(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タンパク質を含有する食品原料の混合物であり、流動性を有する該混合物を筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して押出成形させるタンパク質加工食品の製造において、筒体へ該混合物を送り込む際に、該混合物が移動する方向に沿って開口した潤滑成分の供給口から筒体と該混合物の間であって筒体の全周にわたって該混合物が移動する方向に沿って潤滑成分を加圧して送り込むことを特徴とするタンパク質加工食品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ソーセージのような加熱成形工程を経て製造する熱凝固性タンパク質加工食品を連続生産することを課題とする。加熱により凝固する加工食品には、例えば畜肉や魚肉等を原料としたもの、卵や乳タンパク質等を原料にしたもの、さらには大豆タンパク質等の植物タンパク質を原料としたものがあり、従来はそれぞれ異なる加熱加工方法により製造されていた。
【0010】
畜肉のひき肉や水産物のすり身など流動性のある原料を加熱加工する場合、加熱工程の前に最終製品形状を決定する成形工程が必須である。つまり、成形工程と加熱工程はそれぞれ独立した工程として存在するため、製造工程が煩雑となり、製造効率の低下要因ともなっている。例えば、畜肉又は水産物由来肉をミンチ状にして、練り肉として加工する食品の場合、竹輪やカマボコのように棒や板などの練り肉を支えるものの上に成型したり、ソーセージのようにケーシングに充填したりするなど、製品を個別に成型する必要がある。
【0011】
そのため、上記加工食品を筒体内部で加熱しながら押し出す形式の連続生産を試みても、畜肉又は水産物由来肉などに含まれる、主には筋原繊維由来の塩溶性タンパク質が加熱変性により微細網状構造を有するゲルを形成する結果、その流動性を失い、さらに加工機器に付着することで流路を塞ぐために、加工対象物自身の自己流動性に依存した方法で加工対象物を連続的に移動させながら加熱加工することは困難であった。背景技術の欄に記載したようにジュール加熱やマイクロ加熱を用いて連続的に加熱成型する方法も報告されているが、実用的に安定した生産ができるものではなかった。
【0012】
本発明は、そのような畜肉や水産物由来肉のようなタンパク質を主原料とした加熱成形食品を連続的に製造することを課題とする。
【0013】
また、本発明は、流動性のある食品が移動する流路へ潤滑成分を供給する潤滑成分供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
食品製造工程において、「加熱」は加工対象物に様々な性質や特徴を付与する非常に重要な工程である。そのため、加工対象物の用途や目的に応じて様々な加熱方式を使い分けることで製造の効率化や商品の高品質化や差別化等が可能となる。
【0015】
畜産や水産加工品の成形性の付与や向上のために、ジュール加熱やマイクロ波加熱、高周波加熱等の内部加熱を用いて、40〜50℃付近の低温での一次加熱をしている例がある。そのような場合、加熱域内では被加熱物は自己流動性を保持しており、その自己流動性を利用して、例えばポンプ等で被加熱物を連続的に移送しながら内部加熱を行うことは可能であった。しかしながら、温度によって粘性が変化する場合、例えば動物性塩溶性タンパク質を含む食品の場合、加熱変性してゲル化する温度帯以上、つまり最終製品のための加熱工程においては、被加熱物の自己流動性が低下して筒体内を滑らかに移動することができないことがあった。
【0016】
畜肉又は水産物由来肉を主成分とする食品材料、特にこれらに含まれる筋原繊維タンパク質、主にはミオシンやアクトミオシン等の塩溶性タンパク質は加熱によりその構造が不可逆的に変化し、微細な網状構造を有する強固なゲルに変換する。そのため、筒体の中では容易に目詰まりが生ずる。
【0017】
本発明者らは、内部加熱方式を用いたタンパク質加工食品の製法について検討するなか、被加熱物と筒体との間へ潤滑成分を供給することで、筒体内における食品の優れた流動性が得られることを見出し、本発明の方法と装置を完成させた。
【0018】
内部加熱方式により、筒内の原料を70〜120℃のようなタンパク質が加熱変性してゲル化する温度帯において加熱すると、ゲル化により流動性を失った被加熱物が流路を塞ぎ、筒内は蒸気の開放経路が塞がれているため筒内圧力が高まり、蒸気と被加熱物が一気に噴出するフラッシュ現象が発生し、加熱物の安定吐出は不可能であった。ここで、筒体と被加熱物の間にすべりを滑らかにする潤滑剤を存在させれば、加熱物の安定吐出が可能となることを見出した。
【0019】
本発明は、(1)〜(4
)のタンパク質加工食品の製造方
法及び
その方法に用いるための(
