(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともpn接合が形成された半導体基板と、該半導体基板の少なくとも片面上に櫛歯状に形成された複数のフィンガー電極と、上記フィンガー電極の長手方向に対して直交して配置され該フィンガー電極の端部以外の部分と接続されるバスバー電極と、上記フィンガー電極のうち、少なくとも一部の隣接又は近接するフィンガー電極の端部同士を接続する該フィンガー電極の長手方向の外側に凸となる円弧状又は山形突状の補助電極とを具備する太陽電池の製造方法であって、スクリーン印刷法により、メッシュ材と該メッシュ材に被覆した版膜とを有し、該版膜に櫛歯状のフィンガー電極パターン開口部と、該フィンガー電極パターン開口部の端部以外の部分に該フィンガー電極パターン開口部の長手方向に対して直交して配置されるバスバー電極パターン開口部と、上記フィンガー電極パターン開口部のうち、少なくとも一部の隣接又は近接するフィンガー電極パターン開口部の端部同士を接続する該フィンガー電極パターン開口部の長手方向の外側に凸となる円弧状又は山形突状の補助電極パターン開口部を形成したスクリーン製版を用いて上記半導体基板上に導電性ペーストを印刷して、上記フィンガー電極、バスバー電極及び補助電極を同時に形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来の技術を用いて作製された、一般的な太陽電池セルは、
図1〜
図3に示すように、シリコン等のp型半導体基板100bに、n型となるドーパントを拡散して、n型拡散層101を形成することによりpn接合が形成されている。このn型拡散層101の上には、SiNx膜のような反射防止膜102が形成されている。また、p型半導体基板100bの裏面側(
図1において下側)には、ほぼ全面にアルミニウムペーストが塗布され、焼成することによりBSF(Back Surface Field)層103とアルミニウム電極104が形成される。更に、裏面には集電用としてバスバー電極とよばれる太い電極106として、銀等を含む導電性ペーストが塗布され、焼成することで形成される。一方、受光面側(
図1において上側、反射防止膜102上)には集電用のフィンガー電極107と、フィンガー電極から電流を集めるために形成されたバスバー電極105とよばれる太い電極が、略直角に交わるように櫛形状に配置される。
【0003】
ここで、表面のフィンガー電極107と半導体基板100とのコンタクト抵抗(接触抵抗)と電極の配線抵抗は、太陽電池の変換効率に大きな影響を及ぼし、高効率(低セル直列抵抗、高フィルファクターFF(曲線因子))を得るためには、コンタクト抵抗とフィンガー電極107の配線抵抗の値が十分に低いことが要求される。また、太陽電池の受光面においてはできるだけ多くの光を取り込めるように電極面積を小さくしなければならない。このような高FFを維持したまま短絡電流(Jsc)を向上させるために、フィンガー電極107としては、電極線幅が細く、かつ断面積が大きい、つまり高アスペクト比の電極を形成しなくてはならない。
【0004】
太陽電池の電極形成の方法としては、蒸着法、メッキ法、印刷法等が挙げられるが、高アスペクト比、超細線を形成する手法としては、セルに溝を作ってペーストを充填する方法(特開2006−54374号公報(特許文献1))や、インクジェット法による印刷手法などが開示されている。しかし、前者は基板に溝を作る工程を含むことから基板にダメージを与える可能性があるため好ましくない。後者のインクジェット法は圧力をかけて細いノズルから液滴を噴射する仕組みのため、細線を形成するには適した手法であるが、高さを稼ぐことは難しい。
【0005】
一方、スクリーン印刷法は、印刷パターンの作成が容易なこと、印圧の調節により基板に与えるダメージを最小限にできること、セル1枚あたりの作業速度も早く、低コストで生産性に優れた手法であり、チクソ性の高い導電性ペーストを用いることで、転写された後もその形状が保たれ、高アスペクト比の電極を形成することも可能である。
【0006】
即ち、スクリーン印刷法とは、
図4に示すように、スクリーン製版409上のパターン開口部409cへ充填された印刷ペースト(不図示)が、ヘラ状のスキージ408の移動により被印刷物に転写されることによって、
図5(a)に示すスクリーン製版409に形成したパターン開口部409cと同じパターンを被印刷物上に形成する手法である。また、表面電極材料として、一般に、銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分を配合した導電性ペーストが用いられ、該スクリーン印刷法によりこの導電性ペーストを塗布した後、焼成炉中で高温焼結して表面電極を形成するが、チクソ性の高い導電性ペーストを用いることで、基板上に塗布した後もその形状が保たれ、高アスペクト比の電極を形成できる。
このように、スクリーン印刷法は他の印刷手法に比べ安価で、高アスペクト比の電極を形成するのに適した手法である。
【0007】
