【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン系重合体をもちいることで課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、エチレンから導かれる繰り返し単位、又は、エチレンから導かれる繰り返し単位及び炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなり下記(A)〜(H)の要件を満足するエチレン系重合体からなり、下記要件(I)〜(J)を満たすことを特徴とするフィルムに関するものである。
(A)JIS K6922−1(1998年)により測定された密度が910kg/m
3以上940kg/m
3以下
(B)JIS K6922−1(1998年)により測定されたメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分
(C)末端ビニルが、炭素数1,000個あたり0.2個以下
(D)毛管粘度計で測定した160℃における溶融張力[MS
160(mN)]が40以上150以下
(E)毛管粘度計で測定した160℃における溶融張力MS
160と190℃における溶融張力[MS
190(mN)]が下式(1)を満たす
MS
160/MS
190<1.8 (1)
(F)流動の活性化エネルギー[Ea(kJ/mol)]が30以上50未満
(G)温度上昇溶離分別により求めた溶出温度−溶出量曲線においてピークが複数個存在する
(H)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により求めた、z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)の比と重量平均分子量と数平均分子量の比(Mz/Mw)/(Mw/Mn)が0.9より大きい
(I)JIS K7105(1981年)に準拠して測定したヘーズ[Hz(%)]が20%以上
(J)シリカ、タルク、ゼオライト、マイカ、カーボン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムを含まない
さらに、下記用件(K)〜(M)を満たす条件で製造されたことを特徴とする、請求項1に記載のフィルムに関するものである。
(K)空冷インフレーション成形法により作成される
(L)フィルム厚みが10μm以上300μm以下
(M)溶融樹脂がダイから押出される際のせん断速度が30s
−1以上1,500s
−1以下
さらに、当該フィルムを最外層として含む多層フィルムに関するものである。
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体に用いる炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンもしくはビニルシクロアルカン等のα−オレフィン、ブタジエンもしくは1,4−ヘキサジエン等のジエンを例示することができる。また、これらのオレフィンを2種類以上混合して用いることもできる。
【0019】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体のJIS K6922−1(1998年)により測定された密度は、910kg/m
3以上940kg/m
3以下である。密度が910kg/m
3よりも低くなると、フィルムの柔軟性は向上するが、剛性が不足し二次加工の作業性が低下する恐れがある。また、密度が940kg/m
3よりも高いと、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶が融解しにくく、成形加工速度を低下させねばならないため生産性に劣り好ましくない。さらに、密度がこの範囲よりも高くなるとフィルムの剛性は上昇するものの、反面柔軟性が低下してしまうため好ましくない。
【0020】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体のJIS K6922−1(1998年)により測定されたメルトマスフローレート(以下MFRと記す)は、0.1〜20g/10分の範囲であり、好ましくは0.1〜10g/10分、さらに好ましくは0.2〜7g/10分の範囲である。MFRが0.1g/10分未満であると、エチレン・α−オレフィン共重合体を押出す際の押出負荷が高くなるため、生産性を低下させる必要があるため好ましくない。また、MFRが20g/10分を超えると、溶融張力が低くなり、フィルム製膜時の安定性に劣るとともにフィルムの強度が低下するため好ましくない。
【0021】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、炭素数6以上の長鎖分岐を炭素数1000個あたり0.01〜0.2個有するものであると、製膜安定性と高速での製膜性を両立できるため好ましい。
【0022】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個以下であり、特に0.1個以下であることが好ましい。ここで、末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個を越えるエチレン系重合体は、成形加工時の熱劣化、とくに黄変の問題が生じるものとなる。
【0023】
なお、本発明でいう末端ビニル数は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて、エチレン系重合体を熱プレスした後、氷冷して調製したフィルムを試料とし、4000cm
−1〜400cm
−1の範囲で測定した結果により、下式を用い算出することができる。
【0024】
