特許第5920779号(P5920779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920779光通信システム、光送信装置および光受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920779
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】光通信システム、光送信装置および光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20160428BHJP
   H04B 10/524 20130101ALI20160428BHJP
【FI】
   H04B9/00 267
   H04B9/00 524
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-152630(P2012-152630)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-17608(P2014-17608A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠治
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−021693(JP,A)
【文献】 特開2000−349712(JP,A)
【文献】 特開2007−104106(JP,A)
【文献】 特開2004−213012(JP,A)
【文献】 特開2004−350221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波伝送または無線伝送における光通信システムであって、
伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、
前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、
前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、
前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、
前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、
前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)と
を備え
前記A/D変換器は、
前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、
前記D/A変換器は、
前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザである
ことを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記A/D変換器は、1ビットA/D変換器であり、
前記D/A変換器は、1ビットD/A変換器であることを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記E/O変換器が半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
高周波伝送または無線伝送における光送信装置であって、
伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、
前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、
前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、
前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、
前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、
前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)と
を備えた光送信装置であり、
前記A/D変換器は、
前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ
0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、
前記D/A変換器は、
前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザであることを特徴とする光送信装置。
【請求項5】
高周波伝送または無線伝送における光受信装置であって、
伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、
前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、
前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、
前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、
前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、
前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)と
を備えた光受信装置であり、
前記A/D変換器は、
前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、
前記D/A変換器は、
