【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギーイノベーションプログラム・革新的ガラス溶融プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の成分からなるガラス原料を造粒してなるガラス原料粒子を用い、このガラス原料粒子を、酸素燃焼炎を用いて形成した加熱気相雰囲気中に送ることにより加熱溶融させ、前記ガラス原料粒子を溶融して溶融ガラス粒子とする際、前記ガラス原料粒子をヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方と酸素燃焼炎形成用の燃料ガスとともに前記加熱気相雰囲気中に送り、前記溶融ガラス原料粒子の周囲に前記ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させることを特徴とするガラス原料の溶融方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の気中溶融法により製造されるガラスは、従来のシーメンス窯によるバッチ式の溶融法に比較すると溶融ガラス中に含まれる泡を少なくできる利点を有する。ここでいうバッチ式の溶融法とは、各ガラス原料を混合したものを、先に溶融したガラス融液面上に投入し、それが塊(バッチ山、batch pileともいう。)となったものをバーナーなどによって加熱し、その塊の表面から融解が進み、徐々にガラス融液となるものである。従来のバッチ式の溶融法であると、硫酸塩、ハロゲン化物、Sb、As化合物などの清澄剤を添加し、泡の除去を行うことが必須とされているが、気中溶融法によれば泡の少ないガラス製品(本明細書において、泡の少ないガラス製品を泡品質の高いガラス製品ともいう。)を得ることが可能であるため、清澄剤を特に添加しなくとも泡品質の高いガラス製品を得ることが可能であると考えられる。
【0009】
しかし、近年要求される高付加価値化ガラス、例えば、より泡品質の高いガラス製品を製造するにあたり、気中溶融後のガラスに対し更に高い清澄効果も望まれる。従来から使用されている硝酸塩、ハロゲン化物、Sb、As酸化物などの清澄剤を気中溶融法で用いるガラス原料に仮に混合したとしても気相雰囲気中でガラス原料とともにこれら清澄剤の大部分が揮発する恐れがあり、溶融後において清澄効果を十分に発揮することが難しい場合があると考えられる。また、Sb、As酸化物は比較的揮発しにくいが毒性があり、環境面からその使用は控えるべきである。よって、気中溶融法により得られるガラスであっても、より泡品質の高いガラスを製造できる技術の登場が望まれている。
【0010】
また、液晶表示装置用ガラス基板にあっては、従来よりも高温熱処理耐性に優れたガラス基板が必要とされている。例えば、液晶を駆動するためのスイッチング素子がアモルファスシリコン(a−Si)型のTFT(薄膜トランジスタ)からポリシリコン型のTFTとされ、更にこれらよりも高速のスイッチング素子の導入も検討されている。しかし、高速のスイッチング素子ほど素子形成時の熱処理温度が高くなる傾向があるため、液晶表示装置用ガラス基板には更に高温の熱処理に耐えること、例えば、トランジスタ回路を形成する過程で700℃を超える高温度で熱処理しても変形と歪が生じ難い、歪点の高いガラスが要求されている。
【0011】
このような背景から本発明者らは、表示装置用途などのガラス基板について高い熱処理温度に耐える組成のものを研究開発している。しかし、ガラス基板の耐熱性を向上するために組成を吟味して開発すると、耐熱性は向上するものの、ガラス原料が難溶性となってしまうことがある。また、ガラスの組成によっては現状のガラスよりも溶融時に更に泡を生じ易く、泡が抜けにくい問題を生じることもある。従って、これまでのガラスよりも難溶性のガラスあるいは泡を生じ易く、泡が抜けにくいガラスであっても、支障なく溶融することができ、より泡品質の高いガラスを製造できる技術の登場が望まれている。
【0012】
以上のような背景から本発明は、省エネルギー操業が可能な気中溶融法によりガラス原料粒子を溶融して溶融ガラス粒子とする際、泡が少なく泡品質が高いガラスを得ようとする技術の提供を目的とする。また、本発明は、泡が少なく泡品質が高いとともに、700℃を超える歪点を示すガラス製品を実現する技術の提供を目的とする。
さらに、本発明は、気中溶融法に限らず、高温の気相雰囲気でガラス原料粒子を溶融する溶融法に対して、泡が少なく泡品質が高いガラスを得ようとする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るガラス原料の溶融方法は、複数の成分からなるガラス原料を造粒してなるガラス原料粒子を用い、このガラス原料粒子を、酸素燃焼炎を用いて形成した加熱気相雰囲気中に送ることにより加熱溶融させ、前記ガラス原料粒子を溶融して溶融ガラス粒子とする際、前記ガラス原料粒子をヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方と
酸素燃焼炎形成用の燃料ガスとともに前記加熱気相雰囲気中に送り、前記溶融ガラス原料粒子の周囲に前記ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させることを特徴とする。
本発明において、前記ガラス原料粒子を少なくとも1300℃以上に加熱することができる。
本発明において、前記溶融後のガラス組成が700℃を超える歪点を示すようにすることができる。
【0014】
本発明において、溶融後のガラス組成を酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:61.5〜66.0%、Al
2O
3:19〜24%、B
2O
3:0〜1.2%、MgO:3〜8%、CaO:0〜7%、SrO:0〜9%、BaO:0〜1%未満、MgO+CaO+SrO+BaO:10〜19%であり、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない組成とすることができる。この組成は、難溶融性のガラスを気中溶融する場合の組成として好ましい。
【0015】
本発明において、前記ガラス原料粒子を前記ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方と酸素燃焼炎形成用の燃料ガスとともに加熱気相雰囲気に送ることができる。
本発明において、前記ガラス原料粒子とガラスカレット微粉とを混合して加熱気相雰囲気に送ることができる。
【0016】
本発明に係る溶融ガラスの製造方法は、先のいずれかに記載のガラス原料の溶融方法を用いて前記ガラス原料粒子を加熱気相雰囲気中で溶融ガラス粒子とすることにより溶融ガラスとし該溶融ガラスを貯留することを特徴とする。
本発明に係るガラスビーズの製造方法は、先のいずれかに記載のガラス原料の溶融方法を用いて前記ガラス原料粒子を加熱気相雰囲気中で溶融ガラス粒子とした後、冷却することによりガラスビーズとすることを特徴とする。
本発明に係るガラス製品の製造方法は、先のいずれかに記載のガラス原料の溶融方法を用いて前記ガラス原料粒子を加熱して溶融ガラスとするガラス溶融工程と、該溶融ガラスを成形する工程と、成形後のガラスを徐冷する工程を含むことを特徴とする。
