(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の太陽電池用基板にプラズマCVD装置を用いて反射防止膜を同時に製膜する工程を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、上記工程において、まず同一条件で同時に製造した複数枚の太陽電池用基板上に上記プラズマCVD装置を用いて反射防止膜を同時に製膜したものの中で最小の膜厚の反射防止膜を有する基板が最小の反射率を有するものとなる反射防止膜の膜厚を与えるプラズマCVD装置での製造条件を求め、この製造条件で以後の反射防止膜の製膜を繰り返すことにより、この製造条件で複数枚の太陽電池用基板に反射防止膜を製膜する場合、最小の膜厚の反射防止膜が最小の反射率を有する基板を形成すると共に、当該基板を含む反射防止膜付き基板の波長300〜1200nmにおける反射率が3%未満である基板を採取するようにし、その採取以外の基板について、反射防止膜を化学エッチング処理して、該反射防止膜付き基板の反射率が上記採取した反射防止膜付き基板の反射率と同じになるまで反射防止膜の膜厚を減少させ、この反射防止膜の膜厚を減少させた反射防止膜付き基板及び上記採取した反射防止膜付き基板の表裏面に電極を形成して外観を黒色乃至濃紺色の色彩で揃え、短絡電流を一定とした太陽電池を配線接続してモジュール化することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
上記反射防止膜を製膜する前に、上記複数枚の太陽電池用基板の反射防止膜を製膜する面に同一条件で同時にテクスチャを形成することを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマCVDによる窒化珪素膜等の絶縁膜(反射防止膜)の堆積方法として、特許文献1(特開2009−130041号公報)においては、窒化珪素膜の製膜前に、水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスを用いて形成されるプラズマによって基板を処理することでパッシベーション効果が向上することが報告されている。しかしながら、特許文献1の方法においては、何れも絶縁膜形成プロセスとは別のプロセスを要するため、製造コストが高くなり、また、生産性向上が難しいという問題があった。更に、プラズマCVD法にて所定枚数作製した各反射防止膜付基板の反射率にばらつきが生じてしまい、太陽電池にしたときの変換効率も低くなってしまっていた。
【0003】
プラズマCVD法により所定枚数作製した各反射防止膜付基板の反射率にばらつきが生じてしまう理由としては、プラズマCVD装置内のトレー面内の温度分布に偏りが発生していることが挙げられる。大量生産により、一度に処理する枚数が増えたため、トレー面積が増加し、そのためにトレー面内温度分布に偏りが発生し、製膜速度においても偏りが発生して、製膜速度の速い部分と遅い部分が出ている。製膜速度のばらつきは膜厚のばらつきとなり、反射防止膜自体の反射率にばらつきを発生させることとなる。その結果、一度の処理で得られた複数枚の基板で一つの太陽電池モジュールを構成すると、見た目の色彩が不揃いで、変換効率にもばらつきが生じるという問題があった。
【0004】
このために、特許文献2(特開2003−197937号公報)では、反射防止膜の製膜処理工程後に行われる表面電極の焼成に際し、反射防止膜の膜厚に基づいて焼成温度を上昇又は下降させて基板の表面状態を制御する方法が提案されている。しかし、見た目の色彩が良く、変換効率も良好な太陽電池を得るにはなお不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、反射防止膜の反射率を許容範囲とする太陽電池用基板を、効率よく有効に、基板の無駄なく製造することを可能とした太陽電池モジュールの製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、結晶系シリコン等の基板を母体とする太陽電池本体と、この太陽電池本体の受光面側に形成される反射防止膜とを備えた太陽電池を所定個数製造するにあたり、反射防止膜の膜厚と反射率との関係を検討した。