5)〜(
9)の潤滑成分供給装置を要旨とする。
【0020】
(1)タンパク質を含有する食品原料の混合物であり、流動性を有する該混合物を筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して押出成形させるタンパク質加工食品の製造において、筒体へ該混合物を送り込む際に、
該混合物が移動する方向に沿って開口した潤滑成分の供給口から筒体と該混合物の間であって筒体の全周にわたって
該混合物が移動する方向に沿って潤滑成分を加圧して送り込むことを特徴とするタンパク質加工食品の製造方法。
(2)潤滑成分が食用に適する液状油、粉末油脂、乳化物、固形油のいずれかである。(1)のタンパク質加工食品の製造方法。
(3)内部加熱方式がマイクロ波加熱、ジュール加熱、又は高周波加熱である(1)又は(2)のタンパク質加工食品の製造方法。
(4)加熱が被加熱物の中心温度が70〜120℃になるような加熱であることを特徴とする(1)ないし(3)いずれかのタンパク質加工食品の製造方法。
(5)流動性のある食品が移動する流路を形成する筒体を有し、
前記筒体は、前記流路内を移動する食品の周囲もしくは該流路から出た食品の周囲へ潤滑成分を供給する供給部が形成され
、該供給部は該流路内を該混合物が移動する方向に沿って開口した潤滑成分の前記供給口を有することを特徴とする(1)ないし(4)いずれかの方法に用いるための潤滑成分供給装置。
(6)前記筒体は、第1の筒体と第2の筒体とを組み合わせて構成され、
前記第1の筒体は、前記第2の筒体に挿入された第1部分を有し、
前記供給部は、前記第1部分の外壁面と前記第2の筒体の内壁面との間に形成された隙間からなる供給流路と、該供給流路が前記流路もしくは前記筒体の出口に向けて開口する
前記供給口と、を含み、
前記供給流路に充填された潤滑成分は、前記供給口から食品の周囲へ供給される(5)記載の潤滑成分供給装置。
(7)前記筒体は、流動性のある食品を輸送筒体の中を移動させながら連続的に加熱する加熱装置の該輸送筒体に接続される(5)または(6)に記載の潤滑成分供給装置。
(8)流動性のある食品はタンパク質を含有するタンパク質加工食品であって、前記潤滑成分は油を含む(5)ないし(7)のいずれか1項に記載の潤滑成分供給装置。
(9)前記第1部分の外壁面は、食品の移動方向に沿って延びる複数の突部を有し、
前記供給流路は、前記第1部分の外周に沿って連続する環状流路と、前記複数の突部に沿って延びる線状流路と、を有し、
前記供給口は、前記複数の線状流路の開口端部に形成される複数の供給口を含む(6)の潤滑成分供給装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のタンパク質加工食品の製造方法により、食品原料と筒体の間に送りこまれた潤滑成分が、筒体内での加熱中、潤滑油として機能する。そのため、食品自体に脂質が含まれていてもいなくても、被加熱物が筒内を塞いでしまうことなく、円滑に吐出させることができる。また、本発明の潤滑成分供給装置により、流路内を移動する食品もしくは該流路から出た食品の周囲へ潤滑成分を供給する供給部が形成された筒体を有することで、流動性が低下した食品であっても滑らかに配管内を移送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、「タンパク質加工食品」とは、未加熱のタンパク質を含有する原料とその他の原料を混合して、タンパク質の凝固温度以上で加熱することにより、タンパク質が加熱変性することによりゲル化して製造される食品である。具体的には、魚肉ソーセージのようなタンパク質が加熱凝固してできる食品のことである。
【0024】
畜肉又は水産物由来肉を主成分とし、これに任意の食品素材を添加して混練した混練肉を加熱して得られる加工品は畜産ならびに水産加工品として一般的であり、ハム・ソーセージ類やハンバーグ、ミートローフ、練り製品はその例である。これらの加工品を工業的に製造する場合、任意の型やケーシングに充填することも含めた成形工程と加熱工程が独立した二つの工程により行われていた。
【0025】
魚肉ソーセージは魚肉すり身に食塩、砂糖などの調味料、香辛料、澱粉、植物油等の副原料を混合し、ペースト化して合成樹脂製のケーシングに充填し、レトルト加熱して製造されるが、本発明では、このペーストをケーシングに充填するのではなく、筒体の中を移動させながら加熱凝固させて製造する。その結果、ケーシングを使用しない魚肉ソーセージが連続的に製造することが可能である。
【0026】
魚肉ソーセージに限らず、タンパク質を含有する液状からペースト状の物性を有する原料を加熱凝固して製造するタンパク質加工食品であれば、いずれも本発明の方法によって製造することができる。
【0027】
