特許第5919395号(P5919395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5919395可動ステージシステム及びリソグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919395
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】可動ステージシステム及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160428BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20160428BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
   G03F9/00 H
   H01L21/68 F
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-555159(P2014-555159)
(86)(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公表番号】特表2015-507369(P2015-507369A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013051472
(87)【国際公開番号】WO2013113632
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/594,443
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ヴェン,バスチアーン,ランバータス,ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,アントニウス,フランシカス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】フェルメーレン,ヨハネス,ペトラス,マルティヌス,ベルナルドス
(72)【発明者】
【氏名】カデー,セオドルス,ペトルス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】レイス,ロベルタス,マティス,ゲラルドス
(72)【発明者】
【氏名】ファン リーシュート,リチャード,ヘンリカス,アドリアヌス
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−172621(JP,A)
【文献】 特開2010−067950(JP,A)
【文献】 特開2008−270801(JP,A)
【文献】 特開2007−173814(JP,A)
【文献】 特開2010−016369(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0236854(US,A1)
【文献】 特開2011−060823(JP,A)
【文献】 特開2011−091298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027;21/67−21/683
G03F 7/20;9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを支持する可動ステージシステムであって、前記可動ステージシステムは、
前記オブジェクトを支持するショートストローク部と、
前記ショートストローク部を支持するロングストローク部であって、前記ショートストローク部が前記ロングストローク部に対して第1移動範囲にわたって移動可能であり、前記ロングストローク部が、前記ロングストローク部を支持するベース支持体に対して第2移動範囲にわたって移動可能であり、前記第2移動範囲が前記第1移動範囲よりも実質的に大きい、ロングストローク部と、
前記ショートストローク部と前記ロングストローク部との間に配置された遮蔽要素であって、前記ロングストローク部と前記ショートストローク部との間の空間内の、前記ロングストローク部の移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動に対して前記ショートストローク部を遮蔽する遮蔽要素と、
前記遮蔽要素の位置関連量を制御する位置制御システムであって、前記位置制御システムが、前記遮蔽要素と前記ショートストローク部との間の実質的に一定の距離を維持し、前記位置制御システムが、前記ショートストローク部に対する前記遮蔽要素の位置関連量を決定するセンサと、決定された前記位置関連量に基づいて制御信号を提供するコントローラと、前記制御信号に基づいて前記遮蔽要素を駆動する少なくとも1つのアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータが前記遮蔽要素と前記ロングストローク部との間又は前記遮蔽要素と前記ベース支持体との間に配置される、位置制御システムと、を備える可動ステージシステム。
【請求項2】
前記遮蔽要素の位置関連量が第1方向に制御され、前記遮蔽要素が前記第1方向の突起部において前記ショートストローク部及び前記ロングストローク部の重なり合う面に実質的に広がる、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項3】
前記センサは前記ショートストローク部上に配置される、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項4】
前記位置関連量が、前記ショートストローク部に対する前記遮蔽要素の位置、速度又は加速度である、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項5】
