特許第5920736号(P5920736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920736
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】スピン現像方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/30 20060101AFI20160428BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   G03F7/30
   G03F7/30 502
   H01L21/30 569F
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-548136(P2013-548136)
(86)(22)【出願日】2012年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2012075677
(87)【国際公開番号】WO2013084574
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-267026(P2011-267026)
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−096944(JP,A)
【文献】 特開平05−119482(JP,A)
【文献】 特開平06−045244(JP,A)
【文献】 特開平07−211624(JP,A)
【文献】 特開2002−246288(JP,A)
【文献】 特開2002−131929(JP,A)
【文献】 特開平06−045245(JP,A)
【文献】 特開平06−061135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5インチ径のウェハサイズのウェハ上に形成されたレジストの現像方法であって、
停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまでウェハ上に現像液を滴下するか、または、回転しているウェハ上に、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまで現像液を滴下する第1ステップ、
ウェハを回転させながら現像する第2ステップ
からなるスピン現像方法。
【請求項2】
前請求項1において、
前記第1ステップは、停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、ウェハ上現像液0.4mlになるように滴下するか、または、回転しているウェハ上に、現像液を0.4ml滴下す
スピン現像方法。
【請求項3】
前請求項1において、
前記第1ステップは、ウェハ上の現像液が最大接触角になるまで、現像液およびウェハ回転速度を制御する
スピン現像方法。
【請求項4】
前請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1ステップと同一の回転速度で回転されているウェハに、現像液を滴下する第3ステップ、
ウェハを回転させながら現像する第4ステップ
からなるスピン現像方法。
【請求項5】
前請求項4において、
前記第1ステップでの滴下現像液量を0.4mlとし、前記第3ステップでの滴下現像液量を0.2mlとし、現像液滴下時の前記ウェハ上での現像液の接触角を135〜146度とする
スピン現像方法。
【請求項6】
0.5インチ径のウェハサイズのウェハを所定速度で回転させる回転部と、
ウェハ上に所定量の現像液を滴下することのできる現像液供給部と、
前記回転部の回転を制御する回転制御部と、
停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液を厚みが最大となるまでウェハ上に現像液を滴下するか、または、回転しているウェハ上に、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまで現像液を滴下する現像液供給制御部と、
を有するスピン現像装置。
【請求項7】
前請求項6において、
前記現像液供給部は、前記回転部に設置されたウェハに対向して設けられた現像液供給口と、ウェハ表面と前記現像液供給部の現像液供給口との距離を、前記現像液供給口と前記ウェハ表面との間に現像液による連続的な液滴ボールが形成される距離に保持する供給口高さ制御機構とを備える
スピン現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて小さな面積を有するウェハ上に形成されたレジストを現像するスピン現像方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造ラインは、広大なクリーンルーム内に、同種機能の処理装置を纏めたベイと呼ばれるユニットを複数備え、そのベイ間を搬送ロボットやベルトコンベアで接続するジョブショップ方式を採用したレイアウトが主流になっている。
