(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却構造は、前記ドーパントガス供給ラインおよび前記ドーパントガス供給ラインを流れるドーパントガスを冷却する冷却通路を有し、前記ドーパントガス供給ラインはその遠位端において前記アークチャンバにドーパントガスを放出し、前記冷却通路は前記ドーパントガス供給ラインの遠位端部分に配置される、請求項1に記載のイオン注入システム。
前記イオン源のための水冷却アセンブリをさらに備え、前記水冷却アセンブリは、前記ドーパントガス供給ラインおよび前記ドーパントガス供給ラインを流れるドーパントガスを冷却するために、前記冷却通路に動作可能に結合されて前記冷却通路に水を流す、請求項2に記載のイオン注入システム。
前記冷却構造は、前記ドーパントガスの冷却を行うために冷却液が通って流れることができる少なくとも1つの通路をその内部に有するヒートシンク本体を備え、前記ヒートシンク本体は、前記ドーパントガス供給ラインに機械固定により固定され、前記イオン注入システムは、冷却液が循環するイオン源冷却流れ回路を備え、前記流れ回路は、前記少なくとも1つの通路内を冷却液が流れるために、前記ヒートシンク本体に冷却液供給関係で結合される、請求項1に記載のイオン注入システム。
ドーパントガス源からイオン源のアークチャンバに、前記ドーパントガスのイオン化を引き起こす条件化でドーパントガスを通過させる工程と、前記アークチャンバへの進入に先立ってドーパントガス供給ラインにおいて前記ドーパントガスを冷却して、前記アークチャンバの動作中に生成される熱による前記ドーパントガスの加熱および前記熱から生じる前記ドーパントガスの分解を抑制する工程と、を含み、前記ドーパントガスは、B2F4、B3F5、BHF2およびBH2Fから選択される少なくとも1つのホウ素化合物を含む、基板にイオンを注入する方法。
前記ドーパントガスは、その遠位端において前記アークチャンバにドーパントガスを放出するドーパントガス供給ライン内を前記アークチャンバに向かって流れ、前記ドーパントガスは前記ドーパントガス供給ラインの遠位端部分で冷却される、請求項9に記載の方法。
前記冷却する工程は、前記ドーパントガス供給ラインの前記遠位端部分および前記ドーパントガス供給ラインを流れるドーパントガスを冷却する冷却通路に冷却媒体を流す工程を含む、請求項9に記載の方法。
前記ドーパントガスは四フッ化二ホウ素を含み、および、前記冷却する工程は、前記ドーパントガス供給ラインの前記遠位端部分における前記四フッ化二ホウ素の温度を700℃未満に維持するように動作する、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0038] 本開示は、イオン注入システムおよび方法に関する。
【0024】
[0039] 本開示は、イオン源および全体的なイオン注入動作の性能が、イオン源のアークチャンバの直前にドーパントガスの冷却を組み込むことによって驚くほど増強されることができるという発見に基づいている。この発見の驚くべき特徴は、イオン化プロセスがイオン種の形成のために相当量のエネルギをドーパントガスに与えようとすること、および、それゆえドーパントガスが本質的にイオン化およびプラズマ形成動作のために予熱されるように、イオン化動作中に生成された熱をドーパントガス供給ラインに伝搬させることが有益な構成とされている従来の慣習であるという事実からもたらされる。
【0025】
[0040] しかしながら、この認識に反して、例えば四フッ化二ホウ素といった特定のドーパントガスの場合には、この熱伝搬は、ドーパントガスの有害な分解、およびその結果生じるガス供給ラインの閉塞が発生する。したがって、先行技術のアプローチとは対照的に、ドーパントガス供給ラインを流れるドーパントガスの冷却を行うためにドーパントガス供給ラインの冷却を使用することで、ドーパントガスの有害な分解、およびその結果生じるアークチャンバへのガス供給ラインの閉塞が発生することなく、かかる四フッ化二ホウ素のドーパントガスの使用において高い性能効率がもたらされることが分かった。
【0026】
[0041] このように、本開示は、
アークチャンバを有し、当該アークチャンバ内のガスをイオン化するイオン源と、
ドーパントガス源と、
ドーパントガス源からアークチャンバにドーパントガスを導入するためのドーパントガス供給ラインと、
ドーパントガス供給ラインに関連付けられた冷却構造であって、ドーパントガス供給ライン内のドーパントガスを冷却し、それによってアークチャンバの動作中に生成された熱によるドーパントガスの加熱および該熱から生じるドーパントガスの分解を抑制する冷却構造と、を備えるイオン注入システムを意図する。
【0027】
[0042] 冷却構造は、例えば、水またはグリコール/水の水溶液もしくはその他の適切な熱伝達冷却媒体などの適切な冷却液が流れうる冷却ジャケット形式の、ドーパントガス供給ラインおよびこれを流れるドーパントガスを冷却する冷却通路を有することができる。
【0028】
[0043] この目的のため、ドーパントガス供給ラインは、その遠位端においてドーパントガスをアークチャンバに放出するよう配置されてよく、冷却通路はドーパントガス供給ラインの遠位端部分に配置される。
【0029】
[0044] 本開示は、一実施形態では、イオン源のための水冷却アセンブリであって、ドーパントガス供給ラインに関連付けられた冷却通路に動作可能に結合された水冷却アセンブリが、冷却水のソースとして使用され、ドーパントガス供給ラインおよびこれを流れるドーパントガスを冷却するよう冷却通路に水を流す、総合的な構成を意図する。
【0030】
[0045] ドーパントガス源は、任意の適切なタイプのものであることができるが、多様な特定の構成において有利には、例えば、1つまたは2つ以上の調整装置を有しうる内部調整器アセンブリの設定点によって設定された圧力で、ドーパントガスの分配を提供する内部に設置された調整器を含むタイプの調圧ガス貯蔵分配容器を備える。このようなタイプの調圧容器は、VACという商標のもと米国コネティカット州ダンベリーのATMI社から市販されている。
【0031】
[0046] 例えば、上述した調圧ガス貯蔵分配容器であるドーパントガス源容器は、任意の適切なタイプのドーパントガスを収容しうる。一実施形態では、ドーパントガスは、四フッ化二ホウ素などのホウ素ドーパントガスを備えてよい。四フッ化二ホウ素(B
2F
4)がドーパントガスとして使用される場合、冷却構造は、ドーパント供給ガスラインにおける四フッ化二ホウ素の温度を700℃未満に維持するよう動作可能に構成されてよい。
【0032】
[0047]別の態様における開示は、それゆえ、ドーパントガスのイオン化を引き起こす条件化でドーパントガス源からイオン源のアークチャンバまでドーパントガスを通過させる工程と、アークチャンバの動作中に生成される熱によるドーパントガスの加熱および該熱から生じるドーパントガスの分解を抑制するために、アークチャンバへの進入前に、ドーパントガスを冷却する工程と、を備える、基板にイオンを注入する方法を意図する。
【0033】
[0048] 冷却は、ドーパントガス供給ラインおよびこれを流れるドーパントガスを冷却する冷却通路に冷却媒体を流す工程を有してよい。上述したとおり、イオン源は、水冷却アセンブリに配列されてよく、水冷却アセンブリからの水は、ドーパントガス供給ラインおよびこれを流れるドーパントガスを冷却するために冷却通路を流れることができる。ドーパントガスは、例えば、四フッ化二ホウ素のホウ素ドーパントガスを収容する調圧ガス貯蔵分配容器から提供されてよく、冷却は、アークチャンバに流れる四フッ化二ホウ素の温度を700℃より低く維持するように行われうる。
【0034】
[0049] さらに別の態様では、本開示は、注入のためのホウ素イオンを生成するために四フッ化二ホウ素を使用するイオン注入システムを操作する方法であって、該方法は、該イオン注入システムのイオン源チャンバへの四フッ化二ホウ素の進入に先だって、四フッ化二ホウ素と熱交換関係でイオン源冷却液供給部から冷却液を流す工程を備える方法に関する。このような方法はまた、流路の閉塞およびイオン注入システムの望ましくないダウンタイムを引き起こしうる分解が起き易い他のドーパント源ガスを使用するイオン注入システムの動作効率を増強するために使用されうる。
【0035】