しかしながら、上記スクリーン印刷法を用いて細線の印刷を行った場合、フィンガー電極端部が剥離しやすく、変換効率が低下するという問題が発生した。その原因は、フィンガー電極端部の吐出量不足によるものである。即ち、スキージを移動させて印刷するスクリーン印刷機において、フィンガー電極端部までスキージが移動してその印刷動作が終了するとまもなくスキージは上昇を始める。つまり、他の部分に比べてスキージがスクリーン製版を押し付けている時間が短く、そのためにスクリーン製版と被印刷物の接触時間が十分に得られず、吐出量が小さくなってしまう。
【0008】
ここで、導電性ペーストの主成分は金属のため、このような塗布状態の電極を高温で焼結すると、塗布量の多い部分の収縮量が大きく、塗布量の小さい部分が塗布量の多い部分に引張られて電極が浮いてしまい、半導体基板と電極の間に隙間ができてしまう。この隙間により剥離しやすくなったフィンガー電極は、太陽電池を屋外環境に曝露して使用する際に、温度及び湿度の変化に耐えることができず、フィンガー電極が端部から剥離するようになり、発生した電気を取り出すことができなくなり、変換効率が低下してしまった。
【0009】
このような問題を解決するために、特開2006−324504号公報(特許文献2)に記載のような方法が提案されている。これは、フィンガー電極107’端部の電極幅(面積)を大きくして、接着面積を増加させ、接着強度を増加させるものである(
図6)。しかしながら、この方法では、フィンガー電極の端部から剥離することはなくなるが、温度サイクル試験のような温度履歴を経ると、
図6中の領域Bに示すように複数のフィンガー電極107’のうち一部のフィンガー電極107’において断線が発生し、その領域Bにおいて太陽電池で発生した電流を取り出すことができずに出力が低下するという不具合が生じた。
【0010】
上記問題を解決するために、特開2010−239167号公報(特許文献3)では、フィンガー電極107の端部同士を直線状の補助電極108’で接続する方法が提案されている(
図7)。この方法によれば、フィンガー電極107の端部から剥離することがなくなると共に、領域Cに示すような複数のフィンガー電極107の断線が発生しても、補助電極108’を経由させて他方のフィンガー電極107から太陽電池で発生した電流を取り出すことが可能である。
【0011】
しかしながら、この方法では補助電極及びその周辺においてスクリーン印刷による印刷パターンがにじむ等によって受光面積の減少、電極の断線、微細パターンの電極が精細には形成できなくなる等の問題があった。これは以下に記述するようなことが原因となって発生する。
【0012】
即ち、スクリーン印刷で太陽電池の電極を印刷する方法において、一般的には、太陽電池の工程数を減少させるために、フィンガー電極、バスバー電極、補助電極を同時に印刷するようにしており、またフィンガー電極などを細線に凹凸や断線なく、直線状に印刷するためにフィンガー電極の長手方向と印刷方向(スキージ移動方向)が平行になるようにスキージを移動させるようにしている。このとき、バスバー電極や補助電極の長手方向は印刷方向に対して直交するようになることから、印刷刷り終わり方向にペーストがにじみ、太くなる傾向があり、これにより、受光面積が減少し、太陽電池の美観を損ねるようになった。また、前述のように長手方向が印刷方向に直交する細線となるパターン開口部は、ペーストが吐出されにくく、印刷パターンとしてかすれや断線が発生しやすい傾向があった。
【0013】
更に、同じスクリーン製版を用いて印刷を繰り返して行ううちに、フィンガー電極端部に対応するスクリーン製版409の版膜(乳剤層)409bが徐々に剥がれてパターン開口部409cの開口形状がくずれてしまい、精細なパターンの電極が形成できなくなるという問題が発生した。詳しくは、従来の電極パターン(
図2)形成用のフィンガー電極端部付近(領域A)のスクリーン製版409では、
図5(b)に示すように、版膜(乳剤層)409bがフィンガー電極の端部より外側の領域とフィンガー電極間の領域が一枚繋ぎとなってメッシュ材に強固に接着していることから繰り返しの印刷でも剥離しないが、フィンガー電極107の端部同士を直線状の補助電極108’で接続する電極パターン(
図7)のフィンガー電極端部付近(領域D)のスクリーン製版409では、
図8に示すように、フィンガー電極の端部より外側の領域の版膜(乳剤層)409b1とフィンガー電極間の領域の版膜(乳剤層)409b2がつながることなく島状に孤立する状態となり、それぞれのメッシュ材409aと接着する面積が小さく、印刷方向に対して角、特に直角の角となる部分が多いことから、スクリーン印刷の際に導電性ペーストの金属分や半導体基板の凹凸のある硬い部分が版膜(乳剤層)409b1、409b2に押し付けられることにより、版膜(乳剤層)409b1、409b2の角の部分から乳剤が剥離して、パターン開口部409cの開口形状がくずれてしまった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る太陽電池及びその製造方法、並びに太陽電池モジュールについて説明する。ただし、本発明は本実施形態で示された太陽電池及びその製造方法に限られるものではない。
【0020】