また、そのような製造ラインで処理されるワークに、12インチなどの大口径のウェハが使用され、1枚のウェハから数千個の半導体チップが製造される生産システムとされている。
【0003】
ところがこのジョブショップ方式では、複数の似たような処理工程を繰り返す場合には、ベイ内での搬送やベイ間での搬送距離が大幅に伸びるとともに、待機時間も増加するため、製造時間が増大し、仕掛品の増大を招くなどコストアップの要因となり、ワークを大量処理する製造ラインとしては、生産性の低さが問題となる場合が生じる。
そこで、従来のジョブショップ方式の製造ラインに代え、半導体処理装置を処理工程順に配置したフローショップ方式による製造ラインも提案されている。
【0004】
一方、このようなフローショップ方式による製造ラインは、単一の製品を大量に製造する場合には最適であるが、製造品を変えることで製造手順(レシピ)を変えなければならない場合には、製造ラインでの各半導体処理装置の配置をワークの処理フロー順に並べ替えることが必要となる。しかしながら、製品が変わるたびにそのような並べ替えを行うのは、再配置のための手間と時間を考慮すると、現実的ではない。特に、クリーンルームという閉鎖空間内に巨大な半導体処理装置が固定配置されている現状では、その半導体処理装置をその都度再配置することは、現実的には不可能である。
【0005】
また、これまでの半導体製造システムでは、製造コストを極小とするためのファクターとして同時生産性(単位時間あたりの生産量)を最重要視してきたため、ワークサイズ(シリコンウェハサイズ)の大口径化や製造単位数(1つの製品に対するオーダー数)の増大が優先され、メガファブとも言うべき、巨大化した製造システムが指向されてきた。
このような巨大な製造システムでは、プロセス数も数百を越え、それに比例してベイ数や装置数も大幅に増大してきている。
このため製造ライン全体としてのスループットは向上してきたものの、このようなメガファブを構築するには数千億円もの設備投資が必要とされ、総投資額が巨額化している。
また、このように製造システムが巨大化するに伴い、装置制御が複雑化して、搬送系での搬送時間や待ち時間が飛躍的に増大しているため、生産ライン内で滞留する仕掛かりウェハ数もそれに応じて飛躍的に増加している。ここで使用される大口径のウェハの単価は非常に高いので、仕掛かり枚数が増大するとコスト上昇を招くこととなる。
このようなことなどから、設備投資を含めたトータルでの生産性は、現在より小口径のウェハを用いた比較的中規模の製造ラインと比べて、現状では、もはや減少する方向に転じていると言われている。
【0006】
一方、エンジニアサンプルやユビキタスセンサー用など、製造単位数が数個〜数百個というような超少量の半導体を製造するニーズも存在する。
このような巨大な製造システムでなければこの超少量生産はコストパフォーマンスをさほど犠牲にすることなく行うことが可能であるが、このような巨大な製造システムでは、この超少量生産を製造ラインに流すにはコストパフォーマンスが極端に悪くなることから、これと同時に、他の品種を該製造ラインに流さざるを得ないこととなる。
しかしながら、そのように多品種を同時に投入して混流生産をするとなると、製造ラインの生産性は品種数の増大とともに一層低下することとなるので、結局のところ、このような巨大な製造システムでは、超少量生産でかつ多品種生産に適切に対応することができない。
【0007】
そこで、0.5インチサイズのウェハに1個のデバイスを作成することを基本とし、そのために製造工程を複数の可搬性の単位処理装置で構成して、それら単位処理装置をフローショップやジョブショップに再配置することを容易にすることで、超少量生産でかつ多品種生産に適切に対応することができるようにするミニマルファブシステムが本出願人より提案されている。(特願2010−195996号)
一方、デバイス製造工程でのウェハの現像方式も種々、提案されている。(非特許文献1)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「厚膜レジストにおける現像方法の違いによる解像性の検討」扇子義久外 電子情報通信学会論文誌 VOL.J86-C No.1 January 2003 p50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載の現像方法(ディップ現像方法、ステップ・パドル現像方法、振動現像方法、逆さ現像方法)のうち、パターン解像性に優れたステップ・パドル法(以下、SP法、という。)を用いて、実際に4インチ径のウェハ上に形成された厚さ1μmのレジストの現像を行った。
ウェハを100rpmで回転させながら5秒間現像液を供給し、20秒間の静止現像を行い、この作業を3回繰り返した。使用される現像液量は合計90ml、現像時間は合計60秒となった。
このように、従来法では厚さ1μmのレジストを現像するに要する時間は、60〜300秒とされており、比較的現像時間の短い上記したSP法でも60秒を要するように、現像効率に優れているわけではない。また、使用する現像液量は、ウェハ全体を浸漬しなければならない程度の現像液量となるなど、現像液の使用効率においても高くない。