[0050] このように本開示の冷却アプローチは、イオン源の既存の冷却能力(脱イオン水)を使用してドーパントガス供給ラインおよびアークチャンバの周辺領域の能動冷却を行う間に、イオン注入において使用されるときに四フッ化二ホウ素またはその他の分解し易いガス(decomposition-susceptible gas)の分解を防止するための方法を提供する。ドーパントガス供給ラインを冷却することにより、ドーパントガスがアークチャンバに進入する前にドーパントガスの加熱を低減することができる。
【0036】
[0051]
図1は、アークチャンバ12を有するイオン注入システム10であって、アークチャンバ12は、チャンバ内でドーパント源ガスをイオン化するためにアークチャンバにドーパント源ガスを供給するガス供給ライン14を有する、イオン注入システム10の概略図である。
【0037】
[0052]
図2は、
図1のイオン注入システム10のアークチャンバ12におけるプラズマ16の生成を概略的に示す断面図である。ドーパントガスは、矢印Aによって示される方向でガス供給ライン14へ流され、ドーパントガス供給ライン14は、供給ラインおよびアークチャンバに入るガスの熱状態の質を判定するためにモニタリング関係でドーパントガス供給ライン14に固定されたモニタリング熱電対TC1およびTC2を有する。
【0038】
[0053]
図3は、
図2のシステムに関連して調節されるガス供給ライン14の能動冷却を提供するガス供給ライン14を有する
図1のイオン注入システム10のアークチャンバ12におけるプラズマ16の生成を概略的に示す
図1のイオン注入システム10の断面図である。特にガス供給ライン14には、矢印Bで示される方向に冷却媒体が流れる冷却液通路20が関連付けられている。モニタリング熱電対TC1およびTC2は、供給ラインとアークチャンバに入るガスとの熱状態の質を判定するためにモニタリング関係でドーパントガス供給ラインに固定されている。
【0039】
[0054] ガス供給ラインおよびアークチャンバにおける分解または閉塞する固体副産物の堆積が避けられるように、冷却液通路は、ドーパントガス供給ラインにおける冷却ジャケットとして構成されうるか、または、ガス供給ラインと外接するかこれとかみ合う通路を有しうるか、もしくは、ドーパントガスに冷却を提供するのに効果的なその他の熱交換または冷却液の素子、アレイもしくはアセンブリを有してよい。
【0040】
[0055] それゆえ、本開示の冷却機構が、ドーパントガスの必要な冷却を行うのに適切な態様で実装されかつ動作されることができること、および、冷却機構がさらにイオン源のための熱管理制御システムと一体化されることができるため、冷却液の流量および他の動作パラメータを、B
2F
4といったドーパント源ガスを用いた効果的なイオン注入のために適切に設定することができ、そうでなければB
2F
4はイオン注入の用途には適さない、ことが理解されるだろう。本開示の冷却機構は、広範に多様なタイプのイオン注入システムを用いて使用されることができ、例えば、アルシン、ホスフィンなどを含む相応に多様なドーパント源ガスを使用する。
【0041】
[0056] 特定の一実施形態では、0.18インチ(0.4572cm)の内径を有し、B
2F
4を収容するVAC(登録商標)ソース容器から4〜6フィート(121.92cm〜182.88cm)の長さを有し、ドーパントガスが2〜3標準立方センチメートル毎分(sccm)の流量でアークチャンバへ流れるドーパントガス供給ラインにアークチャンバは結合された。
図3に示す構成が使用され、TC1がドーパントガス供給ラインにおいてアークチャンバからおよそ0.4インチ(1.016cm)であり、TC2が該ガス供給ラインにおいてアークチャンバからおよそ1.4インチ(3.556cm)であった。冷却が実施されていない場合と、水冷却が使用された場合について結果データが生成された。データは以下の表1に示され、700℃よりも大いに低い温度で分解することなくB
2F
4を送達することについての
図3の構成の有効性を証明する。
【表1】
【0042】
[0057]
図4〜8は、イオン源装置に供給されるドーパント源ガスの冷却を行うためのイオン源装置に固定されたヒートシンク装置を含む、本開示の多様な追加的な実装を示す。
【0043】
[0058]
図4は、イオン源の冷却水出口から、ドーパントガス源の冷却のために設けられたヒートシンク(この図では図示せず)の入口にイオン源冷却水を流すためのジャンパ線42が設けられたイオン源装置40の斜視図である。それゆえ本構成は、イオン源装置のアークチャンバおよびその他の構成要素の冷却のために使用される、イオン源装置からの既存の冷却水供給を使用し、それによりドーパント源ガスの冷却専用の追加的な冷却能力をイオン注入システムに提供する。
【0044】
[0059]
図5は、これ以降より詳細に示されるドーパント源ガス供給通路に機械的に固定され、ドーパント源ガスを冷却するために冷却液流線60および62によってヒートシンク本体52を流れる冷却水を有するヒートシンク50の斜視図である。このように、これ以降記載するように、ヒートシンク本体およびヒートシンク本体を通る他の通路を流れるドーパント源ガスの冷却を行うために、ヒートシンク本体は、冷却液がヒートシンク本体を通って流れる1つ以上の内部通路を含む。これ以降
図8と関連して記載するとおり、ヒートシンク本体のドーパント源ガス供給通路構造への機械的固定を可能にする協働固定具として、ヒートシンク本体には、穴付き押さえねじ56およびテキストナット58が備えられている。冷却液流線60および62は、
図4に関する上述の記載から理解されるとおり、イオン源冷却水流れ回路と結合することができる。
【0045】
[0060]
図6は、ガス供給ライン72においてイオン源装置に流れるドーパント源ガスを冷却するためのドーパント源ガス供給通路に機械的に固定されたヒートシンク装置74を有するイオン源装置70の斜視図である。
【0046】
[0061]
図7は、ライン72においてイオン源装置に流れるドーパント源ガスを冷却するためにヒートシンク装置74が取り付けられた
図6のイオン源装置70の分解組斜視図であり、イオン源装置およびヒートシンク装置を有するイオン源アセンブリの詳細を示す。
【0047】
[0062]
図8は、イオン源装置70とヒートシンク装置50とを備えるイオン源アセンブリの断面斜視図である。この断面図は、ガス供給プラグにおけるガス流路84と、イオン源に関連付けられたガスブッシングにおけるガス流路86とに連結するドーパント源ガス供給ライン72を示す。ガス流路84および86は、本開示の一実施形態ではおよそ0.25〜0.375インチ(0.635cm〜0.9525cm)であってよく、このような通路の内径は、例示する装置において使用される従来のものよりも大きい。このようなサイズの大きなガス流路は、ドーパント源ガスが分解しやすく、その結果ガス流路の閉塞が生じうる場合に便利に使用される。このような分解し易いドーパント源ガスは、四フッ化二ホウ素を含む。結果として、
図8に示すサイズの大きなガス流路構成は、イオン源装置の保守イベント間の期間を延長することができる。
【0048】
[0063]
図8に示すイオン源装置は、開口82を有するように変形されたベースライナー80を有しており、この変形は、分解し易いドーパント源ガスが使用される場合に、改善されたイオン源動作寿命を提供することがわかっている。
【0049】
[0064] サイズの大きなドーパント源ガス供給通路を有する、ヒートシンク装置が取り付けられたイオン源装置と、イオン源のベースライナーにガスフロー開口を提供することとにより、ヒートシンク装置、ベースライナー開口およびサイズの大きなドーパント源ガス供給通路を支持する対応のイオン源装置と比較して、四フッ化二ホウ素といったドーパント源ガスの延長した動作寿命を有する高い効率のイオン源構成が提供される。
【0050】
[0065] ヒートシンク装置はその他の多様な形式をとることができ、ドーパント源ガス流線に機械的に固定される代わりに、ヒートシンク装置は、ドーパント源ガス流線に溶接、半田付けまたはろう付けされることができるか、または、イオン化条件にさらされる前に早期に分解されないようにドーパント源ガスの温度を低減するために、ヒートシンク装置は、ガス流線を辿る冷却水の形式をとるか、もしくはその他の交換または熱伝達冷却構成および方法が使用されうることが理解できるだろう。
【0051】
[0066]
図9は、
図5〜8に多様に示されるイオン源装置とヒートシンク装置とを備えるイオン源アセンブリの動作データを時間関数として、温度を摂氏で、除去された熱をワットで示すグラフである。