前記遮蔽要素が、前記可動ステージシステムの移動の主方向に前記遮蔽要素を安定化させる1つ以上のキネマティックカップリングによって前記ロングストローク部上に搭載され、前記位置制御システムが、前記移動の主方向に対して実質的に垂直の方向に、前記ショートストローク部と前記ロングストローク部との間の一定の距離を維持する、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項6】
前記位置制御システムが、3つの垂直方向の前記ショートストローク部に対して前記遮蔽要素の位置関連量を決定する1つ以上のセンサと、センサ信号に基づいて前記3つの方向に前記遮蔽要素を駆動して前記ショートストローク部に対する前記遮蔽要素の実質的に一定の位置を維持する少なくとも3つのアクチュエータと、を備える、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項7】
前記遮蔽要素が板状の要素である、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項8】
前記遮蔽要素が、前記ショートストローク部に対向する前記ロングストローク部の少なくとも側面で前記ロングストローク部を実質的に閉鎖する、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項9】
前記遮蔽要素が、前記ショートストローク部に対向する前記ショートストローク部の少なくとも側面で前記ショートストローク部を実質的に閉鎖する、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項10】
前記位置制御システムが前記遮蔽要素の形状を制御する、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項11】
前記位置制御システムが、前記遮蔽要素の形状を決定する複数のセンサと、前記遮蔽要素の形状を制御するように前記遮蔽要素の複数の場所に搭載された複数のアクチュエータと、を備える、請求項10に記載の可動ステージシステム。
【請求項12】
前記遮蔽要素が、能動的若しくは受動的な冷却システム、及び/又は、熱吸収材料若しくは反射材料、及び/又は、電磁吸収材料若しくは反射材料、及び/又は、電場吸収材料若しくは反射材料を含む、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項13】
前記遮蔽要素が、前記ロングストローク部と前記ショートストローク部との間に敷設されたケーブル束を保持するケーブル束ホルダを支持する、請求項1に記載の可動ステージシステム。
【請求項14】
リソグラフィ装置であって、
放射ビームを調節する照明システムと、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持する支持体と、
基板を保持する基板支持体と、
パターン付放射ビームを基板上のターゲット部分上に投影する投影システムと、を備え、
前記リソグラフィ装置が、請求項1に記載の可動ステージシステムを備え、前記可動ステージシステムがパターニングデバイス支持体又は基板支持体である、リソグラフィ装置。
【請求項15】
リソグラフィ装置であって、
放射ビームを調節する照明システムと、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持する支持体と、
基板を保持する基板支持体と、
パターン付放射ビームを基板のターゲット部分上に投影する投影システムと、
第1オブジェクトと、
第2オブジェクトと、
前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとの間に配置され、前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとの間の空間内の、前記第1オブジェクトの移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動に対して前記第2オブジェクトを遮蔽する遮蔽要素と、
前記遮蔽要素の位置関連量を制御する位置制御システムであって、前記位置制御システムが、前記遮蔽要素と前記第2オブジェクトとの間の実質的に一定の距離を維持し、前記位置制御システムが、前記第2オブジェクトに対する前記遮蔽要素の位置関連量を決定するセンサと、前記決定された位置関連量に基づいて制御信号を提供するコントローラと、前記制御信号に基づいて前記遮蔽要素を駆動する少なくとも1つのアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータが前記遮蔽要素と前記第1オブジェクトとの間に配置される、位置制御システムと、を備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、2012年2月3日出願の米国仮出願第61/594,443号の利益を主張し、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
[0002] 本発明は、ステージシステム及びステージシステムを備えるリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、連続してパターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に一度に露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0004】
