特許第5920342号(P5920342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920342造粒体およびその製造方法、溶融ガラスの製造方法、ならびにガラス物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920342
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】造粒体およびその製造方法、溶融ガラスの製造方法、ならびにガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 1/02 20060101AFI20160428BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20160428BHJP
   C03B 1/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C03C1/02
   C03C3/091
   C03B1/02
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-516441(P2013-516441)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2012063364
(87)【国際公開番号】WO2012161273
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-117147(P2011-117147)
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】篠原 伸広
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/024913(WO,A1)
【文献】 特表2009−527455(JP,A)
【文献】 特開昭47−023404(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 1/02
C03C 3/076 − 3/091
C03B 1/00 − 1/02
C03C 6/00 − 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料混合物の造粒体であって、
前記造粒体から得られるガラスはアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない下記ガラス組成の無アルカリガラスであり、
前記造粒体はホウ酸ストロンチウム水和物、ホウ酸カルシウム水和物およびホウ酸バリウム水和物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、
CuKα線を用いた粉末X線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、2θが19.85〜21.71度の範囲にある石英(100)の回折ピーク面積を1とするとき、
2θが10.81〜13.01度の範囲にあるホウ酸ストロンチウム水和物の回折ピーク面積の相対値、
2θが11.11〜13.49度の範囲にあるホウ酸カルシウム水和物の回折ピーク面積の相対値、および
2θが10.91〜13.27度の範囲にあるホウ酸バリウム水和物の回折ピーク面積の相対値の合計が0.005以上である、造粒体。
ガラス組成(酸化物基準のモル%で表示):
SiO;60〜75モル%、
Al;5〜15モル%、
;1〜9モル%、
MgO;0〜15モル%、
CaO;0〜20モル%、
SrO;0〜12モル%、
BaO;0〜21モル%、
ただし、CaO、SrO、およびBaOの合計は0モル%超。
【請求項2】
前記ガラス組成におけるBaOが0モル%である、請求項1に記載の造粒体。
【請求項3】
前記ガラス組成におけるSrOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値の合計が0.03以上である、請求項2に記載の造粒体。
【請求項4】
前記ガラス組成におけるSrOが0モル%かつCaOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値が0.008以上である、請求項2に記載の造粒体
【請求項5】
前記ガラス組成におけるBaOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値の合計が0.02以上である、請求項1に記載の造粒体。
【請求項6】
造粒体の粒度分布曲線における、重量累計メディアン径を表わすD50が1.0mm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の造粒体。
【請求項7】
ケイ素源、アルミニウム源、ホウ素源、マグネシウム源およびアルカリ土類金属源を含む原料粉末を水の存在下で造粒する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の造粒体を製造する方法であって、
前記ホウ素源の少なくとも一部が酸化ホウ素またはホウ酸であり、前記アルカリ土類金属源の少なくとも一部がそのアルカリ土類金属の炭酸塩であることを特徴とする造粒体の製造方法。
【請求項8】
前記造粒の後に加熱乾燥する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記原料粉末が、質量百分率表示でケイ砂を48〜52%、オルトホウ酸換算でホウ酸を2〜13%、酸化アルミニウムを13〜17%、ドロマイトを3〜12%、少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を合計で7〜36%含有し、マグネシウム源を含有する場合はMgO、Mg(OH)およびMgCOの合計の含有量が0〜4%である、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記原料粉末が、MgCl、MgF、およびMgSOからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属源が、アルカリ土類金属の水酸化物を含まない、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の造粒体を、加熱して溶融ガラスとする、溶融ガラスの製造方法。
【請求項13】
溶融炉中の溶融ガラス液面上に造粒体を投入して溶融させる、請求項12に記載の溶融ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記造粒体を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とし、前記溶融ガラス粒子を集積する、請求項12に記載の溶融ガラスの製造方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形して徐冷する、ガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無アルカリガラスの原料として用いられる造粒体、該造粒体の製造方法、該造粒体を用いて溶融ガラスを製造する方法、および該溶融ガラスの製造方法を用いてガラス物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイ用ガラス基板等には、実質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスが用いられる。また、最近では無アルカリガラスに求められる特性が多様化したこと等のために、従来のものよりB含有量の少ないガラスなど、多様な組成の無アルカリガラスが用いられるようになっている。
このような無アルカリガラスは一般的なソーダライムガラスと比較して、高融点のシリカ原料を多量に用いること、シリカ原料の溶融を早める作用のあるアルカリ成分を用いないこと等のために、未溶融原料が残留しやすく、ガラス組成の均一性が低下しやすい傾向がある。
また、ディスプレイ用ガラス基板にはガラス基板の内部および表面に、ディスプレイ表示に影響を及ぼす欠点(泡、脈理、インクルージョン、未溶解物、ピット、キズ等)が無いこと等の高い品質が求められる。ガラス基板内部に未溶融原料を残さないためには、原料粉末を微粒化することが有効と考えられる。しかし、微粒の原料粉末を溶融炉に投入しようとすると、原料粉末が飛散することによって、ガラス組成が不安定になる、原料が無駄になる等の問題が生じる。
【0003】
これらの問題を解消する方法として、特許文献1、2には、無アルカリガラスの製造において、原料粉末を造粒して用いる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−75711号公報
【特許文献2】特開2009−179508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスの原料粉末の造粒体の強度が不足すると使用時に壊れてしまい微粉を発生する。微粉が発生すると、その一部が飛散する問題が生じる。また、溶融炉中で溶融させた溶融ガラス中で微粉が浮上し、未溶融物が生じやすく、該溶融ガラスおよびこれを成形して得られるガラス物品における組成の均一性が悪くなりやすい。
たとえば、造粒体を気相雰囲気中で溶融させる気中溶融法においては、微粉は、気中加熱装置内や、造粒体を気流搬送する気流搬送装置内で舞い上がって飛び散りやすいため、微粉が気中加熱装置外に排出されやすい。このため、強度の弱い造粒体が気中加熱装置に供給されると、得られる溶融ガラスの組成が変動してしまい、該溶融ガラスおよびこれを成形して得られるガラス物品における組成の均一性が悪くなりやすい。
本発明者等は特許文献2に記載された方法を用いて無アルカリガラスの製造を試みたが、ガラス組成によっては強度の高い造粒体が得られず、ガラス組成の均一性が不充分になってしまった。具体的にはガラス組成中のB含有量が少ない場合や、MgO含有量が比較的多い場合などに造粒体の強度が不充分となった。