図9に示すデータは、B
2F
4をドーパント源ガスとして、0.25インチ(0.635cm)の供給通路に1.6標準立方センチメートル毎分の流量でイオン源装置に流して、冷却水を毎分3Lの流量でヒートシンク装置のヒートシンク本体に流して得られた。データは、多くの顕熱がドーパント源ガス流から取り除かれ、それにより改良されたイオン源システム動作にとって効果的に冷却されることを示す。
【0052】
[0067] ここで、ドーパント源材料、装置および方法に関して詳細にホウ素のイオン注入について考慮すると、BF
3は、ホウ素注入のための最も一般的に使用される前駆体である。ホスホラス、アルシンおよびシリコンといったその他の元素の注入のために使用される前駆体とは違い、BF
3は、強いB−F結合のためプラズマ条件化でB+イオンを生成する効率が高くない。
【0053】
[0068]
図10は、BF
3プラズマの簡略した反応行列を示し、BF
3がドーパント源材料として使用された場合のイオン注入機のプラズマアークチャンバにおける種および反応を示す。前駆体BF
3のイオン化と共に反応が開始するので、BF
3の安定性が、異なるイオンと中性分子と濃度に影響を与えることが理解されるだろう。にもかかわらず、電子の衝撃を伴う高温かつイオン化条件下では、異なる種の分布は、化学反応および解離および/または電子イオン化および再結合の条件下において、関与する全ての種の安定性およびそれらの平衡状態によって最終的に決定される。それゆえ、異なる前駆体でも類似のイオン分布が存在しうる。
【0054】
[0069] 上述の反応行列において、反応平衡をB+の方へシフトするために1つ以上の添加物を使用することができる。例えば、BF
3がドーパント源として使用される場合、少量の水素および/またはメタンをBF
3と共に注入機に流すことができる。このような三フッ化ホウ素ドーパント源に導入された水素、メタンまたは水素/メタン混合物は、プラズマにおいて水素を生成し、この水素は極めて安定なHFを形成するフッ素原子を捕捉する。したがって、本システムは、主にHF、Bおよび対応するイオンを含むプラズマにシフトする。このような反応システムが
図11に示され、BF
3プラズマの行列における反応は水素添加物と共に示されている。
【0055】
[0070] 本開示は、ホウ素のイオン注入のための多様な装置構造およびプロセス方法に関する。多様な実施形態および態様が特定の実装において多様に開示されているが、多様な異なる実施形態または態様の多数の特徴のうち1つ以上が別の特徴と組み合わされて本開示の更なる適用において変形または複合の装置およびプロセス方法をなしうることが理解されるだろう。
【0056】
[0071] 開示の多様な態様が、ホウ素のイオン注入のためのホウ素前駆体材料としてのB
2F
4の特定の使用にかかる一方で、B
2H
6、B
5H
9、B
3F
5、BHF
2およびBH
2Fといったホウ素ソースを含む、その他のホウ素ソース材料が本開示の広範な実施において使用されてよい。
【0057】
[0072] 一態様では、本開示は、アークチャンバ温度変形(temperature modification)に関する。特定の条件下では、B
2F
4は、アークチャンバに通じるガスラインにおいて、かつ、ガスが分散されるアークチャンバ内において熱分解しうる。この熱分解は悪影響を引き起こす。例えば、ホウ素固体の堆積が引き起こされ、これによりイオン源寿命が短くなりかつ/またはB+、BF
2+などのビーム電流性能が低くなる。分解およびその結果生じる固体堆積はガスの流れを抑制または完全に閉塞しうる。堆積の位置は、アークチャンバ前のソースチューブ内においてガスがアークチャンバに供給されるソースチューブの出口および/またはソースチューブアウトレットと、ライナーを有するアークチャンバにおけるアークチャンバライナーとの間の間隙でありうる。
【0058】
[0073] 本開示は、ソースチューブがアークチャンバに連結する領域の温度を低減することによって、このような不具合を解決することを意図する。このような領域は、ソースチューブの最後の数インチ、例えば、5〜10cm、ソースチューブがアークチャンバと嵌合する実際の位置および/またはソースチューブが嵌合する位置の近傍のアークチャンバ内を含む。このような状態で温度を低減することは、B
2F
4の熱分解率を低減し、これによりホウ素堆積を低減することができる。
【0059】
[0074] この目的で、温度の低減を多様な態様で行うことができる。
【0060】
[0075] 温度低減の一方法は、アークチャンバが低いアーク電圧および電流で稼働するようなアークチャンバの電力管理を含む。
【0061】
[0076] 温度低減は、アークチャンバの効率を増大させることによって達成することができる。これは、カソードなどの構成要素をより効率的な電子放出を達成するように変形することによって達成されることができる。この目的のためにはより小さなカソードを使用することが望ましいことがある。より効率的なアークチャンバはより少ないエネルギを要し、それゆえ、その他の要因が一定であれば、アークチャンバ体の温度が全体的により低くなる。これにより、ソースチューブの温度、ソースチューブとアークチャンバとの境界面の温度、および境界面近傍のアークチャンバ温度を低減する。
【0062】
[0077] 温度を低減する更なるアプローチとして、アークチャンバからのより効果的な熱伝達が行われることができる。ほとんどの熱が、放射熱伝達によって放散するので、熱放散率を増加させるために多様なアプローチが実施されることができる。例えば大きなアークチャンバを作ること、より壁の厚いアークチャンバを(内部寸法を変えずに)作ること、またはフィン、ロッドなどといった熱放散表面を加えることによって例えば、アークチャンバの表面を増大することができる。
【0063】
[0078] アークチャンバからの熱伝達効率を増強することはまた、所与のアークチャンバ電力レベルのためにアークチャンバの外壁の温度を増加することによって達成することができる。このような外壁温度の増加は、高い伝導性の構造材を使用してアークチャンバの伝導性を最大化し、かつ構造における熱接触抵抗を最小化することにより行われることができる。例えば、単一片のタングステンまたはモリブデン製のアークチャンバを使用することができる。
【0064】
[0079] このように、本開示は、アークチャンバの供給チューブまたはラインもしくはその他の構成要素における堆積および閉塞を防ぐかまたは最小化する熱/温度管理を含みうるアークチャンバの熱変形(thermal modification)を意図する。代替的には、分解を阻止するためにコーティング材料が塗布されうるか、または同じ目的を達成するために供給チューブがシールドされうる。ノズルに関連付けられた伝導性ドレーンを最小化するために、照射ロードが最小化されてもよく、かつ、ノズルにおける照射性ドレーンが行われることができる。
【0065】
[0080] さらに別のアークチャンバ温度変形として、例えば、高温の領域を流れるより速い流れを使用することによって、アークチャンバにおける滞留時間を高温の領域において低減することができる。
【0066】
[0081] アークチャンバからのより効果的な熱伝達はまた、従来の構造材よりも高い放射率の材料でアークチャンバの外面を塗装する(coat)か、包むか(warp)または覆う(cover)ことによって達成することができる。
【0067】
[0082] 第1の材料とは異なる放射率を有する第2のまたは2つ以上の追加的な構造材を使用して、1つ以上の材料からアークチャンバを構成することによって、アークチャンバはまた熱特性において増強されることができる。第2のまたは追加的な材料の量は、ソースチューブまたはアークチャンバのインレットにおけるドーパントガスの熱分解を十分に低減または除去するのに十分な量だけアークチャンバの温度が低減されるように選択される。
【0068】
[0083] 例えば、アークチャンバの壁のうち2つは、典型的なアークチャンバ温度において、0.7〜0.8の放射率を有するグラファイトから製作され、アークチャンバのその他の4つの壁は、およそ0.1〜0.2の放射率を有するタングステンから製作されうる。一実施形態では、ドーパントガス供給チューブが連結される壁は、グラファイトから製造され、これは、該材料の高い放射率が、該壁の構造材としてより低い放射率の材料が使用される場合よりもアークチャンバの温度を低くするからである。別の実施形態では、アークチャンバの2つ以上の壁がグラファイトまたはその他の高放射率材料から形成される。特定の実施形態では、全ての壁(上、下、横、前および後)がグラファイトまたはその他の高放射率材料から製作される。
