【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
純度99.9%、平均粒子径0.3μmの酸化イットリウム(Y
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.5μmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.2μmの酸化セリウム(CeO
2)粉末とを、各々(Y
0.911Ce
0.019Al
0.070)
3Al
5O
12組成になるように混合した1,000gの混合粉を脱イオン水1,500g、ポリアクリル酸アンモニウム10g、カルボキシメチルセルロース2gと共にボールミルで10時間混合した。得られたスラリーを、2流体ノズルを用いて造粒し、平均粒子径24.3μmの粒子を得た。得られた粒子を1,400℃、2時間、大気中で熱処理し有機成分を除去した。この造粒焼成粒子を、アルゴンプラズマ中を通過させることにより溶融させ、溶融物を冷却して、球状の粒子を得た。得られた球状粒子を、水素ガスを1vol%含有するアルゴンガス中で、1,350℃で6時間加熱処理して、粒径D50=18.0μm、分散指数=0.28、真円度=0.10の蛍光体粒子を得た。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、上記で得られた(Y
0.911Ce
0.019Al
0.070)
3Al
5O
12組成の球状黄色蛍光体を、球状黄色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が5質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は蛍光体による着色のみであり、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみはみられなかった(目視による観察)。
作製した試験片を発光ピーク波長455nmの青色発光ダイオード上に配置し、コニカミノルタ社製分光放射照度計CL−500Aにてその発光強度から励起光透過比率を求め、平均演色評価数Raを測定した。測定結果を表1に示す。また、
図3に、実施例1で作製した波長変換部材の断面SEM像を示す。本実施例で用いた球状の蛍光体が観察された。
また、得られたペレット及び試験片の一部を、大気中、1,000℃で焼成し、樹脂分を燃焼させた。次に、灰分を塩酸で煮沸し、Feを抽出してICP法により定量したところ、ペレット中にFeが5.1ppm、射出成型した試験片中にFeが5.5ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、コニカミノルタ社製CR−200色彩色差計を用いて、標準の光D65で測定したところ、L
*が72.46、b
*が64.51、C
*が65.64であった。
【0042】
[比較例1]
純度99.9%、平均粒子径1.0μmの酸化イットリウム(Y
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径3.0μmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.2μmの酸化セリウム(CeO
2)粉末とをY
2.94Ce
0.06Al
5O
12組成になるように混合した1,000gの混合粉にフラックスとしてフッ化バリウムを200g添加して十分に混合し、アルミナ坩堝に充填し、アルゴンガス中1,390℃で10時間熱処理した。得られた焼成粉を水洗、分離、乾燥して蛍光体粒子を得た。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、上記で得られた粒径D50=7.43μm、分散指数=0.77、真円度=0.52のY
2.94Ce
0.06Al
5O
12組成の黄色蛍光体を、黄色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が5質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみがみられた(目視による観察)。
作製した試験片を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1に示す。また、
図4に、作製した波長変換部材の断面SEM像を示す。本比較例で用いた不定形の蛍光体が観察された。
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、ペレット中にFeが17ppm、射出成型した試験片中にFeが18ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、実施例1と同様にして測定したところ、L
*が58.09、b
*が41.58、C
*が41.78であった。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1の波長変換部材は、励起光の透過比率(青色の透過強度)が比較例1よりも高かった。また、実施例1の波長変換部材において吸収した青色成分により励起・発光した黄色光も十分に取り出されているため、平均演色評価数Raが比較例1よりも高かった。一方、比較例1の波長変換部材は樹脂中に分散されている蛍光体が不定形(平均真円度0.3超)であるため、樹脂内での励起光反射が大きく、実施例1よりも励起光透過比率(青色の透過強度)が低かった。励起光透過比率が低いということは、その分だけ波長変換部材内で、蛍光体で吸収・発光するか、樹脂層内で反射・散乱を繰り返すことにより吸収されてしまうこと(光学ロス)が考えられるが、比較例1の平均演色評価数Raが実施例1より低いことから、