[0004] 公知のリソグラフィ装置は、基板を支持するように構成された可動ステージシステムを備える。ステージシステムは、その上に支持された基板を高精度に6自由度で位置決めするように移動可能である。ステージシステムの移動の主平面は、水平面などの基板の主平面に平行であるが、ステージシステムは、普通、基板の主平面に対して直角の方向、例えば垂直方向に小さい範囲にわたって基板を移動させることもできる。
【0005】
[0005] ある実施形態では、ステージシステムは、基板を支持するように構成されたショートストローク部と、ショートストローク部を支持するように構成されたロングストローク部と、を備える2つの部分からなる基板ステージである。ショートストローク部は、ロングストローク部に対して第1移動範囲にわたって移動可能で、ロングストローク部はロングストローク部を支持するように配置されたベース支持体に対して第2移動範囲にわたって移動可能である。第2移動範囲は第1移動範囲よりもかなり大きい。
【0006】
[0006] ショートストローク部は、ロングストローク部の上方に比較的小さい距離をおいて配置されている。ロングストローク部の移動及び/又は変形は、ショートストローク部に対する外乱を引き起こすことがある。ロングストローク部によって引き起こされるこれらの外乱は、電磁力、ロングストローク部の移動又は変形による空気圧外乱、及び熱負荷とは異なるタイプのものである。また、ロングストローク部とショートストローク部との間に敷設されたワイヤ、ホース、光ファイバ又はケーブルなどの動的リンクがロングストローク部からショートストローク部へ外乱を伝達することがある。
【0007】
[0007] 特に、ロングストローク部の形状変化又は移動、例えばロングストローク部内のコイルの起動による屈曲の結果、ショートストローク部とロングストローク部との間の空間内の圧力が変動することがある。ショートストローク部とロングストローク部との間の空間内の上記圧力変動は、ショートストローク部のオーバレイ及び合焦性能にかなりの悪影響を与えることがある。また、ロングストローク部の移動及び/又は変形は、ステージシステム上に配置されたエンコーダシステムの格子プレートなどのリソグラフィ装置のその他の部品への外乱効果を有することがある。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 一般に、改良型の基板ステージシステムを提供することが望ましい。さらに、ショートストローク部とロングストローク部とを有し、ショートストローク部の位置決めが改良され、好ましくは、ロングストローク部によって引き起こされる外乱の影響を受けにくいステージシステムを提供することが望ましい。また、第1及び第2オブジェクトを有し、第2オブジェクトの位置が第1オブジェクトの外乱の影響を受けにくいリソグラフィ装置を提供することが望ましい。特に、ショートストローク部と、ロングストローク部とを有し、ショートストローク部の位置決めが改良され、好ましくは、ロングストローク部によって引き起こされる外乱の影響を受けにくいステージシステムを備えるリソグラフィ装置を提供することが望ましい。
【0009】
[0009] 本発明のある実施形態によれば、オブジェクトを支持するように構成された可動ステージシステムであって、
オブジェクトを支持するように構成されたショートストローク部と、ショートストローク部を支持するように構成されたロングストローク部と、を備え、ショートストローク部がロングストローク部に対して第1移動範囲にわたって移動可能であり、ロングストローク部がロングストローク部を支持するように配置されたベース支持体に対して第2移動範囲にわたって移動可能であり、第2移動範囲が第1移動範囲よりも実質的に大きく、
ショートストローク部とロングストローク部との間に配置され、ロングストローク部とショートストローク部との間の空間内の、ロングストローク部の移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動に対してショートストローク部を遮蔽するように構成された遮蔽要素と、
遮蔽要素の位置関連量を制御する位置制御システムであって、位置制御システムが、遮蔽要素とショートストローク部との間の実質的に一定の距離を維持するように構成され、位置制御システムが、ショートストローク部に対する遮蔽要素の位置関連量を決定するセンサと、決定された位置関連量に基づいて制御信号を提供するコントローラと、制御信号に基づいて遮蔽要素を駆動する少なくとも1つのアクチュエータと、を備え、アクチュエータが遮蔽要素とロングストローク部との間、又は遮蔽要素とベース支持体との間に配置された位置制御システムとを備える可動ステージシステムが提供される。
【0010】
[0010] 本発明のある実施形態によれば、リソグラフィ装置であって、
放射ビームを調節するように構成された照明システムと、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築された支持体と、
基板を保持するように構築された基板支持体と、
パターン付放射ビームを基板上のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、を備え、リソグラフィ装置が、オブジェクトを支持するように構成された可動ステージシステムを備え、ステージシステムが、
オブジェクトを支持するように構成されたショートストローク部と、
ショートストローク部を支持するように構成されたロングストローク部であって、ショートストローク部がロングストローク部に対して第1移動範囲にわたって移動可能で、ロングストローク部がロングストローク部を支持するように配置されたベース支持体に対して第2移動範囲にわたって移動可能であり、第2移動範囲が第1移動範囲よりもかなり大きいロングストローク部と、
ショートストローク部とロングストローク部との間に配置され、ロングストローク部とショートストローク部との間の空間内のロングストローク部の移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動に対してショートストローク部を遮蔽する遮蔽要素と、
