(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
誘導結合型(IC)プラズマ源は、荷電粒子(例えば、イオン又は電子)の集束ビームを形成する集束カラムと組合わせて使用する場合、他のタイプのプラズマ源に比べていくつかの利点を持つ。誘導結合型プラズマ源は、狭いエネルギー幅で荷電粒子を供給することができ、これにより、荷電粒子を小さなスポットに集束させることができる。誘導結合型プラズマ源は、例えば、本発明の譲受人に権利が移転されている米国特許第7241361号に記載されているとおり、通常、セラミック製プラズマ室の周囲に巻かれた高周波(RF)アンテナを含む。このRFアンテナは、プラズマ室内部のガスをイオン化された状態に維持するためにエネルギーを供給する。
【0003】
イオンビーム処理に使用されるイオンエネルギーは、典型的には5keV〜50keVであり、最も典型的には約30keVである。電子エネルギーは、透過型電子顕微鏡システムでは約1keV〜5keVの範囲であったり、走査型電子顕微鏡システムでは数十万電子ボルトであったりと様々である。荷電粒子システムにおいて、その試料は、通常接地電位に維持され、プラズマ源は、ビームを形成するために用いられる粒子に応じて正又は負のいずれかの高電位に維持される。オペレータの安全のためには、高電圧となる構成部品を電気的に絶縁する必要がある。高電圧プラズマの電気的な絶縁は、プラズマ源設計の他の目的に照らすと解決することが難しい幾つかの設計上の問題を生じさせる。
【0004】
一つの設計上の難しさは、プラズマとして消費されるイオンとなるガスで満たされる高電圧のプラズマ室にガスを導入しなければならないために生ずる。ガスは、通常、接地電位で大気圧より十分に高い状態で貯蔵されている。プラズマ室内のガス圧は、典型的には約0.001mbar〜約1mbarの範囲である。ガスの電位は高電圧プラズマの電位とする必要があり、ガス圧はガスがガス供給源からプラズマ室に移される際に減少させる必要がある。ガスは、システムに損傷を与えるアーク気相放電を防ぐようにプラズマ室室内に導入されなければならない。
【0005】
もう一つの設計上の課題は、効率的に電力を変換するために、プラズマに電力を供給する高周波コイルを可能な限りプラズマに近づけて配置することである。しかしながら、コイルをプラズマと同様の高電位に維持することは、通常、コイル用電源を高いプラズマ電位に維持しなくてならず、電源の設計が著しく複雑になり、大幅にコストが増えることとなる。誘導結合型プラズマイオン源には、コイルとプラズマとの間の容量結合を抑えるために、スプリットファラデーシールドを使用することができる。スプリットファラデーシールドは、プラズマとコイルとの間に配置しなければならず、通常は接地される。接地されたファラデーシールドが誘電体プラズマ容器に近接して配置された場合、ファラデーシールドと誘電体プラズマ容器との間に空気が含まれていると、電位の急激な変化により生じた高い電場が気相放電を引き起こす可能性があり、この放電はプラズマ源に損傷を与える恐れがある。
【0006】
また、プラズマ室に印加されるエネルギーは熱を発生させる。ビーム形成には小型のプラズマ源が望ましいが、プラズマ源はより小型で強力になるほど、より高温になるので、効率的に熱を放散することがより重要になる。また、高電圧であることが冷却を困難にし、使用されるプラズマの密度を制限することとなる。これらの相反する要件は、ICP源の設計を非常に困難なものとする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
プラズマ源を設計するには、通常、相反する設計要件を満たすため、種々のトレードオフが必要である。本発明の実施形態によれば、高周波コイルとプラズマとの間における優れた結合作用と、プラズマ室に対する効率的な冷却作用と、容量結合への優れた低減作用と、プラズマ源における高電圧の絶縁作用とを実現することができ、これらすべてにより、高密度であり静的であって、高電位である誘導結合プラズマを生成することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、強電場であり、流体で満たされた領域からガスが噴出されるので、システム設計者にはソース源の構成に関する設計上の選択をする機会が与えられる(他の構成では得られない)。
【0014】
以下の説明は、集束イオンビームシステムのためのプラズマ源を説明したものであるが、本発明のプラズマ源は、電子ビームシステムや他のシステムにも適用することができる。
