロバイオティクスとしては、経口摂取の容易さ、消化管内の細菌叢への作用効果の大きさなどの観点から、好ましくは乳酸菌、ビフィズス菌およびプロピオン酸菌であり、より好ましくは乳酸菌およびビフィズス菌である。菌体そのものが有するAhR活性化の作用効果の観点から、さらに好ましくは乳酸菌であり、最も好ましくはLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1181菌株である。
【0032】
本発明の抗炎症剤は、消化管内の細胞に作用することで消化管、特に腸における炎症に対して対症療法的に効果を発揮し、さらに消化管内の細菌叢へ作用することで、根本治療的に効果を発揮することができる剤であるため、経口摂取されることが好ましい。したがって、本発明の抗炎症剤を含む経口摂取用組成物もまた、本発明に包含される。
【0033】
本発明のプロバイオティクス、抗炎症剤、または経口摂取用組成物の一日当たりの摂取量は、とくに限定されないが、年齢、症状、体重、用途などに応じて適宜調整することができる。典型的には、プロバイオティクスとして0.01〜100×10
11個/body、好ましくは0.1〜10×10
11個/body、より好ましくは0.3〜5×10
11個/bodyの一日当たりの摂取量を例示することができる。また、プロバイオティクスとして0.01〜100×10
11個/60kg体重、好ましくは0.1〜10×10
11個/60kg体重、より好ましくは0.3〜5×10
11個/60kg体重の一日当たりの摂取量を例示することもできる。
しかしながら、本発明のプロバイオティクス、抗炎症剤、または経口摂取用組成物の摂取量は、上記に挙げた値に限定されるものではない。
【0034】
本発明の抗炎症剤または経口摂取用組成物に含まれるプロバイオティクスの含量は、その使用形態によって適宜決めることができる。典型的には、プロバイオティクス乾燥菌体として5〜50w/w%、好ましくは1〜75w/w%、より好ましくは0.1〜100w/w%および1〜100w/w%を例示することができる。
しかしながら、本発明の抗炎症剤または経口摂取用組成物に含まれるプロバイオティクスの含量は、上記に挙げた値に限定されるものではない。
【0035】
本明細書において、「経口摂取用組成物」とは、経口摂取可能な全ての組成物を意味する。したがって、経口摂取用組成物には、これに限定するものではないが、例えば飲料品組成物、食品組成物、飼料組成物、医薬組成物、などが含まれる。
【0036】
本発明の飲料品組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するプロバイオティクス、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の飲料品組成物にはさらに、プロバイオティクスの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる飲料品組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0037】
本発明の食品組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するプロバイオティクス、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の食品組成物にはさらに、プロバイオティクスの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる食品組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0038】
糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテルなど)、食物繊維などが挙げられる。
タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼイン、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質などの動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖などの各種乳由来成分などが挙げられる。
【0039】
脂質としては、例えば、ラード、魚油など、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油などの動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油などの植物性油脂などが挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。
【0040】
本発明の飲料品組成物および食品組成物のカテゴリーや種類に制限はなく、機能性食品、特定保健用食品、特定用途食品、栄養機能食品、健康食品、介護用食品でもよく、また、菓子、乳酸菌飲料、チーズやヨーグルトなどの乳製品、調味料などであってもよい。飲食品の形状についても制限はなく、固形、液状、流動食状、ゼリー状、タブレット状、顆粒状、カプセル状など、通常流通し得るあらゆる飲食品形状をとることができ、各種食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品その他の市販食品など)に添加してもよい。上記飲食品の製造は、当業者の常法によって行うことができる。