本発明において、前記したガラス原料粒子を溶融ガラスとするガラス溶融工程が、前記ガラス原料粒子を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とする工程と、前記溶融ガラス粒子を集積してガラス融液とする工程と、を含むこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガラス原料粒子及びそれが溶融した溶融ガラス粒子の周囲にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させつつ、高温の気相雰囲気中でガラス原料粒子を溶融させるので、気中溶融法に限らず、泡の少ない泡品質の高い溶融ガラスを得ることができる。
本発明によれば、ガラス原料粒子及びそれが溶融した溶融ガラス粒子の周囲にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させつつ気中溶融法によりガラス原料粒子を溶融させるので、シーメンス窯を用いてバッチ式で溶融ガラスを得る製造方法よりも遙かに省エネルギー操業が可能な気中溶融法を用いて、さらに泡の少ない泡品質の高い溶融ガラスを得ることができる。具体的には、ガラス原料粒子をヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方の存在下で気中溶融するならば、ヘリウムおよび/またはネオンが溶融ガラス粒子に、より一層効率よく取り込まれ、その清澄効果によって泡の少ない泡品質の高い溶融ガラスを得ることができる。
加熱気相雰囲気として、熱プラズマアークおよび/または酸素燃焼炎を適用することにより、ガラス原料粒子を効率良く確実に溶融させて溶融ガラス粒子とすることができる。
加熱気相雰囲気においてガラス原料粒子を溶融させて溶融ガラス粒子とした後、冷却することで、泡の少ない泡品質の高いガラスビーズを得ることができる。
【0020】
本発明の気中溶融装置によれば、ガラス原料粒子と溶融ガラス粒子の周囲にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させつつ、気中溶融法によりガラス原料粒子を溶融できるので、シーメンス窯を用いてガラス原料から溶融ガラスを得る製造方法よりも遙かに省エネルギー操業ができ、泡の少ない泡品質の高い溶融ガラスを得ることができる。
本発明のガラスビーズの製造方法によれば、ガラス原料粒子の周囲にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を存在させる気中溶融法により得られ、内部にヘリウムおよび/またはネオンを含んでいるので、ヘリウムおよび/またはネオンの清澄効果により泡の少ない泡品質の高いガラスビーズを得ることができる。
本発明のガラス製品の製造方法によれば、本発明のガラス原料の溶融方法及び溶融ガラスの製造方法によって、泡の少ない泡品質の高いガラス製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス原料の溶融方法、溶融ガラスの製造方法、ガラスビーズの製造方法、ガラス製品の製造、および気中溶融装置の好ましい一実施形態について説明する。なお、本発明のガラス原料粒子の溶融法は、以下に説明する気中溶融法の各実施形態に制限されるものではなく、ガラス原料粒子を高温の気相雰囲気中で溶融した場合で、同様の効果が得られる限りは本発明の範囲である。
本発明においては、後述するガラス原料粒子を高温の加熱気相雰囲気中で加熱し溶融ガラス粒子とした後、溶融ガラスを製造する。ガラス原料粒子を加熱するための加熱気相雰囲気としては、ガラス原料粒子を溶融しうるものであれば特に制限されず、各種の加熱手段を使用できるが、好適には移送式直流プラズマ、非移送式直流プラズマ、多相プラズマ、高周波誘導プラズマ等の熱プラズマアーク、および酸水素炎、天然ガス−酸素燃焼炎等の酸素燃焼炎、などの少なくとも一つが使用できる。これらの中でも、効率が高く、大出力が得やすく、設備費が比較的安価で、大気圧下での加熱を行なうことができ、技術的に確立され、長時間安定的に使用できるという理由から、特に、酸水素炎あるいは天然ガス−酸素燃焼炎の酸素燃焼炎および熱プラズマアークの少なくとも一種の加熱手段を使用することが好ましい。
【0023】
図1と
図2は本発明に係るガラス原料の溶融方法のうち、酸素燃焼炎または熱プラズマアークを用いる気中溶融装置を用いて溶融ガラスを製造している状態の一例を示す説明図である。
図1を基に以下に説明する気中溶融法を実施するための気中溶融装置の一例として、本実施形態の気中溶融装置1は、ガラス原料粒子2を噴出するとともに酸素燃焼炎3aを形成するために下向きに配置された、ガラス原料粒子を溶融する造粒体溶融バーナー(原料加熱部)3と、この造粒体溶融バーナー3の噴射方向先端側(
図1、
図2では下方側)に順次設けられた加熱気相雰囲気形成領域5および溶融ガラスGの貯留部6と、前記加熱気相雰囲気形成領域5を取り囲むように設置された複数本のアーク電極7とを備えて構成されている。
【0024】
図1に示す気中溶融装置1は、実際には
図2に示す如き中空箱型の炉体8を有してなり、炉体8の天井部8Aを貫通するように造粒体溶融バーナー3が取り付けられ、この造粒体溶融バーナー3に対して原料供給部9から供給管10を介して後述するガラス原料粒子2を供給できるように構成されている。また、気中溶融装置1は、原料供給部9に接続されたガス供給源(供給部)11から原料供給部9にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を送り、これらのガスを、キャリアガスとして酸素または空気とともにガラス原料粒子2を造粒体溶融バーナー3に供給できるように構成されている。なお、
図1においては気中溶融法を説明するために気中溶融装置1の主要部分とガラス原料粒子2を主として示している。
【0025】
前記炉体8の内部において造粒体溶融バーナー3の下方側に加熱気相雰囲気形成領域5が形成されるとともに、この加熱気相雰囲気形成領域5を取り囲む炉体8の側壁を斜め方向下向きに貫通した複数のアーク電極7(
図1の例では4本)が配置され、各アーク電極7の先端部が加熱気相雰囲気形成領域5の周囲を取り囲むように配置されている。また、前記造粒体溶融バーナー3が後述の如く酸素燃焼炎3aを発生させることで加熱気相雰囲気4を生成できるようになっている。また、アーク電極7が放電することで炉体8の中心部に熱プラズマアークによる加熱気相雰囲気4を生成できるようになっている。ここで用いる加熱気相雰囲気4については、造粒体溶融バーナー3による酸素燃焼炎3aあるいはアーク電極7の放電による熱プラズマアークのいずれか、あるいは、両方を用いて形成してもよい。
前記炉体8の底部側は、溶融ガラスGの貯留部6とされており、炉体8の側壁底部側に形成された排出口12を介して炉体8から溶融ガラスGを外部に排出できるように構成されている。なお、炉体8から溶融ガラスGを排出する方向の下流側には、一例として、成形装置14などが接続され、形成した溶融ガラスGを成形装置14により目的の形状に成形してガラス製品を得ることができるように構成されている。なお、泡品質によっては、成形装置14の前に、減圧脱泡装置を設ける場合もありうる。
