(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象である透明平板の上方に配置された直線的なパターンの延在方向に対して光軸が直角となるように配置されて、前記透明平板の表面と裏面による前記パターンの2つの反射点群を撮像することにより前記延在方向と直角な方向に分離された2つの反射像を含む画像を生成する撮像部と、
前記透明平板と前記パターンと前記撮像部との位置関係を用いて、前記透明平板の表面における前記パターンの表面反射点群を前記画像から推定する表面反射点群推定部と、
前記透明平板と前記パターンと前記撮像部との位置関係を用いて、推定された前記表面反射点群の位置における前記透明平板の表面の傾斜角度を算出する傾斜角度演算部と、
算出された前記傾斜角度に基づいて前記2つの反射像の分離された方向と直角な方向の前記透明平板の表面の形状を決定する表面形状決定部と、
を備えた形状測定装置。
前記傾斜角度演算部は、前記パターンから前記表面反射点群へ向かう入射光の入射角と前記表面反射点群の位置から前記撮像部へ向かう反射光の反射角が等しいという条件に基づいて前記傾斜角度を算出する請求項1に記載の形状測定装置。
測定対象である透明平板の上方に配置された直線的なパターンの延在方向に対して光軸が直角となるように配置された撮像部により、前記透明平板の表面と裏面による前記パターンの2つの反射点群を撮像して前記延在方向と直角な方向に分離された2つの反射像を含む画像を生成する工程と、
前記透明平板と前記パターンと前記撮像部との位置関係を用いて、前記透明平板の表面における前記パターンの表面反射点群を前記画像から推定する工程と、
前記透明平板と前記パターンと前記撮像部との位置関係を用いて、推定された前記表面反射点群の位置における前記透明平板の表面の傾斜角度を算出する工程と、
算出された前記傾斜角度に基づいて前記2つの反射像の分離された方向と直角な方向の前記透明平板の表面の形状を決定する工程と、
を含む形状測定方法。
前記傾斜角度を算出する工程は、前記パターンから前記表面反射点群へ向かう入射光の入射角と前記表面反射点群の位置から前記撮像部へ向かう反射光の反射角が等しいという条件に基づいて前記傾斜角度を算出する請求項6に記載の形状測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による透明平板の表面形状の測定方法を示す図である。
【0013】
測定対象である透明平板3は、例えばガラス板(後述する
図10のガラスリボン204)であり、
図1において、この透明平板3は、図中に示すy方向へ不図示の搬送装置により搬送される。
【0014】
透明平板3の上方(図中z方向)には、パターン部材4が設置されている。このパターン部材4のある1つの面上には、ドットX
1,X
2,X
3,…が一方向に直線的に並んだパターンXが設けられている。パターン部材4は、各ドットX
1,X
2,X
3,…の並んだ方向が図中のx方向(搬送方向と直角かつ透明平板3の表面に平行な方向)と平行になり、かつパターンXの設けられた面が透明平板3の側へ少し傾いた状態となるようにして、配置されている。これにより、透明平板3の表面M1には、搬送方向と直角な方向に延在する形でパターンXの反射点群Aが形成されている。
【0015】
また、透明平板3の上方には、カメラ(エリアカメラ)2が設置されている。このカメラ2は、その光軸が反射点群Aの延在方向に対し直角な方向を向き、かつ撮像画像内にパターンの反射像が収まる状態となるようにして、配置されている。なお、パターン部材4およびカメラ2の位置と向きは固定である。
【0016】
本実施形態では、このように配置されたカメラ2を用いてパターンXの反射像を含む画像を撮像し、得られた画像に基づいて、透明平板3の表面M1の形状を測定する。但し、本実施形態において、透明平板3表面の高さH(平均的な高さ)は既知であり、測定すべき表面形状とは、透明平板3の表面M1上に存在する微小なうねり等であるものとする。
【0017】
ここで、
図1に示した透明平板3とパターン部材4とカメラ2の位置関係において、パターン部材4のパターンXは、透明平板3の裏面M2における反射点群Bで反射しカメラ2にて撮像される。
図2は、カメラ2によって撮像される画像Gの一例を示した図である。