本発明に係る太陽電池は、少なくともpn接合が形成された半導体基板と、該半導体基板の少なくとも片面上に櫛歯状に形成された複数のフィンガー電極107と、上記フィンガー電極107の長手方向に対して直交して配置され該フィンガー電極107と接続されるバスバー電極105と、上記フィンガー電極107のうち、少なくとも一部の隣接又は近接するフィンガー電極107の端部同士を接続する該フィンガー電極の長手方向の外側に凸となる円弧状又は山形突状の補助電極108とを具備することを特徴とする(
図9〜
図11)。なお、本発明の太陽電池は、表面の電極パターンに特徴を有し、それ以外の構成は例えば
図1に示す通りである。
【0021】
ここで、補助電極108は、フィンガー電極107の長手方向に直交する直線形状ではなく、接続する2本のフィンガー電極107の間で該フィンガー電極の長手方向の外側に凸となる曲線形状を有することが好ましい。即ち、補助電極108は、少なくともフィンガー電極107との接続角度(補助電極108とフィンガー電極107の成す角の角度)が直角でなく、隣接又は近接する2本のフィンガー電極107の端部間を円弧状(アーチ状)、短い線分の組合せからなる山形突状(擬似円弧状)に接続するものである。
【0022】
また、補助電極108の線幅は、フィンガー電極107の線幅以上であって、バスバー電極105の線幅未満であることが好ましい。具体的には、好ましくは40μm以上500μm未満であり、より好ましくは40μm以上100μm未満である。後述するように、フィンガー電極107に凹凸やにじみがないようにスクリーン印刷するために、一般的には印刷方向をフィンガー電極107の長手方向に対して平行にして印刷する方法を取るが、このような印刷手法においては、補助電極108全体としての長手方向は印刷方向に対して直交する方向となるため、線幅が40μm未満になるとペーストが吐出しにくくなり、適正な形状の補助電極が印刷できないというおそれがある。また、補助電極107の線幅がバスバー電極105の線幅以上となると、受光面積を減少させ、太陽電池の変換効率を低下させてしまうおそれがある。
【0023】
図9〜
図11に、本発明の太陽電池の構成例を示す。
図9は、本発明に係る太陽電池の表面の電極パターンの構成例(1)である。
本構成例は、
図9に示すように、フィンガー電極107の両端それぞれの全てのフィンガー電極107の隣接する端部同士が補助電極108で接続されている。また、補助電極108は、隣接する2本のフィンガー電極107の端部間を円弧状(アーチ状)の電極線で接続している。
【0024】
図10は、本発明に係る太陽電池の表面の電極パターンの構成例(2)である。
本構成例は、
図10に示すように、
図9の構成における補助電極108を一部間引いた構成となっており、フィンガー電極107の両端それぞれにおいて、複数のフィンガー電極107が1本でつながるように、その隣接する端部同士が補助電極108で接続されている。
図10では、17本全てのフィンガー電極107が補助電極108により電気的に1本につながるように接続されている。なお、補助電極108は、隣接する2本のフィンガー電極107の端部間を円弧状(アーチ状)の電極線で接続している。
【0025】
図11は、本発明に係る太陽電池の表面の電極パターンの構成例(3)である。
本構成例は、
図11に示すように、フィンガー電極107の両端それぞれにおいて、複数のフィンガー電極107が1本でつながるように、その近接する端部同士が補助電極108で接続されている。
図11では、3本又は4本のフィンガー電極107がそれぞれ補助電極108により電気的に1本につながるように接続されている。なお、補助電極108は、1本のフィンガー電極107を挟んで近接する2本のフィンガー電極107の端部間を山形突状の電極線で接続している。
【0026】
以上の電極パターンとすることにより、次のような効果が得られる。
まず第1に、たとえ温度サイクル試験のような温度履歴を経ることにより、一部のフィンガー電極107が断線しても、断線したフィンガー電極107の端部が補助電極108により他のフィンガー電極107の端部に接続されていることから、該他のフィンガー電極107を経由させて電流を取り出すことができるため、電力損失がない。第2に、フィンガー電極107端部に補助電極108が接続されているので、該フィンガー電極107の端部において半導体基板との接触面積が大きくなっており、フィンガー電極107端部の接着強度が向上し、長期の使用にもフィンガー電極107の剥離を防止することができる。また第3に、焼成時の熱収縮によりフィンガー電極107端部が半導体基板から剥離することを防止できる。第4に、補助電極108により配線抵抗が減少し、曲線因子が増加して変換効率が向上する。第5に、補助電極108を設けることによって、受光面積の減少に伴うJscの損失と曲線因子の増加が相殺されるため、高い変換効率を維持することができる。なお、
図10や
図11の構成例では補助電極108を間引いても、受光面積増加による短絡電流の増加と、配線抵抗の増加による曲線因子の低下が相殺されるために、高い変換効率を維持したまま、コスト削減することができる。
【0027】
次に、本発明に係る太陽電池の製造方法について説明する。なお、本発明は下記の製造方法に限定されるものではない。
【0028】
(基板の用意)