【0041】
本発明のプロバイオティクス、その培養物、またはその加工物は、上記のとおり、乳製品・発酵乳を含む一般飲食品に加工できる他、ヨーグルトやチーズなどの乳製品・発酵乳の製造用スターターとして利用することも可能である。スターターとする場合は、本発明のプロバイオティクスの生存および増殖に支障がない限り、また、乳製品製造に支障がない限り、他の微生物が混合されていてもよい。例えば、ヨーグルト用乳酸菌として主要な菌種であるLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus acidophilusなどと混合してもよく、その他、一般にヨーグルト用やチーズ用として用いられる菌種と混合してスターターとすることができる。上記スターターによる乳製品、発酵乳の製造は、常法に従って行うことができる。例えば、加温・混合・均質化・殺菌処理後に冷却した乳または乳製品に、上記スターターを混合し、発酵・冷却することにより、プレーンヨーグルトを製造することができる。
【0042】
本発明の飼料組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するプロバイオティクス、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の飼料組成物にはさらに、プロバイオティクスの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる飼料組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0043】
本発明の医薬組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するプロバイオティクス、その培養物およびその加工物から選択される1種または2種以上を含む。かかる医薬組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患に対して治療、改善および/または予防効果を奏する。また、かかる医薬組成物は、投与経路はとくに限定されないが、経口的または非経口的に投与することが含まれ、例えば、経口投与、経管投与、経腸投与を例示できる。簡便かつ安全性の観点から、経口投与が好ましい。また剤型は、とくに限定されないが、投与経路に応じて適宜選択することができ、例えば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤が挙げられる。
【0044】
経口投与製剤としては、周知の各種剤型とすることができ、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、トローチ剤などの剤型とすることができる。また、腸溶性製剤とすることにより、胃酸の効果を受けることなく、より効率的に腸まで運ぶことも可能である。
非経口的な投与としては、注射剤などの形での投与を挙げることができる。また、本発明のプロバイオティクス、その培養物またはその加工物を、処置を施したい領域に局所的に投与することもできる。例えば、手術中の局所注入、カテーテルの使用により投与することも可能である。
【0045】
本発明の医薬組成物に用い得る担体としては、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤などが医薬上許容される担体として挙げられるが、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などを挙げることができる。
【0046】
本発明は、AhRを活性化することができるプロバイオティクスが存在するという新たな知見に基づいて完成されたものであり、したがってAhRを活性化する能力を有するプロバイオティクスをスクリーニングする方法および該スクリーニングされたプロバイオティクスを対象に投与することを含む、AhRを活性化する方法、ならびに炎症性疾患の予防および/または治療方法も本発明に包含される。特に、AhR活性化能に基づいて、摂取個体に有益な作用をもたらすプロバイオティクスをスクリーニングできることは、従前全く知られていなかったことである。本発明において、炎症性疾患は全身性、局所性のいずれであってもよく、炎症部位も皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、肝臓、血管、子宮、等のいずれであってもよい。炎症性疾患の好適な例として、炎症性腸疾患を挙げることができるが、この例に限定されない。
【0047】