その結果、複数枚の太陽電池用基板にプラズマCVD装置により反射防止膜を通常の条件で製膜した場合、これら複数枚の基板上に形成された反射防止膜は、反射率乃至膜の色彩や膜厚がばらつくが、膜厚と反射率とは膜厚を横軸にとってその関係を調べると、凹状カーブとなる関係を与え、最小の膜厚から最大の膜厚に向かうに従い、反射率が低下し、最小の反射率をとった後、再度反射率が上昇することが認められた。この場合、許容範囲の低反射率を有し、黒色乃至濃紺色の色彩を有する反射防止膜の膜厚より厚い膜厚を有し、このため反射率が許容範囲から外れた反射防止膜を持つ基板については、エッチング処理により反射防止膜の膜厚を減少させることにより、反射率を制御する。従って、膜の色彩や膜厚を許容範囲とし、その基板を以後の工程に用いることができる。しかしながら、膜厚が薄く、反射率が許容範囲にないものは、再度反射防止膜を別途に製膜するしか反射防止膜を許容範囲にする手段がないが、かかる手段は効率等の点から採用し難い。
【0008】
そこで、本発明者らは更に検討を進めた結果、まず最初に、複数枚の基板に通常の条件でプラズマCVD装置を用いて反射防止膜を製膜し、そのうち最小の膜厚のものを選定する。一方で、プラズマCVD装置を用いて反射防止膜を製膜する場合における製膜条件のパラメータと膜の反射率乃至膜厚の関係を調べておき、上記最小の膜厚の反射防止膜が最小の反射率を与える膜厚となるような製造条件を求める。典型的には、製膜時間乃至は基板を搭載するトレイの移動速度を所要の条件とすることにより、上記最小膜厚であるが反射率等が許容範囲外の反射防止膜の膜厚をより厚くして、反射率等が許容範囲内になるような条件で以後の製膜を行い、これにより最小の膜厚が最小の反射率となる反射防止膜を形成するようにする。そして、この基板を含む反射率等が許容範囲にある反射防止膜を有する基板を採取すると共に、反射率等が許容範囲外の反射防止膜はいずれも膜厚が厚いものであるから、その膜厚をエッチングによって減少させることで、反射率、及びこの反射率と関連する膜の色彩や膜厚を容易に効率よく許容範囲にし得ることを知見した。このように、所定の膜厚より厚い反射防止膜が形成されてしまった際に、所定厚みより厚く形成された分量をエッチバックする(マスク等を用いないで反射防止膜全体をエッチングする)ことが、太陽電池の見た目の色彩を揃えるためにも有効であることを知見した。そして、エッチバックの目安としては、可視光領域の反射率を所定範囲内になるように制御しながら、黒色乃至濃紺色の色彩を呈するように反射防止膜をエッチバックすることで、均一な膜厚及び反射率を有する反射防止膜を形成することができ、この方法で作製した反射防止膜を有する太陽電池はいずれも変換効率が高く、しかも色むらなどの美観を損ねることもないので、これらを用いてモジュール化すると、色彩の揃った美しい太陽電池モジュールが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
〈1〉
複数枚の太陽電池用基板にプラズマCVD装置を用いて反射防止膜を同時に製膜する工程を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、上記工程において、まず同一条件で同時に製造した複数枚の太陽電池用基板上に
上記プラズマCVD装置を用いて反射防止膜を
同時に製膜
したものの中で最小の膜厚の反射防止膜を有する基板
が最小の反射率を有する
ものとなる反射防止膜の膜厚を与えるプラズマCVD装置での製造条件を求め、この製造条件で以後の反射防止膜の製膜を繰り返すことにより、この製造条件で複数枚の太陽電池用基板に反射防止膜を製膜する場合、最小の膜厚の反射防止膜が最小の反射率を有する基板を形成すると共に、当該基板を含む反射防止膜付き基板の波長300〜1200nmにおける反射率が3%未満である基板を採取するようにし、その採取以外の基板について、反射防止膜を化学エッチング処理して、該反射防止膜付き基板の反射率が上記採取した反射防止膜付き基板の反射率と同じになるまで反射防止膜の膜厚を減少させ、この反射防止膜の膜厚を減少させた反射防止膜付き基板及び上記採取した反射防止膜付き基板の表裏面に電極を形成して外観を黒色乃至濃紺色の色彩で揃え、短絡電流を一定とした太陽電池を配線接続してモジュール化することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
