特許第5919914号(P5919914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5919914-ホモシステイン測定用前処理試薬 図000003
  • 特許5919914-ホモシステイン測定用前処理試薬 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919914
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ホモシステイン測定用前処理試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20160428BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20160428BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20160428BHJP
   C07K 16/44 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   G01N33/531 B
   G01N33/531 A
   G01N33/53 S
   !C12N9/10
   !C07K16/44
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-58614(P2012-58614)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-190390(P2013-190390A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古田 有希
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃司
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/040973(WO,A1)
【文献】 特開2003−028850(JP,A)
【文献】 特許第4820827(JP,B2)
【文献】 特表平08−506478(JP,A)
【文献】 特開2007−170992(JP,A)
【文献】 特表2003−530574(JP,A)
【文献】 特開2005−214690(JP,A)
【文献】 特開平11−125600(JP,A)
【文献】 特表2007−528714(JP,A)
【文献】 特開2000−228998(JP,A)
【文献】 特開2001−017198(JP,A)
【文献】 特表平07−506001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/531
G01N 33/53
C07K 16/44
C12N 9/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤および抗酸化剤を含む緩衝液からなり、かつ緩衝液がクエン酸緩衝液である、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための試薬。
【請求項2】
還元剤、抗酸化剤、アデノシンおよびホモシステインをアデノシル化する酵素を含む緩衝液からなり、かつ緩衝液がクエン酸緩衝液である、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換し、さらに前記遊離型ホモシステインをS−アデノシルホモシステインに変換するための試薬。
【請求項3】
抗酸化剤が還元糖である、請求項1または2に記載の試薬。
【請求項4】
還元糖がガラクトースである、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の試薬とS−アデノシルホモシステインを認識する抗体とを含む、試料中に含まれるホモシステインを測定するための試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料(例えば血液)中に含まれるホモシステイン量を測定する際に、タンパク質やアミノ酸と結合状態にある酸化型ホモシステインを還元し、遊離型ホモシステインに変換するために用いる、前処理試薬に関するものである。特に本発明の試薬は、従来と比較し安定性が向上した試薬である。
【背景技術】
【0002】
ホモシステイン(homocysteine)は、チオール基を含む必須アミノ酸であるメチオニンの代謝で生じる中間代謝物である。ホモシステインは、ホモシステイン尿症として知られる遺伝的代謝異常や、栄養障害(葉酸、ビタミンB、ビタミンB12の欠乏)などが原因で高値となる。また近年、ホモシステインと血管障害との関係やホモシステイン尿症と動脈硬化との関係が報告されており、ホモシステインの高値が、血栓、心血管疾患、脳梗塞における独立した危険因子であることが明らかになっている(非特許文献1および2)。このような知見に基づいて、血液中に存在するホモシステイン量の測定が現在実施されている。
【0003】
ホモシステインの測定方法としては、液体クロマトグラフィーを用いる方法や抗原抗体反応を利用した免疫測定法が知られている。中でも免疫測定法は、迅速性にすぐれていることから、臨床目的でのホモシステイン量測定において多用されている。
【0004】
免疫測定法によりホモシステインを測定する方法としては、