【0026】
本実施形態において炉体8に設けられる造粒体溶融バーナー3は、燃料ガスと燃焼用ガスが供給され、酸素燃焼炎3aを発生でき、キャリアガスによりガラス原料粒子2を噴出できるように構成されたものであれば具体的構造は特に問わないが、具体的構造の一例を
図3に示す。
図3に示す実施形態の造粒体溶融バーナー3は、ガラス原料粒子2を通過させる供給路21を有した筒型のノズル本体22と、このノズル本体22の周囲を取り囲むように配置された被覆管23と、この被覆管23の周囲を囲むように配置された外管24とからなる3重構造とされている。そして、ノズル本体22と被覆管23との間の流路が燃料ガス供給路25とされ、被覆管23と外管24との間の流路が燃焼用ガス供給路26とされている。
図3においてノズル本体22の出口側には造粒体分散板27が設けられている。
本実施形態の造粒体溶融バーナー3において、プロパン、ブタン、メタン、LPGなどの燃料ガスが
図3の矢印28に示す如く燃料ガス供給路25に導入され、O
2ガスなどの燃焼用ガスが
図3の矢印29に示す如く燃焼用ガス供給路26に導入される。また、上述のガラス原料粒子2が、ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方からなるキャリアガスガス、またはかかるガスと酸素、または空気を含むキャリアガスとともに搬送されてノズル本体22に供給される。そして、造粒体溶融バーナー3の先端から噴射される酸素燃焼炎3aとともに、ガラス原料粒子2を吹き出すことができる。本実施形態で使用される加熱気相雰囲気4の中心部の温度は、燃焼炎3aが例えば水素酸素燃焼炎の場合は、約2000〜3000℃であり、熱プラズマアークの場合は、5000〜20000℃である。
【0027】
本実施形態の気中溶融装置1を用いて製造する溶融ガラスGは、気中溶融法により製造できるガラスである限り、組成的には制約されない。従って、ソーダライムガラス、混合アルカリ系ガラス、ホウケイ酸ガラス、あるいは、無アルカリガラスのいずれであってもよい。
【0028】
建築用または車両用の板ガラスに使用されるソーダライムガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:65〜75%、Al
2O
3:0〜3%、CaO:5〜15%、MgO:0〜15%、Na
2O:10〜20%、K
2O:0〜3%、Li
2O:0〜5%、Fe
2O
3:0〜3%、TiO
2:0〜5%、CeO
2:0〜3%、BaO:0〜5%、SrO:0〜5%、B
2O
3:0〜5%、ZnO:0〜5%、ZrO
2:0〜5%、SnO
2:0〜3%、SO
3:0〜0.5%、という組成を有することが好ましい。
【0029】
液晶ディスプレイ用の基板に使用される無アルカリガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:39〜75%、Al
2O
3:3〜27%、B
2O
3:0〜20%、MgO:0〜13%、CaO:0〜17%、SrO:0〜20%、BaO:0〜30%、という組成を有することが好ましい。
【0030】
プラズマディスプレイ用の基板に使用される混合アルカリ系ガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:50〜75%、Al
2O
3:0〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:6〜24%、Na
2O+K
2O:6〜24%、という組成を有することが好ましい。
【0031】
その他の用途として、耐熱容器または理化学用器具等に使用されるホウケイ酸ガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:60〜85%、Al
2O
3:0〜5%、B
2O
3:5〜20%、Na
2O+K
2O:2〜10%、という組成を有することが好ましい。
【0032】
本実施形態の気中溶融装置1を用いて製造する難溶融組成の溶融ガラスは、溶融後のガラス組成を酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:61.5〜66.0%、Al
2O
3:19〜24%、B
2O
3:0〜1.2%、MgO:3〜8%、CaO:0〜7%、SrO:0〜9%、BaO:0〜1%、MgO+CaO+SrO+BaO:10〜19%であり、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない組成とすることができる。上記のガラス組成は、一般的なソーダ石灰ガラスと比較して難溶融ガラスであり、気中溶融方法で、高い効果を奏する。難溶融ガラスは、溶融することが出来ても泡を削減することが難しいが、本実施形態の気中溶融装置を利用すれば、溶融出来るのみならず泡の削減もできるので、好ましい。
【0033】
本実施形態の気中溶融装置1を用いて製造する難溶融組成の溶融ガラスは、溶融後のガラス組成を酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:61.5〜64.0%、Al
2 O
3:20〜23%、B
2 O
3:0〜1%、MgO:3〜8%、CaO:1〜7%、SrO:3〜9%、BaO:0〜1%、MgO+CaO+SrO+BaO:12〜18%であり、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない組成とすることができる。上記のガラス組成は、ディスプレイ用ガラスとしての物性、生産性、その他の観点から、より好ましい。
【0034】
本実施形態の気中溶融装置1を用いて製造する難溶融組成の溶融ガラスは、溶融後のガラス組成を酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:61.5〜64.0%、Al
2 O
3:20〜23%、B
2 O
3:0〜1%、MgO:4〜8%、CaO:2〜6%、SrO:3〜9%、BaO:0〜1%、MgO+CaO+SrO+BaO:13〜18%であり、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない組成とすることができる。上記のガラス組成は、ディスプレイ用ガラスとしての物性、生産性、その他の観点から、とくに好ましい。
【0035】
本実施形態で行う気中溶融法においては、前記いずれかの組成のガラスの原料、例えば上述の各成分の粒子状のガラス原料を目的のガラスの組成比に合わせて混合し、造粒体としたガラス原料粒子2を用意する。
基本的に気中溶融法は、複数(通常3成分以上)の成分から成るガラスを製造するためにガラス原料粒子2を溶融してガラスを製造する方法である。
【0036】
また、例えば、前述のガラス原料粒子2の一例として、無アルカリガラスの一例を適用する場合、珪砂、アルミナ(Al
2O
3)、ホウ酸(H
3BO
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)、ジルコン(ZrSiO