まず、一般的なワイヤーソーによるインゴット結晶のスライスを行って、基板厚が100〜200μmのp型半導体基板100bを用意する。このp型半導体基板100bは、例えば高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素をドープしたものである。シリコン単結晶はチョクラルスキー(CZ)法及びフロートゾーン(FZ)法のいずれの方法によって作製されていても構わない。該p型半導体基板100bの比抵抗は例えば0.1〜20Ω・cmが好ましく、0.1〜5.0Ω・cmがより好ましく、0.5〜2.0Ω・cmが更に好ましい。p型半導体基板100bの比抵抗が0.1Ω・cm未満、20Ω・cm超となると、高い性能の太陽電池を作るのに不適となる。
【0029】
(ダメージエッチング)
次に、p型半導体基板100bを水酸化ナトリウム水溶液に浸し、ダメージ層をエッチングで取り除く。この基板のダメージ除去は、水酸化カリウム等の強アルカリ水溶液を用いても構わない。また、フッ酸と硝酸の混酸等の酸水溶液でも同様の目的を達成することが可能である。
【0030】
(テクスチャ形成)
引き続き、基板表面にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に10〜30分程度浸漬することで容易に作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0031】
(洗浄)
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
【0032】
(pn接合形成)
次に、熱処理によりこの基板の受光面にn型拡散層101を形成する。具体的には、オキシ塩化リン(POCl
3)ガス雰囲気下で熱処理を行うことでn型拡散層101を受光面に形成する。一般的なシリコン太陽電池は、PN接合を受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、拡散前に裏面にSiO
2膜やSiNx膜等を拡散マスクとして形成して、裏面にpn接合ができないような工夫を施す必要がある。なお、上記の熱処理工程でのドーパント拡散は、気相拡散法だけでなく、ドーパントを含む塗布剤を用いる塗布拡散法を用いてもよい。
【0033】
(接合分離)
次に、プラスマエッチング装置を用い、接合分離を行う。このプロセスではプラズマやラジカルが基板の受光面や裏面に侵入しないよう、サンプルをスタックし、その状態で端面を数ミクロン削る。これにより、太陽電池にした場合の漏れ電流を防ぐことができる。
その後、基板表面に形成されたガラスをフッ酸などで除去する。
【0034】
(反射防止膜形成)
次に、受光面にシリコン窒化膜の反射防止膜102の形成を行う。詳しくは、プラズマCVD装置を用い、厚さ約100nmのSiNx膜を製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。なお、他の反射防止膜102としては、シリコン酸化膜や、二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜、酸化スズ膜等があり、シリコン窒化膜との代替が可能である。また、形成法も上記以外にリモートプラズマCVD法、コーティング法、真空蒸着法等があるが、経済的な観点から、上記窒化膜をプラズマCVD法によって形成するのが好適である。
【0035】
(裏面電極印刷/乾燥)
次いで、スクリーン印刷法により、基板の裏面側にアルミニウム電極104用ペースト及びバスバー電極106用ペーストを印刷し、乾燥を行う。例えば、上記基板の裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストをバスバー電極形状にスクリーン印刷した後、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストをバスバー電極以外の領域にスクリーン印刷する。これらの印刷後、5〜30分間、700〜800℃の温度で焼成して、裏面電極を形成する。裏面電極形成は印刷法による方が好ましいが、蒸着法、スパッタ法等で作製することも可能である。
【0036】
(表面電極印刷/乾燥)
次に、スクリーン印刷法により、基板の受光面(表面)側にバスバー電極105、フィンガー電極107及び補助電極108用の導電性ペーストを所定パターンでスクリーン印刷して乾燥させる。例えば、上記基板の表面に、銀粉末とガラスフリットと有機物バインダを混合したペーストを、フィンガー電極幅が30〜80μm、フィンガー電極間隔0.5〜4.0mmで設計されたくし型の印刷パターンを有するスクリーン製版を用いて印刷する。本スクリーン印刷工程が本発明の根幹を成すものであり、詳細は後述する。
【0037】
(焼成)
最後に、焼成炉において焼成を行い、基板の裏面側のアルミニウム電極104及びバスバー電極106、受光面側のバスバー電極105、フィンガー電極107及び補助電極108を形成し、本発明の太陽電池を得る。焼成は、例えば大気下、700〜800℃で5〜30分間熱処理することにより行う。なお、基板の裏面側のアルミニウム電極104及びバスバー電極106を形成するための焼成と、受光面側のバスバー電極105、フィンガー電極107及び補助電極108を形成するための焼成を別々に行ってもよい。また、電極焼成時に形成されるBSF層103は、太陽電池の開放電圧の向上に寄与する。