【0069】
[0084] アークチャンバは、反応、熱サイクルなどといったその他の方法で放射率を増大するために変形されてよい。アークチャンバから熱を取り除くための熱伝達効率はまた、例えば、ソースハウジングまたはソースハウジングの構成要素に放射される表面の温度を低減することによって達成されうる。このような構成要素の温度は、例えば、空気、水といった冷却流体を使用する能動または受動冷却によって低減することができる。
【0070】
[0085] 放射冷却を最適化することに加えて、またはこれに代えて、アークチャンバは強制対流によって冷却されることができる。この目的上、水、空気などといった冷却剤が、アークチャンバの周りまたはこれを通過して(例えば、溝を介して)流されることができる。このような構成の冷却液は、それゆえアークチャンバの温度を最小化する役割を果たす。
【0071】
[0086] 更なるアプローチとしては、接触領域を増加することおよび/または表面仕上げを改善することおよび/または支持の伝導性を増加することによりアークチャンバとソースハウジングとの間の接触抵抗を低減することによってアークチャンバからの熱伝達は増加されることができる。
【0072】
[0087] ソースチューブ、ソースチューブ境界面およびソースチューブ近傍のアークチャンバ内の近接領域のより良い温度制御は大いに有益となる。例えば、非熱伝導性アダプタを、アークチャンバの境界面へのソースチューブにおいて使用することができる。このようなアダプタは、ソースチューブの温度を最小化し、かつかかる領域での温度勾配を増加させるのに役立つ。
【0073】
[0088] アークチャンバ境界面へのソースチューブにおいて同軸のアダプタを使用することは、より良い温度制御を達成するためにも採用されることができる。このような同軸のアダプタは、アークチャンバに入るまでに供給ガスの温度をさらに低減し、これはチューブの内側がアークチャンバと熱的に接触せず、かつチューブの外側がチューブ内部を放射から遮蔽するのに役立つためである。
【0074】
[0089] アークチャンバ境界面へのガス源チューブ近傍のアークチャンバの部分は、異なる、熱伝導性の少ないおよび/または高い放射率の材料であるように変形されうる。このような方策は、境界面における温度を低減するのを助ける。
【0075】
[0090] アークチャンバ境界面へのガス源チューブ近傍のアークチャンバの部分は、放射シールドを含むよう変形されうる。シールドは、アークチャンバ境界面においてソースチューブへの放射熱伝達を低減する。
【0076】
[0091] さらなる変形として、ガスチューブは、チューブの長さに沿った熱伝達を最小化されるように低い熱伝導性を有する材料から構成されてよい。代替的には、ガスチューブは、(アークチャンバに近い)チューブの高温端から、(アークチャンバから離れた)チューブの低温端への熱伝導が最大化されるように高い熱伝導性を有する材料から構成されうる。
【0077】
[0092] アークチャンバからのより効率的な熱伝達を達成するための熱変形の別のアプローチは、例えば、3/8インチ(0.9525cm)以上の直径を有する、好適な寸法の小さい円筒形突起を含有するようにアークチャンバを変形することを伴う。一実施形態でのソースチューブアダプタは、このような突起に連結される。この構成により、ソースチューブ/アークチャンバの境界面の温度が、突起の長さのため低減されることが可能になり、かつ突起自体において分子流機構が発達することが可能になる。これにより突起は冷/温境界面となり、かかる領域での堆積は、分子流の結果として発生する壁衝突の数が低減されることによって低減する。
【0078】
[0093] さらなる熱変形は、ソースチューブ内における、例えば、B
2F
4であるホウ素ソースガスの滞留時間t(=V/Q、ここでV=ソースチューブの体積であり、Q=ホウ素ソースガスの体積流量である)を減少することを伴う。こういった滞留時間の減少は、温度を低減する方法と併用してまたは単独の変形で達成されることができる。滞留時間を減少することで、ソースチューブ内またはソースチューブ/アークチャンバの境界面領域内で発生しうる熱分解の範囲を縮小する。
【0079】
[0094] 滞留時間は、例えば、全体の流量を増加するために希釈ガスを追加することなどの多様な方法で減少することができる。流量の増加が、結果として生じる圧力増加よりも大きな割合である限り、滞留時間は減少する。希釈ガスは任意の好適な種類のガスであり、例えば、希ガス、不活性ガス、BF
3、H
2、CH
4、NH
3などを含みうる。
【0080】
[0095] より小さな直径のシールドされた(同軸の)チューブを使用して、絶縁アダプタに移行する前のアークチャンバに近づくより低温の領域における流速が増加すること、またはチューブの直径を増大させることによって、滞留時間を減少することができる。
【0081】
[0096] 質量の連続の式(the Continuity of Mass equation)pl*vl*A1=p2*V2*A2に従う、流速増加を可能にする形状寸法、真空コンダクタンスまたはポンプ機能の変形は、アークチャンバへのガスフローの滞留時間を低減する。ただし、A2(位置2の断面面積)およびp2(位置2における密度)は、v2>v1となるように変化する。
【0082】
[0097] 更なる変形では、0.25インチ(0.635cm)よりも大きな直径といった、好適な寸法の大きな直径のチューブ/アダプタを使用することで、望ましくない分解種の堆積に対処することができる。しばらくの間は堆積が起こりうるが、温度が十分に低減されると、ホウ素残留物が自己絶縁材料として働き、堆積が次第に止まるため、通路の完全な閉鎖を形成するには長い時間がかかるか、またはまったく閉鎖されないことがある。このような堆積処理は、アークチャンバに流れるかまたはライナーを通るガスのために複数のインレットを設けて、1つのポートが閉塞した場合でもガスが流れ続けるようにすることを伴う。
【0083】
[0098] 別の実装では、本開示は、アークチャンバ製作に通常用いられる構造材とは異なる材料を使用することと、B
2F
4またはその他の特定のホウ素ソース材料のためにアーク電圧を最適化することと、電子挙動を最適化することと、B
2F
4またはその他の特定のホウ素ソース材料のためのビーム透過を最適化することと、B
2F
4またはその他の特定のホウ素ソース材料の分別(fractionation)を最適化すること、のうち1つ以上を含みうる、アークチャンバの変形を意図する。このような態様で、アークチャンバは、顕著な作用効果を達成するよう構築かつ構成されうる。
【0084】
[0099] 本開示の別の態様は、磁石の使用によるか、またはホウ素ソース動作パラメータの調整または最適化による、プラズマ特性の変形に関する。この点、B
2F
4またはその他の特定のホウ素ソース材料についてのアーク電圧の最適化が、増強技術として使用されることができる。プラズマにおける電子エネルギ分布は、アーク電圧の低減により低減することができる。B
2F
4に関連付けられた結合エネルギが低いため、BF
3に比べてより低いアーク電圧がB
2F
4と使用されることができる。このような低いアーク電圧レベルに付随する低いカソードスパッタリングがイオン源の寿命を改善するというその他の利点も低いアーク電圧は有する。
【0085】
[0100] アーク電力(アーク電圧×アーク電流)は、例えば、B
2F
4であるホウ素ソースガスのために最適化することができる。特定のホウ素ソース材料の選択に関して、B
2F
4は、BF
3に比べて低電力動作が達成されるのを可能にし、これは、プラズマ不安定性が少なく、アーク発生する高電圧が少ないため、ソース寿命、およびソース安定性に関する利点を有する。
【0086】
[0101] イオン源動作パラメータに関して、注入機のための高い性能での動作についてプラズマ特性を変形するためにソース調整および最適化技術が使用されることができる。
【0087】