農林水産省の定める「魚肉ハムおよび魚肉ソーセージ品質表示基準」(制定 平成12年12月19日農林水産省告示第1658号。最終改正 平成20年農林水産省告示第1368号)の「普通魚肉ソーセージ」の定義では、魚肉ハムとは、「(1)魚肉(鯨その他魚以外の水産動物の肉を含む。以下同じ。)の肉片を塩漬けしたもの(以下「魚肉の肉片」という。)又はこれに食肉(豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家と肉又は家きん肉をいう。以下同じ。)の肉片を塩漬けしたもの、肉様の組織を有する植物性たん白(以下「肉様植たん」という。)若しくは脂肪層(肉様植たん又は脂肪層にあっては、それぞれ、おおむね5g以上のものに限る。)を混ぜ合わせたものにつなぎを加え若しくは加えないで調味料及び香辛料で調味したもの又はこれに食用油脂、結着補強剤、酸化防止剤、保存料等を加えて混ぜ合わせたものをケーシングに充てんし、加熱したもの(魚肉の原材料に占める重量の割合が50%を超え、魚肉の肉片の原材料に占める重量の割合が20%以上であり、つなぎの原材料に占める重量の割合が50%未満であり、かつ、植物性たん白の原材料に占める重量の割合が20%以下であるものに限る。)(2)(1)をブロックに切断し、又は薄切りして包装したもの」とある。
【0028】
また、魚肉ソーセージは「(1)魚肉をひき肉したもの若しくは魚肉をすり身にしたもの又はこれに食肉をひき肉したものを加えたものを調味料及び香辛料で調味し、これにでん粉、粉末状植物性たん白その他の結着材料、食用油脂、結着補強剤、酸化防止剤、保存料等を加え若しくは加えないで練り合わせたものであって、脂肪含有量が2%以上のもの(以下単に「練合わせ魚肉」という。)をケーシングに充てんし、加熱したもの(魚肉の原材料に占める重量の割合が50%(パーセント)を超え、かつ、植物性たん白の原材料に占める重量の割合が20%以下であるものに限る。特殊魚肉ソーセージの項において同じ。)、(2)(1)をブロックに切断し、又は薄切りして包装したもの」とされている。
【0029】
本発明において「魚肉ハムおよびソーセージ類」とはこの定義の魚肉ハムおよびソーセージを包含するものであるが、魚肉を30重量%以上含有し、脂肪含有量を2重量%以上含有する原材料を練り合わせたものを加熱加工したものを含む。また、ケーシングに充填せずに加熱した、ケーシング無しのものである。
【0030】
本発明において「タンパク質加工食品」とは、畜肉、水産物の他に、卵タンパク、乳タンパク、植物タンパクを主原料とするものも含む。いずれも、加熱によりタンパク質が加熱凝固する点では同じであり、同じ方法で加工食品とすることができる。
【0031】
タンパク質原料以外の原料は目的に応じて、何を含んでもよい。原料の混合物は、液体状から固体状までどんな状態でもかまわないが、少なくとも原料の時点では筒体に送り込める程度の流動性があればよい。
【0032】
本発明で用いる内部加熱方式とは、マイクロ波加熱、ジュール加熱、高周波加熱などの加熱方式である。食品製造工程において原料や製品を加熱する方法は、外部加熱方式(直接加熱、間接加熱)と、内部加熱方式に分類される。外部加熱方式は被加熱物を目標の温度まで加熱するために目標温度より高い温度の加熱媒体(熱煤)が必要である。つまり、被加熱物と熱媒の間で熱エネルギーを移動させるための温度差が必要となり、被加熱物の一部は加熱目標温度より高温になることは避けられない。このため、外部加熱装置での加熱は過加熱を避けるため、加熱温度や時間の調整、あるいは被加熱物の攪拌等が必要である。これに対して、内部加熱方式であるジュール加熱やマイクロ波加熱は被加熱物の自己発熱を利用して加熱する。そのため、以下の特徴が知られている。
1)熱媒がないため設定した温度以上の加熱がない。
2)被加熱物の温度制御は電気的制御によるため、正確な温度調整が可能である。
3)食品の粘度に関係なく加熱が可能である。また、熱伝導の低い液体も急速な加熱が可能である。
4)固形物入り食品も均一な加熱が可能である。
5)均一かつ迅速な加熱が可能である。
【0033】
ジュール加熱とは、通電加熱とも呼ばれる内部加熱方式の一つである。食品など被加熱物に直接通電して、被加熱物の電気抵抗により発熱させる方法である。流動性を有する食品を連続加熱するためのジュール加熱の装置は特許文献1〜4などに開示されているような装置を利用することができる。基本的には、絶縁性の筒体とその筒体に対をなして電極が設けられた電極を有し、電極は電源に接続されたものがジュール加熱装置であり、この筒体に連続的に被加熱物を送り込めるようにポンプを接続し、加熱された食品を受ける受け皿あるいは冷却部があれば本発明の製造方法に用いることができる装置となる。流動性のある食品を筒体中でジュール加熱する場合でも筒体の内部に食品が焦げ付かないための工夫や、温度管理をするために温度センサーを設けるような技術も知られている。本発明においてもこれら技術を利用することができる。