【0006】
造粒体の強度を向上させる方法として、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを用いる方法があるが、有機バインダーに由来するカーボンは還元剤として作用するため、ガラス成分の還元反応による着色が生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、有機バインダーの含有量が少ない、または有機バインダーを含有しない、強度に優れた造粒体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、該造粒体を用いた溶融ガラスの製造方法およびガラス物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下である。
[1]ガラス原料混合物の造粒体であって、
前記造粒体から得られるガラスはアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない下記ガラス組成の無アルカリガラスであり、
前記造粒体はホウ酸ストロンチウム水和物、ホウ酸カルシウム水和物およびホウ酸バリウム水和物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、
CuKα線を用いた粉末X線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、2θが19.85〜21.71度の範囲にある石英(100)の回折ピーク面積を1とするとき、2θが10.81〜13.01度の範囲にあるホウ酸ストロンチウム水和物の回折ピーク面積の相対値、2θが11.11〜13.49度の範囲にあるホウ酸カルシウム水和物の回折ピーク面積の相対値、および2θが10.91〜13.27度の範囲にあるホウ酸バリウム水和物の回折ピーク面積の相対値の合計が0.005以上である、造粒体。
ガラス組成(酸化物基準のモル%で表示):
SiO;60〜75モル%、
Al;5〜15モル%、
;1〜9モル%、
MgO;0〜15モル%、
CaO;0〜20モル%、
SrO;0〜12モル%、
BaO;0〜21モル%、
ただし、CaO、SrO、およびBaOの合計は0モル%超。
【0009】
[2]前記ガラス組成におけるBaOが0モル%である、[1]の造粒体。
[3]前記ガラス組成におけるSrOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値の合計が0.03以上である、[2]の造粒体。
[4]前記ガラス組成におけるSrOが0モル%かつCaOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値が0.008以上である、[2]の造粒体
[5]前記ガラス組成におけるBaOが0モル%超であり、前記回折ピーク面積の相対値の合計が0.02以上である、[1]の造粒体。
[6]造粒体の粒度分布曲線における、重量累計メディアン径を表わすD50が1.0mm以上である、[1]〜[5]のいずれかの造粒体。
【0010】
[7]ケイ素源、アルミニウム源、ホウ素源、マグネシウム源およびアルカリ土類金属源を含む原料粉末を水の存在下で造粒する、[1]〜[6]のいずれかの造粒体を製造する方法であって、前記ホウ素源の少なくとも一部が酸化ホウ素またはホウ酸であり、前記アルカリ土類金属源の少なくとも一部がそのアルカリ土類金属の炭酸塩であることを特徴とする造粒体の製造方法。
[8]前記造粒の後に加熱乾燥する、[7]の製造方法。
[9]前記原料粉末が、質量百分率表示でケイ砂を48〜52%、オルトホウ酸換算でホウ酸を2〜13%、酸化アルミニウムを13〜17%、ドロマイトを3〜12%、少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を合計で7〜36%含有し、マグネシウム源を含有する場合はMgO、Mg(OH)およびMgCOの合計の含有量が0〜4%である、[7]または[8]の製造方法。
[10]前記原料粉末が、MgCl、MgF、およびMgSOからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[7]〜[9]のいずれかの製造方法。
[11]前記アルカリ土類金属源が、アルカリ土類金属の水酸化物を含まない、[7]〜[10]のいずれかの製造方法。
【0011】
[12]前記[1]〜[6]のいずれかの造粒体を、加熱して溶融ガラスとする、溶融ガラスの製造方法。
[13]溶融炉中の溶融ガラス液面上に造粒体を投入して溶融させる、[12]の溶融ガラスの製造方法。
[14]前記造粒体を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とし、前記溶融ガラス粒子を集積する、[12]の溶融ガラスの製造方法。
[15]前記[12]〜[14]のいずれかの溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形して徐冷する、ガラス物品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機バインダーの含有量が少ない、または有機バインダーを含有しないにもかかわらず、強度に優れた造粒体が得られる。
本発明の造粒体を用いることにより、有機バインダーに起因するガラスの着色の問題を改善しつつ、溶融ガラスの製造またはガラス物品の製造における、原料粉末の飛散を防止できる。また、造粒体の強度が良好であるため、微粉の発生が抑えられ、組成の均一性が良好な溶融ガラスまたはガラス物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のガラス物品の製造方法の一例を示す流れ図である。
図2】造粒体製造例で測定したXRDスペクトルである。
図3】造粒体製造例で測定したXRDピークとバックグランドを示す図である。
図4】造粒体製造例で測定したXRDピークとバックグランドを示す図である。
図5】造粒体製造例で測定したXRDピークとバックグランドを示す図である。
図6】造粒体製造例で測定したXRDピークとバックグランドを示す図である。
図7】ガラス塊製造例で製造したガラス板の切り出し面の写真である。
図8】ガラス塊製造例で製造したガラス板の切り出し面の写真である。
図9】ガラス塊製造例で製造したガラス板の切り出し面の写真である。
図10】造粒体製造例で測定したXRDピークとバックグランドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、造粒体の粒子の平均粒子径を表す「D50」とは、粒子が1mm未満の場合には、レーザー回折散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における体積累計50%のメディアン径であり、粒子が1mm以上の場合には、篩などを利用して測定された重量累計50%のメディアン径である。レーザー回折散乱法としては、たとえばJIS Z8825−1(2001)があげられる。
造粒体の製造に用いる原料粉末粒子の平均粒子径を表す「D50」とは、レーザー回折散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における、体積累計50%のメディアン径である。この場合のレーザー回折散乱法としては、たとえばJIS Z8825−1(2001)、JIS R1629(1997)があげられる。また「D90」とは該粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計90%の粒径である。なお、原料粉末粒子であっても、D50が1mmを超えるものについては、前記の重量累計によって求める。
本発明において、アルカリ土類金属とは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)の3種の元素をいう。
【0015】
<無アルカリガラス>
本発明の造粒体は、ガラス原料混合物の造粒体であって、無アルカリガラス(以下、単にガラスということもある。)の原料として用いられるものである。本発明の造粒体を加熱溶融し、造粒体を構成するガラス原料混合物をガラス化反応させることにより溶融ガラスとなり、該溶融ガラスを冷却させることにより固体ガラスとなる。以下、まず本発明の造粒体から製造される無アルカリガラスの組成について説明する。
本発明におけるガラスは酸化物系ガラスであり、酸化ケイ素を主成分とし、かつホウ素成分を含有するホウケイ酸ガラスである。
ガラスの成分は、SiO、B、Al、MgO、CaO、SrO等の酸化物で表し、その含有割合は酸化物換算のモル%で表す。
なお、本発明において無アルカリガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有割合が1モル%未満である(0モル%であってもよい。)ガラスをいう。
【0016】
本発明において、造粒体の組成は、該造粒体を溶融しガラス化して製造される溶融ガラスを固化させた固体ガラスの組成で表わす。
本発明の造粒体から得られるガラスのガラス組成は、SiOの含有量が60〜75モル%、Alの含有量が5〜15モル%、Bの含有量が1〜9モル%、MgOの含有量が0〜15モル%、CaOの含有量が0〜20モル%、SrOの含有量が0〜12モル%、BaOの含有量が0〜21モル%、CaO、SrO、およびBaOの合計の含有量が0モル%超である。MgOとSrOとCaOとBaOの合計の含有量は10〜25モル%が好ましい。本発明の造粒体から得られるガラスはアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない(すなわち、1モル%未満である。)。アルカリ金属酸化物の含有量は0.1モル%未満であることが好ましい。
本発明の造粒体から得られるガラスのガラス組成は、BaOは含まずSrOを含む場合は下記の(A)が好ましく、BaOもSrOも含まない場合は下記の(B)が好ましく、BaOを含む場合は下記の(C)が好ましい。