(1)試料(例えば血液)中に含まれるタンパク質またはアミノ酸と結合状態にある酸化型ホモシステインを還元剤で処理することで、遊離型ホモシステインに変換し、
(2)遊離型ホモシステインを、アデノシンの共存下、ホモシステインをアデノシル化する酵素で処理することで、S−アデノシルホモシステインに変換し、
(3)S−アデノシルホモシステインを認識する抗体(抗S−アデノシルホモシステイン抗体)を用いて、いわゆる競合法によりS−アデノシルホモシステインを測定する、
方法が知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】McCully,K.S.,Carvalho,A.V.A.、Res.Commum.Chem.Pathol.Pharmacol.、56、349−360(1987)
【非特許文献2】佐々木 淳ら、Progress in Medicine、21(6)、1543−1549(2001)
【非特許文献3】D.W.Jacobsen、Clin.Chem.、44(8)、1833−1843(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、試料中のホモシステイン量を測定するためには、還元剤により、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換する必要がある。しかしながら、ここで用いる還元剤は、一般的に酸化による劣化が起こりやすいことが知られている。そのため還元剤を含む溶液を、室温もしくは冷蔵条件下または中性pH付近の条件下で長期間保存するのは困難であり、長期間保存するには凍結条件下または酸性条件下(pH4以下)で保存する必要があった。一方、遊離型ホモシステインへの変換操作後に実施する、S−アデノシルホモシステインへの変換操作では、S−アデノシルホモシステイン加水分解酵素などホモシステインをアデノシル化する酵素を用いることから、遊離型ホモシステインへの変換操作とS−アデノシルホモシステインへの変換操作を同一容器内で同時または続けて実施するには、還元剤を含む溶液のpHは前記加水分解酵素の至適pHであるpH6からpH8の範囲にする必要がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、試料中に含まれるホモシステイン量を測定する際に、タンパク質やアミノ酸と結合状態にある酸化型ホモシステインを還元し、遊離型ホモシステインに変換するために用いる、還元剤を含む前処理試薬であって、安定性が向上した前記試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行なった結果、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、還元剤および抗酸化剤を含む緩衝液からなる、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための試薬である。
【0010】
また本発明の第二の態様は、還元剤、抗酸化剤、アデノシンおよびホモシステインをアデノシル化する酵素を含む緩衝液からなる、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換し、さらに前記遊離型ホモシステインをS−アデノシルホモシステインに変換するための試薬である。
【0011】
また本発明の第三の態様は、抗酸化剤が還元糖である、前記第一または第二の態様に記載の試薬である。
【0012】
また本発明の第四の態様は、還元糖がガラクトースである、前記第三の態様に記載の試薬である。
【0013】
また本発明の第五の態様は、緩衝液がクエン酸緩衝液である、前記第一から第四の態様のいずれかに記載の試薬である。
【0014】
さらに本発明の第六の態様は、前記第一から第五の態様のいずれかに記載の試薬とS−アデノシルホモシステインを認識する抗体とを含む、試料中に含まれるホモシステインを測定するための試薬である。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の試薬は、還元剤を含む緩衝液に抗酸化剤をさらに含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の試薬に含まれる還元剤としては、タンパク質の還元剤として当業者が通常用いるものの中から適宜選択すればよく、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、メルカプトエタノールが例示できる。
【0018】
本発明の試薬に含まれる抗酸化剤としては、還元作用を有する化合物であればよく、ガラクトース、グルコース、キシロース、マルトースなどの還元糖、システイン、システイン酸、グルタチオンが例示できる。その中でも還元糖が好ましく、特にガラクトースが好ましい。
【0019】
本発明の試薬は、試料中のホモシステインを測定するための前処理試薬である。前述したように、S−アデノシルホモシステインを認識する抗体(抗S−アデノシルホモシステイン抗体)を用いた免疫測定法により、試料中のホモシステインを測定するには、
(1)試料(例えば血液)中に含まれるタンパク質またはアミノ酸と結合状態にある酸化型ホモシステインを還元剤で処理することで、遊離型ホモシステインに変換し、
(2)遊離型ホモシステインを、アデノシンの共存下、ホモシステインをアデノシル化する酵素で処理することで、S−アデノシルホモシステインに変換する、