図1におけるカメラ2の位置関係から、
図1のy方向は
図2の画像Gの下方向に対応し、
図1のx方向は
図2の画像Gの左方向に対応している。
図1の例では、
図2に示されるように、カメラ2においては、この反射点群Bによる反射像bは透明平板3の表面M1における反射点群Aによる反射像aに対してy軸正方向(カメラ2に近い側)へずれた位置に分離された状態で撮像される。その位置ずれ量はパターン部材4の設置位置や透明平板3の厚さtにより決まるが、パターンXを構成している各ドットのサイズが充分に小さければ、反射点群Aによる反射像のラインと反射点群Bによる反射像のラインは明瞭に分離することが可能である。
例えば、透明平板3とパターン部材4とカメラ2の位置関係及びパターンXの各ドットのサイズは
図3に示す関係により決定される。
図3は、カメラ2から透明平板3を撮像した場合の光線経路を示す図であり、
図1における横方向(x方向)から見た図である。板厚tの透明平板3の上方に、カメラ2と、パターンXを有するパターン部材4が配置されている。パターンXの延在方向に直交する方向の各ドットの長さはPである。
以下、カメラ2に到達する光線を逆光線追跡した、すなわちカメラ2から透明平板3を臨む視線LXとしてカメラ側から光線経路を追跡した場合を説明する。
図3は、カメラ2の視線(直線LX)が、入射角φ
1と同じ角度で透明平板3の表面M1で反射して光線経路LYの方向に進み、パターンXの端部に到達した例である。このとき、表面M1での反射点においては、カメラ2の視線LXが、屈折角φ
2で透明平板3の内部に屈折した後に裏面M2にて反射し、表面M1にて再び屈折して光線経路LZの方向に進み、パターン部材4に到達する。これは、カメラの視線LXがパターン部材4の表面において距離Q離れた2箇所に到達していることを示している。すなわち、パターンXが透明平板3の表裏面で反射した反射像をカメラ2で撮像する場合に置き換えると、パターンXの裏面M2の反射による反射像bが、表面M1の反射による反射像aに対して距離Qずれた位置に生成されることを意味する。なお、距離Qは、以下の式(1)から算出される。
Q=2t・cosφ
1・tanφ
2 (1)
ここで、入射角φ
1と屈折角φ
2は、透明平板3の屈折率をnとして、以下の式(2)の関係にある。
sinφ
1=n・sinφ
2 (2)
図2において、反射点群A、Bによる反射像a,bを分離する、すなわち表面M1の反射による反射像aの各ドットに、裏面M2の反射による反射像bの各ドットが重ならないようにする条件はg>0である。これを
図3の関係で説明すると、各ドットの長さPが距離Qより小さく(P<Q)なるように、透明平板3とパターン部材4とカメラ2の位置関係及びパターンXの各ドットのサイズを決定することになる。例えば各ドットの長さPを調整する場合には以下の式(3)を満たすように設定すればよい。
P<2t・cosφ
1・tanφ
2 (3)
なお、パターンXはドットに限定されず、パターンXの延在方向に直交する方向の長さPが上記条件を満足する範囲で適宜設定されてよい。
【0018】
図4は、反射点群Aと透明平板3の表面M1の形状との関係を示す図であり、
図1における各構成要素の位置関係を横(x方向)から見た様子を表している。
図2および
図4を参照して、画像Gから透明平板3の表面M1の形状を求める方法を説明する。
【0019】
図4において、反射点群Aは透明平板3の表面M1上に存在するが、その位置(図中における左右方向の位置)は、画像G(
図2)内の反射点群Aによる反射像aの位置(
図2中のy方向の位置)から知ることができる。
【0020】
すなわち、反射像aを含むある画像Gが得られたとき、透明平板3の表面M1上の反射点群Aはカメラ2から画像G内の反射像aの方向を臨んだ視線(
図4の直線LA)上に存在しているから、この視線(直線LA)と透明平板3の表面M1とが交わる位置が、透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置である。ある基準面M(床等)から透明平板3の表面M1までの高さHは一定であるものとすれば、上記により透明平板3の表面M1上における反射点群Aの位置を特定可能である。
【0021】
なお、