(A)SiOの含有量が60〜75モル%、Alの含有量が5〜15モル%、Bの含有量が1〜9モル%、MgOの含有量が0〜15モル%、CaOの含有量が0〜20モル%、SrOの含有量が0モル%を超え12モル%以下である。
(B)SiOの含有量が60〜75モル%、Alの含有量が5〜15モル%、Bの含有量が1〜9モル%、MgOの含有量が0〜15モル%、CaOの含有量が0モル%を超え20モル%以下である。
(C)SiOの含有量が60〜75モル%、Alの含有量が5〜15モル%、Bの含有量が1〜9モル%、MgOの含有量が0〜15モル%、CaOの含有量が0〜20モル%、SrOの含有量が0〜12モル%、BaOの含有量が0モル%を超え21モル%以下である。
(A)〜(C)において、MgOとSrOとCaOとBaOの合計の含有量は10〜25モル%がより好ましい。
【0017】
ガラスの各成分について説明する。
[SiO
SiOはガラスのネットワークフォーマーであり、必須成分である。その含有量は、溶融ガラスの粘性が高くなりすぎることを考慮して、ガラス成分の合計量100モル%に対して、75モル%以下、好ましくは73モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。一方、SiOはガラスの歪点を高め、耐酸性を高め、密度を小さくする効果が大きいため、その含有量は60モル%以上、好ましくは62モル%以上、より好ましくは64モル%以上である。すなわち、SiOの量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、通常60モル%以上75モル%以下であり、62モル%以上73モル%以下が好ましく、64モル%以上71モル%以下がより好ましい。
【0018】
[Al
Alはガラスの分相を抑制する等の効果を有する成分であり、ガラス成分の合計量100モル%に対して、5モル%以上含有される。その含有量は好ましくは7モル%以上、より好ましくは9モル%以上である。一方、ガラスの耐酸性を維持する等の点からは、Alの含有量は15モル%以下、好ましく14モル%以下、より好ましくは13モル%以下である。すなわち、Alの量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、通常5モル%以上15モル%以下であり、好ましくは7モル%以上14モル%以下であり、より好ましくは9モル%以上13モル%以下である。
【0019】
[B
はガラスの溶解反応性をよくする、ガラスの密度を低下させる、失透特性を向上させる、線膨張係数を小さくする等の効果を有する成分でもある。Bの含有量は1モル%以上であり、2モル%以上が好ましく、より好ましくは3モル%以上である。また、後述のように、本発明においては造粒体の強度を高めるためにホウ素源を利用することより、Bの含有量が少ないガラスを製造する場合には造粒体の強度が低下する傾向がある。この意味でも、ガラスにおけるBの含有量は1モル%以上であり、2モル%以上が好ましく、より好ましくは3モル%以上である。
一方、Bはガラスの歪点を低下させ、または耐酸性を低下させる傾向がある。Bの含有量は9モル%以下、好ましく8モル%以下である。すなわち、Bの量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは2モル%以上8モル%以下であり、より好ましくは3モル%以上8モル%以下である。
【0020】
[MgO]
MgOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの成形工程においてフロート法を用いる場合は1モル%以上含有することが好ましい。また、ガラスの密度を低下させ、かつ歪点を過大に低下させることがなく、溶解反応性をも向上させることから、フロート法を用いない場合も含有させることが好ましい。MgOの含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、2モル%以上がより好ましく、さらに好ましくは3モル%以上である。一方、ガラスの分相の回避するため、耐酸性を高くするため等の点からは、その含有量は15モル%以下、好ましくは12モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。すなわち、MgOの量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは1モル%以上15モル%以下であり、より好ましくは2モル%以上12モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以上10モル%以下である。
【0021】
[アルカリ土類金属酸化物]
アルカリ土類金属酸化物は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、合計で5〜20モル%含有することが好ましい。アルカリ土類金属の酸化物は合計で7モル%以上含有することがより好ましい。またMgOとアルカリ土類金属の酸化物を合計で10〜25モル%含有することが好ましい。すなわち、アルカリ土類金属酸化物の量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは5〜20モル%であり、より好ましくは7〜20モル%である。
[CaO]
CaOは溶融ガラスの粘性を下げる成分である。CaOを含有させる場合の含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、1モル%以上が好ましく、より好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上である。一方、ガラスの失透特性の劣化、線膨張係数の増大を回避する等の点からは、その含有量は20モル%以下であり、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは8モル%以下である。すなわち、CaOの含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは1モル%以上20モル%以下であり、より好ましくは2モル%以上10モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以上8モル%以下である。
【0022】
[SrO]
SrOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの失透特性および耐酸性の改善のために含有させることが好ましい成分である。SrOを含有させる場合の含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、0.5モル%以上が好ましく、より好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは2モル%以上である。ただし、失透特性の劣化、線膨張係数の増大を回避する等の点から、その含有量は12モル%以下であり、好ましく10モル%以下、より好ましくは8モル%以下、さらに好ましくは7モル%である。すなわち、SrOを含有させる場合の含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは0.5モル%以上12モル%以下であり、より好ましくは1モル%以上10モル%以下であり、さらに好ましくは2モル%以上8モル%以下である。
[BaO]
BaOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの失透特性および耐酸性の改善のために含有させることが好ましい成分である。BaOを含有させる場合の含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、0.5モル%以上が好ましく、より好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは2モル%以上である。ただし、失透特性の劣化、線膨張係数の増大を回避する等の点から、その含有量は21モル%以下であり、好ましく12モル%以下、より好ましくは8モル%以下、さらに好ましくは7モル%である。すなわち、BaOを含有させる場合の含有量は、ガラス成分の合計量100モル%に対して、好ましくは0.5モル%以上21モル%以下であり、より好ましくは1モル%以上12モル%以下であり、さらに好ましくは2モル%以上8モル%以下である。
【0023】
[その他の成分]
本発明の造粒体から得られるガラスには、その他の成分を合計で5モル%まで含有することができる。
本発明の造粒体から得られるガラスは、ガラスの色調を調整する等のためにFe、CuO、等を含有することができる。これらの含有量は通常、合計で0.5モル%以下である。
本発明の造粒体から得られるガラスにはまた、清澄剤成分等が含まれることがある。清澄剤成分としてはSO、Cl、F等を例示することができる。
【0024】
<造粒体>
本発明の造粒体は、前記組成の無アルカリガラスを製造するために用いられるものである。また、本発明の造粒体は、造粒過程を経て製造されるものであるが、たとえ造粒過程を経ても、後述の実施例で説明する微粉化率が100%となるものは、造粒体に含まれないものとする。
造粒体は、前記ガラス組成の成分とならない成分(たとえば、ガラスを製造する際に揮発して消失する成分や分解し気化して消失する成分など)を含んでいてもよい。また、前記ガラス組成の成分となる成分であってもガラスを製造する際に一部が消失する成分を含んでいてもよい。この一部消失する成分の造粒体における酸化物換算の組成割合は、得ようとする固体ガラスにおけるガラス組成割合となるように、該固体ガラスにおけるガラス組成割合よりも大きい値とする。一部消失する成分の主たるものは酸化ホウ素であり、前記したガラス組成における他の金属酸化物成分はほとんど消失することはない。したがって、本発明の造粒体における酸化物換算の組成は、酸化ホウ素を除き、酸化物換算で、得ようとするガラス組成とほぼ同じ組成とされる。酸化ホウ素は、通常、得ようとするガラスのガラス組成における酸化ホウ素含有量よりも揮発分を考慮した量だけ多く配合される。
【0025】