【0038】
次に、本発明の太陽電池の製造方法における基板受光面(表面)の電極形成に用いられるスクリーン印刷法について説明する。
まず、本発明で用いられるスクリーン印刷用のスクリーン製版409は、
図4に示すように、互いに直交する縦糸と横糸とを編み込んだメッシュ材409aに、感光性の乳剤で被覆し、この乳剤を露光により一部除去することによって所望のパターン形状(例えば、電極用であれば略長方形)に開口したパターン開口部409cを有する版膜(乳剤層)409bを形成したものである。
【0039】
スクリーン印刷法では、このスクリーン製版409を被印刷物(ここでは、pn接合及び反射防止膜102を形成した半導体基板)上に配置し、スクリーン製版409上に載せた印刷用のペースト(あるいはインク、不図示)をパターン開口部409c上に塗り広げ、適切な硬度(ゴム硬度;60〜90度)と柔軟性を有するヘラである平型のスキージ(平スキージともいう)408をスクリーン製版409に対して所定の角度(スキージ角度;60〜80度)で傾け、その先端を所定の圧力(印圧;0.2〜0.5MPa)で押し付けた状態で一定方向に所定の移動速度(印刷速度;20〜100mm/sec)で移動させることによって、スクリーン製版409のパターン開口部409cを通してペーストを被印刷物に付着させることを行う。なお、ゴム硬度は、A硬度デュロメーターを用いて測定した値である(JIS K 6253)。
【0040】
詳しくは、スクリーン製版409上でスキージ408を移動させると、ペーストはスキージ408の先端でスクリーン製版409に所定の圧力で押し付けられた状態となり、パターン開口部409cに入り込むとパターン開口部409c内のメッシュ材409aが存在しない開口部を通ってスクリーン製版409の反対側に押し出され、被印刷物に落下して付着するようになる。このとき、被印刷物に付着した直後は、パターン開口部409c内の縦糸と横糸の直下の部分にはペーストは付着しないため、ペースト膜の厚みの不均一な状態であるが、その後、メッシュ材409aの開口部の直下の部分に付着したペーストが被印刷物上を流動するため、均一な厚みで連続した所定パターンのペースト膜となる。
ついで、このペースト膜を乾燥して、スクリーン印刷工程が終了する。
【0041】
このように、スクリーン印刷法は、スクリーン製版409上のペーストが移動するスキージ408によりパターン開口部409cから押し出され被印刷物410に吐出されることによって、スクリーン製版409に形成したパターン開口部409cと同じパターンを被印刷物上に形成する手法である。このスクリーン印刷法を太陽電池の電極形成に用いると、チクソ性の高い導電性ペーストを用いることで、半導体基板(反射防止膜102)上に印刷された後もパターン開口部409cに対応した形状を保ち、高アスペクト比の電極を形成することが可能である。
【0042】
ここで、従来のスクリーン製版(
図5、
図8)では、版膜(乳剤層)409bに、印刷方向に対して角、特に直角となる角がある場合、そのようなスクリーン製版を用いて繰り返し電極印刷を行うと、スクリーン製版の版膜(乳剤層)409bの角から乳剤が徐々に剥がれてパターン開口部409cの開口形状がくずれてしまい、精細なパターンが描けなくなってしまう問題があった。また、
図8のスクリーン製版409では、補助電極108’用のパターン開口部409cにおいて、印刷のかすれや断線、あるいは印刷刷り終わり方向へのペーストのにじみが発生した。
【0043】
発明者は、これらの問題を解決すべく鋭意検討を行い、スクリーン製版のパターン開口部409cの形状により改善できるという知見に基づき、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、前述した太陽電池の製造工程のうち、少なくとも受光面(表面)側の電極形成工程においてスクリーン印刷法を採用するものであって、上記フィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108のパターン(
図9〜
図11)に対応した開口部を有する所定のスクリーン製版(
図12〜
図14)を用いてスクリーン印刷法により半導体基板上に導電性ペーストを印刷して、前述した所定パターンのフィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108を形成することを特徴とするものである。
【0044】
なお、上記フィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108を、スクリーン印刷法により同時に形成することが望ましい。このようにすると、印刷工程を1回とすることができ、コストを削減できるとともに、半導体基板に対して力をかける工程数を少なくすることができるため、割れなどが発生しにくく、歩留りが向上するという利点がある。なおこのとき、フィンガー電極107の長手方向を印刷方向とするとよい。
【0045】
図12〜
図14に、本発明の太陽電池の製造方法で用いるスクリーン製版の開口パターン例を示す。
図12は、
図9に示した電極パターンのフィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108を形成するために用いるスクリーン製版409の例である。