【0015】
図1は、本発明の態様を具体化するプラズマ源100の縦方向の断面図を示す。プラズマ源100は、内壁104及び外壁106を有する誘電体プラズマ室102を含む。プラズマ室102は、導電性ベースプレート110上に設けられる。プラズマ112は、プラズマ室102内に維持される。引き出し光学系114は、プラズマ室102の開口116及びベースプレート110の開口118を通じて、プラズマ112から荷電粒子(適用例に応じてイオン又は電子)を引き出す。誘電体外殻120(好ましくは、最小限の損失で高周波エネルギーを透過するセラミック又はプラスチック材料のもの)は、プラズマ室102と同心に配置され、外殻120とプラズマ室の外壁106との間の空間122を規定する。ポンプ124は、冷却流体126を冷却流体注入口128を通じてリザーバ/冷却装置127から空間122に圧送し、これを排出口132を通じて排出して、外壁106から熱交換によりプラズマ室102を冷却する。
【0016】
プラズマ領域とスプリットファラデーシールドとの間では電位が急激に降下するため、プラズマ領域とスプリットファラデーシールドとの間の材料は、アーク放電を防ぐことができるように十分な大きさの絶縁耐力を有するものとしなければならない。動作電圧における誘電破壊を防止するために液体中での電圧降下が十分に低いものとなるように、冷却流体は、セラミック筺体102の材料に比べて十分に高い誘電率を有するものを選択することできる。この場合、冷却剤には、電場増強や気体放電の可能性が存在する気泡又は他の不純物を含まないものを選択するのがよい。液量が実質的に電場から影響を受けず、そして、実質的にすべての電圧降下がプラズマ室102内で発生する場合であれば、冷却流体には、ある程度導電性を有するものを選択することもできる。また、冷却流体は、過剰な電力を消費する大型ポンプを用いた大きな流量を必要とすることなく、プラズマ室102を過熱から防ぐために、十分な熱容量を有するものとすべきである。プラズマ室102は、典型的にはおおよそ50℃より低い温度に維持される。
【0017】
流体は、水又はFluorinert(米国登録商標)FC−40などの液体で構成されるのが好ましい。Fluorinert(米国登録商標)FC−40は、電気的絶縁性を有し、安定したフッ化炭素系の流体であり、3M社(ミネソタ州セントポール)によって市販されているものである。水としては脱イオン水や水道水なども使用することができる。冷却流体は、リザーバ/冷却装置127から、10〜50ガロン/時間の割合で圧送することが好ましい。流体126は、排出口132からリザーバ/冷却装置127に、導管133を経由して戻される。水は誘電率が約80であるところ、プラズマ室のセラミック材料は誘電率が約9であるので、この結果として、ほとんどの電圧降下がセラミック材料内において発生する。好ましい絶縁性液体は、プラズマ室を形成する誘電体材料の誘電率より高い誘電率を有する。いくつかの実施形態では、絶縁液体の誘電率は5より大きいものであり、10より大きいのがより好ましく、20より大きいのがさらに好ましい。そして、約40以上であるのが最も好ましい。
【0018】
典型的な実施形態では、リザーバ/冷却装置127は、流体をポンプ124によって循環させる前に、冷却流体を約20℃まで冷却する。冷却流体はプラズマ室を部分的に囲み、その冷却剤は、プラズマ室の縦方向に沿って底部から上部へ流れる。分かりやすくするため、
図1では、冷却流体がプラズマ室102の底部の両側から空間122に注入され、プラズマ室102の上部の片側から排出されるように示している。当業者は、プラズマ室102のすべての側面周りにおいて、均等な流量を確保するため、適当な注入口、排出口及びバッフル板が使用される可能性があると理解する。
【0019】
スプリットファラデーシールド134は、高周波コイル136とプラズマ112との間の容量結合を低減しつつ、プラズマ活性のために高周波コイル136からの高周波エネルギーを通す。スプリットファラデーシールド134は、高周波コイル136によって誘導された渦電流を低減するスリット群を含む。高周波コイル136は、中空構造としてもよく、コイルの内部流路137を循環する冷却剤の流れによって冷却してもよい。プラズマ室の冷却システムがコイルを循環する冷却剤を押し出しもよいし、あるいは、コイルが独立した冷却システムを持ってもよい。
【0020】