[0102] 別の実施形態では、イオン注入システムにおける作用効果を達成するために、希釈剤、反応剤および/または洗浄剤を共に流出させること(co-bleed)または共に流すこと(co-flow)が採用されることができる。例えば、希釈剤、反応剤および/または洗浄剤は、ホウ素と反応するためまたはホウ素堆積を軽減するために使用されうる。これは、ホウ素の堆積、または活性プロセスの間にイオン源にホウ素ソース材料が流れる前にアークチャンバに堆積するドーパント材料の除去/洗浄を伴いうるか、アークチャンバ、ガスラインまたはイオン源のその他の部分における金属またはその他の材料のエッチングおよび堆積を伴いうる。
【0088】
[0103] 反応剤または洗浄剤が、例えば、B
2F
4であるソース材料の使用から発生するガスラインにおけるB
2F
4分解および堆積の蓄積に対処するために使用されうる。
【0089】
[0104] B
2H
6、B
5H
9、BF
3などのといったホウ素含有の希釈剤、反応剤および/または洗浄剤が使用されうる。XeF
2、Ar,N
2、XeとH
2の混合物、CH
4、NH
3などといった不活性またはその他の好適な希釈材料を有する希釈供給ガスが使用されうる。代替的には、アークチャンバへの送達の前に予め混合された混合物が単一のパッケージから送達されるか、または材料が個別の送達ラインを介してアークチャンバへ個別に送達されるシステム/ハードウェア実装が使用されうる。
【0090】
[0105] 本開示の別の態様は、洗浄およびB
2F
4またはその分子イオンもしくは原子イオンの注入を同時にまたは連続して行うためにB
2F
4および洗浄剤の連続してまたは同時に流すことを伴いうる洗浄プロセスに関する。
【0091】
[0106] 例えば、B
2F
4またはB
2H
6、B
5H
9、B
3F
5、BHF
2またはBH
2Fといった他の分子と、1つ以上の洗浄剤との並流がイオン注入の中に使用されることができる。
【0092】
[0107] 代替的には、B
2F
4またはかかる他の分子と、固体ホウ素とガス相のホウ素との間の平衡状態を気相のホウ素に向かってシフトすることができる作用物質とが装置を共に流れる(co-flowed)ことができる。B
2F
4と反応しないフッ素含有ガスがこのような作用物質の役割を果たすことができる。このように本開示は、例えば、ガス相のB+といった所望のイオン種に向かって平衡をシフトさせることの使用を意図する。
【0093】
[0108] B
2F
4または上述の分子もしくはこれらの組合せを使用するイオン注入ステップの間のイオン源の順次の洗浄が、洗浄剤ガスが継続的にまたはパルス状に装置に流れるよう使用されることができる。
【0094】
[0109] 別の態様の開示は、特定の供給材料、分子および分子の組合せの使用およびこれを注入するための方法に関し、該方法は、B
2F
4、B
2H
6、B
5H
9、B
3F
5、BHF
2およびBH
2Fといったソース材料の1つ以上を使用する。かかる材料は、B+またはF+といった原子イオンの注入に使用されうる。かかる材料は、BF
+、BF
2+、B
2F
4+、B
2F
3+、B
2F
2+などといった供給分子の断片化(fragmentation)または断片再結合によって形成される分子イオンの注入に使用されうる。
【0095】
[0110] 上述のホウ素ソース材料は、従来のイオン注入、プラズマ浸漬またはパルスプラズマドーピングイオン注入などといった例えばイオンまたはプラズマイオン注入プロセスにおいて、従来のビームラインまたはプラズマ(例えば、PLADまたはPIII)イオン注入ツールおける原子または分子イオン注入に使用することができる。
【0096】
[0111] 上述のホウ素ソース材料は、ガスクラスタイオンビーム(GCIB)技術を使用するホウ素注入に使用することができる。GCIBの生成には、ソース材料の中性クラスタへの凝塊形成、クラスタのイオン化およびターゲットへ向かう途中での逐次の加速および質量選択を伴う。凝塊形成は、N
2、Arなどといった非ドーパントを使用することで促進されうる。
【0097】
[0112] 示されたとおり、ホウ素ソース材料としてのB
2F
4の利点は、BF
3がソース材料として使用されたときより低い電力で注入機が動作することを可能にすることである。
【0098】
[0113] 更なる態様では、本開示は、より高いB+留分(fraction)の抽出光学系の最適化またはB
2F
4の抽出またはビーム光学系の最適化を意図する。BF
3プラズマから最大限B+を抽出するとき、高いビーム電流および高い断片質量が含まれるため抽出領域における空間電荷は非常に高い。高ビーム電流に関して、抽出された電流は、F+、BF+、BF
2+などを含む全てのイオンの合計であり、B+電流の3倍よりも大きくなることができる。空間電荷は、ビーム電流に比例し、B+留分が高いと、抽出領域における総電流は低減されることができる。含まれる高い断片質量に関して、平均質量は11よりも大きい。空間電荷は、(質量)^1/2に比例する。B+留分が高いと、平均質量は低減する。
【0099】
[0114] したがって、抽出間隙における空間電荷は、B
2F
4を用いて低減することができる。低減した空間電荷により、イオン源のすぐ下流の抽出光学系の異なる最適化が達成できる。より大きな抽出間隙(より低い電界)が許容できる。これは、高電圧アーク放電を低減するのに有利である。抽出アパーチャの適切な設計はまた、ビームの質および安定性を増強するために使用することができる。
【0100】
[0115] 本開示の多様な適用において、有害事象の発生を防止または最小限にするために、ソース寿命最適化が使用されることができる。例えば、潜在的なアークチャンバまたはイオン源障害モードが、このようなソース寿命最適化によって克服または回避されることができる。材料の適切な割合および/または動作状態(例えば、プラズマ特性)が、ハロゲンをリサイクルする努力を行うために選択されることができ、かつ動作状態および材料の割合は、並行流出(co-bleed)構成も使用することができる。
【0101】
[0116] 本開示の多様な態様および実施形態が、多様なイオン注入システムに実装され実施されることができる。
【0102】
[0117]
図12は、図示されたイオン注入チャンバ301において基板328のイオン注入ドーピングのために供給されるB
2F
4ガスを保持する貯蔵分配容器302を含むイオン注入プロセスシステム300の図式的描写図である。
【0103】
[0118] 貯蔵分配容器302は、B
2F
4ガスを保持する内部容積を囲む容器壁306を備える。
【0104】
[0119] 容器は、ガスのみを保持するよう構成された内部容積を有する従来型のガスシリンダーであることができ、代替的には、容器は、ドーパント源ガスが分配条件下で容器から放出されるために脱着することができる、ドーパント源ガスについての収着親和力を有する収着剤材料を収容してもよい。
【0105】
[0120] 貯蔵分配容器302は、放出ライン312と、ガスフロー連通状態で結合するバルブヘッド308と、を有している。圧力センサ310が流量制御装置314と共にライン312に配置される。その他のモニタおよびセンサ構成要素が該ラインに結合され、アクチュエータ、フィードバックおよびコンピュータ制御システム、サイクルタイマといった制御手段と連動しうる。
【0106】
[0121] イオン注入チャンバ301は、ライン312から分配されたB
2F
4ガスを受け、かつイオンビーム305を生成するイオンビーム生成機またはイオン化装置316を含む。イオンビーム305は、必要とされるイオンを選択し、選択されないイオンを拒絶する質量分析器ユニット322を通過する。
【0107】
[0122] 選択されたイオンは、加速電極アレイ324、それから偏光電極326を通過する。結果として得られる集束イオンビームは、スピンドル332に搭載される回転可能なホルダ330に配置された基板素子328に衝突する。B+イオンのイオンビームが、所望のp−ドープ構造を形成するために基板をp−ドープするために使用される。
【0108】
[0123] イオン注入チャンバ301のそれぞれの部分が、それぞれポンプ320、342および346によってそれぞれライン318、340および344を通って排気される。
【0109】
[0124]
図13は、
図12に示すタイプのイオン注入システムにおいて有利に使用されうるようなイオン注入システムのイオン源の断面図であり、より詳しくはM.A.Grafらの2000年10月24日発行の米国特許第6,135,128号明細書に記載される。
【0110】