図2に示されるように、画像G内には透明平板3の表面M1における反射点群Aによる反射像aのラインと透明平板3の裏面M2における反射点群Bによる反射像bのラインが存在しているが、上述したように、
図1に示される各構成要素の位置関係から、画像G中の2つのラインのうち上側(
図2中のy軸負方向側)のラインが、反射像aに対応するラインである。
【0022】
さて、上記のように透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置が特定されると、
図4におけるパターンXとカメラ2と反射点群Aのそれぞれの位置関係から、透明平板3の表面M1のうち反射点群Aの部分の形状を次のようにして求めることができる。
【0023】
すなわち、
図4に示されるように、パターン部材4のパターンXを発した光(直線LCで示す)は、透明平板3の表面M1上において反射点群Aの位置で反射されて、カメラ2へ向かう。反射光の光路は直線LAである。ここで、透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置が決まると入射光LCと反射光LAが決まり、さらに、反射点群Aの位置へ入射する入射光LCの入射角φと反射点群Aの位置から反射される反射光LAの反射角φが等しいという条件から、反射点群Aの位置における反射面S1が定まる。
【0024】
この反射面S1が、反射点群Aの位置における透明平板3の表面M1を構成する微小平面である。換言すると、反射点群Aの位置における透明平板3の局所表面は、
図4の反射面S1と同じ傾斜角度を有している。こうして、反射点群Aの位置について、透明平板3の表面M1の形状(傾斜角度)が求められたことになる。
【0025】
図2の反射点群Aによる反射像a中の各点について同様の処理を行うことにより、反射点群A上の各点の位置における透明平板3の表面M1の形状を求めることができる。また、透明平板3がy方向に搬送されるのに併せて同様の処理を連続して行うことにより、透明平板3の表面M1全面の形状を求めることができる。
【0026】
図5は、上述した透明平板の表面形状の測定方法を実施するための形状測定装置の構成を示す図である。
【0027】
図5において、形状測定装置は、撮像部11とコンピュータ10を備えている。撮像部11は、上述の
図1,
図4に示したカメラ2である。コンピュータ10は、画像取得部12と表面反射点群推定部13と傾斜角度演算部14と表面形状決定部15と記憶部16を備えている。なお、記憶部16を除くコンピュータ10の各部12〜15は、ROM等に記憶された所定のコンピュータプログラムをCPUが実行することによって、その各機能が実現されるものである。
【0028】
画像取得部12は、撮像部11から画像G(
図2)を取得する。画像Gは1枚だけでもよいし、透明平板3の搬送に併せて連続して撮像した複数枚の画像Gを用いてもよい。1枚の画像Gからは、以下説明する各部の処理により、x軸(
図1)に平行なある一断面における透明平板3の表面M1の形状を求めることができる。また、連続した複数枚の画像Gを用いた場合には、透明平板3の表面M1のある広がりを持った範囲における表面形状を求めることができる。
【0029】
表面反射点群推定部13は、画像Gに含まれている、透明平板3の表面M1によるパターンXの反射点群Aによる反射像aを画像Gから検出する。具体的には、まず表面反射点群推定部13は、画像認識処理等の周知の画像処理手法を用いて、画像Gから反射像aと反射像b(2本のライン)を検出する。上述したように、この2本のラインのうちいずれが反射像aであるのかは、透明平板3とパターン部材4とカメラ2の位置関係により決まり、既知である。記憶部16には、どちらが反射像aであるかを示す、この既知の情報が記憶されている。そして表面反射点群推定部13は、当該情報を用いて、上記検出した反射像aと反射像bの2本のラインから反射像aを検出する。
【0030】
傾斜角度演算部14は、画像Gから検出された反射像aに基づいて、透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置における透明平板3の表面M1の傾斜角度を演算する。具体的な演算手順は次のとおりである。
【0031】