ファラデーシールド134は、冷却流体126がシールド134の両側に流れることができように、かつ、シールドのスリットを流れて合流することができるように設けることが好ましい。代替方法として、シールドは、外壁106に又は外殻120の内壁に合わせて配置することもできる。例えば、シールドは、プラズマ室の外側壁106又は外殻120の内側壁上に塗布された又は他の方法で積層された金属層を含んでもよい。ファラデーシールドは電気的に接地されている。一つの実施形態では、シールド134は金属シリンダを含み、そのシリンダは外殻120の一部分とベースプレート110との間の部分のファラデーシールドのタブ138を固定することによって接地され、その結果、固定接地を確保する。
【0021】
ガスは、タンク150とプラズマとの間の流路に沿って、接地電位からプラズマ電位に引き起こされなければならない。好ましい実施形態では、ほとんどの電圧変化は、ガス圧が比較的高くてアーク放電に耐性のある部位で生じる。
【0022】
ガスは、タンク150などのガス供給源からプラズマ室102に供給される。タンク150は、典型的には接地電位に維持され、高圧ガスを貯蔵する。レギュレータ152は、タンクから導管154に導入されるガスの圧力を低減させる。必要に応じて設けられる調整弁156は、ガス管における圧力をさらに低減させたり、プラズマ源が動作していない場合に導管を完全に閉じたりしてもよい。キャピラリ158のような流量制限器は、ガスがプラズマ室102に到達する前に、さらにガス圧を低減させる。制限器158は、ガス管とプラズマ室102の内部との間に所望のガスコンダクタンスを実現する。制限器158は、プラズマ112に電気的に接触し、プラズマ電位であることが好ましい。他の実施形態では、流量制限器は、プラズマとは別の電圧源から印加された電気的バイアスを持つこともできる。絶縁シールド160はキャピラリ158を取り囲み、絶縁シールド160の端部に設けられ接地された金属カラー162は、その位置でガス電位を確実にゼロとする。したがって、接地電位からプラズマ電位への電位変化は全て、ガスが比較的高い圧力であってそれゆえアーク放電に耐性がある絶縁シールド160内において生じる。
【0023】
調整弁156を含まない実施例では、レギュレータ152は、供給タンク150から送りだされたガスの圧力を5ポンド/平方インチ(※換算すると258.6Torr(mmHg))まで低減させる。ガス圧はキャピラリ158に到達するまで5ポンド/平方インチに保たれ、キャピラリにおいてガス圧はプラズマ室の圧力(例えば0.1Torr(mmHg))に降下する。絶縁シールド160は、損傷を及ぼす恐れのある放電を防ぐために電場を十分に低く保てるように、十分な長さを有することが好ましい。絶縁シールド160は、典型的には少なくとも約5mmの長さであり、より典型的には約30mm〜60mmの範囲である。例えば、プラズマが30kVに維持されている場合、10mmの長さを持つシールド内における電場は約3kV/mmとなり、この電場はほとんどの応用例において持続的な放電を防止できる十分に低いものである。当業者であれば、局所的な電場が形状に応じた関数となること、及び、最初に低電流による放電が生じる可能性があっても絶縁シールド160内で静電平衡に達することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、調整弁156は、ガスがプラズマ前段に位置する最終の制限器に到達する前に、さらにガス圧を低減させてもよい。流量制限器は、キャピラリの代わりに、リーク弁などの弁であってもよい。いずれのガス供給源であっても使用可能である。例えば、ガス供給源は、加熱されるとプラズマ供給のために十分な速度でガスを生成させる液体又は固体物質によって構成することができる。ガス供給源の相違により出力される圧力が異なるのであれば、その圧力をプラズマ室内で求められる圧力まで低減させることができるよう構成を変更する必要がある。
【0024】
図2は、
図1のプラズマ源100の横方向の断面図を示す。
図2には、プラズマ室102の外壁106が波型であること、すなわち、稜部202と谷部204との連なりで構成されることが示されている。ファラデーシールド134は、稜部202に接して配置されていて、谷部204とシールド134との間を流れる冷却流体の導通部206を規定する。
図2に示された実施形態では、ファラデーシールド134は、プラズマ室の外壁106の上に収まる金属スリーブを含む。金属スリーブの一部は、底部で外側方向へ折れ曲がって接地タブ138(