〈2〉
上記反射防止膜を製膜する前に、上記複数枚の太陽電池用基板の反射防止膜を製膜する面に同一条件で同時にテクスチャを形成することを特徴とする〈1〉記載の太陽電池モジュールの製造方法。
〈3〉
化学エッチングが、反射防止膜付き基板の反射率を測定しながらエッチングするものである〈1〉又は〈2〉記載の太陽電池モジュールの製造方法。
〈
4〉
上記複数枚の太陽電池用基板は、厚さと比抵抗が同じ単結晶シリコン基板である〈1〉〜〈
3〉のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
〈
5〉
上記反射防止膜を製膜する前に、上記複数枚の太陽電池用基板の反射防止膜を製膜する面に同一条件で同時にpn接合を形成することを特徴とする〈1〉〜〈
4〉のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射防止膜の反射率を許容範囲とする太陽電池用基板を容易に、効率よく有効に、基板の無駄なく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明による反射防止膜を形成した基板の断面を示す図である。
図1において、1は太陽電池本体を形成する基板であり、主としてホウ素、ガリウム等のIII族元素をドープしたp型単結晶シリコン基板が用いられる。また、リン、ヒ素等をドープしたn型単結晶シリコン基板を用いてもよい。基板としては結晶系シリコン基板であれば単結晶シリコン基板に限らず、p型又はn型多結晶シリコン基板等の結晶系シリコン基板であってもよい。基板の比抵抗は0.1〜20Ω・cmが好ましい。
図1においては、p型単結晶シリコン基板を例に挙げて説明する。
【0013】
シリコン基板は、これを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液や、フッ硝酸等の酸水溶液に浸漬してスライスによるダメージ層を除去する。次いで、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や、これらにイソプロピルアルコールを加えたものを用いたアルカリエッチング、酸エッチング等により、基板表面に微細な凹凸構造(テクスチャー)を形成する(図示せず)。
【0014】
基板1の受光面側となる表面には、太陽電池として起電力を生じさせるのに必要なpn接合を形成するためのn型拡散層2を形成する。形成方法は、例えばテクスチャーを形成した基板の非受光面どうしを重ね合わせ、石英ボートに搭載して、拡散炉に投入する方法がある。ヒーター温度を800〜900℃まで昇温して、オキシ塩化リンを窒素毎分1リットル/分にてバブリングさせ、蒸発したオキシ塩化リンは、酸素ガス毎分1リットル/分を伴ってシリコン表面にリンガラスとして堆積される。引き続き、窒素雰囲気中に放置した後、拡散炉から取り出す。
【0015】
次に、n型拡散層2の上に、反射防止膜3を積層する。本発明においては、例えば
図2に示すような、アンモニアガス(NH
3)及びモノシランガス(SiH
4)を用いたプラズマCVD装置により窒化珪素(SiNx)からなる反射防止膜を形成することができる。
図2は、一般にダイレクトプラズマCVDと呼ばれる平行平板型プラズマCVD装置を模式的に示すものである。
図2に示すCVD装置10は、製膜室11を有し、この製膜室11内には、所定位置にシリコン基板12を載置するためのトレー13、このトレーを一定温度に保つためのヒーターブロック14、及びヒーターブロックの温度を制御する温度制御手段15が配設されている。また、製膜室11には、反応性ガスである所定の製膜用ガスをこの製膜室内に導入する製膜用ガス導入路16、導入されたガスにエネルギーを与えてプラズマを発生させる高周波電源17、及び排気装置18が備えられている。