前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザであることを特徴とする光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム、光送信装置および光受信装置に関し、より詳細には、システムの一部にデジタル光通信設備を導入した光通信システム、光送信装置および光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波システムや無線システムの一部に光伝送技術を組み入れた技術は、Radio on FiberあるいはRadio over Fiber(RoF)と呼ばれている。高周波信号をいったん光信号に変換し、光ファイバや空間を光信号として伝送し、再度高周波信号に変換するものである。この技術は、ビルやトンネル内などの電波の不感地帯に非常に多くの携帯電話基地局を配置せざるをえないときに、伝送による損失を低減したり、システム全体のコストを下げるために使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図1に、高周波システムや無線システムの一部に光伝送技術を組み入れた、典型的な従来の光通信システムの図例を示す。
【0004】
図1の従来技術の例において、無線送信機1の次段に設けられたE/O(電気光)変換器4が、O/E(光電気)変換器5と光ファイバ8で接続されている。
【0005】
この構成を用いれば、光ファイバ8は非常に低損失であるので、無線送信機1の出力を同軸ケーブル等で外界に出射することなしに、遠方へと伝送することができる。
【0006】
無線送信機1から出力されたアナログの高周波信号は、E/O変換器4によりアナログ信号のまま光信号に変換される。E/O変換器4としては、直接変調型半導体レーザが使用されることが多い。光信号は光ファイバ8を経て、O/E変換器5によって再度アナログの高周波信号へと変換される。O/E変換器5の例としては、PINフォトダイオードとプリアンプから構成される光受信器が挙げられる。
【0007】
高周波信号を低損失で伝送されるにもかかわらず、この従来例には以下のような課題がある。
【0008】
E/O変換器4やO/E変換器5で使用される光部品は一般にアナログ変調特性あるいは線形性が優れず、非常に大きな歪を発生するために、低い変調度で使用されたり、再生のために歪の補償回路を用いなければならない、等の課題があった。さらに、光信号がアナログであるがゆえに、一般に使用されている光ファイバ網の中に多重化して光伝送することもできず、専用の光ファイバを敷設して使用されていた。これは高コスト化を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山本聖仁、岩谷洋一、下平慎一郎著、「携帯電話の不感地帯を解消するROFリモート基地局」、東芝レビュー、Vol. 59, No. 11, pp. 43-46 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来例においては、以下のような課題があった。
1)光部品は一般にアナログ信号を歪なく伝送できるほど線形性が良好ではなく、システムにおいて十分な特性が発揮できない。あるいは線形性を保証するための補償回路が必要であった。
2)多くの光ファイバ通信では、デジタルのパケット信号(特にInternet Protocol(IP))が伝送されているため、既存の光ファイバの上でアナログ信号を多重化するのは容易でなく、新規光ファイバ敷設のコストが発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して本発明の目的を達成するため、本発明による光通信システム、光送信装置および光受信装置は、以下の特徴を備える。
【0012】
請求項1に記載の発明は、高周波伝送または無線伝送における光通信システムであって、伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)とを備え、前記A/D変換器は、前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、前記D/A変換器は、 前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザであることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の光通信システムであって、前記A/D変換器は、1ビットA/D変換器であり、前記D/A変換器は、1ビットD/A変換器であることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光通信システムであって、前記E/O変換器が半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイスであることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、高周波伝送または無線伝送における光送信装置であって、伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)とを備えた光送信装置であり、前記A/D変換器は、前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、前記D/A変換器は、前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザであることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、高周波伝送または無線伝送における光受信装置であって、伝送対象のデータを変調し、アナログの高周波信号を生成する高周波変調器と、前記アナログの高周波信号を第1のデジタル電気信号へと変換するA/D変換器と、前記第1のデジタル電気信号を所望の信号フォーマットに変換する符号化器と、前記信号フォーマットをデジタル光信号に変換するE/O変換器と、前記デジタル光信号を第2のデジタル電気信号に変換するO/E変換器と、前記第2のデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するD/A変換器(モデム/コーデック)とを備えた光受信装置であり、前記A/D変換器は、前記アナログの高周波信号の電圧が上りスロープ、または下りスロープであって、かつ0Vのときにトリガを発する、スロープトリガ回路であり、前記D/A変換器は、前記トリガの立ち上がり時刻に基づいて、前記アナログの高周波信号の電圧を再現するシンセサイザであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高周波信号をデジタルの光信号として光ファイバや空間等の光媒体を介して伝送することができる。したがって、光部品の線形性にとらわれず、またインターネット・プロトコル(IP)や波長による多重化も容易であり、既存のIP網へ容易に多重化することができる。