1,000炭素原子当たりの末端ビニル数(個/1000C)=a×A/L/d
(式中、aは吸光光度係数、Aは末端ビニルに帰属される909cm
−1の吸光度、Lはフィルムの厚み、dは密度を示す。)
aの吸光光度係数は、
1H−NMR測定より、1,000炭素原子当たりの末端ビニル数を確認したサンプルを用いて作成した検量線から求めることができる。1H−NMR測定は、核磁気共鳴測定装置(日本電子社製、商品名GSX400)を用い、重水素化ベンゼンとo−ジクロロベンゼンの混合溶媒中、130℃において実施した。1,000炭素原子当たりの末端ビニル数は、メチレンに帰属されるピークと末端ビニルに帰属されるピークの積分比から算出した。各ピークは、テトラメチルシランを基準(0ppm)として、化学シフトが1.3ppmのピークをメチレン、4.8−5.0ppmのピークを末端ビニルと帰属した。
【0025】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、160℃で測定した溶融張力(以下、MS
160と記す。)が、40mN以上150mN以下である。MS
160が40mN未満であると、フィルム製膜時の安定性に劣るため好ましくない。また、MS
160が150mNを超えると、延伸性が不足し、高速での製膜性に劣る。
【0026】
なお、本発明でいうMS
160は、長さが8mm,直径が2.095mmであるオリフィスを用い、流入角90°で、せん断速度10.8s
−1、延伸比が47の条件で、測定温度160℃で測定することができる。ただし、最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比で測定した値をMS
160とした。
【0027】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、190℃で測定した溶融張力[MS
190(mN)](以下、MS
190と記す。)とMS
160の関係が、下記式(1)を満足するものであり、特に下記式(1’)を満足するものであることが好ましい。ここで、MS
160/MS
190が1.8以上のエチレン系重合体である場合、成形加工温度による溶融張力が大きく変化するために、成形加工温度の厳密な調節が必要となり、ひいては成形可能範囲が狭くなり、成形加工性に劣るエチレン系樹脂となる。
【0028】
MS
160/MS
190<1.8 (1)
MS
160/MS
190<1.7 (1’)
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、流動の活性化エネルギー[Ea(kJ/mol)](以下、Eaと記す。)が30以上50未満である。Eaが30kJ/mol未満であると、フィルム製膜時に供した際の加工性に問題が生じる。一方Eaが50kJ/mol以上であると、溶融粘度の温度依存性が大きく、成形加工温度の厳密な調節が必要となり、ひいては成形可能範囲が狭くなるという問題が生じる。
【0029】
なお、本発明でいうEaは、例えば160℃〜230℃の動的粘弾性測定によって得られるシフトファクターをアレニウス式に代入して求めることができる。
【0030】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、連続昇温溶出分別法(以下、TREFと記す。)により求めた溶出温度−溶出量曲線においてピークが複数個存在するものであり、特に融点が高く、結晶化度が上昇することから成形体とした際の耐熱性および剛性が向上することから、高温側のピークが85℃から100℃の間に存在することが好ましい。また、成形体とした際の低温ヒートシール特性に優れることから低温側のピークは65℃から80℃の間に存在することが好ましい。本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は組成分布が広いために溶出温度−溶出量曲線が2つのピークを有しており、従来のメタロセン触媒により得られるエチレン・α−オレフィン共重合体とは異なったものである。
【0031】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.2重量%未満であると、フィルムが低温ヒートシール性に優れるため好ましい。
【0032】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、特に機械強度に優れる成形品を得ることが可能となることから、重量平均分子量(以下、Mwと記す。)と数平均分子量(以下、Mnと記す。)の比(Mw/Mn)が4.5以上7.5以下であることが好ましく、特に5.0以上7.0以下であることが好ましい。なお、本発明でいうMw及びMnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)によって測定した溶出曲線より標準ポリエチレン換算値として算出することが可能である。
【0033】
また、本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体は、GPCにより測定したz平均分子量(以下Mzと記す)とMwの比Mz/MwとMw/Mnの比(
Mz/Mw)/(Mw/Mn)が0.9より
小さい。(
Mz/Mw)/(Mw/Mn)が0.9
より大きいと、分子量が非常に高い成分の割合が多くなるため、フィルム成形時の溶融粘度が高くなり、高速生産性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体を製造する方法に制限はなく、チーグラー触媒を用いる方法、フィリップス触媒を用いる方法、メタロセン触媒を用いる方法などで製造可能であるが、メタロセン触媒を用いる方法で製造することが好ましい。
【0035】