AhRは、上述のとおり、活性化されると核内に移行し、DNA上の異物応答配列(XRE、ダイオキシン応答配列:Dioxin Responsive Element、DREとも呼ばれる)に結合することで、例えばシトクロームP450酵素(CYP1A1)など、その下流の遺伝子発現を引き起こす。したがって、少なくとも1のXRE配列およびその下流のレポーター遺伝子領域を含む発現ユニットを有するAhR発現細胞を候補プロバイオティクスおよび/またはその培養上清によって刺激し、レポーター遺伝子の発現を観察することで、候補プロバイオティクスがAhR活性化能を有するかどうかを試験することができる。
【0048】
例えばダイオキシン類やPCB類などの化学物質を用いた、AhR活性化化合物のスクリーニングを含むin vitroバイオアッセイ方法は公知である。本発明に用いられるAhR発現細胞は、前記バイオアッセイに用いられ得る細胞であればいかなる細胞も用いることができる。入手および培養の容易性、検出方法の簡便さなどの観点から、好ましくはHeXS34細胞、Caco−2細胞などが挙げられる。かかるAhR発現細胞が有するXREおよびその下流のレポーター遺伝子を含む発現ユニットは、内因性のものであっても、形質転換などによって外部から導入されたものであってもよい。アッセイに特化している、検出ノイズが少ない、などの観点から、好ましくは外部から導入された発現ユニットを有する。
【0049】
本発明に用いられるレポーター遺伝子としては、遺伝子の転写産物であるmRNAおよび/またはタンパク質の発現量を定量的に計測可能な遺伝子であれば、いかなる遺伝子を用いてもよい。例えば上述のCYP1A1の発現量を、例えば定量的リアルタイムPCRなどを用いて定量的に検出することで、AhR活性化能を検出することも可能である。その例として、後述の実験例 例3等に記載されている、Caco2細胞を用いた試験系を挙げることができる。もちろん、バイオアッセイ用として当業者に知られたあらゆるレポーター遺伝子を用いることも可能であり、定量の容易性、発現の安定性などの観点から、これに限定するものではないが、例えば分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)、分泌型ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)などが用いられる。その例として、後述の実験例 例1等に記載されている、HeXS34細胞を用いた試験系を挙げることができる。
本発明において、前記発現ユニットを外部から細胞に導入するために使用するプラスミドが、少なくとも1のXRE配列およびその下流のレポーター遺伝子を含むプラスミドである場合、これを異物応答性プラスミドという。また、前記異物応答性プラスミドのレポーター遺伝子がSEAPである場合、異物応答性プラスミドをpXRE−SEAPと表すことができる。異物応答性プラスミドの作製および細胞への導入は、例えばWO2005/113767、WO2007/004361、Kasaiらの論文(Kasai et al., Toxicol Appl Pharmacol. 2006; 211(1):11-19)に準じて行うことができる。
【0050】
本発明のスクリーニング方法では、候補プロバイオティクスおよび/またはその培養上清によってAhR発現細胞を刺激し、XRE配列の下流に存在するレポーター遺伝子の発現量を定量することで、AhR活性化能を測定することができる。レポーター遺伝子の発現量が高ければ、AhR活性化能が強いことが示唆される。したがって、スクリーニング方法としては、候補プロバイオティクスとAhR発現細胞とを共培養した後、レポーター遺伝子の発現量を計測し、同様に計測されたネガティブコントロールにおけるレポーター遺伝子の発現量と比較して有意に高い場合、AhR活性化能を有すると判断することができる。
【0051】
本明細書において、AhR発現細胞を「刺激する」とは、典型的にはAhR発現細胞を候補プロバイオティクスおよび/またはその培養上清の存在下で一定時間インキュベートすることをいう。したがって候補プロバイオティクスが生菌である場合にAhR発現細胞と候補プロバイオティクスとを共培養する態様や、死菌体、分泌物、破砕物および/または培養上清などの存在下で一定時間インキュベートする態様を包含する。インキュベートする時間は候補プロバイオティクスや試験する細胞、AhRの発現量、レポーター遺伝子の種類などによって好ましい時間を適宜選択してよい。
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、かかる実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0053】
本実施例おいて、得られた値は全て平均値±標準偏差を表している。また、統計学的分析は、すべてunpaired Student's t検定を用いて行い、p<0.05の場合を有意差ありと判断した。
【0054】
例1.AhR活性化能を有する乳酸菌のスクリーニング
(1)HeXS34細胞の調製
HeXS34細胞の調製は、既報(Kasai et al., Toxicol Appl Pharmacol. 2006; 211(1):11-19)に従って行った。簡潔には、2コピーのXREコンセンサス配列(tctcacgcaactccg)の下流にSEAP遺伝子を導入した異物応答性プラスミドpXRE−SEAPを、Hepa−1c1c7細胞(ネズミヘパトーマ細胞株、American Type Culture Collection (Manassas,VA, USA))に安定的に形質転換することにより、HeXS34細胞を調製した。