まず、傾斜角度演算部14は、反射像aの画像G中における縦方向(y方向)位置を求める。そして、傾斜角度演算部14は、この縦方向位置から、透明平板3の表面M1上に存在している反射点群Aの位置を求める。表面M1上の反射点群Aの位置を求めるには、上述したように、
図4の直線LAと透明平板3の表面M1が交わる位置を幾何学的計算により求めればよい。あるいは、予め、画像Gにおける縦方向位置と透明平板3の表面M1上の位置との対応関係を、カメラ2と透明平板3の相対的配置に基づいてテーブル化しておき、このテーブルを用いることにより、画像Gにおける縦方向位置から透明平板3の表面M1上の位置を求めるようにしてもよい。上記の幾何学的計算に必要なカメラ2等の配置に関する情報や上記のテーブルは記憶部16に記憶されており、傾斜角度演算部14は、これらを用いて上記の処理を行う。
【0032】
次に、傾斜角度演算部14は、上記のように求めた透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置における、パターンXからの入射光LCとカメラ2への反射光LAの各光路(
図4参照)を求める。そして、傾斜角度演算部14は、入射光LCを反射光LAの方向に反射する反射面S1(入射光LCの入射角φ=反射光LAの反射角φとなる反射面)(
図4参照)を求めて、求めた反射面S1の傾斜角度を算出する。この傾斜角度が、透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置における透明平板3の表面M1の傾斜角度であり、傾斜角度演算部14の演算結果である。
【0033】
ここで、入射光LC、反射光LA、および反射面S1をそれぞれ求めるには、
図4に示される各構成要素の位置関係を用いて幾何学的計算を行えばよい。また、予め、透明平板3の表面M1上の反射点群Aの位置と反射面S1の傾斜角度との対応関係を、カメラ2と透明平板3とパターン部材4(パターンX)の三者間の相対的配置に基づいてテーブル化しておき、このテーブルを用いることでそれぞれを求めるようにしてもよい。上記の幾何学的計算に必要なカメラ2等の配置に関する情報や上記のテーブルは記憶部16に記憶されており、傾斜角度演算部14は、これらを用いて上記の処理を行う。
【0034】
傾斜角度演算部14は、以上の各演算手順による処理を、反射点群Aの各点(例えば、パターンXを構成している全てのドットに対応する反射点)について行う。
【0035】
表面形状決定部15は、傾斜角度演算部14により求められた透明平板3の表面M1の傾斜角度に基づいて、透明平板3の表面M1の形状を決定する。画像取得部12で取得した1枚の画像Gだけを用いた場合、x軸(
図1)に平行な一断面における透明平板3の表面M1の形状が決定される。また、透明平板3の搬送に併せて連続して撮像された複数枚の画像Gを用いた場合には、透明平板3の表面M1のある広がりを持った範囲における形状が決定される。例えば、この形状測定を常時連続的に行うことで、
図10に示されるガラスリボン204の表面のうねり等を、ガラスリボンの長さ方向全体にわたって監視することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する点を除いては、第2の実施形態は第1の実施形態と同じである。
図6は、パターン部材4’に設けられたパターンおよびカメラ2によって撮像される画像G’を示した図である。
【0037】
パターン部材4’は、多数のドットが一方向(図中左右方向)に直線的に並んだ3列のパターンX(1),X(2),X(3)を有している。このようなパターン部材4’を用いると、画像G’には、透明平板3の表面M1による各パターンX(1),X(2),X(3)それぞれの反射点群Aによる反射像a(1),a(2),a(3)と、透明平板3の裏面M2による各パターンX(1),X(2),X(3)それぞれの反射点群Bによる反射像b(1),b(2),b(3)の合計6本のラインが出現する。3列のパターンX(1),X(2),X(3)の間隔を適宜設定することで、画像G’中で各反射像を分離可能である。また、これら6本のラインのうち、どれが特定のパターン(例えばパターンX(1))の透明平板3の表面M1による反射像であるかは、第1の実施形態と同様に、
図1に示される各構成要素の位置関係から知ることが可能である。