遮蔽要素の位置関連量を制御する位置制御システムであって、位置制御システムが、遮蔽要素とショートストローク部との間の実質的に一定の距離を維持するように構成され、位置制御システムが、ショートストローク部に対する遮蔽要素の位置関連量を決定するセンサと、決定された位置関連量に基づいて制御信号を提供するコントローラと、制御信号に基づいて遮蔽要素を駆動する少なくとも1つのアクチュエータとを備え、アクチュエータが、遮蔽要素とロングストローク部との間、又は遮蔽要素とベース支持体との間に配置された位置制御システムと、を備え、
ステージシステムがパターニングデバイス支持体又は基板支持体である、リソグラフィ装置が提供される。
【0011】
[0011] 本発明のある実施形態によれば、リソグラフィ装置であって、
放射ビームを調節するように構成された照明システムと、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築された支持体と、
基板を保持するように構築された基板支持体と、
パターン付放射ビームを基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、を備え、
第1オブジェクトと、
第2オブジェクトと、
第1オブジェクトと第2オブジェクトとの間に配置され、第1オブジェクトと第2オブジェクトとの間の空間内の、第1オブジェクトの移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動に対して第2オブジェクトを遮蔽するように構成された遮蔽要素と、
遮蔽要素の位置関連量を制御する位置制御システムであって、位置制御システムが、遮蔽要素と第2オブジェクトとの間の実質的に一定の距離を維持するように構成され、第2オブジェクトに対する遮蔽要素の位置関連量を決定するセンサと、決定された位置関連量に基づいて制御信号を提供するコントローラと、制御信号に基づいて遮蔽要素を駆動する少なくとも1つのアクチュエータとを備える位置制御システムと、をさらに備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0012】
[0012] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
図2】[0014]本発明の第1実施形態によるステージシステムの側面図を示す。
図3】[0015]図1の実施形態の概略上面図を示す。
図4】[0016]本発明の第2実施形態によるステージの側面図を示す。
図5】[0017]本発明の第3の実施形態によるステージシステムの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0018] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又は任意の他の適切な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、一定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTと、を含む。この装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、一定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。さらに、この装置は、基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSを含む。
【0015】
[0019] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0016】
[0020] マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわちその重量を支えている。マスク支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。このマスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0017】
[0021] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0018】
[0022] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0019】
[0023] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、使用する露光放射、あるいは液浸液の使用又は真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折型光学システム、反射型光学システム、反射屈折型光学システム、磁気型光学システム、電磁気型光学システム及び静電型光学システム、又はそれらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0020】
[0024] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0021】
[0025] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、あるいは1つ以上の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ以上のテーブル又は支持体で予備工程を実行することができる。
【0022】