前処理が必要となる。本発明の試薬は少なくとも前記(1)の前処理を行なうための試薬であるが、本発明の試薬を前記(1)および(2)の前処理を同時に行なえる試薬とすると、試薬構成を簡素化できる点で好ましい。前記(1)および(2)の前処理を同時に行なえる試薬とするには、還元剤および抗酸化剤の他に、基質であるアデノシンおよびホモシステインをアデノシル化するための酵素をさらに含んでいればよい。ホモシステインをアデノシル化するための酵素としてはS−アデノシルホモシステイン加水分解酵素が例示できる。またホモシステインをアデノシル化するための酵素として、コラーゲンペプチドなど前記酵素を含むタンパク質を用いてもよい。アデノシンの量は逆反応が生じない範囲で適宜決定すればよいが、通常は0.04mol/Lから0.2mol/Lの範囲である。
【0020】
本発明の試薬における緩衝液は、前記(2)の前処理で使用するホモシステインをアデノシル化するための酵素の至適pHである、pH6からpH8の範囲で緩衝能を有する緩衝液の中から使用する還元剤に応じて適宜選択すればよい。例えば還元剤としてTCEPを用いる場合は、クエン酸緩衝液、ビス−トリス緩衝液、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液が好ましい緩衝液として例示でき、中でもクエン酸緩衝液が特に好ましい。
【0021】
本発明の試薬は、還元剤の安定性に影響を与えない範囲で他の成分を含んでもよい。例えば微生物の繁殖を防止する防腐剤、脂溶性成分の分散・可溶化のための界面活性化剤があげられる。本発明の試薬にさらに含んでもよい防腐剤としては、アジ化ナトリウム、キレート剤、抗生物質、防菌剤、防黴剤が例示できる。本発明の試薬にさらに含んでもよい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性化剤が例示できる。前記成分は、その使用目的に合わせて、必要に応じて随時溶液中に含ませればよく、その濃度についても、あらかじめ種々濃度を共存させる予備的な試験を実施した結果、所望の効果を達成し得る濃度を決定すればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の試薬は、試料中に含まれるタンパク質またはアミノ酸と結合状態にある酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための試薬であって、還元剤を含む緩衝液に抗酸化剤をさらに含むことを特徴としている。よって、溶液状態であっても凍結乾燥状態であっても、抗酸化剤を含まない従来の試薬と比較し、還元剤の活性をより安定化させることができ、結果として、試料中に含まれるホモシステインの測定値の再現性を向上させることができる。
【0023】
なお本発明の試薬に、アデノシンおよびホモシステインをアデノシル化する酵素をさらに含むことで、試料中に含まれる酸化型ホモシステインの遊離型ホモシステインへの変換、および前記遊離型ホモシステインのS−アデノシルホモシステインへの変換を、同時に行なうことができるため、好ましい。
【0024】
また本発明の試薬は、還元剤を緩衝液に溶解し、さらに抗酸化剤(好ましくは、抗酸化剤、アデノシンおよびホモシステインをアデノシル化する酵素)を添加する操作で製造することができるため、試薬の製造に要する時間が短くすみ、かつ製造に多大なコストを要することもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1の結果を示す図である。
図2】実施例2の結果を示す図である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0027】
実施例1 ホモシステイン測定用前処理試薬の評価
(1)下記に示す8種類の溶液(溶液Aから溶液H)を調製し、それぞれガラス製バイアルに分注した。
【0028】
溶液A:
4mmol/Lのトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む20
mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH6.0)+0.08mmol/Lのアデノシ

溶液B:溶液Aに0.5mmol/Lのガラクトースを添加した溶液
溶液C:溶液Aに0.5mmol/Lのグルコースを添加した溶液
溶液D:溶液Aに0.5mmol/Lのキシロースを添加した溶液
溶液E:溶液Aに0.5mmol/Lのマルトースを添加した溶液
溶液F:溶液Aに0.5mmol/Lのシステインを添加した溶液
溶液G:溶液Aに0.5mmol/Lのシステイン酸を添加した溶液
溶液H:溶液Aに0.5mmol/Lのグルタチオンを添加した溶液
(2)各溶液に対し、35℃で13日間放置する、促進劣化試験を実施した。
(3)促進劣化試験後の還元剤溶液中に残存するTCEP量は、5,5’−Dithiobis(2−nitrobenzoic acid)(DTNB)溶液に前記還元剤溶液を添加し、前記還元剤溶液中に残存するTCEPによってDTNBが還元されて生成される5−Mercapto−2−nitrobenzoic acidの、412nmでの吸光度を測定することで定量した。あらかじめ濃度既知のTCEP溶液(3種類)を添加したDTNB溶液の吸光度測定結果から検量線を作成し、それに基づきTCEPの残存量を算出した。
【0029】