4)、弁柄(Fe
2O
3)、塩化ストロンチウム(SrCl
2)などのガラス原料を目的のガラスの組成比に合致するように調合し、例えばスプレードライ造粒法により30〜1000μm程度の造粒体として、ガラス原料粒子2を得ることができる。
【0037】
前記ガラス原料からガラス原料粒子2を調製する方法としては、スプレードライ造粒法などの方法が使用でき、ガラス原料を分散溶解させた水溶液を高温雰囲気中に噴霧させて乾燥固化させる造粒法が好ましい。また、この造粒体は目的とするガラスの成分組成に対応する混合比の原料のみで構成してもよいが、その造粒体に更に同一組成のガラスカレット微粉を混合して、これをガラス原料粒子と合わせて用いることもできる。
【0038】
スプレードライ造粒によりガラス原料粒子2を得るための方法の一例として、上述の各成分のガラス原料として2μm〜500μmの範囲のガラス原料を蒸留水などの溶媒中に分散してスラリーを構成し、このスラリーをボールミルなどの攪拌装置で所定時間攪拌し、混合し、粉砕することで上述の各成分のガラス原料がほぼ均一に分散されたガラス原料粒子2が得られる。
なお、前述のスラリーを攪拌装置で攪拌する際、ガラス原料の均一分散と造粒原料の強度を向上させる目的で2−アミノエタノール、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダーを混合してから攪拌することが好ましい。
本実施形態において用いるガラス原料粒子2は、上述のスプレードライ造粒法の他に、転動造粒法、攪拌造粒法などの乾式造粒法により形成することもできる。
【0039】
前記ガラス原料粒子2の平均粒径(重量平均)は30〜1000μmが好ましい。より好ましくは、平均粒径(重量平均)が50〜500μmの範囲内のガラス原料粒子2が使用され、さらに70〜300μmの範囲内のガラス原料粒子2が好ましい。このガラス原料粒子2の一例の拡大した
図1の点線の円内に示す。このガラス原料粒子は、1つのガラス原料粒子2において最終目的とするガラスの組成比にほぼ合致するか近似した組成比となっていることが好ましい。
ガラス原料粒子2が溶融した溶融ガラス粒子の平均粒径(重量平均)は、通常ガラス原料粒子の平均粒径の80%程度となることが多い。ガラス原料粒子2の粒径は、短時間で加熱でき、発生ガスの放散が容易である点から、粒子間の組成変動の低減の点から、前述の範囲を選択することが好ましい。
【0040】
また、これらのガラス原料粒子2は、必要に応じて、副原料として清澄剤、着色剤、溶融助剤、乳白剤等を含むことができる。また、これらのガラス原料粒子2中のホウ酸などは、高温時の蒸気圧が比較的高いため加熱により蒸発しやすいことから、最終製品であるガラスの組成よりも余分に混合しておくことができる。
本実施形態において、副原料として清澄剤を含有する場合、塩素(Cl)、イオウ(S)、フッ素(F)の中から1種または2種以上の元素を選択して含む清澄剤を必要量添加することができる。
また、従来から用いられているSb、As酸化物などの清澄剤は、泡削減効果が生じたとしても、これら清澄剤の元素は環境負荷低減の面で望ましくない元素であり、それらの利用は環境負荷低減の方向性から見て削減することが好ましい。
【0041】
本実施形態の気中溶融装置1において、原料供給部9から供給管10を介しヘリウムなどのキャリアガスとともに供給されるガラス原料粒子2は、一例として
図1に示すように、加熱気相雰囲気4中を通過し、加熱され、溶融ガラス粒子Uを形成し、貯留部6に滞留する溶融ガラスG上に降下する。ここで加熱気相雰囲気4中において高熱でガラス原料粒子2が溶融されて溶融ガラス粒子Uとなる場合、ガラス原料粒子2の周囲にヘリウムガスあるいはネオンガスが存在しているが、これらのガスが存在することにより清澄効果が発揮され、生成する溶融ガラス粒子Uの内部に泡が生成し難くなり、泡の少ない溶融ガラス粒子Uを生成できる。
なお、前記ガラス原料粒子を加熱気相雰囲気中で溶融ガラス粒子とするにあたっては、前記ガラス原料粒子を、少なくとも後述するガラス原料粒子にする前のガラス原料であるガラス原料混合物の溶融開始温度以上にすればよい。例えば、後述する実施例で示す難溶融性ガラス組成のガラス原料粒子は、少なくとも1300℃以上に加熱されることが好ましく、さらにガラス原料粒子が加熱気相雰囲気中でその温度に達し溶融するために、ガラス原料粒子の熱容量と加熱気相雰囲気中の滞在時間を考慮して、加熱温度を調整する。
【0042】
本発明では、各ガラス原料を集合して造粒化したガラス原料粒子2の一粒一粒の周りの高温の気相雰囲気にヘリウムガスあるいはネオンガスが存在し、それらのガスの存在下で、ガラス原料粒子2の一粒一粒が短時間で溶融ガラス粒子となるため、これらのガスを効果的に溶融ガラス中に取り込めるものと予想される。
なお、このような現象は、シーメンス窯を含む従来の溶融方法においても、ガラス原料粒子を用いて溶融しても実現可能である。たとえば、シーメンス窯のバッチ式の原料を加熱するバーナーにかえて、ガラス原料粒子を窯に投入し、それがバーナーなどによる気相雰囲気中で溶融できるバーナーとすれば、同様の効果を奏しうる。
しかし、上記した従来のバッチ式の溶融方法によると、比較的大きい各ガラス原料を混合した塊(バッチ山)の表面から融解が進むため、雰囲気に導入したこれらのガスはこの塊の表面の層を通過して溶融ガラスに供給されること、また、この塊の内部の温度、すなわち溶融されるべきガラス原料の温度が低いため、物理的な溶解ガスの溶解度が低い。このため、従来の溶融方法では、本発明のようにヘリウムガスあるいはネオンガスを効果的に溶融ガラス中に取り込めないと予想される。
すなわち、上記したような各原料を単に混合したものを溶融する場合に比べ、あるいは溶融後のガラスにヘリウムガスなどを接触させる場合に比べ、本発明によれば、上記した本発明の特有な方法により、ヘリウムガスあるいはネオンガスをガラス原料粒子の周囲に取り込むことができ、清澄効果を発揮させることができ、泡の少ない溶融ガラス粒子を生成できるという、本発明特有な作用、効果が得られる。
【0043】
また、上述した本発明による気中溶融法により生成した溶融ガラス粒子Uでは、気泡が多少入っていたとしても、その泡径を大きくできるので、さらに溶融する際に泡径の小さな泡よりも除去が容易となる特徴がある。これに対し酸素または空気をキャリアガスとする従来の造粒体溶融バーナーで搬送し、気中溶融して得られる溶融ガラス粒子には、ヘリウムガスあるいはネオンガスを、またはヘリウムガスあるいはネオンガスと酸素または空気を含むガスを、キャリアガスとする本発明の実施形態で生成した溶融ガラスよりも泡径の小さな泡が含まれるようになり、泡の総量自体も多くなる傾向となるので、除去が難しい径の小さな泡が多く含まれる傾向がある。
【0044】
前記ガス供給源11から送出するヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方からなるキャリアガスは、ガラス原料粒子2の周囲に十分に存在する必要があるため、100%ヘリウムガスあるいは100%ネオンガスが好ましい。ただし、ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方からなるキャリアガスは、燃料ガスと燃焼ガスとともに供給されるので、気相雰囲気中での濃度は100%である必要はない。たとえば、後述する実施例からは、これらのガスの体積の搬送ガスの全体積に対する割合は、これらのガスの含有量の増加に伴って清澄の効果が増加し、少なくとも10%以上で有意な効果が認められる。