図1参照)を形成し、そのタブはプラズマ室102と接地ベースプレート110との間で固定される。冷却流体126は、プラズマ室の外壁106と外殻120とによって囲まれる空間122を介して流れる。ファラデーシールドは「分割(split)」されている。つまり、シールドには垂直方向の複数のスロット群が形成されていて、そのスロット群は冷却流体を通過させることができる。別の実施形態では、外壁106を平滑に形成し、ファラデーシールドを波型に形成してもよい。あるいは、外壁106及びファラデーシールドのいずれも波型に形成しなくてよい。
【0025】
図3は、
図1のプラズマ源を使用した荷電粒子ビームを示す。イオンカラム上部には、誘導結合型プラズマ(ICP)イオン源302が取付けられ、ICPイオン源302は、電磁的な筺体304、ソース源室306及び導電性材料による一巻き以上の巻き線を含む誘導コイル308を備える。冷却材のリザーバ及び冷却装置390は冷却剤をポンプ391に供給し、ポンプ391は、導管392を介して、ソース源室306の周囲の冷却領域に冷却剤を供給する。冷却剤は、戻り導管393を介して、冷却剤のリザーバ及び冷却装置390に還流する。
【0026】
高周波(RF)電源340は、2本の高周波(RF)同軸ケーブル342によって、マッチング回路341に接続される。マッチング回路341は、2本の高周波同軸ケーブル343によって、誘導コイル308に接続される。誘導コイル308は、ソース源室306に同心状に取り付けられる。ソース源室306内で生成されたプラズマと誘導コイル308との間の容量結合を低減するため、必要に応じて、スプリットファラデーシールド(図示省略)が、誘導コイル308の内側にソース源室306に対して同心状にして取り付けられてもよい。スプリットファラデーシールドがICPイオン源に使用される場合、誘導コイル308の両端にかかる高電圧(典型的には数百ボルト)は、ICPイオン源302の底部からイオンカラムへ引き出されたイオンのエネルギーへの影響を最少とする。この結果、ビームエネルギーの拡がりが小さなものとなり、基板表面又はその近傍での集束荷電粒子ビームの色収差を低減させる。
【0027】
ソース源室306の内部のプラズマの有無については、プラズマから放出され、光ファイバ344のソース源側終端によって収集され、光ファイバ344を介してプラズマ光検出器345に伝搬された光によって、検出することが可能である。プラズマ光検出器345によって生成された電気信号は、ケーブル346を介して、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:programmable logic controller)347に伝えられる。プラズマ光検出器345により生成されたプラズマのオン/オフ信号は、次いで、ケーブル又はデータバス348を介し、PLC347から、プラズマ源を制御するためのソフトウェアを実行するプラズマ源制御部351に渡される。プラズマ源制御部351からの信号は、次いで、ケーブル又はデータバス352を介して、集束イオンビーム(FIB)システム制御部353に渡される。FIBシステム制御部353は、インターネット354を経由して、遠隔サーバ355と通信してもよい。これらの詳細説明、つまりFIBシステム制御の各構成を相互接続したことは単に例示的な意図によるものである。当業者に周知であるようにその他の制御の構成とすることも可能である。
【0028】
ガスは、注入ガス管320を介してソース源室306に供給される。注入ガス管320は注入流量調整器328に通じており、注入流量調整器328はソース源室306内部に通じている。流量制限器328は、電圧降下が主に高圧のガス中で生じるように、ガス供給源310及びレギュレータ332の電位より、ソース源室306のプラズマの電位に近い電位に維持される。絶縁シールド329は、流量制限器328の上流側のガス管を絶縁し、接地されたカラー331で終端されている。
【0029】
ICPソース源用のガス供給システム310は、ガス供給器330、高純度ガスレギュレータ332、及びニードル(調節)弁334を備える。ガス供給器330は、例えば、ヘリウム、酸素、キセノン又はアルゴンが供給ガスの場合であれば、一段又は多段の流量調節機構を有する標準的なガスボンベを含んでもよい。別の方法として、室温で固体又は液体である化合物に由来するガスの場合、ガス供給器330は、加熱リザーバを含んでもよい。ガス供給器330については他の構成とすることも可能である。ガス供給器330の構成の個別の選択はICPソース源に供給されるガスの種類に応じてなされる。供給器330からのガスは、高純度ガスレギュレータ332を通過し、高純度ガスレギュレータ332は一段又は多段のガス精製及び減圧機構を含んでもよい。高純度ガスレギュレータ332から出てきた精製ガスは、必要に応じて設けられるニードル弁334を通過する。ニードル弁334から出てきたガスは、ホース336を介して、必要に応じてICPソース源に近接して取り付けられる第2ニードル弁338を通過する。ニードル弁338から出てきたガスは、注入ガス管320を通過する。ガス管320は、流量制限器328を介してソース源室306の上部に接続される。