本発明の造粒体は、ガラスの必須成分であるSiO、AlおよびBとなるケイ素源、アルミニウム源およびホウ素源を含む。また、アルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種は必須であることより、カルシウム源とストロンチウム源とバリウム源の少なくともいずれかを含む。任意成分であるMgOを含むガラスを製造する場合は、さらにマグネシウム源を含む。また、前記その他の成分を含むガラスを製造する場合は、その他の成分に応じてその原料成分を含む。なお、ガラスの各成分となる原料は、2種以上のガラス成分を含む原料であってもよい。たとえば、後述のようにドロマイトはカルシウム源かつマグネシウム源である。
本発明の造粒体において、アルカリ土類金属源のうち少なくとも一部はアルカリ土類金属ホウ酸塩水和物である。たとえば、ストロンチウム源を含む場合、ストロンチウム源の少なくとも一部はホウ酸ストロンチウム水和物であり、ストロンチウム源の全部がホウ酸ストロンチウム水和物でなくてもよい。また、アルカリ土類金属源を2種以上含む場合、それら2種以上の少なくとも1種がホウ酸塩水和物であればよい。たとえば、カルシウム源とストロンチウム源とを含む場合、ストロンチウム源のみがホウ酸ストロンチウム水和物であり(ただし、ストロンチウム源の全部でなくてもよいことは上記の通り)、カルシウム源はホウ酸カルシウム水和物でなくてもよい。
上記アルカリ土類金属ホウ酸塩水和物は造粒体を製造するための原料粉末に配合してもよい。しかし、造粒体の製造の過程でホウ酸源とアルカリ土類金属源それぞれの少なくとも一部を反応させてアルカリ土類金属ホウ酸塩水和物を生成させることが好ましい。
なお、以下、ホウ酸カルシウム水和物を水和物(x)、ホウ酸ストロンチウム水和物を水和物(x)、ホウ酸バリウム水和物を水和物(x)といい、これら3種のアルカリ土類金属ホウ酸塩水和物を水和物(x)と総称する。
【0026】
[アルカリ土類金属のホウ酸塩水和物]
本発明の造粒体は、前記ガラスの組成に応じて水和物(x)の少なくとも1種を含む。水和物(x)としてはCaB10・4HO等が挙げられ、水和物(x)としてはSrB10・5HO、SrB13・2HO等が挙げられ、水和物(x)としてはBaB・5HO等が挙げられる。これら水和物(x)は通常造粒体中に結晶形態で存在し、造粒体中における水和物(x)の存在および含有量は、粉末X線回折法により確認できる。
後述のように、造粒体の製造の過程でホウ酸源とアルカリ土類金属源の少なくとも一部を反応させて水和物(x)を生成させて造粒体中の水和物(x)の量を所定量以上とすることにより、強度に優れた造粒体が得られる。
【0027】
[粉末X線回折法]
メノウ乳鉢で細かくすりつぶした試料(測定対象の造粒体)について、JIS K0131(1996)に準拠して、CuKα線を使用し、2θが5〜40度の範囲で、0.02度の間隔で粉末X線回折強度を測定する。この際、石英(100)のピークの高さが20000カウント以上となるようにとる。測定の結果得られた回折パターンに基づいて、石英(100)の回折ピークである2θが19.85〜21.71度の範囲で、X線回折スペクトル(以下、XRDスペクトルということもある。)の両端を結ぶ直線以下をバックグランドとして除去し、この範囲のカウント数の積算値を、石英(100)の回折ピーク面積とする。得られた石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)とするときの、以下の水和物(x)の回折ピーク面積の相対値を求める。
上記と同じXRDスペクトルにおいて、CaB・6HO(ピーク位置の2θは11.31度付近)、Ca2033・12HO(ピーク位置の2θは11.61度付近)、Ca1423・8HO(ピーク位置の2θは12.28度付近)、CaB・5HO(ピーク位置は2θ=12.53度付近)、CaB10・4HO(ピーク位置は2θ=13.00度付近)などのピークが認められる場合に、2θが11.11〜13.49度の範囲で、XRDスペクトルの両端を結ぶ直線以下をバックグランドとして除去し、この範囲のカウント数の積算値を、水和物(x)の回折ピーク面積とし、石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)とするときの、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値を求める。
同様に、上記と同じXRDスペクトルにおいて、SrB10・5HO(ピーク位置の2θは11.92度付近)やSrB13・2HO(ピーク位置の2θは12.08度付近)のピークが認められる場合に、2θが10.81〜13.01度の範囲で、XRDスペクトルの両端を結ぶ直線以下をバックグランドとして除去し、この範囲のカウント数の積算値を、水和物(x)の回折ピーク面積とし、石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)とするときの、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値を求める。
また同様に、上記と同じXRDスペクトルにおいて、水和物(x)のピークが認められる場合に、2θが10.91〜13.27度の範囲で水和物(x)の回折ピーク面積を計算し、石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)とするときの、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値を求める。
【0028】
上記3種の水和物(x)のXRDスペクトルにおいて、それぞれの2θの範囲は重複している。したがって、本発明の造粒体が2種以上の水和物(x)を含む場合、個々の水和物の回折ピーク面積の相対値を求めることは困難である。上記水和物(x)、(x)、(x)における回折ピーク面積の相対値の求め方は、造粒体がそれらいずれか1種のみを有する場合の求め方である。
造粒体が2種以上の水和物(x)を含む場合、本発明におけるそれら水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計は、水和物(x)が含まれる場合は水和物(x)の回折ピーク面積の相対値とみなし、水和物(x)が含まれない場合は水和物(x)の回折ピーク面積の相対値とみなすものとする。すなわち、造粒体が、水和物(x)と水和物(x)を含む場合、水和物(x)と水和物(x)を含む場合および水和物(x)と水和物(x)と水和物(x)を含む場合には、前記水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の求め方で求められた相対値を、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計とする。また、造粒体が、水和物(x)を含まずかつ水和物(x)と水和物(x)を含む場合には、前記水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の求め方で求められた相対値を、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計とする。
【0029】
本発明の造粒体が水和物(x)のみを含む場合、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計は0.005以上であり、0.008以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.04以上がさらに好ましい。該相対回折ピーク面積が該下限値以上であると、造粒体の良好な強度が得られる。該相対回折ピーク面積の上限は、造粒体から得られるガラスのガラス組成におけるCaOの含有量が20モル%を超えない範囲で得られることが好ましい。
本発明の造粒体が水和物(x)を含まず(x)を含む場合、すなわち、水和物(x)と水和物(x)を含むかまたは水和物(x)のみを含む場合、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計は0.005以上であり、0.008以上が好ましく、0.015以上がより好ましい。さらに、0.03以上が好ましく、0.09以上が特により好ましい。該相対回折ピーク面積が上記下限値以上であると、造粒体の良好な強度が得られる。該相対回折ピーク面積の上限は、造粒体から得られるガラスのガラス組成におけるCaOとSrOの合計の含有量が20モル%を超えない範囲で得られることが好ましい。
本発明の造粒体が水和物(x)を含む場合、すなわち、水和物(x)と他の水和物の1種または2種とを含むかまたは水和物(x)のみを含む場合、水和物(x)の回折ピーク面積の相対値の合計は0.005以上であり、0.02以上が好ましく、0.04以上がより好ましく、0.11以上がさらに好ましい。該相対回折ピーク面積が該下限値以上であると、造粒体の良好な強度が得られる。該相対回折ピーク面積の上限は、造粒体から得られるガラスのガラス組成におけるCaOとSrOとBaOの合計の含有量が21モル%を超えない範囲で得られることが好ましい。
【0030】
上記のように、水和物(x)の量を規定する際に、石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)とする理由を以下に述べる。
無アルカリガラスの主たる構成成分はSiOである。SiOの原料はケイ砂(石英)である。この原料は一般的には非水溶性である。すなわち無アルカリガラスを製造するための造粒体は、非水溶性原料の粒子を多く含む。このため造粒工程においても、ただ単に水を入れたのみではまとまりにくい。つまり造粒工程で、ケイ砂を造粒体中にうまく取り込む必要がある。それと同時に、前記造粒工程によって得られた造粒体は衝撃で壊れない強度を有することが必要である。一方、本発明の無アルカリガラスを製造するための造粒体は、有機バインダーの含有量が少ないか、または有機バインダーを含有しない。水和物(x)が前記造粒体中に存在することにより、水和物(x)がバインダーの役割を果たし、その結果、強度に優れた造粒体を得ることができる。造粒過程で水和物(x)を生成させる場合、造粒体中の水和物(x)の量は予め測定することができない。このため、本発明では造粒体の主たる構成成分を基準として造粒体中の水和物(x)の量を規定している。具体的には石英(100)の回折ピーク面積を1(基準)として、水和物(x)の量を相対的に規定している。