図12に示すように、フィンガー電極の端部より外側の領域の版膜409b1とフィンガー電極間の領域の版膜409b2がつながることなく島状に孤立する状態となっているが、版膜409b1、409b2のいずれもが印刷方向(図中、左右方向)に対して角となる部分がなく、特に版膜409b2の端部は補助電極108用のパターン開口部409c1を形成するために円弧状となっていることから繰り返しの印刷に対して乳剤が剥がれにくい形状となっている。また、補助電極108用のパターン開口部409c1の開口形状は、印刷方向に対して直交する直線形状ではなく、一定の幅を持ち印刷方向に平行となる成分を含む円弧状であることからスクリーン印刷により形成される補助電極108のかすれや断線、並びに印刷刷り終わり方向へのペーストのにじみを抑制することもできる。
【0046】
図13は、
図10に示した電極パターンのフィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108を形成するために用いるスクリーン製版409の例である。
図13に示すように、フィンガー電極の端部より外側の領域の版膜409b1とフィンガー電極間の領域の版膜409b2がつながることなく島状に孤立する部分があるが、版膜409b1、409b2のいずれもが印刷方向(図中、左右方向)に対して角となる部分がなく、特に版膜409b2の端部は補助電極108用のパターン開口部409c1を形成するために円弧状となっていることから繰り返しの印刷に対して乳剤が剥がれにくい形状となっている。また、
図12のパターンよりも補助電極108用のパターン開口部409c1が間引かれていることから一部のフィンガー電極間の領域の版膜がフィンガー電極の端部より外側の領域の版膜409b1とつながっており、その部分はメッシュ材409aとより強固に接着していることから剥がれにくくなっている。更に、補助電極108用のパターン開口部409c1の開口形状は、印刷方向に対して直交する直線形状ではなく、一定の幅を持ち印刷方向に平行となる成分を含む円弧状であることからスクリーン印刷により形成される補助電極108のかすれや断線、並びに印刷刷り終わり方向へのペーストのにじみを抑制することもできる。
【0047】
図14は、
図11に示した電極パターンのフィンガー電極107、バスバー電極105及び補助電極108を形成するために用いるスクリーン製版409の例である。
図14に示すように、フィンガー電極107の端部より外側の領域の版膜409b1とフィンガー電極107間の領域の版膜409b2がつながることなく島状に孤立する部分があるが、版膜409b1、409b2のいずれもが印刷方向(図中、左右方向)に対して少なくとも直角となる部分がなく、特に版膜409b2の端部は補助電極108用のパターン開口部409c1を形成するために山形突状となっていることから繰り返しの印刷に対して乳剤が剥がれにくい形状となっている。また、
図12のパターンよりも補助電極108用のパターン開口部409c1が間引かれていることから一部のフィンガー電極107間の領域の版膜がフィンガー電極107の端部より外側の領域の版膜409b1とつながっており、その部分はメッシュ材409aとより強固に接着していることから剥がれにくくなっている。更に、版膜409b2は、1本のフィンガー電極107を挟んで近接する2本のフィンガー電極107用のパターン開口部と補助電極108用のパターン開口部409c1で囲まれた領域であり、
図12や
図13の版膜409b2よりも広い領域となっていることからメッシュ材409aとより強固に接着して剥がれにくくなっている。また、補助電極108用のパターン開口部409c1の開口形状は、印刷方向に対して直交する直線部分が従来よりも少なく、一定の幅を持ち印刷方向に平行となる成分を含む山形突状であることからスクリーン印刷により形成される補助電極108のかすれや断線、並びに印刷刷り終わり方向へのペーストのにじみを抑制することもできる。
【0048】
このように、受光面上にフィンガー電極及びバスバー電極を有する太陽電池の製造方法において、前述のようにスクリーン製版の開口パターンを一般的な太陽電池のパターンとして大幅に変更することなく、一部変更することのみにより、従来のスクリーン印刷法のままで太陽電池の製造コストを増加させることなく、変換効率を維持したまま、長期信頼性の高い太陽電池を製造することができる。なお、本発明は太陽電池の裏面側にフィンガー電極及びバスバー電極を形成する場合、即ち両面受光型太陽電池の場合にも適用可能である。
【0049】
本発明の効果は、太陽電池モジュールとしても十分得られる。
即ち、太陽電池そのものは、屋外環境に曝されると、温度、湿度、圧力などにより、集電電極にダメージが加えられ、変換効率が低下してしまう。また、ごみなど光を透過しない異物が受光面に付着すると、太陽光を取り込むことができず、著しく変換効率が低下してしまう。そのため、従来より、白板強化ガラスなどの透明な表面側カバー/エチレンビニルアセテート(EVA)などの充填剤/太陽電池/EVAなどの充填剤/ポリエチレンテレフタラート(PET)などの樹脂フィルムからなる耐候性の裏面側カバーの順に積層した状態で加熱圧着することによって、変換効率の低下をできる限り防ぐように構成された太陽電池モジュールとしている。しかしながら、このような太陽電池モジュールであっても、長年厳しい屋外環境に曝されると、徐々に変換効率が低下する傾向がある。その中でも、特に電極は、水分によって腐食したり、水分によって金属粒子が溶出するなどして、半導体基板との接着性が弱くなり、剥離してしまう場合があった。