図5に示すように光学ロスが生じていると考えられる。なお、
図5は、発光装置の構成を示す断面概略図であり、90は発光装置、92は波長変換部材、92aは従来の蛍光体を示し、
図5中の他の構成は、
図1と同様の参照符号を付して、説明を省略する。
また、比較例1の蛍光体粒子は不定形であるため、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューを削りやすく、金属摩耗による着色がみられた。
【0045】
[実施例2〜4]
芳香族ポリカーボネート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、実施例1と同様の球状黄色蛍光体と、光散乱剤としての球状シリカとを、表2の組成になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(第一の波長変換部材)を作製した。作製した試験片は蛍光体による着色のみであり、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみはみられなかった(目視による観察)。
作製した試験片を発光ピーク波長455nmの青色発光ダイオード上に配置し、コニカミノルタ社製分光放射照度計CL−500Aにて発光強度から励起光透過比率を求めた。
更に、実施例2〜4の波長変換部材(球状黄色蛍光体含有熱可塑性樹脂成型体)上に第二の波長変換部材として400〜500nmの青色光で励起され、630nm付近に発光ピークを有するK
2SiF
6:Mn赤色蛍光体含有熱可塑性樹脂成型体の試験片を配置し、コニカミノルタ社製分光放射照度計CL−500Aにて平均演色評価数Raを測定した。測定結果を表2に示す。
【0046】
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、実施例2は、ペレット中にFeが4.9ppm、射出成型した試験片中にFeが4.9ppm、実施例3は、ペレット中にFeが5.5ppm、射出成型した試験片中にFeが5.7ppm、実施例4は、ペレット中にFeが5.6ppm、射出成型した試験片中にFeが5.9ppm、各々検出された。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例2〜4の結果の通り、球状黄色蛍光体を分散させることにより、押出機のスクリュー、サイドフィーダースクリューからの金属摩耗による着色は認められなかった。また、光散乱剤の配合量を調整することにより、励起光透過比率(青色透過光の透過量)を調整することが可能である。第一の波長変換部材(球状黄色蛍光体含有熱可塑性樹脂成型体)で励起光の透過比率を調整できることは、第二の波長変換部材へ入射する励起光の光量の調整、ひいては発光装置の出射光の平均演色評価数Raの調整に有効であり、照明光源とした場合、演色性の優れた発光スペクトルを得ることができる。
図6に実施例3の発光スペクトルを示す。
【0049】
[実施例5]
純度99.9%、平均粒子径0.3μmの酸化ルテチウム(Lu
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.5μmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.2μmの酸化セリウム(CeO
2)粉末とを、各々(Lu
0.902Ce
0.018Al
0.080)
3Al
5O
12組成になるように混合した1,000gの混合粉を脱イオン水1,500g、ポリアクリル酸アンモニウム10g、カルボキシメチルセルロース2gと共にボールミルで10時間混合した。得られたスラリーを、2流体ノズルを用いて造粒し、平均粒子径23.9μmの粒子を得た。得られた粒子を1,380℃、2時間、大気中で熱処理し有機成分を除去した。この造粒焼成粒子を、アルゴンプラズマ中を通過させることにより溶融させ、溶融物を冷却して、球状の粒子を得た。得られた球状粒子を、水素ガスを1vol%含有するアルゴンガス中で、1,390℃で6時間加熱処理して、粒径D50=14.8μm、分散指数=0.28、真円度=0.15の蛍光体粒子を得た。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、上記で得られた(Lu
0.902Ce
0.018Al
0.080)
3Al
5O
12組成の球状緑色蛍光体を、球状緑色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が5質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は蛍光体による着色のみであり、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみはみられなかった(目視による観察)。
作製した試験片を発光ピーク波長455nmの青色発光ダイオード上に配置し、コニカミノルタ社製分光放射照度計CL−500Aにてその発光強度から励起光透過比率を求め、平均演色評価数Raを測定した。測定結果を表3に示す。
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、ペレット中にFeが4.5ppm、射出成型した試験片中にFeが4.8ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、実施例1と同様にして測定したところ、L
*が70.28、b
*が41.84、C
*が44.81であった。
【0050】
[比較例2]
純度99.9%、平均粒子径1.0μmの酸化ルテチウム(Lu