メタロセン触媒を用いて、エチレン系重合体を製造する場合、用いるメタロセン触媒は、メタロセン錯体、活性化助触媒、および必要に応じて有機アルミニウム化合物を構成成分として有し、特定のメタロセン触媒によりマクロモノマーを合成し、マクロモノマーの合成と同時に、特定のメタロセン触媒により、マクロモノマーとエチレンと炭素数3〜6のオレフィンの共重合とエチレンと炭素数3〜6のオレフィンの共重合を行うことが好ましい。ここでマクロモノマーとは、末端にビニル基を有するオレフィン重合体であり、エチレンと炭素数3〜6のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン共重合体である。
【0036】
マクロモノマーの直鎖状ポリエチレン換算の数平均分子量(Mn)は、2,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは5,000以上であり、最も好ましくは1,0000以上である。直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、4,000以上であり、好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000より大きい。マクロモノマーの分子量を大きくすることでエチレン系重合体に導入される長鎖分岐の長さが長くなり、溶融張力が向上する。
【0037】
マクロモノマーを合成する特定のメタロセン触媒は、メタロセン錯体に、非架橋型ビス(インデニル)ジルコニウム錯体、非架橋型ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体、架橋型ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体、もしくは架橋型(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(j)と記す。)を用いた触媒であることが好ましい。
【0038】
成分(j)の具体例として、例えばビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができるが、これらに限定されるこのではない。
【0039】
また、マクロモノマーの合成と同時に、マクロモノマーの共重合を行う特定のメタロセン触媒は、メタロセン錯体に、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体もしくは架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(k)と記す。)を用いた触媒であることが好ましい。
【0040】
成分(k)の具体例として、例えばジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
成分(j)に対する成分(k)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
メタロセン触媒の構成成分として用いる活性化助触媒は、メタロセン錯体、またはメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物の反応物を、オレフィンの重合が可能な活性種に変換する役割を果たす化合物を示し、メタロセン錯体からカチオン性化合物を生成させる化合物であることが好ましく、生成したカチオン性化合物は、オレフィンを重合することが可能な重合活性種として作用する。活性化助触媒は、重合活性種を形成した後、生成したカチオン性化合物に対して弱く配位または相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物である。
【0042】
活性化助触媒の具体的な例として、メチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサン、シリカゲル担持アルキルアルミノキサン、トリス(ペンタフルオエオフェニル)ホウ素などのトリス(フッ素化アリール)ホウ素、N,N−ジメチルアンモニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などのテトラキス(フッ素化アリール)ホウ素塩などのホウ素化合物、これらのシリカゲル担持物、および粘土鉱物、有機化合物で処理した粘土鉱物などを挙げることができるが、これら活性化助触媒の中で有機化合物で処理した粘土鉱物を用いることが好ましい。
【0043】
活性化助触媒として、有機化合物で処理した粘土鉱物を用いる場合、用いる粘土鉱物は、スメクタイト群に属する粘土鉱物が好ましく、具体例としてモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなどを挙げることができる。また、これら粘土鉱物を複数混合して用いることも可能である。
【0044】
なお、有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することを示す。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩などのアルキルアンモニウム塩を例示することができる。
【0045】
メタロセン触媒は、成分(j)と成分(k)の混合物を活性化助触媒と反応させる方法、成分(j)と活性化助触媒を反応させた後、成分(k)を反応させる方法、成分(j)と成分(k)を別々に反応させる方法などで調製されるが、メタロセン触媒の調製方法に特に制限はない。
なお、メタロセン触媒は、触媒の調製時、メタロセン錯体の活性化や溶媒中の不純物の除去など、必要に応じてトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを用いてもよい。