【0055】
(2)熱殺菌した乳酸菌による刺激
MEMα培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)に10%のウシ胎児血清(FBS)を添加した培地で維持した、(1)で調製したHeXS34細胞を、96ウェルプレートに、ウェル毎に5000個/90μlで播種し、凍結乾燥した熱殺菌済み乳酸菌株10μl(5×10
9個/ml)の存在下および非存在下で24時間培養した。ポジティブコントロールとして、50pMの2,3,7,8−テトラクロロジベンゾダイオキシン(TCDD)を用いた。また、ネガティブコントロールとして、乳酸菌またはTCDDを添加しないウェルを設けた。培養上清を、続くSEAPアッセイに供した。
【0056】
(3)SEAPアッセイ
(2)で得られた培養上清にGreat EscAPe SEAP Chemiluminescence kit(Clontech)を用いて、化学発光法によりSEAPを定量した。アッセイは3度行い、得られた発光強度(LU)をSEAP活性とし、その平均値を求めた。
【0057】
結果を
図1に示す。Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1181菌株を含む47菌株において、ネガティブコントロールと比較して高いSEAP活性が観察された。
なお、菌株名にMEPと記載された菌株は株式会社明治保有菌株である。また、菌種名は下記の表の通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
例2.αNFによるSEAP活性阻害
例1のスクリーニングによって、AhR活性化能を有する候補菌株としてOLL1181菌株、AhR活性化能を有さないネガティブコントロールとしてMEP222701菌株を選択し、さらなる実験に供した。例1と同様に、熱殺菌済みの前記2種の乳酸菌株懸濁液(5×10
9個/ml溶液をそれぞれ5%v/vおよび10%v/vで添加したのもの)で24時間刺激し、培養上清をSEAPアッセイに供した。またXRE領域の活性化にAhRが作用していることを明確に示すため、乳酸菌による刺激の前に、10μMのα−ナフトフラボン(αNF、AhRのアンタゴニスト)で30分間プレインキュベートしたHeXS34細胞とプレインキュベートしなかったHexS34細胞を用いて、それぞれ10%v/vの熱殺菌済みOLL1181菌株懸濁液で24時間刺激後、培養上清を例1.(3)と同様にSEAPアッセイに供した。
【0060】
結果を
図2に示す。Aは、OLL1181菌株とMEP222701菌株のSEAP活性を比較したグラフであるが、OLL1181菌株は、未処理区と比較して、乳酸菌株懸濁液の添加量が5%v/v(2.5×10
8個/ml well)、10%v/v(5×10
8個/ml well)いずれも有意にSEAP活性が上昇した。Bは、乳酸菌株懸濁液の添加量を10%v/v(5×10
8個/ml well)とし、αNFでプレインキュベートしたものとしていないものを比較したグラフであるが、αNFでプレインキュベートしたものは、していないものと比較して、有意にOLL1181菌株刺激によるSEAP活性の上昇を阻害した。この結果から、OLL1181菌株刺激によるSEAP活性の上昇は、AhR活性化によってXRE配列が活性化されたことによるものと考えられた。
【0061】
例3.Caco2細胞を用いたAhR活性化能の検証
(1)Caco2細胞の刺激
ヒト結腸癌由来の細胞であるCaco2細胞を用いて、AhR活性化能の検証を行った。ヒトCaco2細胞を、10%FBSおよび抗生物質を添加したDMEM培地(Invitrogen/Gibco, arlsbad, CA)で培養し、一部を5μMのαNFで30分間プレインキュベートしたのち、プレインキュベートしたものとしていないもの両方について、10%v/vの熱殺菌済みOLL1181菌株懸濁液で4時間刺激した。
【0062】
(2)定量的リアルタイムPCR
(1)で得られたCaco2細胞を定量的リアルタイムPCRに供した。定量的リアルタイムPCRは、ABI 7300 real-time PCRシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、取扱説明書に基づいて行った。プライマーおよびプローブは、ヒトのCYP1A1用(Assay ID:Hs02382618_s1)およびグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)用(Assay ID:Hs99999905_m1)のもの(Applied Biosystems)を用いた。GAPDH遺伝子の発現量に対するCYP1A1遺伝子の発現量を計算し、CYP1A1遺伝子の相対発現量として示した。
【0063】
結果を
図3に示す。OLL1181菌株による刺激により、CYP1A1の発現が有意に増大し、かかる発現増大はαNFによって有意に抑制された。したがって、ヒト結腸細胞においてもOLL1181菌株によるAhR活性化が起こったことがわかる。