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径3.0μmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.2μmの酸化セリウム(CeO
2)粉末とをLu
2.94Ce
0.06Al
5O
12組成になるように混合した1,000gの混合粉にフラックスとしてフッ化バリウムを200g添加して十分に混合し、アルミナ坩堝に充填し、アルゴンガス中1,390℃で10時間熱処理した。得られた焼成粉を水洗、分離、乾燥して蛍光体粒子を得た。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、上記で得られた粒径D50=7.41μm、分散指数=0.81、真円度=0.57のLu
2.94Ce
0.06Al
5O
12組成の緑色蛍光体を、緑色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が5質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみがみられた(目視による観察)。
作製した試験片を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表3に示す。
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、ペレット中にFeが14ppm、射出成型した試験片中にFeが17ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、実施例1と同様にして測定したところ、L
*が55.46、b
*が25.54、C
*が37.23であった。
【0051】
【表3】
【0052】
[実施例6]
ポリプロピレン樹脂を二軸押出機の第一供給口から、実施例1と同様の球状黄色蛍光体を、球状黄色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が10質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度190℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを100℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は蛍光体による着色のみであり、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみはみられなかった(目視による観察)。
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、ペレット中にFeが2.5ppm、射出成型した試験片中にFeが2.8ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、実施例1と同様にして測定したところ、L
*が79.76、b
*が76.94、C
*が76.90であった。
【0053】
[実施例7]
純度99.9%、平均粒子径0.3μmの酸化イットリウム(Y
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.5μmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、純度99.9%、平均粒子径0.2μmの酸化セリウム(CeO
2)粉末とを、各々(Y
0.754Ce
0.057Al
0.189)
3Al
5O
12組成になるように混合した1,000gの混合粉を脱イオン水1,500g、ポリアクリル酸アンモニウム10g、カルボキシメチルセルロース2gと共にボールミルで10時間混合した。得られたスラリーを、2流体ノズルを用いて造粒し、平均粒子径22.5μmの粒子を得た。得られた粒子を1,350℃、2時間、大気中で熱処理し有機成分を除去した。この造粒焼成粒子を、アルゴンプラズマ中を通過させることにより溶融させ、溶融物を冷却して、球状の粒子を得た。得られた球状粒子を、水素ガスを1vol%含有するアルゴンガス中で、1,340℃で6時間加熱処理して、粒径D50=17.0μm、分散指数=0.31、真円度=0.13の蛍光体粒子を得た。
次に、ポリメチルメタクリレート樹脂を二軸押出機の第一供給口から、上記で得られた(Y
0.754Ce
0.057Al
0.189)
3Al
5O
12組成の球状黄色蛍光体を、球状黄色蛍光体含有樹脂中の蛍光体が10質量%になるように第二供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量6kg/hrでストランドを押し出し、水浴で冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット化した。得られたペレットを90℃で5時間乾燥し、射出成型機を用いて厚さ2mmの試験片(波長変換部材)を作製した。作製した試験片は蛍光体による着色のみであり、押出機スクリュー、サイドフィーダースクリューからの摩耗金属混入によるくすみはみられなかった(目視による観察)。
また、得られたペレット及び試験片のFeを、実施例1と同様にして定量したところ、ペレット中にFeが8.3ppm、射出成型した試験片中にFeが8.6ppm検出された。
更に、試験片のCIE L
*a
*b
*表色系を、実施例1と同様にして測定したところ、L
*が80.39、b
*が92.15、C
*が92.40であった。
【0054】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。