【0019】
さらに本発明の第2および第3の実施形態の技術を用いた場合は、光信号に重畳されるデジタル信号の帯域を大幅に圧縮できるため、従来システムと比較して、経済性にも多重数にも優れる。
【0020】
本システムは各種の無線サービス、すなわち携帯電話や放送の不感地対策に適用できる。また、ケーブルテレビ・システムにも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】高周波システムや無線システムの一部に光伝送技術を組み入れた、典型的な従来の光通信システムの図例である。
図2】本発明の第1の実施形態にかかる光通信システムを示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態にかかる光通信システムを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態におけるスロープトリガの原理を示す図である。
図5】本発明の第3の実施形態にかかる光通信システムを示す図である。
図6】本発明の第4の実施形態にかかる光通信システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図2に、本発明の第1の実施形態にかかる光通信システムを示す。
【0024】
図2の第1の実施形態において、RF変調器(高周波変調器)1aとRF回路(高周波回路)7aとの間に、A/D変換器2a、符号化器3a、E/O変換器4a、O/E変換器5aおよびD/A変換器6aの各機器が挿入されている。
【0025】
RF変調器1aの次段にA/D変換器2aが設けられ、A/D変換器2aの次段に符号化器3aが設けられている。符号化器3aの次段にE/O変換器4aが設けられ、E/O変換器4aは、O/E変換器5aと光ファイバ8aで接続されている。O/E変換器5aの次段にD/A変換器6aが設けられ、D/A変換器6aの次段にRF回路7aが設けられている。
【0026】
RF変調器1aは、無線変調のための振幅、周波数、位相等の変調器である。一般には変調器と呼ばれるが、ここでは光変調器と明確に区別するためにRF変調器と呼ぶ。第1の実施形態では周波数偏移キーイング(FSK)変調器を用いたが、オンオフキーイング変調器や位相変調器でも構わない。
【0027】
FSK変調されたアナログの高周波信号は、A/D変換器2aにおいてPCM形態の第1のデジタル電気信号へと変換される。ここでは16ビットA/D変換器を用いる。PCM形態の第1のデジタル電気信号は、汎用の光ファイバ8aで伝送するために、符号化器3aで所望の信号フォーマットに変換する。具体的な例を挙げると、UDP(ユーザ・データグラム・プロトコル)及びIP(インターネット・プロトコル)へと変換される。その後、汎用のデジタル光ファイバ網で伝送するために、IPパケットはE/O変換器4aにてデジタル光信号に変換される。用いたE/O変換器4aは波長1.55μm帯直接変調レーザダイオードであり、光変調の方法は強度変調である。また、光ネットワークの伝送速度は約10Gb/sである。デジタル光信号は、光ファイバ8a(単一モード光ファイバ、長さ20km)へと入力され、他方の光ファイバ端から出力される。
【0028】
デジタル化された光信号は、O/E変換器5aにて再度デジタル電気信号(第2のデジタル電気信号)に変換される。O/E変換器5aは、PIN−PD、プリアンプ、リミッタアンプ、クロック再生回路から構成される波長1.55μm帯用10Gb/s光受信器である。O/E変換器5aでレベル再生、クロック再生された第2のデジタル電気信号は、D/A変換器6aにてアナログ電気信号(ここでは高周波信号)に変換される。D/A変換器6a(モデム/コーデック)はUTP、IPに対するMAC層処理も行う。D/A変換器6aから出力される高周波信号は、最後のRF回路7aにて増幅される。また必要に応じて周波数変換される。
【0029】
このようにして、RF変調器1aで生成された高周波信号は、本装置によって、光ファイバ8aを経て20km先までわずかな損失で伝送でき、O/E変換器5a〜RF回路7aによって高周波信号へと再生される。
【0030】
以上は光ファイバ伝送の例を示したが、伝送媒体として空間を利用してビル間を光無線方式で接続した高周波信号伝送も可能である。高周波信号を光信号に重畳することによって、無線系のLAN/WAN構築が可能である。
【0031】
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態にかかる光通信システムを示す。
【0032】
図3の第2の実施形態において、RF変調器1bとRF回路7bとの間に、スロープトリガ回路9、符号化器3b、E/O変換器4b、O/E変換器5bおよびシンセサイザ10の各機器が挿入されている。
【0033】
RF変調器1bの次段にスロープトリガ回路9が設けられ、スロープトリガ回路9の次段に符号化器3bが設けられている。符号化器3bの次段にE/O変換器4bが設けられ、E/O変換器4bは、O/E変換器5bと光ファイバ8bで接続されている。O/E変換器5bの次段にシンセサイザ10が設けられ、シンセサイザ10の次段にRF回路7bが設けられている。
【0034】
図4は、本発明の第2の実施形態におけるスロープトリガの原理を示す図である。
【0035】
振幅変調を伴わない無線伝送用高周波信号の電圧e(t)は、