【0031】
[造粒体の粒子径]
造粒体の平均粒子径(D50)は、特に限定されず、該造粒体を用いて溶融ガラスを製造する方法に応じて好適な大きさとすることが好ましい。溶融ガラスまたはガラス物品におけるガラス組成の均一性を向上させるためには、造粒体の粒径のばらつきが小さい方が好ましい。造粒体の平均粒子径および粒度分布は、原料粉末の組成、または造粒工程における製造条件によって調整できる。
【0032】
造粒体を、後述する気中溶融法によらない普通溶融法で溶融させる方法に用いる場合、造粒体の平均粒子径(D50)が1.0mm以上であると、溶融ガラス中における気泡の発生が抑えられやすい。該平均粒子径(D50)の上限は製造可能かつ溶融可能な範囲であればよい。本発明の造粒体は強度が良好であり、壊れ難いため、粒径を大きくすることができる。しかし、粒径が大きすぎると溶融効率が低下するため、たとえば平均粒子径(D50)は15mm以下が好ましい。
本発明の造粒体は、大きな造粒体であっても強度を高くできるため、特に、普通溶融法で溶融させる方法に用いられる造粒体として好適である。
【0033】
また、造粒体を気中溶融法で溶融させる場合、造粒体の平均粒子径(D50)は、50〜1000μmが好ましく、50〜800μmがより好ましい。該造粒体の平均粒子径が50μm以上であると、気中溶融時の煙道への造粒体やその溶融粒子の飛散等が生じにくい。また、造粒体が気中で溶融ガラス粒子となった際、その溶融ガラス粒子の単位質量あたりの表面積が相対的に小さくなるために、気中の溶融ガラス粒子の表面からの酸化ホウ素の揮発を少なくすることができるために好ましい。一方、該造粒体の平均粒子径が1000μm以下であると、気中加熱装置内で溶融させる際に、粒子が気中に存在する間に粒子内部まで充分にガラス化が進行して溶融ガラス粒子となるために好ましい。
【0034】
<造粒体の製造方法>
本発明の造粒体は、ケイ素源、アルミニウム源、ホウ素源、マグネシウム源、およびアルカリ土類金属源を含む原料粉末を、水の存在下で造粒する方法で製造される。必要に応じて、造粒後、さらに加熱して乾燥させることが好ましい。
原料粉末の組成は、得ようとする造粒体の組成と同じになるように調整される。
本発明者等の知見によれば、造粒体の製造過程で、ホウ素源とアルカリ土類金属源とが反応して、前記水和物(x)が良好に生成されるように原料粉末を組み合わせることにより、強度に優れた造粒体が得られる。造粒体中における該水和物(x)の含有量が多いほど、造粒体の強度は高くなる傾向がある。このため、造粒体の製造においては、ホウ素源の少なくとも一部として酸化ホウ素またはホウ酸を使用し、アルカリ土類金属源の少なくとも一部としてそのアルカリ土類金属の炭酸塩を使用することを特徴とする。
【0035】
[ケイ素源]
ケイ素源は、ガラスの製造工程中でSiO成分となり得る化合物の粉体である。ケイ素源としてはケイ砂が好適に用いられる。
本発明の造粒体は強度が良好であるため、従来はガラス原料として使用が難しかった小径のケイ砂を使用することができる。造粒体中のケイ砂の粒径が小さい方が、溶融ガラスまたはガラス物品における組成の均一性が向上しやすい。
たとえば、ケイ砂の体積累計90%の粒径(D90)が100μm以下であることが好ましく、50μm以下がより好ましい。該ケイ砂のD90は、粉末の取扱いやすさの点で20μm以上が好ましい。
【0036】
[アルミニウム源]
アルミニウム源は、ガラスの製造工程中でAl成分となり得る化合物の粉体である。酸化アルミニウム、水酸化アルミウム等が好適に用いられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。酸化アルミニウムはケイ砂とともに、通常のガラス原料の中では融点が高いために比較的溶けにくい原料である。アルミニウム源として酸化アルミニウムを用いる場合、その体積累計90%の粒径(D90)は、100μm以下が好ましい。粉末の取り扱いやすさの観点から、D90は20μm以上であることが好ましい。
【0037】
[ホウ素源]
ホウ素源は、ガラスの製造工程中でB成分となり得る化合物の粉体である。ホウ素源としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸(HBO)、四ホウ酸(H)等のホウ酸;酸化ホウ素(B);コレマナイト(ホウ酸カルシウム)等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が好ましい。
また、造粒過程で前記水和物(x)を生成させるためには、ホウ素源の少なくとも一部はホウ酸または酸化ホウ素であることが必要である。造粒過程で酸化ホウ素の少なくとも一部は水と反応してホウ酸となると考えられる。以下、ホウ酸または酸化ホウ素であるホウ素源を活性ホウ素源という。
ホウ酸を使用する場合、その平均粒径(D50)は、原料の保存安定性の点から50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。造粒体の均質性を高めるためには、1mm以下であることが好ましい。すなわち、ホウ酸を使用する場合、その平均粒径(D50)は、50μm以上1mm以下が好ましく、100μm以上1mm以下がより好ましい。
【0038】
[マグネシウム源]
マグネシウム源は、ガラスの製造工程中でMgO成分となり得る化合物の粉体である。本発明におけるマグネシウム源としては、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸マグネシウム(MgCO)が挙げられる。また後述にアルカリ土類源として挙げるドロマイト、および清澄剤として挙げるMgCl、MgF、MgSOも、ガラスの製造工程中でMgO成分となり得る化合物でありマグネシウム源である。
本発明者等の知見によれば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))および炭酸マグネシウム(MgCO)からなる群から選ばれるマグネシウム源が原料粉末に含まれると、造粒体の製造過程において前記水和物(x)が生成されにくく、その代わりにMgのホウ酸塩水和物(MgB10・7HO)が生成されやすい。これら特定のマグネシウム源が、アルカリ土類金属源よりも、活性ホウ素源との反応性が高いためと考えられる。
造粒体の製造過程中の、該マグネシウム源(MgO、Mg(OH)、MgCO)とホウ素源との反応においては、該マグネシウム源の1モルに対して、活性ホウ素源のB換算モル量で3モルが反応してMgのホウ酸塩水和物(MgB10・7HO)が生成する。したがって、原料粉末において、活性ホウ素源が、MgOとMg(OH)とMgCOの合計のモル量の3倍の量に対して充分に多く含まれていると、該原料粉末中において、活性ホウ素源の一部とマグネシウム源とが反応したとしても、残りの活性ホウ素源とアルカリ土類金属源とが反応して、強度に寄与する水和物(x)が生成されやすい点で好ましい。
【0039】
原料粉末に含まれる活性ホウ素源の量と、該マグネシウム源(MgO、Mg(OH)、MgCO)の量との差を、ガラス100g当たりのモル量で、活性ホウ素源のB換算モル量から、MgOとMg(OH)とMgCOの合計のモル量の3倍を差し引いた値Z{Z=B−3(MgO+Mg(OH)+MgCO)}で表わすと、該Zの値(単位:モル)が大きい方が、造粒体中におけるアルカリ土類金属のホウ酸塩水和物の含有量が増し、造粒体の強度がより高くなる。
本発明において、該Zの値は−0.07モル以上であり、好ましくは−0.01モル以上であり、0.02モル以上が特に好ましい。Zの上限は、造粒体のガラス組成における、Bの含有量およびMgOの含有量が本発明の範囲を超えない範囲である。
本発明におけるマグネシウム源としてはドロマイト、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムのいずれかを加えることが、前記Zを小さくし、造粒体の強度を高くするために好ましい。これらの成分はマグネシウム源であるが、他の成分源ともなるため、配合量には注意が必要である。
【0040】
マグネシウム源として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムを含有する場合、その粒径は、マグネシウム源とホウ素源との反応が抑えられやすい点からは大きい方が好ましい。
Mg(OH)を用いる場合は、その平均粒径(D50)は4μm以上が好ましい。造粒体の強度を高くするためには、100μm以上がより好ましい。これは、ホウ素源との反応が遅くなり、アルカリ土類のホウ酸塩水和物が生成しやすくなるからであると考えられる。上限は造粒体の均質性の点から1mm以下が好ましい。すなわち、Mg(OH)を用いる場合は、その平均粒径(D50)は、好ましくは4μm以上1mm以下であり、より好ましくは100μm以上1mm以下である。
マグネシウム源の一部として、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の水溶性のマグネシウム塩を用いる場合には、これらを水に溶解して造粒液として加えることがより好ましい。マグネシウム成分を含有する造粒液を用いることは造粒体の均質性を高める効果がある。
【0041】
[アルカリ土類金属源]
前記水和物(x)以外のアルカリ土類金属源は、ガラスの製造工程中でSrO、CaOまたはBaOとなり得る化合物の粉体である。また、造粒過程で水和物(x)を生成させる場合は少なくともその一部が活性ホウ素源と反応して水和物(x)となりうるアルカリ土類金属化合物である。具体例としては、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸バリウム(BaCO)、ドロマイト(理想化学組成:CaMg(CO)等の炭酸塩、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)等の酸化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、水和物(x)を生成しやすい点で、炭酸塩が好ましい。すなわち、アルカリ土類金属源が炭酸塩を1種以上含むことが好ましく、炭酸塩のみからなることがより好ましい。特に、ドロマイトを含むことが好ましい。