[0125] イオン源112は、プラズマチャンバ122を画定するハウジングとイオン抽出アセンブリとを備える。プラズマチャンバ122内でイオンを生成するためにイオン化可能なドーパントガスにエネルギが付与される。通常は陽イオンが生成されるが、本開示は陰イオンがソースによって生成されるシステムに適用可能である。陽イオンは、プラズマチャンバ122におけるスリットを介して、複数の電極142を備えるイオン抽出アセンブリ124によって抽出される。それゆえ、イオン抽出アセンブリは、プラズマチャンバから陽イオンのビームを、抽出アパーチャプレート146を介して抽出し、かつ、抽出したイオンを質量分析磁石(
図13に図示せず)に向けて加速するよう機能する。
【0111】
[0126] イオン化可能なドーパントガスは、イオン化可能なドーパントガスのソース166から流され、流量制御装置168を中に含む導管170を介してプラズマチャンバ122に注入される。ソース166は、例えばSDSの商標のもとATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から市販されているタイプの収着剤ベースのガスの貯蓄供給容器と、例えばVACの商標のもとATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から市販されているタイプの内部ガス圧調節装置を含む調圧容器と、を有しており、または固体ドーパント源材料が使用される場合は、ソース166は、たとえばProE−Vapの商標のもとATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から市販されているタイプの固体ソース容器を有してよい。プラズマチャンバ122は、チャンバ内部におけるイオン化ゾーン420を境界する導電性のチャンバ壁412、414、416を有する。側壁414は、プラズマチャンバ122の中心軸415に対して円対称である。分解マグネットに面する伝導性壁416は、プラズマチャンバ支持体422に連結される。壁416は、イオンがプラズマチャンバ122を出て、その後、離間して配置されて電気的に隔離された複数の抽出電極124の下流の位置でイオンビームを形成するために結合することを可能にする複数の開口を有するアパーチャプレート146を支持する。アパーチャプレート146は、離間して配置された抽出電極142における同様に構成された複数のアパーチャと一致する特定のパタンで配置された多数の開口を有している。このようなアパーチャは
図13にのみ示されている。
【0112】
[0127] 金属アンテナ430は、プラズマチャンバ122にエネルギを放出するためにチャンバ内部にさらされる金属表面432を有する。プラズマチャンバ122の外部にある電源434が、金属アンテナ430を、例えば、およそ13.56メガヘルツ(MHz)の無線周波数(RF)信号といった適切な特性のRF信号で通電して、プラズマチャンバ122内でイオン化電界を引き起こすよう金属アンテナにおいて交流電流を発生させる。アンテナの電力は、例えば、約500〜3000ワット(W)の電力といった、特定のイオン化動作に適した適切な大きさでありうる。ソースチャンバにおける圧力は、例えば、およそ1〜10ミリトルであり、そのため、ソース112は、低圧力、高密度の誘導ソースとして機能することができる。プラズマチャンバ122は、アンテナ430とアパーチャプレート146との間のチャンバ内部の領域に延在する磁気フィルタアセンブリ440を有してもよい。
【0113】
[0128] アンテナ430は、着脱可能な支持プレート450によってプラズマチャンバ122内に配置されることが可能である。支持プレート450は、アンテナが通って延びる円形カットアウト452を有する位置で側壁414によって支持される。アンテナ430のための支持プレート450は、チャンバ壁414におけるカットアウト452に嵌合するようなサイズである一方で、アンテナ430のさらされたU字型金属部432をイオン化ゾーン420内に配置する。
【0114】
[0129] 支持プレート450は、2つの真空圧力フィッティング456を収容する2つの貫通した通路を画定する。アンテナ430の細長脚部457がフィッティングを通って押されると、エンドキャップ458がフィッティングにねじ込まれてフィッティング456と脚部457との間の接触領域を密閉する。アンテナ430は、放射放出領域において好ましくはU字型であり、例えば、アルミニウムから構成されうる。チューブは、圧力フィッティング456を通過するような寸法の外径を有する。使用中アンテナは周囲の熱を吸収する。この熱を放散するために冷却液がチューブの中心を通る。
【0115】
[0130] プレート450は、プラズマチャンバの内部にさらされたほぼ平らな表面460を有し、チャンバ内部の外方を向く平行な外面462を有している。プレート450のフランジ部464は、壁414のカットアウトを囲み、コネクタ472によって壁414に取付けられた環状磁石470を覆う。支持プレート450に取り付けられた強磁性のインサート474が、磁石470に嵌合して、それによりプレート450がカットアウト452内に配置され、強磁性のインサート474および磁石470が互いに引き合いプレート450を、アンテナ430がチャンバ内部に延在した状態で、所定の位置に固定する。
【0116】
[0131] イオン源の動作中、熱が生成され、この熱は壁412、414、416、418によって吸収される。吸収された熱は、壁を通って通路に水を巡回させてためのフィッティング476を通して導入され、第2の出口フィッティング(図示せず)によってチャンバから離れる冷却液によって、チャンバ122から取り除かれることができる。この構成により、壁の温度は、100℃より低い温度で維持され、イオン源122が冷温壁イオン源として機能することができる。
【0117】
[0132] 支持プレート450近傍のアンテナ430の領域は、とりわけ、イオン注入動作の間にスパッタされた材料によるコーティングを受け易い。このようなスパッタリングの影響を最小化するために、2つのシールド480が、支持プレート450にアルミニウムのアンテナが挿入される前にアルミニウムアンテナを覆うことができる。これらのシールドは、好ましくはアルミニウムから構成され、シールドとアンテナ430のさらされたアルミニウムの外面との間に摩擦嵌合によって定位置に維持される。
【0118】
[0133] イオン源112の動作中、イオン化ゾーン420を境界する内壁412、414および416にドーパント元素の堆積が形成されうる。本開示は、通常動作条件下でイオン源112が動作される間にソースガスと同時に共ガス(co-gas)または洗浄ガスを流すことを意図する。洗浄ガス源482および対応する流量制御装置484が設けられ、流量制御装置484の洗浄ガス出力は、プラズマチャンバ122に送達される前に導管170における流量制御装置168のソースガス出力に結合されている。代替的には、ソースガスおよび洗浄ガスは、プラズマチャンバに別々に送達されてもよい。
【0119】
[0134] ソース166が、ドーパント源ガスを、洗浄材料および/または希釈剤、平衡方向指定材料、反応剤、冷却液といったその他の材料と組み合わせて含みうることが理解できるだろう。代替的には、ソース482は、洗浄材料を、希釈剤、平衡方向指定材料、反応剤、冷却液などのその他の材料の任意の1つ以上と組み合わせて包含してよい。このような補助材料は、ソース容器の任意の好適な構成および/またはその他の供給装置構成要素を使用して、イオン源および/または関連流れ回路に供給されうる。
【0120】
[0135] このように、洗浄材料、例えば、洗浄ガスは、イオン源チャンバへのドーパント源材料と洗浄材料とを共に流す(co-flow)ため、ドーパント源材料を供給するソース容器と同一または異なるソース容器から供給されてよい。
【0121】
[0136] ドーパントガスと洗浄ガスとのイオン源を通る並行流によって、洗浄ガスの工程内使用を介して個別の洗浄工程が回避される。「工程内」とは、イオン注入機が通常の生産動作下にある間に洗浄工程が発生することを意味する。
【0122】
[0137] 洗浄蒸気の並行流を有するこのような工程内洗浄は、とりわけイオン源の特に高温の領域において、注入ドーパント蒸気またはその他のイオン源供給材料の熱分解による堆積を効果的に取り除くために使用されることができる。一例としては、B+イオンビームを生成するためのB
2F
4の使用中、ドーパント材料をイオン源に供給するガスチューブにおいて堆積が発生しうる。このような堆積は、イオン源アークチャンバに取付けられる部分であるチューブの高温端に集中し、B