【0064】
例4.in vivoにおけるAhR活性化
4〜6週齢のC57BL/6マウス(雌、体重14〜18g、日本SLC社から購入)に、それぞれ200μlの熱殺菌済みOLL1181菌株懸濁液、熱殺菌済みMEP222701菌株懸濁液(5×10
9個/ml)およびPBSを胃ゾンデにより経口投与した。各菌株の投与用量は、1×10
9個/bodyに相当する。投与4時間後に大腸を切除し、例3.(2)と同様に、マウスのCYP1A1用(Assay ID:Mm00487218_m1)およびGAPDH用(Assay ID:Mm99999915_g1)プライマーおよびプローブを用いて、定量的リアルタイムPCRでCYP1A1の相対発現量を定量した。
【0065】
結果を
図4に示す。OLL1181菌株の懸濁液を投与した群では、PBS投与群と比較して、有意にCYP1A1の発現量が増大していたが、MEP222701菌株投与群では、PBS投与群との有意な差は見られなかった。このことから、OLL1181菌株の経口投与により、大腸においてAhR活性化がin vivoでも起こることが示された。
【0066】
例5.in vitroおよびin vivoにおけるCOX2の発現誘導およびプロスタグランジンE2の産生誘導
(1)COX−2の発現誘導検証
OLL1181菌株刺激によるAhR活性化によって、COX−2の発現が誘導され、それによってアラキドン酸からプロスタグランジンE2の産生が亢進することを検証するため、定量的リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブとして、ヒトおよびマウスのCOX−2(ヒト用Assay ID:Hs01573469_m1、マウス用Assay ID:Mm01307334_g1)およびGAPDH用のものを用いた以外は例3および例4と同様の方法で、COX−2のin vitroおよびin vivoでの発現を確認した。GAPDH遺伝子の発現量に対するCOX−2遺伝子の発現量を計算し、COX−2遺伝子の相対発現量をとして示した。
【0067】
(2)プロスタグランジンE2(PGE2)ELISA
刺激用の乳酸菌として、OLL1181およびMEP222701に加えて、例1のスクリーニングで高いAhR活性を示したMEP222761も用い、刺激時間を24時間とした以外は例3(1)と同様にヒトCaco2細胞を刺激し、培養上清中に分泌されたPGE2の量を、PGE2 Competitive ELISA kit(Thermo Scientific inc., Watham, MA)を用いて、取扱説明書にしたがって定量した。
【0068】
結果を
図5に示す。AはヒトCaco2細胞におけるin vitroでのCOX−2の相対発現量を、Bはマウス大腸におけるin vivoでのCOX−2の相対発現量を、CはヒトCaco2細胞におけるPGE2産生量をそれぞれ表す。ヒトin vitroにおいてもマウスin vivoにおいても、OLL1181菌株刺激によって、ネガティブコントロールと比較して有意にCOX−2の発現が増大していることが確認された。さらにヒトCaco2細胞においては、OLL1181菌株刺激によってPGE2の産生が確認された。かかるPGE2産生はαNFによって阻害されたことから、AhR活性化に由来したPGE2産生であることが確認された。
【0069】
例6.OLL1181菌株によるAhR活性化は、DSS誘導腸炎を緩和する
腸炎の誘導のため、4〜6週齢のC57BL/6マウス(雌、体重14〜18g、日本SLC社から購入)に7日間、飲用蒸留水に溶解した3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS、分子量5000、和光純薬工業株式会社より購入)を毎日自由摂取させ、その後DSSの入っていない蒸留水を3日間自由摂取させた。菌株による緩和効果を検証するため、熱殺菌したOLL1181菌株、MEP222701菌株およびMEP222761菌株を7日間毎日200μl(5×10
9個/ml)、胃ゾンデにより経口投与した。各菌株の投与用量は、1×10
9個/bodyに相当する。コントロールとして、菌液に代えてPBSを200μl、7日間毎日経口投与した。また、DSSを投与しない大腸炎非誘発群にもPBSを200μl、7日間毎日経口投与した。実験は各群n=10〜12で行い、DSSの投与開始から11日目に大腸を切除し、大腸の長さを計測し、例3.(2)と同様に、マウスTNF−α用(Assay ID:Mm00443258_m1)およびマウスミエロペルオキシダーゼ(MPO)(Assay ID:Mm00447886_m1)用のプライマーおよびプローブを用いて、TNF−αおよびMPOの発現量を定量的リアルタイムPCRで定量した。
【0070】
結果を
図6に示す。Aは11日目までの各群の生存率を表したグラフである。DSSで大腸炎を誘導した群の中で、PBSを投与したコントロール群(DSS)およびMEP222701菌株投与群(MEP222701)では、11日目の生存率は20%程度であったが、MEP222761菌株投与群(MEP222761)では約40%の生存率であり(データは示さない)、OLL1181菌株投与群(OLL1181)では約80%の生存率であった。DSSを投与せずPBSを投与した大腸炎非誘発群(PBS)では、死亡したマウスはいなかった。