【0030】
ICPソース源302の底部において、ソース電極357は、イオンビーム引き出し光学系の一部として機能し、引き出し電極358とコンデンサ359と連動して作用するものである。プラズマ点火器360は、ソース電極(図示省略)に接続され、ソース源室306内でプラズマを発生することができる。プラズマを点火するその他の既知の手段も用いることができる。ICPソース源の動作の詳細については、本明細書で引用した米国特許第7241361(2007年7月10日登録)に記載されている。ソース電極357は、プラズマ点火器360を介してビーム電圧電源(PS)361によって高電圧にバイアスされる。ソース電極357の電圧は、プラズマ電位を決定し、それゆえ、一価にイオン化された原子又は分子のイオン種や電子の場合では、基板表面に到達する荷電粒子のエネルギーも決定する。二価にイオン化されたイオン種は、二倍の運動エネルギーを持つこととなる。引き出し電極358は、引き出し電源363によってバイアスされ、他方、コンデンサ359は、コンデンサ電源362によってバイアスされる。ソース電極357と引き出し電極358とコンデンサ359とを組み合わせた動作では、ICPソース源302から出てきたイオンを引き出し、集束させてビームを形成することができ、そのビームはビーム受入アパーチャ364を通過する。ビーム受入アパーチャ364は、FIBシステム制御部353の制御に基づいて、ビーム受入アパーチャアクチュエータ365によってイオンカラム内に機構的に設けられる。典型的な電圧の設定として、ビーム電圧電源361を約+30kV、コンデンサ電源362を約15kV、そして引き出し電源363を約15kVとするのがよい。
【0031】
図3に図示されたイオンカラムでは、二つの静電アインツェルレンズ(einzel lenses)366、367が示されており、これらは基板368の表面又はその近傍で、ICPソース源302における仮想光源の高倍率で縮小された像(約1/125倍)を形成するために使用され、基板368は試料台制御部337によって制御される試料台369上に配置されている。第1アインツェルレンズ366(以下、「第1レンズ」又は「L1」ともいう)は、ビーム受入アパーチャ364の直下に配置され、3つの電極を含む。第1電極及び第3電極は典型的には接地(0V)されるが、一方、中央電極370は第1レンズ(L1)電源(PS)371によって制御される。第1レンズ電源371は、FIBシステム制御部353によって制御される。
【0032】
イオンカラムにおける第1アインツェルレンズ366と第2アインツェルレンズ367との間には、ビーム整形用アパーチャアセンブリ372が取付けられ、これは一つ以上のビーム整形用アパーチャ(
図3では三つのアパーチャが示されている)を含む。典型的には、ビーム整形用アパーチャアセンブリ372は、異なる直径の開口で構成された複数の円形アパーチャを含むことができ、その円形アパーチャのいずれか一つを光軸上に配置して、基板表面でのビーム電流及びビーム広がり角を制御できるようにする。別の方法として、ビーム整形用アパーチャアセンブリ372において二つ又はそれ以上のアパーチャを同じものを設けることもでき、それによって、アパーチャの保全周期の間隔を延ばすための冗長化を実現することができる。ビーム広がり角を制御することによって、基板表面又はその近傍におけるビーム電流及び集束イオンビームの径が、実行されるミリング加工又は像観察に要求される分解能に基づいて、選択可能である。個別のアパーチャ(つまり、基板上のビーム広がり角)は、FIBシステム制御部353で制御されるビーム整形用アパーチャ(BDA:the beam defining aperture)アクチュエータ373によって、ビーム整形用アパーチャアセンブリ372の所望のアパーチャをカラムの光軸上に機械的に配置されることで決定される。
【0033】