【0034】
例えば、電圧150〜400V、電流10〜30A程度の装置を使用することができる。
【0035】
マイクロ波加熱とは、高周波により被加熱物に含まれる水分子などの電気双極子を激しく振動させることによって加熱をする方法で、その原理は家庭用の電子レンジに応用され、広く普及している。マイクロ波加熱の装置は特許文献10〜11に開示されている装置を利用することができる。基本的には、高周波透過性のある、例えばフッ化樹脂性の加熱筒体とその筒体部分に高周波を照射する装置から成り、この筒体に連続的に食品原料を送り込めるようにポンプを接続し、加熱された食品を受ける受け皿あるいは冷却部があれば本発明の製造方法に用いることができる装置となる。
【0036】
例えば、2450Hz、200V、20A程度の装置を使用することができる。
【0037】
高周波加熱はマイクロ波加熱よりも周波数の低い電磁波を用いる加熱方式であるが、装置や理論はマイクロ波加熱と基本的に同様のものを使用することができる。
【0038】
本発明において「筒体」とは、その内部に被加熱物を通すことができ、内部加熱に適した素材、すなわち、マイクロ波・高周波を透過し、電気的な絶縁性を有し、さらに加熱耐性を有した素材でできた筒が好ましい。加えて、被加熱物が付着しにくい合成樹脂、シリコン樹脂、フッ化樹脂、それらの素材で表面加工した筒が好ましい。筒の直径は加熱方法や加熱エネルギーによるが、マイクロ波加熱の場合、本発明に使用する原料素材のマイクロ波半減深度は深くないためは直径40mm以内、好ましくは30mm以内の直径の筒が望ましい。高周波加熱は、マイクロ波と比較して電磁波の半減深度が深いので、太い幅の筒体でも可能である。形状は円筒よりもむしろ、四角柱が好ましい。ジュール加熱では、マイクロ波と加熱原理が異なるため、理論的には加熱電極の大きさに依存し、直径200mmでも可能である。筒体の長さは、被加熱物の内部移動速度と必要到達温度を勘案した長さに調節する。
【0039】
加熱筒体部分の外側には、内部加熱方式の加熱装置を配置する。例えば、
図1に示すマイクロ波加熱や
図2に示すジュール加熱の装置である。
【0040】
本発明では、タンパク質を含有する食品原料と他の食品原料を混合する。得られた原料混合物は必要に応じて脱気処理を行い、送りポンプ等の搬送装置にて連続的に移送され、移送しながらジュール加熱やマイクロ波加熱・高周波加熱、もしくはそれらの加熱方法の組み合わせにより混合物中心温度を70℃以上120℃以下の範囲で任意に設定した温度まで昇温加熱が行われる。加熱筒体中で形成されたゲルは連続的に押し出され、加熱成形された加工品が得られる。加熱温度が70℃以下ではタンパク質の加熱変性が充分ではなく良好な物性を持ったゲルが得られない。また、120℃以上ではゲルは形成するが、高温の影響でゲル構造がダメージを受け、ゲル強度が低下する。
【0041】
本発明では、上記のような内部加熱を用いたタンパク質加工食品の製造において、食品原料混合物と筒体の間に潤滑成分を供給しながら製造することを特徴とする。畜肉又は水産物由来肉などタンパク質を主成分とする原料に任意の食品素材を添加して混合した混合物が加熱によってゲル化した後も、混練肉と筒体の間に送入された潤滑成分により、加熱筒体内壁と加熱ゲルとの移動摩擦を低減せしめ、結果として加熱ゲルの円滑な移送性を維持することが可能である。
【0042】
畜肉又は水産物由来肉に含まれる筋原繊維を構成する塩溶性タンパク質は塩を添加することで溶解する性質を持っている。この塩溶性タンパク質は繊維状のタンパク質であり、構造中に疎水基と親水基を持つため、乳化作用を有している。このため、塩を加えて充分に擂潰した練り肉に脂質を添加して混練すると、均一な乳化物が得られる。
【0043】
加熱によるゲル化とは塩で溶解した塩溶性タンパク質が加熱によりその立体構造が変化し、三次元的に複雑に絡み合い、微細な網目構造を形成する現象である。加熱によりその立体構造が変化した塩溶性タンパク質は同時に乳化性も低下し、塩溶性タンパク質は乳化した脂質を一度は解放するが、同時に形成される微細網目構造中にその脂質を取り込み、構造中に保持する。また、微細網目構造中の外に放出された脂質は、それ自身も潤滑油として機能する。そのため、ゲル化した塩溶性タンパク質と加熱装置内壁の動摩擦抵抗を低減させ、移送性を向上し、さらに機器への付着性も低減する。
【0044】
本発明において潤滑成分とは、油脂、乳化油脂、水、アルコール等の食用に用いることができる液状成分であればよいが、特に油脂を含む成分が好ましい。目的とする食品に応じて味等への影響が少ない油脂、乳化油脂を選択すればよい。具体的には、菜種油、大豆油、パーム油などの植物油、O/W型、W/O型などの乳化油脂などが好ましい。あるいは、油脂などを含む混合物を潤滑成分とすることもできる。例えば、製造する食品原料に油脂を多く含ませた混合物を潤滑成分として用いることもできる。すなわち、ソーセージを製造する場合、ソーセージの原料にさらに油脂を追加して添加した練り肉を潤滑成分として筒体との間に送り込むことにより、食味に影響することなく潤滑性を高めることができる。