【0010】
非特許文献1によれば、SP法では、ウェハを100rpmで回転しながら5秒間現像液を供給し、295秒間静止現像を行い、この作業を3回繰り返す現像方法が採用されており、比較的現像時間が長い。また、この非特許文献1では、上記した各現像方法における現像特性の評価を、現像時間が15分として行われている。この評価によれば、SP法が現像コントラストに優れているとされているが、15分の現像時間は、効率的な現像時間とは言いがたい。
このように、これら現像方法は、上記したハーフインチサイズのようなきわめて小さいワーク上のレジストの現像方式としては、現像効率や解像性の点でまだ、十分ではない。
【0011】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記したミニマルファブシステム等に使用することのできる、ハーフインチサイズのようなきわめて小さいワーク上のレジストの現像方式として、現像効率が良く省資源で解像度が高い、最適な現像方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、0.5インチ径のウェハサイズのウェハ上に形成されたレジストの現像方法であって、停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまでウェハ上に現像液を滴下するか、または、回転しているウェハ上に、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまで現像液を滴下する第1ステップ、ウェハを回転させながら現像する第2ステップからなるからなるスピン現像方法とした。
また、本発明は、0.5インチ径のウェハサイズのウェハ上に形成されたレジストの現像方法であって、停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、ウェハ上に現像液を0.4ml滴下するか、または、回転しているウェハ上に、現像液を0.4ml滴下する第1ステップ、ウェハを回転させながら現像する第2ステップからなるスピン現像方法とした。
さらに、前記第1ステップは、ウェハ上の現像液が最大接触角になるまで、現像液およびウェハ回転速度を制御するスピン現像方法とした。
また、前記第1ステップと同一の回転速度で回転されているウェハに、現像液を滴下する第3ステップ、ウェハを回転させながら現像する第4ステップからなるスピン現像としても良い。
さらに、前記第1ステップでの滴下現像液量を0.4mlとし、前記第3ステップでの滴下現像液量を0.2mlとし、現像液滴下時の前記ウェハ上での現像液の接触角を135〜146度としても良い。
【0013】
また、本発明は、0.5インチ径のウェハサイズのウェハを所定速度で回転させる回転部と、ウェハ上に所定量の現像液を滴下することのできる現像液供給部と、前記回転部の回転を制御する回転制御部と、停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液を厚みが最大となるまでウェハ上に現像液を滴下するか、または、回転しているウェハ上に、載置可能な最大液量に相当しかつ現像液の厚みが最大となるまで現像液を滴下する現像液供給制御部と、を有するスピン現像装置とした。
また、前記現像液供給部は、前記回転部に設置されたウェハに対向して設けられた現像液供給口と、ウェハ表面と前記現像液供給部の現像液供給口との距離を、前記現像液供給口と前記ウェハ表面との間に現像液による連続的な液滴ボールが形成される距離に保持する供給口高さ制御機構とを備えるスピン現像装置とした。
【0014】
ここで、極小単位とは、極小単位の半導体デバイス、実施の形態例としては0.5インチサイズのウェハから1cmの1個の半導体デバイスを作製するものとするが、作成されるデバイスの大きさにもよるが、1個に限定されることなく、極小単位の半導体デバイスを作製するための極めて小さなウェハサイズであれば、1枚のウェハから作成可能な限りにおいて該極小単位を2個以上としても良い。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明によれば、0.5インチ径のウェハサイズのウェハ上に形成されたレジストの現像方法および装置として、最適な現像方法および装置を提供することができる。より具体的には、現像特性の向上と共に、現像液量の低減化と現像時間の短縮化が図られることにより、現像液供給からレジスト現像、レジスト乾燥までの全現像工程におけるスループットの生産効率と品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態例に係る現像装置フロー図。
図2】本発明の実施の形態例に係る現像方法のフロー図。
図3図2の現像フローに対応させた現像状態説明図。
図4】ウェハ上に供給される現像液量の説明図。
図5】本発明のウェハ上で現像液の接触角とウェハ回転速度との関係の説明図。
図6】本発明のウェハ上への現像液量の説明図。