本発明の太陽電池を用いれば、フィンガー電極端部の接着強度が増加するため、上記のような問題を解決することが可能である。
【0050】
本発明に係る太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池を用いるものであって、複数の太陽電池それぞれのバスバー電極に配線材(インターコネクタ201)を半田付けすることにより該複数の太陽電池を電気的に接続する構成とするものである。
図15、
図16に、本発明の太陽電池モジュールを構成する基本構成を示す。ここでは、本発明の太陽電池100の表裏面のバスバー電極105、106それぞれに半田202を介してインターコネクタ201を接続した構成を示している。
【0051】
本発明の太陽電池モジュールは、このような構成の複数の太陽電池100を受光面を同一方向に向けた状態でバスバー電極105の長さ方向に沿って配置し、一つの太陽電池100の表面のバスバー電極105と、この太陽電池100と隣接する他の太陽電池100の裏面のバスバー電極106にインターコネクタ201を接続して得られるものである。なお、太陽電池セルの連結数は通常、2〜60個である。
【0052】
また一般に、太陽電池モジュールでは、太陽電池の表面や裏面を保護する必要があることから、太陽電池モジュール製品としては、上述したインターコネクタ201を備えた複数の太陽電池を、ガラス板等の透明基板と裏面カバー(バックシート)との間に挟んだ構成とする。この場合、例えば、透明基板と裏面カバーとの間に、太陽電池の受光面を透明基板に向けて挟み、光透過率の低下の少ないPVB(ポリビニルブチロール)や、耐湿性に優れたEVA(エチレンビニルアセタート)等の透明な充填材料でインターコネクタ201を備えた複数の太陽電池100を封入し、外部端子を接続したスーパーストレート方式が一般に用いられる。このとき、一方の外部端子には、太陽電池100の裏面バスバー電極106に接続された外部取出しインターコネクタが接続され、もう一方の外部端子には、太陽電池100の表面バスバー電極105に接続された外部取出しインターコネクタが接続される。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例及び比較例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
本発明の有効性を確認するため、以下の工程を半導体基板1000枚について行い、
図1に示す太陽電池100を作製した。
まず、15cm角、厚さ250μm、比抵抗2.0Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}p型アズカットシリコン基板100を用意し、濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去、テクスチャを形成、オキシ塩化リン雰囲気下850℃で熱処理したn型拡散層101を形成し、フッ酸にてリンガラスを除去し、洗浄、乾燥させた。次に、プラズマCVD装置を用い、反射防止膜102としてSiNx膜を製膜し、裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストを裏面バスバー電極106用にバスバー状にスクリーン印刷した後、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストを上記バスバー状に印刷した領域以外の領域にアルミニウム電極104用にスクリーン印刷し、有機溶媒を乾燥して裏面電極を形成した半導体基板を作製した。
次に、この半導体基板上に、銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分とし、添加物として金属酸化物を含有した導電性ペーストを、
図12に示す開口パターンを有するスクリーン製版409を用いて、スキージゴム硬度70度、スキージ角度70度、印圧0.3MPa、印刷速度50mm/secで半導体基板上に形成された反射防止膜102上に塗布した。印刷後、150℃のクリーンオーブンで有機溶媒の乾燥を行ったのち、800℃の空気雰囲気下で焼成して、太陽電池100を得た。
なお、
図12のスクリーン製版409は、ステンレスメッシュの紗張りしたスクリーン材に感光剤(商品名MDX−100、(株)ミノグループ製)を塗布したものについて露光処理により
図12に示す開口パターンを形成したものである。このとき、フィンガー電極107用のパターン開口部409cとして線幅を80μmとし、隣接間隔2.4mmで66本設け、補助電極108用のパターン開口部409cの線幅を90μmとした。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、表面の電極形成用のスクリーン製版409として、