本発明でのヘリウムガスやネオンガスの導入量は、ガラス原料粒子のサイズ、高温の気相雰囲気へのガラス原料粒子の投入速度、高温の気相雰囲気の領域の大きさ、溶融ガラスの粘性、1日当たりのガラスの溶融量によっても、当然変わるものである。このため、それらの条件に応じて適宜決定されるべきものである。たとえば、後述する実験結果からは、ガラス原料粒子2の溶融時に清澄効果を十分に発生させるため、ガラス原料粒子2の投入速度が70g/分の場合、これらのガスの投入は5L/分以上の量であることが好ましい。この範囲の中でも、10〜100L/分の範囲が好ましい。
また、本発明においては、各ガラス原料粒子の一粒一粒の周りにヘリウムまたはネオンが存在するので、ヘリウムおよびネオンの分圧は高い必要はない。むしろ、雰囲気中の圧力の上限は、これらのガスを利用するコストとの関係により決定されるべきである。
【0045】
なお、ガラス原料粒子2の気中溶融開始時に貯留部6に溶融ガラスGは滞留していないが、加熱気相雰囲気4を通過して降下する溶融ガラス粒子Uは、貯留部に堆積した後も、加熱気相雰囲気4および炉体8からの輻射熱によって加熱され、さらに必要に応じて貯留部6に設けられた補助加熱手段などによって溶融するために望ましい温度に加熱されて溶融し、溶融ガラスGを形成する。なお、この溶融ガラスGとなって貯留部6に滞留している状態において上述の如く溶融ガラス粒子に泡を多少含んでいたとしても、泡を大きくできる。径の大きな泡は貯留部6に滞留中に浮上されて除去され易いので、ガラス製品とするまでの間に径の大きな泡は除去し易い。
【0046】
以後、溶融ガラスGの上に順次降下する加熱された溶融ガラス粒子Uは、溶融ガラスGを形成する。そして、溶融ガラスGは所定の速度で炉体8の排出口12から排出され、さらに高い泡品質が要求される場合は、必要に応じ減圧脱泡装置に導入され、減圧状態で強制的に更に脱泡された後、成形装置14に移送されて目的の形状に成形され、ガラス製品が製造される。
以上のように製造されたガラス製品は、気泡の特に少ない泡品質の高い溶融ガラスGを元に製造されているので、泡の少ない高品質なガラス製品となる。
【0047】
図4は先の実施形態の炉体8に備えられていた造粒体溶融バーナー3の他の実施形態を示す断面図である。この実施形態の造粒体溶融バーナー30は、ガラス原料粒子2とヘリウムガスあるいはネオンガスを通過させるための供給路31aを有した筒型のノズル本体31と、このノズル本体31の外方にノズル本体31を取り囲むように順次配置された第1の外管32と第2の外管33と第3の外管34と第4の外管35と第5の外管36からなる6重管構造とされている。
ノズル本体31と第1の外管32との間に燃料ガス供給路32aが形成され、第1の外管32と第2の外管33との間に1次酸素供給路33aが形成され、第2の外管33と第3の外管34との間に2次酸素供給路34aが形成されている。また、第3の外管34と第4の外管35との間に冷却水路35aが形成され、第4の外管35と第5の外管36との間に冷却水路36aが形成されている。
前記ノズル本体32の先端部にはノズル本体32の先端側を閉じるように拡散板32Aが形成され、拡散板32Aの先方にラッパ型の隔壁37に囲まれて燃焼室37aが形成されている。また、前記拡散板32Aにはノズル本体31と燃焼室37aを連通する原料噴出口32bが形成され、燃焼室37aの隔壁37には、それぞれ燃料ガス供給路32aに連通するための第1噴射口32bと、1次酸素供給路33aに連通するための第2噴射口33bと、2次酸素供給路34aに連通するための第3噴射口34bとがそれぞれ燃焼室37aを取り囲むように複数形成されている。前記冷却水路35a、36aは第3の外管34の先端部手前側と第5の外管36の先端部手前の部分において折り返し状態で接続連通され、冷却水などの冷媒を両水路間で循環できるように構成されている。
【0048】
本実施形態の造粒体溶融バーナー30においても、先の実施形態の造粒体溶融バーナー3と同様に酸素燃焼炎を生成することができ、先の
図2に示す造粒体溶融バーナー3と同様に天井部8Aを貫通するように炉体8に取り付けられ、造粒体溶融バーナー30の先端から先の実施形態と同様、酸素燃焼炎を吹き出しできるようになっている。
【0049】
本実施形態の造粒体溶融バーナー30であっても、燃焼炎からなる加熱気相雰囲気を生成させて、そこにヘリウムガスあるいはネオンガスのキャリアガスにて搬送された状態のガラス原料粒子2をノズル本体31から供給し、溶融させて溶融ガラス粒子Uを生成し、溶融ガラスGを生成することができる。
【0050】
図5は本発明に係る気中溶融法を用いてガラス製品を製造する方法の一例を示すフロー図である。
図5に示す方法に従い、ガラス製品15を製造するには、上述の気中溶融装置1を用いた上述のガラス溶融工程S1により溶融ガラスGを得たならば、溶融ガラスGを成形装置14に送って目的の形状に成形する成形工程S2を経た後、徐冷工程S3にて徐冷し、切断工程S4において必要な長さに切断することでガラス製品15を得ることができる。
なお、必要に応じて、成形後の溶融ガラスを研磨する工程を設けて、ガラス製品を製造できる。
上記したガラス製品の製造方法によれば、例えば、建築用ガラス板、車両用ガラス板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板等を製造することができる。
【0051】
図6は本発明に係る気中溶融法を実施してガラスビーズ(ガラス粒体)を製造する装置の一実施形態を示すもので、本実施形態の製造装置40は、プラズマ発生コイル41とその上部側に配置された造粒体溶融バーナー(原料加熱部)42と、プラズマ発生コイル41の下側に設置された収容部43とを備えて構成されている。
プラズマ発生コイル41は、縦筒型のフレーム45の外周部に沿って配置され、このフレーム45の上部側に造粒体溶融バーナー42が鉛直に支持され、造粒体溶融バーナー42がその下端をフレーム45の上部側の中心部を望むように下向きに配置されている。
造粒体溶融バーナー42の上端部には供給管46を介してガラス原料粒子2を収容したホッパからなる原料供給器47が接続される。また、造粒体溶融バーナー42にはプロパンガスなどの燃料ガス、酸素ガスなどの燃焼用ガスを供給するためのガス供給源48が供給管49a、49bを介し接続されるとともに、前記供給管46の途中にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を供給可能なガス供給源(供給部)50が供給管51を介し接続されている。
【0052】
この実施形態の装置において、原料供給器47から供給管46を介して造粒体溶融バーナー42にガラス原料粒子2を供給できるように構成されている。また、供給管46の一部に接続された供給管51を介しガス供給源50からのヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方を供給し、これらのガスをキャリアガスとしてガラス原料粒子2を造粒体溶融バーナー42に供給できるように構成されている。