図7】従来のパドル現像法での現像液供給状態の説明図。
図8】従来の大口径ウェハでのパドル現像法・SP現像法のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態例を、図面を参照して説明する。
まず、本発明に使用される現像装置を図1に示す。0.5インチサイズのウェハ2は、真空チャックが備えられたワークテーブル1上に載置される。ワークテーブル1は、4から空気が吸引され、図示しない駆動部材により矢印5方向に回転されるので、載置されたウェハ2を、その上に固定し、回転することができる。ワークテーブル1の回転中心の真上には、現像液6をウェハ2上に供給するための供給ノズル(現像液供給部)3や、リンスをウェハ2上に供給するための供給ノズル(図示せず)等が選択的に配置されるように構成されている。そのうち、現像液を供給する供給ノズル3の供給口(現像液供給口)は、内径2mmに形成されており、ウェハ2から該供給口までの距離Sが5mmになるように設けられる。また、ワークテーブル1の回転を制御したり、供給ノズルからの供給量を制御したりする制御部(図示せず)が設けられている。
【0018】
本発明の実施の形態では、ウェハ上に形成される感光性レジストとして、ジアゾナフトキノン(DNQ)ノボラックポジ型レジスト(i線レジスト)を用いた。
レジストの塗布プロセスは、HMDS:90℃10秒、その後、スピンコート4000rpm30秒、その後、プレベーク90℃60秒により、レジスト膜厚は600〜700nmを得た。
露光は、i線LED光源を用いてドーズ量250mJ/cm2、P.E.B:100℃60秒で行った。
現像液は、含水TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、利用濃度2.38%を用いた。
環境温度は、21℃±1℃である。
【0019】
本発明の現像方法を、図2および図3を用いて説明する。
図示しない搬送装置により、0.5インチサイズのウェハ2が、ワークテーブル1上に搬送されると、互いの回転中心をアライメントされて、真空チャックによりワークテーブル1上に固定される。
<第1ステップ>
図3(1)に示すように、供給ノズル3の供給口を待機位置からワークテーブル1の回転中心の真上の距離Sを5mmにして配置する。(1)
ここで、ワークテーブル1の回転速度が300rpmとされると、供給ノズル3からウェハ上に現像液6を0.4ml供給する。この現像液量は、回転しているウェハ2上の現像液の厚みが最大となる液量である。あるいは、停止しているウェハ上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて現像液量を滴下するようにしてもよい。つまり、回転状態のウェハ2上に載置可能な最大液量に相当するような現像液を供給する。(2)
この際、図3に示すように、供給ノズル3の供給口とウェハ2の表面との間に連続的な液滴ボールPが表面張力により形成されるような距離S(具体的には、5mm)に保持する。
<第2ステップ>
その回転速度のまま、15秒間の現像を行う(1回目のスピン現像)。(3)
この現像の際、供給口を一旦退避させても良いが、現像液供給時における距離Sに保持したままでも良いので、退避させない場合には、供給ノズル3の位置制御が省略できる。なお、退避させる場合は、供給ノズル3をウェハ2に対し一旦持ち上げるように退避させることが必要である。
<第3ステップ>
次に、その回転速度のまま、供給ノズル3からウェハ2上に現像液6を0.2ml供給する。供給ノズル3を、現像液供給位置から退避させる。具体的には、供給口を供給位置から一旦上方に持ち上げてから、待機位置に戻す。(4)
<第4ステップ>
次に、その回転速度のまま、20秒間の現像を行う(2回目のスピン現像)。(5)
以上の第1ステップ〜第4ステップにより現像を終了させる。
次に、リンス供給ノズル7を回転中心に配置するとともに、ウェハの回転速度を800rpmに上昇させてリンス液8(純水)1mlを供給し、2秒間のリンスを行う。これにより、現像を完全に停止させるとともに、残滓レジストを除去する。
<第5ステップ>(6)
次に、回転を4500rpmに上昇させ、15秒間の乾燥を行い、これにより現像の全工程を終了する。
<第6ステップ>(7)
最後に、ワークテーブル1の回転を停止し、ウェハを取り出す。(8)
【0020】
上記の現像方法を実施するために、本発明の実施の形態では、ウェハ2を所定速度で回転させる回転部と、ウェハ2上に所定量の現像液を滴下することのできる供給ノズル3と、前記回転部の回転を制御する回転制御部と、停止しているウェハ2上に現像液をこぼれる量を下回る量だけ滴下し、その後ウェハを回転させて現像液を厚みが最大となるまで現像液を滴下するか、または、回転しているウェハ上に現像液の厚みが最大となるまで現像液を滴下する現像液供給制御部とを有している。
そして、前記供給ノズル3は、ウェハ2表面と現像液供給口との距離を、現像液供給口とウェハ表面との間に連続的な液滴ボールPが形成される距離に保持する供給口高さ制御機構(図示せず)を備えている。