このCVD装置にて反射防止膜を製膜する場合、製膜用ガス導入路16によって所定の製膜用ガスを所定の流量で製膜室11内に導入した後、高周波電源17を動作させて高周波電界を設定する。この操作により、高周波放電が発生して製膜用ガスがプラズマ化し、プラズマによって生じる反応を利用して、シリコン基板12の表面に反射防止膜を製膜する。
【0016】
プラズマCVD装置では、製膜条件パラメータを変化させることにより、膜の屈折率(反射率)、膜厚等を変化させることができる。反射防止膜製膜の主なパラメータとしては、アンモニア/モノシランのガス流量比1.6〜4、圧力0.1〜10Torr、放電電力1000〜1400W、製膜温度300〜550℃を使用することが好ましい。より好ましくは、アンモニア/モノシランのガス流量比2〜3、圧力0.5〜2Torr、放電電力1100〜1300W、製膜温度400〜500℃にすると良い。
【0017】
反射防止膜の屈折率(反射率)は、製膜条件により調整できるので、予め製膜条件と屈折率(反射率)との対応を実験的に見出してテーブルとして記録しておくことにより、任意の屈折率(反射率)の膜を形成することができる。例えば、窒化珪素からなる反射防止膜の反射率は、0〜3%であることが好ましい。
【0018】
また、膜厚についても製膜条件により製膜速度が変化するので、予め製膜条件と膜厚との関係を調べて記録しておき、製膜時間をモニタすることにより膜厚を制御することができる。しかし、多数枚のセルを一度に処理するプラズマCVD装置では、装置内に設けられた、基板を載置するためのトレーが巨大化し、トレー面内温度分布が均一でないため、反射防止膜の膜厚にばらつきが生じる。
なお、本発明において、膜厚は、エリプソメータ(Gaertner Scientific Corporation社製)により測定した値である。また、反射率は、反射率計(島津製作所製)により波長300〜1200nm、25℃で測定した値である。
【0019】
本発明においては、まず複数枚の太陽電池用基板上に反射防止膜を製膜し、そのうち最小の膜厚の反射防止膜を有する基板を選択すると共に、この基板の反射防止膜が最小の反射率を有する膜厚を与えるプラズマCVD装置での製造条件を求め、この製造条件で以後の反射防止膜の製膜を繰り返すことにより、この製造条件で複数枚の太陽電池用基板に反射防止膜を製膜する場合、最小の膜厚の反射防止膜が最小の反射率を有する基板を形成するものである。
この場合、上記製造条件のうちでは、製膜時間又は基板を搭載するトレイの移動速度を450mm/分以下の範囲で制御することが好ましい。
【0020】
また、上記繰り返し製膜操作で反射防止膜が製膜された基板のうち、上記最小の膜厚で最小の反射率を有する反射防止膜が形成された基板を含む反射防止膜の反射率、膜の色彩又は膜厚が許容範囲にある基板を採取し、以後の工程を進める。一方、反射防止膜の反射率、膜の色彩又は膜厚が許容範囲外の基板の反射防止膜をエッチング処理して、その反射防止膜の膜厚を反射防止膜の反射率、膜の色彩又は膜厚が許容範囲となるまで減少させる。
【0021】
なお、上記範囲の反射率を有する反射防止膜の色彩は、黒又は濃紺色である。これ以外の反射防止膜は全てこれより厚く製膜されているため、膜厚及び反射率が上記範囲内となり、反射防止膜が黒色乃至濃紺色になるようにエッチバックし、全ての膜の色彩を揃えるようにする。
【0022】
エッチバックには、例えば
図3に示すように、エッチング液滴下ノズル22、リンス液滴下ノズル23、及び反射率計24を具備したエッチング装置20を使用する。反射防止膜付基板21は、エッチング槽25内に配設され、基板を吸着・固定できる吸着チャック26で固定し、この基板上からエッチング液又はリンス液を滴下して反射防止膜全面をエッチングする。エッチング液は、フッ酸又はフッ酸を含む混合液を使用してもよい。混合液は、フッ酸の他に塩酸、硝酸、硫酸、燐酸などを使用することができる。例えば、フッ酸濃度0.1〜55質量%、液温20〜50℃のエッチング液をノズル22から反射防止膜付基板21に滴下する。エッチング液の滴下は、反射率計24の反射率が許容範囲になったときに停止し、次にリンス液をリンス液滴下ノズル23より滴下し、フッ酸を完全に洗い落としてエッチングを停止させる。