造粒体溶融バーナー42は先の実施形態において説明した造粒体溶融バーナー3と同等の3重構造の造粒体溶融バーナーでも良いし、先に説明した造粒体溶融バーナー30と同等の6重構造の造粒体溶融バーナーでも良い。いずれの構造であっても、バーナーの中心側にヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方のキャリアガスにより搬送される状態でガラス原料粒子2を供給することができ、その外周側に燃料ガスあるいは燃焼ガスを供給することができ、造粒体溶融バーナー42が発生させる酸素燃焼炎42aにガラス原料粒子2を連続供給できるように構成されている。
なお、ガラス原料粒子2を3重構造あるいは6重構造の造粒体溶融バーナー42の中心側の流路に供給しても良いし、また、外周側の流路に供給しても良いのは勿論である。いずれの側の流路に対し供給しても、生成する燃焼炎にガラス原料粒子2を確実に供給できる構成であれば、造粒体溶融バーナー42の中心側と外部側の流路に対するガラス原料粒子2の供給ルートは問わない。
【0053】
前記プラズマ発生コイル41が取り付けられている縦筒型のフレーム45の上部には、供給管52を介しアルゴンガスまたは空気の供給源53が接続され、プラズマ発生コイル41にプラズマ発振器55と操作盤56とが接続されている。
本実施形態の製造装置40においてプラズマ発生コイル41とフレーム45と供給源53とプラズマ発振器55と操作盤56とを具備して高周波プラズマ装置(熱プラズマアーク発生装置)57が構成されている。そして、高周波プラズマ装置57を作動させること、即ち、プラズマ発振器55からプラズマ発生コイル41に高周波を印加することで、フレーム45の内部に高周波熱プラズマアークを生成できるように構成されている。
前記フレーム45の下部側は、下向きラッパ型の接続壁58を介し収容部43の天井部43Aの開口部に接続され、フレーム45の内部空間が貯留部43の内部空間に連通されている。貯留部43の内部には、ステンレス製のバケツ状の貯留部61を備えた搬送台車62が収容されている。また、図示されていないが、貯留部43の筐体表面は冷却水で冷却されている。更に、前記収容部43の側壁部に排気管63を介し排ガス処理装置65が接続されている。
【0054】
なお、
図6では略しているが、収容部43の側壁部には収容部43を密閉状態とすることが可能な開閉扉が形成されていて、搬送台車62は開閉扉を開けることで収容部43の外部に移動できるようになっている。
また、プラズマ発生コイル41を備えたフレーム45とその下の接続壁58とその下の貯留部43は、一体に連続形成されていて、供給源53からフレーム45の内側にアルゴンガスなどの作動ガスを供給し、プラズマ発生コイル41から高周波を印加し、作動ガスを電離してプラズマ点火することで、フレーム45の中心側に高周波熱プラズマアーク(プラズマフレーム)を発生できるように構成されている。
【0055】
図6に示す製造装置40は、必要に応じ造粒体溶融バーナー42から発生させる酸素燃焼炎42aと、プラズマ発生コイル41で発生させる高周波熱プラズマアークを使い分け、いずれかからなる加熱気相雰囲気を用いてガラス原料粒子2を溶融し、溶融ガラス粒子とすることができるように構成されている。
【0056】
先に説明した実施形態の場合と同様に、ガラス原料粒子2をヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方とともに燃焼炎あるいは高周波熱プラズマアークからなる加熱気相雰囲気に投入することで、ガラス原料粒子2を気中溶融させて溶融ガラス粒子とすることができる。この溶融ガラス粒子をステンレス製の貯留部61に落下させて冷却することで、ガラスビーズ66を得ることができる。従って、貯留部61が本実施形態の装置において溶融ガラス粒子を冷却する冷却部とされている。なお、本実施形態の装置において、貯留部61と搬送台車62は必須ではなく、これらを略して収容部43の床部43Bにおいて溶融ガラス粒子を受ける構造としても良く、その場合は収容部43の内部空間と床部43Bが溶融ガラス粒子を冷却する冷却部を構成する。
【0057】
図6に示す製造装置40により製造したガラスビーズ66は、ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方とともに燃焼炎あるいは高周波熱プラズマアークにガラス原料粒子が投入される気中溶融法により溶融され、ヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方による清澄効果により泡の少ない溶融ガラス粒子とされた後に貯留部61において冷却され、泡の少ない泡品質の高い溶融ガラス粒子を冷却して得られているので、泡の少ない泡品質の高いガラスビーズ66が得られる。
このようにして得られたガラスビーズは、ガラスビーズとしてそのまま利用されたり、他の原料と混合されて利用されたり、その他ガラス溶融炉の中に投入されて利用されたりする。
【0058】
図7は本発明に係る気中溶融法を実施して溶融ガラスを製造する装置の一実施形態を示すもので、本実施形態の製造装置70は、プラズマ発生コイル41とその上部側に配置された造粒体溶融バーナー42と、プラズマ発生コイル41の下側に設置された貯留部71とを備えて構成されている。貯留部71の下部には炉底部80がある。
図7に示す構成の製造装置70は、先の実施形態の製造装置40と類似の構造であり、先の装置の収容部43を溶融ガラスG2の貯留部71に変更し、貯留部71に対して成形装置14を接続してなる点が異なる。その他の構成は先の
図6に示す製造装置40の構成と同等であり、同一の要素には同一の符号を付し、同一要素の説明は省略する。
貯留部71は耐火レンガなどの耐火材からなり、高温の溶融ガラスG2を貯留できるように構成されている。貯留部71における天井部71Aの上に接続壁58とフレーム45が設置されていて、フレーム45の上部側に設置されている造粒体溶融バーナー42が発生させる燃焼炎は、貯留部71の内部側に達することができるように生成される。
【0059】
貯留部71には図示していないが加熱ヒータが設置され、貯留部71に貯留されている溶融ガラスG2を目的の温度(例えば1400℃程度)に溶融状態で保持できるように構成されている。
貯留部71の側壁の一部には排出口72が形成され、排出口72は
図2に示す構成と同様、成形装置14が接続され、貯留部71に貯留した溶融ガラスG2を成形装置14により目的の形状に成形できるように構成されている。
更に、貯留部71の側壁部に排気管63を介し排ガス処理装置65が接続されている。
【0060】
図7に示す構成の製造装置70によれば、ガラス原料粒子2をヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方とともに燃焼炎あるいは高周波熱プラズマアークに投入することで、ガラス原料粒子2を気中溶融させて溶融ガラス粒子とすることができる。そして、この溶融ガラス粒子を耐火レンガ製の貯留部71の炉底部80方向に落下させて溶融ガラスG2として貯留することで、泡の少ない泡品質の高い溶融ガラスG2を得ることができる。