2F
4の熱分解から生じて固形ホウ素または一般式BxFyのより高いフッ化ホウ素を形成する。ここでx<y/2である。これらの堆積は、積層し最後にはイオン源の故障を引き起こすため、深刻な動作事象の発生を引き起こす。
【0123】
[0138] 本開示は、その多様な実施形態において、イオン源および関連流路における堆積材料の量を抑制し最小化する追加的な方法であって、洗浄ガスの使用と組み合わせてまたはこれの代替として使用することができる方法を提供する。
【0124】
[0139] このような一態様では、チューブの機械的設計は、アークチャンバからガス供給チューブへの温度熱伝達(伝導および放射)を最小化するよう変形され、それにより、チューブの温度を最小化し、その結果熱分解を最小化する。
【0125】
[0140] 別の態様では、洗浄蒸気がB
2F
4ガスと共にイオン源に並行に流される。洗浄蒸気は、分解によって形成された固体堆積と反応し、固体堆積を排出することができる蒸気に変換し、それにより、イオン源の早期故障を回避する。洗浄蒸気は、ドーパント蒸気の分解温度とほぼ同じ温度で堆積材料と反応する任意の材料であることができる。好ましい洗浄蒸気は、XeF
2およびNF
3といった反応性フッ化物を含むがこれらに限定されない。洗浄およびドーパント蒸気の相対的な流量は、それぞれの蒸気について好適な並行流条件を確立するよう本明細書の開示に基づき当分野の技術範囲内の実証的またはその他の手段で有利に決定される。
【0126】
[0141] この目的上、好適な洗浄蒸気は、ドーパント蒸気と、イオン源のインサイチュの洗浄に効果的な洗浄蒸気とを組み合わせた流れを提供するために、特定の熱分解ドーパント蒸気のために容易に選択されることができる。
【0127】
[0142]
図14は、イオン注入システム500のイオン源544に関連付けられた流路の閉鎖を抑制するよう便利に使用されうる堆積モニタ制御システムの概略図である。
【0128】
[0143] 図示するとおり、イオン注入システム500は、流れ制御バルブ524を中に含む分配ライン518に結合された、ドーパント源シリンダ512と、流れ制御バルブ526を中に含む分配ライン520に結合された洗浄流体シリンダ514と、流れ制御バルブ528を中に含む分配ライン522に結合された希釈流体シリンダ516とを含むガス供給シリンダが配置されるガスボックス510を有している。
【0129】
[0144] バルブ524、526および528は、それぞれ信号伝送ライン530、536および534によって中央制御装置(CPU)に連結されており、CPUは、サイクルタイムプログラムまたはCPUによってモニタリングされるプロセス状況および/または構成要素に応じてバルブ調節を提供するCPUのその他の信号生成能力に応答して、特定の程度でそれぞれのバルブを開閉するよう動作することができる。
【0130】
[0145] それぞれのシリンダに結合された分配ライン518、520および522は、混合チャンバ532で終端するため、ドーパント源、洗浄流体および希釈流体のそれぞれの複数は、所望の場合、選択的に互いに混合されることができる。代替的には、単一のシリンダがその内容物をチャンバ532に分配して、これから圧力変換機540と流量制御装置(MFC)542とを中に含む供給ラインへ、それからイオン源イオン源544へと流れるように構成されることができる。イオン源イオン源544は、中のドーパント源をイオン化し、イオン注入チャンバ546に伝達されるイオンビームを生成するようイオン化動作のために構成される。イオン注入チャンバ546は、中に搭載された半導体またはその他のマイクロ電子装置基板に選択されたイオン化ドーパント種を注入するために該基板を包含している。
【0131】
[0146] 図示されたシステムでは、イオン源への供給ラインにおける圧力変換機540は、CPUに信号伝送関係で、信号伝送ライン538によって結合されている。電量制御装置も、CPUに信号伝送関係で、信号伝送ラインによって結合されている。この圧力変換機の構成により、供給ラインにおける圧力と相関性のある信号が生成され、モニタリングの目的のためライン538においてCPUに伝送される。
【0132】
[0147] ドーパント源材料がイオン源へ流れる間、ドーパント材料が、供給ラインにおいて、例えば、イオン源からの該ライン中の熱伝搬によって分解し、かつ、積層した固体堆積による供給ラインにおける伝導性が低減した結果、堆積材料の降着が、供給ラインにおける圧力の増加を引き起こす場合、結果として得られる圧力増加は、圧力変換機540によって感知され、信号伝送ライン538においてCPUに伝送されることができる。
【0133】
[0148] これに応答してCPUは、供給ラインにおける堆積の初期的な閉鎖作用を軽減する措置を開始することができる。例えば、CPUは、流れ制御バルブ526を信号伝送ライン536において該バルブに送られた制御信号によって開くことによってシリンダ514から供給ラインに洗浄流体を流すことができる。代替的には、イオン源へのアーク電力を低減することができる。さらに別の代替案として、ドーパント源の滞留時間は、ドーパント源の流量を増加させること、信号伝送ライン530においてバルブ524に伝送された制御信号によりバルブ524を開くこと、および/または、体積流量の全体的な増加によって流れ回路およびイオン源イオン源におけるドーパント源滞留時間が低減されるように洗浄流体および/または希釈流体を加えること、によって低減されることができる。
【0134】
[0149] この態様で、圧力変換機およびCPUによってもたらされた圧力モニタリングは、システムに早期の堆積を検出する能力と、これに応じてシステムにおけるそのような固体堆積を抑制するためにシステムを調整する能力を可能にする。
【0135】
[0150] ドーパント源に由来する固体の堆積はまた、システムにおいて流量制御装置542によって検出されることができる。堆積はシステム動作中に発生するので、所定の流量を維持するために、流量制御装置におけるバルブ位置がより広い範囲に開く。このような流量制御装置のバルブ位置は典型的に、流量制御装置からの電圧出力として使用可能であり、かかる電圧出力は、関連信号伝送ラインにおいてモニタリング信号としてCPUに伝送される。
【0136】
[0151] ドーパント源材料に由来する堆積固体の進行性の積層に起因する流量制御装置のバルブ位置の開きの増加に応答して、CPUは、イオン源への供給ラインの圧力変換機によるモニタリングに関連して上述した救済措置と同一の措置を発動することができる。
【0137】
[0152] このように本開示は、一態様において、イオン源供給ラインまたはその他のイオン源に関連付けられた通路における固体堆積に相関する出力を提供する圧力モニタリング装置を提供して、固体蓄積を抑制するよう救済措置をとることができるように閉塞がもうすぐ形成されることを早期に警告することを意図する。
【0138】
[0153]
図15は、イオン注入システムの別のイオン源の概略図である。
【0139】
[0154]
図15は、本開示の実施において有用に使用されうる実施形態に従う間接加熱カソード(IHC)イオン源の断面立面図であり、アークチャンバおよび関連構成要素を示す。このようなタイプのイオン源は、Maciejowskiらの米国特許第7,138,768号明細書により詳細に記載される。
【0140】
[0155] このIHCイオン源では、抽出アパーチャ1012を有するアークチャンバハウジング1010がアークチャンバ1014を画定する。カソード1020およびリペラー電極1022がアークチャンバ1014内に配置される。カソード1020に非常に近接してアークチャンバ1014の外部に配置されるフィラメント1030は、カソードの加熱を引き起こす。イオン化されるガスは、ガス源からアークチャンバ1014へガスインレット1034を通して提供される。図示されない別の構成では、アークチャンバ1014は、アークチャンバ1014内でイオン化される材料を蒸発させる蒸発器に結合されてよい。
【0141】
[0156] アーク電源は、アークチャンバハウジング1010に連結される陽端子と、カソード1020に連結される陰端子と、を有する。リペラー電極1022は、フロートであるかまたはアーク電源の陰端子に結合されることができる。アーク電源は、25アンペアで100ボルトの定格を有し、約70ボルトで動作しうる。アーク電源は、カソード1020によって放出された電子をアークチャンバ1014におけるプラズマに加速する。