図12に示すものに代えて、
図13に示すスクリーン製版409として、それ以外は実施例1と同様にして太陽電池100を作製した。
なお、
図13のスクリーン製版409において、フィンガー電極107用のパターン開口部409cとして線幅を80μmとし、隣接間隔2.4mmで66本設け、補助電極108用のパターン開口部409cの線幅を90μmとした。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、表面の電極形成用のスクリーン製版409として、
図12に示すものに代えて、
図5に示すスクリーン製版409として、それ以外は実施例1と同様にして比較用の太陽電池を作製した。
なお、
図5のスクリーン製版409において、フィンガー電極107用のパターン開口部409cとして線幅を80μmとし、隣接間隔2.4mmで66本設けた。
【0057】
[比較例2]
実施例1において、表面の電極形成用のスクリーン製版409として、
図12に示すものに代えて、
図8に示すスクリーン製版409として、それ以外は実施例1と同様にして比較用の太陽電池(
図7)を作製した。
なお、
図8のスクリーン製版409において、フィンガー電極107用のパターン開口部409cとして線幅を80μmとし、隣接間隔2.4mmで66本設け、補助電極108’用のパターン開口部の線幅を90μmとした。
【0058】
以上のように作製した太陽電池3000枚について、次の評価を行った。
(1)電気的特性
太陽電池の電気的特性の測定として、ソーラーシミュレーター(山下電装株式会社製、型式YSS−160A)を用いて、ソーラーシミュレーターの光(基板温度25℃、照射強度:1kW/m
2、スペクトル:AM1.5グローバル)を太陽電池サンプルに照射して、該太陽電池サンプルの電流−電圧特性を測定し、測定結果から曲線因子、電流密度、変換効率を求めた。なお、測定値は太陽電池1000枚の平均値として求めた。
(2)乳剤剥がれ
使用後のスクリーン製版の版膜を光学顕微鏡により50倍に拡大して観察し、乳剤の剥がれの有無を確認した。このとき、乳剤の剥がれの状態として、形成される電極の形状が明らかにくずれる程度に影響がある状態のものを剥がれ有とし、その影響のないものを剥がれ無とした。
(3)端部の剥離
太陽電池1000枚から無作為に10枚を抜き取り、それらのフィンガー電極端部を光学顕微鏡で観察し、フィンガー電極端部の剥離有無を確認した。このとき、太陽電池1枚当りのフィンガー電極端部は132箇所あり、全端部箇所に対する剥離発生箇所の割合を求めた。
【0059】
以上の表結果を表1に示す。
実施例1、2では、曲線因子が飛躍的に向上した。これは、フィンガー電極の端部同士を接続したことにより、配線抵抗が減少したこと、スクリーン製版の乳剤剥がれがなくなったことでパターン太りがなくなったこと、更に断線が無くなったことなどの理由による。
比較例1では、スクリーン製版における乳剤剥がれやフィンガー電極端部の剥離が観察されたが、実施例1、2ではいずれも確認されなかった。
【表1】
【0060】
[実施例3]
次に、実施例1、2及び比較例1で作製した太陽電池を用いて下記要領でモジュール化した。
幅が2mmで厚さが0.2mmの直線状のインターコネクタ201を用いて、
図15、
図16に示すように、インターコネクタ201とバスバー電極105を接続する箇所に、予めフラックスを塗布し、インターコネクタ201と太陽電池の受光面のバスバー電極105を半田で接続した。また、太陽電池の裏面側のバスバー電極106にも同様にインターコネクタ201をハンダ付けした。
次に、白板強化ガラス/エチレンビニルアセテート(EVA)/配線材料を取り付けた太陽電池100/EVA/ポリエチレンテレフタラート(PET)の順に積層し、周囲を真空にしたあと、150℃の温度で10分間加熱圧着したのち、150℃で1時間加熱することにより完全に硬化させた。ここでは、4個の太陽電池をお互いにインターコネクタ201で接続して封止した。
以上の工程を経て、太陽電池モジュールを製造した。
【0061】
実施例1、2及び比較例1の太陽電池を用いて作製した太陽電池モジュールそれぞれに対し、温度サイクル試験(JIS C8917)を行い、試験前後での太陽電池モジュールの出力比較を行った。温度サイクル試験では、JIS C8917規格に準拠する条件下で400サイクルの試験を行った。また、太陽電池モジュールの出力は上記ソーラーシミュレーターにより、AM1.5、100mW/cm
2の光照射下で測定し、出力低下率(=(試験後出力/試験前出力)×100(%))を求めた。
【0062】
その結果、温度サイクル400サイクル後に、比較例1の太陽電池を用いた太陽電池モジュールでは出力が77%に低下した。一方、実施例1の太陽電池を用いた太陽電池モジュールの出力低下率は99%、実施例2の太陽電池を用いた太陽電池モジュールの出力低下率は97%となり、いずれも出力低下は認められなかった。
以上のように、従来のスクリーン製版で作製した太陽電池ではフィンガー電極端部が剥離して、出力を長期に亘って維持できなかったが、本発明ではスクリーン製版の印刷パターンの軽微な変更で、工程数を増やすことなく、また変換効率を減少させることなく、高い長期信頼性を有する太陽電池を製造することができた。