[0026] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆うタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術を使用して、投影システムの開口数を増加させることもできる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0023】
[0027] イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを含むビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の場合には、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0024】
[0028] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように構成されたアジャスタADを含んでいてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを含んでいてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0025】
[0029] 放射ビームBは、マスク支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2ポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして公知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0026】
[0030] 図示の装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0027】
[0031] 1.ステップモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWT又は「基板支持体」がX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0028】
[0032] 2.スキャンモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMT又は「マスク支持体」に対する基板テーブルWT又は「基板支持体」の速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
【0029】
[0033] 3.別のモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」はプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0030】
[0034] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0031】
[0035] 図2は、ショートストローク部SSと、ロングストローク部LSとを備えるリソグラフィ装置の可動基板ステージシステムを示す。ショートストローク部SSは、ウェーハWを支持するように構成されている。ショートストローク部SSは、エンコーダブロックを含んでもよい。エンコーダブロック上には基準要素、例えば、メトロフレーム又は投影システムPSなどの基準オブジェクトなどの基準系に搭載された1つ以上の格子プレートと協働する幾つかのエンコーダセンサを含んでもよい。
【0032】
[0036] 代替実施形態では、ショートストローク部SSは干渉計システム用の鏡面の役割を果たす幾つかの反射面を有するミラーブロックを含んでいてもよい。エンコーダブロック又はミラーブロックは、その上で基板Wを例えば真空クランプによって保持することができる基板テーブルを支持してもよい。
【0033】
[0037] ショートストローク部SSは、ロングストローク部LS上に距離SPをおいて移動可能に支持されている。ロングストローク部に対して比較的小さい移動範囲にわたってショートストローク部を移動させるショートストロークアクチュエータ(図示せず)が提供されている。この小さい移動範囲を用いて、ショートストローク部を通常3又は6自由度という高精度で位置決めすることができる。
【0034】
[0038] ロングストローク部LSはベース支持体BS、例えば、ベースフレーム、特にベースフレーム上に搭載された磁石板上に支持されている。ロングストローク部LSはベース支持体BSに対して比較的大きい移動範囲にわたって移動可能である。すなわち、ベース支持体BSに対するロングストローク部LSの移動範囲は、ロングストローク部LSに対するショートストローク部SSの移動範囲よりもかなり大きい。
【0035】
[0039] ロングストローク部LSの位置決めの精度は比較的低い。ロングストローク部LSの位置決めの主要な課題は、ショートストローク部SSのターゲット位置をショートストローク部SSの移動範囲内で特定することである。このより小さい移動範囲内で、ショートストローク部SSをターゲット位置に高精度に位置決めすることができる。
【0036】
[0040] ロングストローク部LSは、ショートストローク及び/又はロングストロークアクチュエータの一部を形成する幾つかのコイルCLを備える。これらのコイルCLの起動によってロングストローク部LSが移動し、及び/又は変形することがある。この移動及び/又は変形によって、ショートストローク部SSとロングストローク部LSとの間の空間内の圧力が変動することがある。
【0037】
[0041] ショートストローク部を上記圧力変動から遮蔽する遮蔽要素SEがショートストローク部SSとロングストローク部LSとの間に配置されている。そのような遮蔽要素SEがない場合、圧力変動がショートストローク部SSの位置精度に与える悪影響はかなり大きくなり、それによって、ショートストローク部SSのオーバレイ及び合焦性能にかなりの悪影響を与えることがある。実際、ロングストローク部LSによって引き起こされる外乱は、ショートストローク部SSのオーバレイ及び合焦性能の主要な制約要因になり得る。