【0023】
より好ましいフッ酸濃度は膜厚のエッチングをコントロールしやすくするため0.5〜2質量%を使用し、液温は加熱するとHFガスが発生してしまうため、取り扱いの容易な室温に近い温度範囲20〜25℃が好ましい。リンス滴下量は10〜20滴で、4〜8ccが良い。発生したHFガスは、HF排気27によって排気され、不要な液はドレイン28から排出される。
【0024】
ここで、反射率計24は、投光・受光部が一体のもので、投光波長範囲300〜1000nmのものを使用することが好ましい。投光した光は反射防止膜付基板21に入射し、反射防止膜付基板21から反射した光が反射率計24の受光部で検知される。各波長の反射率は、受光部で検知した光強度を投光した光強度で除算したものである。反射率は、各波長の反射率を波長範囲に亘って積算したものを用いる。このような反射率計としては、上述したものが挙げられる。
【0025】
図3に示すエッチバック液ノズル22、リンス液ノズル23、及び反射率計24を反射防止膜付基板の上方に配置して基板面内を余すところ無く移動し、
図4に示す制御を繰り返し行う。こうすることで、基板面内の反射防止膜厚が均一で、しかも上記範囲の反射率が得られる。得られた基板は黒色乃至濃紺色を呈しており、外観が美しい。
【0026】
このようにして所定の膜厚及び反射率を有する反射防止膜を形成し、
図5に示すように、n型拡散層2及び反射防止膜3を有する基板1の非受光面にP
+層6を形成した後、スクリーン印刷で銀ペースト、又はアルミニウムペースト/銀ペースト(混合)を印刷・焼成して、裏面電極7を形成する。最後に、受光面にスクリーン印刷により銀ペーストをパターン印刷・焼成し、表面電極(フィンガー部及びバスバー部)4を形成する。5は隣接する太陽電池と配線接続を行うためのリード線で、リード線を表面電極バスバー4にはんだ付して形成し、太陽電池30を得る。
【0027】
こうして反射率にばらつきがなく、所定の反射率を有する反射防止膜を所定枚数形成することができるため、全ての太陽電池の変換効率がよく、最大の性能を得ることができる。また、
図5に示した構造の隣接する太陽電池を互いにはんだ接続してモジュール化しても、各太陽電池の発電電流が最大になり、しかも一定なので変換効率が高く、色むらなど美観を失わないモジュールを作製できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1]
厚さ200μm、比抵抗0.5Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}p型アズカットシリコン基板18枚を用意した。濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去した後、これらの試料を同時に水酸化カリウム/2−プロパノール混合溶液に浸漬し、テクスチャーを形成した。水洗、乾燥後、アンモニア過水・フッ酸・塩酸過水・フッ酸洗浄し、水洗、乾燥した。
次に、基板18枚の非受光面どうしを重ね合わせ、石英ボートに搭載して、拡散炉に投入した。ヒーター温度を850℃まで昇温して、オキシ塩化リンを窒素毎分1リットル/分にてバブリングさせた。バブリング蒸発したオキシ塩化リンは、酸素ガス毎分1リットル/分を伴ってシリコン表面にリンガラスとして堆積させた。引き続き、窒素雰囲気中に30分間放置した後、拡散炉から取出した。拡散処理したこれら18枚は、1質量%、20℃HFでリンガラスを除去した。
【0030】
次いで、得られた18枚のうち9枚をプラズマCVD処理した。この際、原料ガスとしてモノシランガス(SiH
4)とアンモニアガス(NH
3)を使用した。反射防止膜製膜の主なパラメータは、アンモニア/モノシランガス流量比2.5、圧力1.0Torr、放電電力1200Wにして、製膜温度450℃であった。処理時間は5分間で、基板を搭載したトレイの移動速度を450mm/分とした。
【0031】
このようにして、
図1に示す、n型拡散層2及び反射防止膜3を形成した基板1を作製した。