この溶融ガラスG2を所定の速度で排出口72から排出し、必要に応じ減圧脱泡装置に導入し、減圧状態で強制的に更に脱泡した後、成形装置14に移送して目的の形状に成形し、ガラス製品を製造できる。
以上のように製造されたガラス製品は、先の実施形態と同様、気泡の特に少ない泡品質の高い溶融ガラスG2を元に製造されているので、泡の少ない高品質なガラス製品を得ることができる。
以上では、本発明の実施形態の気中溶融方法およびその装置について説明したが、本発明は、ガラス原料粒子を高温の気相雰囲気で溶融できる限りは、気中溶融法に限定されない。すなわち、シーメンス窯においてバッチ式のガラス原料にかえて、ガラス原料粒子を利用してガラス原料粒子を気相雰囲気中で、かつヘリウムガスとネオンガスの少なくとも一方の存在下でガラス原料粒子を溶融し、溶融ガラス原料粒子とする限りは、同様の効果を有し、本発明の範囲である。
【実施例】
【0061】
以下の表1に示す組成の無アルカリガラスを、加熱気相雰囲気中でガラス原料粒子を溶融する方法の一つとしての気中溶融法によって作製した。これらのガラス組成は、一般的なソーダライムガラスと比較し、難溶融ガラスとして認識される組成比の無アルカリガラス(A)と無アルカリガラス(B)と無アルカリガラス(C)である。例えば、無アルカリガラス(A)の組成比のガラス原料混合物の場合の溶融開始温度は1152℃である。無アルカリガラス(B)の組成比のガラス原料混合物の場合の溶融開始温度は1362℃である。無アルカリガラス(C)の組成比のガラス原料混合物の場合の溶融開始温度は1376℃である。無アルカリガラス(B)は無アルカリガラス(A)に比べてさらに難溶融組成比のガラスである。無アルカリガラス(C)は無アルカリガラス(B)に比べてさらに難溶融組成比のガラスである。溶融開始温度は、ガラス原料粒子とする前のガラス原料である原料混合物250gを長さ400mm×幅20mmの白金ボードに添加し、800〜1500℃の温度勾配をつけた炉で1時間加熱した後、原料が目視で半分以上がガラス化する温度とした。
【0062】
【表1】
【0063】
ガラスを溶融するためのガラス原料として、珪砂、アルミナ、ホウ酸(H
3BO
3)、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、ジルコン、弁柄(Fe
2O
3)、塩化ストロンチウムをそれぞれ準備した。これらの原料を目的のガラス組成になるように調合した。これらの原料の粒径を乾式のレーザー回折・散乱式粒径・粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300:商品名、日機装株式会社製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
なお、本実施例で記載する「粒径」とは球相当径であって、具体的には上記計測装置によって計測された各原料の粒度分布における粒径をいう。また、粒径D50(メディアン粒径)とは、本測定装置によって計測された各原料の粒度分布において、累積頻度が50%のときの粒子径をいう。
【0066】
上記のように調合された原料バッチ2kgを蒸留水(溶媒)3リットルと混合し、スラリーとした。スラリー中において原料を分散させ、かつガラス原料粒子の強度を向上させる目的で、無アルカリガラス(A)に対してpH調整剤として2−アミノエタノールを原料バッチに対して0.5%、および無アルカリガラス(B)に対してPVA(ポリビニルアルコール)を1%それぞれ添加した。これらのスラリーを固形分濃度40%スラリー(溶媒は水)として、アルミナボールを用いて1時間混合・粉砕を行った。アルミナボールは直径20mmのボールであり、このボールが10kg収容された容量10リットルの容器を備えたボールミルを用いた。
【0067】
得られたスラリーを用いてスプレードライ造粒を実施した。造粒条件は、(株)プリス製のスプレードライヤーを用い、乾燥室径:2600mm、アトマイザー回転数:12000rpm、入口温度:250℃、出口温度:120℃ スラリー供給量:20〜25kg /時間とした。ガラス原料粒子の平均径は無アルカリガラス(A)原料で78μm、無アルカリガラス(B)原料で74μm、無アルカリガラス(C)原料で70μmであった。
【0068】
得られたガラス原料粒子を用い、
図6とほぼ同じ構成の気中溶融装置を用いて造粒体溶融バーナーから燃焼炎を発生させ、気中溶融試験を実施した。この試験において搬送台車62は利用しなかった。
ガラス原料粒子のキャリアガスとして、圧縮空気(比較例)、またはヘリウムガス(本発明例)100%のガスを用いた。その他、無アルカリガラス(B)に対しては、ヘリウムガスと空気を含む全キャリアガスに対する体積割合を1、5、10%とした場合についても試験を行った。搬送ガス量は30L/分とした。ガラス原料粒子は約70g/分で搬送した。溶融に使用する造粒体溶融バーナーの燃料ガス流量は25L/分、燃焼ガス流量は117L/分とした。なお、用いた燃料ガスはLPGであり、燃焼ガスは酸素とした。
気中溶融試験を経た溶融ガラス粒子はガラス原料粒子がそのまま溶融し球状化したもの(ガラスビーズ)であり、このままでは清澄性について評価できないため、溶融ガラス粒子180gを取り分け、白金坩堝を用いて電気炉溶融を行った。溶融条件は1400℃で30分溶融し融液化したのち、さらに、1500℃で30分清澄を行った。得られたガラスを徐冷し、両面研磨することで泡評価を行った。泡評価は、研磨したガラスを顕微鏡観察することにより、1gあたりのガラスに対する泡個数と泡径分布として測定し、後記する表3にまとめて示した。なお、清澄剤として、無アルカリガラス(A)、(B)、(C)の原料にともに、塩素(Cl);0.5重量%添加した。
【0069】
図6に示す構成の気中溶融装置を用いて造粒体溶融バーナーから燃焼炎を発生させ、気中溶融法によりガラスビーズを形成し、このガラスビーズを白金坩堝により溶融して得られたガラスについて泡評価の試験結果を
図8に示す。
図8(A)は無アルカリガラス(A)の組成のガラス原料粒子を用い、キャリアガスとして圧縮空気(圧縮空気100%)を用いた空気搬送による試料の顕微鏡写真を示し、
図8(B)は無アルカリガラス(A)の組成のガラス原料粒子を用い、キャリアガスとしてヘリウム(ヘリウムガス100%)を用いたヘリウム搬送による試料の顕微鏡写真を示す。
図8(C)は無アルカリガラス(B)の組成のガラス原料粒子を用い、キャリアガスとして圧縮空気(圧縮空気100%)を用いた空気搬送による試料の顕微鏡写真を示し、
図8(D)は無アルカリガラス(B)の組成のガラス原料粒子を用い、キャリアガスとしてヘリウム(ヘリウムガス100%)を用いたヘリウム搬送による試料の顕微鏡写真を示す。
図8(A)〜(D)の顕微鏡写真はいずれも同じ倍率であり、
図8(D)に1mmの縮尺を記載している。更に、表3に各試料の泡径の分布の詳細を示す。
【0070】