【0021】
次に、上記の実施の形態と対比した現像方法とその評価結果について、説明する。
本発明の実施の形態では、上記したように、2回のスピン現像と2回の現像液供給を行った。トータルの現像時間は35秒である。
これに対し、対比例1:[1回のスピン現像・現像液の入れ替えなし、現像時間38〜40秒]、および対比例2:[1回の静止現像・現像液の入れ替えなし(つまり、普通のパドル現像法)、現像時間45秒]によって現像された現像パターンとの対比評価を行った。
対比例1および2とも、レジスト線のL&S幅3μmで、レジスト残が見られた。また、十字マーク現像パターンにおいても、マーク幅2μmおよび5μmのいずれも、レジスト残が見られた。
【0022】
本発明のスピン現像を行う上で、非常に重要な要点の一つは、次のことである。現像液の滴下の際、供給ノズルの先端がウェハの比較的上方にある場合、滴下された液滴が重力で加速して、ウェハに当たった際の液の運動エネルギーが大きく、ウェハの表面張力で現像液をウェハ上に保持できなくなり、ウェハから液がこぼれてしまうことである。零れる分だけ現像液をムダに消費してしまう。これを防ぐには、本発明のごとく、ノズル先端を限りなくウェハに近づけるように、ノズル高さを制御する機構を備え、かつそのようにノズルをウェハに実際に近づけて滴下を行うことが重要である。このようにノズルを近接して現像液を滴下すると、結果としてできるウェハ上の現像液の液滴ボールP(図3(2))は、ノズルと接触していることになる。
そうすると次に重要なことは、このノズルを現像中に待機位置まで待避する場合には、ウェハ面内と水平にノズルを待避すると、液滴が引きずられて、液がウェハから零れてしまうことになる。それを防ぐために、ノズルはまず、垂直に引き上げなければならない。その後、待機位置まで待避する動作を行う。
なお、上記したように、ノズルは現像中に必ずしも待避する必要はなく、現像中に液滴に触れたままでもよい。その場合、ノズルは液滴に触れた状態で現像することになる。このように、液滴にノズルが触れることはスピン現像の一つの特徴である。
【0023】
次に、現在行われている4〜8インチサイズのウェハを、普通のパドル現像法(1回の静止現像、現像液の入れ替えなし)あるいは、SP法(2回の静止現像、現像液の入れ替えあり)により現像した場合を、本実施の形態例と比較するために、図8に示す。
図8により明らかなように、現像時間についてみると、普通のパドル現像法は300秒、SP法は60〜70秒であり、いずれも本実施の形態例の現像時間(35〜45秒)よりも長い。リンス時間については、これらの現像法によるものが60〜180秒を要するに対し、本実施の形態例のものは、上記したように2秒にすぎない。なお、乾燥時間については、これら現像法によるものと本実施の形態例によるものとは、ほぼ同様(15秒)であった。したがって、現像工程全体で見ると、大口径ウェハを従来現像法で現像する場合は、2.5分〜8分であるのに対し、0.5インチウェハを本実施の形態例で現像する場合は、1分以内ということになる。しかも、上記したように、その現像特性は、本実施の形態例によるもののほうが、優れている。
また、現像に要した現像液量は、4インチウェハの現像の場合、90mlであったのに対し、上記したように本発明による0.5インチウェハの現像では0.6mlである。0.5インチ径と4インチ径とでは面積比1:64であるが、使用現像液量は1:150であるから、本発明のスピン現像方法は、SP法の1.5%まで現像液使用量を減少させることができる。
【0024】
小口径ウェハの場合には、大口径ウェハよりも、面積が小さい分、単位時間当たりのチップ生産量(スループット)は下がることになる。しかし、小口径ウェハ用の製造装置やそのファクトリーシステムは、その小口径の分だけ装置価格と工場設備投資額も下がることになる。従って、原理的には設備投資額をウェハの面積で割った、設備投資額/ウェハ面積、すなわち、投資生産性は、ウェハの径にはあまり依存しないことになるのである。その意味で、小口径ウェハで利点の大きな本発明が、大口径ウェハによる生産方法より劣っているわけではなく、かつ、本発明により、現像液を非常に節約できることから、総じて、従来法よりも有利な現像方法であると言うことができる。
【0025】
このように本実施の形態例の現像時間が短く、しかも現像液量が少なくて済むその要因について、以下、考察する。
[現像液量と、回転速度について]
図4の右図に示す4インチサイズのウェハに保持される現像液は、左図に対比して示す0.5インチサイズへの現像液の保持量とは、単位面積あたりの現像液保持量が小さくなる。これは、0.5インチサイズのウェハ上の場合は、現像液の滴下時に液滴が分裂しないように供給すると、ウェハ表面全体から現像液の表面張力により盛り上がるように保持される。これに対し、4インチサイズのように表面積が広がると、ウェハ上に供給された現像液は、その表面張力により取り敢えずは塊となってしまう。そのまま放置すると、ウェハ表面に徐々に広がっていくものの、全体に広がるまでには数十秒かかってしまう。その間、最初に現像液が供給された部位は現像が進むので、中心部と周縁部とでは現像レートに差が生じてしまう。したがって、このような表面積の広いウェハの場合は、図6に記載するように、ウェハ2を回転させながら現像液を供給しなければならない。このため、現像液6は、ウェハ表面から薄く拡散され、ウェハ周縁部2’から飛散し、結果として0.5インチサイズのものと比較して単位面積あたりの現像液保持量は小さくなる。