【0038】
[0042] ショートストローク部SSを空間SP内の圧力変動から遮蔽するため、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の実質的に一定の距離を維持するように構成された位置制御システムPCSが提供される。図2の実施形態の位置制御システムPCSは、空間SP内の圧力変動による外乱に伝達の主方向であるz軸方向に一定の距離を維持するように構成される。
【0039】
[0043] 位置制御システムPCSは、センサSENと、コントローラCONと、アクチュエータACTと、を備える。
【0040】
[0044] センサSENはショートストローク部SS上に搭載され、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離を測定するように配置されている。センサSENの各々は、遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間のz軸方向の距離を測定するように構成される。センサSENは、光センサ又は静電容量センサなどの任意の好適なタイプであってもよい。代替実施形態では、センサは遮蔽要素SE上に搭載してもよい。
【0041】
[0045] また、1つ以上のセンサSENを別のオブジェクト上に搭載できる。これによって、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離は別のオブジェクトからショートストローク部SSまでの距離と別のオブジェクトから遮蔽要素SEとの間の距離との差分に基づいて決定される。そのような距離の差分を決定するセンサの集まりは、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離を測定する1つのセンサと見なすことができる。例えば、センサの代替搭載位置としてメトロフレーム又はベース支持体を使用することができる。
【0042】
[0046] 遮蔽要素SEを実質的に同じxy軸方向の位置に維持するが遮蔽要素SEのz軸方向の移動を可能にするキネマティックカップリングKCが提供される。キネマティックカップリングKCは、例えば、遮蔽要素SEを実質的に同じxy軸方向の位置に維持するが遮蔽要素SEのz軸方向の移動を可能にする板ばねであってもよい。
【0043】
[0047] 遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間の距離実測値はコントローラCONへのセンサ信号として提供される。コントローラCONは別個のコントローラ又はその他の任意の制御システム、例えば、ステージ位置制御システムの一部であってもよい。コントローラは、リソグラフィ装置の中央処理装置の一部であってもよい。
【0044】
[0048] コントローラCONは、遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間に実質的に一定の距離を維持するように構成されている。コントローラの目的は、遮蔽要素SEと所望の設定位置のショートストローク部SSとの間のz軸方向の距離を維持することであってもよい。代替的に、コントローラの目的をゼロ位置のショートストローク部SSに対する遮蔽要素SEの速度及び/又は加速度を維持することとしてもよい。
【0045】
[0049] コントローラCONはアクチュエータACTに制御信号を提供する。アクチュエータACTは、遮蔽要素SEをz軸方向に駆動するために提供される。アクチュエータACTはロングストローク部LSと遮蔽要素SEとの間に提供される。アクチュエータSEは、圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、ローレンツアクチュエータなどの任意のタイプのアクチュエータであってよい。アクチュエータACTの移動範囲は、好ましくは、ロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間で必要な移動範囲と同じ大きさである。
【0046】
[0050] 図2に示すコントローラは、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離を測定するセンサSENからのフィードバックループに基づいて遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間の距離を制御する。代替的に又は追加的に、フィードフォワードループを使用してもよい。そのようなフィードフォワードループは、ロングストローク部LS内で測定された移動及び/又は変形に関する情報を用いて遮蔽要素SEの位置を制御することができる。また、遮蔽要素SEのそのようなフィードフォワード起動は、ロングストローク部LSの移動及び/又は変形の結果としての空間SP内の圧力変動の影響を実質的に補正することができる。そのような実施形態では、例えば、ベース支持体BSとロングストローク部LSとの間に、又はロングストローク部の内部に1つ以上のセンサを提供してロングストローク部LSの移動及び/又は変形を測定することができる。
【0047】
[0051] 遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間の一定の距離を維持することで、空間SP内の圧力変動はショートストローク部SSの位置決めの精度に与える影響を実質的に少なくできる。その結果、ショートストローク部SSの合焦及びオーバレイ性能を向上させることができる。
【0048】