ビーム整形用アパーチャアセンブリ372の下方には、第2アインツェルレンズ367(以下、「第2レンズ」又は「L2」ともいう)が示されている。第1電極及び第3電極は典型的には接地(0V)され、他方、中央電極374の電圧は、第2レンズ(L2)電源(PS)375によって制御される。第2レンズ電源375は、FIBシステム制御部353によって制御される。カラム室/試料室隔離弁376は、ソース源302と試料室378との間のいずれかに配置される。隔離弁376は、試料の導入や取出しその他の要因により生じるガスの漏洩によって試料室378の真空状態に影響が及ぶ場合であっても、イオンカラム真空室377を高真空状態に保つことができる。カラム室/試料室ターボポンプ379は、ポンプ管380を介して試料室378を減圧するように構成される。また、ターボポンプ379は、ポンプ管381を介してイオンカラム室377を減圧する。
【0034】
図3に示されたFIBシステムの詳細については単に例示的な意図によるものであって、他の多くのFIBシステムの構成でも、ミリング加工や像観察のために本発明の各種の実施形態を実施可能である。例えば、
図3のイオンカラムでは二つの静電アインツェルレンズが示されているが、その代わりに、単一の静電アインツェルレンズ、あるいは二つより多い静電アインツェルレンズを使用してもよい。他の実施形態として、強力な集束を可能にする構成を得たい場合、磁気レンズを含むこともできるし、あるいは二つ以上の電気又は磁気四極子の組み合わせを含むこともできる。本発明のこの実施形態の趣旨によれば、イオンカラムが基板368の表面又はその近傍で、(ICPソース源302の)仮想光源の高倍率で縮小された像を形成することが好ましい。これら縮小可能な方法の詳細については当業者にとって周知である。
【0035】
本発明及びその利点について詳細に説明したが、ここに記載された実施形態に対しては、添付された特許請求の範囲により定められる本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び修正が可能であると理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態におけるプロセス、機構、製品、構成物、手段、方法及びステップに限定されるものではない。当業者であれば、本発明、プロセス、機構、製品、構成物、手段、方法又はステップの開示によって、既存の技術、又は本明細書に記載された実施形態に対応し、実質的に同じ機能を果たしたり、実質的に同じ効果を奏したりする将来の技術についても、本発明に従って利用可能であると容易に理解することができる。したがって、添付された特許請求の範囲は、上記のようなプロセス、機構、製品、構成物、手段、方法及びステップをその範囲に含むものである。
【0036】
なお、本発明は以下の態様も含む。
[1]プラズマ源を備えた荷電粒子ビームシステムであって、前記プラズマ源は、誘電体材料で形成されて内側表面及び外側表面を含む壁を有するプラズマ室と、前記プラズマ室の周りに少なくとも一巻きされたコイル状の導電体と、前記プラズマ室の少なくとも一部を囲んで熱交換する液体であって、その液体の一部が前記プラズマ室と前記導電体との間に位置する液体と、プラズマに電気的バイアスをかけるためのソース電極と、前記ソース電極に電圧を供給するためのビーム電圧電源と、前記プラズマ源から試料に向かう荷電粒子を集束させる一つ以上の集束レンズと、前記プラズマ源からのビームによって処理される前記試料を保持するための試料台と、を含み、前記荷電粒子のエネルギーが前記試料において1keVから50keVの範囲であることを特徴とする荷電粒子ビームシステム。
[2]前記プラズマ室に発生中のプラズマが接地電位とは異なる電位に維持されて、前記プラズマと接地との間の電圧降下の少なくとも一部が前記液体中で発生することを特徴する上記[1]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[3]前記液体が水を含むことを特徴とする上記[1]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[4]前記液体がフッ素化合物を含むことを特徴とする上記[1]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[5]さらに、前記コイル状の導電体と前記プラズマ室との間に配置された導電体シールドを備えることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[6]前記液体の少なくとも一部が前記導電体シールドと前記誘電体材料との間を流れることを特徴とする上記[5]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