【0038】
本構成によれば、例えば透明平板3の表面M1にゴミが付着している等により画像G’中のある反射像が不鮮明であったとしても、他の鮮明な反射像を用いることで、透明平板3の表面M1の形状を測定することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する点を除いては、第3の実施形態は第1の実施形態と同じである。
第1の実施形態では基準面Mから透明平板3の表面M1までの高さHは既知であったが、第3の実施形態では、透明平板3の表面M1の高さHが未知であっても透明平板3の表面M1の形状測定を可能とする。
【0040】
図7は、パターン部材4”に設けられたパターンおよびカメラ2によって撮像される画像G”を示した図である。
パターン部材4”は、多数のドットが一方向(図中左右方向)に直線的に並んだパターンXと、パターンXを構成する1つのドットXSの近傍に配置されたマーカXMとを有している。このようなパターン部材4”を用いると、画像G”には、透明平板3の表面M1および裏面M2それぞれによるパターンXの反射点群Aおよび反射点群Bによる反射像a,bに加えて、マーカXMの反射像も取得できる。
【0041】
本実施形態では、透明平板3の表面M1の未知の高さHを、マーカXMとドットXSの反射像を利用して求める。透明平板3の表面M1の高さHが求められると、あとは第1の実施形態と同様にして、パターンXの反射像を利用して透明平板3の表面M1の形状を求めることができる。
【0042】
以下、マーカXMとドットXSの反射像を利用して透明平板3の表面M1の高さHを求める方法を、
図8および
図9を参照して説明する。
【0043】
まず、ドットXSに着目する。パターン部材4”上のドットXS(
図8参照)を発した光は、透明平板3の表面M1で反射されて、画像G”内の反射像AS(
図7参照)を形成する。このとき、透明平板3の表面M1の高さHが未知であるため、透明平板3の表面M1上の真の反射点は一意に定まらない(反射点は、カメラ2から見て画像G”内の反射像ASの方向を向いた直線LS上のどこかにある)。
図8では、高さHが異なる3つの反射点の候補A
1(1),A
1(2),A
1(3)を示している。各反射点群A
1(1),A
1(2),A
1(3)の高さを、それぞれH
1,H
2,H
3(H
1<H
2<H
3)とする。
【0044】
ここで、高さH
1の反射点群A
1(1)を仮定した場合、この反射点群A
1(1)における透明平板3の(仮定上の)接平面は、パターン部材4”上のドットXSを発して反射点群A
1(1)へ入射する光を直線LSに沿ってカメラ2の方向へ反射させる反射面S
1と等しい傾斜角θ
1(1)を有しているはずである。反射点群A
1(2)又はA
1(3)を仮定した場合のこれら反射点における透明平板3の(仮定上の)各接平面も、同様に、それぞれ対応する反射面S
2,S
3と等しい傾斜角θ
1(2),θ
1(3)を有している。
【0045】
このとき、反射点が高いほど(即ち、A
1(1)よりA
1(2)の方が、更にA
1(2)よりA
1(3)の方が)パターン部材4”上のドットXSから各反射面S
1,S
2,S
3への入射角が浅くなるため、θ
1(1)<θ
1(2)<θ
1(3)の関係が成り立っている(ここでは傾斜角を、図中に示すx軸負方向と各反射面の図中上側を向く法線とのなす角度で定義するものとする)。この関係を
図9のグラフに曲線C
1として表した。このように、傾斜角θ
1(n)は反射点の高さH
nの関数となっている。但し、上述したとおり、真の反射点がこの曲線C
1上のどの点に対応するものであるかは、一意に定めることができない。
【0046】
次に、マーカXMに着目する。ドットXSと同様に、パターン部材4”上のマーカXMを発した光をカメラ2へ向けて反射する透明平板3の表面M1上の反射点は、カメラ2から見て画像G”内の反射像AMの方向を向いた直線LM上のどこかに存在している(一意に定まらない)。
【0047】
さて、次に、先述した各反射点の候補A
1(1),A
1(2),A
1(3),…を通る上記の(仮定上の)各接平面(反射面S
1,S
2,S
3,…)が、直線LMと交わる交点群A
2(1),A
2(2),A