e(t)=e0 sin (2πft+θ) (ただし、e0は電圧の大きさ、fは周波数、θは位相)
と表すことができる。図4のようにt1とt2で電圧が、負電圧から正電圧へと変化しつつあるときに、e=0を横切る時刻をt1,t2とすると、その間の周波数f1と位相θ1は、それぞれ、
f1=1/(t2−t1), θ1=0 (t=t1)
である。すなわち、
e(t)〜sin {2πf1 (t−t1)}
となる。トリガの時刻t1,t2を伝送するだけで、無線伝送用高周波信号の電圧は再生可能である。なお、説明を省略するが、時刻t2〜t3間の扱いも同様である。この原理によれば、周波数変調と位相変調が伝送可能である。
【0036】
これらの時刻情報が伝送されれば、シンセサイザ10によって高周波信号を表現する正弦波電圧(電圧振幅、周波数、位相のすべて)が再現可能である。
【0037】
ここでは、第1の実施形態との相違点であるスロープトリガ回路9、シンセサイザ10を中心に説明する。
【0038】
入力データは、RF変調器1bでアナログの高周波信号に変調される。生成された高周波信号は、図4を用いてその機能を説明したスロープトリガ回路によって、電圧が上りスロープであり、かつ0Vのときに、トリガを発生させる。トリガは符号化器3bにより、IP系の信号へと変換される。E/O変換器4bからO/E変換器5bまでの説明は省略する。
【0039】
O/E変換器5bの出力信号は、シンセサイザ10へと入力される。適当なトリガの時刻tiとその次のトリガ時刻ti+1から、高周波電圧の波形は、シンセサイザ10内でただちに計算され出力される。
【0040】
具体的な計算例は次のとおりである。トリガ時刻ti及びトリガ時刻ti+1は連続する正弦波の立上りトリガ時刻であるから、正弦波の周波数f1は、
f1=1/(ti+1−ti)
と計算できる。その値から、高周波電圧e(t)の波形は、
e(t)=e0 sin {2πf1 (t−ti)}
となる。e0は電圧振幅であるが、周波数変調と位相変調においては一定の値である。
【0041】
最後にRF回路7bによって、高周波信号は増幅され、所望の周波数に周波数変換される。第2の実施形態の光通信システムも良好に動作する。第2の実施形態で構成された光送信装置および光受信装置も同様である。
【0042】
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態にかかる光通信システムを示す。図5は、図2の第1の実施形態における、A/D変換器2aの代わりに1ビットA/D変換器11を用い、D/A変換器6aの代わりに1ビットD/A変換器12を用いて構成した図である。RF変調器1c、符号化器3c、E/O変換器4c、O/E変換器5c、RF回路7cおよび光ファイバ8cについては説明済みのため詳細は省略する。
【0043】
第1の実施形態で使用された多ビットのA/D変換器2a及びD/A変換器6aに換えて、1ビットA/D変換器11と1ビットD/A変換器12を使用したのが、第3の実施形態である。ただし、標本化においてはオーバーサンプリングを行う。
【0044】
第2の実施形態とは伝送量圧縮の原理が異なるが、第3の実施形態においても、第1の実施形態と比較して伝送に必要な帯域は小さくなる。
【0045】
(第4の実施形態)
本発明の第1から第3の実施形態においてE/O変換器4a〜4cとして、直接変調型レーザダイオードを用いてきたが、第4の実施形態においては半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイス13を用いる。
【0046】
図6に、本発明の第4の実施形態にかかる光通信システムを示す。図6は、例として第1の実施形態を用いた構成図であり、図2のE/O変換器4aの代わりに半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイス13を用いて構成した図例である。RF変調器1d、A/D変換器2d、符号化器3d、O/E変換器5d、D/A変換器6d、RF回路7dおよび光ファイバ8dについては説明済みのため詳細は省略する。
【0047】
直接変調型レーザダイオードを用いた場合の10Gb/sデジタル信号は、通常のシングルモード光ファイバ数十kmしか伝送できない。
【0048】
ところが、半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイス13では、変調の起源が半導体レーザの直接変調ではなく、電界吸収型光変調であるため、波長帯域の広がりが大変小さく、およそ100kmの光伝送が可能である。第1の実施形態のシステムのうち、E/O変換器として半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイス13を用い、100kmのデジタル光無線伝送が実現できる。
【0049】
同様にデュアルドライブ型の半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイスによっても、例えば200kmのデジタル光無線伝送が実現できる。
【0050】
以上、第1から第4の実施形態にて述べたように、本発明の光通信システムを用いれば、従来の例と比較して、線形性が乏しい光デバイスを用いた場合でも良好なデジタル光無線伝送が可能である。さらに、波長多重化やIP多重化によって既存の光ファイバ網を介してデジタル光無線伝送が実現できる。
【符号の説明】
【0051】
1 無線送信機
1a,1b,1c,1d RF変調器
2a,2d A/D変換器
3a,3b,3c,3d 符号化器
4,4a,4b,4c E/O変換器
5,5a,5b,5c,5d O/E変換器
6a,6d D/A変換器
7a,7b,7c,7d RF回路
8,8a,8b,8c,8d 光ファイバ
9 スロープトリガ回路
10 シンセサイザ
11 1ビットA/D変換器
12 1ビットD/A変換器
13 半導体レーザと半導体光変調器のモノリシック集積デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6