【0046】
本発明押出のフィルムを構成するエチレン系重合体を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜6のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。
【0047】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体の長鎖分岐数は、マクロモノマーの末端ビニル数を増加させることによって増加できる。マクロモノマーの末端ビニル数は、マクロモノマー合成用のメタロセン化合物の選択により制御することができる。例えば、非架橋型メタロセン化合物を架橋型メタロセン化合物に変更することによって増加させることができる。
【0048】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体のMw/Mnは、マクロモノマーのMnを減少させることによって増加できる。マクロモノマーのMnは、マクロモノマー合成用のメタロセン化合物の選択により制御することができる。例えば、非架橋型メタロセン化合物を架橋型メタロセン化合物に変更することによって減少させることができる。
【0049】
本発明のフィルムを製造する方法は、空冷インフレーション成形法である。この成形法で製造することで、得られるフィルムは生産性と耐ブロッキング性に優れるものになる。成形法が水冷インフレーションフィルム成形法、Tダイより押出して成形するキャストフィルム成形法であると、空冷インフレーション成形法よりも生産性、耐ブロッキング性とともに劣るため好ましくない。
【0050】
本発明のフィルムは、透明性に優れる容器、袋としての転用が可能となることから、厚み10μm〜300μm、好ましくは特に15μm〜300μm、さらに好ましくは15〜200μmであることが好ましい。
【0051】
空冷インフレーション成形法では、溶融樹脂は円形のダイより押出され、フィルムを形成する。本発明のフィルムを製造する際においては、溶融樹脂が円形のダイより押出されるせん断速度は30s
−1以上1,500s
−1であると、耐ブロッキング性、生産性、製膜安定性に優れるため好ましい。
【0052】
本発明のフィルムは、JIS K7105(1981年)に準拠して、日本電色工業(株)製 ヘーズメーター(型番 300A)により測定したヘーズ(Hz)が20%以上である。ここで、ヘーズが20%未満であると、得られるフィルムは透明性が高く表面が平滑であり、フィルムを重ねた場合にブロッキングしやすくなるため好ましくない。
【0053】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体には、シリカ、タルク、ゼオライト、マイカ、カーボン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど、一般にアンチブロッキング剤として使用される無機粒子を含まない。これらの無機粒子は、エチレン系樹脂と相溶しないため、フィルム表面から脱離しやすく内容物に混入するおそれがあること、フィルムを包装材料として使用した場合に無機粒子が内容物を傷つけるおそれがあることから好ましくない。
【0054】
本発明のフィルムを構成するエチレン系重合体には、必要に応じて、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、金属ステアレート等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。これらの添加剤を添加する場合は、公知な種々の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する方法、事前に溶融混練せずにドライブレンド又はオートフィーダーによるブレンド方法等を用いることができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。
【0055】
また、本発明のフィルムを最外層として含む多層フィルムとすることで、耐ブロッキング性と、バリア性などの機能を併せ持ったフィルムが得られるため好ましい。
【0056】
また、本発明のフィルムを含む多層フィルムとすることで、耐ブロッキング性と、バリア性や強靭性などの機能を併せ持ったフィルムが得られるため好ましい。ここで、多層フィルムとは、外層/内層からなる2層フィルム、外層/中間層/内層からなる3層フィルム、外層/中外層/中間層/中内層/内層からなる5層フィルムなどを例示することができる。多層フィルムを作成する方法としては、生産コストに優れることから共押出成形法が好ましい。共押出成形法としては、ダイに流入する前に溶融樹脂を積層するフィードポートブロック方式、ダイ内部で溶融樹脂を積層するダイ内接着方式、ダイから溶融樹脂を押出した後に積層するダイ外接着方式が挙げられる。本発明のフィルムを外層に用いることで、フィルムを重ねた際の耐ブロッキング性を得ることができる。また、本発明のフィルムを内層に用いることで、インフレーションフィルムの内面同士の耐ブロッキング性に優れるフィルムを得ることができる。
【0057】
本発明のフィルムの用途としては、例えば食品、医薬品、工業薬品、工業部品、電子部品、飲料等の包装袋や容器等として好適に用いることができる。さらに詳しくは、規格袋、重袋、米袋、ラップフィルム、マスキングフィルム、クリーニング袋、繊維包装袋、工業部品包装袋、電子部品包装袋、ファッションバッグ、ラミ原反、砂糖袋、油物包装袋、水物包装袋、食品包装用等の包装用フィルム、延伸テープ、バッグインボックス、輸液バッグ、血液バッグ、医療器具容器、工業薬品容器、農業用資材等に利用することができる。