【0045】
本発明の方法を用いることにより、製造するタンパク質加工食品自体に脂質が含まれていることが必須ではなくなる。食品原料自体に脂質が含まれていても当然問題ない。例えば、魚肉ソーセージは原料中に脂質を2〜35重量%含み、竹輪では脂質を0〜13重量%程度含有するが、いずれであっても、潤滑成分を送入することにより、筒体内でゲル化しても円滑に吐出される。
【0046】
供給する潤滑成分は食品原料に対して0.01〜1重量%程度、特に0.1〜0.5重量%が好ましい。潤滑成分の量は食品原料の種類、筒体の直径などによって、適宜調節することができる。潤滑成分を供給するには下記のような装置を用いて送りこむことができる。
【0047】
本発明の一実施形態にかかる潤滑成分供給装置は、流動性のある食品が移動する流路を形成する筒体を有し、前記筒体は、前記流路内を移動する食品の周囲もしくは該流路から出た食品の周囲へ潤滑成分を供給する供給部が形成されたことを特徴とする。
【0048】
本発明において、「流動性のある食品」とは、少なくとも潤滑成分供給装置の入り口では筒体に送り込める程度の流動性を有する物質であって、液体から固体まで種類を問わない。特に、本発明の潤滑成分供給装置は、一定の粘度を有する食品の潤滑に適している。食品の中には温度変化、例えば加熱工程における加熱によって粘度が変化する性質を有するもの、あるいは粘度の異なる複数の原料を混合したものがあり、粘性の高い食品は移送中に配管の内壁面に付着して滞留することがある。本発明は、加熱によりゲル化するタンパク質を含有する練り肉や卵等を含む食品素材などの加工に適している。ゲル化しないものとしては、味噌のような物性のもの、クリームのような物性のもの、粥のような物性のもの、粘度の高いケーキや菓子などの食品、天然物由来成分を含有する医薬品原料、医薬品成分、健康食品原料、培地などがあり、このようなものの加工工程における潤滑に用いることもできる。特に、本発明の潤滑成分供給装置は、脂質を多く含まないタンパク質を含有する食品の加工工程における潤滑に適している。
【0049】
本発明の潤滑成分供給装置によれば、畜肉又は水産物由来肉を主成分とした混練肉中における脂質の添加量を減少あるいは脂質を添加しない混練肉であっても、混練肉が加熱によってゲル化した後も、加熱筒体内壁と加熱ゲルとの間に潤滑成分を送り込むことで移動摩擦を低減せしめ、加熱ゲルの円滑な移送性を維持することが可能である。
【0050】
本発明の装置の一実施形態について、
図4〜
図6を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態にかかる潤滑成分供給装置を示す断面図である。
図5は、
図4におけるX−X’断面図である。
図6は、
図4の潤滑成分供給装置の分解断面図である。
【0052】
図4に示すように、潤滑成分供給装置1は、流路48を形成する輸送筒体4と流路58を形成する輸送筒体5との間に固定して使用することができる。
【0053】
例えば、
図7に示すように、輸送筒体4の一方を食品の原料を送り出すポンプ8に接続された配管とすることができ、輸送筒体5は食品を加熱する加熱装置9内へ延びる加熱筒体とすることができる。特に、食品が加熱によってゲル化するタンパク質加工食品である場合には、加熱装置9内へ続く輸送筒体5に潤滑成分供給装置1を連結することによって食品を滑らかに移送することができる。
【0054】
また、例えば、輸送筒体4がタンパク質加工食品を外部加熱によって加熱したものを移送するものであり、輸送筒体5がその成形加工に用いる成形筒体であっても、潤滑成分供給装置1は食品を滑らかに移送することができる。
【0055】
潤滑成分供給装置1は、流動性のある食品が移動する流路11を形成する筒体10を有する。筒体10には、流路11から出た食品の周囲へ潤滑成分を供給する供給部16が形成されている。筒体10は、第1の筒体2と第2の筒体3とを組み合わせて構成されている。
【0056】
第1の筒体2は、第2の筒体3に挿入される第1部分20と、輸送筒体4の連結部40と連結する第2部分22と、を有する。第1の筒体2は、
図5に示すように横断面が内形、外形ともに円形の円筒形であって、
図6に示すように、両端に第1の開口部12と第2の開口部13とを有する。第1の筒体2は、第1の開口部12から第2の開口部13まで内径が同じ第1の内壁面28を有し、第1の内壁面28が流路11を形成する。
【0057】