【0142】
[0157] 陽端子を有するバイアス電源は、カソード1020と、フィラメント1030に連結された陰端子とに連結される。バイアス電源は、4アンペアで600ボルトの定格を有し、約2.5アンペアの電流および約350ボルトの電圧で動作しうる。バイアス電源は、カソード1020の加熱を引き起こすために、フィラメント1030によって放出された電子をカソード1020に加速する。
【0143】
[0158] フィラメント電源は、フィラメント1030に連結された出力端子を有する。フィラメント電源は、200アンペアで6ボルトの定格を有し、約140〜170アンペアのフィラメント電流で動作しうる。フィラメント電源は、フィラメント1030の加熱を引き起こし、これは次いでカソード1020の加熱のためにカソード1020に向かって加速される電子を生成する。
【0144】
[0159] ソース磁石は、アークチャンバ1014内に磁界を生成する。典型的には、ソース磁石は、アークチャンバ1014の両端に極を有する。磁界の方向は、イオン源の動作に影響を与えることなく反転されうる。ソース磁石は、60アンペアにおいて20ボルトの定格を有しうる磁石電源に連結される。磁界は、カソード1020によって放出された電子とアークチャンバ1014におけるプラズマとの間の相互作用の増加を引き起こす。
【0145】
[0160] 多様な電源の電圧および電流定格ならびに動作電圧および電流は、例示目的のみに記載されていることが理解できよう。
【0146】
[0161] 抽出電極および抑制電極は、抽出アパーチャ1012の前に好適に配置される。抽出電極および抑制電極のそれぞれが、明確に画定されたイオンビームを抽出するための抽出アパーチャ1012と一致するアパーチャを有する。抽出電極および抑制電極はそれぞれの電源に連結される。
【0147】
[0162] イオン源制御装置は、分離回路を介してイオン源の制御を提供するために使用することができる。他の実施形態では、分離機能を果たす回路が電源に組み込まれうる。イオン源制御装置は、プログラムによる制御装置であるかまたは特殊用途専用の制御装置でありうる。一実施形態では、イオン源制御装置がイオン注入機のメイン制御コンピュータに組み込まれている。
【0148】
[0163] イオン源が動作しているとき、フィラメント1030はフィラメント電流によって、およそ2200℃でありうる熱イオン放出温度まで抵抗加熱される。
【0149】
[0164] フィラメント1030から放出された電子は、フィラメント1030とカソード1020との間のバイアス電圧VBによって加速され、カソード1020に衝突し加熱する。カソード1020は、電子衝撃により熱イオン放出温度まで加熱される。カソード1020によって放出された電子は、アーク電圧によって加速され、アークチャンバ1014内のガス源からのガス分子をイオン化してプラズマ放出を引き起こす。アークチャンバ1014内の電子は、磁界によってらせん状の軌道に流される。リペラー電極1022は、入射電子の結果として負の電荷を蓄積し、最終的にはアークチャンバ1014を介して電子をはね返すために十分な負の電荷を有し、さらなるイオン化衝突を引き起こす。
【0150】
[0165] アークチャンバ1010は、イオン源本体1150およびアークチャンバ基部によって支持される。イオン源本体1150の一部であるプレートは、イオン源の真空領域と外部環境との境界を画定する。チューブ1160は、アークチャンバ1014のガスインレット1034とガス源との連結を提供する。
【0151】
[0166] リペラー電極1022は、伝導性支持部材1170および絶縁体172によってアークチャンバ基部に搭載される。リペラー電極22は、絶縁体によってアークチャンバ1010から電気的に絶縁される。
【0152】
[0167] カソードアセンブリは、カソード1020と、フィラメント1030と、カソード1020およびフィラメント1030を固定の空間関係で搭載するためかつカソード1020およびフィラメント1030に電気的エネルギを伝導するためのクランプアセンブリ1210と、を有している。カソード1020は、アークチャンバハウジング1010の一端における開口に搭載されるが、アークチャンバハウジング1010には物理的に接触しない。好ましくは、カソード1020およびアークチャンバハウジング1010との間の間隙は、およそ0.050インチ(0.127cm)である。
【0153】
[0168] カソード1020とアークチャンバハウジング1010との間には間隙がある。フィラメント1030の加熱ループは、カップ型空洞1240内に位置し、アークチャンバ1014からフィラメント1030へのプラズマの移動は最小である。
【0154】
[0169] イオン源は、シールド1400をさらに含みうる。シールド1400は、カソード1020およびフィラメント1030の近傍のアークチャンバ1014の外部の領域1402を実質的に囲む。シールド1400の機能は、カソード1020およびフィラメント1030の近くに電子およびプラズマへのバリアを形成することである。シールド1400は、電子およびプラズマへのバリアを形成するという意味で領域1402を実質的に囲むが、領域1402を密封しない。
【0155】
[0170] シールド1400は、箱状構造を有し、耐熱性の金属から製作されてよい。シールド1400は、二階層のメイン壁1410、上壁1412、第1の側壁1414および第2の側壁(図示せず)を有している。二階層メイン壁1410は、シールド1400が電気的かつ機械的にフィラメントクランプに連結されることを可能にするが、カソードクランプ1300からは離間する。異なるシールド構造が使用されうることが理解できるだろう。例えば、シールド1400は、平坦なメイン壁を有し、スタンドオフを使用してフィラメントクランプに搭載されてもよい。さらにシールド1400は、イオン源の別の要素に搭載されてもよい。
【0156】
[0171] クランプアセンブリ1210は、カソードクランプ1300、フィラメントクランプおよび絶縁体ブロック1310を有してよい。カソードクランプ1300およびフィラメントクランプは、絶縁体ブロック1310に対して固定位置に搭載され、互いに電気的に絶縁されている。
【0157】
[0172] イオン源は、絶縁体ブロック1310とカソード1020との間に絶縁体シールド1460をさらに有してよい。絶縁体シールド1460は、イオン源本体1150に取り付けられた耐熱性金属要素でありうる。絶縁体シールド1460は、カソードクランプ1300およびフィラメントクランプからの電気的絶縁を提供するためにカットアウトを有する。絶縁体シールド1460は、絶縁体ブロック1310に堆積が積層するのを阻止する。そうしなければカソードクランプ1300およびフィラメントクランプの1つ以上の間に短絡が引き起こされる。
【0158】
[0173]
図16は、イオン源チャンバの表面からホウ素残留物を取り除くためにNF
3を使用した洗浄動作についての経過時間(分)の関数としてのビーム電流(mA)のグラフであり、NF
3蒸気を流すことによってホウ素残留物を取り除くことができることを示す。この試験の動作条件は、1.5sccmのNF
3ガスのフローと、145Wのアーク電力(アーク電圧=100ボルト、アーク電流=1.45アンペア)と、20mAのソースビーム電流と、40kVの抽出電圧とを含んでいた。
図16のグラフの曲線は、時間関数としてのBF
2+、BF
+およびB
+に関するビーム電流曲線を含む。洗浄の証拠は、洗浄ガスがイオン源に流されたときの、これらのビーム電流の劇的な低減から観察できる。洗浄ガスは、効果的にホウ素残留物と反応し、揮発性のフッ化ホウ素を生成し、これはその後アークチャンバプラズマにおいてイオン化して、
図16に示す多様なビーム電流を発生させる。20mAのソースビーム電流において得られた曲線の3つのセットに加え、アークチャンバの電力が200Wに増大されると、30mAの関連ソースビーム電流を発生させる更なるBF
2+のデータが見られる。追加的な電力はさらに、洗浄ガスの洗浄効果を増強するのを助ける。
【0159】
[0174] この動作例では、NF
3はB
2F
4と共には流されなかったが、堆積が観察されたB
2F
4の試験の後に流された。堆積の除去が視覚的に観察され、観察された除去は、NF
3とホウ素堆積との間の反応で生成されたBF
3からイオン源において形成されたBF
2+およびB+イオンの分解が含まれた(
図16の左手下側における曲線を参照)。