【0071】
BはDSS大腸炎誘発群(DSS)、DSS大腸炎非誘発群(PBS)およびDSS大腸炎誘発+OLL1181菌株投与群(OLL1181)の体重の変化を表す。DSS大腸炎誘発群(DSS)は体重が減少する傾向にあったが、OLL1181菌株投与群では、8日目から大腸炎誘発群(DSS)と比較して平均体重が上回り、10日目以降には若干の体重増加が確認された。
Cは11日目におけるDSS大腸炎誘発群(DSS)、DSS大腸炎非誘発群(PBS)およびDSS大腸炎誘発+OLL1181菌株投与群(OLL1181)の大腸の長さを表す。DSS大腸炎誘発群(DSS)と比較して、OLL1181菌株投与群は有意に大腸が長かった。
【0072】
Dは11日目におけるDSS大腸炎誘発群(DSS)、DSS大腸炎非誘発群(PBS)およびDSS大腸炎誘発+OLL1181菌株投与群(DSS+OLL1181)の、大腸でのTNF−αおよびMPOの発現量を表す。TNF−αはPGE2によって発現抑制されることが知られており、MPOは炎症マーカーとして知られている。どちらの発現も、DSS大腸炎誘発群(DSS)と比較して、OLL1181菌株投与群(DSS+OLL1181)において有意に抑制されていた。
【0073】
例7.発酵乳製品(プレーンヨーグルト)の製造
牛乳と乳製品と水を最終製品の無脂乳固形分が9.5%、乳脂肪分が3.0%となるように混合して、ヨーグルトベースミックスを調製した。次に、調製したヨーグルトベースミックスを均質化後、95℃、5分間加熱殺菌し、その後、約40℃まで冷却した。
前述のヨーグルトベースミックスに、「明治ブルガリアヨーグルト」より単離したラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus OLL2038)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus OLL1131)の混合スターターを接種して、発酵させヨーグルトを製造した(対照品A)。また、混合スターターのLactobacillus bulgaricus OLL2038の代わりにLactobacillus bulgaricus OLL1181菌株を使用すること以外は、対照品と同様の方法でヨーグルトを製造した(発明品A)。
【0074】
後述のとおりに物性値を測定した結果、OLL1181菌株にて製造して得られたヨーグルト(発明品A)は、対照品のヨーグルト(対照品A)に比べて、同等以上の好ましい風味と物性を持っていることが示された。
【表2】
【0075】
例8.発酵乳製品(ドリンクヨーグルト)の製造
牛乳と乳製品と水を最終製品の無脂乳固形分が8.0%、乳脂肪分が0.5%となるように混合して、ドリンクヨーグルト用ベースミックスを調製し、均質化後、これを95℃、10分間で加熱殺菌した後に約40℃に冷却した。このドリンクヨーグルト用ベースミックスに例8と同様のヨーグルトスターター(「明治ブルガリアヨーグルト」より単離したラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus OLL2038)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus OLL1131)の混合スターター)を接種し、発酵させ、ドリンクヨーグルト用発酵乳を調製した。この得られたドリンクヨーグルト用発酵乳について、均質化して、ドリンクヨーグルト用液状発酵乳を得た。このドリンクヨーグルト用液状発酵乳と殺菌した糖液を質量比で6:4にて混合して、ドリンクヨーグルトを製造した(対照品B)。また、混合スターターのLactobacillus bulgaricus OLL2038の代わりにLactobacillus bulgaricus OLL1181菌株を使用すること以外は、対照品と同様の方法でドリンクヨーグルトを製造した(発明品B)。
【0076】
後述のとおりに物性値を測定した結果、OLL1181菌株にて製造して得られたドリンクヨーグルト(発明品B)は、対照のドリンクヨーグルト(対照品B)に比べて、同等以上の好ましい風味と物性を持っていることが示された。
【表3】
【0077】
物性の測定方法
pHは、5℃にてガラス電極のpHメーター(HM30−R,DKK−TOA製)を用いて測定した。
乳酸酸度は、0.1規定NaOHを用い、フェノールフタレインを指示薬として滴定し、算出した。
ヨーグルトのカードテンションは、カードメーターMAX ME500(飛鳥機器)を使用し、試料にスプリングを介して100gの重りによる定速荷重を加え、変形により生ずる歪みをロードセルを用いて計測し、破断に至るまでの弾力性を硬度(g)とした。
粘度は品温5℃にてモデルRB200、コントローラーRC−100(東機産業)を使用し、No.1ローターを用い60rpm、30秒間の条件で測定した。
風味は、5名の専門パネラーにより、良好、適、不良の3段階で判定した。