第1の開口部12は潤滑成分供給装置1に食品が流入する流路11の入口であり、第2の開口部は潤滑成分供給装置1から食品が流出する流路11の出口である。第1の開口部12は輸送筒体4の開口部44と同じ内径を有し、第2の開口部13は輸送筒体5の開口部54よりも小さな内径を有する。
【0058】
第1の筒体2の第1の外壁面26は、第1部分20の均一な外径と、段部29で第1部分20の端部から拡径して第2部分22の第1部分20の外径より大きな外径と、を有し、第2部分22はさらに第1の開口部12の周囲においてフランジ状に突出した最大外径を有する連結部24を有する。連結部24は、隣接する輸送筒体4の端部において同様にフランジ状に形成された連結部40に対し、シール材を挟んだ状態でクランプ42によって連結される。第1部分20における第1の外壁面26の外径は、少なくともその開口端部において輸送筒体5の開口部54よりも小さな外径を有する。
【0059】
第2の筒体3は、第1の筒体2の第1部分20を受け入れて嵌合する第3部分30と、潤滑成分の供給部16の一部を形成する第4部分32と、を有する。第2の筒体3は、
図5に示すように横断面が内形、外形ともに円形の円筒形であって、
図6に示すように、第3部分30に形成された第4の開口部31と第4部分32に形成された第3の開口部35とを有する。
【0060】
第2の筒体3の第2の外壁面33は、第3の開口部35の周囲にフランジ状に突出した最大外径を有する連結部34を除いて、ほぼ全長にわたって同じ外径を有する。連結部34は、輸送筒体5の端部にフランジ状に形成された連結部50に対し、シール材を挟んだ状態でクランプ52によって連結される。
【0061】
第3部分30は第3の内壁面39を有し、第4部分32は第2の内壁面36を有し、第3の内壁面39は段部37で拡径して第2の内壁面36へと連続する。第3の内壁面39の直径は第1の筒体2の第1部分20の外径とほぼ同じであり、第2の内壁面36の直径は第1部分20の外径よりも大きく形成されて第1の外壁面26との間に隙間を形成する。第2の内壁面36の内径は、輸送筒体5の開口部54の内径と同じである。
【0062】
供給部16は、第1の筒体2における第1部分20の第1の外壁面26と第2の筒体3の第2の内壁面36との間に形成された環状の隙間からなる供給流路18と、供給流路18が筒体10の出口である第2の開口部13に向けて開口する供給口14と、供給流路18に潤滑成分を注入する供給筒体17と、を含むことができる。供給流路18に充填された潤滑成分は、供給口14から食品の周囲へ供給される。
【0063】
供給筒体17の一端は、
図7に示す潤滑成分用ポンプ19から少なくとも食品が供給流路18へ流入しない程度に潤滑成分を加圧して供給筒体17に供給する。供給筒体17の他端は、第2の筒体3の第4部分32の第2の外壁面33から第2の内壁面36へ貫通する供給孔38に接続され、供給流路18へ潤滑成分を充填する。供給流路18へ充填された潤滑成分は、第1の外壁面26に沿って移動し、第2の開口部13の周囲に形成された環状の供給口14から矢印B方向へ押し出される。供給口14から押し出された潤滑成分は、輸送筒体5内を移動する食品の周囲へ供給され、内壁面56に対する食品の移動を潤滑にする。
【0064】
なお、本実施の形態において、供給口14は、筒体10の開口端部に形成したが、これに限らず輸送筒体5を移動する食品の潤滑が行える位置に形成すればよく、例えば供給流路18をさらに短く形成して流路11の途中に設けてもよく
、このようにすることで潤滑成分を流路11内を移動する食品の周囲に供給することができる。また、開口部54を超えて流路58内まで供給流路18が延びて形成されてもよく、この場合、供給口14は輸送筒体5内に開口することになるが潤滑成分を流路58内を移動する食品の周囲に供給することができる。
【0065】
図7に示すように、筒体10は、流動性のある食品を輸送筒体5の中を移動させながら連続的に加熱する加熱装置9の輸送筒体5に接続することができる。加熱装置9は、筒体10の一端に接続された輸送筒体5の周囲にマイクロ波加熱機構、ジュール加熱機構等の内部加熱装置や外部加熱装置を配置した構成とすることができる。その場合、輸送筒体5の内部を食品が移動する間に、被加熱物としての食品が加熱されながら輸送筒体5内を移動することができる。例えば、タンパク質加工食品の場合、流動性のある食品である混練肉を送肉ポンプ8によって輸送筒体4内の流路48から矢印A方向へ移送し、筒体10を通過して、加熱筒体である輸送筒体5内の流路58へ連続的に送り込むと共に、その混練肉と輸送筒体5の内壁面56との間に潤滑成分としての例えば油脂を潤滑成分供給装置1から矢印B方向へ供給し、70℃以上120℃以下の温度帯で所望の温度まで加熱を行うことができる。
【0066】
加熱によってゲル化した混練肉は、それ自身が含有する脂質が少量あるいは脂質を含有していなくても、潤滑成分供給装置1から供給された潤滑成分によって移送性を失わずに加熱装置9から連続的に加熱成形されて押し出される。その結果、タンパク質加工食品の吐出安定性が付与され、その結果、所望の加工品が連続して得られる。