[0052] 図2に示す遮蔽要素SEは、板状のオブジェクトである。代替実施形態では、遮蔽要素SEはロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間に配置でき、ロングストローク部LSの移動及び/又は変形によって引き起こされる空間SP内の圧力変動からショートストローク部SSを遮蔽できる任意の形状を有していてもよい。また、遮蔽要素SEは、複数の遮蔽板及び/又は遮蔽効果を有するその他のオブジェクトを含んでいてもよい。
【0049】
[0053] 遮蔽要素SEは、好ましくは、軽量で堅い材料で製造されてもよい。遮蔽要素は、例えば、セラミック材料で少なくとも一部が構築されてもよい。遮蔽要素SEは、熱伝導率が高い材料、及び/又は電磁場を吸収又は反射する材料及び/又は電場吸収若しくは反射材料をさらに含んでもよい。遮蔽要素SEは、冷却システム、例えば、遮蔽要素SEを貫通する、又はその上にある1つ以上の冷却チャネルを備えてもよい。熱伝導率が高い材料又は冷却システムを提供することで、ショートストローク部SSへのロングストローク部LSの熱伝達を低減でき、これによって、ショートストローク部SSの位置の精度へのよい影響が得られる。さらに、遮蔽要素SE上に電磁場又は電場を吸収又は反射する材料を提供することで、ロングストローク部LSから発生する電磁場及び/又は電場がショートストローク部SSの位置の精度に与える影響を減じることができる。
【0050】
[0054] 図3は、ロングストローク部LS、ショートストローク部SS及び遮蔽要素SEの概略上面図を示す。この上面図から、z軸方向、すなわち、遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間の距離が制御される方向の突起部において、遮蔽要素SEの表面積がショートストローク部SSの全表面積にわたることが分かる。したがって、制御されるz軸方向の空間SP内の実質的にすべての圧力変動が遮蔽要素SEによって遮蔽される。
【0051】
[0055] 一般に、制御される方向、すなわち、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離が制御される方向の突起部において、遮蔽要素SEの表面積はショートストローク部SSの表面積のかなりの部分、例えば、ロングストローク部LSの表面積の少なくとも50%、好ましくは、ロングストローク部LSの表面積の少なくとも75%、より好ましくは、ロングストローク部LSの表面積の100%にわたることが望ましい。
【0052】
[0056] さらに、圧力変動がショートストローク部SSの位置決め精度に大きな影響を与えることが知られている場所に遮蔽要素の場所を配置してもよい。
【0053】
[0057] 遮蔽要素SEのサイズ及び場所は、ロングストローク部の移動及び/又は変形の結果である圧力変動からリソグラフィ装置のその他の部分を遮蔽するように選択できる。例えば、図2に示す遮蔽要素SEはまた、ショートストローク部の上に搭載された位置測定システムの格子プレート又はその他の部分への圧力変動の影響を実質的に低減することもできる。
【0054】
[0058] 図4は、本発明によるステージシステムの第2実施形態を示す。ステージシステムは、図2の実施形態に対応して、ショートストローク部SSと、ロングストローク部LSとを備え、ショートストローク部はロングストローク部LSに対して移動可能で、ロングストローク部LSはベース支持体BSに対して移動可能である。
【0055】
[0059] 図2のステージシステムと同じ又は実質的に同じ機能を有するステージシステムの部分は同じ参照符号で示されている。
【0056】
[0060] ロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間に、ロングストローク部LSの移動及び/又は変形によって引き起こされる空間SP内の圧力変動からショートストローク部SSを遮蔽する遮蔽要素SEが配置されている。遮蔽要素は、少なくともショートストローク部SSに対向する側のロングストローク部LSを閉鎖し、ロングストローク部LSによって引き起こされる外乱が位置決めに与える影響をさらに低減できる。ベース支持体BS及び遮蔽要素SEは、ロングストローク部LSを完全に閉鎖する。また、ショートストローク部SSは、少なくともロングストローク部LSを向いた側で遮蔽要素SEによって実質的に閉鎖されている。
【0057】
[0061] 遮蔽要素SEは、ベース支持体BEと直接協働するアクチュエータACTによって駆動され、支持される。遮蔽要素SEは6自由度で移動可能である。ベース支持体BEは、例えば磁石板は安定した静止オブジェクトであってもよく、ロングストローク部LSと比較して遮蔽要素SEを駆動し支持するのにより好適であってもよい。
【0058】
[0062] センサSENは、遮蔽システムSEの位置を6自由度で決定するように構成される。アクチュエータACTは、遮蔽システムSEを6自由度で位置決めするように構成される。コントローラCONは、3方向、すなわち、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の、遮蔽要素SEとショートストローク部SSとの間に実質的に一定の距離を維持するように構成される。
【0059】
[0063] ロングストローク部LSを閉鎖する遮蔽要素SEの利点は、ロングストローク部LSの移動及び/又は変形によって引き起こされる圧力変動の影響を受けやすいその他のオブジェクトが上記の外乱に対して適切に遮蔽されるという点である。例えば、ステージシステムの上方のメトロフレーム又は投影システム上に搭載された格子プレートはロングストローク部LSの移動及び/又は変形によって引き起こされる外乱の影響を受けやすい可能性がある。ロングストローク部LSを閉鎖することでこれらの影響が低減する。
【0060】