本発明者等の知見によれば、原料粉末中にアルカリ土類金属水酸化物が存在すると、水和物(x)が生成しにくい。したがって、原料粉末中におけるアルカリ土類金属水酸化物の含有量は少ない方が好ましい。具体的には原料粉末中における、アルカリ土類金属水酸化物の合計の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
アルカリ土類金属源の平均粒径(D50)は、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、ドロマイト等の非水溶性の原料の場合には、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。100μm以下であると水和物(x)の生成が容易になるからである。また取り扱いやすさの観点から10μm以上であることが好ましい。すなわち、アルカリ土類金属源の平均粒径(D50)は、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0042】
[その他のガラス原料]
造粒体は、必要に応じて、副原料として清澄剤、着色剤、溶融助剤、乳白剤等を含むことができる。これらは公知の成分を適宜用いることができる。副原料のうちでは清澄剤を含むことが好ましい。
[清澄剤]
清澄剤として、硫酸塩、塩化物、またはフッ化物を含有させることができる。清澄剤の含有量は合計で1〜4%が好ましい。
硫酸塩、塩化物、またはフッ化物として、ガラスを構成する酸化物のカチオンを含む化合物を用いることができる。具体的にはMgまたはアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、またはフッ化物を用いることができる。これらを用いる場合、Mgの硫酸塩、塩化物、またはフッ化物は、マグネシウム源とみなす。アルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、またはフッ化物は、アルカリ土類金属源とみなす。
Mgの硫酸塩(MgSO)、Mgの塩化物(MgCl)、またはMgのフッ化物(MgF)は、造粒体の製造工程中において、水和物(x)の生成に悪影響を与えない。したがって、これらを、副原料として造粒体に含有させると、その分だけ、MgO、Mg(OH)およびMgCOから選ばれるマグネシウム源の含有量を減らすことができる点で好ましい。
ガラス原料として硫酸塩等を用いる場合、マグネシウム塩は吸湿しやすく不安定なために取り扱いにくい問題がある。本発明においてはマグネシウム塩を水溶液にして加えることが好ましい。水溶液にして加えることで、造粒体の均質性をより高くすることができる。
【0043】
[その他の成分]
造粒体はガラス原料以外の成分を含むことができる。ガラス原料以外の成分はガラスの成分であり、たとえば前記有機バインダーが挙げられる。有機バインダーとしては通常の造粒体の製造において使用されるポリビニルアルコール等の有機バインダーを使用でき、その分子量としては10000〜300000が適当である。
本発明の造粒体は有機バインダーを含まないことが好ましいが、有機バインダーを含む場合にはその量は造粒体に対して1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0044】
以下に、造粒体の製造に使用する好ましいガラス原料や好ましいその含有量についてさらに説明する。
[ケイ砂]
ケイ砂は、ガラスの製造工程中でSiO成分となり得るケイ素源であり、造粒体の原料粉末の主成分であり、48〜52%含有する。
本発明の造粒体は強度が良好であるため、従来はガラス原料として使用が難しかった小径のケイ砂を使用することができる。造粒体中のケイ砂の粒径が小さい方が、溶融ガラスおよびガラス物品における組成の均一性が向上しやすい。
たとえば、ケイ砂の体積累計90%の粒径(D90)が100μm以下であることが好ましく、50μm以下がより好ましい。該ケイ砂のD90は、粉末の取扱いやすさの点で20μm以上が好ましい。すなわち、ケイ砂の体積累計90%の粒径(D90)は、好ましくは20μm以上100μm以下であり、より好ましくは20μm以上50μm以下である。
[酸化アルミニウム]
酸化アルミニウムは、アルミニウム源であり、造粒体の原料粉末中に13〜17%含有する。酸化アルミニウムはケイ砂とともに、通常のガラス原料の中では融点が高いために比較的溶けにくい原料である。酸化アルミニウム粉末の体積累計90%の粒径(D90)は、100μm以下が好ましい。粉末の取り扱いやすさの観点から、D90は20μm以上であることが好ましい。
【0045】
[ホウ酸]
ホウ酸は安価で入手しやすい活性ホウ素源である。特に、オルトホウ酸が入手しやすく、造粒工程で水に溶けると、バインダーとして作用する成分であり、原料分粉末の合計量を100%として、原料粉末中にオルトホウ酸換算で2〜13%含有する。ホウ酸の含有量が2%未満であると造粒体の強度が不充分になるおそれがある。ホウ酸の含有量は4%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。13%超であると固体ガラスの化学的耐久性が不充分になる恐れがある。すなわち、ホウ酸の含有量は、通常2〜13%であり、好ましくは4〜13%であり、より好ましくは8〜13%であり、さらに好ましくは10〜13%である。
また、原料粉末にMgO、Mg(OH)、MgCOのいずれかが含まれる場合には、ガラス100gあたりのホウ酸のB換算モル量から、MgOとMg(OH)とMgCOの合計のモル量の3倍を差し引いた値Z{Z=B−3(MgO+Mg(OH)+MgCO)}で表わしたときの、該Zの値(単位:モル)が大きい方が、造粒体中におけるアルカリ土類金属のホウ酸塩水和物の含有量が増し、造粒体の強度がより高くなる。
前記のように、該Zの値は−0.07モル以上であり、好ましくは―0.01モル以上であり、0.02モル以上が特に好ましい。
ホウ酸粉末の平均粒径(D50)は、原料の保存安定性の点から50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。造粒体の均質性を高めるためには、1mm以下であることが好ましい。すなわち、ホウ酸粉末の平均粒径(D50)は、50μm以上1mm以下が好ましく、100μm以上1mm以下がより好ましい。
【0046】
[ドロマイト]
ドロマイトはCaMg(CO組成の炭酸塩であり、アルカリ土類金属源かつマグネシウム源であり、造粒体の原料粉末の合計量を100%として、造粒体の原料粉末中に3〜12%含有する。
ドロマイトを含有することによってMgO、Mg(OH)、MgCOの使用量を減らして、前記Zの値を大きくし、造粒体の強度を高くすることができる。ドロマイトの含有量は好ましくは6%以上、より好ましくは8%以上である。すなわち、ドロマイトの含有量は、造粒体の原料粉末の合計量を100%として、通常3〜12%であり、好ましくは6〜12%であり、より好ましくは8〜12%である。
ドロマイトの平均粒径(D50)は、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。100μm以下であるとアルカリ土類金属のホウ酸塩水和物の生成が容易になるからである。また取り扱いやすさの観点から10μm以上であることが好ましい。すなわち、ドロマイトの平均粒径(D50)は、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0047】
[アルカリ土類金属炭酸塩]
炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムはいずれもアルカリ土類金属源であり、造粒過程でホウ酸と反応して前記水和物(x)を生成する原料であり、原料粉末中に、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムおよび炭酸バリウムからなる群より選ばれる1種以上を含有する。原料粉末の合計量を100%として、原料粉末中の含有量は合計で7〜36%である。該含有量は、好ましくは26%以下である。ガラスの安定性を高くするために、より好ましくは12%以下である。炭酸ストロンチウムを7%以上含有することがより好ましい。すなわち、アルカリ土類金属炭酸塩の含有量の合計量は、原料粉末の合計量を100%として、原料粉末中、通常7〜36%であり、好ましくは7%以上26%以下であり、より好ましくは7%以上12%以下である。
アルカリ土類金属炭酸塩の平均粒径(D50)は、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。100μm以下であると水和物(x)の生成が容易になるからである。また取り扱いやすさの観点から10μm以上であることが好ましい。アルカリ土類金属炭酸塩の平均粒径(D50)は、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下である。
[アルカリ土類金属水酸化物]
水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムはいずれもアルカリ土類金属源であるが、前記のように原料粉末中にこれらの水酸化物が存在すると前記水和物(x)が生成しにくい。
原料粉末中における、アルカリ土類金属水酸化物の合計の含有量は、原料粉末の合計量を100%として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
【0048】
[MgO、Mg(OH)、MgCO
MgO、Mg(OH)、MgCOはマグネシウム源である。原料粉末が、MgO、Mg(OH)およびMgCOからなる群から選ばれる1種以上を含む場合には、その含有量は4%以下であり、好ましくは3%以下である。該含有量はゼロでもよい。