【0067】
本発明の潤滑成分供給装置1の筒体10の内径は、魚介類のすり身、落し身や、畜肉のミンチなどの食品の種類によって適宜選択して、種々の直径の製品を容易に連続生産することができる。また、本実施の形態において、第1の筒体2及び第2の筒体3は円筒形であったが、これに限らず他の形状であってもよく、例えば多角筒状であってもよいし、第1の筒体2の横断面と第2の筒体3の横断面とが相似形で無くてもよい。
【0068】
本発明の他の実施形態について、
図8〜
図9を参照しながら詳細に説明する。
【0069】
図8は、本発明の潤滑成分供給装置1aの他の実施形態を示す模式図である。
図9は、
図8における流路11の出口側から見た潤滑成分供給装置1aの正面図である。なお、
図4〜
図7における潤滑成分供給装置1と共通する部品については同じ符号で説明する。
【0070】
潤滑成分供給装置1aは、第1の筒体2aと第2の筒体3aとを備え、
図4〜
図6と同様に輸送筒体4,5に接続することができる。
図8においては、第2の筒体3aだけを断面で示し、第1の筒体2aにおける供給部16の形状をわかりやすく示した。第1部分20の第1の外壁面26は、食品の移動方向Aに沿って延びる複数の突部26aを有し、供給流路は、第1部分20の外周に沿って連続する環状流路18aと、複数の突部26aに沿って延びる複数の線状流路18bと、を有し、供給口14は、複数の線状流路18bの開口端部に形成される複数の供給口14aを含む。
【0071】
第1の筒体2aは、第2の筒体3a内に挿入される第1部分20と第2部分22との間に、第2の筒体3a内に挿入される第5部分22aを有し、第5部分22aは第1部分20に対して段部29aで縮径して接続している。第2の筒体3aは、第1の筒体2の第5部分22aを受け入れて嵌合する第3部分30と、潤滑成分の供給部16の一部を形成する第4部分32と、を有する。第3部分30と第4部分32は、1つの内径で形成された第2の内壁面36aを有する。
【0072】
供給部16の供給筒体17から供給孔38を通って環状の供給流路18aへ導入された潤滑成分は、複数例えば12本の突部26aによって仕切られた12本の線状流路18bに沿って12個の供給口14aから押し出される。このように複数の供給口14aを設けることによって、全周に渡って偏ることなく潤滑成分を均等に押し出すことができる。
【0073】
また、本実施の形態において、突部26aは第1の筒体2aの外壁に形成されたが、これに限らず、例えば第2の筒体3aの内壁に突部26aを形成してもよいし、突部26aによって形成される線状流路18bが螺旋状であってもよい。
【0074】
以上のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から実体的に逸脱しない範囲で変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0075】
本発明の方法は、内部加熱方式で加熱するときに、加熱筒体を垂直もしくは、略垂直(15度以内の傾き)に設置し、該混合物を該筒体中の下から上へ向けて送りながら加熱成型を行う方式(垂直方向吐出方式)と併用することでより一層安定した製造を行うことができる。すなわち、
図3に示すように加熱筒体を設置して製造を行う方式で加熱する。
【0076】
垂直方向吐出方式を用いることで、加熱時に筒体内で発生する蒸気は筒体内を煙突と同様に重力方向と逆、つまり上部に移動する。さらに被加熱物も筒体内を上部に移動するため、内部で発生した蒸気と被加熱物の移動方向が一致する。その結果、蒸気の内部滞留も生ずることなく、安定した被加熱物の吐出が可能となる。また、加熱筒体壁面に沿って上昇する蒸気は筒体壁面と被加熱物との動摩擦抵抗を軽減せしめ、被加熱物の円滑移動を補助する機能をも有している。
【0077】
加えて、垂直方向吐出方式を用いることで加熱筒体内の被加熱物は、重力により加熱筒体の長軸長に比例した自重を常に受け、内部圧力が高まることとなる。このため、原料に含まれる水の沸点が高まり、常圧よりも高温まで安定して加熱できる。さらに、加熱により加熱筒体内で発生する蒸気や被加熱物が加熱膨張することを抑制し、安定した被加熱物の吐出に寄与する結果となる。
【0078】
垂直方向吐出方式と併用する場合、本発明は、「タンパク質と脂質と水分を含有する混合物であり、流動性を有する該混合物を筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して成形させるタンパク質加工食品の製造において、筒体へ該混合物を送り込む際に、筒体と該混合物の間に潤滑成分を送り込みながら、かつ、該筒体を垂直もしくは、略垂直(15度以内の傾き)に設置し、該混合物を該筒体中の下から上へ向けて送りながら加熱成型を行うことを特徴とするタンパク質加工食品の製造方法。」である。