2(3),…に着目する。ドットXSとマーカXMがパターン部材4”上の近傍の点であるから、各点群A
1(n)とこれに対応する点群A
2(n)も近傍の点である(n=1,2,…)。
【0048】
ここで、透明平板3の表面M1の形状の変化が十分に緩やかであるという前提を設けることにする。すると、透明平板3の表面M1上の互いに近傍の2点において、これら2点のそれぞれを通る各接平面は、同一の平面と見做すことができる。
【0049】
したがって、上記反射点の候補のうちある点群A
1(k)が透明平板3の表面M1上の真の反射点であるならば、この点群A
1(k)を通る透明平板3の接平面(反射面S
k)上に存在する点群A
2(k)もまた、透明平板3の表面M1上の点であることになる。そして、この点群A
2(k)を反射点としてパターン部材4”上のマーカXMからの光を直線LMに沿ってカメラ2の方向へ反射する反射面S
k’を考えると、当該反射面(即ち点群A
2(k)における透明平板3の接平面)は、点群A
1(k)における透明平板3の接平面(反射面S
k)に一致することになり、その傾斜角θ
2(k)は、傾斜角θ
1(k)と等しいはずであることが分かる。
図8では、点群A
1(2)が透明平板3の表面M1上の真の反射点である状況が描かれている。
【0050】
一方、透明平板3の表面M1上の真の反射点でない点群A
1(j)(但し、j≠kであり、
図8では点群A
1(1)とA
1(3)が相当する)については、この点群A
1(j)を通る(仮定上の)透明平板3の接平面(反射面S
j)上に存在する点群A
2(j)は透明平板3の表面M1上の点ではなく、この点群A
2(j)でパターン部材4”上のマーカXMからの光を直線LMに沿ってカメラ2の方向へ反射する反射面の傾斜角θ
2(j)は、傾斜角θ
1(j)と異なることになる。
【0051】
そこで、ドットXSに対応する反射点候補A
1(1),A
1(2),A
1(3),…を通る(仮定上の)各接平面(反射面S
1,S
2,S
3,…)とマーカXMにより決まる直線LMとの上述の各交点群A
2(1),A
2(2),A
2(3),…について、それぞれ(仮定上の)接平面(反射面S
1’,S
2’,S
3’,…)の傾斜角θ
2(1),θ
2(2),θ
2(3),…を求め、θ
2(k)=θ
1(k)となるような反射点候補A
1(k)を見つければ、その反射点群A
1(k)が真の反射点であり、当該反射点における傾斜角θ
1(k)と高さH
kが求められたことになる。
【0052】
図9のグラフに、上述した曲線C
1に加えて、上記の各交点群A
2(n)の高さH’
nと各交点群A
2(n)における接平面の傾斜角θ
2(n)の関係を表す曲線C
2が表されている。このグラフにおいて、θ
1(n)の値とθ
2(n)の値が等しくなる点群A
1(2)が、透明平板3の表面M1上の真の反射点である。
【0053】
以上のようにして、透明平板3の表面M1の高さH=H
kが求められたので、あとは、第1の実施形態と同様にして、この高さHを用いて透明平板3の表面M1の形状を求めることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
以下、ガラス板の製造ラインにおける本発明の適用例について説明する。
図10は、
図5に示した形状測定装置を適用したガラス板の製造ラインの概略説明図である。
図10に示す製造ラインにおけるガラス板の製造方法は、ガラス原材料を溶融して溶融ガラスを得る溶融工程と、前記溶融ガラスを連続した板状のガラスリボンに成形する成形工程と、前記ガラスリボンを移動させながら徐々に冷却する徐冷工程と、ガラスリボンの表面形状を測定する形状測定工程と、ガラスリボンを切断する切断工程と、前記測定工程で得られたガラスリボンの表面形状に基づいて前記徐冷工程での徐冷条件を制御する制御工程と、を有する。
図11に、ガラス板の製造方法の工程を示す。
【0055】
具体的には、ガラス板の製造工程の中で、本発明の形状測定方法で得られるガラスリボンの表面形状のデータから、ガラスリボンのそりが大きいと判断された場合には、そのそりの大きさ、箇所を考慮して、徐冷工程での徐冷条件、例えば冷却速度条件、冷却温度条件を変更する。これによって、そりによる形状不良やそりによる割れを防止し、歩留り良くガラス板を製造できる。
【0056】