結果を図1に示す。溶液Aでの結果と溶液BからHでの結果との比較から、TCEPを含む緩衝液に、抗酸化剤をさらに添加することで、TCEPが有する還元能の低下を防止することができることがわかる。つまり、還元剤を含む緩衝液からなる、酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための試薬において、抗酸化剤をさらに含ませることで、前記試薬をより安定に保存することができる。なお還元糖(溶液BからE)を抗酸化剤として用いると、前記試薬をさらに安定に保存することができ、その中でもガラクトース(溶液B)を用いたときが、前記試薬を最も安定に保存できることがわかる。
【0030】
実施例2 ホモシステイン測定用前処理試薬の評価
(1)下記に示す6種類の溶液(溶液A、溶液B、溶液IからL)を調製し、それぞれガラス製バイアルに分注した。
【0031】
溶液A:実施例1(1)で調製した溶液A
溶液B:実施例1(1)で調製した溶液B
溶液I:
4mmol/LのTCEPを含む20mmol/LのMES(2−(N−モルホリ
ノ)エタンスルホン酸)緩衝液(pH6.0)+0.8mmol/Lのアデノシン
溶液J:溶液Iに0.5mmol/Lのガラクトースを添加した溶液
溶液K:
4mmol/LのTCEPを含む20mmol/Lのビス−トリス緩衝液(pH
6.5)+0.08mmol/Lのアデノシン
溶液L:溶液Kに0.5mmol/Lのガラクトースを添加した溶液
(2)各溶液に対し、35℃で13日間放置する、促進劣化試験を実施した。
(3)実施例1(3)と同様な方法で残存TCEP量を算出した。
【0032】
結果を図2に示す。溶液AとB、溶液IとJ、溶液KとL、それぞれの結果を比較するとわかるように、抗酸化剤であるガラクトースを、還元剤であるTCEPを含む緩衝液に添加することで、TCEPが有する還元能の低下を防止することができる。つまり、還元剤を含む緩衝液からなる、酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための試薬において、抗酸化剤をさらに含ませることで、前記試薬をより安定に保存することができる。なお緩衝液としてクエン酸緩衝液を用いると、前記試薬をさらに安定に保存できることがわかる。
【0033】
実施例3 免疫測定による、試料中に含まれるホモシステイン量の測定
血液試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換した上でS−アデノシルホモシステインに変換し、得られたS−アデノシルホモシステインを市販の全自動エンザイムイムノアッセイ装置(商品名:AIA−2000、東ソー製)を用いた1ステップ競合法により測定することで、血液試料中に含まれるホモシステイン量を測定した。詳細を以下に示す。
(1)以下に示す前処理試薬および免疫測定試薬を調製した。
(前処理試薬)
酵素試薬(8kU/LのS−アデノシルホモシステイン加水分解酵素、50
mg/mLのブタ皮由来コラーゲンペプチドおよび50mg/mLのトレハロースを
含む20mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH6.0)の凍結乾燥品)を実施例1
(1)で調製した溶液Aまたは溶液Bで溶解し、得られた試薬
(免疫測定試薬)
S−アデノシル−L−ホモシステインとBSAとの結合物を固定化した直径約2mm
の球状の固相、およびマウス由来抗S−アデノシル−L−ホモシステイン抗体と標識
物質であるアルカリ性ホスファターゼ(ALP)との結合物を含む試薬をプラスチッ
ク製のカップに分注し、凍結乾燥した試薬
(2)血液試料を(1)で作製した前処理試薬に添加し、37℃で10分間撹拌することで前処理を行なった。
(3)前処理後の溶液を(1)で作製した免疫測定試薬に添加し、37℃にて10分間撹拌した。
(4)AIA−2000のB/F(Bound/Free)分離機構によりB/F分離操作を実施し、固相成分としてカップ中に残った成分に含まれる標識物質(ALP)の量を測定することで血液試料中に含まれるホモシステイン量を測定した。なおALPの測定は、その基質である4−メチルウンベリフリルリン酸(4MUP)を加え、ALPによって4MUPが分解されて生成する4−メチルウンベリフェロン(4MU)の増加速度(nmol/L/秒)を4MUからの蛍光強度を測定して算出した。
(5)別途、血液試料中に含まれるホモシステイン量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いて測定し、(4)で測定したホモシステイン量と比較した。
【0034】
血液試料3試料を用いてホモシステイン量を測定した結果を表1に示す。抗酸化剤であるガラクトースを添加した溶液(溶液B)で溶解した前処理試薬を用いても、その後の免疫測定への影響はないことがわかる。
【0035】
また(1)で作製した前処理試薬に対し、35℃で13日間放置する、促進劣化試験を行ない、当該試験後の前処理試薬を用いて同様の免疫測定を実施した。結果を表1に示す。抗酸化剤を含まない溶液(溶液A)で溶解した前処理試薬を用いたときは、促進劣化試験により測定値が5%程度低下した。一方、抗酸化剤であるガラクトースを含む溶液(溶液B)で溶解した前処理試薬を用いたときは、促進劣化試験後であっても測定値の変動はほとんど見られなかった。つまり、還元剤を含む緩衝液からなる、試料中に含まれる酸化型ホモシステインを遊離型ホモシステインに変換するための前処理試薬に、抗酸化剤であるガラクトースをさらに添加することで、還元剤の失活が抑制され、前処理試薬が安定化し、結果として、抗S−アデノシルホモシステイン抗体を用いた、試料中に含まれるホモシステインの測定を安定かつ再現性よく実施できることがわかる。
【0036】
【表1】
図1
図2