本発明者等の知見によれば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))および炭酸マグネシウム(MgCO)からなる群から選ばれるマグネシウム源が原料粉末に含まれると、前記のように造粒過程において水和物(x)が生成されにくく、その代わりにMgのホウ酸塩水和物(MgB10・7HO)が生成されやすい。これら特定のマグネシウム源が、アルカリ土類金属源よりも、活性ホウ素源との反応性が高いためと考えられる。
【0049】
[造粒方法]
造粒では、得ようとする造粒体の組成と同じ組成に調整された原料粉末を水の存在下で造粒する。原料粉末に供給される水は、公知の添加剤を含む水溶液でもよいが、有機物の含有量が少ないことが好ましい。
【0050】
原料粉末中の、活性ホウ素源とアルカリ土類金属炭酸塩との反応は、常温では生じにくいため、造粒中または造粒後に、これらが反応して水和物(x)が生成する程度に温度が上昇することが必要である。たとえば、活性ホウ素源とアルカリ土類金属炭酸塩とが接触した状態で、40℃以上、5分間以上の熱履歴を受けることが好ましい。必要であれば、積極的に加熱を行い上記反応を促進することが好ましい。通常、造粒体の製造においては、造粒の後または造粒中の粒子を加熱して、粒子中の余分の水分を除去する、すなわち、造粒体を乾燥する、ことが通例である。したがって、本発明の造粒体の製造においては、この造粒体の加熱乾燥の際に上記反応が促進され、強度の高い造粒体が得られる。
【0051】
造粒は、公知の造粒法を適宜用いて行うことができる。たとえば転動造粒法またはスプレードライ造粒法が好適に用いられる。たとえばD50が1.0mm以上の造粒体など、粒径が比較的大きい造粒体を製造しやすい点では転動造粒法が好ましい。
[転動造粒法]
転動造粒法としては、例えば、原料粉末を転動造粒装置の容器内に入れ、容器内を振動および/または回転させることにより原料粉末を混合転動撹拌させながら、該原料粉末に所定量の水を噴霧して造粒する方法が好ましい。
転動造粒装置の容器としては、皿状、円筒状、円錐状の回転容器や、振動型容器などを使用でき、特に限定されない。
転動造粒装置は、特に限定されないが、たとえば、垂直方向に対して傾いた方向を回転軸として回転する容器と、容器内で回転軸を中心として容器と反対方向に回転する回転翼とを備えるものなどを用いることができる。このような転動造粒装置として、具体的には、アイリッヒ・インテンシブミキサ(商品名:アイリッヒ社製)などが挙げられる。
水の使用量は、多すぎると乾燥に長時間を要するが、少なすぎると造粒体の強度が不足するため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。たとえば原料粉末の合計量の100質量部に対して、10〜20質量部の水を供給して造粒することが好ましい。
造粒体の粒径は、撹拌の強度および撹拌時間によって制御することができる。
転動造粒装置で造粒した後、得られた粒子を加熱乾燥させることが好ましい。公知の加熱乾燥方法で行うことができる。たとえば、熱風乾燥機を用い、100℃〜120℃の温度で1時間〜12時間加熱する方法を用いることができる。
【0052】
[スプレードライ造粒法]
スプレードライ造粒法は公知の方法で行うことができる。たとえば、ボールミル等の撹拌装置を用い、原料粉末に水を供給してスラリーを調製し、該スラリーをスプレードライヤー等の噴霧手段を用いて、たとえば200〜500℃程度の高温雰囲気中に噴霧して乾燥固化させることにより造粒体が得られる。
【0053】
得られた造粒体は、必要に応じて、篩分けしてもよい。
加熱乾燥後の造粒体、またはスプレードライ造粒法で得られた造粒体に含まれる水分含有量は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下である。該造粒体の水分含有量が2%超であると溶解工程において多量の水分が揮発することによって熱効率が悪くなる。
なお、本発明における造粒体の水分含有量は造粒体を120℃に1時間保持した前後の重量減少率によって求められる。
【0054】
<溶融ガラスの製造方法>
本発明の溶融ガラスの製造方法は、本発明の造粒体を加熱して溶融ガラスとすることを特徴とする。溶融は、シーメンス型のガラス溶融炉等を用いる普通溶融法で行ってもよく、気中溶融法で行ってもよい。いずれも公知の方法で実施できる。
[普通溶融法]
普通溶融法は、ガラス溶融炉内で、既に溶融している溶融ガラスが存在する場合はその液面上に、造粒体を投入し、該造粒体が塊(バッチ山、batch pileともいう。)となったものをバーナー等によって加熱して、該塊の表面から融解を進行させ、徐々に溶融ガラスとする方法である。
大型の装置を用いて大量のガラスを製造する場合などには、原料バッチとガラス板などを破砕して得られるカレットを混合して投入することがしばしば行われる。本発明の造粒体は強度が高いため、本発明の造粒体からなる原料バッチとカレットを混合して投入する場合でも壊れにくいので好ましい。カレットのガラス組成は本発明の造粒体から得られるガラスのガラス組成であることが好ましい。具体的には、本発明の造粒体を使用して得られるガラス物品のカレットや該ガラス物品を製造する工程で生じるカレットを使用することが好ましい。
【0055】
[気中溶融法]
気中溶融法は、気相雰囲気中で造粒体を溶融させて溶融ガラス粒子とし、該溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとすることを特徴とする。
具体的には、まず造粒体を気中加熱装置の高温の気相雰囲気中に導入し、気相雰囲気内で溶融ガラス化して溶融ガラス粒子とする。気中加熱装置は公知のものを使用できる。本発明の造粒体は強度に優れるため、搬送時または導入時に、粒子同士や粒子と搬送路内壁等との衝突が生じても微粉発生が抑えられる。
次いで、気中加熱装置内の溶融ガラス粒子を集積してガラス融液を得、ここから取り出した溶融ガラスを、次の成形工程に供する。溶融ガラス粒子を集積する方法としては、たとえば、気相雰囲気中を自重で落下する溶融ガラス粒子を、気相雰囲気下部に設けた耐熱容器に受けて集積する方法が挙げられる。
【0056】
<ガラス物品の製造方法>
本発明のガラス物品の製造方法は、本発明の溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形して徐冷することによりガラス物品を製造する方法である。
図1は本発明のガラス物品の製造方法の一例を示す流れ図である。符号S1はガラス溶融工程であり、本発明の溶融ガラスの製造方法におけるガラス溶融工程に相当する。
まず、ガラス溶融工程S1で得た溶融ガラスを、成形工程S2で目的の形状に成形した後、徐冷工程S3にて徐冷する。その後、必要に応じて後加工工程S4において切断や研磨など、公知の方法で後加工を施すことによりガラス物品G5が得られる。
成形工程はフロート法、ダウンドロー法、フュージョン法等の公知の方法で行うことができる。フロート法は、溶融スズ上で溶融ガラスを板状に成形する方法である。本発明の造粒体を普通溶融法に使用すると、特に水分含有量(β―OH)が少ないガラス物品が得られ、溶融スズに接するガラス面での欠点が出にくくなるため、フロート法が特に好ましい。徐冷工程S3も公知の方法で行うことができる。
【0057】
溶融ガラスの製造またはガラス物品の製造において、本発明の造粒体を用いることにより、有機バインダーに起因するガラスの着色の問題を改善しつつ、原料粉末の飛散を防止できる。また、造粒体の強度が良好であるため、微粉の発生が抑えられ、組成の均一性が良好な溶融ガラスまたはガラス物品が得られる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<製造例1〜14:造粒体製造例>
[ガラス組成]
ガラス組成は、表1に示すG1〜G11の11通りを用いた。単位はモル%である。
【0059】
【表1】
【0060】
[配合例]
配合は、表2、3に示す16通りを用いた。単位は質量%である。
原料として用いた塩化マグネシウムは6水和物、塩化ストロンチウムは6水和物、硫酸マグネシウムは7水和物、硫酸カルシウムは2水和物である。
ケイ砂のD50およびD90、酸化アルミニウムのD90、ならびに他の原料粉末のD50は以下の通りである。
ケイ砂のD50:26μm、D90:45μm、
酸化アルミニウムのD90:90μm、
ホウ酸のD50:300μm、
ドロマイトのD50:45μm、
水酸化マグネシウムのD50:5μm、
塩化マグネシウムのD50:3000μm、
炭酸マグネシウムのD50:10μm、
炭酸バリウムのD50:50μm、
硫酸マグネシウムのD50:1000μm、
水酸化ストロンチウムのD50:400μm、
塩化ストロンチウムのD50:400μm、
炭酸ストロンチウムのD50:60μm、
水酸化カルシウムのD50:10μm、
炭酸カルシウムのD50:50μm、
硫酸カルシウムのD50:250μm
酸化鉄のD50:90μm。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
[造粒体の製造]
表2、3に示す配合例の原料粉末を用いて、D50が約2mmの造粒体を製造した。各製造例番号と配合例番号とガラス組成との対応は表4、5に示すとおりである。造粒法は下記の転動造粒法を用いた。
造粒装置としては、以下のアイリッヒ・インテンテンシブミキサ(製品名、日本アイリッヒ社製、型式)を用いた。
本体:R02型、容量5L。
ロータ:φ125mm、スター型。
まず、造粒装置に原料粉末3.0kgを投入し、パン回転数42rpm、ロータ回転数900rpm、混合時間30秒間の条件で混合した(混合工程)。
続いて、ロータを止め、パンのみを回転させながら、水490gを投入し、ロータ回転数を3000rpmに上げて18分間造粒を行った(造粒工程)。
次いで、ロータ回転数を900rpmに下げて1分間整粒を行った(整粒工程)。
得られた造粒物をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥器中で、80℃、12分間の条件で加熱乾燥を行って、造粒体を得た(加熱乾燥工程)。