図8に示すようにヘリウムをキャリアガスとして用いた気中溶融法によるガラスビーズを再溶融したガラスの泡径および泡個数は、圧縮空気を用いて空気搬送した溶融ガラス粒子(ガラスビーズ)を再溶融したガラスと比較して泡径の拡大および泡個数の減少が認められた。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す結果から、空気搬送をヘリウム搬送に置き換えることで、泡の合計数が大幅に減少していることがわかる。とくに、その効果は、難溶融のガラス組成比の無アルカリガラス(B)で著しい。また、無アルカリガラス(A)の泡径の分布においては、空気搬送して得た試料は径の小さな泡(例えば50μm以下)が圧倒的に多いのに対し、ヘリウム搬送して得た試料は100〜150μmの径の大きな泡が多くなっている。これは、
図8の写真対比からも明らかである。即ち、気中溶融法によりガラス原料粒子を溶融してガラスを製造する場合、空気搬送からヘリウム搬送に変更することで泡径の拡大ができることを意味する。なお、この試験結果を示す写真から、一見すると、
図8(B)、(D)に示すガラスの方が
図8(A)、(C)に示すガラスより泡の体積が多いように見える。しかし、実際にガラス製品を製造する場合は、成形装置で成形する前に溶融炉などにおいてさらに脱泡処理がなされた後、目的の形状のガラス製品に成形されるので、成形する前に必然的に脱泡処理がなされる。この脱泡処理の際に泡径の大きいガラスである方が、気泡を浮上させて確実に泡を除去できるので、泡径が拡大すること自体は望ましい。
また、表3に示す無アルカリガラス(B)でヘリウムの割合を変えた結果から、ヘリウムの割合が1%で泡数の増加がみられるものの、それ以降のヘリウムの割合の増加に応じて泡の合計数が明らかに減少している。 さらに、最も難溶性を示す無アルカリガラス(C)においても、ヘリウム搬送することによって、泡の顕著な現象が見られる。
【0073】
以下の表4に、先のヘリウム搬送(ヘリウムガス100%搬送)により製造した無アルカリガラス(A)、(B)、(C)の比重、ヤング率、歪点、ガラス転移点の測定結果を示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示す如く無アルカリガラス(B)、無アルカリガラス(C)は、無アルカリガラス(A)に対し歪点を向上させて、より高い温度で熱処理しても歪が少なくなるような組成としたガラスである。例えば、表示装置用のスイッチング素子として高速動作が可能なTFTをガラス基板上に形成しようとして、700℃を超える温度、例えば720℃前後の温度で10〜20分程度熱処理する条件で使用したとしても、無アルカリガラス(B)、無アルカリガラス(C)であるならば、熱処理時に問題を生じないガラス基板を提供できる。
【0076】
次に、参考のため、ヘリウムガス雰囲気下での電気炉溶融試験を実施した。この試験は、目的の組成に配合したガラス原料を坩堝に収容し、坩堝を設置する雰囲気にヘリウムガス(100%)を所定量(3L/分)流し、100%ヘリウムガス流量雰囲気とした状態で坩堝を加熱してガラス原料を溶融させて溶融ガラスとする試験である。
まず、原料バッチ200gの調合を行った。本試験で用いたバッチ原料は、珪砂、ホウ酸(H
3BO
3)、アルミナ、水酸化マグネシウム、ドロマイト、炭酸ストロンチウム、ジルコン、弁柄(Fe
2O
3)、塩化ストロンチウムの各粒子であり、先に示した無アルカリガラス(A)と無アルカリガラス(B)の各組成としたものを試料として作製した。
【0077】
バッチ原料(参考例試験使用原料)の粒径を表2に示す。得られた調合原料バッチは、白金坩堝を用いて1400℃で30分溶融し融液化したのち、さらに1500℃、30分で清澄を行って参考例のガラスを得た。得られたガラスを徐冷し、両面研磨することで泡評価を行った。その結果、泡個数は、無アルカリガラス(A)の組成の場合で4468個/g、無アルカリガラス(B)の組成の場合で5472個/gとなった。なお、何れの試料においてもCl;0.5重量%を清澄剤として添加している。
【0078】
以上の結果から、本発明のように、ガラス原料粒子をヘリウム搬送し気相雰囲気中で溶融することによって得られたガラスは、前述した参考のために行なったヘリウム雰囲気下の通常溶融法で得られるガラスと対比しても、ガラス原料粒子を圧縮空気搬送し気相雰囲気中で溶融することによって得られるガラスと対比しても、泡個数が削減できていることが分かる。この理由は、溶融炉において通常の溶融を行って溶融ガラスを製造した場合、溶融ガラスを溶融中の溶融炉の上部空間にヘリウムガスを雰囲気制御のために満たしても、溶融ガラスはその表面においてのみヘリウムガスと触れるので、溶融ガラスに対するヘリウムガスの清澄効果は限定される。
これに対し、ガラス原料粒子を気相雰囲気中のヘリウムガスで囲みながら溶融させる場合、1つ1つのガラス原料粒子が溶融し、さらに溶融ガラス粒子が存在する高温の雰囲気中には確実にヘリウムガスが存在し、溶融中の個々のガラス原料とヘリウムガスとの接触面積は通常の溶融炉を用いた溶融法に比べ遙かに大きいため、ヘリウムガスの清澄効果が十分に発揮された結果、泡個数の削減に寄与したものと考えられる。また、ヘリウムガスの代わりに、ネオンガスを用いた場合も同様に、泡個数の削減に寄与すると想定できる。なお、同等の理由から、先に説明した泡径の拡大の効果を奏することがわかる。
【0079】
次に、ヘリウムのキャリアガスを用いガラス原料粒子を溶融した溶融ガラスが効果的にヘリウムを取り込んでいることを示すため、溶融ガラスをつくる途中段階である気中溶融法によるガラスビーズの発生ガス分析を実施した。
【0080】
分析手法は、TDS(Thermal Desorption Spectrometry:昇温脱離分析)とした。即ち、試料をPt箔に包んだ状態にて昇温し、測定開始時背圧:約2×10
−7Pa、昇温速度:(1)20℃/分(室温〜800℃)(2)800℃保持10分(3)10℃/分(800〜1000℃)、最高温度:1000℃として、加熱された試料から生じたイオンを質量分析計において質量対電荷比によって分離し、ヘリウムの存在を示すm/zが4のピークをカウントした。各試料における分析結果を
図9、
図10に示す。
【0081】
図9は気中溶融によるガラスサンプルの昇温脱離ガスプロファイル(室温〜500℃)を示す。
図10はヘリウムガス雰囲気下の通常の溶融で得られたガラスサンプルの昇温脱離ガスプロファイル(室温〜1000℃)を示す。なお、
図9、
図10とも対象としたガラス組成は、無アルカリガラス(B)である。
図9に示すようにヘリウム(搬送ガスに対するヘリウムの割合が100%)搬送して得られたガラスビーズの再溶融物ガラスには室温から500℃に昇温中にヘリウムイオンの存在を示すm/zが4のピークが微弱ながら検出された。一方、ヘリウムガス雰囲気下の通常の溶融で得られた溶融ガラスは、
図10に示す如くm/zが4のピークはまったく検出されていない。このことから、気中溶融法によりガラス原料粒子をヘリウム搬送して得たガラスビーズにヘリウムが残存していることが分かった。つまり、本発明により認められた泡径拡大および泡数減少の効果は、気中溶融法を実施する場合のヘリウムの効果であることを確認できた。
なお、ネオンガスは、ヘリウムガスと同様の性質を有するガスと知られており、前述のヘリウムガスと同様の効果が得られることが明らかである。