[7]前記導電体シールドが前記プラズマ室の前記外側表面に塗り付けられたフィルムを含むことを特徴とする上記[5]又は[6]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[8]前記導電体シールドが前記プラズマ室を覆って固定する金属シリンダを含むことを特徴とする上記[5]又は[6]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[9]前記導電体シールド又は前記プラズマ室の外壁は、前記導電体シールドと前記外壁との間に冷却剤のための流路を与えるへこみを有することを特徴とする上記[8]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[10]前記導電体シールドは、冷却剤が前記導電体シールドを通過して流れる流路を与える孔を含むことを特徴とする上記[8]又は[9]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[11]さらに、前記導電体シールドに電気的に接続される金属ベースプレートを備えることを特徴とする上記[5]乃至[10]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[12]前記液体が5より大きい誘電率を有することを特徴とする上記[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[13]前記液体が20より大きい誘電率を有することを特徴とする上記[1]乃至[12]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[14]前記導電体が冷却液体を通過させるための内部流路を有することを特徴とする上記[1]乃至[13]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[15]さらに、大気圧以上の圧力と接地電位に近い電位とをもつガスを供給するためのガス供給源と、前記ガスがプラズマに導入される前にそのガス圧力を低減するための流量制限器であって、前記ガスを前記プラズマの電位に近づける場合にアーク放電を低減できるように接地電位より高い電位に維持される流量制限器と、を備えることを特徴とする上記[1]乃至[14]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[16]前記流量制限器が前記プラズマと同じ電位に維持されることを特徴とする上記[15]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[17]前記流量制限器が前記プラズマの電位の1/2より高い電位に維持されることを特徴とする上記[15]に記載の荷電粒子ビームシステム。
[18]荷電粒子ビームシステムにおいて、前記流量制限器がキャピラリを含むことを特徴とする上記[15]乃至[17]のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームシステム。
[19]前記流量制限器が可変リーク弁を含むことを特徴とする上記[15]乃至[17]のいずれか1項に荷電粒子ビームシステム。
[20]少なくとも1つの導電体コイルが巻かれたプラズマ室を含むプラズマ源によるプラズマ生成方法であって、前記プラズマ室内にプラズマを保つために、前記少なくも一つの導電体コイルから高周波エネルギーを前記プラズマ室に供給し、接地電位とは異なる電位に前記プラズマを維持し、前記高周波の供給源と前記プラズマとの間の容量結合を低減するためのシールドを設け、前記プラズマ室の壁を冷却するための冷却流体を供給し、前記冷却流体の少なくとも一部は、前記プラズマ室と接地との間の電圧降下のうちの少なくとも一部が前記冷却流体中で発生するように、前記シールドと前記プラズマ室との間に供給され、前記プラズマ室から荷電粒子を引き出し、前記荷電粒子をビームに集束させ、そのビームを試料又はその近傍に指向させ、前記荷電粒子が前記試料で1keVから50keVの範囲のエネルギーを有するものであることを特徴とするプラズマ生成方法。
[21]前記プラズマ室の壁を冷却する冷却流体の供給工程は、約20より大きい誘電率を有する冷却剤を供給することが含まれることを特徴とする上記[20]に記載の方法。
[22]前記プラズマ室の壁を冷却する冷却流体の供給工程は、前記シールドと前記プラズマ室との間に冷却剤を流すことが含まれることを特徴とする上記[20]又は[21]に記載の方法。