【0064】
[Z=B−3(MgO+Mg(OH)+MgCO)の値]
各製造例において、原料粉末中のホウ素源およびマグネシウム源について、ガラス100g当たりの各成分の酸化物換算のモル量を求め、B−3(MgO+Mg(OH)+MgCO)で得られるZの値(単位:モル)を求めた。
【0065】
[相対回折ピーク面積の測定]
各製造例で得られた造粒体を、メノウ乳鉢で細かくすりつぶした試料について、自動X線回折装置(製品名:RINT2500、リガク社製)により、CuKα線を使用して、2θが5〜40度の範囲で0.02度の間隔で、粉末X線回折法による分析を行った。得られたXRDスペクトルの例を図2〜6に示す。図2は製造例2のXRDスペクトルである。図3図6は順に製造例1、4、8、12のXRDスペクトルである。また、図10は製造例15のXRDスペクトルである。各XRDスペクトルにおいて、アルカリ土類ホウ酸塩ピーク付近のスペクトルを実線で、バックグランドを点線で示す。各XRDスペクトルにおいて縦軸はカウント数(無単位)、横軸は2θである。
上記粉末X線回折法により、水和物(x)[ホウ酸カルシウム水和物]、水和物(x)[ホウ酸ストロンチウム水和物]、水和物(x)[ホウ酸バリウム水和物]の相対回折ピーク面積をそれぞれ測定した。結果を表4、5に示す。
【0066】
[微粉化率の測定および造粒体強度の評価(カレット混合破砕試験)]
厚さが約1mmで縦20mm×横20mm程度の大きさの無アルカリガラスカレット50gと造粒子体50gとを250mlのポリ容器に入れて200回振り混ぜた後、開き目が約200μmのふるいを通過した粒子の重量(Y)を測定して、もとの造粒子体の重量(50g)を基準としたYの割合を微粉化率(単位:%)とした。この値が小さいほど造粒体の強度が高いことを示す。
微粉化率の値に基づいて造粒体の強度を評価した。微粉化率の値が10%未満である場合を「A」(優)、10%以上30%未満である場合を「B」(良)、30%以上55%未満である場合を「C」(可)、55%以上を「D」(不可)とした。造粒体強度がA、BまたはCであることが好ましい。
これらの結果を表4、5に示す。製造例7、14は微粉化率が100%であり、造粒体が形成されていなかったため造粒体強度は「−」と表記した。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
表4、5に示されるように、製造例1〜5および製造例8、9、11〜13、15は良好な造粒体強度が得られた。特に製造例1〜3、製造例8、9、および製造例15は造粒体強度に優れる。
製造例5、12、13は、相対的に造粒体の強度が低かった。
製造例6はガラス組成(G5)におけるBの含有量が少なく、製造例7はガラス組成(G6)において、製造例16はガラス組成(G11)においてホウ酸を含有していない。このため水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]の相対回折ピーク面積の値がゼロで、造粒体の良好な強度が得られなかった。なお製造例6、7は水和物(x)[ホウ酸Ca水和物]の相対回折ピーク面積もゼロであり、製造例16は水和物(x)[ホウ酸Ba水和物]の相対回折ピーク面積もゼロである。
製造例8〜10はガラス組成がSrOとBaOのいずれも含有しない例である。製造例10はガラス組成(G9)における炭酸カルシウムの含有量は多いが、Bの含有量が少ない。このため水和物(x)[ホウ酸Ca水和物]の相対回折ピーク面積の値がゼロで、造粒体の良好な強度が得られなかった。
【0070】
製造例12、13は、ガラス組成(G1)は製造例1、2と同じであるが、製造例12はドロマイトを用いず、その代わりに炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを用いた例であり、製造例13はドロマイトを用いず、その代わりに水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムを用いた例である。いずれも水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]の相対回折ピーク面積の値が比較的低く、造粒体の強度がやや劣る。その原因は、製造例12は特にZの値が小さいこと、製造例13は特にカルシウム源に水酸化カルシウムが多く含まれることであると考えられる。
製造例14は、水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]の相対回折ピーク面積の値がゼロで、造粒体が形成されなかった。製造例14は、ストロンチウム源として炭酸ストロンチウムを用いず、その代わりに水酸化ストロンチウムを用いたことが原因と考えられる。
製造例6、10は水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]、水和物(x)[ホウ酸Ca水和物]のいずれのピークも認められないが、微粉化率は100%ではなく、強度の不充分な造粒体が形成された。
また、製造例16は水和物(x)[ホウ酸Ba水和物]のピークが認められないが、微粉化率は100%ではなく、強度の不充分な造粒体が形成された。
この理由は、原料粉末に含まれるホウ酸が弱いバインダーとして作用しているためと考えられる。
【0071】
造粒体の製造工程中で水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]が生成されるとき、Zの値が大きい方が、造粒体中における水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]の含有量が多くなる傾向がある。
【0072】
<製造例21〜27:ガラス塊製造例>
[製造例21]
配合例番号G1−1(製造例1)において、ケイ砂のD50を57μm、D90を91μm、ドロマイト粉末のD50を264μm、炭酸ストロンチウム粉末のD50を513μmに変更した。そのほかは製造例1と同様にして造粒体を製造し、得られた造粒体を用いて溶融ガラスおよびガラス塊を製造した。
具体的には、ガラス化後の質量が250gとなる量の造粒体を、直径が約80mmの白金坩堝に入れ、1550℃の電気炉で60分間加熱して造粒体を溶融させた。その後、溶融ガラスを徐冷して、ガラス塊を作った。
坩堝の上部中央のガラスをコアドリルで直径40mm、高さ25mmの円柱状ガラスにくり貫いた。該円柱状ガラスの中心軸を含む厚さ1mmのガラス板を切り出した。切り出し面の両面を光学研磨加工(鏡面研磨仕上げ)し、評価サンプルとした。図7は得られたガラス板の切り出し面の写真である。
【0073】
得られた評価サンプルについて、ガラス中の水分含有量の指標となるガラスのβ−OH値、ガラス組成の均一性の指標となる△SiO値を下記の方法で測定した。結果を表6に示す。(β−OH値の測定方法)
ガラスのβ−OH値(単位:mm−1)は、評価サンプルについて波長2.75〜2.95μmの光に対する吸光度を測定し、その最大値βmaxを該評価サンプルの厚さ(mm)で割った値である。β−OH値が小さいほどガラス中の水分量が少ないことを示す。(△SiO値の測定方法)
評価サンプルのうち、坩堝のガラス上面から0〜3mmの間に相当するガラス塊の部位について、蛍光X線分析法によりSiO濃度(単位:質量%)を測定した。測定値をX1とした。坩堝のガラス上面から22〜25mmの間に相当するガラス塊の部位について、同様にしてSiO濃度(単位:質量%)を測定した。測定値をX2とした。X1からX2を差し引いた値(X1−X2)を△SiO値とした。△SiO値が小さいほどガラス組成の均一性が高いことを示す。
【0074】
[製造例22]
製造例21において、原料粉末を造粒せずに用いたほかは、製造例21と同様にして溶融ガラスおよびガラス塊を製造し、評価した。結果を表6に示す。図8は得られたガラス板の切り出し面の写真である。
【0075】
[製造例23〜26]
表6に示す配合例番号の原料を用いた。ただし、ケイ砂のD50は26μm、ドロマイト粉末のD50は48μm、炭酸ストロンチウム粉末のD50は62μmに変更した。製造例23〜26は製造例21(造粒有り)と同様にして溶融ガラスおよびガラス塊を製造し、評価した。結果を表6に示す。図9は製造例23で得られたガラス板の切り出し面の写真である。
【0076】
[製造例27]
製造例24において原料を造粒せずに用いたほかは、製造例24と同様にして溶融ガラスおよびガラス塊を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6の結果に示されるように、製造例21、23〜25は、ガラス組成の均一性に優れ、水分量も少ない。
特に製造例21と製造例23を比較すると、ガラス組成が同じであっても、ケイ砂等の原料粉末が細かい製造例23のほうが△SiOが小さく、ガラス組成の均一性がより向上していることがわかる。
造粒をしなかった製造例22は、製造例21と比べて、ガラス組成の均一性が劣り、水分量も多い。
造粒をしなかった製造例27は、製造例24と比べて、ガラス組成の均一性が劣り、水分量も多い。また製造例27は、原料が微粉末であるために、溶解作業中の飛散が著しく、作業効率が悪かった。
製造例26は、ガラス組成はG1でありながら、水和物(x)[ホウ酸Sr水和物]の相対回折ピーク面積の値が低く造粒ができなかった製造例14と配合が同じである。β―OH、△SiO値が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の造粒体は、有機バインダーの含有量が少なく、または有機バインダーを含有せず、強度に優れているため、溶融ガラスの製造方法およびガラス物品の製造方法に好適に用いることができる。
なお、2011年5月25日に出願された日本特許出願2011−117147号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0080】
S1 ガラス溶融工程
S2 成形工程
S3 徐冷工程
S4 後加工工程
G5 ガラス物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10