実際、この4インチウェハの場合、ウェハの回転速度100rpmで回転させると、全面に広がるまで数秒間を要し、しかも使用される現像液量は30ml以上となる。単位面積あたりの現像液保持量は、0.4μl/mm2である。
【0026】
これに対し、0.5インチウェハの場合には、図3(2)、(4)に示すように、現像液の滴下時に液滴が分裂しないように供給すると、その表面張力により、現像液はウェハ表面全体から高さ(現像液厚み)hを保持するように盛り上がる(図5 実線部)。ここで、ウェハ自体を300rpmで回転させながら現像液を供給すると、図4に示すように、その現像液は遠心力をうけ、外方に広がろうとするので、ウェハ表面との接触角θは大きくなってゆく。そして、この接触角が最大になる時点(図5 破線部)を越えると、この遠心力が現像液の表面張力より大きくなり、現像液は遠心力により外方に飛散してしまう。実際、この最大接触角(θmax)は、本実施例の場合、146°であった。
ウェハ上の現像液がこの最大接触角になるまで、現像液量(現像液厚み)とウェハ回転速度とを制御することにより、図5および6に示すように、最小接触角(θmin)での現像液高さhで供給されるよりも、現像液高さh’は低下するものの、多くの現像液量をウェハ上に保持させることが可能となる。実際、この接触角を135°〜146°、望ましくは146°まで保持するように回転速度および現像液供給量(現像液厚み)を制御すると、ウェハ回転時におけるウェハ上の現像液量は最大となり、単位面積あたりの現像液保持量は、4μl/mm2となった。これは、4インチウェハの場合よりもほぼ1桁多くの単位面積あたりの現像液量となる。この現像液量が多いほど、現像液中に溶け出したレジストによる現像液の濃度変化が少なくなるので、現像条件のマージンが広く取れ、有利である。現像むらを発生させるリスクは小さくなる。
【0027】
このように、本実施の形態例では、現像液6がウェハ上に表面張力を形成して供給されるように、現像液供給ノズル3とウェハ2との距離を5mm程度の間隙に保持し、0.4mlの少量の現像液を滴下している。(図3 (2)、(4))
これ以上の距離では、滴下時に液滴が分裂するので、ウェハ上への最大液量の供給が難しくなるからである。
しかも、従来のパドル現像法とは異なり、ウェハを回転しながら現像液を供給することで、現像液を多量にしかもウェハ表面に早く供給することができ、現像液を効率的に有効活用することもできる。このことは、本実施の形態例における、現像効率の高さや再現性の高さが確保できる要因となっている。
【0028】
[2回のパドル現像と、現像液量について]
上記のように供給された現像液は、時間の経過にともなって現像液とウェハとの濡れ性が良くなるにつれて、ウェハの回転に伴って次第にウェハ上から飛散されてゆく。また、現像の進行と共に現像液とレジスト表面の境界に発生したN2ガスも、ウェハの回転と共にウェハ外周に運ばれることとなるので、現像が早く進展し、1回目の現像液のリアクションレートは、急激に低下することとなる。
実際、回転速度を100rpm、200rpm、300rpmと変化させて、現像されたテストパターンを比較検査すると、低速の場合には、より長い現像時間が必要であることが判明した。
したがって、1回目のパドル現像は、より早いタイミングで現像液の入れ替えを必要とされることとなる。したがって、1回目の現像時間<2回目の現像時間としている。
また、2回目の現像液量は、1回目のほぼ半分に設定している。これは、1回目の現像にともない、レジスト表面の濡れ性が向上しているので、1回目のような多くの現像液量を必要とせず、また、実際、1回目のような現像液量の供給は不能になっている。
したがって、本実施の形態例では、2回目のパドル現像の現像液量は、1回目のそれよりも少なくできるので、現像剤の使用効率に優れている。
【0029】
以上のように、本発明は、極めて小さなサイズのウェハのレジスト現像方法として、現像効率や解像度再現性等の点で、極めて優れた作用効果を発揮するものである。
なお、回転速度、現像液量(現像液厚み)および接触角については、ウェハないしはレジストの濡れ性や現像液の粘性、レジスト膜厚等によって、上記した実施の形態例と相違が生じる場合があるが、上記した本件発明における技術思想の範囲内で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 ワークテーブル
2、2’ ウェハ
3 現像液供給ノズル
6、6’ 現像液
h、h’現像液高さ
θ 接触角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8