得られた基板の中で最小膜厚を有する反射防止膜の基板を選定し、この基板の反射防止膜の反射率を最小とする膜厚を与える条件を求めた結果、上記条件のうちトレーの移動速度を450mm/分にすることがよいことを知見した。
従って、以後の反射防止膜の製膜条件を上記のようにして、残り9枚の基板について反射防止膜を製膜した結果、5枚の基板が黒色を呈し、その反射率(反射率計:島津製作所製,波長300〜1200nm,25℃)は3%未満であり、膜厚はエリプソ膜厚測定装置で90nm以内であった。
【0032】
上記黒色を呈する反射防止膜付基板5枚を除く反射防止膜付基板を1枚ずつ
図3に示すような装置20でエッチバックを行った。まず、反射防止膜基板21を吸着チャック26で吸着させた。次に、エッチング液滴下ノズル22と、リンス液滴下ノズル23と、反射率計24を具備した装置を反射防止膜の上方に配置して反射率が最小になるまで1質量%、20℃のフッ酸をノズル22から滴下した。反射防止膜のエッチバックは、
図4に示す制御を行って、反射率が上記反射率と同じになった時に、エッチング液の滴下を停止し、ノズル23からリンス液を10滴(4cc)滴下して、完全にフッ酸を除去することでエッチングを停止した。エッチング液及びリンス液は、エッチング槽25内を通り、ドレイン28から排液した。
【0033】
次に、ノズル22,23及び反射率計24を反射防止膜付基板面内を余すところ無く移動させ、
図4の制御を繰り返した。こうして得られた反射防止膜付基板9枚は、面内の膜厚が均一(90nm)で、しかも反射率が小さいので、黒色又は濃紺色を呈していた。
【0034】
図5に示すように、これらの基板9枚を使用して、非受光面にアルミニウムペーストを塗布してP
+層6を形成した後、スクリーン印刷でアルミニウムペースト/銀ペーストを印刷・焼成して裏面電極7を形成した。最後に、受光面にスクリーン印刷により銀ペーストをパターン印刷・焼成し、表面電極4(フィンガー部及びバスバー部)を形成した。5は隣接する太陽電池と配線接続を行うためのリード線で、リード線を表面電極バスバー部4にはんだ付して形成した。
【0035】
こうして9枚全ての太陽電池が反射率にばらつきがなく、いずれも同じ低反射率を有し、変換効率が高く、最大の特性を得ることができる。また、モジュール化しても各太陽電池の発電電流が最大になり、しかも一定なので、変換効率が高く、面内色むらなど美観を失わないモジュールを作製できた。
得られた太陽電池及び太陽電池モジュールの平均反射率、太陽電池の平均短絡電流、平均変換効率及び面内色むらについての結果を表1及び2に示す。
【0036】
[比較例1]
実施例1と同様にして拡散後ガラスエッチングした9枚の基板を用意した。プラズマCVD装置の条件を実施例と同条件とし、トレーの搬送スピードのみを450mm/分から500mm/分にした。この条件で得られた反射防止膜付基板9枚は茶色から黒色、濃紺色、水色を呈した。これらの反射防止膜の膜厚は80〜120nmであり、反射率は平均6%であった。
【0037】
図5に示すように、これらの基板を使用して非受光面にアルミニウムペーストを塗布してP
+層6を形成した後、スクリーン印刷でアルミニウムペースト/銀ペーストを印刷・焼成して裏面電極7を形成した。最後に、受光面にスクリーン印刷により銀ペーストをパターン印刷・焼成し、表面電極4(フィンガー部及びバスバー部)を形成した。5は隣接する太陽電池と配線接続を行うためのリード線で、リード線を表面電極バスバー4にはんだ付して形成した。
【0038】
こうして作製された9枚全ての太陽電池は、反射率にばらつきがみられた。また、太陽電池の短絡電流が低く、高い変換効率も得られなかった。また、モジュール化しても各太陽電池の発電電流が低くなり、変換効率が低く、面内色むらなど美観も損なってしまった。
得られた太陽電池及び太陽電池モジュールの平均反射率、太陽電池の平均短絡電流、平均変換効率及び面内色むらについての結果を表1及び2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
*評価基準:合格 反射率3%未満,変換効率17%以上
不合格 反射率3%以上,変換効率17%未満