[0064] 追加的に又は代替的に、ロングストローク部LSと格子プレートの各々との間に遮蔽要素を提供してもよい。遮蔽要素の位置を制御して格子プレートと遮蔽要素との間の実質的に同じ距離を維持することができる。遮蔽要素は、ショートストローク部SS上に搭載されたエンコーダセンサのセンサビームを透過させる透過性であってもよい。
【0061】
[0065] 図5は、本発明によるステージシステムの第3の実施形態を示す。ステージシステムは、図2及び図4の実施形態に対応して、ショートストローク部SSと、ロングストローク部LSとを備え、ショートストローク部はロングストローク部LSに対して移動可能で、ロングストローク部LSはベース支持体BSに対して移動可能である。
【0062】
[0066] 図2のステージシステムと同じ又は実質的に同じ機能を有するステージシステムの部分は同じ参照符号で示されている。
【0063】
[0067] 図5の実施形態では、図2の遮蔽要素と同様に、ロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間に板状の遮蔽要素SEが提供されている。この板状の遮蔽要素SEは、例えば、所望の小さい質量の結果としていくらか柔軟性を有していてもよい。
【0064】
[0068] 位置制御システムPCSは、遮蔽要素SEの形状を制御するように構成されている。遮蔽要素SEの形状は、複数のセンサ、例えば、各々がショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離を測定するセンサSEN−1〜SEN−nの1次元又は多次元アレイによって決定できる。遮蔽要素SE上の様々な場所で遮蔽要素SEを駆動する複数のアクチュエータACT−1〜ACT−nを提供してもよい。
【0065】
[0069] 図5の位置制御システムPCSは、遮蔽要素SEの形状を単一方向に制御するために提供される。すなわち、センサSEN−1〜SEN−nは、ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の、単一方向、すなわち、z軸方向の距離を測定するように構成され、アクチュエータACT−1〜ACT−nは、遮蔽要素SEを単一方向、すなわち、z軸方向に駆動するように構成されている。別の実施形態では、センサSEN−1〜SEN−n及びアクチュエータACT−1〜ACT−nは、複数の方向に、及び/又は複数の自由度で、例えば、3又は6自由度で作用するように構成してもよい。
【0066】
[0070] 図5の実施形態では、センサSEN−1〜SEN−nの各々は、アクチュエータACT−1〜ACT−nの1つに位置合わせされる。これは原則として必要ない。センサSEN−1〜SEN−n及びアクチュエータACT−1〜ACT−nは、任意の適切な場所に配置できる。また、センサSEN−1〜SEN−nとアクチュエータACT−1〜ACT−nの数は同じである必要はない。
【0067】
[0071] コントローラの目的は、遮蔽要素SEをショートストローク部SSに対して設定点位置に保持することで、又はショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの速度差又は加速度差をゼロに維持することで、遮蔽要素SEをショートストローク部SSから実質的に同じ距離に保持することである。この目的は、図5に示すフィードバックループ及び/又は図2の実施形態に関して説明したフィードフォワードループによって達成できる。
【0068】
[0072] 図5に示す遮蔽要素SEは、ロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間に敷設されたケーブル束CBを保持するケーブル束ホルダCBHをさらに支持する。ショートストローク部SSと遮蔽要素SEとの間の距離は少なくともz軸方向に実質的に一定に維持されるので、ケーブル束CBを介してロングストローク部LSからショートストローク部SSへ伝達される外乱は低減される。
【0069】
[0073] ケーブル束CBは、ロングストローク部LSとショートストローク部SSとの間の任意の機械的接続、例えば、電気ケーブル、光ファイバ、ホース、制御ケーブルなどを含んでもよい。
【0070】
[0074] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。このような代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0071】
[0075] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明はその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、文脈によっては、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0072】
[0076] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0073】
[0077] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はそれらの組合せを指すことができる。
【0074】
[0078] 以上、本発明の特定の実施形態について説明してきたが、説明とは異なる方法でも本発明を実施できることを理解されたい。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとってもよい。
【0075】
[0079] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を修正できることは当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5