【0079】
本発明の製造方法は魚肉・畜肉ソーセージを例にすると、以下のような手順で実施することができる。
【0080】
筋原繊維由来の塩溶性タンパク質を含む畜肉又は水産物由来肉を主原料とし、これをサイレントカッター等の混練機に供し、充分に細断する。この際の温度はなるべく低温を維持し、10℃程度が望ましい。これに塩を添加し、原料に含まれる筋原繊維由来の塩溶性タンパク質の溶解を充分に行う。この後に、必要に応じて澱粉、植物タンパク質、香辛料、調味料、乳化剤等を加え、さらに混練肉の2〜35重量%の脂質を加える。脂質は植物油、硬化油、豚脂、牛脂等、食用に値する脂質を用いても良い。脂質添加後、さらに充分に混練し、添加した脂質を均等に分散、乳化させる。混練の際に必要に応じて脱気処理を行う。
【0081】
この混練肉を送肉ポンプ等で加熱筒体へ連続的に送り込むのと同時に上述した潤滑成分供給装置を用いて、練り肉と筒体の間に植物油などの潤滑成分を送り込みながら、70℃以上120℃以下の温度帯で所望の温度までジュール加熱やマイクロ波加熱・高周波加熱、もしくはそれらを組み合わせた加熱を行うが、例えば最初に30℃まで加熱した後、所望の温度まで加熱するという二段加熱、また、必要に応じて複数段階の加熱、さらに加熱時の昇温速度の調整も可能であり、最適の物性を得るために自由に調整することが出来る。
【0082】
加熱によってゲル化した混練肉は、潤滑成分により、移送性を失わずに加熱装置から連続的に加熱成形されて押し出され、所望の加工品が連続して得られる。
【0083】
畜肉又は水産物由来肉としては、魚介類のすり身、落し身や、畜肉のミンチなどを原料とする、種々の直径のソーセージを容易に連続生産することができる。
【0084】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0085】
表1の配合により魚肉ソーセージの練り肉を調製した。潤滑成分としては表2の成分を用いた。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
(株)廣電製の連続マイクロ波加熱装置を用いて、加熱温度は吐出された被加熱物の中心温度が85℃となるように、マグネトロンの出力を調整した。マイクロ波加熱の連続処理では、筒体の外周に金属壁で三つに区分けされたそれぞれの区画にマイクロ波発生装置(マグネトロン)が120度の位相で装着されたマイクロ波加熱装置を用いた(
図1)。垂直方向吐出方式(
図3)で加熱成形を行った。練り肉を加熱するための筒体は直径23mmのフッ化樹脂製管を用いた。
【0089】
結果を表3に示した。吐出安定性はマイクロ波加熱により、魚肉ソーセージが安定して製造できるかどうかにより判断した。○は安定して連続生産が可能であったことを示す。△は水蒸気が突出したり、ソーセージが脈動して均一でなかったり、一部過加熱になったりしたことを示す。また、品質は、ソーセージの加熱状態の均一性で判断した。
【0090】
本実施例で用いた配合は油脂を全く含んでいないので、潤滑成分なしではすぐに筒体中で詰まってしまって連続生産することはできないが、表3に示したとおり、潤滑成分を供給することにより、いずれの場合も連続生産が可能となった。特に油脂、乳化油脂の供給が好ましかった。本発明の方法により、全く油脂を含まないタンパク質加工食品を連続的に製造することができる。
【0091】
【表3】
【実施例2】
【0092】
実施例1と同じ配合の魚肉ソーセージ練り肉に菜種白絞油(Jオイルミルズ製)4.1重量%とF−3オイル(ADEKA製)3.7重量%を添加した練り肉(潤滑成分用練肉)を準備した。実施例1の潤滑成分の代わりに油脂を添加した練り肉(潤滑成分用練肉)を供給して、実施例1と同様の方法で魚肉ソーセージを製造した。
【0093】
吐出安定性、品質ともに良好であり、油脂を多く含む練り肉も潤滑成分として有効であることが確認された。
【実施例3】
【0094】
実施例1と同様の試験を、イズミフードマシナリー製リング型電極ジュール加熱装置を用いて、被加熱物の中心温度が85℃となるように、電圧と電流を調整して魚肉ソーセージを製造した。使用した機器は筒体に対を成して電極が設けられたタイプの装置である(
図2)。マイクロ波加熱同様に、潤滑成分を供給することにより、円滑な吐出が可能となった。
【実施例4】
【0095】
表2に示した潤滑成分以外に、常温で固体である固形油脂を用い、実施例1と同様の試験を行った。この場合、潤滑成分供給装置やその配管は電気ヒーター等の任意の加温装置を用いて潤滑成分の融点以上の温度を維持するようにした。用いた固形脂を表4に示した。その結果、固形油脂を用いても実施例1と同様の結果が得られた。
【0096】
【表4】