成形工程には、フロート法、ロールアウト法、ダウンドロー法、フュージョン法など種々のものがあり、本発明はこれらのうちいずれか、あるいはその他の方法を適宜用いることができる。
図10の例では、フロート法を用いる場合を例に説明をする。
【0057】
溶融工程(
図11のS1)では、珪砂、石灰石、ソーダ灰等の原材料をガラス製品の組成に合わせて調合し混合したバッチを溶融窯に投入し、ガラスの種類に応じて約1400℃以上の温度に加熱溶融して溶融ガラスを得る。例えば、溶融窯の一端から溶融窯内へバッチを投入し、重油を燃焼して得られる火炎あるいは天然ガスを空気と混合して燃焼して得られる火炎をこのバッチに吹きつけて、約1550℃以上の温度に加熱してバッチを溶かすことによって溶融ガラスを得る。また、電気溶融炉を用いて溶融ガラスを得てもよい。
【0058】
成形工程(
図11のS2)では、溶融工程で得られた溶融ガラスを溶融窯下流部201から溶融錫浴203へと導入し、溶融錫202上に溶融ガラスを浮かせて図中の搬送方向に進行させることによって連続した板状のガラスリボン204(透明平板3に相当する)とする。このとき、所定の板厚のガラスリボン204を成形するために、ガラスリボン204の両サイド部分に回転するロール(トップロール205)を押圧し、ガラスリボン204を幅方向(搬送方向に直角な方向)外側に引き伸ばす。
【0059】
徐冷工程(
図11のS3)では、上記成形されたガラスリボン204をリフトアウトロール208によって溶融錫浴203から引き出し、このガラスリボン204を、金属ロール209を用いて徐冷炉210内で図中の搬送方向に移動させて、ガラスリボン204の温度を徐々に冷却し、引き続き徐冷炉210から出て切断工程に至る間でさらに常温近くまで冷却させる。徐冷炉210は、燃焼ガスや電気ヒータによって制御された熱量を供給して徐冷を行うための機構を炉内の必要位置に備えている。徐冷炉210から出た段階のガラスリボン204の温度は、ガラスリボン204のガラスの歪点以下の温度となっており、ガラスの種類にもよるが通常は150〜250℃まで冷却されている。この徐冷工程は、ガラスリボン204内部の残留応力を取り除くことと、ガラスリボン204の温度を下げる目的で実施される。徐冷工程において、ガラスリボン204は測定部211(
図5の形状測定装置に相当する)を通り、さらにその後ガラスリボン切断部212まで搬送される。ガラスリボン切断部212において常温近くまで徐冷されたガラスリボン204が切断される(切断工程)。なお、ガラスリボン切断部212におけるガラスリボンの温度は、その場所の雰囲気温度〜50℃であることが通例である。
【0060】
測定工程(
図11のS4)におけるガラスリボン204の撮影位置(すなわち、測定部211の位置)は、ガラスリボン204の温度がそのガラスの歪点以下の温度にある位置である。通常、測定部211は、徐冷炉210のガラスリボン出口から搬送方向下流の位置に設けられ、さらにガラスリボン204の温度が200℃以下にある位置に設けられることが好ましい。また、測定部211は、切断工程の直前に設けることもできるが、測定工程から得られるデータを切断工程に反映させる場合には、ガラスリボン204の移動速度にもよるが、切断位置から30cm以上、特に1m以上離れた位置に測定部211を設けることが好ましい。
【0061】
制御工程(
図11のS5)では、測定工程で得られたガラスリボン204の表面形状に基づいて、徐冷炉210内の徐冷条件を演算する制御手段(図示省略)を利用する。この制御手段により、徐冷炉210に受け渡される徐冷条件の指令に応じて、徐冷炉210内に設置してある燃焼ガスや電気ヒータなどの条件を変更する。これにより、ガラスリボン204に部分的に与えるエネルギー、あるいは与えるエネルギーの速度を変えて、反り等の変形を抑制する制御ができる。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0063】
本出願を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2010年6月15日出願の日本特許出願(特願2010-136510)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。